(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の含有量が、前記筆記具用インキ組成物の総質量を基準として0.0001質量%〜5質量%である、請求項1または2に記載の筆記具用インキ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準であり、含有量とは、インキ組成物の質量を基準としたときの構成成分の質量%である。
【0009】
<筆記具用インキ組成物>
本発明による筆記具用インキ組成物(以下、場合により、インキ組成物と表す。)は、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩と、着色剤と、溶媒と、を含んでなることを第一の特徴とする。以下、本発明によるインキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0010】
<カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩>
本発明のインキ組成物は、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩を含んでなる。
カルボキシアルキル化ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸にカルボキシアルキル基が付加された化合物である。
ヒアルロン酸は、基本的には、N−アセチルグルコサミンとグルクロン酸との二糖を繰返し単位とする化合物であり、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸は、前記ヒアルロン酸を構成する水酸基のうち一部の水酸基の水素原子が、カルボキシアルキル基に置換されているものである。
尚、前記カルボキシアルキル基とは、アルキレン基とカルボキシル基をもつものであり、−(CH
2)n−COOHまたは−(CH
2)n−COO
−(nは整数)で表すことができる。よって、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸の水酸基にアルキレン基を介してカルボキシル基が導入されたような化合物でもある。
【0011】
また、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩とは、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸を塩基で中和した塩であり、塩基としては、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸を中和することが可能であれば特に限定されない。具体的に、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0012】
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、下記式(1)で表される化合物である。
【0013】
【化1】
式(1)中、R
1〜R
5は独立して、水素原子、−(CH
2)n−COOHで表される基、または−(CH
2)n−COO
−で表される基を表し(ただし、R
1〜R
5がいずれも水素原子を表す場合を除く。)、nは1〜7500を示す。
【0014】
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、持続性を有する優れた保水力を有する。このため、保湿剤として効果的に働き、インキ中の溶媒の蒸発を抑制することができる。よって、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩をインキ組成物中に添加すると、その優れた保水力によりペン先からのインキの蒸発が抑制され、インキ組成物は、インキ粘度の増粘が抑制され、ペン先が大気に暫く晒された状態にあっても良好な筆跡を残すことができ、優れた耐ドライアップ性能を有するものとなる。
さらに、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の保水力は持続性を有するものであるから、経時的にも優れた耐ドライアップ性能をもつインキ組成物となる。
【0015】
これは、理由は定かではないが下記のように推測する。
一般に、分子内にカルボキシル基を複数有する高分子は、カルボキシル基同士の静電反発により網目構造を形成し、その網目構造中に水分子などを取り込むことができる。
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、ヒアルロン酸にカルボキシアルキル基が付加された化合物であり、分子内に多数のカルボキシル基を有する。このため、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、カルボキシル基同士の反発が起こり、網目構造が形成されやすい。さらに、カルボキシアルキル基はアルキレン基を有するため、形成される網目構造の隙間は、カルボキシル基を有するヒアルロン酸よりも大きくなることから、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は多くの水分子などを取り込むことができる保水スペースを形成するものと考えられる。また、ヒアルロン酸は、溶媒中で水素結合などの影響を受け三次元的な網目構造を形成するものであるから、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩においても、前述のような広い保水スペースをもつ網目構造を形成しながら、さらに、三次元的な網目構造を形成すると考えられる。よって、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、多くの水分子を効果的に、さらには長期的にも保持できるものであり、優れた保湿剤として働くことができると考える。
