(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
◇支持シート、保護膜形成用複合シート
本発明の支持シートは、基材と、前記基材上に積層された粘着剤層と、を備え、前記基材の、前記粘着剤層を備えている側の表面(以下、「第1面」と称することがある)における表面粗さ(Ra)が0.4μm以下であり、前記基材の、前記粘着剤層を備えている側とは反対側の表面(以下、「第2面」と称することがある)における表面粗さ(Ra)が、前記粘着剤層を備えている側の表面(第1面)における表面粗さよりも大きく、かつ0.053〜0.48μmとなっているものである。
前記支持シートは、下記保護膜形成用複合シートを構成するためのものであり、例えば、ダイシングシート等の、半導体ウエハの加工用シートとして用いることができる。
【0016】
なお、本明細書においては、便宜上、基材の両面のうち、表面粗さが小さい方の面(例えば、表面粗さが0.4μm以下である面、第1面)を平滑面と称し、表面粗さが大きい方の面(例えば、表面粗さが0.053〜0.48μmである面、第2面)を凹凸面と称することがある。すなわち、基材の平滑面、凹凸面という呼び名は、必ずしもこれらの面の絶対的な平滑度を表す訳ではなく、これらの面の相対的な平滑度の大小関係を表すものとする。
【0017】
本発明の保護膜形成用複合シートは、前記支持シートを備え、前記支持シートにおける前記粘着剤層上に、さらに保護膜形成用フィルムを備えてなるものである。
前記保護膜形成用複合シートは、前記基材として、その第1面及び第2面の表面粗さが特定の範囲内にあり、第2面の表面粗さが第1面の表面粗さよりも大きいものを備えていることにより、ブロッキングの抑制、保護膜への鮮明なレーザー印字、及び半導体ウエハ又は半導体チップの鮮明な検査画像の取得がすべて可能となっている。また、前記保護膜形成用複合シートは、基材の第1面の表面粗さが特定の範囲内にあり(小さい値であり)、凹凸度が低いことにより、粘着剤層を柔らかめのものとして十分に厚くすることが不要であり、粘着剤層による基材の第1面の埋め込みが不十分となることと、チッピングの発生という、不具合の発生も抑制される。
【0018】
以下、まず、図面を引用しながら、本発明の支持シート及び保護膜形成用複合シートの全体の構成について説明する。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の支持シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す支持シート1は、基材11上に粘着剤層12を備えてなり、さらに、粘着剤層12上に剥離フィルム15を備えてなる。
基材11の一方の表面(第1面)11aには、粘着剤層12が積層されており、基材11の他方の表面、すなわち、粘着剤層12を備えている側とは反対側の表面(第2面)11bは、露出面となっている。
【0020】
基材11のうち、第1面11aは、表面粗さが0.4μm以下となっており、第2面11bは、表面粗さが第1面11aの表面粗さよりも大きく、かつ0.053〜0.48μmとなっている。
なお、本明細書において「表面粗さ」とは、特に断りのない限り、JIS B0601:2001に準拠して求められる、いわゆる算術平均粗さを意味し、「Ra」と略記することがある。
【0021】
粘着剤層12の一方の表面、すなわち、基材11が設けられている側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)12aには、ここでは剥離フィルム15が設けられているが、支持シート1の使用時には、剥離フィルム15が取り除かれ、例えば、代わりに保護膜形成用フィルムが積層されて、保護膜形成用複合シートが構成される。なお、符号12bは、粘着剤層12の他方の表面、すなわち、基材11が設けられている側の表面(以下、「第2面」と称することがある)を意味する。
【0022】
図2は、本発明の保護膜形成用複合シートの一実施形態を模式的に示す断面図である。なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
ここに示す保護膜形成用複合シート101は、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム13を備えてなる。保護膜形成用複合シート101は、支持シート1を用いて構成可能なものであり、支持シート1における粘着剤層12上に、さらに保護膜形成用フィルム13を備えてなるものともいえる。
【0023】
保護膜形成用フィルム13は、粘着剤層12の第1面12aの全面に積層されている。
また、保護膜形成用フィルム13の粘着剤層12が設けられている側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域には、治具用接着剤層14が積層されている。
そして、保護膜形成用フィルム13の第1面13aのうち、治具用接着剤層14が積層されていない面と、治具用接着剤層14の保護膜形成用フィルム13と接触していない面(第1面14a及び側面14c)に、剥離フィルム15が積層されている。ここで、治具用接着剤層14の第1面14aとは、治具用接着剤層14の保護膜形成用フィルム13と接触している側とは反対側の表面であり、治具用接着剤層14の第1面14a及び側面14cの境界が明確に区別できない場合もある。また、治具用接着剤層14の側面14cには、剥離フィルム15が接触していないこともある。保護膜形成用複合シート1は、通常、このように剥離フィルム15を備えた状態で保管される。なお、
図2中、符号15aは、剥離フィルム15の保護膜形成用フィルム13と接触している側とは反対側の表面(以下、「第1面」と称することがある)を示している。
【0024】
保護膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム13の第1面13aにより、半導体ウエハ(図示略)の回路が形成されている面(本明細書においては「回路形成面」と略記することがある)とは反対側の面(本明細書においては「裏面」と略記することがある)に貼付され、さらに、治具用接着剤層14の第1面14aがリングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0025】
保護膜形成用複合シート101において、基材11の第2面11bは、表面粗さが0.053〜0.48μmとなっており、この表面粗さは、基材11の第1面11aの表面粗さよりも大きく、適度な凹凸形状を有する。これにより、保護膜形成用複合シート101を巻き取ってロールとしたときには、ロールの接触面同士、すなわち、積層されている保護膜形成用複合シート101のうち、一方の基材11の第2面11bと、他方の剥離フィルム15の第1面15aとの間で、貼り付きが抑制され、ブロッキングが抑制される。
【0026】
また、半導体装置の製造過程において、保護膜形成用フィルム13は、半導体ウエハ又は半導体チップの回路形成面とは反対側の面(裏面)に貼付された状態で、硬化により保護膜とされた後、基材11の第2面11b側からのレーザー光の照射によって印字(レーザー印字)が行われることがある。このとき、レーザー光は、基材11の第2面11b側から支持シート1に入射し、保護膜に到達する。したがって、上記のとおり、基材11の第2面11bは適度な凹凸形状を有し、凹凸度が低いことにより、基材11の第2面11bにおけるレーザー光の乱反射が抑制され、保護膜へ鮮明にレーザー印字できる。
【0027】
また、半導体装置の製造過程において、保護膜形成用複合シート101若しくは保護膜を備えた半導体ウエハ又は半導体チップは、これら保護膜形成用複合シート101若しくは保護膜を介して、赤外線カメラ等によって検査されることがある。このとき、上記のとおり、基材11の第2面11bは適度な凹凸形状を有し、凹凸度が低いことにより、基材11の第2面11bにおける赤外線の乱反射が抑制され、鮮明な検査画像を取得できる。
【0028】
また、従来の保護膜形成用複合シートのように、基材の凹凸面に粘着剤層が設けられている場合には、この凹凸面が粘着剤層に及ぼす影響を軽減するために、粘着剤層を柔らかめで十分に厚いものにする必要がある。これは、粘着剤層が硬めであると、基材表面の凸部の根元付近の部位に粘着剤層が充填されずに、空隙部が生じることがあり、粘着剤層が薄いと、基材表面の凹凸形状を反映して、保護膜形成用フィルムの基材側の面(裏面)が凹凸面となってしまうからである。これらのように、基材表面の凹凸形状の粘着剤層による埋め込みが不十分な場合には、上述のように保護膜に対してレーザー印字を施すと、印字が不鮮明になってしまうし、半導体ウエハ又は半導体チップの鮮明な検査画像も取得できない。しかし、粘着剤層が厚過ぎる場合には、例えば、ダイシング工程において切断中の粘着剤層が振動し易いために、半導体チップや、半導体チップとなる過程の切断中の半導体ウエハも振動し易くなることで、半導体チップに余計な力が加わって割れや欠けが発生し易い(チッピングが発生し易い)。このように、基材の凹凸面に粘着剤層を設ける場合には、種々の不具合が発生し易い。
しかし、本発明の保護膜形成用複合シート101においては、基材11のうち、粘着剤層12が設けられている第1面11aは、表面粗さが0.4μm以下で平滑度が高い(凹凸度が低い)ため、上述のような不具合を回避できる。すなわち、保護膜形成用複合シート101においては、基材11の第1面11aを粘着剤層12によって十分に埋め込むことができ、また、粘着剤層12を厚く形成する必要がないので、チッピングを抑制できる。
【0029】
図3は、本発明の保護膜形成用複合シートの他の実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用フィルムの形状が異なり、さらに治具用接着剤層を備えていない点以外は、
図2に示す保護膜形成用複合シート101と同じである。すなわち、保護膜形成用複合シート102は、基材11上に粘着剤層12を備え、粘着剤層12上に保護膜形成用フィルム23を備えてなり、さらに、保護膜形成用フィルム23上に剥離フィルム15を備えている。
【0030】
保護膜形成用フィルム23は、粘着剤層12の第1面12aの一部、すなわち、支持シート1の幅方向(
図3における左右方向)における中央側の領域に積層されている。
また、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面と、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12と接触していない表面(第1面23a及び側面23c)に、剥離フィルム15が積層されている。ここで、保護膜形成用フィルム23の第1面23aとは、保護膜形成用フィルム23の粘着剤層12と接触している側とは反対側の表面であり、保護膜形成用フィルム23の第1面23a及び側面23cの境界が明確に区別できない場合もある。また、保護膜形成用フィルム23の側面23cには、剥離フィルム15が接触していないこともある。保護膜形成用複合シート102は、通常、このように剥離フィルム15を備えた状態で保管される。
【0031】
保護膜形成用複合シート102は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aにより、半導体ウエハ(図示略)の裏面に貼付され、さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面が、リングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0032】
保護膜形成用複合シート102も、基材11の第1面11aの表面粗さが0.4μm以下であり、第2面11bの表面粗さが、第1面11aの表面粗さよりも大きく、かつ0.053〜0.48μmとなっている。これにより、保護膜形成用複合シート102は、保護膜形成用複合シート101の場合と同様に、粘着剤層12による基材11の第1面11aの埋め込みが不十分となることと、チッピングの発生という不具合を生じることなく、ブロッキングの抑制、保護膜への鮮明なレーザー印字、及び半導体ウエハ又は半導体チップの鮮明な検査画像の取得がすべて可能となっている。
【0033】
図4は、本発明の保護膜形成用複合シートの、さらに他の実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示す保護膜形成用複合シート103は、粘着剤層12の第1面12aのうち、保護膜形成用フィルム23が積層されていない面、すなわち、周縁部近傍の領域に、さらに治具用接着剤層14が積層されている点以外は、
図3に示す保護膜形成用複合シート102と同じものである。
【0034】
保護膜形成用複合シート103は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、保護膜形成用フィルム23の第1面23aにより、半導体ウエハ(図示略)の裏面に貼付され、さらに、治具用接着剤層14の第1面14aがリングフレーム等の治具に貼付されて、使用される。
【0035】
保護膜形成用複合シート103も、基材11の第1面11aの表面粗さが0.4μm以下であり、第2面11bの表面粗さが、第1面11aの表面粗さよりも大きく、かつ0.053〜0.48μmとなっている。これにより、保護膜形成用複合シート103は、保護膜形成用複合シート101の場合と同様に、粘着剤層12による基材11の第1面11aの埋め込みが不十分となることと、チッピングの発生という不具合を生じることなく、ブロッキングの抑制、保護膜への鮮明なレーザー印字、及び半導体ウエハ又は半導体チップの鮮明な検査画像の取得がすべて可能となっている。
【0036】
本発明の保護膜形成用複合シートは、
図2〜4に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図2〜4に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
次に、本発明の支持シート及び保護膜形成用複合シートの各層の構成について説明する。
【0037】
◎基材
前記基材の、前記粘着剤層を備えている側の表面(第1面)における表面粗さは、0.4μm以下であり、例えば、0.37μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、0.1μm以下、0.09μm以下、0.08μm以下、0.07μm以下、及び0.06μm以下等のいずれかとすることができるが、これらは一例である。
前記基材の第1面における表面粗さの下限値は、特に限定されず、例えば、0.01μm等とすることができるが、これは一例である。
前記第1面における表面粗さの好ましい例としては、0.01〜0.4μm、0.01〜0.37μm、0.01〜0.3μm、0.01〜0.2μm、0.01〜0.1μm、0.01〜0.09μm、0.01〜0.08μm、0.01〜0.07μm、及び0.01〜0.06μmが挙げられる。
【0038】
前記基材の、前記粘着剤層を備えている側とは反対側の表面(第2面)における表面粗さは、0.053〜0.48μmであり、この範囲内で、例えば、0.055μm以上、0.08μm以上、0.15μm以上、0.25μm以上、0.35μm以上等とすることができ、また、0.47μm以下、0.45μm以下、0.35μm以下、0.25μm以下、0.15μm以下等とすることもできるが、これらは一例である。
前記第2面における表面粗さの好ましい例としては、0.053〜0.47μm、0.053〜0.45μm、0.053〜0.35μm、0.053〜0.25μm、及び0.053〜0.15μmが挙げられる。
前記第2面における表面粗さの好ましい他の例としては、0.055〜0.48μm、0.08〜0.48μm、0.15〜0.48μm、0.25〜0.48μm、及び0.35〜0.48μmが挙げられる。
ただし、前記第2面における表面粗さは、前記第1面における表面粗さよりも大きい。
【0039】
前記基材は、例えば、原料となる基材(以下、「原料基材」と略記することがある)を用いて、平滑面及び凹凸面を同時に形成する方法や、平滑面及び凹凸面を別々に形成する方法により、作製できる。
【0040】
平滑面及び凹凸面を同時に形成する基材の作製方法としては、例えば、ロール面の平滑度が互いに異なるひと組のロールの間に、原料基材を挟み込んで、これらロールを回転させながらロール面間を通過させることで、原料基材に対して、平滑度が大きいロール面(ロールの平滑面)からは平滑面を形成し、平滑度が小さいロール面(ロールの凹凸面)からは凹凸面を形成して、基材を作製する方法が挙げられる。
【0041】
一方、平滑面及び凹凸面を別々に形成する基材の作製方法としては、例えば、片面又は両面の表面粗さが0.4μm以下である原料基材を用い、最終的に平滑面(表面粗さが0.4μm以下である面)とする一方の表面を決定し、これとは異なる他方の表面を、前記平滑面よりも表面粗さが大きい凹凸面(表面粗さが0.053〜0.48μmである面)となるように、平滑化処理又は凹凸化処理することで、基材を作製する方法が挙げられる。このときの平滑化処理又は凹凸化処理の方法としては、例えば、上述のようなロールの平滑面又は凹凸面等に原料基材を押圧する、いわゆる型押し法が挙げられる。
上記のように、ロール面等の形状を転写することにより、原料基材に対して平滑面又は凹凸面を形成する場合には、そのロール面等の平滑面における平滑度、又は凹凸面における凹凸度を調節することで、基材の表面粗さを調節できる。
上記の方法では、必要に応じて、原料基材の最終的に平滑面(表面粗さが0.4μm以下である面)とする一方の表面に対して、平滑化処理又は凹凸化処理を行い、その表面粗さを0.4μm以下の範囲内で調節してもよい。
【0042】
なお、ここでは、ロールの平滑面又は凹凸面を利用して、基材の一方の表面の表面粗さを0.053〜0.48μmとする方法について説明したが、平滑面又は凹凸面の転写に用いる型は、ロールに限定されず、プレート、ブロック等の他の形状のものであってもよい。
また、原料基材の表面の凹凸化処理の方法としては、上記の型押し法以外に、例えば、サンドブラスト処理法、溶剤処理法等も挙げられる。
【0043】
ここまでは、片面又は両面の表面粗さが0.4μm以下である原料基材を用いて、両面の表面粗さがそれぞれ前記条件を満たす基材を作製する方法について説明したが、前記基材は、例えば、以下の方法でも作製できる。
すなわち、片面又は両面の表面粗さが0.053μm以上である原料基材を用い、最終的に凹凸面(表面粗さが0.053〜0.48μmである面)とする一方の表面を決定し、これとは異なる他方の表面を、前記凹凸面よりも表面粗さが小さい平滑面(表面粗さが0.4μm以下である面)となるように、平滑化処理又は凹凸化処理することで、基材を作製する方法も挙げられる。
