特許第6893446号(P6893446)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893446
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
   G06K 13/077 20060101AFI20210614BHJP
   G06K 13/103 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   G06K13/077 A
   G06K13/103 H
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-126362(P2017-126362)
(22)【出願日】2017年6月28日
(65)【公開番号】特開2019-8714(P2019-8714A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 伸也
【審査官】 佐賀野 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−092307(JP,A)
【文献】 特開2009−176011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00− 7/14
G06K 13/00− 13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードに記録されたデータの読取りおよび前記カードへのデータの記録の少なくともいずれか一方を行うカードリーダにおいて、
前記カードリーダへの前記カードの挿入方向側を奥側とし、前記カードリーダからの前記カードの抜取り方向側を前側とし、前記カードリーダに対する前記カードの挿入抜取り方向を前後方向とすると、
前記カードの奥端側部分が収容される袋状のカード収容部と前記カード収容部の前端から鍔状に広がる隔壁部とを有する本体フレームと、前記本体フレームが収容されるケース体と、前記カードリーダに挿入された前記カードの抜取りを防止するロック部材と、前記ロック部材を駆動する駆動機構と、前記隔壁部の奥側かつ前記カード収容部の外側の領域であって前記隔壁部と前記ケース体とによって囲まれた領域への液体の浸入を防止するためのシール部材とを備え、
前記ロック部材は、前記隔壁部よりも前側に配置され、
前記駆動機構は、前記隔壁部よりも奥側に配置される駆動源と、前記駆動源の動力を前記ロック部材に伝達する動力伝達機構とを備え、
前記駆動源および前記動力伝達機構は、あるいは、前記動力伝達機構は、前後方向に直線的に移動するスライド部材を備え、
前記隔壁部には、前記スライド部材の一部が配置される切欠きまたは穴が前後方向に貫通するように形成され、
前記シール部材は、前記切欠きまたは前記穴を塞ぐためのシール本体部と、一端が前記シール本体部に繋がるとともに他端が前記スライド部材に取り付けられる筒状のカバー部とを備え、
前記シール本体部には、前記スライド部材が挿通される挿通穴が前後方向に貫通するように形成され、
前記カバー部の一端は、前記挿通穴を囲むように前記シール本体部の前側の面または奥側の面に繋がり、
前記カバー部の内周側には、前記スライド部材が挿通され、
前記カバー部は、前記スライド部材の前後動に追従して前後方向に伸縮することを特徴とするカードリーダ。
【請求項2】
前記カバー部は、蛇腹状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記ロック部材は、前記カードリーダからの前記カードの抜取りを防止する抜取り防止位置と、前記カードリーダからの前記カードの抜取りが可能になる抜取り可能位置との間で回動可能となっており、
前記カバー部の一端は、前記シール本体部の奥側の面に繋がっており、
前記カバー部は、前記隔壁部の奥側に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記隔壁部には、前記カードリーダに挿入された前記カードの厚さ方向における前記隔壁部の一方の端面まで切り欠かれた前記切欠きが形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記駆動源は、ソレノイドであり、