以上より、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩を含んでなる本発明のインキ組成物は、インキ中の溶媒の蒸発が抑制され、さらに、インキ粘度の増粘が抑制されるため、良好な耐ドライアップ性能を有し、良好な筆跡をもたらすことができるのである。
【0016】
前述の通り、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩が有するカルボキシアルキル基は、アルキレン基とカルボキシル基をもつものであり、−(CH
2)n−COOHまたは−(CH
2)n−COO
−で表すことができるが、インキ組成物の耐ドライアップ性能の向上を考慮すると、カルボキシアルキル基のもつアルキレン基の炭素数は1〜5であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。すなわち−(CH
2)n−COOHまたは−(CH
2)n−COO
−においてn=1〜5であることが好ましく、n=1〜3であることがより好ましい。これは、前記アルキレン基の炭素数が前記数値の範囲内であることにより、適度な保水スペースを維持することができるためである。
さらに、本発明においては、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩のインキ組成物中の安定性を考慮すると、前記アルキレン基の炭素数はn=1であることが特に好ましい。よって、−(CH
2)n−COOHまたは−(CH
2)n−COO
−においてn=1であることが特に好ましく、つまりは、前記カルボキシアルキル基はカルボキシメチル基であることが特に好ましく、よって、本発明に用いられるカルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、カルボキシメチルヒアルロン酸またはその塩であることが特に好ましい。
また、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩は、前述の通り、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられるが、中でも、本発明においては、ナトリウム塩であることが好ましく、よって、本発明におけるカルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩の好ましいものとしては、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0017】
本発明において、インキ組成物の耐ドライアップ性能の更なる向上を考慮すると、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩を少なくとも含んでなることが好ましい。さらには、カルボキシメチルヒアルロン酸の塩を、特にはカルボキシメチルヒアルロン酸ナトリウムを少なくとも含んでなることが好ましい。
前記カルボキシメチルヒアルロン酸ナトリウムとしては、下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
【0018】
【化2】
式(2)中、Rは、水素原子または−CH
2−COONaで表される。nは1〜7500を示す。
【0019】
前記カルボキシメチルヒアルロン酸ナトリウムを含んでなる市販品の一例としては、ヒアロキャッチシリーズ(キユーピー(株)製)等が挙げられ、具体的には、ヒアロキャッチ、ヒアロキャッチ−L等が挙げられる。
【0020】
また、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の平均分子量は、4000〜200万であることが好ましく、80万〜120万であることがより好ましい。これは、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の平均分子量が前記数値の範囲内であれば、インキ組成物中で高い保水力を維持しながらも、インキ組成物のインキ粘度を抑えることができ、優れたインキ追従性を維持して良好な筆跡を得ることができ、さらには、得られる筆跡の乾燥性を向上させる傾向にあるためである。
尚、本発明において、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の平均分子量は、以下の方法にて測定することができる。
ゲル濾過カラムを用いて、平均分子量が既知である複数の精製ヒアルロン酸(基準物質)を液体クロマトグラフィーで分析し、それらの保持時間より検量線を作成する。同様に、測定対象であるカルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩を液体クロマトグラフィーで分析し、前記検量線を用いて平均分子量を求めることで、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の平均分子量を求めることができる。