この方法では、必要に応じて、原料基材の最終的に凹凸面(表面粗さが0.053〜0.48μmである面)とする一方の表面に対して、平滑化処理又は凹凸化処理を行い、その表面粗さを0.053〜0.48μmの範囲内で調節してもよい。
【0044】
これらの中でも、前記基材の作製方法としては、原料基材を用いて、平滑面及び凹凸面を同時に形成する方法が好ましい。
【0045】
前記基材の構成材料は、各種樹脂であることが好ましく、前記樹脂は公知のものでよい。
ただし、基材は、波長が532nmである光と、波長が1600nmである光の透過性をともに有するものが好ましい。波長が532nmである光は、保護膜のレーザー印字を行うのに好適であり、波長が1600nmである光は、半導体ウエハ又は半導体チップの赤外線検査を行うのに好適である。
さらに、後述する粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合には、基材は、紫外線領域の光の透過性を有するものが好ましい。
基材の具体的な構成材料については、後述する。
【0046】
1層の基材の構成材料は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に調節できる。
【0047】
前記基材の引張弾性率は、特に限定されないが、240〜700MPaであることが好ましく、280〜650MPaであることがより好ましく、320〜600MPaであることが特に好ましい。
【0048】
基材は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。すなわち、すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。なお、本明細書において、複数層が互いに異なるとは、基材の場合に限らず、各層の構成材料及び厚さの少なくとも一方が互いに異なることを意味する。
【0049】
前記基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、15〜300μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましく、例えば、30〜160μm、及び40〜120μm等のいずれかであってもよい。基材の厚さがこのような範囲であることで、前記保護膜形成用複合シートの可撓性と、半導体ウエハ又は半導体チップへの貼付性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
なお、基材の少なくとも一方の面は、表面粗さが0.053μm以上で凹凸形状を有する非平滑面となるが、基材の厚さは、基材の凸部を含む部位では、この凸部の先端を一方の起点とすれば、より高精度に算出できる。
【0050】
◎粘着剤層
前記粘着剤層は、公知のものでよく、特に限定されない。例えば、粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれでもよい。
本発明において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味する。また、これとは逆にエネルギー線を照射しても硬化しない性質を「非エネルギー線硬化性」と称する。
本発明において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、その例として、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。
紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンHランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
【0051】
粘着剤層の構成材料としては、例えば、粘着性樹脂等の粘着剤、架橋剤等が挙げられる。
ただし、粘着剤層は、波長が532nmである光と、波長が1600nmである光の透過性をともに有するものが好ましい。波長が532nmである光は、保護膜のレーザー印字を行うのに好適であり、波長が1600nmである光は、半導体ウエハ又は半導体チップの赤外線検査を行うのに好適である。
【0052】
前記粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであっても好ましく、非エネルギー線硬化性であることがより好ましい。
【0053】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、特に限定されないが、通常は、0.01〜1000MPaであることが好ましく、0.01〜500MPaであることがより好ましく、0.01〜300MPaであることが特に好ましい。
粘着剤層の貯蔵弾性率は、粘着剤層の含有成分の種類又は量を調節することで、調節できる。
なお、本明細書において、「粘着剤層の貯蔵弾性率」とは、特に断りのない限り、粘着剤層が硬化性である場合には「硬化する前の粘着剤層の貯蔵弾性率」を意味する。
【0054】
粘着剤層の貯蔵弾性率は、下記方法により求められたものである。
すなわち、粘着剤層同士を貼り合わせて、厚さが800μmである粘着剤層の積層体を作製し、この積層体を直径10mmの円形に打ち抜いて試験片とし、粘弾性測定装置等の測定装置を用いて、この試験片に周波数1Hzのひずみを与え、−50〜150℃の貯蔵弾性率を測定し、23℃における貯蔵弾性率の値を、上述の粘着剤層の貯蔵弾性率とする。
【0055】
粘着剤層は、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。粘着剤層が複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、上述の基材の場合と同様のことを意味する。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0056】
粘着剤層の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、1〜50μmであることが好ましく、1〜40μmであることがより好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。粘着剤層の厚さが前記下限値以上であることで、粘着剤層の保護膜形成用フィルムに対する粘着力がより向上する。さらに、基材の第1面の凹凸形状を埋め込む効果がより高くなり、粘着剤層がこの凹凸形状から受ける影響をより小さくできる。一方、粘着剤層の厚さが前記上限値以下であることで、チッピングの抑制効果がより高くなり、ダイシング工程がより安定化する。
【0057】
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
なお、上述のように、前記基材の第1面における表面粗さは、0.4μm以下であり、このような凹凸形状にあわせて、粘着剤層の基材が設けられている側の表面(第2面)は、表面粗さが0.1μm以上等の凹凸形状を有する非平滑面となることがある。その場合、粘着剤層の厚さは、粘着剤層の凸部を含む部位では、この凸部の先端を一方の起点とすれば、より高精度に算出できる。
【0058】
粘着剤層は、その厚さに応じて、硬さを調節することが好ましい。粘着剤層の硬さを判断するための指標としては、例えば、上述の貯蔵弾性率が挙げられる。
【0059】
例えば、粘着剤層の厚さが好ましくは15μm超であり(15μmよりも厚く)、より好ましくは18μm以上であるような厚い場合には、粘着剤層の貯蔵弾性率は、30kPa以上であることが好ましく、40kPa以上であることがより好ましく、50kPa以上であることが特に好ましい。この場合の粘着剤層の貯蔵弾性率の上限値は、例えば、先に挙げた通常の値での上限値とすることができる。このように、粘着剤層が硬めであれば、粘着剤層が厚い場合であっても、例えば、ダイシング工程において切断中の粘着剤層は振動し難い。そのため、半導体チップや、半導体チップとなる過程の切断中の半導体ウエハも振動し難く、これら半導体チップや半導体ウエハに余計な力が加わって、結果的に半導体チップに割れや欠けが発生する、いわゆるチッピングが抑制される。
【0060】
一方、粘着剤層の厚さが好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下であるような薄い場合には、粘着剤層の貯蔵弾性率は、特に限定されない。この場合には、粘着剤層が柔らかめであっても、例えば、ダイシング工程において切断中の粘着剤層が振動し難くいために、上述のように粘着剤層が硬めで厚い場合と同様の効果が得られる。
この場合(粘着剤層が薄い場合)の粘着剤層の貯蔵弾性率は、例えば、先に挙げた通常の範囲とすることができるが、これは一例である。ただし、チッピングの抑制効果がより高くなることから、この場合も、粘着剤層の貯蔵弾性率は、上記の粘着剤層が厚い場合と同様の範囲とすることが好ましい。
【0061】
すなわち、前記支持シートにおいては、粘着剤層の厚さが好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下であることで、粘着剤層の貯蔵弾性率の影響を受けずに、チッピングを抑制する高い効果が得られる。
【0062】
粘着剤層は、粘着剤を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤層のより具体的な形成方法は、他の層の形成方法とともに、後ほど詳細に説明する。粘着剤組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層の前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。なお、本明細書において、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15〜25℃の温度等が挙げられる。
【0063】
前記粘着剤組成物は、前記粘着剤と、必要に応じて前記粘着剤以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
【0064】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0065】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、粘着剤組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70〜130℃で10秒〜5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0066】
上述のような構成材料からなる基材及び粘着剤層を備えた支持シートとしては、例えば、特許第4805549号公報に記載されている、基材フィルムとその上に形成された粘着剤層からなる粘着シート、特許第4781633号公報に記載されている、基材フィルムとその上に形成された粘着剤層からなる粘着シート、特許第5414953号公報に記載されている、基材とその少なくとも一方の面に積層された粘着剤層とを備えたダイシングシート、特開2013−199562号公報に記載されている、基材の少なくとも片面に感圧接着性樹脂層(粘着剤層)を有するワーク加工用シート等が挙げられる。
本発明の支持シートとしては、構成材料がこれらシートと同じであり、かつ第1面及び第2面の表面粗さが、上記の数値範囲に調節されたものが好ましい。
【0067】
◎保護膜形成用フィルム
前記保護膜形成用フィルムは、硬化性を有し、硬化により保護膜を形成する。
前記保護膜形成用フィルムは、熱硬化性及びエネルギー線硬化性のいずれでもよい。
【0068】
○熱硬化性保護膜形成用フィルム
好ましい熱硬化性保護膜形成用フィルムとしては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するものが挙げられる。重合体成分(A)は、重合性化合物が重合反応して形成されたとみなせる成分である。また、熱硬化性成分(B)は、熱を反応のトリガーとして、硬化(重合)反応し得る成分である。なお、本発明において重合反応には、重縮合反応も含まれる。
【0069】
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、1層(単層)からなるものでもよいし、2層以上の複数層からなるものでもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよい。ここで、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、上述の基材の場合と同様のことを意味する。そして、複数層が互いに異なる場合、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0070】
熱硬化性保護膜形成用フィルムの厚さは、1〜100μmであることが好ましく、5〜75μmであることがより好ましく、5〜50μmであることが特に好ましい。熱硬化性保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「熱硬化性保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、熱硬化性保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる熱硬化性保護膜形成用フィルムの厚さとは、熱硬化性保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0071】
熱硬化性保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付し、硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、熱硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化時の加熱温度は、100〜200℃であることが好ましく、110〜180℃であることがより好ましく、120〜170℃であることが特に好ましい。そして、前記硬化時の加熱時間は、0.5〜5時間であることが好ましく、0.5〜3時間であることがより好ましく、1〜2時間であることが特に好ましい。
【0072】
<<熱硬化性保護膜形成用組成物>>
熱硬化性保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形成対象面に熱硬化性保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に熱硬化性保護膜形成用フィルムを形成できる。熱硬化性保護膜形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、熱硬化性保護膜形成用フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。ここで、「常温」とは、先に説明したとおりである。
【0073】
熱硬化性保護膜形成用組成物の塗工は、例えば、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0074】
熱硬化性保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、70〜130℃で10秒〜5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0075】
<熱硬化性保護膜形成用組成物(III−1)>
熱硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する熱硬化性保護膜形成用組成物(III−1)(本明細書においては、単に「組成物(III−1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0076】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0077】
重合体成分(A)としては、例えば、アクリル系樹脂((メタ)アクリロイル基を有する樹脂)、ポリエステル、ウレタン系樹脂(ウレタン結合を有する樹脂)、アクリルウレタン樹脂、シリコーン系樹脂(シロキサン結合を有する樹脂)、ゴム系樹脂(ゴム構造を有する樹脂)、フェノキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド等が挙げられ、アクリル系樹脂が好ましい。
【0078】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリロイル基と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0079】
重合体成分(A)における前記アクリル系樹脂としては、公知のアクリル重合体が挙げられる。
アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000〜2000000であることが好ましく、100000〜1500000であることがより好ましい。アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの形状安定性(保管時の経時安定性)が向上する。また、アクリル系樹脂の重量平均分子量が前記上限値以下であることで、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制される。
なお、本明細書において、重量平均分子量とは、特に断りのない限り、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算値である。
【0080】
アクリル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−60〜70℃であることが好ましく、−30〜50℃であることがより好ましい。アクリル系樹脂のTgが前記下限値以上であることで、保護膜と支持シート(粘着剤層)との接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。また、アクリル系樹脂のTgが前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルム及び保護膜の被着体との接着力が向上する。
【0081】
アクリル系樹脂としては、例えば、1種又は2種以上の(メタ)アクリル酸エステルの重合体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN−メチロールアクリルアミド等から選択される2種以上のモノマーの共重合体等が挙げられる。
【0082】
