特許第6893448号(P6893448)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893448
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 35/04 20060101AFI20210614BHJP
   B60R 16/027 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   H01R35/04 E
   B60R16/027 S
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-132653(P2017-132653)
(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公開番号】特開2019-16497(P2019-16497A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】595112915
【氏名又は名称】株式会社ヤマダ
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】特許業務法人むつきパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 忠勉
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−064017(JP,U)
【文献】 特開平02−301708(JP,A)
【文献】 特開2016−074334(JP,A)
【文献】 特開2016−030521(JP,A)
【文献】 特開2016−116782(JP,A)
【文献】 特開2015−098222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R35/00−35/04
B60R16/00−17/02
H02G11/00−11/02
A63F 7/02
G02B 7/02− 7/16
G03B17/02
G03B17/22
B62D 5/00− 5/32
G05G 1/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端を固定された回転軸の周りにフラットハーネスを巻き付け又はこれをほどきながら該回転軸の周囲で相対的に回転する回転部材同士の間で電気的接続を得るための遊技機及びおもちゃの小型機械用回転コネクタ装置であって、
前記回転軸に中心軸を一致させるとともに主面を対向させて互いに相対的に回転自在な第1及び第2の円板を含み、
前記第1の円板の対向面側には半径方向の異なった位置に第1及び第2の固定側ストッパを設けられ、前記第2の円板の対向面側には半径方向に移動自在の移動側ストッパを設けられ、前記第1又は第2の円板のいずれか一方を前記回転軸に固定し、
前記移動側ストッパは、前記第1及び第2の円板を相対的に回転させることで半径方向に移動し、前記第1の固定側ストッパに当接した第1の位置と前記第2の固定側ストッパに当接した第2の位置との間で移動可能とされ
前記第1及び第2の固定側ストッパは前記第1の円板の前記対向面上において前記中心軸の周囲に設けられた渦巻き状の溝のそれぞれ外側及び内側の終端面であり、前記移動側ストッパは前記中心軸に平行な回動軸で回動自在となるよう前記第2の円板に軸支されたアーム体の先端に設けられ前記溝に挿入されて移動するピン体であり、
前記アーム体は前記ピン体を前記第1の固定側ストッパ及び前記第2の固定側ストッパのそれぞれの位置に移動させたときに、前記第2の円板の前記対向面上で前記ピン体及び前記中心軸を結ぶ直線と前記ピン体及び前記回動軸を結ぶ直線とのなす角度が90度±45度以内であることを特徴とする回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記回動軸は前記渦巻き状の溝の外周よりも内側に位置することを特徴とする請求項1記載の回転コネクタ装置
【請求項3】
前記第1及び第2の円板は、すべり軸受によって相対的に回転自在とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の周囲で相対的に回転する部材同士の間で電気的接続を得るための回転コネクタ装置に関し、特に1周を超えて回転しその回転角度を一定の範囲内に制限できる小型で簡単な構造の回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