【0021】
前記液体クロマトグラフィー分析に使用することができる液体クロマトグラフィー分析装置としては、例えば、Waters Alliance 2690 HPLC Separations Module(Waters社製)、Waters Alliance 2695 HPLC Separations Module(Waters社製)、1200 Series(Agilent社製)が挙げられる。また、液体クロマトグラフィー分析に使用することができるカラムとしては、例えば、shodex社製 配位子交換クロマトグラフィー用カラム(配位子交換モード+サイズ排除モード)、型名「SUGAR KS−801」、「SUGAR KS−802」、「SUGAR KS−803」、「SUGAR KS−804」、「SUGAR KS−805」、「SUGAR KS−806」、「SUGAR KS−807」や、TOSOH製 サイズ排除クロマトグラフィーカラム、型名「TSKgel GMPW」が挙げられる。
【0022】
また、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の動粘度は、1〜200mm
2/sであることが好ましい。前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の動粘度が前記数値の範囲内であれば、インキ組成物の耐ドライアップ性能を維持しながらも、インキ粘度を抑えることができ、優れたインキ追従性を維持して良好な筆跡を得ることができる他、さらには、得られる筆跡の乾燥性を向上させる傾向にある。
尚、前記動粘度は、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業(株)製)を用いて測定することができるが、この際、流下秒数が200秒以上1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を選択する。測定は30℃の恒温水槽中で行ない、温度変化のないようにし、ウベローデ粘度計により測定された前記水溶液の流下秒数と、ウベローデ粘度計の係数との積により、動粘度(単位:mm
2/s)を求めることができる。
【0023】
また、本発明においてカルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩が、カルボキシメチルヒアルロン酸またはその塩である場合、前記カルボキシメチルヒアルロン酸またはその塩のカルボキシメチル化率は、5%〜200%であることが好ましく、10%〜200%であることがより好ましく、50%〜200%であることがさらに好ましく、60%〜150%であることが特に好ましい。
前記カルボキシメチル化率が前記数値の範囲内であれば、インキ組成物中に優れた保水性を付与しながらも、インキ粘度を抑えることができ、インキ組成物に優れた耐ドライアップ性能と優れたインキ追従性をもたらすことができる。
尚、前記カルボキシメチル化率とは、ヒアルロン酸を構成する2糖単位に対するカルボキシメチル化率であり、
1H−NMRスペクトルにおいて、ヒアルロン酸骨格中のC−2位に結合するN−アセチル基のメチル基(−CH
3)のプロトンを示すピーク(2ppm付近に発現)の積算値に対する、−CH
2−COOHまたは−(CH
2)n−COO
−で表される基中のメチレン基(−CH
2−)のプロトンを示すピーク(3.8ppm以上4.2ppm以下の範囲に発現)の積算値の割合(%)で表すことが可能である。
【0024】
本発明のインキ組成物における、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.0001〜5質量%であることが好ましく、0.0005〜5質量%であることがより好ましい。
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の含有量が前記数値の範囲内であれば、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の保湿剤としての効果を十分に得ながらも、インキ組成物のインキ粘度を抑え、優れたインキ追従性を維持して良好な筆跡を得ることができる。さらに、耐ドライアップ性能、インキ追従性の向上を考慮すると、0.0005〜1質量%であることがさらに好ましく、0.001〜0.5質量%であることが特に好ましい。
尚、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、1種または、2種以上の混合物として使用することが可能である。
【0025】
<着色剤>
本発明で用いる着色剤は、特に限定されないが、筆記具用インキ組成物に用いられる顔料、染料などを使用することができる。
【0026】
顔料としては、溶媒に分散可能であれば特に制限されるものではない。例えば、無機顔料、有機顔料、加工顔料などが挙げられるが、具体的にはカーボンブラック、アニリンブラック、群青、黄鉛、酸化チタン、酸化鉄、フタロシアニン系、アゾ系、キナクリドン系、キノフタロン系、スレン系、トリフェニルメタン系、ペリノン系、ペリレン系、ジオキサジン系、アルミ顔料、パール顔料、蛍光顔料、蓄光顔料等が挙げられる。その他、染料などで樹脂粒子を着色したような着色樹脂粒子や、色材を媒体中に分散させてなる着色体を公知のマイクロカプセル化法などにより樹脂壁膜形成物質からなる殻体に内包または固溶化させたマイクロカプセル顔料を用いても良い。
