特許第6893507号(P6893507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893507
(24)【登録日】2021年6月3日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】細身の駆動機構を有する薬剤送達装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20210614BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   A61M5/20 510
   A61M5/315 550G
   A61M5/315 550P
【請求項の数】13
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-517879(P2018-517879)
(86)(22)【出願日】2016年10月7日
(65)【公表番号】特表2018-530387(P2018-530387A)
(43)【公表日】2018年10月18日
(86)【国際出願番号】EP2016073999
(87)【国際公開番号】WO2017060426
(87)【国際公開日】20170413
【審査請求日】2019年8月26日
(31)【優先権主張番号】15189050.6
(32)【優先日】2015年10月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596113096
【氏名又は名称】ノボ・ノルデイスク・エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンダム, イェスパー ピーター
(72)【発明者】
【氏名】クリトモース, ラース ピーター
(72)【発明者】
【氏名】プラムベッシー, クリスチャン
【審査官】 川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0196716(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/170267(WO,A1)
【文献】 特表2015−517856(JP,A)
【文献】 特表2010−503430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤充填済みカートリッジを含む、またはそれを受け取るように適合された薬剤送達装置(600)であって、
ハウジング(601)と、
吐出アセンブリと
を備え、前記吐出アセンブリは、
遠位方向において装填されたカートリッジ内のピストンと係合しそれを軸方向に変位させ、それにより前記カートリッジから薬剤の用量を吐出するように適合されたピストンロッド(620)であって、最近位位置を有するピストンロッド(620)と、
前記ピストンロッドを少なくとも部分的に収納する駆動チューブ(660)と、
前記ピストンロッドと係合して配置され、前記ピストンロッドを回転させるように適合された駆動部材(630)と、
前記ハウジングおよび前記駆動チューブと係合して配置された駆動ばね(655)と、
ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて前記駆動チューブの回転によって前記駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段(280、380)と、
前記ハウジングに螺旋状に結合されると共に、軸方向に可動であるが回転不可能に前記駆動チューブに結合されたスケールドラム(670)であって、それにより前記駆動チューブが回転されるにつれて螺旋状に移動されるスケールドラムと、
前記駆動チューブを設定位置に回転させることができる用量設定状態と、前記駆動ばねによって駆動される前記駆動チューブが前記駆動部材を回転させることができる吐出状態との間で作動可能な結合手段(610、663)と、
用量設定状態と吐出状態との間で作動可能であり、それにより前記結合手段を作動する解放手段(290、390)とを備え、
前記駆動ばねは、つる巻きばね(655)であり、前記駆動チューブ、ひいては前記駆動部材を回転させるように解放され、それにより前記ピストンロッドを前記遠位方向に回転および移動させることができ、
前記スケールドラムは、スプライン連結(662、672)を介して前記駆動チューブに結合され、前記スプライン連結は、用量設定中、前記スケールドラムの最近位位置に対応する最近位位置を有し、
前記駆動ばねは、前記スプライン連結がその最近位位置にあるとき前記スプライン連結の近位に配置され、
前記駆動ばねは、前記スケールドラムがその最近位位置にある状態で、少なくとも部分的に前記スケールドラムと前記駆動チューブとの間に配置される、薬剤送達装置。
【請求項2】
前記スプライン連結は、対応する溝(672)と摺動係合する最近位リッジ構造(662)を備え、前記溝は、前記スケールドラム内側表面内に形成され、前記最近位リッジ構造は、前記駆動チューブ外側表面上に形成され、
それにより、前記最近位リッジ構造、ひいては前記スプライン連結は、用量設定中に移動しない軸方向位置を有する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項3】
前記スプライン連結は、対応する溝と摺動係合する最近位リッジ構造を備え、前記溝は、駆動チューブ外側表面内に形成され、最近位リッジ構造は、スケールドラム内側表面上に形成され、
それにより、前記最近位リッジ構造、ひいては前記スプライン連結は、用量設定中移動する軸方向位置を有する、請求項1に記載の薬剤送達装置。
【請求項4】
前記解放手段は、近位用量設定位置と、作動された遠位用量吐出位置との間で軸方向に可動な解放部材(290、390)を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項5】
前記設定手段は、回転可能な用量設定部材(280、380)を備え、前記結合手段は、
前記設定部材が前記駆動チューブに回転的にロックされ、かつ、前記駆動チューブを、引っ張られた駆動ばねの付勢力に逆らって設定位置において保持することができる用量設定状態と、前記駆動チューブが前記用量設定部材から回転的に切り離され、かつ、前記駆動ばねによって回転させることが可能になる吐出状態との間で作動可能な、第1の結合装置(242、262)と、
前記駆動チューブが前記駆動部材に対して回転することができる用量設定状態と、前記駆動チューブが前記駆動部材に回転的にロックされる吐出状態との間で作動可能な、第2の結合装置(410)とを備え、
前記解放手段は、作動されたとき、前記第1の結合装置を前記用量設定状態から前記吐出状態へ作動し、前記第2の結合装置を前記用量設定状態から前記吐出状態へ作動する、請求項1からのいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項6】
前記用量設定部材(380)は、解放部材に結合され、前記解放部材と共に軸方向に移動する、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項7】