前記動力伝達機構は、前記スライド部材として、前記ソレノイドのプランジャに連結されるレバー部材を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードに記録されたデータの読取りやカードへのデータの記録を行うカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードに記録されたデータの読取りやカードへのデータの記録を行うカードリーダが知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載のカードリーダは、カードリーダに挿入されたカードの抜取りを防止するためのロックレバーを備えている。また、このカードリーダは、カード挿入口が形成される前面カバーとケース本体とから構成されるケース体と、前面カバーに固定されるとともにケース体に収容される本体フレームとを備えている。
【0003】
特許文献1に記載のカードリーダでは、本体フレームは、磁気ヘッドが配置されるヘッド配置部と、カード挿入口から挿入されたカードを案内するためのカード案内部と、カード挿入口から挿入されたカードの後端側が配置される袋状のカード収容部と、カード収容部の前端から鍔状に広がる隔壁部とを備えている。ヘッド配置部およびカード案内部は、隔壁部よりも前側に配置されており、ヘッド配置部およびカード案内部と、隔壁部との間には、シール部材が配置されている。このカードリーダでは、隔壁部の後ろ側かつカード収容部の外側の領域であって隔壁部とケース体とに囲まれた領域は、水等の液体の浸入を許容しない防水領域となっており、隔壁部の前側に配置されるシール部材は、この防水領域の防水性を確保する機能を果たしている。
【0004】
また、特許文献1に記載のカードリーダでは、ロックレバーは、固定軸に回動可能に保持されている。ロックレバーの後端側は、ソレノイドに連結されている。固定軸およびソレノイドは、隔壁部よりも後ろ側の防水領域の中に配置されている。ロックレバーの先端側には、カードの先端に係合する爪部が形成されている。この爪部は、隔壁部よりも前側に配置されている。ロックレバーは、固定軸を中心にして、爪部がカードの先端に接触してカードの抜取りを防止する位置と、カードの抜取りを可能にする位置との間で回動する。
【0005】
隔壁部には、ロックレバーが通過する通過穴が形成されている。ロックレバーの、隔壁部よりも前側に配置される部分には、隔壁部の通過穴を水等の液体が通過するのを防止するためのカバー部材が取り付けられている。カバー部材は、たとえば、ゴムで形成されている。カバー部材の先端は、ロックレバーの前端側に取り付けられ、カバー部材の後端は、隔壁部側に取り付けられている。カバー部材は、隔壁部の後ろ側の防水領域の防水性を確保する機能を果たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−92307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のカードリーダでは、ロックレバーの、隔壁部よりも前側に配置される部分にカバー部材が取り付けられており、ロックレバーが回動すると、ロックレバーの回動方向の一方側では、カバー部材が縮み、ロックレバーの回動方向の他方側では、カバーが伸びる。すなわち、このカードリーダでは、ロックレバーの回動動作に伴ってカバー部材が複雑に変形する。そのため、このカードリーダでは、カバー部材の前後方向の長さを長くしたり、カバー部材の厚さを薄くしたりする等の設計上の考慮をしないと、ロックレバーの動作に対するカバー部材の追従性が悪くなって、ロックレバーの動作に支障が生じるおそれがある。
【0008】
そこで、本発明の課題は、カードリーダに挿入されたカードの抜取りを防止するロック部材が本体フレームの隔壁部の前側に配置され、ロック部材の駆動機構の一部を構成する駆動源が隔壁部の奥側に配置されるとともに、駆動機構の一部が配置される切欠きまたは穴が隔壁部を貫通するように形成されたカードリーダにおいて、シール部材を用いて隔壁部の奥側の防水領域への液体の浸入を防止することが可能であっても、シール部材の設計を容易にしつつ、ロック部材を適切に動作させることが可能なカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のカードリーダは、カードに記録されたデータの読取りおよびカードへのデータの記録の少なくともいずれか一方を行うカードリーダにおいて、カードリーダへのカードの挿入方向側を奥側とし、カードリーダからのカードの抜取り方向側