特許第6893405号(P6893405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893405
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】作業車両の停止システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/02 20200101AFI20210614BHJP
   A01B 69/00 20060101ALI20210614BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20210614BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20210614BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   G05D1/02 R
   A01B69/00 303A
   A01B69/00 303J
   G08G1/00 X
   G08G1/09 F
   G08G1/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-195424(P2016-195424)
(22)【出願日】2016年10月3日
(65)【公開番号】特開2018-60261(P2018-60261A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2018年12月26日
【審判番号】不服2020-13329(P2020-13329/J1)
【審判請求日】2020年9月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(72)【発明者】
【氏名】東郷 学
(72)【発明者】
【氏名】森岡 保光
【合議体】
【審判長】 刈間 宏信
【審判官】 河端 賢
【審判官】 田々井 正吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0110322(US,A1)
【文献】 特開2001−337724(JP,A)
【文献】 特開2015−112069(JP,A)
【文献】 特開2016−097853(JP,A)
【文献】 特開2016−095661(JP,A)
【文献】 特開平1−222708(JP,A)
【文献】 特開2013−45290(JP,A)
【文献】 特開平9−146635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を発信する無線発信装置と、
作業車両に設けられ、前記無線発信装置から発信された無線信号を受信可能な無線受信装置と、
前記無線受信装置により受信された無線信号の受信強度が所定の閾値未満となった場合、前記作業車両の走行を停止させる停止制御を行う制御装置と、
を具備し、
前記制御装置は、
前記停止制御を行うと共に、前記作業車両の走行を禁止する走行禁止制御を行い、
前記作業車両は、
自動走行可能かつ手動走行可能であり、
前記制御装置は、
前記走行禁止制御において、前記作業車両の自動走行及び手動走行を禁止し、
前記制御装置は、
前記停止制御を行った後に、前記無線受信装置により受信された無線信号の受信強度が前記所定の閾値よりも大きく設定された閾値以上となった場合、前記作業車両の走行を許可する走行許可制御を行う、
作業車両の停止システム。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記作業車両が自動走行を行っている際に前記停止制御を行う、
請求項1に記載の作業車両の停止システム。
【請求項3】
前記作業車両に設けられる報知装置をさらに具備し、
前記制御装置は、
前記停止制御において、前記報知装置を作動させる、
請求項1又は請求項2に記載の作業車両の停止システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の走行を停止させる作業車両の停止システムの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業車両の走行を停止させる作業車両の停止システムの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1には、設定した走行経路に沿って自動的に走行及び作業をさせる制御装置を備えた作業車両が記載されている。当該制御装置は、作業時にカメラで撮影された映像を画像処理して、予め記憶させた正常作業映像と比較し、異なる画像データが得られると、異常と判断し、作業車両の走行を停止させる。これによって、作業車両による作業不良や、当該作業車両の損傷の発生を抑制することができる。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、作業車両による作業状態を撮影し、当該作業に異常が発生した場合に作業車両の走行を停止させるものであり、作業車両の走行に異常が発生した場合に当該作業車両の走行を停止させるものではない。