前記用量設定部材および前記解放部材は、組み合わされた用量設定解放部材またはアセンブリ(380、390)によって形成される、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項8】
前記結合手段は、前記駆動チューブを、引っ張られた駆動ばねの付勢力に逆らって設定位置において保持することを可能にするラチェット機構を備える、請求項1からのいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項9】
前記ラチェット機構は、設定用量を低減することを可能にする解放可能な一方向ラチェット機構の形態であり、前記ラチェット機構は、第1の結合装置または第2の結合装置に関連付けられる、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項10】
前記ラチェット機構は、
複数のラチェット歯(203、503)を備える第1のラチェット部(201、501)であって、用量設定中、前記ハウジングに回転不可に結合される第1のラチェット部と、
前記第1のラチェット部上の前記ラチェット歯と回転的に係合するように適合された複数のラチェット歯(243、543)を備える第2のラチェット部(240、540)であって、用量設定中、前記駆動部材に回転不可に結合され、前記第1のラチェット部と前記第2のラチェット部が、用量設定中、互いに対して軸方向に移動可能である、第2のラチェット部と、
前記第1のラチェット部および前記第2のラチェット部を互いに係合するように軸方向に付勢するための付勢手段(295、595)と、
量設定部材が第1の方向に回転されたとき、前記第2のラチェット部を前記第1の方向に回転させ、それにより用量を設定し、また前記用量設定部材が第2の方向に回転されたとき、前記第1のラチェット部および前記第2のラチェット部を移動させて互いの係合から軸方向に外すように適合された制御手段と
を備える、請求項に記載の薬剤送達装置。
【請求項11】
前記制御手段は、
複数のラチェット駆動表面(247、547)、および回転基準平面に対して傾斜した複数のラチェット解放表面(246、546)を有する、駆動・解放ラチェット(240、540)と、
複数の制御駆動表面(287、597)、および前記回転基準平面に対して傾斜した複数の制御解放表面(286、596)を備える制御ラチェット(283、590)とを備え、
前記制御駆動表面(287、597)は、前記用量設定部材が前記第1の方向に回転されたとき、前記第2のラチェット部を前記第1の方向に回転させるように前記ラチェット駆動表面(247、547)と協働しており、
前記制御解放表面(286、596)は、前記用量設定部材が前記第2の方向に回転されたとき、前記第1のラチェット部および前記第2のラチェット部を軸方向に移動させて互いの係合から軸方向に外すように前記ラチェット解放表面(246、546)と摺動するように協働しており、
それにより、前記第1のラチェット部および前記第2のラチェット部が軸方向に係合解除されたとき、前記駆動ばねは、前記第2のラチェット部を前記第2の方向に回転し、それにより前記設定用量を低減し、前記付勢手段は、前記第1のラチェット部および前記第2のラチェット部を移動させて再び互いに軸方向に係合させ、これにより、前記設定用量が前記ラチェット機構の1つの歯に対応して低減される、請求項10に記載の薬剤送達装置。
【請求項12】
前記駆動チューブ(260、360、460)は、近位部分と、遠位部分とを備え、前記近位部分(468)は、より小さい直径を有し、
前記駆動ばね(255、355、455)は、前記駆動チューブの近位部分に対応して配置される、請求項1から11のいずれか一項に記載の薬剤送達装置。
【請求項13】
前記吐出アセンブリは、前記遠位部分に対応して前記ピストンロッドと前記駆動チューブとの間の周方向空間内に配置された内容物終了部材(225、325、435、635)を備え、前記内容物終了部材は、前記ピストンロッドに対して遠位位置と近位位置との間で軸方向に可動である、請求項12に記載の薬剤送達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、薬剤のユーザ設定可能な用量をカートリッジから吐出するように適合された薬剤送達装置に関する。特定の態様では、本発明は、ばね駆動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の開示では、主に糖尿病の治療を参照するが、これは本発明の例示的な使用にすぎない。
【0003】
ユーザによって設定された量の薬剤を送達するために適した一般的なタイプの薬剤送達装置は、用量設定中に引っ張られ、その後、蓄えられたエネルギーが薬剤の設定用量をデバイス内に配置されたカートリッジから吐出するために使用されるばねを備える。ユーザは、通常、回転可能な用量設定部材を回転させることによってばねを引っ張り、それによってユーザによって加えられる力が、後で解放するためにばねに蓄えられる。このタイプの薬剤送達装置は、充填済みの使い捨てのデバイスの形態で、またはユーザによって薬剤カートリッジが装填されるように適合された耐久性のあるデバイスの形態で提供されることがある。
【0004】
ペン形状を有しねじりばねを備える、知られている「巻き上げ式」または「自動ペン」薬剤送達装置の例が、たとえば、デバイスがつる巻きばねを使用するWO2006/045526、およびデバイスがスパイラルクロック型ばねを使用するWO2009/105908に開示されている。これらのペンもまた、ユーザが用量設定部材を反対回転方向に回転させることによって投与前に設定用量を減らすことを可能にする。ばね駆動タイプのさらなるデバイスが、EP2 692 376、WO2007/017053、WO2014/001319、US2006/0153693、およびUS2011/0054412に開示されている。
【0005】
自動薬剤送達装置の巻き上げ式に対する代替として、カートリッジ内に含まれる薬剤の投薬可能量全体、たとえば3mlを吐出するために十分なエネルギーが蓄えられている、予め引っ張られたばねを備えるデバイスが提案されている。用量設定手段は、典型的には、ユーザが吐出されることになる用量を設定および調整することを可能にする上記のダイヤルアップ/ダイヤルダウン装置と同様のものになる。
【0006】
しかし、より多くの特徴がペン形状薬剤送達装置に追加されるにつれて、通常、より多くの構成部品が必要となり、この場合もこれは、大抵の場合、たとえばどちらもNovo Nordiskからの比較的細身の手動駆動式FlexPen(登録商標)を幾分それほど細身でないFlexTouch(登録商標)に比較することによって例示されるように、デバイスの寸法および嵩、特に直径が増すことになる。
【0007】
上記に鑑みて、本発明の目的は、コンパクト、単純であり、かつ信頼性ある、コスト効果的な製造を可能にする自動ばね駆動式の薬剤送達装置を提供することである。
【発明の概要】
【0008】
