(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893383
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】継手用短管及びダクト用たわみ継手
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20210614BHJP
F16L 23/02 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
F24F13/02 B
F24F13/02 A
F16L23/02 E
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-101038(P2017-101038)
(22)【出願日】2017年5月22日
(65)【公開番号】特開2018-194282(P2018-194282A)
(43)【公開日】2018年12月6日
【審査請求日】2020年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】592183514
【氏名又は名称】株式会社アサヒ産業
(74)【代理人】
【識別番号】100081709
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴若 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】飯田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 厚志
【審査官】
岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05558371(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/02
F16L 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のキャンバスと、
前記キャンバスの両端部に取り付けられる枠状のフランジと、を有するダクト用たわみ継手であり、
前記ダクト用たわみ継手の吸気側端部に、
ダクト用たわみ継手の吸気側端部に挿入する継手用短管を備え、
前記ダクト用たわみ継手と、前記継手用短管は、共に送風機に締め付けて取り付ける構成であり、
前記継手用短管は、
前記吸気側端部に取り付けられる枠状のフランジと共に組み付けられる取付鍔部と、
前記吸気側端部に対向する管部と、を有し、
前記管部の径は、前記吸気側端部の径より小径であり、
前記管部は、内壁面に主吸気通路を形成すると共に、外壁面と前記吸気側端部の内壁面との間に補助吸気通路を形成し、
前記取付鍔部に、前記補助吸気通路に対向する位置に補助吸気を流す通孔を形成し、
前記管部は、前記吸気側端部が吸気の吸引力によりたわむ部分に対向する軸方向の長さに対応し、前記吸気側端部が吸い込まれることを規制する長さであることを特徴とするダクト用たわみ継手。
【請求項2】
前記通孔は、等間隔に配置される円形状、または枠状のフランジに沿う形状であることを特徴とする請求項1に記載のダクト用たわみ継手。
【請求項3】
可撓性のキャンバスと、
前記キャンバスの両端部に取り付けられる枠状のフランジと、を有するダクト用たわみ継手と、
ダクト用たわみ継手の吸気側端部に挿入する継手用短管と、を用い、
前記ダクト用たわみ継手と、前記継手用短管は、共に送風機に締め付けて取り付ける構成であり、
前記継手用短管は、
前記吸気側端部に取り付けられる枠状のフランジと共に組み付けられる取付鍔部と、
前記吸気側端部に対向する管部と、を有し、
前記管部の径は、前記吸気側端部の径より小径であり、
前記管部の長さは、前記吸気側端部が吸気の吸引力によりたわむ部分に対向する軸方向の長さに対応し、前記吸気側端部が吸い込まれることを規制する長さであり、
前記ダクト用たわみ継手の吸気側端部に、前記継手用短管を挿入し、
前記ダクト用たわみ継手の吸気側端部を、前記枠状のフランジと前記継手用短管の取付鍔部を共に、前記送風機に取り付け、
前記継手用短管は、
前記管部は、内壁面に前記送風機に連通する主吸気通路を形成すると共に、外壁面と前記吸気側端部の内壁面との間に前記送風機に連通する補助吸気通路を形成し、
前記取付鍔部は、前記補助吸気通路に対向する位置に補助吸気を流す通孔を有し、
前記管部は、前記吸気側端部が前記送風機の吸気の吸引力によりたわみ、前記送風機に前記吸気側端部が吸い込まれることを規制することを特徴とするダクト用たわみ継手の取り付け方法。
【請求項4】
前記通孔は、等間隔に配置される円形状、または枠状のフランジに沿う形状であることを特徴とする請求項3に記載のダクト用たわみ継手の取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビル等の建築物内に空調や排煙等を目的に配設される継手用短管及びダクト用たわみ継手に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物内部に空調や排煙等を目的に配設される各種のダクトは、鋼板等を断面円形や矩形のパイプ状に加工し、これらを連続的につないで建築物の天井や壁に沿って緩みなく固定する剛体構造であるため、地震等を起因とする巨大な揺れを受けた場合に、建築物とダクトとが同方向に揺れる場合には問題はないが、建築物とダクトとが異なる方向に揺れた場合にはダクトに負荷がかかり、ダクトの接続部が損傷して本来の機能を損なう虞がある。