このため、特許文献1に記載の技術では、作業車両が何らかの理由(異常等)で、予め設定された走行経路を外れて走行した場合には、当該作業車両を停止させることができず、当該作業車両が圃場の外へと出てしまうおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−95661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、作業車両が所定の範囲外へと出た場合に、当該作業車両を停止させることが可能な作業車両の停止システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、無線信号を発信する無線発信装置と、作業車両に設けられ、前記無線発信装置から発信された無線信号を受信可能な無線受信装置と、前記無線受信装置により受信された無線信号の受信強度が所定の閾値未満となった場合、前記作業車両の走行を停止させる停止制御を行う制御装置と、を具備し、前記制御装置は、前記停止制御を行うと共に、前記作業車両の走行を禁止する走行禁止制御を行い、前記作業車両は、自動走行可能かつ手動走行可能であり、前記制御装置は、前記走行禁止制御において、前記作業車両の自動走行及び手動走行を禁止し、前記制御装置は、前記停止制御を行った後に、前記無線受信装置により受信された無線信号の受信強度が前記所定の閾値よりも大きく設定された閾値以上となった場合、前記作業車両の走行を許可する走行許可制御を行うものである。
【0012】
請求項においては、前記制御装置は、前記作業車両が自動走行を行っている際に前記停止制御を行うものである。
【0013】
請求項においては、前記作業車両に設けられる報知装置をさらに具備し、前記制御装置は、前記停止制御において、前記報知装置を作動させるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、作業車両が所定の範囲外へと出た場合に、当該作業車両を停止させることができる。これにより、想定しない領域での走行作業を行えないようにすることができる。また、所定の範囲外へ出た作業車両の走行を停止させることで、盗難防止として活用することができる。また、作業車両が所定の範囲外へと出た場合に、当該作業車両の走行を禁止することができる。これにより、想定しない領域での走行作業をより確実に行えないようにすることができる。また、盗難防止としてより有効に活用することができる。また、作業車両が所定の範囲内へと戻った場合には、当該作業車両の走行を再開させることができる。
【0019】
請求項においては、自動走行中に不具合等が発生し、作業車両が所定の範囲外へと出た場合であっても、当該作業車両を停止させることができる。また、想定しない領域での自動走行作業を強制的に停止させることができる。
【0020】
請求項においては、作業車両が所定の範囲外へと出たことを報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】トラクタの各部の構成を示した平面概略図。
図2】停止システムの構成を示したブロック図。
図3】トラクタが所定の範囲内で走行する様子、及び所定の範囲外で停止する様子を示した模式図。
図4】停止システムによる制御を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、図1を用いて、本発明の実施の一形態に係る停止システム100が適用されるトラクタ1の全体構成について説明する。
【0023】
トラクタ1は、主として前輪2・2、後輪3・3、エンジン4、変速機構5、運転操作部6、キャビン7及び走行制御機構10を具備する。
【0024】
トラクタ1の車体の前部はフロントアクスルを介して左右一対の車輪(前輪2・2)に支持される。当該車体の後部はリアアクスルを介して左右一対の車輪(後輪3・3)に支持される。当該車体の前部にはエンジン4が設けられる。当該車体の後部には変速機構5(トランスミッション)が設けられる。
【0025】
エンジン4の動力は、変速機構5で変速された後、フロントアクスルを経て前輪2・2に伝達可能とされると共に、リアアクスルを経て後輪3・3に伝達可能とされる。エンジン4の動力によって前輪2・2及び後輪3・3が回転駆動され、トラクタ1が走行する。
【0026】
トラクタ1の車体の前後中途部から後部にかけては、作業者が搭乗してトラクタ1を操作するための運転操作部6が設けられる。運転操作部6には、作業者がトラクタ1の操向操作を行うためのステアリングホイール6a、座席(不図示)等が設けられる。運転操作部6は、キャビン7によって覆われる。
【0027】
トラクタ1の各部には、走行制御機構10を構成する各部材が設けられる。以下では、図1及び図2を用いて、走行制御機構10の構成について説明する。
【0028】
走行制御機構10は、トラクタ1の走行に関する制御を行うものである。走行制御機構10は、主としてアクセルセンサ12、変速位置検出センサ14、GPS受信装置30、変速電磁バルブ32、エンジンECU42及び本機ECU44を具備する。
【0029】
アクセルセンサ12は、エンジン4の回転数の目標値(目標回転数)を変更操作するためのアクセル操作具(アクセルペダルやアクセルレバー等)の操作位置を検出するものである。前記アクセル操作具は、運転操作部6の作業者が操作可能な位置に設けられる。アクセルセンサ12は、当該アクセル操作具の操作位置を検出可能な位置(例えば、当該アクセル操作具の回動基端部)に設けられる。