アクリル系樹脂を構成する前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸イミド;
(メタ)アクリル酸グリシジル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル等の置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基を意味する。
【0083】
アクリル系樹脂は、例えば、前記(メタ)アクリル酸エステル以外に、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン及びN−メチロールアクリルアミド等から選択される1種又は2種以上のモノマーが共重合してなるものでもよい。
【0084】
アクリル系樹脂を構成するモノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0085】
アクリル系樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の他の化合物と結合可能な官能基を有していてもよい。アクリル系樹脂の前記官能基は、後述する架橋剤(F)を介して他の化合物と結合してもよいし、架橋剤(F)を介さずに他の化合物と直接結合していてもよい。アクリル系樹脂が前記官能基により他の化合物と結合することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性が向上する傾向がある。
【0086】
本発明においては、重合体成分(A)として、アクリル系樹脂以外の熱可塑性樹脂(以下、単に「熱可塑性樹脂」と略記することがある)を、アクリル系樹脂を用いずに単独で用いてもよいし、アクリル系樹脂と併用してもよい。前記熱可塑性樹脂を用いることで、保護膜の支持シートからの剥離性が向上したり、被着体の凹凸面へ熱硬化性保護膜形成用フィルムが追従し易くなり、被着体と熱硬化性保護膜形成用フィルムとの間でボイド等の発生がより抑制されることがある。
【0087】
前記熱可塑性樹脂の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、3000〜80000であることがより好ましい。
【0088】
前記熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−30〜150℃であることが好ましく、−20〜120℃であることがより好ましい。
【0089】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、フェノキシ樹脂、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリスチレン等が挙げられる。
【0090】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記熱可塑性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0091】
組成物(III−1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する重合体成分(A)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの重合体成分(A)の含有量)は、重合体成分(A)の種類によらず、5〜85質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、例えば、10〜70質量%、20〜60質量%、及び30〜50質量%のいずれかであってもよい。
【0092】
重合体成分(A)は、熱硬化性成分(B)にも該当する場合がある。本発明においては、組成物(III−1)が、このような重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の両方に該当する成分を含有する場合、組成物(III−1)は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有するとみなす。
【0093】
[熱硬化性成分(B)]
熱硬化性成分(B)は、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化させて、硬質の保護膜を形成するための成分である。
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する熱硬化性成分(B)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0094】
熱硬化性成分(B)としては、例えば、エポキシ系熱硬化性樹脂、熱硬化性ポリイミド、ポリウレタン、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂等が挙げられ、エポキシ系熱硬化性樹脂が好ましい。
【0095】
(エポキシ系熱硬化性樹脂)
エポキシ系熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)からなる。
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するエポキシ系熱硬化性樹脂は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0096】
・エポキシ樹脂(B1)
エポキシ樹脂(B1)としては、公知のものが挙げられ、例えば、多官能系エポキシ樹脂、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂等、2官能以上のエポキシ化合物が挙げられる。
【0097】
エポキシ樹脂(B1)としては、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いてもよい。不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂は、不飽和炭化水素基を有しないエポキシ樹脂よりもアクリル系樹脂との相溶性が高い。そのため、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂を用いることで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性が向上する。
【0098】
不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、多官能系エポキシ樹脂のエポキシ基の一部が不飽和炭化水素基を有する基に変換されてなる化合物が挙げられる。このような化合物は、例えば、エポキシ基へ(メタ)アクリル酸又はその誘導体を付加反応させることにより得られる。
また、不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂を構成する芳香環等に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合した化合物等が挙げられる。
不飽和炭化水素基は、重合性を有する不飽和基であり、その具体的な例としては、エテニル基(ビニル基)、2−プロペニル基(アリル基)、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基等が挙げられ、アクリロイル基が好ましい。
【0099】
エポキシ樹脂(B1)の数平均分子量は、特に限定されないが、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化性、並びに硬化後の保護膜の強度及び耐熱性の点から、300〜30000であることが好ましく、300〜10000であることがより好ましく、300〜3000であることが特に好ましい。
エポキシ樹脂(B1)のエポキシ当量は、100〜1000g/eqであることが好ましく、150〜950g/eqであることがより好ましい。
【0100】
エポキシ樹脂(B1)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
・熱硬化剤(B2)
熱硬化剤(B2)は、エポキシ樹脂(B1)に対する硬化剤として機能する。
熱硬化剤(B2)としては、例えば、1分子中にエポキシ基と反応し得る官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。前記官能基としては、例えば、フェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシ基、酸基が無水物化された基等が挙げられ、フェノール性水酸基、アミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましく、フェノール性水酸基又はアミノ基であることがより好ましい。
【0102】
熱硬化剤(B2)のうち、フェノール性水酸基を有するフェノール系硬化剤としては、例えば、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)のうち、アミノ基を有するアミン系硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド(以下、「DICY」と略記することがある)等が挙げられる。
【0103】
熱硬化剤(B2)は、不飽和炭化水素基を有するものでもよい。
不飽和炭化水素基を有する熱硬化剤(B2)としては、例えば、フェノール樹脂の水酸基の一部が、不飽和炭化水素基を有する基で置換されてなる化合物、フェノール樹脂の芳香環に、不飽和炭化水素基を有する基が直接結合してなる化合物等が挙げられる。
熱硬化剤(B2)における前記不飽和炭化水素基は、上述の不飽和炭化水素基を有するエポキシ樹脂における不飽和炭化水素基と同様のものである。
【0104】
熱硬化剤(B2)としてフェノール系硬化剤を用いる場合には、保護膜の支持シートからの剥離性が向上する点から、熱硬化剤(B2)は軟化点又はガラス転移温度が高いものが好ましい。
【0105】
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、多官能フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂等の樹脂成分の数平均分子量は、300〜30000であることが好ましく、400〜10000であることがより好ましく、500〜3000であることが特に好ましい。
熱硬化剤(B2)のうち、例えば、ビフェノール、ジシアンジアミド等の非樹脂成分の分子量は、特に限定されないが、例えば、60〜500であることが好ましい。
【0106】
熱硬化剤(B2)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0107】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化剤(B2)の含有量は、エポキシ樹脂(B1)の含有量100質量部に対して、0.1〜500質量部であることが好ましく、1〜200質量部であることがより好ましく、例えば、1〜100質量部、1〜50質量部、及び1〜25質量部のいずれかであってもよい。熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記下限値以上であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの硬化がより進行し易くなる。また、熱硬化剤(B2)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの吸湿率が低減されて、保護膜形成用複合シートを用いて得られたパッケージの信頼性がより向上する。
【0108】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、熱硬化性成分(B)の含有量(例えば、エポキシ樹脂(B1)及び熱硬化剤(B2)の総含有量)は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜300質量部であることがより好ましく、40〜150質量部であることが特に好ましく、例えば、40〜125質量部、40〜100質量部、及び40〜75質量部のいずれかであってもよい。熱硬化性成分(B)の前記含有量がこのような範囲であることで、保護膜と支持シートとの接着力が抑制されて、支持シートの剥離性が向上する。
【0109】
[硬化促進剤(C)]
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、硬化促進剤(C)を含有していてもよい。硬化促進剤(C)は、組成物(III−1)の硬化速度を調整するための成分である。
好ましい硬化促進剤(C)としては、例えば、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の第3級アミン;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類(1個以上の水素原子が水素原子以外の基で置換されたイミダゾール);トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類(1個以上の水素原子が有機基で置換されたホスフィン);テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩等が挙げられる。
【0110】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する硬化促進剤(C)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0111】
硬化促進剤(C)を用いる場合、組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、硬化促進剤(C)の含有量は、熱硬化性成分(B)の含有量100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.1〜7質量部であることがより好ましい。硬化促進剤(C)の前記含有量が前記下限値以上であることで、硬化促進剤(C)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、硬化促進剤(C)の含有量が前記上限値以下であることで、例えば、高極性の硬化促進剤(C)が、高温・高湿度条件下で熱硬化性保護膜形成用フィルム中において被着体との接着界面側に移動して偏析することを抑制する効果が高くなり、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。
【0112】
[充填材(D)]
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、充填材(D)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、熱膨張係数の調整が容易となる。そして、この熱膨張係数を保護膜の形成対象物に対して最適化することで、保護膜形成用複合シートを用いて得られた保護膜付き半導体チップの信頼性がより向上する。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムが充填材(D)を含有することにより、保護膜の吸湿率を低減したり、放熱性を向上させたりすることもできる。
【0113】
充填材(D)は、有機充填材及び無機充填材のいずれでもよいが、無機充填材であることが好ましい。
好ましい無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化ケイ素、窒化ホウ素等の粉末;これら無機充填材を球形化したビーズ;これら無機充填材の表面改質品;これら無機充填材の単結晶繊維;ガラス繊維等が挙げられる。
これらの中でも、無機充填材は、シリカ又はアルミナであることが好ましい。
【0114】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する充填材(D)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0115】
充填材(D)を用いる場合、組成物(III−1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する充填材(D)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの充填材(D)の含有量)は、5〜80質量%であることが好ましく、7〜60質量%であることがより好ましく、例えば、10〜50質量%、15〜45質量%、及び20〜40質量%のいずれかであってもよい。充填材(D)の含有量がこのような範囲であることで、上記の熱膨張係数の調整がより容易となる。
【0116】
[カップリング剤(E)]
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、カップリング剤(E)を含有していてもよい。カップリング剤(E)として、無機化合物又は有機化合物と反応可能な官能基を有するものを用いることにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体に対する接着性及び密着性を向上させることができる。また、カップリング剤(E)を用いることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムを硬化して得られた保護膜は、耐熱性を損なうことなく、耐水性が向上する。
【0117】
カップリング剤(E)は、重合体成分(A)、熱硬化性成分(B)等が有する官能基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、シランカップリング剤であることがより好ましい。
好ましい前記シランカップリング剤としては、例えば、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジルオキシメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(フェニルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシラン等が挙げられる。
【0118】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有するカップリング剤(E)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0119】