相対的に回転する部材同士の間で電気的接続を得て、信号や電力を伝送する装置として回転コネクタ装置がある。かかる装置では、通電を確保したまま回転軸を回動させる通電回動機構、例えば、ブラシの摺動によるスリップリングや、水銀などの液体金属をブラシの代わりに用いたものが知られている。一方、部材間をリード線で結線させたまま相対的に回転できるようにしたものもある。例えば、フラットケーブルなどの変形容易なリード線を渦巻き状に緩く巻いておき、締め付け方向又は緩め方向の双方で、リード線の変形可能な範囲内で回転させるのである。
【0003】
例えば、特許文献1では、自動車のステアリング側と車体側とのリード線での接続に用いられるブラシレス伝送装置を開示している。かかる装置では、現在の回転角度を伝送装置のステアリングへの組み付け作業者に報知し、回転角度の制限されるステアリングに伝送装置の回転角度を合わせて組み付けることで、ステアリングの回転操作による伝送装置の回転角度を一定の範囲に制限させるようにしている。回転数表示用駒は、相対的に回転可能に組み合わされた2つのハウジングのうちの一方の円板部の板面に形成されたスパイラル状の溝をガイドとして相対的に回転可能である一方、他方のハウジングに設けられた周方向の移動を阻止する規制ガイドによって径方向のみに移動可能とされている。これにより、径方向の位置によって0〜5回転までの回転数、すなわち回転角度を表示する。
【0004】
リード線で結線される回転コネクタ装置では、該リード線の変形可能な範囲を超えて過度の負担を受けないように、回転角度を制限する回動規制機構を内部に設けたものも提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2では、ストッパを内蔵することで回転角度を自動的に制限できる回転コネクタ装置として、クリーンルーム内で用いられる産業用ロボット用のロータリージョイントを開示している。回転ボディに取り付けたストッパに設けられた円弧状の溝に、固定ボディに設けられたストッパーピンが挿入され、回転ボディと固定ボディとの相対回転角度は、ストッパの溝内でのストッパーピンの相対的な移動範囲である360度以内に制限される。
【0006】
また、特許文献3では、さらに回転角度を1周の360度より大きくした上で、回転角度を制限できる機構を内部に備える回転コネクタ装置として、自動車用のステアリングロールコネクタ装置を開示している。固定ケース及び可動ケースは互いに回転軸に直行するカム板をそれぞれ備え、一方のカム板に不連続周溝とその不連続部に対応し異なる半径の円弧溝と不連続周溝と円弧溝との互いの両端を連結する径方向の直線溝が形成される。他方のカム板には不連続周溝と円弧溝とに対応する半径の2つの仮想円間を蛇行するジグザグ溝が形成される。さらに、両カム板の溝に同時に係合するとともに両カム板の相対回転に伴い両カム板の溝に沿って移動可能なストッパーボールを備える。ストッパーボールは、不連続周溝と円弧溝との間の直線溝を移動するときに同時にジグザグ溝をも移動するので、ジグザグ溝の往復1回の蛇行に対して不連続周溝及び円弧溝を一周できる。よって、ジグザグ溝の蛇行する回数に応じた一方のカム板による複数回の相対的な回転が可能であるとともに、ジグザグ溝の端部まで移動したストッパーボールによりその回転角度が制限される。ジグザグ溝を中間点から左右2山ずつとすることにより、自動車のハンドルの回動範囲である左右各2回転より多少の余裕を持たせた左右2回転及び余裕として約90度の回転角度の制限を得られるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平4−554号公報
【特許文献2】特開2003−287173号公報
【特許文献3】特開平9−35840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、遊技機やおもちゃなどの小型機械の回転コネクタ装置でも回転角度を1周(360度)よりも大きくすることが求められ得るが、同時に、なるべく部品点数を増やさず、ギアボックスなどの複雑な機構を用いない簡単軽量でコンパクトな回動規制機構を組み合わせることも必要となる。
【0009】