を前側とし、カードリーダに対するカードの挿入抜取り方向を前後方向とすると、カードの奥端側部分が収容される袋状のカード収容部とカード収容部の前端から鍔状に広がる隔壁部とを有する本体フレームと、本体フレームが収容されるケース体と、カードリーダに挿入されたカードの抜取りを防止するロック部材と、ロック部材を駆動する駆動機構と、隔壁部の奥側かつカード収容部の外側の領域であって隔壁部とケース体とによって囲まれた領域への液体の浸入を防止するためのシール部材とを備え、ロック部材は、隔壁部よりも前側に配置され、駆動機構は、隔壁部よりも奥側に配置される駆動源と、駆動源の動力をロック部材に伝達する動力伝達機構とを備え、駆動源および動力伝達機構は、あるいは、動力伝達機構は、前後方向に直線的に移動するスライド部材を備え、隔壁部には、スライド部材の一部が配置される切欠きまたは穴が前後方向に貫通するように形成され、シール部材は、切欠きまたは穴を塞ぐためのシール本体部と、一端がシール本体部に繋がるとともに他端がスライド部材に取り付けられる筒状のカバー部とを備え、シール本体部には、スライド部材が挿通される挿通穴が前後方向に貫通するように形成され、カバー部の一端は、挿通穴を囲むようにシール本体部の前側の面または奥側の面に繋がり、カバー部の内周側には、スライド部材が挿通され、カバー部は、スライド部材の前後動に追従して前後方向に伸縮することを特徴とする。
【0010】
本発明のカードリーダでは、ロック部材を駆動するための駆動源および駆動源の動力をロック部材に伝達する動力伝達機構は、あるいは、動力伝達機構は、前後方向に直線的に移動するスライド部材を備えており、本体フレームの隔壁部に形成される切欠きまたは穴に、スライド部材の一部が配置されている。また、本発明では、隔壁部の奥側かつカード収容部の外側の領域であって隔壁部とケース体とによって囲まれた領域への液体の浸入を防止するためのシール部材は、切欠きまたは穴を塞ぐためのシール本体部と、一端がシール本体部に繋がるとともに他端がスライド部材に取り付けられる筒状のカバー部とを備えており、カバー部は、スライド部材の前後動に追従して前後方向に伸縮する。
【0011】
すなわち、本発明では、スライド部材の動作に伴って変形するシール部材のカバー部は、前後方向に単純に伸縮する。そのため、本発明では、カバー部の形状等をそれほど考慮しなくても、スライド部材の動作に対するカバー部の追従性を確保することが可能になる。すなわち、カバー部の形状等をそれほど考慮しなくても、ロック部材の動作に対するカバー部の追従性を確保することが可能になる。したがって、本発明では、シール部材によって隔壁部の奥側の防水領域への液体の浸入を防止することが可能であっても、シール部材の設計を容易にしつつ、ロック部材を適切に動作させることが可能になる。
【0012】
本発明において、カバー部は、蛇腹状に形成されていることが好ましい。このように構成すると、カバー部の伸縮動作に伴う駆動源の負荷を低減することが可能になる。したがって、動力の小さな駆動源を使用することが可能になり、その結果、カードリーダのコストを低減することが可能になる。
【0013】
本発明において、たとえば、ロック部材は、カードリーダからのカードの抜取りを防止する抜取り防止位置と、カードリーダからのカードの抜取りが可能になる抜取り可能位置との間で回動可能となっており、カバー部の一端は、シール本体部の奥側の面に繋がっており、カバー部は、隔壁部の奥側に配置されている。この場合には、スライド部材の直線動作をロック部材の回動動作に変えるための機構が隔壁部の前側に配置される。したがって、カバー部が隔壁部の前側に配置されている場合と比較して、カバー部を配置しやすくなる。
【0014】
本発明において、隔壁部には、カードリーダに挿入されたカードの厚さ方向における隔壁部の一方の端面まで切り欠かれた切欠きが形成されていることが好ましい。このように構成すると、たとえば、本体フレームが樹脂成形で形成されている場合に、本体フレームを形成するための金型の構成を簡素化することが可能になる。すなわち、前後方向に貫通する穴が隔壁部に形成されている場合には、本体フレームを形成するための金型としてスライド型が必要となるが、カードの厚さ方向における隔壁部の一方の端面まで切り欠かれた切欠きが隔壁部に形成されている場合には、スライド型を不要にすることが可能になる。したがって、本体フレームを形成するための金型の構成を簡素化することが可能になる。
【0015】