本発明の本開示では、上記の目的の1つまたは複数に対処する、または下記の開示から、また例示的な実施形態の説明から明らかな目的に対処する実施形態および態様について述べる。
【0009】
本発明は、従来、同心で配置されていた構造が、その代わりにいまや軸方向に離れて配置されるようにばね駆動薬剤送達装置の構成部品を再配置するという着想に基づく。
【0010】
したがって、本発明の第1の態様では、薬剤充填済みカートリッジを含む、またはそれを受け取るように適合された薬剤送達装置が提供され、薬剤送達装置は、ハウジングと、吐出アセンブリとを備える。吐出アセンブリは、遠位方向において装填されたカートリッジ内のピストンと係合しそれを軸方向に変位させ、それによりカートリッジから薬剤の用量を吐出するように適合されたピストンロッドであって、最近位位置を有するピストンロッドと、ピストンロッドを少なくとも部分的に収納する駆動チューブと、ピストンロッドと係合して配置され、ピストンロッドを回転させるように適合された駆動部材とを備える。吐出アセンブリは、ハウジングおよび駆動チューブと係合して配置された駆動ばねと、ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて駆動チューブの回転によって駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段と、ハウジングに螺旋状に結合されると共に、軸方向に可動であるが回転不可能に駆動チューブに結合されたスケールドラムであって、それにより駆動チューブが回転されるにつれて螺旋状に移動されるスケールドラムと、駆動チューブを設定位置に回転させることができる用量設定状態と、駆動ばねによって駆動される駆動チューブが駆動部材を回転させることができる吐出状態との間で作動可能な結合手段と、用量設定状態と吐出状態との間で作動可能であり、それにより結合手段を作動する解放手段とをさらに備える。駆動ばねは、駆動チューブ、ひいては駆動部材を回転させるように解放され、それによりピストンロッドを遠位方向に回転および移動させることができる。スケールドラムは、スプライン連結を介して駆動チューブに結合され、スプライン連結は、用量設定中、スケールドラムの最近位位置に対応する最近位位置を有し、駆動ばねは、スプライン連結がその最近位位置にあるときスプライン連結の近位に配置される。
【0011】
本文脈では、スプライン連結の「位置」は、溝とリッジ構造との間の係合の最近位点に対応する。スケールドラムの構成に応じて、スケールドラムの最近位位置は、初期位置に対応することも設定最大用量に対応することもある。ピストンロッドがドライバによって回転されたとき、たとえばピストンロッドとハウジング「ナット」部分との間のねじ連結によって、またはピストンロッドとドライバとの間のねじ連結によって、軸方向の動きが生成され得る。
【0012】
上記の構成により、よりコンパクトな薬剤送達装置を提供することができ、デバイスの各部分をより少ない「層」で設計することが可能になり、この場合もこれはより細身の設計を可能にし、これは、従来技術から知られている「多層」設計とは対照的である。たとえば、従来技術のデバイスでは、駆動チューブは、近位に延びる周方向のスカート部分を備えるその遠位端部にある。そのような設計では、駆動ばねは、スカートと、スケールドラムがスカート部分の外側表面とスプライン係合する主駆動チューブとの間に配置される。対照的に、スケールドラム/駆動チューブスプライン連結と駆動ばねが軸方向にオフセットされたとき、よりコンパクトなデバイスを達成することができる。
【0013】
本発明による駆動チューブは、たとえば成形または組立ての理由で、駆動チューブがたとえば互いに軸方向に完全にまたは一部重なり合う2つの管状部材から構成されるアセンブリの形態であってもよい。そのような設計の場合、スケールドラムは、たとえば重なり合わない、または重なり合う部分に対応する駆動チューブと係合し得る。
【0014】
スプライン連結は、対応する溝と摺動係合する最近位リッジ構造を含むことができ、溝は、スケールドラム内側表面内に形成され、最近位リッジ構造は、駆動チューブ外側表面上に形成され、それにより、最近位リッジ構造、ひいてはスプライン連結は、用量設定中に移動しない軸方向位置を有する。実際、駆動チューブが、作動中、軸方向に変位された場合、スプライン位置は、それと共に移動することになる。駆動ばね構成に応じて、駆動ばねもまた、作動中移動し得る。
【0015】
あるいは、スプライン連結は、対応する溝と摺動係合する最近位リッジ構造を含み、溝は、駆動チューブ外側表面内に形成され、最近位リッジ構造は、スケールドラム内側表面上に形成され、それにより、最近位リッジ構造、ひいてはスプライン連結は、用量設定中移動する軸方向位置を有する。典型的には、所与のスプライン連結するすべてのリッジ構造が、同じ軸方向位置に位置する。
【0016】
特定の実施形態では、薬剤送達装置は、ハウジングと、吐出アセンブリとを備え、吐出アセンブリは、遠位方向において装填されたカートリッジ内のピストンと係合しそれを軸方向に変位させ、それによりカートリッジから薬剤の用量を吐出するように配置されたピストンロッドと、ピストンロッドを少なくとも部分的に収納する駆動チューブと、ピストンロッドと係合して配置され、ピストンロッドを回転させるように適合された駆動部材と、ハウジングおよび駆動チューブと係合して配置された駆動ばねとを備える。吐出アセンブリは、ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて駆動チューブの回転によって駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段と、ハウジングに螺旋状に結合されると共に、軸方向に可動であるが回転不可能に駆動チューブに結合されたスケールドラムであって、それにより駆動チューブが回転されるにつれて螺旋状に移動されるスケールドラムとをさらに備える。吐出アセンブリは、駆動チューブを設定位置に回転させることができる用量設定状態と、駆動ばねによって駆動される駆動チューブが駆動部材を回転させることができる吐出状態との間で作動可能な結合手段と、用量設定状態と吐出状態との間で作動可能であり、それにより結合手段を作動する解放手段とをさらに備える。駆動ばねは、駆動チューブ、ひいては駆動部材を回転させるように解放され、それによりピストンロッドを遠位方向に回転および移動させることができる。スケールドラムは、スプライン連結を介して駆動チューブに結合され、スプライン連結は、駆動チューブ外側表面上に形成され、スケールドラム内側表面内に形成された1つまたは複数の対応する溝と摺動係合する1つまたは複数のリッジ構造を備える。駆動ばねは、1つまたは複数のリッジ構造の近位に配置される。
【0017】