本発明は、以上のような状況に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、1周よりも大きな回転が可能で、その回転角度を制限できる簡単な構造の回動規制機構を含む回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による回転コネクタ装置は、一端を固定された回転軸の周りにフラットハーネスを巻き付け又はこれをほどきながら該回転軸の周囲で相対的に回転する回転部材同士の間で電気的接続を得るための回転コネクタ装置であって、前記回転軸に中心軸を一致させるとともに主面を対向させて互いに相対的に回転自在な第1及び第2の円板を含み、前記第1の円板の対向面側には半径方向の異なった位置に第1及び第2の固定側ストッパを設けられ、前記第2の円板の対向面側には半径方向に移動自在の移動側ストッパを設けられ、前記第1又は第2の円板のいずれか一方を前記回転軸に固定し、前記移動側ストッパは、前記第1及び第2の円板を相対的に回転させることで半径方向に移動し、前記第1の固定側ストッパに当接した第1の位置と前記第2の固定側ストッパに当接した第2の位置との間で移動可能とされることを特徴とする。
【0011】
かかる発明によれば、半径方向に異なる第1及び第2の固定側ストッパと半径方向に移動する移動側ストッパを設ける簡単な構造によって、1周より大きな回転が可能で、その回転角度を制限できる。
【0012】
上記した発明において、前記移動側ストッパは、前記中心軸に平行な回動軸で回動自在となるよう前記第2の円板に軸支されたアーム体の先端に設けられることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、移動側ストッパを簡単な構造で半径方向に移動させ得て、1周より大きな回転が可能でその回転角度を制限できる。
【0013】
上記した発明において、前記第1及び第2の固定側ストッパは、前記第1の円板の前記対向面上において前記中心軸の周囲に設けられた渦巻き状の溝のそれぞれ外側及び内側の終端面であり、前記移動側ストッパは前記溝に挿入されて移動するピン体であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、簡単な構造で半径方向に異なった位置に第1及び第2の固定側ストッパとこれに当接可能な移動側ストッパとを設けることができ、1周より大きな回転が可能でその回転角度を制限できる。
【0014】
上記した発明において、前記アーム体は前記ピン体を前記第1の位置及び前記第2の位置のそれぞれに移動させたときに、前記第2の円板の前記対向面上で前記ピン体及び前記中心軸を結ぶ直線と前記ピン体及び前記回動軸を結ぶ直線とのなす角度が90度±45度以内であることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、材料の剛性を特に高くすることなく、また寸法公差を特に小さくすることなく、一定位置で回転を停止できて、回転角度を確実に制限できる。
【0015】
上記した発明において、前記第1及び第2の円板は、すべり軸受によって相対的に回転自在とされていることを特徴としてもよい。かかる発明によれば、簡単な構造とし、回転コネクタ装置をコンパクトにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による1つの実施例における回転コネクタ装置の斜視図である。
図2】回転コネクタ装置の部分分解斜視図である。
図3】回転コネクタ装置の部分分解斜視図である。
図4】回転コネクタ装置の要部の底面図である。
図5】回転コネクタ装置の側断面図である。
図6】回転コネクタ装置の動作を示す要部の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による1つの実施例としての回転コネクタ装置について、図1乃至図5を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、回転コネクタ装置10は、略円環形状のフロントケース1と、底面を有する略円筒形状のリアケース7とを組み合わせて略円筒状体とされたケース内に他の部材を大凡収容してユニット化した装置である。便宜上、かかる略円筒状体の中心軸Cに沿って左手前側を頂面側、右奥側を底面側とする。
【0019】
図2及び図3を併せて参照すると、回転コネクタ装置10は、他の部材としてさらに、フロントケース1の内周側から頂面側に一部を突出させて収容される巻回軸体2と、これに一部を固定されてその周囲に巻回されるハーネス3と、ハーネス3を巻回軸体2に固定するためのハーネス押さえ4と、リアケース7に固定される略円環状体からなる内リング5と、リアケース7の底面及び内リング5の間に配置されるストッパ円板6と、リアケース7に取り付けられるストッパアーム8とを含む。