尚、顔料は、予め顔料分散剤を用いて微細に安定的に水媒体中に分散された水分散顔料製品等を用いてもよい。該顔料分散剤としては、水溶性樹脂、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などが挙げられる。
染料としては、溶媒に溶解可能であれば特に制限されるものではない。例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、含金染料、および各種造塩タイプ染料等が採用可能である。
これらの顔料および染料は、1種または、2種以上の混合物として使用してもかまわない。
【0027】
前記着色剤の中でも、耐水性、耐光性に優れ、良好な発色を示す優れた筆跡を得ることを考慮すると、顔料を用いることが好ましい。
また、顔料は染料とは異なり、インキ中において不溶状態で分散していることから、着色剤に顔料を用いた場合、一度、インキが乾燥固化して、インキ流路などが詰まってしまうと、後から追従されるインキにより、この詰まりを解消することは難しく、インキが残っている場合でも再び筆記できなくなる可能性が高い。よって、耐ドライアップ性能の向上は、顔料を用いたインキにおいてより大きな課題である。本発明に用いられる前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、前述の通り、高い保水力をもち、保湿剤として効果的に働くことから、顔料を用いた場合にも、インキ組成物に優れた耐ドライアップ性能をもたらすことが可能であり、さらには、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩は、顔料の分散安定性に影響を与えることなく、保湿効果を付与できる傾向にあるため、顔料とカルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩と併用することは、特に効果的である。
【0028】
本発明のインキ組成物における着色剤の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.1〜30質量%であることが好ましい。
【0029】
<溶媒>
本発明に用いる溶媒は、従来の筆記具用水性インキ組成物や筆記具用油性インキ組成物に用いられる溶媒を使用することができる。
具体的には水が挙げられ、水としては特に制限なく、例えば、水道水、イオン交換水、限外ろ過水または蒸溜水などが挙げられる。
また、ポリエチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール溶剤や、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコールエーテル溶剤、さらには、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール溶剤なども挙げられる。
これらを1種または、2種以上の混合物として使用することが可能である。
【0030】
中でも、本発明においては、水または、水に溶解可能な有機溶剤(水溶性有機溶剤)と水からなる混合溶媒を用いることが好ましく、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩の溶解安定性や、保湿剤としての効果を効率良く得ることを考慮すると、本発明のインキ組成物は、筆記具用水性インキ組成物として調整することが好ましい。
また、耐ドライアップ性能の更なる向上を考慮すると、前記水溶性有機溶剤の中でも、多価アルコール溶剤を選択して用いることが好ましい。これは、前記多価アルコール溶剤を用いることで、多価アルコール溶剤の吸湿効果をインキ組成物に付与することができるためである。よって、本発明のインキ組成物において、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩がもつ優れた保水力による溶媒蒸発抑制効果と、多価アルコール溶剤の吸湿効果により、相乗的に保湿効果が向上し、優れた耐ドライアップ性能が得られ、長期間、または乾燥状態が強い環境においてペン先が大気に晒された状態にあっても、良好な筆跡を得ることができる。
【0031】
特に、本発明においては、前記多価アルコール溶剤の中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンの中から1種以上を選択して用いることが好ましい。
エチレングリコールやジエチレングリコールを用いた場合には、インキ粘度の上昇をさらに抑えながら、優れた耐ドライアップ性能を得ることができることから、万年筆やマーキングペン(サインペン)などのようなインキ粘度を特段に考慮する必要がある筆記具に好適に用いることができる。また、グリセリンを用いた場合には、グリセリンの高い吸湿性により、さらに優れた耐ドライアップ性を得ることができることから、着色剤に顔料を用いた場合や、出没式筆記具のような特段に耐ドライアップ性能を考慮する必要がある筆記具に充填して用いる場合に、好適に用いることができる。
【0032】
インキ組成物における溶媒の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、10〜99質量%であることが好ましい。