【0030】
変速位置検出センサ14は、変速機構5を変速操作するための変速操作具(主変速レバーや副変速レバー等)の操作位置を検出するものである。前記変速操作具は、運転操作部6の作業者が操作可能な位置に設けられる。変速位置検出センサ14は、当該変速操作具の操作位置を検出可能な位置(例えば、当該変速操作具の回動基端部)に設けられる。
【0031】
GPS受信装置30は、GPS衛星からの信号を受信し、トラクタ1の現在位置を検出するものである。GPS受信装置30は、キャビン7の上部に設けられる。
【0032】
変速電磁バルブ32は、変速機構5に設けられた変速用の油圧クラッチの動作を制御し、ひいては当該変速機構5を変速操作するものである。変速電磁バルブ32は変速機構5の近傍に設けられる。
【0033】
なお、図中には1つの変速電磁バルブ32を図示しているが、実際には変速機構5に設けられた複数の油圧クラッチにそれぞれ対応して複数の変速電磁バルブ32が設けられる。
【0034】
エンジンECU42は、エンジン4のコモンレールシステムの情報を管理すると共に、接続された各機器の動作を制御するものである。エンジンECU42は、トラクタ1の車体の前部に設けられる。エンジンECU42は、記憶部、演算処理部等により構成される。エンジンECU42には、エンジン4のコモンレールシステムを制御するためのプログラムや種々のデータが記憶される。
【0035】
エンジンECU42はエンジン4の各部(より詳細には、サプライポンプ、レール、インジェクタ、各種センサ等(不図示))に接続され、当該エンジン4の動作(回転数等)を制御することができる。
【0036】
本機ECU44は、走行制御機構10の情報を管理すると共に、接続された各機器の動作を制御するものである。本機ECU44は運転操作部6に設けられる。本機ECU44は、記憶部、演算処理部等により構成される。本機ECU44には、走行制御機構10を制御するためのプログラムや種々のデータが記憶される。
【0037】
本機ECU44はアクセルセンサ12に接続され、前記アクセル操作具の操作位置についての情報を受信することができる。
本機ECU44は変速位置検出センサ14に接続され、前記変速操作具の操作位置についての情報を受信することができる。
本機ECU44はGPS受信装置30に接続され、トラクタ1の現在位置についての情報を受信することができる。
【0038】
本機ECU44は変速電磁バルブ32に接続され、当該変速電磁バルブ32の動作を制御することができる。
【0039】
本機ECU44はエンジンECU42に接続され、当該エンジンECU42を介してエンジン4に関する各種の情報を送受信することができる。
【0040】
なお、本機ECU44は1体だけでなく、複数体(メインのECUと、サブのECU等)で構成することも可能である。
また、本機ECU44とエンジンECU42を、1体のECUで構成することも可能である。
【0041】
以下では、上述の如く構成された走行制御機構10によってトラクタ1が走行する様子について説明する。トラクタ1は、作業者が実際に操作することによって走行を行う「手動走行」、及び、作業者の操作によらず自動的に走行を行う「自動走行」を行うことができる。当該手動走行及び自動走行は、トラクタ1に設けられた図示せぬスイッチ等により切り替えることができる。以下、トラクタ1の手動走行及び自動走行についてそれぞれ説明する。
【0042】
トラクタ1が手動走行を行う場合、作業者がトラクタ1の運転操作部6に搭乗し、当該トラクタ1の運転操作を行う。具体的には、作業者は、前記アクセル操作具、前記変速操作具等の操作を行う。
【0043】
本機ECU44は、アクセルセンサ12から前記アクセル操作具の操作位置についての情報を受信すると、当該情報に基づいて、エンジンECU42を介してエンジン4の動作(回転数等)を制御する。また本機ECU44は、変速位置検出センサ14から前記変速操作具の操作位置についての情報を受信すると、当該情報に基づいて変速電磁バルブ32の動作(ひいては、変速機構5)を制御する。
【0044】
このように、トラクタ1が手動走行を行う場合、本機ECU44は作業者の操作に応じてエンジン4や変速機構5の制御を行う。なお、説明は省略するが、その他にも、本機ECU44は、作業者によるブレーキ操作や操向操作等に応じて、トラクタ1の制動や操向等を制御する。
【0045】
また、トラクタ1が自動走行を行う場合、作業者がトラクタ1に搭乗する必要はなく、本機ECU44は、予め設定されたプログラム等に従って、エンジン4や変速機構5の制御を行う。また本機ECU44は、予め設定されたプログラム等に従って、トラクタ1の制動や操向等を行う。
【0046】
このようにして、トラクタ1は、予め設定された経路や範囲(例えば、所定の圃場等)に応じた走行を自動的に行うことができる。なお、本機ECU44は、GPS受信装置30を用いてトラクタ1の現在位置を検出することで、予め設定された経路や範囲を逸脱しないように走行することができる。
【0047】
以下では、図1から図3までを用いて、停止システム100の構成について説明する。
【0048】
停止システム100は、所定の場合にトラクタ1の走行を自動的に停止させるためのものである。停止システム100は、主として無線発信装置101、無線受信装置102及び警報ブザー103、並びに前述の走行制御機構10を具備する。