本発明において、駆動源は、ソレノイドであり、動力伝達機構は、スライド部材として、ソレノイドのプランジャに連結されるレバー部材を備えることが好ましい。このように構成すると、ソレノイドのプランジャがスライド部材の一部を構成しており、カバー部の他端がプランジャに固定されている場合と比較して、ソレノイドの通電部分への浸水のおそれを低減することが可能になる。また、このように構成すると、プランジャの形状に影響を受けることなく、シール部材を設計することができるため、シール部材の設計の自由度を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明では、カードリーダに挿入されたカードの抜取りを防止するロック部材が本体フレームの隔壁部の前側に配置され、ロック部材の駆動機構の一部を構成する駆動源が隔壁部の奥側に配置されるとともに、駆動機構の一部が配置される切欠きまたは穴が隔壁部を貫通するように形成されたカードリーダにおいて、シール部材を用いて隔壁部の奥側の防水領域への液体の浸入を防止することが可能であっても、シール部材の設計を容易にしつつ、ロック部材を適切に動作させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態にかかるカードリーダの斜視図である。
図2図1に示すカードリーダからケース本体を取り外した状態を別の方向から示す斜視図である。
図3図2に示すカードリーダ本体の斜視図である。
図4】(A)は、図3に示すカードリーダ本体から上側フレーム等を取り外した状態の斜視図であり、(B)は、図3に示すカードリーダ本体から上側フレームおよびシール部材等を取り外した状態の斜視図である。
図5図3に示すカードリーダ本体から上側フレーム等を取り外した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
(カードリーダの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるカードリーダ1の斜視図である。図2は、図1に示すカードリーダ1からケース本体12を取り外した状態を別の方向から示す斜視図である。図3は、図2に示すカードリーダ本体3の斜視図である。
【0020】
本形態のカードリーダ1は、カード2に記録されたデータの読取りおよびカード2へのデータの記録の少なくともいずれか一方を行う装置である。具体的には、カードリーダ1は、カードリーダ1へのカード2の挿入とカードリーダ1からのカード2の抜取りとを手動で行ってデータの読取りや記録を行ういわゆるディップ式のカードリーダである。このカードリーダ1は、たとえば、無人またはセルフサービス方式のガソリンスタンドの給油装置等に搭載されて使用される。
【0021】
カード2は、たとえば、厚さが0.7〜0.8mm程度の矩形状の塩化ビニール製のカードである。カード2の一方の面には、磁気データが記録される磁気ストライプが形成されている。また、カード2には、ICチップが内蔵されており、カード2の他方の面には、ICチップの外部接続端子が形成されている。なお、カード2は、厚さが0.18〜0.36mm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)カードや、所定の厚さの紙カード等であっても良い。
【0022】
カードリーダ1は、カードリーダ本体3と、カードリーダ本体3を覆うケース体4とを備えている。カードリーダ本体3は、カード2が移動するカード移動路が形成される本体フレーム6と、カード2に記録された磁気データの読取りやカード2への磁気データの記録を行う磁気ヘッド7(図4参照)と、カード2に内蔵されるICチップとデータの通信を行うための複数のIC接点バネを有するIC接点ブロック(図示省略)と、カードリーダ1に挿入されたカード2の抜取りを防止するロック部材8と、ロック部材8を駆動する駆動機構9とを備えている。ケース体4は、カード2の挿入口10が形成される前面カバー11と、ケース本体12とから構成されている。また、カードリーダ1は、制御用のプリント基板である制御基板13を備えている(図2参照)。
【0023】
本形態では、手動で操作されるカード2は、図1等に示すX方向に移動する。すなわち、X方向は、カード移動路を移動するカード2の移動方向である。また、カード2は、X1方向に挿入され、X2方向に抜き取られる。また、X方向に直交する図1等のZ方向は、カードリーダ1に挿入されたカード2の厚さ方向であり、X方向とZ方向とに直交する図1等のY方向は、カードリーダ1に挿入されたカード2の幅方向(短手幅方向)である。