さらなる特定の実施形態では、薬剤送達装置は、ハウジングと、ピストンロッドと、ピストンロッドを回転させるように適合された駆動部材と、ハウジングに螺旋状に結合され、スケールドラム内側表面に形成された1つまたは複数の軸方向に向けられた溝を備えるスケールドラムと、駆動チューブ外側表面上に形成され、スケールドラム内側表面内に形成された1つまたは複数の対応する溝と摺動係合する1つまたは複数のリッジ構造を備える駆動チューブと、ハウジングおよび駆動チューブと係合して配置された駆動ばねと、ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて駆動チューブの回転によって駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段と、駆動チューブを設定位置に回転させることができる用量設定状態と、駆動ばねによって駆動される駆動チューブが駆動部材を回転させることができる吐出状態との間で作動可能な結合手段と、用量設定状態と吐出状態との間で作動可能であり、それにより結合手段を作動する解放手段とを備える。そのような構成では、駆動ばねは、1つまたは複数のリッジ構造の近位に配置される。
【0018】
さらなる特定の実施形態では、薬剤送達装置は、ハウジングと、ピストンロッドと、ピストンロッドを回転させるように適合された駆動部材と、ハウジングに螺旋状に結合されたスケールドラムであって、スケールドラム内側表面内に形成された1つまたは複数のリッジ構造を備えるスケールドラムと、駆動チューブ外側表面上に形成され、スケールドラム内側表面内に形成された1つまたは複数の対応するリッジ構造と摺動係合する1つまたは複数の軸方向に向けられた溝を備える駆動チューブと、ハウジングおよび駆動チューブと係合して配置された駆動ばねと、ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて駆動チューブの回転によって駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段と、駆動チューブを設定位置に回転させることができる用量設定状態と、駆動ばねによって駆動される駆動チューブが駆動部材を回転させることができる吐出状態との間で作動可能な結合手段と、用量設定状態と吐出状態との間で作動可能であり、それにより結合手段を作動する解放手段とを備え、駆動ばねは、1つまたは複数のリッジ構造の近位に、それらの最近位位置において配置される。
【0019】
例示的な実施形態では、駆動ばねは、つる巻きばねであり、駆動ばねは、スケールドラムがその最近位位置にある状態で、少なくとも部分的にスケールドラムと駆動チューブとの間に配置され、それにより少なくとも部分的に重なり合う。あるいは、駆動ばねは、非螺旋状の時計ばねであり、駆動ばねは、スケールドラムがその最近位位置にある状態で、スケールドラムの近位に、または少なくとも一部軸方向に重なり合って配置される。
【0020】
解放手段は、近位用量設定位置と、作動された遠位用量吐出位置との間で軸方向に可動な解放部材の形態であってもよい。
【0021】
例示的な実施形態では、設定手段は、回転可能な用量設定部材を備え、結合手段は、設定部材が駆動チューブに回転的にロックされ、かつ、駆動チューブを、引っ張られた駆動ばねの付勢力に逆らって設定位置において保持することができる用量設定状態と、駆動チューブが用量設定部材から回転的に切り離され、かつ、駆動ばねによって回転させることが可能になる吐出状態との間で作動可能な、第1の結合装置と、駆動チューブが駆動部材に対して回転することができる用量設定状態と、駆動チューブが駆動部材に回転的にロックされる吐出状態との間で作動可能な第2の結合装置とを備える。そのような構成では、解放手段は、作動されたとき、第1の結合装置を用量設定状態から吐出状態へ作動し、第2の結合装置を用量設定状態から吐出状態へ作動する。第1の結合装置および/または第2の結合装置は、スプライン式連結が協働する構造間の相対回転を防止する結合状態と、スプラインが互いの係合から軸方向に外され、これは協働する構造間の相対回転を可能にする切離し状態とを1対の協働する構造が有するスプラインタイプのものであってもよい。
【0022】
用量設定部材は、解放部材に結合され、それと共に軸方向に移動してもよい。たとえば、用量設定部材および解放部材は、組み合わされた用量設定解放部材またはアセンブリによって形成されてもよい。
【0023】
例示的な実施形態では、結合手段は、駆動チューブを、引っ張られた駆動ばねの付勢力に逆らって設定位置において保持することを可能にするラチェット機構を備える。ラチェット機構は、設定用量を低減することを可能にする解放可能な一方向ラチェット機構の形態であってもよい。ラチェット機構は、第1の結合装置または第2の結合装置に関連付けられる、たとえばデバイスの近位端部に対応して、または駆動チューブの遠位端部に対応して配置されてもよい。
【0024】
例示的な実施形態では、ラチェット機構は、複数のラチェット歯を備える第1のラチェット部であって、用量設定中、ハウジングに回転不可に結合される第1のラチェット部と、第1のラチェット部上のラチェット歯と回転的に係合するように適合された複数のラチェット歯を備える第2のラチェット部であって、用量設定中、駆動部材に回転不可に結合され、第1のラチェット部と第2のラチェット部が、用量設定中、互いに対して軸方向に移動可能である、第2のラチェット部と、第1のラチェット部および第2のラチェット部を互いに係合するように軸方向に付勢するための付勢手段とを備える。ラチェット機構は、用量設定部材が第1の方向に回転されたとき、第2のラチェット部を第1の方向に回転させ、それにより用量を設定し、また用量設定部材が第2の方向に回転されたとき、第1のラチェット部および第2のラチェット部を移動させて互いの係合から軸方向に外すように適合された制御手段をさらに備える。
【0025】
制御手段は、複数のラチェット駆動表面、および回転基準平面に対して傾斜した複数のラチェット解放表面を有する、組み合わされた駆動・解放ラチェットと、複数の制御駆動表面、および回転基準平面に対して傾斜した複数の制御解放表面を有する制御ラチェットとを備えることができる。そのような構成では、制御駆動表面は、用量設定部材が第1の方向に回転されたとき、第2のラチェット部を第1の方向に回転させるようにラチェット駆動表面と協働しており、制御解放表面は、用量設定部材が第2の方向に回転されたとき、第1のラチェット部および第2のラチェット部を軸方向に移動させて互いの係合から軸方向に外すようにラチェット解放表面と摺動するように協働しており、それにより、第1のラチェット部および第2のラチェット部が軸方向に係合解除されたとき、駆動ばねは、第2のラチェット部を第2の方向に回転することになり、それにより設定用量を低減し、付勢手段は、第1のラチェット部および第2のラチェット部を再び互いに軸方向に係合させ、これにより、設定用量がラチェット機構の1つの歯に対応して低減される。
【0026】
例示的な実施形態では、駆動チューブは、近位部分と、遠位部分とを備えることができ、近位部分は、遠位部分より小さい直径を有し、これは、駆動チューブの近位部分に対応して配置されることになる駆動ばねのための空間を提供する。
【0027】