【0049】
無線発信装置101は、無線信号を発信するものである。無線発信装置101は、トラクタ1が使用される圃場等に設置される。具体的には、無線発信装置101は、トラクタ1が使用される圃場等の略中央部に設置される。
【0050】
無線受信装置102は、無線発信装置101から発信された無線信号を受信するものである。無線受信装置102は、トラクタ1に設けられる。具体的には、無線受信装置102は、無線発信装置101からの無線信号を受信し易いように、キャビン7の上部に設けられる。無線受信装置102は、受信した無線信号の強度(受信信号強度)を検出するための回路を有している。
【0051】
警報ブザー103は、後述するように、トラクタ1が所定の範囲Rの外に出てしまった場合(図3参照)、その旨を作業者に報知するためのものである。警報ブザー103は所定の音(警告音)を発することができる。警報ブザー103はキャビン7の上部に設けられる。
【0052】
走行制御機構10の本機ECU44は無線受信装置102に接続され、当該無線受信装置102が受信した無線信号の強度(受信信号強度)についての情報を取得することができる。
また本機ECU44は警報ブザー103に接続され、当該警報ブザー103の動作(警告音のON/OFFの切り換え)を制御することができる。
【0053】
以下では、図3及び図4を用いて、上述の如く構成された停止システム100による制御(トラクタ1を自動的に停止させるための制御)の一例について説明する。当該制御は、トラクタ1が手動走行又は自動走行を行っている際に実行される。
【0054】
図4のステップS101において、本機ECU44は、無線受信装置102により検出された受信信号強度が所定の閾値未満であるか否かを判定する。当該所定の閾値は、予め設定され、本機ECU44に記憶されている。
【0055】
ここで、無線受信装置102により検出される受信信号強度は、無線発信装置101と無線受信装置102(すなわち、トラクタ1)との距離が離れれば離れるほど小さくなる。従って、当該受信信号強度が所定の閾値未満であるか否かを判定することで、トラクタ1が所定の範囲R内にいるか(図3のトラクタ1A参照)、当該所定の範囲R外に出てしまったか(図3のトラクタ1B参照)を判定することができる。
【0056】
本実施形態においては、無線発信装置101が発信する無線信号の強度や、前記所定の閾値の値を適宜変更することで、トラクタ1が走行すべき範囲を出てしまった場合(例えば、作業を行っている圃場の外に出た場合)に、受信信号強度が前記所定の閾値未満となるように設定されている。このように設定することで、ステップS101の処理によって、トラクタ1が圃場の外に出たことを検出することができる。
【0057】
本機ECU44は、無線受信装置102により検出された受信信号強度が所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS101でYes)、ステップS102に移行する。
また本機ECU44は、無線受信装置102により検出された受信信号強度が所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS101でNo)、ステップS101の処理を再度行う。
【0058】
ステップS102において、本機ECU44は、トラクタ1の走行を停止させる。具体的には、本機ECU44は、エンジンECU42を介してエンジン4を停止させたり、変速電磁バルブ32の動作を制御して変速機構5による動力の伝達を遮断させるなどして、トラクタ1の走行を停止させる。
【0059】
また、本機ECU44は、当該ステップS102において、後述するステップS106の処理を行うまでは、トラクタ1の走行(手動走行及び自動走行)を禁止する。すなわち、作業者が図示せぬキースイッチを操作してエンジン4を始動させようとしたり、前記変速操作具を操作して変速機構5を変速させようとしたりしても、本機ECU44はエンジン4の始動や変速機構5の変速を行わない。
【0060】
本機ECU44は、当該ステップS102の処理を行った後、ステップS103に移行する。
【0061】
ステップS103において、本機ECU44は、警報ブザー103を作動させ、警告音を発生させる。これによって、作業者(トラクタ1に搭乗している作業者や、トラクタ1の自動走行を監視している作業者等)に、トラクタ1が所定の範囲Rの外に出てしまったことを報知することができる。
【0062】
本機ECU44は、当該ステップS103の処理を行った後、ステップS104に移行する。
【0063】
ステップS104において、本機ECU44は、無線受信装置102により検出された受信信号強度が前記所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0064】
ここで、当該受信信号強度が所定の閾値以上であるか否かを判定することで、トラクタ1が所定の範囲R内に戻ったことを検出することができる。本実施形態においては、ステップS104の処理によって、トラクタ1が圃場の中に戻ったことを検出することができる。
【0065】
なお、トラクタ1を所定の範囲R内に戻す方法としては、作業者が当該トラクタ1を押して戻す方法等が想定される。