尚、前記多価アルコール溶剤を用いる場合、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩と、前記多価アルコール溶剤の総含有量は、耐ドライアップ性能の向上、インキ追従性の向上、さらにトギレやカスレが改善された良好な筆跡が得られることを考慮すると、0.1〜30質量%であることが好ましい。
【0033】
また、本発明のインキ組成物は、多糖類を更に含んでいても構わない。
前記多糖類としては、プルラン、アミロース、キシログルカン、アミロペクチン、デキストラン、デキストリン、シクロデキストリン、マンナン、ヒドロキシデキストラン、レバン、イヌリン、キチン、キトサン、またはそれらのステロール誘導体、さらには水溶性セルロースなどが挙げられる。これらの多糖類は、1種または2種以上の混合物として使用することが可能である。
前記多糖類はペン先に被膜を形成し、その被膜によりインキ中の溶媒の蒸発を防ぐことができる。このため、本発明において、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩とともに多糖類を用いることは、耐ドライアップ性能をさらに向上させることができることから、効果的である。耐ドライアップ性能の向上や前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩との相溶性を考慮すると、前記多糖類は、デキストリン、プルラン、またはそれらのステロール誘導体を用いることが好ましく、さらには、デキストリン、またはプルランのコレステロール誘導体(コレステロールプルラン)を用いることが好ましい。
【0034】
前記多糖類にデキストリンを用いる場合、前記デキストリンの重量平均分子量については、5000〜120000であることが好ましい。120000以上であると、ペン先に形成される被膜が硬く、ドライアップ時の書き出しにおいて、筆跡がかすれやすくなる傾向があり、一方、5000未満だとデキストリンの吸湿性が高くなり、ペン先に生ずる被膜が柔らかくなりやすく、ペン先で安定した被膜が維持しにくくなることから、インキ中の溶媒の蒸発を抑制しにくい傾向にあるためである。さらに、重量平均分子量が20000より小さいと、被膜は薄くなりやすい傾向にあるため、重量平均分子量が、20000〜100000であることが最も好ましい。
【0035】
尚、前記多糖類の含有量は、インキ組成物の総質量を基準として、0.001〜10質量%であることが好ましい。
【0036】
更に、本発明においては、必要に応じて剪断減粘性付与剤を添加し、インキに適当な粘性を与えて実用に供することができる。用いられる剪断減粘性付与剤は従来公知のものから適宜選択することができ、その具体例としては、キサンタンガム、サクシノグリカン、カラギーナン等の多糖類、ポリアクリル酸、架橋型アクリル酸、ポリビニルアセトアミド、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、会合性ウレタンエマルジョン等が挙げられ、1種または、2種以上の混合物として使用することが可能である。
【0037】
また、本発明のインキ組成物は、インキ物性や機能を向上させる目的で、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、キレート剤、保湿剤などの各種添加剤を含んでいてもよい。
【0038】
pH調整剤としては、アンモニア、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物、酢酸ナトリウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどの塩基性有機化合物、乳酸およびクエン酸などが挙げられ、インキ組成物の経時安定性を考慮すれば、塩基性有機化合物を用いることが好ましく、より考慮すれば、弱塩基性であるトリエタノールアミンを用いることが好ましい。これらのpH調整剤は1種または、2種以上の混合物として使用してもかまわない。
【0039】
防錆剤としては、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、チオ硫酸ナトリウム、サポニン、またはジアルキルチオ尿素などが挙げられる。
【0040】
防腐剤としては、フェノール、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸プロピル、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルフォニル)ピリジン、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オンなどが挙げられる。
【0041】
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(GEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)およびそれらのアルカリ金属塩、アンモニウム塩またはアミン塩などが挙げられる。
【0042】