さらなる例示的な実施形態では、吐出アセンブリは、遠位部分に対応してピストンロッドと駆動チューブとの間の周方向空間内に配置された内容物終了部材を備え、内容物終了部材は、ピストンロッドに対して遠位位置と近位位置との間で軸方向に可動である。内容物終了部材は、ピストンロッドとねじ係合し、駆動チューブとスプライン式係合することができる。あるいは、駆動部材は、近位に延びるねじ山付き部分を備えてもよく、内容物終了部材は、駆動部材とねじ係合し、駆動チューブとスプライン式係合する。
【0028】
上記の実施形態の場合、駆動ばねは、予め引っ張られてもよい非螺旋状の時計ばねの形態であってもよい。
【0029】
例示的な実施形態では、薬剤送達装置は、カートリッジを受け取り、装着状態で保持するように適合されたカートリッジホルダを備え、カートリッジホルダは、(i)カートリッジを受け取ることができる受取り状態と、(ii)受け取られたカートリッジが動作可能な装着位置で保持される保持状態との間で作動可能である。デバイスは、延長されたピストンロッドを近位に移動させることができる作動状態を有するリセットカップリングをさらに備え、リセットカップリングは、カートリッジホルダが保持状態から受取り状態へ作動されたときロック状態からロック解除状態へ作動される。カートリッジホルダは、前面装填式であり、カートリッジを近位方向に受け取るように適合され得る。
【0030】
本発明のさらなる態様では、薬剤充填済みカートリッジを含む、またはそれを受け取るように適合された薬剤送達装置が提供され、薬剤送達装置は、ハウジングと、吐出アセンブリとを備える。吐出アセンブリは、遠位方向において装填されたカートリッジ内のピストンと係合しそれを軸方向に変位させ、それによりカートリッジから薬剤の用量を吐出するように適合されたピストンロッドと、ピストンロッドを少なくとも部分的に収納する駆動チューブであって、外側表面および内側表面を有する管状壁部分を有する概して管状の構成を有し、内側表面は、ピストンロッドがその最近位位置にある(すなわち、どの構造も間に配置されていない)ときピストンロッドの少なくとも一部分に面する、駆動チューブと、ピストンロッドと係合するように配置された駆動部材であって、ピストンロッドが駆動部材に対して軸方向に可動であることにより、駆動部材の回転がピストンロッドの軸方向移動をもたらす、駆動部材とを備える。吐出アセンブリは、ハウジングと駆動チューブとの間に配置された駆動ばねと、ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて駆動チューブの回転によって駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段と、ハウジングと駆動チューブとの間に少なくとも一部配置されたスケールドラムであって、ハウジングに螺旋状に結合されると共に、軸方向に可動であるが回転不可能に駆動チューブの管状壁部分外側表面に結合され、それにより駆動チューブが回転されるにつれて螺旋状に移動されるスケールドラムと、駆動チューブを設定位置に回転させることができる用量設定状態と、駆動ばねによって駆動される駆動チューブが駆動部材を回転させることができる吐出状態との間で作動可能な結合手段と、用量設定状態と吐出状態との間で作動可能であり、それにより結合手段を作動する解放手段とをさらに備える。駆動ばねは、駆動チューブ、ひいては駆動部材を回転させるように解放させ、それによりピストンロッドを遠位方向に移動し、それによりカートリッジから薬剤の用量を吐出することができる。
【0031】
この構成により、よりコンパクトな薬剤送達装置を提供することができ、デバイスの各部分をより少ない「層」で設計することが可能になり、この場合もこれはより細身の設計を可能にし、これは、従来技術から知られている「多層」設計とは対照的である。たとえば、従来技術のデバイスでは、駆動チューブは、近位に延びる周方向のスカート部分を備えるその遠位端部にある。そのような設計では、駆動ばねは、スカートと、スケールドラムがスカート部分の外側表面と係合する主駆動チューブとの間に配置される。対照的に、本発明によるスケールドラムが駆動チューブの外側表面と係合しているとき、よりコンパクトなデバイスを達成することができる。
【0032】
これはいわば、本発明による駆動チューブは、たとえば成形または組立ての理由で、駆動チューブがたとえば互いに軸方向に完全にまたは一部重なり合う2つの管状部材から構成されるアセンブリの形態であってもよい。そのような設計の場合、重なり合う部分内の駆動チューブの管状壁部分は、外側管状部材によって形成された外側表面と、内側管状部材によって形成された内側表面とを有することになる。スケールドラムは、たとえば重なり合わない、または重なり合う部分に対応する駆動チューブと係合し得る。
【0033】
そのような構成は、上記の実施形態に対応して修正されてもよい。
【0034】
本発明のさらなる態様では、薬剤充填済みカートリッジを含む、またはそれを受け取るように適合された薬剤送達装置が提供され、薬剤送達装置は、ハウジングと、吐出アセンブリとを備える。吐出アセンブリは、遠位方向において装填されたカートリッジ内のピストンと係合しそれを軸方向に変位させ、それによりカートリッジから薬剤の用量を吐出するように適合されたピストンロッドと、ピストンロッドを少なくとも部分的に収納する駆動チューブと、ハウジングと駆動チューブとの間に配置された駆動ばねとを備える。吐出アセンブリは、ユーザが吐出されることになる投与量を設定し、それに応じて駆動チューブの回転によって駆動ばねを引っ張ることを同時に可能にする設定手段と、駆動チューブとハウジングとの間に少なくとも一部配置されたスケールドラムであって、ハウジングに螺旋状に結合されると共に、軸方向に可動であるが回転不可能に駆動チューブに結合され、それにより駆動チューブが回転されるにつれて螺旋状に移動されるスケールドラムと、用量設定状態から吐出状態へ作動可能な解放手段とをさらに備える。ピストンロッドは、その長さの少なくとも一部分についてピストンロッドと駆動チューブ内側表面との間に構造が配置されない最近位位置を有し、駆動チューブは、解放手段が用量設定状態にあるときピストンロッドから回転的に切り離され、解放手段が吐出状態にあるときピストンロッドに回転的に結合され、駆動ばねは、解放手段が作動されたとき解放され、それにより駆動チューブを回転させ、回転する駆動チューブは、設定用量に対応して遠位方向にピストンロッドを駆動する。
【0035】
この構成により、よりコンパクトな薬剤送達装置を提供することができ、デバイスの各部分をより少ない「層」で設計することが可能になり、この場合もこれはより細身の設計を可能にする。
【0036】
例示的な実施形態では、吐出アセンブリは、ピストンロッドと係合するように配置された駆動部材であって、ピストンロッドが駆動部材に対して軸方向に可動であることにより、駆動部材の回転がピストンロッドの軸方向移動をもたらす、駆動部材をさらに備え、解放手段は、駆動チューブ、ひいては駆動ばねを設定回転位置に保持するための第1の結合手段と、駆動チューブを駆動部材と係合するように結合するための第2の結合手段とを備え、第2の結合手段は、駆動チューブの遠位端部に配置される。このようにして、さらなる構成部品を、同心での代わりに、軸方向に離れて配置することができる。
【0037】