カップリング剤(E)を用いる場合、組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、カップリング剤(E)の含有量は、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)の総含有量100質量部に対して、0.03〜20質量部であることが好ましく、0.05〜10質量部であることがより好ましく、0.1〜5質量部であることが特に好ましい。カップリング剤(E)の前記含有量が前記下限値以上であることで、充填材(D)の樹脂への分散性の向上や、熱硬化性保護膜形成用フィルムの被着体との接着性の向上など、カップリング剤(E)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、カップリング剤(E)の前記含有量が前記上限値以下であることで、アウトガスの発生がより抑制される。
【0120】
[架橋剤(F)]
重合体成分(A)として、上述のアクリル系樹脂等の、他の化合物と結合可能なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、水酸基、カルボキシ基、イソシアネート基等の官能基を有するものを用いる場合、組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、架橋剤(F)を含有していてもよい。架橋剤(F)は、重合体成分(A)中の前記官能基を他の化合物と結合させて架橋するための成分であり、このように架橋することにより、熱硬化性保護膜形成用フィルムの初期接着力及び凝集力を調節できる。
【0121】
架橋剤(F)としては、例えば、有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物、金属キレート系架橋剤(金属キレート構造を有する架橋剤)、アジリジン系架橋剤(アジリジニル基を有する架橋剤)等が挙げられる。
【0122】
前記有機多価イソシアネート化合物としては、例えば、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物及び脂環族多価イソシアネート化合物(以下、これら化合物をまとめて「芳香族多価イソシアネート化合物等」と略記することがある);前記芳香族多価イソシアネート化合物等の三量体、イソシアヌレート体及びアダクト体;前記芳香族多価イソシアネート化合物等とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。前記「アダクト体」は、前記芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物又は脂環族多価イソシアネート化合物と、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン又はヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物を意味する。前記アダクト体の例としては、後述するようなトリメチロールプロパンのキシリレンジイソシアネート付加物等が挙げられる。また、「末端イソシアネートウレタンプレポリマー」とは、先に説明したとおりである。
【0123】
前記有機多価イソシアネート化合物として、より具体的には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート;2,6−トリレンジイソシアネート;1,3−キシリレンジイソシアネート;1,4−キシレンジイソシアネート;ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート;3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート;ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート;トリメチロールプロパン等のポリオールのすべて又は一部の水酸基に、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートのいずれか1種又は2種以上が付加した化合物;リジンジイソシアネート等が挙げられる。
【0124】
前記有機多価イミン化合物としては、例えば、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等が挙げられる。
【0125】
架橋剤(F)として有機多価イソシアネート化合物を用いる場合、重合体成分(A)としては、水酸基含有重合体を用いることが好ましい。架橋剤(F)がイソシアネート基を有し、重合体成分(A)が水酸基を有する場合、架橋剤(F)と重合体成分(A)との反応によって、熱硬化性保護膜形成用フィルムに架橋構造を簡便に導入できる。
【0126】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する架橋剤(F)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0127】
架橋剤(F)を用いる場合、組成物(III−1)の架橋剤(F)の含有量は、重合体成分(A)の含有量100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.1〜10質量部であることがより好ましく、0.5〜5質量部であることが特に好ましい。架橋剤(F)の前記含有量が前記下限値以上であることで、架橋剤(F)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、架橋剤(F)の前記含有量が前記上限値以下であることで、架橋剤(F)の過剰使用が抑制される。
【0128】
[エネルギー線硬化性樹脂(G)]
組成物(III−1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していてもよい。熱硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有していることにより、エネルギー線の照射によって特性を変化させることができる。
【0129】
エネルギー線硬化性樹脂(G)は、エネルギー線硬化性化合物を重合(硬化)して得られたものである。
前記エネルギー線硬化性化合物としては、例えば、分子内に少なくとも1個の重合性二重結合を有する化合物が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
【0130】
前記アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の鎖状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等の環状脂肪族骨格含有(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;オリゴエステル(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー;エポキシ変性(メタ)アクリレート;前記ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート以外のポリエーテル(メタ)アクリレート;イタコン酸オリゴマー等が挙げられる。
【0131】
前記エネルギー線硬化性化合物の重量平均分子量は、100〜30000であることが好ましく、300〜10000であることがより好ましい。
【0132】
重合に用いる前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0133】
組成物(III−1)が含有するエネルギー線硬化性樹脂(G)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0134】
エネルギー線硬化性樹脂(G)を用いる場合、組成物(III−1)のエネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量は、1〜95質量%であることが好ましく、5〜90質量%であることがより好ましく、10〜85質量%であることが特に好ましい。
【0135】
[光重合開始剤(H)]
組成物(III−1)は、エネルギー線硬化性樹脂(G)を含有する場合、エネルギー線硬化性樹脂(G)の重合反応を効率よく進めるために、光重合開始剤(H)を含有していてもよい。
【0136】
組成物(III−1)における光重合開始剤(H)としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール等のベンゾイン化合物;アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等のアセトフェノン化合物;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド化合物;ベンジルフェニルスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のスルフィド化合物;1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のα−ケトール化合物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;チタノセン等のチタノセン化合物;チオキサントン等のチオキサントン化合物;パーオキサイド化合物;ジアセチル等のジケトン化合物;ベンジル;ジベンジル;ベンゾフェノン;2,4−ジエチルチオキサントン;1,2−ジフェニルメタン;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン;2−クロロアントラキノン等が挙げられる。
また、前記光重合開始剤としては、例えば、1−クロロアントラキノン等のキノン化合物;アミン等の光増感剤等も挙げられる。
【0137】
組成物(III−1)が含有する光重合開始剤(H)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0138】
光重合開始剤(H)を用いる場合、組成物(III−1)の光重合開始剤(H)の含有量は、エネルギー線硬化性樹脂(G)の含有量100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましく、2〜5質量部であることが特に好ましい。
【0139】
[着色剤(I)]
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、着色剤(I)を含有していてもよい。
着色剤(I)としては、例えば、無機系顔料、有機系顔料、有機系染料等、公知のものが挙げられる。
【0140】
前記有機系顔料及び有機系染料としては、例えば、アミニウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、アズレニウム系色素、ポリメチン系色素、ナフトキノン系色素、ピリリウム系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ナフトラクタム系色素、アゾ系色素、縮合アゾ系色素、インジゴ系色素、ペリノン系色素、ペリレン系色素、ジオキサジン系色素、キナクリドン系色素、イソインドリノン系色素、キノフタロン系色素、ピロール系色素、チオインジゴ系色素、金属錯体系色素(金属錯塩染料)、ジチオール金属錯体系色素、インドールフェノール系色素、トリアリルメタン系色素、アントラキノン系色素、ジオキサジン系色素、ナフトール系色素、アゾメチン系色素、ベンズイミダゾロン系色素、ピランスロン系色素及びスレン系色等が挙げられる。
【0141】
前記無機系顔料としては、例えば、カーボンブラック、コバルト系色素、鉄系色素、クロム系色素、チタン系色素、バナジウム系色素、ジルコニウム系色素、モリブデン系色素、ルテニウム系色素、白金系色素、ITO(インジウムスズオキサイド)系色素、ATO(アンチモンスズオキサイド)系色素等が挙げられる。
【0142】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する着色剤(I)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0143】
着色剤(I)を用いる場合、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよい。例えば、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節し、保護膜の光透過性を調節することにより、保護膜に対してレーザー印字を行った場合の印字視認性を調節できる。また、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量を調節することで、保護膜の意匠性を向上させたり、半導体ウエハの裏面の研削痕を見え難くすることもできる。これの点を考慮すると、組成物(III−1)において、溶媒以外の全ての成分の総含有量に対する着色剤(I)の含有量の割合(すなわち、熱硬化性保護膜形成用フィルムの着色剤(I)の含有量)は、0.1〜10質量%であることが好ましく、0.1〜7.5質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることが特に好ましい。着色剤(I)の前記含有量が前記下限値以上であることで、着色剤(I)を用いたことによる効果がより顕著に得られる。また、着色剤(I)の前記含有量が前記上限値以下であることで、熱硬化性保護膜形成用フィルムの光透過性の過度な低下が抑制される。
【0144】
[汎用添加剤(J)]
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムは、本発明の効果を損なわない範囲内において、汎用添加剤(J)を含有していてもよい。
汎用添加剤(J)は、公知のものでよく、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、ゲッタリング剤等が挙げられる。
【0145】
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムが含有する汎用添加剤(J)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(III−1)及び熱硬化性保護膜形成用フィルムの汎用添加剤(J)の含有量は、特に限定されず、目的に応じて適宜選択すればよい。
【0146】
[溶媒]
組成物(III−1)は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する組成物(III−1)は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2−プロパノール、イソブチルアルコール(2−メチルプロパン−1−オール)、1−ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
組成物(III−1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0147】
組成物(III−1)が含有する溶媒は、組成物(III−1)中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0148】
<<熱硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(III−1)等の熱硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
【0149】
○エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、エネルギー線硬化性成分(a)を含有する。
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムにおいて、エネルギー線硬化性成分(a)は、未硬化であることが好ましく、粘着性を有することが好ましく、未硬化でかつ粘着性を有することがより好ましい。ここで、「エネルギー線」及び「エネルギー線硬化性」とは、先に説明したとおりである。
【0150】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは1層(単層)のみでもよいし、2層以上の複数層でもよく、複数層である場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0151】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの厚さは、1〜100μmであることが好ましく、5〜75μmであることがより好ましく、5〜50μmであることが特に好ましい。エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの厚さが前記下限値以上であることで、保護能がより高い保護膜を形成できる。また、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの厚さが前記上限値以下であることで、過剰な厚さとなることが抑制される。
ここで、「エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの厚さ」とは、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルム全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの厚さとは、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムを構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0152】
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムを半導体ウエハの裏面に貼付し、硬化させて、保護膜を形成するときの硬化条件は、保護膜が十分にその機能を発揮する程度の硬化度となる限り特に限定されず、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの種類に応じて、適宜選択すればよい。
例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの硬化時における、エネルギー線の照度は、120〜280mW/cm
2であることが好ましい。そして、前記硬化時における、エネルギー線の光量は、200〜1000mJ/cm
2であることが好ましい。
【0153】
<<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物>>
エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、その構成材料を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を用いて形成できる。例えば、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの形成対象面にエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位にエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムを形成できる。エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物中の、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。ここで、「常温」とは、先に説明したとおりである。
【0154】
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の塗工は、例えば、上述の粘着剤組成物の塗工の場合と同じ方法で行うことができる。
【0155】
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の乾燥条件は、特に限定されないが、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、後述する溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。溶媒を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、例えば、70〜130℃で10秒〜5分の条件で乾燥させることが好ましい。
【0156】
<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV−1)>
エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物としては、例えば、前記エネルギー線硬化性成分(a)を含有するエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV−1)(本明細書においては、単に「組成物(IV−1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0157】
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)は、エネルギー線の照射によって硬化する成分であり、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムに造膜性や、可撓性等を付与するとともに、硬化後に硬質の保護膜を形成するための成分でもある。
エネルギー線硬化性成分(a)としては、例えば、エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000〜2000000の重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有する、分子量が100〜80000の化合物(a2)が挙げられる。前記重合体(a1)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0158】
(エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000〜2000000の重合体(a1))
エネルギー線硬化性基を有する、重量平均分子量が80000〜2000000の重合体(a1)としては、例えば、他の化合物が有する基と反応可能な官能基を有するアクリル系重合体(a11)と、前記官能基と反応する基、及びエネルギー線硬化性二重結合等のエネルギー線硬化性基を有するエネルギー線硬化性化合物(a12)と、が反応してなるアクリル系樹脂(a1−1)が挙げられる。
【0159】
他の化合物が有する基と反応可能な前記官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、置換アミノ基(アミノ基の1個又は2個の水素原子が水素原子以外の基で置換されてなる基)、エポキシ基等が挙げられる。ただし、半導体ウエハや半導体チップ等の回路の腐食を防止するという点では、前記官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
これらの中でも、前記官能基は、水酸基であることが好ましい。
【0160】
・官能基を有するアクリル系重合体(a11)
前記官能基を有するアクリル系重合体(a11)としては、例えば、前記官能基を有するアクリル系モノマーと、前記官能基を有しないアクリル系モノマーと、が共重合してなるものが挙げられ、これらモノマー以外に、さらにアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)が共重合したものであってもよい。
また、前記アクリル系重合体(a11)は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよく、重合方法についても公知の方法を採用できる。
【0161】
前記官能基を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、水酸基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、置換アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0162】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;ビニルアルコール、アリルアルコール等の非(メタ)アクリル系不飽和アルコール((メタ)アクリロイル骨格を有しない不飽和アルコール)等が挙げられる。
【0163】
前記カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するモノカルボン酸);フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和ジカルボン酸(エチレン性不飽和結合を有するジカルボン酸);前記エチレン性不飽和ジカルボン酸の無水物;2−カルボキシエチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸カルボキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0164】
前記官能基を有するアクリル系モノマーは、水酸基含有モノマーが好ましい。
【0165】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有するアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0166】
前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0167】
また、前記官能基を有しないアクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等のアルコキシアルキル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル等を含む、芳香族基を有する(メタ)アクリル酸エステル;非架橋性の(メタ)アクリルアミド及びその誘導体;(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル等も挙げられる。
【0168】
前記アクリル系重合体(a11)を構成する、前記官能基を有しないアクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0169】
前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
前記アクリル系重合体(a11)を構成する前記非アクリル系モノマーは、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0170】
前記アクリル系重合体(a11)において、これを構成する構成単位の全量に対する、前記官能基を有するアクリル系モノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることが特に好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記アクリル系重合体(a11)と前記エネルギー線硬化性化合物(a12)との共重合によって得られた前記アクリル系樹脂(a1−1)において、エネルギー線硬化性基の含有量は、保護膜の硬化の程度を好ましい範囲に容易に調節可能となる。
【0171】
前記アクリル系樹脂(a1−1)を構成する前記アクリル系重合体(a11)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0172】
樹脂層形成用組成物(IV−1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、アクリル系樹脂(a1−1)の含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのアクリル系樹脂(a1−1)の含有量)は、1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましく、10〜50質量%であることが特に好ましく、例えば、15〜50質量%、25〜50質量%、及び35〜50質量%のいずれかであってもよい。
【0173】
・エネルギー線硬化性化合物(a12)
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、前記アクリル系重合体(a11)が有する官能基と反応可能な基として、イソシアネート基、エポキシ基及びカルボキシ基からなる群より選択される1種又は2種以上を有するものが好ましく、前記基としてイソシアネート基を有するものがより好ましい。前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、例えば、前記基としてイソシアネート基を有する場合、このイソシアネート基が、前記官能基として水酸基を有するアクリル系重合体(a11)のこの水酸基と容易に反応する。
【0174】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1分子中に前記エネルギー線硬化性基を1〜5個有することが好ましく、1〜3個有することがより好ましい。
【0175】
前記エネルギー線硬化性化合物(a12)としては、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;
ジイソシアネート化合物又はポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物等が挙げられる。
これらの中でも、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートであることが好ましい。
【0176】
前記アクリル系樹脂(a1−1)を構成する前記エネルギー線硬化性化合物(a12)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0177】
前記アクリル系樹脂(a1−1)において、前記アクリル系重合体(a11)に由来する前記官能基の含有量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来するエネルギー線硬化性基の含有量の割合は、20〜120モル%であることが好ましく、35〜100モル%であることがより好ましく、50〜100モル%であることが特に好ましい。前記含有量の割合がこのような範囲であることで、硬化後の保護膜の接着力がより大きくなる。なお、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が一官能(前記基を1分子中に1個有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%となるが、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)が多官能(前記基を1分子中に2個以上有する)化合物である場合には、前記含有量の割合の上限値は100モル%を超えることがある。
【0178】
前記重合体(a1)の重量平均分子量(Mw)は、100000〜2000000であることが好ましく、300000〜1500000であることがより好ましい。
ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0179】
前記重合体(a1)が、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものである場合、前記重合体(a1)は、前記アクリル系重合体(a11)を構成するものとして説明した、上述のモノマーのいずれにも該当せず、かつ架橋剤と反応する基を有するモノマーが重合して、前記架橋剤と反応する基において架橋されたものであってもよいし、前記エネルギー線硬化性化合物(a12)に由来する、前記官能基と反応する基において、架橋されたものであってもよい。
【0180】
組成物(IV−1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記重合体(a1)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0181】
(エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100〜80000の化合物(a2))
エネルギー線硬化性基を有する、分子量が100〜80000の化合物(a2)中の前記エネルギー線硬化性基としては、エネルギー線硬化性二重結合を含む基が挙げられ、好ましいものとしては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられる。
【0182】
前記化合物(a2)は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されないが、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂等が挙げられる。
【0183】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有する低分子量化合物としては、例えば、多官能のモノマー又はオリゴマー等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基を有するアクリレート系化合物が好ましい。
前記アクリレート系化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル]プロパン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル]プロパン、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン等の2官能(メタ)アクリレート;
トリス(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε−カプロラクトン変性トリス−(2−(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等の多官能(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。
【0184】
前記化合物(a2)のうち、エネルギー線硬化性基を有するエポキシ樹脂、エネルギー線硬化性基を有するフェノール樹脂としては、例えば、「特開2013−194102号公報」の段落0043等に記載されているものを用いることができる。このような樹脂は、後述する熱硬化性成分を構成する樹脂にも該当するが、本発明においては前記化合物(a2)として取り扱う。
【0185】
前記化合物(a2)の重量平均分子量は、100〜30000であることが好ましく、300〜10000であることがより好ましい。
【0186】
組成物(IV−1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する前記化合物(a2)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0187】
[エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)]
組成物(IV−1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、前記エネルギー線硬化性成分(a)として前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましい。
前記重合体(b)は、その少なくとも一部が架橋剤によって架橋されたものであってもよいし、架橋されていないものであってもよい。
【0188】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、アクリル系重合体、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル、ゴム系樹脂、アクリルウレタン樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、前記重合体(b)は、アクリル系重合体(以下、「アクリル系重合体(b−1)」と略記することがある)であることが好ましい。
【0189】
アクリル系重合体(b−1)は、公知のものでよく、例えば、1種のアクリル系モノマーの単独重合体であってもよいし、2種以上のアクリル系モノマーの共重合体であってもよいし、1種又は2種以上のアクリル系モノマーと、1種又は2種以上のアクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)と、の共重合体であってもよい。
【0190】
アクリル系重合体(b−1)を構成する前記アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル、置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。ここで、「置換アミノ基」とは、先に説明したとおりである。