【0024】
以下の説明では、カードリーダ1に対するカード2の挿入抜取り方向であるX方向を前後方向とする。また、Y方向を左右方向、Z方向を上下方向とする。また、カードリーダ1へのカード2の挿入方向側であるX1方向側を「奥」側または「後ろ」側とし、カードリーダ1からのカード2の抜取り方向側であるX2方向側を「前」側とする。また、上下方向の一方側であるZ1方向側を「上」側、上下方向の他方側であるZ2方向側を「下」側とする。
【0025】
本体フレーム6は、カードリーダ1に挿入されたカード2(すなわち、挿入口10から挿入されたカード2)の奥端側部分が収容される袋状のカード収容部6aと、カード収容部6aの前端から鍔状に広がる隔壁部6bとを備えている。また、本体フレーム6は、図3に示すように、磁気ヘッド7が配置されるヘッド配置部6cと、挿入口10から挿入されたカード2を案内するためのカード案内部6dとを備えている。カード収容部6aの内部は、カード移動路の一部となっている。カード収容部6aの上下の両面、左右の両面および後面には、カード収容部6aの外部からカード移動路に通じる開口部は形成されていない。隔壁部6bは、カード収容部6aの前端から上下方向および左右方向に広がる略長方形の枠状に形成されている。
【0026】
ヘッド配置部6cおよびカード案内部6dは、隔壁部6bから前側へ突出している。ヘッド配置部6cとカード案内部6dとは、左右方向において間隔をあけた状態で形成されている。磁気ヘッド7は、ヘッド配置部6cの前端側に取り付けられている。磁気ヘッド7は、下側からカード移動路に臨むように配置されている。また、カード収容部6aには、IC接点ブロックが取り付けられている。IC接点ブロックは、IC接点バネが上側からカード移動路に臨むように配置されている。
【0027】
また、本体フレーム6は、上下方向で2分割される上側フレーム15と下側フレーム16とから構成されている。上側フレーム15は、本体フレーム6の上側部分を構成している。下側フレーム16は、本体フレーム6の下側部分を構成している。上側フレーム15と下側フレーム16とは、上下方向で組み合わされた状態で互いに固定されている。上側フレーム15および下側フレーム16は、樹脂で形成されている。すなわち、本体フレーム6は、樹脂で形成されている。また、上側フレーム15および下側フレーム16は、金型を用いた樹脂成形によって形成されている。
【0028】
前面カバー11は、本体フレーム6の前面側に配置されており、ヘッド配置部6cおよびカード案内部6dを覆っている。また、前面カバー11は、カードリーダ1の前面を構成している。図1に示すように、前面カバー11には、前面カバー11の前面から後ろ側に向かって窪む指挿入部11aが形成されている。指挿入部11aは、ユーザの指が挿入可能となる大きさに形成されており、ユーザがカードリーダ1へカード2を挿入する際、および、ユーザがカードリーダ1からカード2を抜き取る際には、指挿入部11aにユーザの指が挿入される。
【0029】
ケース本体12は、前端が開口する略直方体の箱状に形成されている。ケース本体12は、カード収容部6aおよび隔壁部6bを覆っている。隔壁部6bの外周面は、ケース本体12の内周面に接触している。前面カバー11とケース本体12とは、前面カバー11の後端とケース本体12の前端とが当接した状態で互いに固定されている。ケース体4は、カードリーダ本体3の上下の両面、左右の両面および前後の両面を覆っており、ケース体4には、本体フレーム6が収容されている。
【0030】
本形態では、隔壁部6bの奥側かつカード収容部6aの外側の領域であって隔壁部6bとケース体4とによって囲まれた領域は、水等の液体の浸入を許容しない防水領域となっている。すなわち、カード収容部6aの外側の領域であって隔壁部6bとケース本体12とによって囲まれた領域は、防水領域となっている。一方、隔壁部6bよりも前側の領域およびカード移動路は、水等の液体の浸入を許容する浸水許容領域となっている。制御基板13は、カード収容部6aの上端に固定されており、防水領域の中に配置されている。
【0031】
本形態のカードリーダ1は、防水領域への液体の浸入を防止するためのシール部材(ガスケット)20を備えている。すなわち、カードリーダ1は、浸水許容領域から防水領域への液体の浸入を防止するためのシール部材20を備えている。以下、ロック部材8、駆動機構9、シール部材20およびシール部材20の周辺部の構成を説明する。