第2の結合手段は、ハウジングに結合された、一方向に回転するように配置されたラチェット部材と、ラチェット部材および駆動部材に結合され、ラチェット部材の回転運動を駆動部材に移転する結合部材とを含むことができ、駆動チューブは、解放手段が用量設定状態から吐出状態へ作動されたときラチェット部材と非回転係合される。
【0038】
例示的な実施形態では、結合部材は、ラチェット部材に、2つの部材が互いに軸方向に移動することを可能にする第1のスプラインカップリングによって結合され、駆動部材に、2つの部材が互いに軸方向に移動することを可能にする第2のスプラインカップリングによって結合される。結合部材は、第1のスプラインカップリングと第2のスプラインカップリングが係合されるロック状態から、第1のスプラインカップリングおよび第2のスプラインカップリングの少なくとも1つが解放される(たとえば、第1のスプラインカップリング)ロック解除状態へ軸方向に作動させることができ、これは、駆動部材、ひいてはピストンロッドがラチェット部材に対して回転することを可能にする。
【0039】
薬剤送達装置は、カートリッジを受け取り、装着状態で保持するように適合されたカートリッジホルダをさらに備え、カートリッジホルダは、カートリッジを受け取ることができる受取り状態と、受け取られたカートリッジが動作可能な装着位置で保持される保持状態との間で作動可能であり、結合部材は、カートリッジホルダが保持状態から受取り状態へ作動されたときロック状態からロック解除状態へ作動される。
【0040】
カートリッジホルダは、前面装填式であり、カートリッジを遠位開口を通して近位方向に受け取るように適合され得、カートリッジホルダは、たとえば作動部材の回転によって作動される。あるいは、カートリッジホルダは、後部装填式であり、カートリッジを近位開口を通して遠位方向に受け取るように適合され得、カートリッジホルダは、たとえば回転によって薬剤送達主要部分から除去されることによって作動される。
【0041】
上記の薬剤送達装置の例示的な実施形態では、駆動チューブは、近位部分と、遠位部分とを備え、近位部分は、より小さい直径を有し、駆動ばねは、駆動チューブの近位部分に対応して配置される。
【0042】
さらに、吐出アセンブリは、遠位部分に対応してピストンロッドと駆動チューブとの間の周方向空間内に配置された内容物終了部材を備えることができ、内容物終了部材は、ピストンロッドに対して遠位位置と近位位置との間で軸方向に可動である。内容物終了部材は、ピストンロッドとねじ係合し、駆動チューブとスプライン式係合することができる。そのような構成では、駆動部材は、近位に延びるねじ山付き部分を備えてもよく、内容物終了部材は、駆動部材とねじ係合し、駆動チューブとスプライン式係合する。
【0043】
駆動ばねは、予め引っ張られてもよい非螺旋状の時計ばねの形態であってもよい。
【0044】
本明細書では、「インスリン」という用語は、カニューレまたは中空針など送達手段を制御された形で通過することが可能な、また、血糖制御効果を有する、液体、溶液、ゲル、または微細懸濁液など、任意の薬剤含有流動性医薬、たとえばヒトインスリンおよびそのアナログ、ならびにGLP−1およびそのアナログなど非インスリンを包含することが意図されている。例示的な実施形態の説明では、インスリンの使用を参照する。
【0045】
以下では、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照してさらに述べる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1A】薬剤送達装置の一実施形態の図である。
図1B】薬剤送達装置の一実施形態の図である。
図2】薬剤送達装置の第1の実施形態のラチェット部の図である。
図3】第1の実施形態のさらなるラチェット部の図である。
図4】第1の実施形態の用量設定部材の図である。
図5】第1の実施形態の駆動部材の図である。
図6】一部組み立てられた状態にある第1の実施形態の近位部分の断面図である。
図7】組み立てられた状態にある第1の実施形態の近位部分の断面図である。
図8】薬剤送達装置の第2の実施形態の近位部分の断面図である。
図9】薬剤送達装置の第3の実施形態の一部分の断面図である。
図10】代替のラチェット機構のさらなる実施形態のラチェット部の図である。
図11】代替のラチェット機構のさらなるラチェット部の図である。
図12】代替のラチェット機構の用量設定部材の図である。
図13】代替のラチェット機構のさらなるラチェット部の図である。
図14】一部組み立てられた状態にある代替のラチェット機構の断面図である。
図15】組み立てられた状態にある代替のラチェット機構の断面図である。
図16】薬剤送達装置のさらなる実施形態の中央部分の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図では、同様の構造は、主に同様の符号によって識別される。
【0048】
以下において、「上側」および「下側」、「右」および「左」、「水平」および「垂直」などの用語、または同様の相対表現が使用されるとき、それらは添付の図を参照するにすぎず、必ずしも実際の使用状況を参照しない。示されている図は概略図であり、そのため、異なる構造の構成ならびにそれらの相対寸法は、例示的な目的で働くことが意図されているにすぎない。部材または要素という用語は、所与の構成要素について使用されているとき、概して、記載の実施形態において、その構成要素が単位構成要素であるが、記載の構成要素の2つ以上を単位構成要素として提供する、たとえば単一の射出成形部品として製造することができるのと同様に同じ部材または要素が代替としていくつかの部分構成要素を含むことができることを示す。「アセンブリ」という用語は、記載の構成要素が、所与の組立て手順中、必ずしも単位アセンブリまたは機能アセンブリを提供するように組み立てることができることを暗示せず、機能的により密に関連するものとして共にグループ化される構成要素について述べるために使用されるにすぎない。
【0049】
本発明の実施形態それ自体に移る前に、「一般的な」リセット可能なダイヤルアップ/ダイヤルダウン自動薬剤送達装置について述べ、そのようなデバイスは、本発明の例示的な実施形態のための基礎を提供する。
【0050】