【0020】
図1に特に図2を併せて参照すると、フロントケース1は、略円筒状体の頂面の外周側近傍部をなす頂面部11aと、側面の頂面側近傍をなす側面部11bと、側面部11bから延びるフック(A)12及びフック(B)13を備える。フック(A)12は内リング5に係合させ、フック(B)13はリアケース7に係合させるもので、それぞれ周方向の3か所に均等に分散し配置されている。フック(A)12及びフック(B)13は、側面部11bから底面側に向けて延びる断面を略方形とする棒状体であり、先端から頂面側に向けて外周側に傾斜させることで外周側に突出させた返しを有する形状とされる。また、フック(A)12の方がフック(B)13よりやや細く形成されている。
【0021】
巻回軸体2は、上記したようにフロントケース1から頂面側に突出する突出部21と、フロントケース1の頂面部11aの底面側に収容される円板状部23と、その底面側に中心軸Cを中心として延びる筒状の挟持部26と、挟持部26より径の小さな円筒体からなりさらに底面側に延びる小径部27とを含む。なお、挟持部26及び小径部27の内周面は突出部21から連続する円筒面であるが、挟持部26の外周は円筒面ではなく、部分的に肉厚を異ならせてハーネス押さえ4との間にハーネス3を確実に挟持できるよう凹凸を有する。
【0022】
円板状部23はその円周方向の一部に切り欠き部分を有し、かかる切り欠き部分に沿って突出部21から連続して壁状に頂面側に突出するコネクタ保持部22を備える。円板状部23は頂面側の面の外周近傍に頂面側へ凸となる断面形状の曲面を有する突条24を備え、突条24をフロントケース1の頂面部11aの裏面へ当接させることでフロントケース1に対するスライド回転を滑らかにするようにされる。円板状部23はまた、後述するハーネス押さえ4の突起46を挿入して係合させる孔25を備える。
【0023】
小径部27と挟持部26との段差部には、後述するようにストッパ円板6と係合させるための段差部突起28が備えられる。また、挟持部26の周囲には、挟持したハーネス3のずれを防止するための図示しない小突起を、適宜、備えている。
【0024】
ハーネス3は、巻回軸体2の挟持部26の周囲に渦巻き状に巻回される渦巻部31と内側端部32と外側端部33とを含む。なお、ハーネス3は、渦巻き状に巻回することの容易なフラットケーブルなどのリード線であるが、フレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキシブルプリント基板(FPC)を好適に用い得る。特に、屈曲と伸長との繰り返しに耐性の高いことが好ましく、例えば、高屈曲FPCなどが好適である。本実施例では、金属疲労による断線の起こりにくい厚さ12μmの通電金属部材を摺動性に優れるラッピング材により被覆した厚さ約100μmの高屈曲FPCを用いた。
【0025】
ハーネス3の内側端部32は、巻回軸体2に沿って頂面側へ延びて内側コネクタ34に接続されている。内側コネクタ34は内側端部32を巻回軸体2の円板状部23の切り欠き部分に挿通させるようにコネクタ保持部22に保持されて、突出部21よりも頂面側に突出する。なお、渦巻き部31の内側の部分には、上記した巻回軸体2の挟持部26の小突起を挿通させる穴36を、適宜、備える。
【0026】
外側端部33は、内リング5及びリアケース7の後述するハーネス挿通スリット53及びハーネス導出スリット74を通過して外周側へ導かれた渦巻き部31の部分から底面側へ向かって延びて外側コネクタ35に接続されている(図5参照)。なお、内側コネクタ34及び外側コネクタ35はロック機構付きのものであると、取り付ける機械との接続作業が簡単になるとともに接続不良を減じ得て好ましい。
【0027】
ハーネス押さえ4は、略円筒状体の巻回部41と、巻回部41の頂面側の端部から外周側に延びる略板状の舌状片42と、舌状片42から頂面側に突出する大フック43と、その左右の小フック44a及び44bとを含む。
【0028】