【0032】
(ロック部材、駆動機構、シール部材およびシール部材の周辺部の構成)
図4(A)は、図3に示すカードリーダ本体3から上側フレーム15等を取り外した状態の斜視図であり、図4(B)は、図3に示すカードリーダ本体3から上側フレーム15およびシール部材20等を取り外した状態の斜視図である。図5は、図3に示すカードリーダ本体3から上側フレーム15等を取り外した状態の側面図である。
【0033】
ロック部材8は、IC接点ブロックを用いて、カードリーダ1に挿入されたカード2とカードリーダ1とが通信を行っているときに、カードリーダ1からカード2に抜き取られるのを防止する機能を果たしている。このロック部材8は、カード2の前端に接触してカードリーダ1からのカード2の抜取りを防止する爪部8aを備えている。爪部8aは、ロック部材8の前下端側部分を構成している。ロック部材8は、ヘッド配置部6cの上面側に取り付けられており、隔壁部6bよりも前側に配置されている。また、ロック部材8は、前面カバー11の内部に配置されている。ロック部材8は、爪部8aが上側からカード移動路に臨むように配置されている。
【0034】
ロック部材8は、爪部8aがカード2の前端に接触してカードリーダ1からのカード2の抜取りを防止する抜取り防止位置と、爪部8aがカード移動路から上側に退避してカードリーダ1からのカード2の抜取りが可能になる抜取り可能位置(図3図5に示す位置)との間で移動可能になっている。具体的には、ロック部材8は、ヘッド配置部6cに固定される固定軸21に回動可能に保持されており、抜取り防止位置と抜取り可能位置との間で回動可能となっている。固定軸21は、固定軸21の軸方向と左右方向とが一致するように配置されており、ロック部材8は、左右方向を回動の軸方向として回動可能となっている。また、ロック部材8の後ろ下端側部分に固定軸21が挿通されている。
【0035】
駆動機構9は、駆動源としてのソレノイド22と、ソレノイド22の動力をロック部材8に伝達する動力伝達機構23とを備えている。ソレノイド22は、カード収容部6aの上面側に取り付けられており、隔壁部6bよりも奥側に配置されている。また、ソレノイド22は、ソレノイド22のプランジャ22a(図5参照)が前後方向に直線的に移動するように配置されている。また、ソレノイド22は、プランジャ22aが前側に突出するように配置されている。動力伝達機構23は、プランジャ22aに連結されるスライド部材としてのレバー部材24と、レバー部材24とロック部材8とを連結するための2個のリンク部材25、26とを備えている。
【0036】
レバー部材24の後端部は、プランジャ22aに連結される連結部24aとなっている。レバー部材24の前端部は、リンク部材25に連結される連結部24bとなっている。連結部24aと連結部24bとは、直線状に形成される直線部24cによって繋がれている。連結部24aは、隔壁部6bよりも奥側に配置され、連結部24bは、隔壁部6bよりも前側に配置されている。すなわち、レバー部材24の後端部は、隔壁部6bよりも奥側に配置され、レバー部材24の前端部は、隔壁部6bよりも前側に配置されている。
【0037】
リンク部材25、26は、隔壁部6bの前側に配置されている。リンク部材25は、左右方向から見たときの形状が略L形状となるように形成されている。リンク部材25の中心部は、ヘッド配置部6cに固定される固定軸28に回動可能に保持されている。固定軸28は、固定軸28の軸方向と左右方向とが一致するように配置されており、リンク部材25は、左右方向を回動の軸方向として回動する。リンク部材26は、左右方向から見たときの形状が略長形状となるように形成されている。
【0038】
レバー部材24の連結部24aは、プランジャ22aに回動可能に連結されている。連結部24aは、プランジャ22aに対して上下方向を回動の軸方向として回動可能となっている。リンク部材25の一端部は、レバー部材24の連結部24bに回動可能に連結されている。リンク部材25は、連結部24bに対して左右方向を回動の軸方向として回動可能となっている。リンク部材25の一端部は、固定軸28の下側に配置されている。
【0039】