【0066】
本機ECU44は、無線受信装置102により検出された受信信号強度が前記所定の閾値以上であると判定した場合(ステップS104でYes)、ステップS105に移行する。
また本機ECU44は、無線受信装置102により検出された受信信号強度が前記所定の閾値未満であると判定した場合(ステップS104でNo)、ステップS104の処理を再度行う。
【0067】
ステップS105において、本機ECU44は、警報ブザー103を停止させ、警告音の発生を停止させる。
【0068】
本機ECU44は、当該ステップS105の処理を行った後、ステップS106に移行する。
【0069】
ステップS106において、本機ECU44は、トラクタ1の走行(手動走行及び自動走行)を許可する。すなわち、トラクタ1が手動走行を行っていた場合には、作業者の操作によってエンジン4を始動させたり変速機構5を変速させたりすることができるようになる。またトラクタ1が自動走行を行っていた場合には、当該本機ECU44は自動走行を再開する。
【0070】
以上のように、トラクタ1が所定の範囲Rの外に出た場合に当該トラクタ1の走行を停止させることで(ステップS101でYes、ステップS102)、トラクタ1を必要な範囲(例えば、圃場等)でのみ走行させることができる。これによって、トラクタ1が自動走行を行っている最中に不具合(例えば、GPS受信装置30の不具合等)が発生した場合であっても、当該トラクタ1が所定の範囲Rを超えて走行してしまうのを防止することができる。またトラクタ1が手動走行を行っている最中に作業者のミスによって所定の範囲Rを超えてしまった場合にも、トラクタ1を停止させて当該ミスを作業者に認識させることができる。
【0071】
特に本実施形態においては、トラクタ1を停止させた場合には(ステップS102)、警報ブザー103を用いてその旨を作業者に報知するようにしている。これによって、トラクタ1が所定の範囲Rの外に出てしまったことを、作業者により確実に認識させることができる。
【0072】
また、トラクタ1が再度所定の範囲R内に戻るまでは、本機ECU44はトラクタ1の走行を許可しない(ステップS104でNo)。これによって、トラクタ1を所定の範囲R内でのみ走行させることができる。またトラクタ1が再度所定の範囲R内に戻った場合には、本機ECU44はトラクタ1の走行を許可することで(ステップS104でYes、ステップS105、ステップS106)、当該トラクタ1による作業を速やかに再開させることができる。
【0073】
以上の如く、本実施形態に係るトラクタ1(作業車両)の停止システム100は、
所定の位置に設置され、無線信号を発信する無線発信装置101と、
トラクタ1に設けられ、無線発信装置101から発信された無線信号を受信可能な無線受信装置102と、
無線受信装置102により受信された無線信号の受信強度が所定の閾値未満となった場合、トラクタ1の走行を停止させる停止制御(ステップS101からステップS103まで)を行う本機ECU44(制御装置)と、
を具備するものである。
このように構成することにより、トラクタ1が所定の範囲R外へと出た場合に、当該トラクタ1を停止させることができる。また、このようなトラクタ1を自動的に停止させる制御を、簡素な構成で実現することができる。また、例えばトラクタ1が盗難されそうになった場合であっても、所定の範囲R外では当該トラクタ1は走行不可能となるため、当該トラクタ1の盗難を防止することができる。
【0074】
また、本機ECU44は、
前記停止制御を行うと共に、トラクタ1の走行を禁止する走行禁止制御を行うものである(ステップS102)。
このように構成することにより、トラクタ1が所定の範囲外へと出た場合に、当該トラクタ1の走行を禁止することができる。これにより、想定しない領域での走行作業をより確実に行えないようにすることができる。
【0075】
また、本機ECU44は、
前記停止制御を行った後に、無線受信装置102により受信された無線信号の受信強度が前記所定の閾値以上となった場合、トラクタ1の走行を許可する走行許可制御(ステップS104からステップS106まで)を行うものである。
このように構成することにより、トラクタ1が所定の範囲R内へと戻った場合には、当該トラクタ1の走行を再開させることができる。
【0076】
また、トラクタ1は、
自動走行可能であり、
本機ECU44は、
トラクタ1が自動走行を行っている際に前記停止制御を行うものである。
このように構成することにより、自動走行中に不具合等が発生し、トラクタ1が所定の範囲R外へと出た場合であっても、当該トラクタ1を停止させることができる。
【0077】
また、停止システム100は、
トラクタ1に設けられる警報ブザー103(報知装置)をさらに具備し、
本機ECU44は、
前記停止制御において、警報ブザー103を作動させる(ステップS103)ものである。
このように構成することにより、トラクタ1が所定の範囲R外へと出たことを報知することができる。
【0078】
なお、本実施形態に係るトラクタ1は、本発明に係る作業車両の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る本機ECU44は、本発明に係る制御装置の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る警報ブザー103は、本発明に係る報知装置の実施の一形態である。