保湿剤としては、前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩のほかに、他の保湿剤を含んでいても良く、尿素、またはソルビット、N,N,N−トリアルキルアミノ酸などがあげられるが、特に、本発明においては、N,N,N−トリアルキルアミノ酸を更に含んでなることが好ましい。N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、高い吸湿性能を備えるため、本発明に用いられるカルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩と併用することで、さらに高い保湿効果が得られ、耐ドライアップ性能を向上させることができる。また、優れた耐ドライアップ性能を維持しながらも、後述するような低粘度インキ組成物や超低粘度インキ組成物として調整しやすく、さらに筆跡乾燥性をも向上しやすいため、本発明において、N,N,N−トリアルキルアミノ酸を更に含んでなることは、特に効果的である。
【0043】
前記N,N,N−トリアルキルアミノ酸は、下記式(3)で表せるものである。
【化3】
【0044】
式(3)中のR
1〜R
3としては、直鎖または分岐鎖のアルキル基を広く用いることができる。すなわち、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等が例示される。なおR
1〜R
3は同一であっても異なっていてもよい。
具体的には、n=1のトリメチルグリシン、トリエチルグリシン、トリプロピルグリシン、トリイソプロピルグリシン、n=2のトリメチル−β−アラニン、n=3のトリメチル−γ−アミノ酪酸等が挙げられる。
耐ドライアップ性能の向上やインキ組成物の保存安定性の向上などを考慮すると、トリメチルグリシンを選択して用いることが好ましい。
【0045】
さらに、樹脂エマルジョンとして、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂など含むエマルジョンを添加することができる。
【0046】
さらには、各種界面活性剤を含んでも良い。ノニオン系、アニオン系、カチオン系界面活性剤などが挙げられ、アセチレン結合を構造中に有した界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0047】
また、本発明のインキ組成物をボールペンに用いる場合、潤滑剤を用いることが好ましい。
潤滑剤は、ボールペンが有するボールとボールペンチップのボール座との間の潤滑性を向上して、ボールの回転をスムーズにすることで、ボール座の摩耗を抑制し、書き味を向上するものであり、本発明においては、リン酸エステル系界面活性剤や脂肪酸を用いることが好ましい。
【0048】
中でも、本発明においては、リン酸基を有するリン酸エステル系界面活性剤を用いることがより好ましい。これは、リン酸基は金属に吸着しやすい性質があることから、潤滑性を向上させ、ボール座の摩耗抑制や書き味が向上しやすいためである。
前記リン酸エステル系界面活性剤の種類としては、直鎖アルコール系、スチレン化フェノール系、ノニルフェノール系、オクチルフェノール系等が挙げられる。この中でも、フェニル骨格を有すると立体障害により潤滑性に悪影響が出やすいことから、フェニル骨格を有さないリン酸エステル系界面活性剤を用いることが好ましい。これらは、1種または、2種以上の混合物として使用してもかまわない。
【0049】
前記リン酸エステル系界面活性剤の具体例としては、プライサーフシリーズ(第一工業製薬(株)製)の中から、プライサーフA212C、同A208B、同A213B、同A208F、同A215C、同A219B、同A208N等が挙げられる。
また、前記脂肪酸の具体例としては、OSソープ、NSソープ、FR−14、FR−25(花王(株)製)等が挙げられる。
これらのリン酸エステル系界面活性剤、脂肪酸は、1種または、2種以上の混合物として使用してもかまわない。
【0050】
<インキ組成物の製造方法>
本発明によるインキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、マグネットホットスターラー、プロペラ攪拌機、ホモジナイザー攪拌機、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0051】
<筆記具>
本発明の筆記具用インキ組成物を充填する筆記具自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、従来から汎用のものが適用でき、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップをペン先としたマーキングペン(サインペン)や、ボールペンチップなどをペン先としたボールペン、さらに、金属製のペン先を用いた万年筆など、各種筆記具に用いることができる。
【0052】
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具としては、インキ組成物を直に充填する構成のものであってもよく、インキ組成物を充填することのできる、インキ収容体またはインキ吸蔵体を備えるものであってもよい。また、前記インキ収容体またはインキ吸蔵体が、筆記具本体に着脱自在に交換可能な構造をもつインキカートリッジ式筆記具およびコンバーター式筆記具であってもよい。
【0053】
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具は、ペン先を覆うキャップを備えたキャップ式筆記具や、ノック式、回転式およびスライド式などの軸筒内にペン先を収容可能な出没式筆記具が挙げられる。
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩を含んでなる本発明のインキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れることから、常にペン先が大気に晒されているような状況となる出没式筆記具に好適に用いることができる。