【0191】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル((メタ)アクリル酸ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル((メタ)アクリル酸ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル((メタ)アクリル酸パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル((メタ)アクリル酸ステアリル)等の、アルキルエステルを構成するアルキル基が、炭素数が1〜18の鎖状構造である(メタ)アクリル酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0192】
前記環状骨格を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸アラルキルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルエステル;
(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチルエステル等の(メタ)アクリル酸シクロアルケニルオキシアルキルエステル等が挙げられる。
【0193】
前記グリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
前記置換アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸N−メチルアミノエチル等が挙げられる。
【0194】
アクリル系重合体(b−1)を構成する前記非アクリル系モノマーとしては、例えば、エチレン、ノルボルネン等のオレフィン;酢酸ビニル;スチレン等が挙げられる。
【0195】
少なくとも一部が架橋剤によって架橋された、前記エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、前記重合体(b)中の反応性官能基が架橋剤と反応したものが挙げられる。
前記反応性官能基は、架橋剤の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されない。例えば、架橋剤がポリイソシアネート化合物である場合には、前記反応性官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、これらの中でも、イソシアネート基との反応性が高い水酸基が好ましい。また、架橋剤がエポキシ系化合物である場合には、前記反応性官能基としては、カルボキシ基、アミノ基、アミド基等が挙げられ、これらの中でもエポキシ基との反応性が高いカルボキシ基が好ましい。ただし、半導体ウエハや半導体チップの回路の腐食を防止するという点では、前記反応性官能基はカルボキシ基以外の基であることが好ましい。
【0196】
前記反応性官能基を有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)としては、例えば、少なくとも前記反応性官能基を有するモノマーを重合させて得られたものが挙げられる。アクリル系重合体(b−1)の場合であれば、これを構成するモノマーとして挙げた、前記アクリル系モノマー及び非アクリル系モノマーのいずれか一方又は両方として、前記反応性官能基を有するものを用いればよい。反応性官能基として水酸基を有する前記重合体(b)としては、例えば、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルを重合して得られたものが挙げられ、これ以外にも、先に挙げた前記アクリル系モノマー又は非アクリル系モノマーにおいて、1個又は2個以上の水素原子が前記反応性官能基で置換されてなるモノマーを重合して得られたものが挙げられる。
【0197】
反応性官能基を有する前記重合体(b)において、これを構成する構成単位の全量に対する、反応性官能基を有するモノマーから誘導された構成単位の量の割合(含有量)は、1〜20質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましい。前記割合がこのような範囲であることで、前記重合体(b)において、架橋の程度がより好ましい範囲となる。
【0198】
エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の重量平均分子量(Mw)は、組成物(IV−1)の造膜性がより良好となる点から、10000〜2000000であることが好ましく、100000〜1500000であることがより好ましい。ここで、「重量平均分子量」とは、先に説明したとおりである。
【0199】
組成物(IV−1)及びエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムが含有する、エネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0200】
組成物(IV−1)としては、前記重合体(a1)及び前記化合物(a2)のいずれか一方又は両方を含有するものが挙げられる。そして、組成物(IV−1)は、前記化合物(a2)を含有する場合、さらにエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)も含有することが好ましく、この場合、さらに前記(a1)を含有することも好ましい。また、組成物(IV−1)は、前記化合物(a2)を含有せず、前記重合体(a1)、及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)をともに含有していてもよい。
【0201】
組成物(IV−1)が、前記重合体(a1)、前記化合物(a2)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)を含有する場合、組成物(IV−1)において、前記化合物(a2)の含有量は、前記重合体(a1)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の総含有量100質量部に対して、10〜400質量部であることが好ましく、30〜350質量部であることがより好ましい。
【0202】
組成物(IV−1)において、溶媒以外の成分の総含有量に対する、前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量の割合(すなわち、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムの前記エネルギー線硬化性成分(a)及びエネルギー線硬化性基を有しない重合体(b)の合計含有量)は、5〜90質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましく、20〜70質量%であることが特に好ましい。エネルギー線硬化性成分の含有量の前記割合がこのような範囲であることで、エネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムのエネルギー線硬化性がより良好となる。
【0203】
組成物(IV−1)は、前記エネルギー線硬化性成分以外に、目的に応じて、熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤からなる群より選択される1種又は2種以上を含有していてもよい。例えば、前記エネルギー線硬化性成分及び熱硬化性成分を含有する組成物(IV−1)を用いることにより、形成されるエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムは、加熱によって被着体に対する接着力が向上し、このエネルギー線硬化性保護膜形成用フィルムから形成された保護膜の強度も向上する。
【0204】
組成物(IV−1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤としては、それぞれ、組成物(III−1)における熱硬化性成分(B)、充填材(D)、カップリング剤(E)、架橋剤(F)、光重合開始剤(H)、着色剤(I)及び汎用添加剤(J)と同じものが挙げられる。
【0205】
組成物(IV−1)において、前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤は、それぞれ、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、2種以上を併用する場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
組成物(IV−1)における前記熱硬化性成分、充填材、カップリング剤、架橋剤、光重合開始剤、着色剤及び汎用添加剤の含有量は、目的に応じて適宜調節すればよく、特に限定されない。
【0206】
組成物(IV−1)は、希釈によってその取り扱い性が向上することから、さらに溶媒を含有するものが好ましい。
組成物(IV−1)が含有する溶媒としては、例えば、組成物(III−1)における溶媒と同じものが挙げられる。
組成物(IV−1)が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよい。
【0207】
<<エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物の製造方法>>
組成物(IV−1)等のエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15〜30℃であることが好ましい。
【0208】
◇支持シートの製造方法、保護膜形成用複合シートの製造方法
前記支持シート及び保護膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように順次積層することで製造できる。各層の形成方法は、先に説明したとおりである。
例えば、支持シートを製造するときに、基材上に粘着剤層を積層する場合には、基材上に上述の粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。
【0209】
一方、例えば、保護膜形成用複合シートを製造するときに、基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに保護膜形成用フィルムを積層する場合には、粘着剤層上に、熱硬化性保護膜形成用組成物又はエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を塗工して、保護膜形成用フィルムを直接形成することが可能である。このように、いずれかの組成物を用いて、連続する2層の積層構造を形成する場合には、前記組成物から形成された層の上に、さらに組成物を塗工して新たに層を形成することが可能である。ただし、これら2層のうちの後から積層する層は、別の剥離フィルム上に前記組成物を用いてあらかじめ形成しておき、この形成済みの層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、既に形成済みの残りの層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
【0210】
すなわち、保護膜形成用複合シートを製造する場合には、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、基材上に粘着剤層を積層しておき、別途、剥離フィルム上に熱硬化性保護膜形成用組成物又はエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に保護膜形成用フィルムを形成しておき、この保護膜形成用フィルムの露出面を、基材上に積層済みの粘着剤層の露出面と貼り合わせて、保護膜形成用フィルムを粘着剤層上に積層することで、保護膜形成用複合シートが得られる。
【0211】
一方、基材上に粘着剤層を積層する場合には、上述の様に、基材上に粘着剤組成物を塗工する方法に代えて、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、粘着剤層を基材上に積層してもよい。
いずれの方法においても、剥離フィルムは目的とする積層構造を形成後の任意のタイミングで取り除けばよい。
【0212】
このように、保護膜形成用複合シートを構成する基材以外の層(粘着剤層、保護膜形成用フィルム)はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、保護膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0213】
ただし、本発明においては、基材における粘着剤層の積層面、すなわち第1面の表面粗さが0.1〜0.4μmやその近傍の値であり、この面の凹凸度が無視できない程度である場合には、基材上に粘着剤組成物を塗工する方法によって、粘着剤層を形成する(支持シートを形成する)ことが好ましい。これは、このような凹凸面に、あらかじめ形成済みの粘着剤層を貼り合わせた場合には、例えば、この面の凸部の根元付近の部位に粘着剤層が充填されずに空隙部が生じ、この面(第1面)の粘着剤層による埋め込みが不十分となってしまうからである。このように第1面の埋め込みが不十分になると、先に説明したような不具合を生じてしまう。
【0214】
これに対して、基材の第1面へ粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を形成する場合には、流動性を有する粘着剤組成物が、第1面の凸部の根元付近の部位にも十分に充填され、その結果、これらの部位が粘着剤層で十分に埋め込まれるため、上述のような不具合の発生が高度に抑制される。ただし、例えば、基材の第1面への粘着剤層の貼り合わせ時に、粘着剤層を加熱して軟化させておくことで、前記空隙部の発生を抑制することも可能である。したがって、あらかじめ形成済みの粘着剤層を基材の第1面に貼り合わせる方法が適用可能な場合もある。
【0215】
なお、保護膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、保護膜形成用フィルム)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、熱硬化性保護膜形成用組成物又はエネルギー線硬化性保護膜形成用組成物等の、最表層を構成する層を形成するための組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に最表層を構成する層を形成しておき、この層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることでも、保護膜形成用複合シートが得られる。
【実施例】
【0216】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
なお、下記実施例等における保護膜形成用複合シートの各層の構成を以下に示す。
【0217】
<基材>
支持シートを構成する基材を以下に示す。
基材Bm1:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.05μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.1μmの基材。
基材Bm2:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.05μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.2μmの基材。
基材Bm3:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.05μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.3μmの基材。
基材Bm4:ポリブチレンテレフタレートを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が500MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.05μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.3μmの基材。
基材Bm5:ポリプロピレンを主たる構成材料とし、厚さが80μm、引張弾性率が360MPaであり、両面が、表面粗さ(Ra)が0.05μmの平滑面である基材。
基材Bm6:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.05μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.5μmの基材。
基材Bm7:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.05μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.055μmの基材。
基材Bm8:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.03μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.4μmの基材。
基材Bm9:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.03μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.47μmの基材。
基材Bm10:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.35μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.4μmの基材。
基材Bm11:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.37μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.47μmの基材。
基材Bm12:ポリプロピレンを主たる構成材料とする、厚さが80μm、引張弾性率が360MPa、平滑面の表面粗さ(Ra)が0.43μm、凹凸面の表面粗さ(Ra)が0.47μmの基材。
なお、前記基材の引張弾性率及び表面粗さは、以下に示す方法で測定した値である。
【0218】
(基材の引張弾性率の測定)
基材を裁断して試験片を作製し、JIS K7161:1994に準拠して、23℃における前記試験片の引張弾性率(ヤング率)を測定した。このとき、前記試験片の測定時の幅を15mm、つかみ具間距離を100mmとした。
(基材の表面粗さの測定)
