(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893412
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】強膜内固定バッグ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】11
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-519706(P2016-519706)
(86)(22)【出願日】2014年6月16日
(65)【公表番号】特表2016-521632(P2016-521632A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】US2014042458
(87)【国際公開番号】WO2014204827
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2017年6月15日
(31)【優先権主張番号】13/918,970
(32)【優先日】2013年6月16日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518177043
【氏名又は名称】ヴィジョンケア、インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100172041
【弁理士】
【氏名又は名称】小畑 統照
(72)【発明者】
【氏名】アハロニ,エリ
【審査官】
高田 元樹
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−534427(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0148022(US,A1)
【文献】
米国特許第04409690(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハプティック(12)を備える強膜内固定バッグ(10)であって、前記ハプティック(12)が前記強膜内固定バッグ(10)から延び、前記ハプティック(12)の各々が、近位端が前記強膜内固定バッグ(10)に取り付けられた細長いループ要素(14)を備え、前記細長いループ要素(14)は、長さ、幅、および厚さを有し、前記長さは、湾曲した経路を辿り、前記幅は、前記強膜内固定バッグ(10)の中央前後軸(18)に対してほぼ平行であり、前記厚さは、前記細長いループ要素の内側面と外側面との間の距離であり、前記細長いループ要素は、前記内側面と前記外側面との間に延びる前面と後面とを有する、強膜内固定バッグ(10)と、
前記細長いループ要素(14)の遠位端から延びる遠位フック部分(20)であって、前記細長いループ要素(14)の前記前面から連続して延びるフック前面と、前記細長いループ要素(14)の前記後面から連続して延びるフック後面と、前記細長いループ要素(14)の前記内側面から連続して延びるフック内側面と、前記細長いループ要素(14)の前記外側面から連続して延びるフック外側面と、を備え、前記フック内側面と前記フック外側面との距離である前記遠位フック部分(20)の厚さは、前記細長いループ要素における前記厚さよりも大きい厚さへと徐々に広がり、前記フック内側面が前方を向いて前記フック外側面が後方を向くように前記遠位フック部分(20)の長さ方向における軸回りに傾いている、遠位フック部分(20)と、を備える、眼内装置。
【請求項2】
前記遠位フック部分(20)が、その遠位先端部において丸められている、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項3】
前記遠位フック部分(20)の前記フック前面と前記フック後面とが平坦である、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項4】
前記細長いループ要素(14)の前記厚さが、前記幅より小さい、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項5】
前記遠位フック部分(20)が、中央貫通穴(26)を備えて形成される、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項6】
前記遠位フック部分(20)および前記細長いループ要素(14)が、異なる剛性を有する、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項7】
前記遠位フック部分(20)の最前部の表面が、前記眼内装置の最前部の表面の後方にない、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項8】
前記強膜内固定バッグ(10)が、異なる眼内装置を中に受け入れるための溝(30)を備える、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項9】
後方プラットフォーム(32)が、前記強膜内固定バッグ(10)に取り付けられる、請求項1に記載の眼内装置。
【請求項10】
前記後方プラットフォーム(32)が、環状溝(34)を備えて形成される、請求項9に記載の眼内装置。
【請求項11】
前記後方プラットフォーム(32)が、屈折力を有する、請求項9に記載の眼内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、眼内装置に関し、詳細には、とりわけ、無傷の水晶体嚢が存在しないときに眼内レンズ(IOL)を中に装着するために使用され得る強膜内固定バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な白内障手術では、天然レンズは、水晶体超音波乳化吸引によって眼球から取り除かれる。レンズ材料は、細かくされ、眼球から吸引されるが、水晶体嚢は、ほぼ無傷のままに残される。残った水晶体嚢は、見込まれる視力調節のためにチン小帯および毛様体筋によって作用され得るIOLを収容し支持するので、非常に重要である。