ペンデバイス100は、キャップ部107と主要部を備え、主要部は、薬剤吐出装置が配置または一体化されるハウジング101を有する近位本体または駆動アセンブリ部分と、遠位の針貫通可能なセプタムを有する薬剤充填済み透明カートリッジ113が、近位部分に取り付けられたカートリッジホルダによって定位置に配置および保持される遠位カートリッジホルダ部分とを有し、開口を有するカートリッジホルダは、カートリッジの一部分が挿入されることを可能にする開口を有する。遠位結合手段115は、針アセンブリがカートリッジ内部と流体連通して解放可能に装着されることを可能にする。カートリッジは、吐出機構の一部を形成するピストンロッドによって駆動されるピストンを備え、たとえばインスリン、GLP−1、または成長ホルモン製剤を含むことができる。最近位の回転可能な用量設定部材180は、表示窓102内に示され、次いでボタン190が作動されたとき吐出することができる薬剤の所望の用量を手動で設定するために働く。薬剤送達装置内に埋め込まれる吐出機構のタイプに応じて、吐出機構は、図の実施形態のように、用量設定中、引っ張られ、次いで解放ボタンが作動されたときピストンロッドを駆動するように解放されるねじりばねを備えることができる。より具体的には、用量設定中、ばねが連結されている駆動部材が、設定用量に対応する回転位置へ回転され、それにより駆動部材は付勢状態になる。現在の設定用量のサイズが表示窓内に示されるように、たとえばハウジングとのねじ連結により、用量サイズ数字を有するスケールドラムが駆動部材に結合されている。駆動部材が回転するのを防止するために、用量設定機構は、保持機構を備え、保持機構は、図の実施形態では、ラチェット機構の形態である。ユーザが設定用量を吐出したいと望むとき、ボタンが作動され、それにより駆動部材はピストンロッド駆動機構と係合され、その後、保持機構が解放される。
【0051】
図1Aおよび図1Bは、充填済みのタイプ、すなわち予め装着されたカートリッジが供給され、カートリッジが空になったとき廃棄されることになる薬剤送達装置を示すが、代替の実施形態では、薬剤送達装置は、たとえばカートリッジホルダがデバイス主要部分から除去されるように適合されている「後部装填式の」薬剤送達装置の形態、あるいはデバイスの主要部に取り付けられた非取外し式であるカートリッジホルダ内の遠位開口を通してカートリッジが挿入される「前面装填式の」薬剤送達装置の形態で、装填されたカートリッジを交換することを可能にするように設計されてもよい。
【0052】
図2図7を参照して、本発明の態様を組み込む第1の例示的な実施形態、薬剤送達装置のためのコンパクトでリセット可能な用量設定機構について述べる。この機構は、基本的に、ハウジング部分201、駆動チューブ260、ハウジングと駆動チューブとの間に配置された駆動ねじりばね255、伝達部材240、用量設定部材280、解放ボタン290、および戻しばね295を備える。
【0053】
この機構の作動原理の詳細な説明が下記に与えられるが、用量設定機構の中心構成要素の最初のいくつかについて詳細に述べる。
【0054】
図2に移ると、長手方向軸を画定する管状ハウジング部材201の近位部分が示されている。ハウジング部材は、各歯が傾斜したラチェット表面204のある三角形構成を有する複数のラチェット歯構造203(ここでは24個)を有する周方向の近位縁部と、ハウジング部材断面平面に対して直角に向けられたストップ表面205とを備える。ハウジングは、用量設定部材と係合し、溝と近位端部との間に配置された周方向の溝208と、ばねハウジング(下記参照)と係合するように適合されたいくつかの傾斜したスロット209(ここでは3つ)とをさらに備える。このようにして、ハウジングに回転不可に結合され、複数のラチェット歯を備える第1のラチェット部が形成される。明らかなように、この実施形態では、第1のラチェット部は、管状のハウジング部材と一体に形成される。
【0055】
図3は、用量設定部材280を示し、この用量設定部材は、把持表面を提供する、複数の長手方向に配置されたリッジ281を有する外側円筒形表面と、ハウジング部材の周方向の溝内に回転的に配置されるように適合されたいくつかの周方向のフランジ部分288を遠位端部に備える内側円筒形表面とを有する概して管状の構成を有する。内側表面は、以下で述べるように伝達部材と係合するように適合されたいくつかの三角形の「駆動・解放」または「駆動・持上げ」制御ラチェット構造283(ここでは3つ)をさらに備え、各駆動・持上げ制御構造は、長手方向に向けられた駆動表面287と、傾斜した持上げ表面286とを備える。以下の説明では、「駆動・持上げ」という用語が使用される。
【0056】
図4は、伝達部材240を示し、この伝達部材は、駆動チューブ上の対応するスプライン溝と摺動係合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン242を備える中央開口を有するリング状の本体部分241を有する。伝達部材は、間に3つの駆動セクションが形成されるいくつかのラチェットセクション249(ここでは3つ)をさらに備える。各ラチェットセクションは、ハウジング部材ラチェット歯203と係合し、一方向ラチェットを提供するように適合されたいくつかのラチェット歯243を備える。このようにして、第2のラチェット部が形成される。所与のラチェットセクションについて、先行する傾斜したラチェット表面244は、延長され持上げ表面246を形成し、ちょうど追従するストップ表面245もまた、長手方向に延長され、駆動表面247を形成する。このようにして、各駆動セクションは、延長されたラチェット表面と延長されたストップ表面との間に画定される。各ラチェットセクションに対応して、開口248が本体内に形成され、解放ボタン脚部分(下記参照)の通過を可能にする。
【0057】
図5は、最近位の周方向のフランジ261と、周方向のスプライン262の近位アレイと、周方向のスプライン263の遠位アレイとを有する駆動チューブ260を示す。フランジは、解放ボタンスナップ部材291と係合するように適合され、近位スプラインは、伝達部材スプライン242と係合し、解放カップリングを提供するように適合され、遠位スプラインは、作動中、ピストンドライバ230と軸方向に係合し、駆動カップリングを提供するように適合された結合スプラインである。駆動チューブは、駆動ばねの内側端部を取り付けるための軸方向スロット267を有する近位の細径部分と、スケールドラムとインターフェースするように適合されたいくつかの外側スプラインリッジ265を有する遠位のより大きな直径部分とをさらに備える。明らかなように、スプラインの1つは異なっており、対応するスケールドラムスプラインと回転的に対合することを可能にする。
【0058】
図6に移ると、ハウジング部材近位部分、用量設定部材、伝達部材、および解放ボタンが、組み立てられた状態で示されている。この図は、駆動チューブと係合するための内側長手方向スプライン271と、ハウジング内側表面とねじ連結するための外側螺旋溝272とを備えるスケールドラム270をさらに示す。ラチェットインターフェースを見えるようにするために、図6では駆動チューブおよびねじりばねが省略されている。
【0059】
より詳細には、用量設定部材280は、周方向のハウジング溝208内に配置されたフランジにより、回転自在に装着され、しかしハウジング部材上で軸方向にロックされる。伝達部材240は、伝達部材が駆動チューブおよび用量設定部材の両方に対して軸方向に移動することを可能にするスプライン式連結により、駆動チューブ上に回転不可に装着される(図7参照)。さらに、解放ボタン290は、駆動チューブ近位フランジ261と係合するいくつかのスナップ部材291により、回転自在に装着され、しかし駆動チューブの近位端部に軸方向にロックされる。解放ボタンは、伝達部材開口248を通じて移動されるように適合されたいくつかの脚部分298をさらに備える。戻しばね295の形態の付勢手段が伝達部材240と解放ボタンとの間に配置され、戻しばねは、図のように伝達部材ラチェット歯243を押してハウジング部材ラチェット歯203に係合させる。やはり図6でわかるように、駆動・持上げラチェット制御構造283の1つが、伝達部材駆動セクションに対応して配置され、2つの駆動表面および2つの持上げ表面が互いに係合する。明らかなように、係合された位置では、ラチェットは、伝達部材、したがって駆動チューブが反時計回りに回らないようにする。