【0003】
そこで、伸縮性及び屈曲性を有するキャンバスで構成したダクト用たわみ継手が提案され(例えば、特許文献1参照)、このダクト用たわみ継手は、地震などによる変位を吸収するために設置され、剛体のダクトにこのようなたわみ継手を介装することにより、地震等を起因とする巨大な揺れを受けて建築物とダクトとが異なる方向に揺れた場合に、たわみ継手のキャンバスが揺れに合わせて横または縦あるいはその他の方向へとフレキシブルに変形して揺れに追随することにより、剛体のダクトには建築物と異なる方向の揺れが極力作用しないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−336892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなダクト用たわみ継手100は、
図9に示すように、例えば空調用送風機101などに組み付けて使用されることがある。この空調用送風機101などの駆動によって空気の流れが矢印方向に生じ、吸い込み(負圧)によってダクト用たわみ継手100の吸気側端部が吸い込まれる(
図9(a))。
【0006】
このように、ダクト用たわみ継手100の吸気側端部が吸い込まれると、吸気側端部が
潰れ(座屈)、この状態では正常な空気の流れが妨げられるなどの問題がる(
図9(b))。
【0007】
この発明は、この点に鑑みてなされたものであって、ダクト用たわみ継手の吸気側端部が吸い込まれることを防止し、空気の流れを正常化させる継手用短管及びダクト用たわみ継手を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。
【0009】
請求項1の記載の発明は、
可撓性のキャンバスと、
前記キャンバスの両端部に取り付けられる枠状のフランジと、を有するダクト用たわみ継手であり、
前記ダクト用たわみ継手の吸気側端部に、
ダクト用たわみ継手の吸気側端部に挿入する継手用短管を
備え、
前記ダクト用たわみ継手と、前記継手用短管は、共に送風機に締め付けて取り付ける構成であり、
前記継手用短管は、
前記吸気側端部に取り付けられる枠状のフランジと共に組み付けられる取付鍔部と、
前記吸気側端部に対向する管部と、を有し、
前記管部の径は、前記吸気側端部の径より小径であり、
前記管部は、内壁面に主吸気通路を形成すると共に、外壁面と前記吸気側端部の内壁面との間に補助吸気通路を形成し、
前記取付鍔部に、前記補助吸気通路に対向する位置に補助吸気を流す通孔を形成し、
前記管部は、前記吸気側端部が吸気の吸引力によりたわむ部分に対向する軸方向の長さに対応し、前記吸気側端部が吸い込まれることを規制する長さであることを特徴とする
ダクト用たわみ継手である。
【0010】
請求項2の記載の発明は、前記通孔は、等間隔に配置される円形状、または枠状のフランジに沿う形状であることを特徴とする請求項1に記載の
ダクト用たわみ継手である。
【0011】
請求項3の記載の発明は、
可撓性のキャンバスと、
前記キャンバスの両端部に取り付けられる枠状のフランジと、を有するダクト用たわみ継手と、
ダクト用たわみ継手の吸気側端部に挿入する継手用短管と、を用い、
前記ダクト用たわみ継手と、前記継手用短管は、共に送風機に締め付けて取り付ける構成であり、
前記継手用短管は、
前記吸気側端部に取り付けられる枠状のフランジと共に組み付けられる取付鍔部と、
前記吸気側端部に対向する管部と、を有し、
前記管部の径は、前記吸気側端部の径より小径であり、
前記管部の長さは、前記吸気側端部が吸気の吸引力によりたわむ部分に対向する軸方向の長さに対応し、前記吸気側端部が吸い込まれることを規制する長さであり、
前記ダクト用たわみ継手の吸気側端部に、前記継手用短管を挿入し、
前記ダクト用たわみ継手の吸気側端部を、前記枠状のフランジと前記継手用短管の取付鍔部を共に、前記送風機に取り付け、
前記継手用短管は、
前記管部は、内壁面に前記送風機に連通する主吸気通路を形成すると共に、外壁面と前記吸気側端部の内壁面との間に前記送風機に連通する補助吸気通路を形成し、
前記取付鍔部は、前記補助吸気通路に対向する位置に補助吸気を流す通孔を有し、
前記管部は、前記吸気側端部が前記送風機の吸気の吸引力によりたわみ、前記送風機に前記吸気側端部が吸い込まれることを規制することを特徴とするダクト用たわみ継手の取り付け方法である。
【0012】
請求項4の記載の発明は、前記通孔は、等間隔に配置される円形状、または枠状のフランジに沿う形状であることを特徴とする請求項3に記載の
ダクト用たわみ継手の取り付け方法である。
【発明の効果】
【0013】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0014】
請求項1乃至請求項
4に記載の発明では、
ダクト用たわみ継手と、継手用短管は、共に送風機に締め付けて取り付ける構成であり、簡単な構造で、ダクト用たわみ継手の吸気側端部が吸い込まれることを防止し、ダクト用たわみ継手の全体の形状を安定させ、空気の流れを正常化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】ダクト用たわみ継手の吸気側端部の開口側から見た図である。
【
図3】
図1(a)のIII−III線に沿う断面図である。
【
図8】空調用送風機などに組み付けて駆動状態を示す図である。
【