JIS B 0601:2001に準拠し、接触式表面形状測定装置(Mitsutoyo社製「SURFTEST SV−3000」)を用いて、カットオフ値λcを0.8mm、評価長さLnを10mmとして、基材の表面の表面粗さ(Ra)を測定した。
【0219】
<粘着性樹脂>
粘着剤層の形成に用いた粘着性樹脂を以下に示す。
粘着性樹脂(i)−1:アクリル酸n−ブチル(以下、「BA」と略記する)(85質量部)、及びアクリル酸−2−ヒドロキシエチル(以下、「HEA」と略記する)(15質量部)を共重合してなる、重量平均分子量600000のアクリル系重合体。
粘着性樹脂(i)−2:アクリル酸2−エチルヘキシル(以下、「2EHA」と略記する)(30質量部)、アクリル酸イソボルニル(以下、「iBA」と略記する)(50質量部)、及びHEA(20質量部)を共重合してなる、重量平均分子量800000のアクリル系重合体。
【0220】
<保護膜形成用組成物の製造原料>
保護膜形成用組成物の製造に用いた原料を以下に示す。
[重合体成分(A)]
(A)−1:BA(10質量部)、アクリル酸メチル(70質量部)、メタクリル酸グリシジル(5質量部)及びHEA(15質量部)を共重合してなるアクリル系樹脂(重量平均分子量800000、ガラス転移温度−1℃)
[熱硬化性成分(B)]
・エポキシ樹脂(B1)
(B1)−1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER828」、エポキシ当量183〜194g/eq、数平均分子量370)
(B1)−2:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製「JER1055」、エポキシ当量800〜900g/eq、数平均分子量1600)
(B1)−3:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(DIC社製「エピクロンHP−7200HH」、エポキシ当量255〜260g/eq)
・熱硬化剤(B2)
(B2)−1:ジシアンジアミド(熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤、ADEKA社製「アデカハードナーEH−3636AS」、活性水素量21g/eq)
[硬化促進剤(C)]
(C)−1:2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業社製「キュアゾール2PHZ」)
[充填材(D)]
(D)−1:シリカフィラー(アドマテックス社「SC2050MA」、エポキシ系化合物で表面修飾されたもの、平均粒子径0.5μm)
[カップリング剤(E)]
(E)−1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)(シランカップリング剤、信越化学工業社製「KBM403」、メトキシ当量12.7mmol/g、分子量236.3)
[架橋剤(F)]
(F)−1:トリレンジイソシアネート系架橋剤(トーヨーケム社製「BHS8515」)
[光重合開始剤(H)]
光重合開始剤(H)−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「イルガキュア(登録商標)184」)
[着色剤(I)]
(I)−1:カーボンブラック(三菱化学社製「MA600B」、平均粒子径28nm)
[エネルギー線硬化性成分(a)]
エネルギー線硬化性成分(a)−1:2EHA(80質量部)及びHEA(20質量部)を共重合してなるアクリル系重合体に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(以下、「MOI」と略記する)(前記アクリル系重合体中のHEA由来の水酸基の総モル数に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート中のイソシアネート基の総モル数が0.8倍となる量)を反応させて得られた、側鎖にメタクリロイルオキシ基を有する、重量平均分子量800000、ガラス転移温度−10℃の紫外線硬化型アクリル系共重合体。
【0221】
<保護膜形成用複合シートの製造>
[実施例1]
(熱硬化性保護膜形成用組成物(III−1)の製造)
重合体成分(A)−1(40質量部)、エポキシ樹脂(B1)−1(5質量部)、エポキシ樹脂(B1)−2(4質量部)、エポキシ樹脂(B1)−3(10質量部)、熱硬化剤(B2)−1(1質量部)、硬化促進剤(C)−1(1質量部)、充填材(D)−1(36質量部)、カップリング剤(E)−1(1質量部)、及び着色剤(I)−1(2質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンで固形分の濃度が45質量%となるように希釈して、熱硬化性保護膜形成用組成物(III−1)を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量は、すべて固形分量である。
【0222】
(保護膜形成用フィルムの形成)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されてなる剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET381031」、厚さ38μm)の前記剥離処理面に、上記で得られた組成物(III−1)を塗工し、100℃で3分乾燥させることにより、厚さが25μmである保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0223】
(粘着剤組成物の製造)
粘着性樹脂(i)−1(100質量部)、及びトリレンジイソシアネート系架橋剤(トーヨーケム社製「BHS8515」)(1質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンで固形分の濃度が35質量%となるように希釈して、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I−4)−1を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量は、すべて固形分量である。
【0224】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
上述の基材Bm1の表面粗さが0.05μmである平滑面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−1を塗工し、100℃で1分乾燥させることにより、厚さが5μmで、非エネルギー線硬化性である粘着剤層Ad1を形成して、支持シートSs1を得た。
【0225】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs1の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm1、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm1の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm1の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0226】
[実施例2]
粘着剤層の形成時に、粘着剤組成物(I−4)−1の塗工量を変えて、厚さが5μmではなく20μmであり、非エネルギー線硬化性である粘着剤層Ad2を形成して、得られた支持シートSs2を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
すなわち、この保護膜形成用複合シートは、基材Bm1、粘着剤層Ad2、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm1の粘着剤層Ad2を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm1の粘着剤層Ad2を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0227】
[実施例3]
(粘着剤組成物の製造)
粘着性樹脂(i)−2(100質量部)、及びトリレンジイソシアネート系架橋剤(トーヨーケム社製「BHS8515」)(10質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンで固形分の濃度が35質量%となるように希釈して、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物(I−4)−2を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量は、すべて固形分量である。
【0228】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
上述の基材Bm1の表面粗さが0.05μmである平滑面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−2を塗工し、100℃で1分乾燥させることにより、厚さが5μmで、非エネルギー線硬化性である粘着剤層Ad3を形成して、支持シートSs3を得た。
【0229】
(保護膜形成用複合シートの製造)
支持シートSs1に代えて、上記で得られた支持シートSs3を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
すなわち、この保護膜形成用複合シートは、基材Bm1、粘着剤層Ad3、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm1の粘着剤層Ad3を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm1の粘着剤層Ad3を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0230】
[実施例4]
(粘着剤組成物の製造)
実施例3と同じ方法で粘着剤組成物(I−4)−2を得た。
【0231】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
上述の基材Bm2の表面粗さが0.05μmである平滑面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−2を塗工し、100℃で1分乾燥させることにより、厚さが5μmで、非エネルギー線硬化性である粘着剤層Ad3を形成して、支持シートSs4を得た。
【0232】
(保護膜形成用複合シートの製造)
支持シートSs1に代えて、上記で得られた支持シートSs4を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
すなわち、この保護膜形成用複合シートは、基材Bm2、粘着剤層Ad3、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm2の粘着剤層Ad3を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm2の粘着剤層Ad3を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0233】
[実施例5]
(粘着剤組成物の製造)
実施例3と同じ方法で粘着剤組成物(I−4)−2を得た。
【0234】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
上述の基材Bm3の表面粗さが0.05μmである平滑面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−2を塗工し、100℃で1分乾燥させることにより、厚さが5μmで、非エネルギー線硬化性である粘着剤層Ad3を形成して、支持シートSs5を得た。
【0235】
(保護膜形成用複合シートの製造)
支持シートSs1に代えて、上記で得られた支持シートSs5を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
すなわち、この保護膜形成用複合シートは、基材Bm3、粘着剤層Ad3、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm3の粘着剤層Ad3を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm3の粘着剤層Ad3を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0236】
[実施例6]
(粘着剤組成物の製造)
実施例3と同じ方法で粘着剤組成物(I−4)−2を得た。
【0237】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
上述の基材Bm4の表面粗さが0.05μmである平滑面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−2を塗工し、100℃で1分乾燥させることにより、厚さが5μmで、非エネルギー線硬化性である粘着剤層Ad3を形成して、支持シートSs6を得た。
【0238】
(保護膜形成用複合シートの製造)
支持シートSs1に代えて、上記で得られた支持シートSs6を用いた点以外は、実施例1と同じ方法で、保護膜形成用複合シートを製造した。
すなわち、この保護膜形成用複合シートは、基材Bm4、粘着剤層Ad3、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm4の粘着剤層Ad3を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm4の粘着剤層Ad3を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0239】
[実施例7]
(エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV−1)の製造)
エネルギー線硬化性成分(a)−1(42質量部)、充填材(D)−1(55質量部)、カップリング剤(E)−1(0.3質量部)、架橋剤(F)−1(1質量部)、光重合開始剤(H)−1(0.3質量部)、及び着色剤(I)−1(1質量部)を混合し、さらにメチルエチルケトンで固形分の濃度が45質量%となるように希釈して、エネルギー線硬化性保護膜形成用組成物(IV−1)を得た。なお、ここに示すメチルエチルケトン以外の成分の配合量は、すべて固形分量である。
【0240】
(保護膜形成用フィルムの形成)
ポリエチレンテレフタレート製フィルムの片面がシリコーン処理により剥離処理されてなる剥離フィルム(リンテック社製「SP−PET381031」、厚さ38μm)の前記剥離処理面に、上記で得られた組成物(IV−1)を塗工し、100℃で3分乾燥させることにより、厚さが25μmである保護膜形成用フィルムPf2を形成した。
【0241】
(粘着剤組成物の製造)
実施例3と同じ方法で粘着剤組成物(I−4)−2を得た。
【0242】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
実施例5と同じ方法で、粘着剤層Ad3を形成して、支持シートSs5を得た。
【0243】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムの、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs5の粘着剤層Ad3の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm3、粘着剤層Ad3、保護膜形成用フィルムPf2及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm3の粘着剤層Ad3を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm3の粘着剤層Ad3を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表1に示す。
【0244】
[実施例8]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0245】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm7を用い、その表面粗さが0.05μmである平滑面を粘着剤層Ad1の形成面とした点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs11を得た。
【0246】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs11の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm7、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm7の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm7の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0247】
[実施例9]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0248】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm8を用い、その表面粗さが0.03μmである平滑面を粘着剤層Ad1の形成面とした点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs12を得た。
【0249】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs12の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm8、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm8の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm8の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0250】
[実施例10]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0251】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm9を用い、その表面粗さが0.03μmである平滑面を粘着剤層Ad1の形成面とした点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs13を得た。