【0079】
以上、実施形態について説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。以下、具体的に説明する。
【0080】
本実施形態においては、停止システム100が適用される作業車両の一例としてトラクタ1を挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではなく、種々の作業車両に適用することが可能である。例えば、モーアを備えた草刈機、田植機、コンバイン等にも適用可能である。また、作業車両は、無人走行を前提とするもの(作業者が搭乗できないもの)、具体的には、自動走行のみ行うものや、リモートコントローラにより操作されるもの等であってもよい。
【0081】
また、トラクタ1(作業車両)はエンジンにより駆動するものに限らず、例えばモータにより駆動するものであってもよい。この場合、本機ECU44(制御装置)は、当該モータを制御することで、トラクタ1を停止させることができる。
【0082】
また、トラクタ1はGPS受信装置30を用いて現在位置を検出しながら自動走行を行うものとしたが、トラクタ1の自動走行の方法はこれに限るものではなく、適宜の方法を用いることができる。例えば、予め圃場等に設置された目標物を基準としてトラクタ1の現在位置を検出し、自動走行を行うものであってもよい。
【0083】
また、無線発信装置101が発信する無線信号の強度や、前記所定の閾値の値は適宜変更可能となるように構成してもよい。これによって、所定の範囲Rを任意に設定することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態においては報知装置として警報ブザー103を用いるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、報知装置として、発光可能なランプや、所定の映像を表示させる表示装置等を用いることも可能である。
【0085】
また、本実施形態においては、トラクタ1が手動走行又は自動走行を行っている際に、停止制御を行うものとしたが、例えばトラクタ1が自動走行を行っている場合にのみ、停止制御を行うことも可能である。
【0086】
また、本実施形態においては、停止制御においてトラクタ1を停止させる場合(ステップS102)、エンジン4を停止させたり変速機構5による動力の伝達を遮断させたりする例を示したが、これに加えて、トラクタ1の制動装置(ブレーキ)を作動させることも可能である。これによって、より確実にトラクタ1を停止させることができる。
【0087】
また、本実施形態においては、トラクタ1が所定の範囲Rから出て停止した場合には、作業者が当該トラクタ1を所定の範囲R内へと押し戻すものとしたが、停止したトラクタ1を所定の範囲R内へと戻す方法はこれに限るものではない。例えば、トラクタ1が停止した場合(停止制御された場合)であっても操作が有効となるように設定された操作具(リモートコントローラ等)を用いて、トラクタ1を操作して所定の範囲R内へと戻す構成とすることも可能である。これによって、トラクタ1を容易に所定の範囲R内へと戻すことができる。
【0088】
また、本実施形態においては、トラクタ1が所定の範囲Rから出て停止した場合には、再びトラクタ1が所定の範囲R内へと戻される(受信電波強度が所定の閾値以上になる)まで、当該トラクタ1の走行が禁止されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、トラクタ1が所定の範囲Rから出てエンジン4が停止されても、当該トラクタ1の走行が禁止されることなく、その場ですぐにエンジン4を始動させることが可能となるように構成することも可能である。このように構成することで、トラクタ1を走行させて所定の範囲Rへと容易に戻すことができる。
【0089】
また、本実施形態においては、ステップS101で用いた所定の閾値とステップS104で用いた所定の閾値は同じ値であるものとして説明したが、本発明はこれに限るものではなく、異なる値に設定することも可能である。例えば、ステップS104で用いる閾値を、ステップS101で用いる閾値よりも大きく設定することで、トラクタ1がより確実に所定の範囲R内に戻った場合に走行を許可することができる。
【0090】
また、本実施形態においては、トラクタ1が所定の範囲Rから出て停止した場合には、当該トラクタ1の走行(手動走行及び自動走行)が禁止されるものとしたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、トラクタ1が所定の範囲Rから出て停止した場合には、トラクタ1の走行(手動走行及び自動走行)のうち、自動走行のみを禁止するように構成することも可能である。
このように構成することにより、トラクタ1が所定の範囲外へと出た場合に、当該トラクタ1の自動走行を禁止することができる。これにより、想定しない領域での自動走行作業をより確実に行えないようにすることができる。
【符号の説明】
【0091】
1 トラクタ
10 走行制御機構
44 本機ECU
100 停止システム
101 無線発信装置
102 無線受信装置
103 警報ブザー
図1
図2
図3
図4