リンク部材26の一端部は、リンク部材25の他端部に回動可能に連結されている。リンク部材26は、リンク部材25に対して左右方向を回動の軸方向として回動可能となっている。リンク部材25の他端部は、固定軸28の前側に配置されている。ロック部材8の後ろ上端側部分は、リンク部材26の他端部に回動可能に連結されている。ロック部材8は、リンク部材26に対して左右方向を回動の軸方向として回動可能となっている。本形態では、ソレノイド22のプランジャ22aが前後方向に動作すると、レバー部材24が前後方向に直線的に移動する。
【0040】
隔壁部6bには、直線部24cの一部が配置される切欠き6eが形成されている。すなわち、隔壁部6bには、レバー部材24の一部が配置される切欠き6eが形成されている。切欠き6eは、前後方向で隔壁部6bを貫通している。また、切欠き6eは、隔壁部6bの上端面まで切り欠かれている。前後方向から見たときの切欠き6eの形状は、長方形状となっている。切欠き6eは、上側フレーム15に形成されている。
【0041】
シール部材20は、ゴムで形成されている。シール部材20は、切欠き6eを塞ぐためのシール本体部20aと、直線部24cの一部を外周側から覆うカバー部20bとを備えている。本形態のシール部材20は、シール本体部20aとカバー部20bとから構成されている。シール本体部20aとカバー部20bとは、一体で形成されている。シール本体部20aは、長方形の平板状に形成されている。シール本体部20aは、シール本体部20aの厚さ方向と前後方向とが一致するように配置されている。また、シール本体部20aは、切欠き6eの上端から下端までの全域に配置されている。
【0042】
シール本体部20aの左右の両端面および下端面には、切欠き6eの縁に嵌る切込み20cが形成されており、シール本体部20aは、切欠き6eに嵌っている。切込み20cは、シール本体部20aの左右の両端面から左右方向の内側に窪むように形成されるとともに、シール本体部20aの下端面から上側に窪むように形成されている。シール本体部20aには、レバー部材24が挿通される(具体的には、直線部24cが挿通される)挿通穴20dが形成されている。挿通穴20dは、前後方向でシール本体部20aを貫通している。また、挿通穴20dは、シール本体部20aの下端部に形成されている。
【0043】
カバー部20bは、筒状に形成されている。カバー部20bの一端は、シール本体部20aに繋がっており、カバー部20bの他端は、レバー部材24に取り付けられている。具体的には、カバー部20bの前端は、シール本体部20aの挿通穴20dを外周側から囲むようにシール本体部20aの奥側の面に繋がっている。また、カバー部20bの後端は、連結部24aと直線部24cとの境界部分に固定されており、カバー部20bは、隔壁部6bの奥側に配置されている。カバー部20bの内周側には、レバー部材24の直線部24cが挿通されている。シール本体部20aの挿通穴20dは、カバー部20bによって後ろ側から塞がれている。
【0044】
本形態のカバー部20bは、蛇腹状に形成されている。すなわち、カバー部20bは、山折り部と谷折り部とが前後方向で繰り返された蛇腹状に形成されている。上述のように、ソレノイド22のプランジャ22aが前後方向に動作すると、レバー部材24が前後方向に直線的に移動する。レバー部材24が前後方向に直線的に移動すると、カバー部20bは、レバー部材24の前後動に追従して前後方向に伸縮する。
【0045】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ロック部材8に動力を伝達する動力伝達機構23は、前後方向に直線的に移動するレバー部材24を備えており、本体フレーム6の隔壁部6bに形成される切欠き6eにレバー部材24の一部が配置されている。また、本形態では、隔壁部6bの奥側の防水領域への液体の浸入を防止するためのシール部材20は、切欠き6eを塞ぐためのシール本体部20aと、前端がシール本体部20aに繋がるとともに後端がレバー部材24に取り付けられる筒状のカバー部20bとを備えており、カバー部20bは、レバー部材24の前後動に追従して前後方向に伸縮する。
【0046】
すなわち、本形態では、レバー部材24の動作に伴って変形するカバー部20bは、前後方向に単純に伸縮する。そのため、本形態では、カバー部20bの形状等をそれほど考慮しなくても、レバー部材24の動作に対するカバー部20bの追従性を確保することが可能になる。すなわち、本形態では、カバー部20bの形状等をそれほど考慮しなくても、ロック部材8の動作に対するカバー部20bの追従性を確保することが可能になる。したがって、本形態では、シール部材20によって隔壁部6bの奥側の防水領域への液体の浸入を防止することが可能であっても、シール部材20の設計を容易にしつつ、ロック部材8を適切に動作させることが可能になる。