【0003】
しかし、水晶体嚢は、IOLに対して十分な支持を常に提供しているわけではない。深刻なチン小帯裂開またはレンズ亜脱臼を有する眼球に対して白内障手術を実施するとき、外科医は、適切な水晶体嚢の支持無しに眼内レンズ(IOL)を定着させる手術技法を採用する必要がある。いくつかの方法が、不十分な水晶体嚢支持の問題に対処するために外科医によって採用されている。1つの方法は、オープンループ前眼房IOLの移植である。別の方法は、後眼房IOLの虹彩縫合固定または強膜縫合固定を伴う。さらに別の方法は、水晶体嚢拡張リングとIOLとの強膜内固定を伴う。
【0004】
しかし、これらの方法のすべては、水晶体嚢が無傷のままであるときに適用可能である。水晶体嚢が存在しない状況がある。たとえば、IOLを別のIOLに取り換えるために、レンズ交換が必要とされる。最初のIOLを取り除くことは、取り換え用IOLを保持するための水晶体嚢がわずかしかまたは全く存在しない程度まで水晶体嚢に深刻な損傷を与え得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水晶体嚢が存在しない場合でもIOLまたは他の眼内装置を装着するための改良された方法および装置を提供しようとするものである。本明細書の以下でさらに詳細に説明されるように、本発明は、天然嚢が存在しない場合でも眼内装置用の装着プラットフォームの役割を果たす強膜内固定バッグを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、本発明の実施形態による方法であって、強膜内固定バッグを眼球内に導入するステップであって、強膜内固定バッグがそこから延びるハプティックを含む、ステップと、ハプティックを眼球内に形成された強膜切開部内に挿入し固着させるステップとを含み、ハプティックは、水晶体嚢支持の必要無しに強膜内固定バッグを固着させる、方法が提供される。方法は、水晶体嚢が存在しない場合でも有用である。方法は、さらに、眼内装置を強膜内固定バッグ内に形成された溝内に装着するステップを含むことができる。
【0007】
本発明の非限定的な特徴は、とりわけ以下を含む。すなわち、
強膜内固定バッグは、そこから延びるハプティックを含み、ハプティックの各々は、近位端が強膜内固定バッグに取り付けられた細長いループ要素を含み、細長いループ要素は、長さ、幅、および厚さを有し、長さは、湾曲した経路を辿り、幅は、強膜内固定バッグの中央前後軸に対してほぼ平行である。遠位フック部分が、細長いループ要素の遠位端から延び、遠位フック部分は、強膜内固定バッグの中央前後軸に向かって傾けられた前縁を含む。
【0008】
遠位フック部分は、強膜内固定バッグの中央前後軸から離れるように傾けられた後縁を含む。
遠位フック部分は、その遠位先端部において丸められ、これが細長いループ要素から延びるところから細くなるように先細になる。
【0009】
遠位フック部分は、細長いループ要素より細い。
細長いループ要素の厚さは、幅より小さい。
遠位フック部分は、貫通穴を備えて形成される。
【0010】
細長いループ要素の近位端は、強膜内固定バッグの外側周囲のほぼ接線方向である。
遠位フック部分および細長いループ要素は、異なる剛性を有する。
細長いループ要素および強膜内固定バッグは、異なる剛性を有する。
【0011】
遠位フック部分の最前部の表面は、眼内装置の最前部の表面の後方にない。
細長いループ要素の最前部の表面は、強膜内固定バッグの最前部の表面の後方にない。
強膜内固定バッグは、IOLを中に受け入れるための溝を含む。
【0012】
本発明は、付属の図を併用して以下の詳細な説明からより完全に理解され認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態によって構築され動作する、ハプティックを備えた強膜内固定バッグの簡易化された絵図である。
【
図2】本発明の実施形態による、前後軸に対して横断方向に見た、眼球内に移植された
図1の強膜内固定バッグの簡易化された図であり、ハプティックは、湾曲された強膜切開部内に固定される。
【
図3】強膜内固定バッグの一部分の簡易化された側面図である。
【
図4】本発明の実施形態による、強膜内固定膜内に装着された眼内装置(IMT)の簡易化された側面図である。
【
図5】本発明の別の実施形態によって構築され動作する、ハプティックを備えた強膜内固定バッグの簡易化された絵図である。
【
図6】
図6は、本発明の別の実施形態による、後眼房内、たとえば毛様体筋内に装着された別のIOLと共働する、強膜内固定バッグ内に装着されたIOLの簡易化された絵図である。
【0014】
図6Aは、強膜内固定バッグに取り付けられた後部プラットフォームを示す、固定バッグの一部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態によって構築され動作する、ハプティック12を備えた強膜内固定バッグ10を示す
図1〜3を参照する。強膜内固定バッグ10は、リングとして示されるが、他の形状を有することもできる。
【0016】
各々のハプティック12は、近位端16が強膜内固定バッグ10に取り付けられた細長いループ要素14を含む。細長いループ要素14は、長さ、幅、および厚さを有し、その長さは湾曲した経路を辿り、その幅は、強膜内固定バッグ10の中央前後軸18に対してほぼ平行である。ハプティック12を備えた強膜内固定バッグ10の外径は、限定的ではないが、強膜内の適切な装着のために15mmである。
【0017】