【0252】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs13の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm9、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm9の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm9の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0253】
[実施例11]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0254】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm10を用い、その表面粗さが0.35μmである平滑面を粘着剤層Ad1の形成面とした点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs14を得た。
【0255】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs14の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm10、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm10の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm10の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0256】
[実施例12]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0257】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm11を用い、その表面粗さが0.37μmである平滑面を粘着剤層Ad1の形成面とした点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs15を得た。
【0258】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs15の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm11、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm11の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm11の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表2に示す。
【0259】
[参考例1]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0260】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
粘着剤層の形成時に、粘着剤組成物(I−4)−2の塗工量を変えて、厚さが5μmではなく20μmである粘着剤層Ad4を形成した点以外は、実施例4と同じ方法で支持シートSs7を得た。
【0261】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs7の粘着剤層Ad4の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm2、粘着剤層Ad4、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm2の粘着剤層Ad4を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm2の粘着剤層Ad4を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表3に示す。
【0262】
[比較例1]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0263】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm5を用い、その一方の面(平滑面)に厚さが5μmである粘着剤層Ad1を形成した点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs8を得た。
【0264】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs8の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm5、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm5の粘着剤層Ad1を備えている側の面と、基材Bm5の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)とが、いずれも平滑面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表3に示す。
【0265】
[比較例2]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0266】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm6を用い、その表面粗さが0.5μmである凹凸面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−1を塗工して、粘着剤層Ad2を形成した点以外は、実施例2と同じ方法で支持シートSs9を得た。
【0267】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs9の粘着剤層Ad2の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm6、粘着剤層Ad2、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm6の粘着剤層Ad2を備えている側の面が凹凸面であり、基材Bm6の粘着剤層Ad2を備えている側とは反対側の面(露出面)が平滑面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表3に示す。
【0268】
[比較例3]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0269】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm6を用い、その表面粗さが0.05μmである平滑面に、上記で得られた粘着剤組成物(I−4)−1を塗工して、粘着剤層Ad1を形成した点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs10を得た。
【0270】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs10の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm6、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm6の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm6の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表3に示す。
【0271】
[比較例4]
(保護膜形成用フィルムの形成)
実施例1と同じ方法で、保護膜形成用フィルムPf1を形成した。
【0272】
(粘着剤層の形成、支持シートの製造)
基材Bm1に代えて、上述の基材Bm12を用い、その表面粗さが0.43μmである平滑面を粘着剤層Ad1の形成面とした点以外は、実施例1と同じ方法で支持シートSs16を得た。
【0273】
(保護膜形成用複合シートの製造)
上記で得られた保護膜形成用フィルムPf1の、剥離フィルムを備えていない側の露出面と、支持シートSs16の粘着剤層Ad1の露出面と、をラミネートすることで、
図2に示す構成の保護膜形成用複合シートを得た。
この保護膜形成用複合シートは、基材Bm12、粘着剤層Ad1、保護膜形成用フィルムPf1及び剥離フィルムがこの順に、これらの厚さ方向において積層されてなり、基材Bm12の粘着剤層Ad1を備えている側の面が平滑面であり、基材Bm11の粘着剤層Ad1を備えている側とは反対側の面(露出面)が凹凸面となっている。この保護膜形成用複合シートの構成を表3に示す。
【0274】
<保護膜形成用複合シートの評価>
上記で得られた保護膜形成用複合シートについて、レーザー印字性、赤外線検査性、耐ブロッキング性、基材表面の粘着剤層による埋め込み性、及び耐チッピング性を、下記方法により評価した。結果を表1〜表3に示す(表中では「埋め込み性」として示している)。
【0275】
[レーザー印字性]
保護膜形成用複合シートから剥離フィルムを取り除き、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700F/12」)を用いて、ステンレス製リングフレームに保護膜形成用複合シートを貼付するとともに、70℃に加熱したシリコンウエハ(直径8インチ、厚さ100μm)の裏面に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付した。
次いで、保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合には、前記フィルムを130℃で2時間加熱処理することで硬化させ、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、前記フィルムに、照度145mW/cm
2、光量230mJ/cm
2の条件で2回紫外線を照射することで硬化させて、保護膜を形成した。
次いで、印字装置(KEYENCE社製「MD−S9910A」)を用いて、出力4.8W、周波数80kHz、走査速度500mm/secの条件で、基材側から保護膜に対して波長532nmのレーザー光を照射して、下記の2つのパターン(パターン1、パターン2)で保護膜にレーザー印字を行った。
(パターン)
パターン1:文字サイズ0.30mm×0.5mm、文字間隔0.05mm、文字数20
パターン2:文字サイズ0.15mm×0.3mm、文字間隔0.05mm、文字数20
【0276】
次いで、上記のレーザー印字で保護膜に形成された文字について、支持シートを介して観察し、下記基準に従ってレーザー印字性を評価した。なお、レーザー印字により保護膜から発生したガスが粘着剤層と保護膜との間で溜まると、ダイシング時にチッピング発生の原因となるため、ガス溜まりが生じなかったものを評価対象とした。
(評価基準)
A:パターン1及び2の全ての文字が鮮明に印字できていた。
B:パターン2では一部の文字にぼけがあり、不鮮明に印字されていたが、パターン1の全ての文字が鮮明に印字できていた。
C:パターン1及び2のいずれにおいても、一部の文字が不鮮明に印字されていた。
【0277】
[赤外線検査性]
保護膜形成用複合シートから剥離フィルムを取り除き、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700F/12」)を用いて、ステンレス製リングフレームに保護膜形成用複合シートを貼付するとともに、70℃に加熱したシリコンウエハ(直径8インチ、厚さ100μm)の裏面である#2000研削面に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付した。
次いで、保護膜形成用フィルムが熱硬化性である場合には、前記フィルムを130℃で2時間加熱処理することで硬化させ、保護膜形成用フィルムがエネルギー線硬化性である場合には、前記フィルムに、照度145mW/cm
2、光量230mJ/cm
2の条件で2回紫外線を照射することで硬化させて、保護膜を形成した。
次いで、ダイシング装置(DISCO社製「DFD6361」)を用いて、フィード30mm/sec、回転数30000rpmの条件でブレードダイシングを行うことにより、シリコンウエハを分割して、2mm×2mmの大きさのシリコンチップを得た。
【0278】
得られたシリコンチップについて、赤外線顕微鏡(オリンパス社製「BX−IR」)を用いて、支持シートを介して研削面(シリコンチップの裏面)と分割面(シリコンチップの側面)を観察し、下記基準に従って赤外線検査性を評価した。
(評価基準)
A:研削面の研削跡を明確に確認できた。また、シリコンチップの分割面からシリコンチップの内側へ向けて形成されている、2μm以上5μm未満の大きさのチッピングも明確に確認できた。
B:研削面の研削跡を明確に確認できた。一方、シリコンチップの分割面からシリコンチップの内側へ向けて形成されている、2μm以上5μm未満の大きさのチッピングを明確には確認できなかった。
C:研削面の研削跡を全く確認できないか、又は明確に確認することができず、チッピングも大きさによらず、全く確認できないか、又は明確に確認することができなかった。
【0279】
[耐ブロッキング性]
保護膜形成用複合シートを、3インチ径のABS樹脂製コアに10mの長さで巻き取り、この状態のまま室温で3日間静置した。
次いで、保管後のロール状の保護膜形成用複合シートを繰り出し、剥離フィルムを取り除き、貼付装置(リンテック社製「RAD−2700F/12」)を用いて、繰り出した保護膜形成用複合シートをステンレス製リングフレームに貼付するとともに、70℃に加熱したシリコンウエハ(直径8インチ、厚さ100μm)の裏面に、保護膜形成用複合シート中の保護膜形成用フィルムを貼付することを、シリコンウエハ10個分連続して行うことを試みた。このときの操作性から、下記基準に従って耐ブロッキング性を評価した。
(評価基準)
A:ブロッキングが全く発生せず、上記操作を問題なく行うことができた。
B:シリコンウエハへ保護膜形成用フィルムを貼付できたが、保護膜形成用複合シートを巻き取ったロールにおいて、基材と剥離フィルムとの互いの接触面が一部貼り付いてしまい、保護膜形成用複合シートを繰り出すときに、基材と粘着剤層との間、又は粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間において、一部剥離が見られた。
C:保護膜形成用複合シートを巻き取ったロールにおいて、基材と剥離フィルムとの互いの接触面が一部貼り付いて、明らかにブロッキングが発生し、保護膜形成用複合シートを繰り出すときに、粘着剤層と保護膜形成用フィルムとの間において、一部剥離が生じて、支持シート(基材及び粘着剤層の積層シート)が剥離フィルムに転写されるか、又は保護膜形成用複合シートの繰り出し自体を行うことができなかった。
【0280】
[基材表面の粘着剤層による埋め込み性]
デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製「VHS−1000」)を用いて、上記で得られた支持シートを観察し、下記基準に従って、基材表面の粘着剤層による埋め込み性を評価した。
○:基材と粘着剤層との間に気泡が見られなかった。
×:基材と粘着剤層との間に気泡が見られた。
【0281】
[耐チッピング性]
上記の赤外線検査性の評価に用いた、2mm×2mmの大きさのシリコンチップ10個について、光学顕微鏡を用いて、その4つの分割面(シリコンチップの側面)を観察し、下記基準に従って耐チッピング性を評価した。
○:シリコンチップの分割面からシリコンチップの内側へ向けて形成されている、30μm以上の大きさのチッピング部位の数が、シリコンチップ1個あたり平均で1箇所未満であった。
×:シリコンチップの分割面からシリコンチップの内側へ向けて形成されている、30μm以上の大きさのチッピング部位の数が、シリコンチップ1個あたり平均で1箇所以上であった。
【0282】
【表1】
【0283】
【表2】
【0284】
【表3】
【0285】
上記結果から明らかなように、実施例1〜12の保護膜形成用複合シートでは、基材の第1面における表面粗さが0.37μm以下であり、基材の第2面における表面粗さが、前記第1面における表面粗さよりも大きく、かつ0.055〜0.47μmであることにより、耐ブロッキング性、レーザー印字性及び赤外線検査性のすべてに優れていた。さらに、いずれの実施例においても、耐チッピング性及び埋め込み性にも優れていた。なかでも、実施例1〜3及び実施例8の保護膜形成用複合シートでは、基材の第2面における表面粗さが小さめであることで、レーザー印字性及び赤外線検査性に特に優れていた。これに対して、実施例5〜7及び実施例9〜12の保護膜形成用複合シートでは、基材の第2面における表面粗さが大きめであることで、耐ブロッキング性に特に優れていた。そして、実施例4の保護膜形成用複合シートでは、基材の第2面における表面粗さが中程度であることで、耐ブロッキング性、レーザー印字性及び赤外線検査性のすべてに特に優れていた。
【0286】
これに対して、比較例1の保護膜形成用複合シートでは、基材の第2面における表面粗さが小さ過ぎることで、耐ブロッキング性に劣っていた。
また、比較例2の保護膜形成用複合シートでは、基材の第1面における表面粗さが大き過ぎ、基材の第2面における表面粗さが小さ過ぎることで、耐ブロッキング性、レーザー印字性及び赤外線検査性のすべてに劣っていた。また、比較例2の保護膜形成用複合シートでは、基材の第1面における表面粗さが大き過ぎることで、埋め込み性も劣っていた。
また、比較例3の保護膜形成用複合シートでは、基材の第2面における表面粗さが大き過ぎることで、レーザー印字性及び赤外線検査性に劣っていた。
また、比較例4の保護膜形成用複合シートでは、基材の第1面における表面粗さが大き過ぎることで、レーザー印字性、赤外線検査性及び埋め込み性に劣っていた。
【0287】
参考例1の保護膜形成用複合シートでは、基材の第1面における表面粗さが0.4μm以下であり、基材の第2面における表面粗さが0.053〜0.48μmであるという条件を満たしていることにより、耐ブロッキング性、レーザー印字性及び赤外線検査性のすべてに優れていた。しかし、粘着剤層が厚過ぎたため、耐チッピング性に劣っていた。