巻回部41は、その内側面と巻回軸体2の挟持部26の外周面との間にハーネス3の渦巻き部31の最内部分を挟んで固定する。巻回部41はその周上の一部に頂面側から底面側まで貫通するハーネス挿通スリット45を備えており、ハーネス3の固定した渦巻部31の外側部分を挿通させて、巻回部41の外周側に渦巻部31の残りの部分を配置させる。これによって、ハーネス3の渦巻部31を巻回部41の周囲に巻き付かせ、またはほどかせ得る。巻回部41はまた、頂面側に突出する突起46を備えており、上記したように円板状部23の孔25に挿入され係合する。巻回部41には、さらに頂面側から中心軸Cに沿って延びる小スリット47を、適宜、備えている。小スリット47は、上記したハーネス3の穴36に挿通させた挟持部26の小突起の先端をその内部に配置させており、巻回軸体2との組み合わせにおいて、巻回部41にかかる小突起を干渉させないようにしている。
【0029】
舌状片42は巻回軸体2の円板状部23の切り欠き部分を埋めるような形状を有しており、円板状部23とその表面を連続させるように配置される。舌状片42から延びる大フック43は、内側コネクタ34に係合し、内側コネクタ34をコネクタ保持部22に押し付けるようにして固定する。その左右の小フック44a及び44bは、コネクタ保持部22の左右の壁状部分に係合され、ハーネス押さえ4を巻回軸体2に固定する。
【0030】
図1に特に図3を併せて参照すると、内リング5は、略円筒形の本体である環状部51と、環状部51から外周側へ突出する係止部(A)52とを備える。環状部51は、その周上の一部に頂面側から底面側まで貫通するハーネス挿通スリット53を備えており、渦巻部31の外側端部近傍を挿通させて、外周の円筒面からやや内側にシフトされた外側面を有するハーネス固定部54の外側に渦巻部31の外側端部近傍を配置させる。なお、ハーネス固定部54は、その外周側に図示しない突起を設けており、ハーネス3の図示しない孔に挿通させて固定部54に対するハーネス3のずれを防止する。
【0031】
係止部(A)52は、上記したフロントケース1のフック(A)12を中心軸Cに沿って挿通できる門型の突出部であり、リアケース7の後述する窓72からリアケース7の外周側に突出させてフック(A)12を係合させている。係止部(A)52は周方向の3か所に均等に分散配置されている。
【0032】
ストッパ円板6は、中心軸Cに沿った貫通孔62を中心に開けられた円板体であり、貫通孔62の側面に巻回軸体2の段差部突起28を係合させる係合凹部63を備える。係合凹部63に段差部突起28を係合させることで、ストッパ円板6は、巻回軸体2と共に中心軸Cの周りに回転できる。ストッパ円板6の頂面側の主面は平坦であり、底面側の主面は中心軸Cの周囲に渦巻き状(スパイラル状)に形成された溝64を備える(図4参照)。溝64についての詳細は後述する。
【0033】
リアケース7は、上記したように底面を有する略円筒形状を呈しており、底面部71a及び側面部71bを含む。側面部71bは底面側を小径とする段付き形状とされており、挿入された内リング5の底面側の端面をかかる段付き形状による内周側の段部に当接させて、底面部71aとの間に間隙を設けている。また、側面部71bには内リング5の係止部(A)52を突出させる窓72を頂面側の開口端に開放させるようにして3か所に備える。また、同開口端に揃えるように外周側に突出する係止部(B)73を備える。係止部(B)73は、上記したフロントケース1のフック(B)13を中心軸Cに沿って挿通できる門型の突出部であり、フック(B)13を係合させている。係止部(B)73もまた、周方向の3か所に均等に分散配置されている。
【0034】
リアケース7は、また、側面部71bに頂面側の端部から底面側に向けて延びるスリットであるハーネス導出スリット74を備えており、上記した内リング5のハーネス固定部54より外側の渦巻き部分31を挿通させて、外側端部33をリアケース7の外部に導いている。ハーネス導出スリット74に隣接し内リング5のハーネス固定部54に対向する位置には、上記したハーネス3の図示しない孔に挿通させた突起を収容する収容溝75が形成されている。収容溝75は、頂面側の端部から中心軸Cに沿って延びており、内リング5との組み合わせにおいて、側面部71bにかかる突起を干渉させないようにしている。
【0035】
リアケース7の底面部71aは、内側面(頂面側の面)に頂面側へ凸となる断面形状の曲面を有する突条76を備え、ストッパ円板6を円滑に回転させるようにするとともに、ストッパ円板6との間にストッパアーム8の回動可能な隙間を確保している。底面部71aは、さらにストッパアーム8の軸部81を挿入させる穴を備え、ストッパアーム8を中心軸Cに垂直な面内で回動自在となるよう軸支している。また、底面部71aの中心には、中心軸Cに沿って貫通孔77が設けられ、その内周面をすべり軸受として、巻回軸体2の小径部27を回転自在に支持している。なお、リアケース7は透明部材によって形成すると、ストッパアーム8と、溝64や終端部65及び66との位置関係を視認でき、回転角度を把握できて好ましい。ストッパアーム8の先端部分の位置を視認できるよう、底面部71aに孔や窓を設けてもよい。