図9】従来のダクト用たわみ継手を空調用送風機などに組み付けて使用する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の継手用短管及びダクト用たわみ継手の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0017】
この実施の形態の継手用短管及びダクト用たわみ継手を、
図1乃至
図8に基づいて説明する。
図1はダクト用たわみ継手の側面図、
図2はダクト用たわみ継手の吸気側端部の開口側から見た図、
図3は
図1(a)のIII−III線に沿う断面図、
図4は円形の継手用短管を示す図、
図5は継手用短管の組み付けを示す断面図、
図6は矩形の継手用短管を示す図、
図7は通孔の実施の形態を示す図、
図8は空調用送風機などに組み付けて駆動状態を示す図である。
【0018】
(ダクト用たわみ継手の構成)
この実施の形態のダクト用たわみ継手10は、筒状の可撓性のキャンバス11と、キャンバス11の両端部に取り付けられる枠状のフランジ12と、を有する。キャンバス11は、伸縮性及び屈曲性を有し、例えば、表面にアルミ箔等の耐火処理を施した不燃性のクロスや、ポリエステル繊維などの化繊に塩化ビニルやオレフィン樹脂,ゴムをコーティングしたいわゆるターポリンと称するクロス、あるいはガラス繊維などに同様の樹脂やゴムをコーティングしたクロスを材料に断面矩形の筒状に形成し、このクロスに補強用の金属製心材を等ピッチで配することにより、蛇腹状に伸縮したり屈曲できるようにしている。
【0019】
キャンバス11には、
図1及び
図3に示すように、軸方向に所定間隔で補強線13が設けられ、補強線13によりキャンバス11を補強してダクト用たわみ継手10の全体の形状を安定させている。補強線13は、
図1(a)の実施の形態では、ダクト用たわみ継手10の全体に等間隔で設けられているが、
図1(b)の実施の形態では、吸気側端部10aが間隔を小さくして設けられており、例えば空調用送風機などの駆動による吸い込み(負圧)に耐えるように補強している。
【0020】
枠状のフランジ12は、金属製のアングルフランジが用いられ、アングル12a,12bを有する。アングル12aは、キャンバス11の端部にリベット14により固着され、アングル12bは、ボルト孔12cにボルト15を挿入し、このボルト15によりガスケット16a,16bを介して空調用送風機101などに組み付けられる。
【0021】
(継手用短管の構成)
この実施の形態の継手用短管20は、ダクト用たわみ継手10の吸気側端部10aに挿入する短管であり、亜鉛引き鋼板などの金属、または強化樹脂などで形成される。
【0022】
継手用短管20は、
図5に示すように、吸気側端部10aに取り付けられる枠状のフランジ12と共に組み付けられる取付鍔部20aと、吸気側端部10aに対向する管部20bとを有する。管部20bの径D1は、吸気側端部10bの径D2より小径である。
【0023】
管部20bは、内壁面に主吸気通路30を形成する共に、外壁面と吸気側端部10bの内壁面との間に補助吸気通路31を形成する。取付鍔部20aには、補助吸気通路31に対向する位置に補助吸気を流す通孔20cを形成し、取付孔20dが形成されている。
【0024】
ダクト用たわみ継手10は、吸気側端部10aに継手用短管20を挿入して組み付ける構成である。継手用短管20の管部20bは、
図1及び
図5に示すように、少なくともダクト用たわみ継手10の吸気側端部10aが吸気の吸引力によりたわむ部分に対向する軸方向の長さL1であり、管部20bの軸方向の長さL1によって吸気側端部10aが吸気の吸引力により吸い込まれることを防止する。管部20bの軸方向の長さL1は、吸気側端部10aが吸気の吸引力によりたわむ部分と同じ長さでなく、短くてもよく、長くてもよいが、少なくとも同じ長さが好ましい。
【0025】
ダクト用たわみ継手10は、断面円形状でもよく、断面矩形形状でもよい。継手用短管20もダクト用たわみ継手10に応じて、
図4に示す円形状でもよく、
図6に示す矩形形状でもよい。
【0026】
継手用短管20に形成される通孔20cは、
図4及び
図6に示す等間隔に配置される枠状のフランジに沿う形状でもよく、
図7に示す等間隔に配置される円形状でもよく、通孔20cは、補助吸気を均等に流す構成である。
【0027】
ダクト用たわみ継手10は、
図8に示すように、吸気側端部10aに継手用短管20を挿入し、例えば空調用送風機101などに組み付けて使用される。継手用短管20は、内壁面に主吸気通路30を形成する共に、外壁面と吸気側端部10aの内壁面との間に補助吸気通路31を形成する。空調用送風機101の駆動によって、空気の流れが主吸気通路30を流れるともに、補助吸気通路31に補助吸気を流すことができる。この補助吸気通路31に補助吸気が流れることで、ダクト用たわみ継手10の吸気側端部10aが吸い込まれることを防止し、ダクト用たわみ継手10の全体の形状を安定させ、空気の流れを正常化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明は、ビル等の建築物内に空調や排煙等を目的に配設される継手用短管及びダクト用たわみ継手に適用可能であり、ダクト用たわみ継手の吸気側端部が吸い込まれることを防止し、空気の流れを正常化させる。
【符号の説明】
【0029】
10 ダクト用たわみ継手
10a 吸気側端部
11 筒状の可撓性のキャンバス
12 枠状のフランジ
12a,12b アングル
13 補強線
20 継手用短管
20a 取付鍔部
20b 管部
20c 通孔
30 主吸気通路
31 補助吸気通路