遠位フック部分20が、細長いループ要素14の遠位端から延びる。遠位フック部分20は、強膜内固定バッグ10の中央前後軸18に向かって傾けられた前縁22を含む。必ずしも必要と限らないが好ましくは、遠位フック部分24の後縁28は、中央前後軸22から離れるように傾けられる。必ずしも必要と限らないが好ましくは、遠位フック部分24は平坦である。遠位フック部分24の形状は、強膜内のその挿入場所の形状に合致することができる。遠位フック部分24は、その遠位端において丸められ、これが細長いループ要素18から延びるところから細くなるように先細になる。遠位フック部分24は、把持する、またはダイヤルする、または他の調整のために貫通穴26を備えて形成され得る。貫通穴26は、好ましくは、中央にあり、一方の側に偏らない。1つの実施形態では、遠位フック部分20は、細長いループ要素14より細くされる。1つの実施形態では、細長いループ要素14の厚さは、その幅より小さく、他の実施形態では、これらは等しい。遠位フック部分は、異なる外科手術において縫合糸(図示せず)に連結され得る。
【0018】
細長いループ要素14の近位端は、強膜内固定バッグ10の外側周囲のほぼ接線方向である。
強膜内固定バッグ10およびハプティック12は、同じまたは異なる材料から作製されてよく、各々は、1つまたは複数の材料から作製されてよい。使用される材料は、生体適合性かつ光学的に透明なものであり、親水性または疎水性になることができる。材料は、限定的ではないが、メタクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレート)、オレフィン(たとえばポリプロピレン)およびシリコーンなどの剛性または可撓性、硬質または軟質のものでよい。たとえば、限定的ではないが、強膜内固定バッグ10は、シリコーンで作製されてよく、一方でハプティック12は、PMMAで作製されてよい。
【0019】
遠位フック部分20および細長いループ要素14は、異なる剛性を有することができる。同様に、細長いループ要素14および強膜内固定バッグ10も、異なる剛性を有することができる。固定バッグ10は、外科手術中の容易な挿入のために可撓性の折り畳み材料で作製され得る。
【0020】
遠位フック部分20の最前部の表面は、強膜内固定バッグ10の最前部の表面の後方にない(すなわちこれは、それと同一平面である、またはこれより前にある)ことに留意されたい。同様に、細長いループ要素14の最前部の表面もまた、強膜内固定バッグ10の最前部の表面の後方にない。
【0021】
強膜内固定バッグ10は、開放された中央開口27を含む(
図2)。
本発明の実施形態によれば、強膜内固定バッグ10は、図示されていないが眼内レンズ(IOL)または移植可能な望遠鏡などの眼内装置を中に受け入れるための溝30を含む。溝30は、強膜内固定バッグ10の内側周囲周りを完全に延びることができ、または強膜内固定バッグ10の内側周囲の1つまたは複数の別個の角度区分上を延びることができる。
【0022】
強膜内固定バッグ10は、たとえば縁内の切開部を通って導入され得る。ハプティック12は、湾曲した強膜切開部25内に固定され、固定バッグ10を適切に中心に置く。(それだけに限定されないが、単焦点IOL、多焦点IOL、視力調節式IOLおよび他のものなどの)IOLまたは(
図4に見られる、移植可能な小型望遠鏡(IMT)50などの)他の眼内装置が、溝30内に容易に装着され得る。固定バッグ10は、いかなる水晶体嚢が存在しない場合でもハプティック12によって強膜切開部25内に適正に保持される。
【0023】
次に、本発明の別の実施形態によって構築され動作する、ハプティック62を備えた強膜内固定バッグ60を示す
図5を参照する。本発明の他の実施形態と同様に、各々のハプティック62は、近位端66が強膜内固定バッグ60に取り付けられた細長いループ要素64と、強膜内固定バッグ60の中央前後軸67に向かって傾けられた前縁を有する遠位フック部分68とを含む。この実施形態では、細長いループ要素64は、細長いワイヤであり、遠位フック部分68は、細長いワイヤの端部から曲げられたまたは別の形で形成された丸められたひも穴である。
【0024】
本発明の強膜内固定バッグは、IOLを中に装着するための比較的安定したプラットフォームを提供する上で有用になることができ、このIOLは、虹彩の後方かつ強膜内固定バッグの前方、たとえば毛様体筋、毛様体突起、または毛様体溝内などに装着された別のIOLと併用して使用され得る。これは、従来のレンズより優れた視力調節力を備えた二重レンズを作り出す。これは、2つのレンズの後方のもの、すなわち強膜内固定バッグ内に装着されたレンズが、2つのレンズのうち前方のものよりもさらに一層静的に保持され、したがって、前方レンズは、従来技術の二重IOLよりさらに一層後方レンズに対して移動するためであり、従来技術の二重IOLは、いずれも水晶体嚢内に保持され、両方のレンズが移動するために相対移動はかなり小さい。そのような実施形態が、
図6に示され、
図6では、IOL70が、強膜内固定バッグ10内に装着され、別のIOL72は、虹彩の後方かつ強膜内固定バッグ10の前方の後眼房内、たとえば毛様体筋、またはさらには毛様体溝内(破線によって示される)などに装着される。
【0025】
図6はまた、別の選択肢、すなわち強膜内固定バッグ10に取り付けられた後方プラットフォーム32も示す。プラットフォーム32は、バッグ10の開放された中央開口27を閉じるために使用され得る。これは、固定バッグ10からの硝子体液の移動を防止するのに役立ち得る。プラットフォーム32は、環状溝34(
図6Aの拡大図に見られる)を備えて形成されてよく、それにより、開口27を覆うプラットフォーム32の部分は、特定の用途に望まれる場合、中断されてよい。プラットフォーム32は、屈折力(正または負)を有することができる。プラットフォーム32および強膜内固定バッグ10は、同じまたは異なる材料から作製され得る。プラットフォーム32はまた、
図6の二重レンズ構成でも有用になることができ、この構成では、プラットフォームは、レンズを固定バッグ内に安定的に保つことに役立つ。