【0036】
ストッパアーム8は、アーム状の本体の一方の端部に底面側へ延びる軸部81を備え、軸部81を上記したように天面部71aの穴に軸支されることで中心軸Cに垂直な面内で回動自在とされている。他方の端部には頂面側へ延びるピン82を備える。ピン82は略円筒形状を有し、ストッパ円板6の溝64内に差し込まれるように収容されることで溝64に沿って摺動自在とされる。
【0037】
図4に示すように、ストッパ円板6の溝64は、ストッパ円板6の底面側の主面に設けられた中心軸Cの回りに渦巻き状(スパイラル状)に延びる断面略方形の溝であり、内側の終端部65から外側の終端部66までおよそ11/4周強、中心軸Cを中心とした回転角度にして約1000度に亘って延びている。溝64は一定の幅と深さで終端部65及び終端部66の間を接続しており、ストッパ円板6の回転に対してピン82の収容を維持できる。また、溝64の渦巻きの形状は、ピン82が滑らかに摺動されるものであることが好ましい。これによりトルクの低い機械に取り付けても滑らかに動作させ得る。特に、終端部65及び終端部66は、ピン82の半径より大きな曲率半径の端面とされ、ピン82の当接及び離脱を滑らかに行い得ることが好ましい。ここでは、終端部65及び終端部66はともに底面側から見て溝64の幅を直径とする半円形となっており、ピン82の側面よりも大きな曲率半径を有している。
【0038】
図5を参照すると、上記のように各部材を組み合わせることで、フロントケース1、内リング5及びリアケース7を固定側部材とし、巻回軸体2、ハーネス押さえ4及びストッパ円板6を回転側部材として、貫通孔77と小径部27とのすべり軸受によって相対回転自在とされる。そして、固定側部材及び回転側部材にハーネス3の外側端部33近傍及び内側端部32近傍がそれぞれ固定され、渦巻き状に巻回されたハーネス3の渦巻部31を巻き付け又はほどきながら固定側部材及び回転側部材の相対的な回転を可能とする。また、内リング5は、上記したようにリアケース7の底面との間に間隙を有し、かかる間隙にストッパ円板6の外周部を配置させ、かかる配置を維持したままストッパ円板6を回転させる。なお、ストッパアーム8は、上記したように、リアケース7の底面部71aとストッパ円板6との間において突条76によって確保された隙間内に配置され、中心軸Cに直行する平面内で回動自在に底面部71aに軸支されている。同図においてストッパアーム8は紙面手前側に配置されるため表示されていない。
【0039】
次に、回転コネクタ装置10の回転角度を制限する機構の動作について、図6を用いて説明する。
【0040】
図6(a)に示すように、ストッパアーム8のピン82が底面側から差し込まれるようにストッパ円板6の溝64に収容されている。ここで、ストッパ円板6を底面側から見て反時計回りに回すと、ピン82は渦巻き状の溝64に沿って中心軸Cに近付くように略半径方向に移動し、軸部81を中心としてストッパアーム8を回動させる。また、ストッパ円板6を底面側から見て時計回りに回すと、ピン82は溝64に沿って中心軸Cから遠ざかるように略半径方向に移動し、軸部81を中心としてストッパアーム8を回動させる。
【0041】
図6(b)に示すように、ストッパ円板6を反時計回りに回し続けると、ピン82は溝64の内側の終端部65にやがて当接し、リアケース7に軸支される軸部81からストッパアーム8を介してピン82に終端部65を押し返す反力を付与される。これにより、これ以上ストッパ円板6は反時計回りに回すことができない。つまり、回転角度を制限される。ここで、ストッパ円板6を時計回りに回すと、かかる回転は制限されず、ピン82を終端部65から離隔させる。
【0042】
また、図6(c)に示すように、ストッパ円板6を時計回りに回し続けると、ピン82は溝64の外側の終端部66にやがて当接し、リアケース7に軸支される軸部81からストッパアーム8を介してピン82に終端部66を押し返す反力を付与される。これにより、これ以上ストッパ円板6は時計回りに回すことができない。つまり、回転角度を制限される。ここで、ストッパ円板6を反時計回りに回すと、かかる回転は制限されず、ピン82を終端部66から離隔させる。