【0047】
本形態では、カバー部20bは、蛇腹状に形成されている。そのため、本形態では、カバー部20bの伸縮動作に伴うソレノイド22の負荷を低減することが可能になる。したがって、本形態では、動力の小さなソレノイド22を使用することが可能になり、その結果、カードリーダ1のコストを低減することが可能になる。
【0048】
本形態では、隔壁部6bの前側にリンク部材25、26が配置されているが、カバー部20bの前端は、シール本体部20aの奥側の面に繋がっており、カバー部20bは、隔壁部6bの奥側に配置されている。そのため、本形態では、カバー部20bが隔壁部6bの前側に配置されている場合と比較して、カバー部20bを配置しやすくなる。
【0049】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0050】
上述した形態において、カバー部20bの後端は、ソレノイド22のプランジャ22aに取り付けられていても良い。この場合には、レバー部材24とプランジャ22aとによって、前後方向に直線的に移動するスライド部材が構成されている。すなわち、この場合には、ソレノイド22および動力伝達機構23は、前後方向に直線的に移動するスライド部材を備えている。
【0051】
ただし、上述した形態のようにカバー部20bの後端がレバー部材24に取り付けられている場合には、カバー部20bの後端がプランジャ22aに取り付けられている場合と比較して、ソレノイド22の通電部分への浸水のおそれを低減することが可能になる。また、上述した形態のようにカバー部20bの後端がレバー部材24に取り付けられている場合には、プランジャ22aの形状に影響を受けることなく、シール部材20を設計することができるため、シール部材20の設計の自由度を高めることが可能になる。
【0052】
上述した形態において、切欠き6eに代えて、直線部24cの一部が配置される穴(隔壁部6bの上端面まで切り欠かれていない穴)が前後方向で隔壁部6bを貫通するように形成されていても良い。この場合には、シール本体部20aは、この穴を塞ぐようにこの穴に嵌っている。ただし、上述した形態のように隔壁部6bに切欠き6eが形成されている場合には、本体フレーム6を形成するための金型(具体的には、上側フレーム15を形成するための金型)の構成を簡素化することが可能になる。すなわち、前後方向に貫通する穴が隔壁部6bに形成されている場合には、上側フレーム15を形成するための金型としてスライド型が必要となるが、隔壁部6bの上端面まで切り欠かれた切欠き6eが隔壁部6bに形成されている場合には、スライド型を不要にすることが可能になる。したがって、上側フレーム15を形成するための金型の構成を簡素化することが可能になる。
【0053】
上述した形態において、カバー部20bの後端がシール本体部20aの前面に繋がっていても良い。この場合には、カバー部20bの前端が、たとえば、レバー部材24の連結部24bと直線部24cとの境界部分に固定されており、カバー部20bは、隔壁部20bの前側に配置されている。また、上述した形態において、カバー部20bは、蛇腹状に形成されていなくても良い。すなわち、カバー部20bには、山折り部と谷折り部とが形成されていなくても良い。この場合には、たとえば、カバー部20bは、厚さの薄い薄肉の筒状に形成されている。
【0054】
上述した形態において、駆動機構9は、ソレノイド22に代えて、駆動源としてのモータを備えていても良い。また、上述した形態において、カードリーダ本体3は、磁気ヘッド7を備えていなくても良い。さらに、上述した形態では、カードリーダ1は、手動式のカードリーダであるが、カードリーダ1は、カード2を自動で搬送するカード搬送機構を有するカード搬送式のカードリーダであっても良い。
【符号の説明】
【0055】
1 カードリーダ
2 カード
4 ケース体
6 本体フレーム
6a カード収容部
6b 隔壁部
6e 切欠き
8 ロック部材
9 駆動機構
20 シール部材
20a シール本体部
20b カバー部
20d 挿通穴
22 ソレノイド(駆動源)
22a プランジャ
23 動力伝達機構
24 レバー部材(スライド部材)
X 前後方向
X1 奥側
X2 前側
Z カードの厚さ方向
図1
図2
図3
図4
図5