【0054】
また、本発明のインキ組成物を用いることができる筆記具の供給機構についても特に限定されるものではなく、例えば、(機構1)繊維収束体などからなるインキ誘導部をインキ流量調節部材として備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構2)くし溝状のインキ流量調節部材を備え、これを介在させ、インキ組成物をペン先に供給する機構、(機構3)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、および(機構4)インキ流量調節部材なしに直接、インキ組成物をペン先に供給する機構などを挙げることができる。
前記カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩を含んでなる本発明のインキ組成物は、優れた耐ドライアップ性能を維持しながら、インキ組成物のインキ粘度を、剪断速度380sec
−1において50mPa・s以下であるような低粘度インキ組成物はもとより、剪断速度380sec
−1において2mPa・s以下であるような超低粘度インキ組成物にも調整することが可能である。このため、供給機構の特性から、インキ粘度が前記低粘度インキ組成物乃至前記超低粘度インキ組成物の範囲内であるインキ組成物を主に充填して用いるような前記(機構1)、(機構2)、(機構3)の供給機構を備える筆記具に好適に用いることができる。また、本発明のインキ組成物は、剪断減粘性付与剤を含んでなる場合、前記(機構4)の供給機構を備える筆記具にも、好適に用いることができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
<実施例1>
下記の配合組成および方法により、インキ組成物を得た。
・カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩 0.005質量%
(カルボキシメチルヒアルロン酸ナトリウムの1%水溶液:0.5質量%)
・着色剤 4.0質量%
(カーボンブラックの15%水分散体:26.6質量%)
・pH調整剤 1.0質量%
(トリエタノールアミン)
・防腐剤 0.05質量%
(1,2−ベンズイソチアゾリン-3-オン)
・水 残部
カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩、pH調整剤、防腐剤、水をプロペラ攪拌機により混合してベース液を得た。その後、該ベース液に着色剤を添加し、プロペラ攪拌機により混合して、インキ組成物を得た。
尚、得られたインキ組成物において、JIS Z 8803:2011に従って、B型回転粘度計(機種:BLII、ローター:BLアダプタ、東機産業株式会社製、サンプル量20ml)を用いて、20℃、回転速度60rpmにおけるインキ粘度を測定したところ、1.80mPa・sであった。
【0057】
<実施例2〜実施例8、比較例1〜比較例2>
実施例2〜実施例8および比較例1〜比較例2は、インキ組成物に含まれる成分の種類や配合量を表1〜表3において表される組成に変更した以外は、実施例1と同じ方法でインキ組成物を得た。
【0058】
<試験用筆記具(万年筆)の作製>
実施例1〜実施例8および比較例1〜比較例2のインキ組成物を、ポリエチレン製のインキカートリッジに注入し、金メッキしたステンレス製のペン先を有し、くし溝状のインキ流量調節部材を備えたノック式の出没式筆記具((株)パイロットコーポレーション製万年筆、FCN−1MR−BM)に装着し、万年筆を得た。得られた万年筆を試験用筆記具(万年筆)とし、耐ドライアップ性能試験を行い評価した。
【0059】
<耐ドライアップ性能試験>
得られた試験用筆記具(万年筆)のペン先を繰り出してペン先を大気に晒し、横置きにした状態で、20℃、65%RHの環境下で30分間放置した後、試験用紙(日本製紙(株)製の上質紙(しらおい4/6T)に、「V」という文字(文字の大きさは、縦横約8mm)を連続筆記し、筆跡がかすれなくなる程度に復帰するまでの文字数を数えた。前記試験を5回繰り返して平均値を算出し、下記の評価基準に従って評価した。得られた評価結果を表1〜表3にまとめた。
◎:復帰したまでの文字数が、3文字未満であった。
○:復帰したまでの文字数が、3文字以上6文字未満であった。
△:復帰したまでの文字数が、6文字以上8文字未満であった。
×:復帰したまでの文字数が、8文字以上10文字未満であった。
××:10文字筆記しても、筆跡は復帰できなかった。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
表1〜表3により、実施例1〜実施例8のインキ組成物は、比較例1〜比較例2のインキ組成物と比較して、復帰するまでの文字数が少なく、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩を含んでなるインキ組成物は、耐ドライアップ性に優れていることがわかった。
【0064】