【0043】
なお、図6(b)のように、ピン82を内側の終端部65に当接させたときに、中心軸C及びピン82を結ぶ直線L1と、ピン82及び軸部81を結ぶ直線L2とのなす角は、135度より小さいことが好ましい。終端部65によりピン82を押す力は直線L1におよそ垂直の方向に働くから、かかる力は軸部81を押す力とストッパアーム8を時計回りに回転させる方向の力とに分解できる。ここで、上記した角度が大きいと、ストッパアーム8を回転させる方向の力が大きくなり、材料の剛性や寸法公差によっては制限される回転角度を広げるなど不安定にしてしまう。よって、かかる角度を小さくして、材料の剛性を特に高くすることなく、また寸法公差を特に小さくすることなく、終端部65によりピン82を押す力の多くを軸部81を押す力として、所定の位置で回転角度を確実に制限できるようにするのである。
【0044】
また、図6(c)に示すように、ピン82を外側の終端部66に当接させたときに、中心軸C及びピン82を結ぶ直線L1と、ピン82及び軸部81を結ぶ直線L2とのなす角は、45度より大きいことが好ましい。これも同様に、終端部66によりピン82を押す力の多くを軸部81を押す力として、所定の位置で回転角度を確実に制限できるようにするのである。つまり、ストッパアーム8は、装置内において回動可能な範囲で長くして、ピン82と軸部81の距離を離すことが好ましい。
【0045】
上記したように、溝64は、内側の終端部65から外側の終端部66までおよそ1000度の回転角度を有しており、ストッパ円板6及びストッパアーム8によって制限される回転角度の範囲でストッパ円板6を回転させる。溝64の渦巻き形状を変えて終端部の位置を変えることで制限される回転角度は適宜変更可能である。ただし、この制限される回転角度の範囲は、ハーネス押さえ4の巻回部41に巻き付き又はほどかれるハーネス3に過度の負担を与えない範囲内とするようになされる。
【0046】
以上のように、回転コネクタ装置10によれば、固定側ストッパとして半径方向に異なる位置に終端部65及び66を備えるストッパ円板6と、移動側ストッパとして半径方向に移動するピン82を備えるストッパアーム8を設ける簡単な構造によって、1周より大きな回転が可能でその回転角度を制限できる。このような簡単な構造とすることで、回転コネクタ装置10を小型にすることができる。
【0047】
本実施例においては、また、フック(A)12及びフック(B)13などによって係止させる構造とすることで、ねじを使用しないビスレス構造とすることができ、これも小型化に寄与している。また、ハーネス3を上記したように薄い高屈曲FPCとすることで、巻き付き、ほどくよう変形させるハーネス3の寸法を小さくできる。さらにFPCとしたことで、取り付ける機械の電流値に合わせてハーネス3の幅を最小とするよう適宜設定できて、これによっても小型化に寄与する。これらにより、上記したように回転角度を約1000度とした上で、フロントケース1及びリアケース7による円筒体を直径40mm、高さ22mmと小型にすることができた。また、回転コネクタ装置10はユニット化されており汎用性高く用いられ得る。
【0048】
なお、ストッパアーム8の代わりに、溝64に挿入するピン体を半径方向に摺動させる摺動溝とピン体との組み合わせによって移動側ストッパを構成することもできる。また、溝64は必ずしも渦巻き状とする必要はなく、例えば、中心軸Cを中心とする半径の異なる複数の円周部分と半径方向に斜めに延びて円周部分同士を接続する直線部分との組み合わせからなる形状とすることによって終端部の半径方向の位置を異ならせるようにすることもできる。
【0049】
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく改変例を説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、当業者であれば、本発明の主旨又は添付した請求項の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
【符号の説明】
【0050】
1 フロントケース
2 巻回軸体
3 ハーネス
6 ストッパ円板
7 リアケース
8 ストッパアーム
64 溝
65 (内側の)終端部
66 (外側の)終端部
82 ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6