また、実施例5の配合組成のうちカルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩を除いた以外は実施例5と同じ方法で得たインキ組成物(比較例3)と、実施例8の配合組成のうちカルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩を除いた以外は実施例8と同じ方法で得たインキ組成物(比較例4)を、ポリエチレン製のインキカートリッジに注入し、金メッキしたステンレス製のペン先を有し、くし溝状のインキ流量調節部材を備えたノック式の出没式筆記具((株)パイロットコーポレーション製万年筆、FCN−1MR−BM)に装着し、万年筆を得て、この得られた万年筆を試験用筆記具(万年筆)として、前述と同じ方法で耐ドライアップ性能試験を行い評価した。
この結果、実施例5のインキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)の方が、比較例3のインキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)と比較して復帰するまでの文字数は少なかった。また、実施例8のインキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)の方が、比較例4のインキ組成物を用いた試験用筆記具(万年筆)と比較して復帰するまでの文字数は少なかった。以上より、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩が、保湿剤として効果的に働き、耐ドライアップ性能に優れたインキ組成物をもたらすことがわかった。
【0065】
<実施例9>
下記の配合組成および方法によりインキ組成物を得た。
・カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩 0.1質量%
(カルボキシメチルヒアルロン酸ナトリウムの1%水溶液:10.0質量%)
・着色剤 6.0質量%
(カーボンブラックの20%水分散体:30.0質量%)
・剪断減粘性付与剤 0.3質量%
(キサンタンガム)
・潤滑剤 1.0質量%
(リン酸エステル系界面活性剤(直鎖アルコール系))
・多糖類 1.0質量%
(デキストリン)
・pH調整剤 2.0質量%
(トリエタノールアミン)
・キレート剤 0.5質量%
(エチレンジアミン四酢酸)
・防錆剤 0.5質量%
(ベンゾトリアゾール)
・水 残部
カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩、着色剤、潤滑剤、多糖類、pH調整剤、キレート剤、防錆剤、水をマグネットホットスターラーで加温攪拌などして、ベースインキを作製した。
その後、上記作製したベースインキを加温しながら、剪断減粘性付与剤を投入してホモジナイザー攪拌機を用いて均一な状態となるまで充分に混合攪拌した後、濾紙を用いて濾過を行い、実施例9のインキ組成物を得た。
【0066】
<比較例5>
実施例9の配合組成のうち、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩を除いた以外は、実施例9と同じ方法で比較例5のインキ組成物を得た。
【0067】
<試験用筆記具(ボールペン)の作製>
実施例9、比較例5のインキ組成物(1.0g)を充填したインキ収容体(ポリプロピレン製)の先端に、チップホルダーを介して、ボール(ボール径0.7mm)を回転自在に抱持したステンレス製のボールペンチップを具備したレフィルを(株)、パイロットコーポレーション製のノック式の出没式ゲルインキボールペン(LG−20F−B)の外装に組み、ボールペンを得た。得られたボールペンを試験用筆記具(ボールペン)とした。
【0068】
得られた試験用筆記具(ボールペン)のペン先を繰り出して、ペン先を大気に晒し、横置きにした状態で、50℃、全乾の環境下で1日間放置した後、試験用紙(JIS P3201、筆記用紙A)に、「V」という文字(文字の大きさは、縦横約8mm)を連続筆記し、筆跡がかすれなくなる程度に復帰するまでの文字数を数えたところ、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩を含んでない比較例5のインキ組成物を用いた試験用筆記具(ボールペン)よりも、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸の塩を含んでなる実施例9のインキ組成物を用いた試験用筆記具(ボールペン)の方が、復帰するまでの文字数は少なく、実施例9の筆記具用インキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れていることがわかった。
【0069】
以上より、カルボキシアルキル化ヒアルロン酸またはその塩と、着色剤と、溶媒と、を含んでなる筆記具用インキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れており、ペン先が暫く大気に晒された状態においても良好な筆跡をもたらすことがわかった。さらには、万年筆やマーキングペン(サインペン)に用いられるような低粘度インキ組成物、さらには超低粘度インキ組成物としても調整可能であり、インキ追従性にも優れたものとなり良好な筆跡を残すことができること、また、ボールペン用インキ組成物としても調整可能であり、さらには、常にペン先が大気に晒されているような状況となり得るような出没式筆記具に用いた場合においても、良好な筆跡をもたらすことがわかった。
よって、本発明の筆記具用インキ組成物は、耐ドライアップ性能に優れ、良好な筆跡をもたらし、また、前記筆記具用インキ組成物を用いた筆記具は、筆記具として優れたものとなることがわかった。