【0060】
用量を設定するとき、用量設定部材は、時計回りに回転される。駆動・持上げラチェット制御構造283の駆動表面287は、伝達部材上の対応する駆動表面247と係合しているので、駆動表面247は、用量設定部材と共に所望の回転位置へ回転させられ、これにより伝達部材ラチェット歯がハウジングラチェット歯を通り越し、その間に、伝達部材は、傾斜したラチェット歯、戻しばね、および駆動チューブとのスプライン式連結により前後に移動される。用量は、1つのラチェット歯に対応するインクリメントで設定することができ、これは、たとえば所与のインスリン送達デバイスについて、典型的には1単位(1U)のインスリン製剤に対応することになる。用量設定中、駆動ばねは、それに対応して引っ張られる。より小さい用量についても適正な駆動トルクを確保するために、駆動ばねは、初期状態で予め引っ張られている。
【0061】
設定用量を減らすとき、用量設定部材は、反時計回りに回転され、それにより駆動・持上げラチェット制御構造283または伝達部材上の駆動表面間に間隙が生まれる。しかし、駆動・持上げ制御構造の傾斜した持上げ表面286は、伝達部材上の対応する持上げ表面246と係合しているので、持上げ表面246は、伝達部材ラチェット歯がハウジングラチェット歯をちょうど係合解除するまで戻しばねに逆らって近位に移動され、その点で、引っ張られたばねからの力が、駆動チューブを反時計回りに回転させ、それにより伝達部材をも回転させることになり、これにより傾斜した持上げ表面が互いに係合解除する。結果として、伝達部材を戻しばねによって遠位に移動させることができ、それによりラチェット歯は再係合することになり、これは、1インクリメントだけ減らされた以前の設定用量に対応する。ユーザが用量設定部材を反時計回りに回転させ続けた場合、設定用量は、伝達部材の各前後移動ごとに1インクリメントだけ引き続き低減されることになる。同時に、スケールドラムもまた反時計回りに回転され、表示窓202内に示される用量サイズが、それに対応して低減される。
【0062】
図7に移ると、この図は、用量設定および吐出機構のさらなる構成部品がハウジング201内に配置された図6のデバイスを示す。より具体的には、この図は、スケールドラム270とスプライン式連結する駆動チューブ260と、カップ形状のばねハウジング250内に装着され、ばねハウジングまたは駆動チューブに連結された非螺旋状のクロック型駆動ねじりばね255と、駆動チューブ内に配置され、静止型のハウジングナット部分207にねじ連結されたねじ山付きピストンロッド220と、回転不可能に、しかしピストンロッド上で軸方向に可動に配置されたピストンドライバ230と、駆動チューブがピストンドライバと係合して、また係合から外れて結合されることを可能にする駆動カップリング263とを示す。ばねハウジングは、傾斜したハウジングスロット209内に摺動するように受け取られるように適合されたいくつかの細長い横方向突起259を備え、これは、作動中、駆動チューブが前後に移動されたとき、ばねハウジングおよびばねが軸方向に前後に移動されることを可能にし、これらの傾斜したスロットは、ばねトルクと共に、デバイスが作動されていないとき、ばねハウジングおよび関連の構造が近位に移動されることを確実にする。ばねハウジングについては、EP15165735.0により詳細に記載されている。デバイスは、ピストンロッドとねじ係合し、対応する軸方向の溝268内に受け取られるスプライン228を介して駆動チューブとスプライン係合する内容物終了部材225をさらに備える。
【0063】
設定用量の薬剤を吐出するためには、作動ボタン290が戻しばねおよび駆動ばねの軸方向の力に逆らって遠位に移動され、それにより、第1に駆動チューブ260の遠位端部が駆動カップリング263を介してピストンドライバ230と係合し、第2に解放カップリングの駆動チューブスプラインが伝達部材スプライン242を係合解除し、これは、引っ張られたばね255が駆動チューブと、そこに結合されたピストンドライバおよびピストンロッド220とを反時計回りに回転させることを可能にし、これによりピストンロッドがねじ山付きハウジングナット207を通じて遠位に移動される。ユーザが作動ボタンに対する圧力を解放したとき、戻しばねおよび駆動ばねは、ボタンおよび駆動チューブを近位方向に戻すように働き、それにより、第1に駆動チューブと伝達部材との間のスプライン式連結を再係合し、第2に駆動チューブをピストンドライバから係合解除し、この動きは、一部吐出された用量が休止されることをも可能にする。
【0064】
明らかなように、図6および図7に開示されている駆動機構は、駆動ばね255およびスケールドラム270を備え、これらは共に、駆動チューブ260とハウジング201との間の周方向空間内に、しかし軸方向に離れて配置される。さらに、駆動カップリングは、駆動チューブの遠位端部に位置し、これは、ピストンロッド220の近位部分が、ピストンロッドと駆動チューブ内側表面との間に配置される追加の構成部品なしに駆動チューブ内に収容されることを可能にし、これは、「層」の数がより少ない、したがって普通ならそうでないはずのより小さい直径を有する設計を提供する。
【0065】
図8を参照して、本発明の態様を組み込む第2の例示的な実施形態300、薬剤送達装置のためのコンパクトな吐出機構について述べる。この機構は、図2図7を参照して上述した機構と同様であり、基本的に、共通の管状スリーブ302内に配置され、組み合わされたハウジングを提供するいくつかの内側ハウジング部分301と、ハウジングナット部分307と、駆動チューブ360と、ハウジング部分と駆動チューブとの間に配置された駆動ねじりばね355と、やはりハウジング部分と駆動チューブとの間に配置されたスケールドラム370と、伝達部材340と、ピストンロッド320と、ピストンドライバ330と、内容物終了部材325とを備える。
【0066】
スケールドラム370は、駆動チューブ360とハウジング部材301との間の周方向空間内に配置され、スケールドラムは、長手方向スプライン(図示せず)を介して駆動チューブに回転的にロックされ、協働するねじ山構造373を介してハウジング部材の内側螺旋ねじ山303と回転ねじ係合し、それにより、ドラムが駆動チューブによってハウジングに対して回転されたとき、数字の螺旋状の列がハウジング部材内の表示窓開口304を通る。
【0067】
スプライン連結は、対応する溝と摺動係合するいくつか、典型的には2つまたは3つのリッジ/歯構造を備える。溝は、スケールドラム内側表面内に形成されてもよく、リッジ構造は、駆動チューブ外側表面上に形成され、それにより、リッジ構造は、用量設定中に移動しない軸方向位置を有する。あるいは、溝は、駆動チューブ外側表面内に形成されてもよく、リッジ構造は、スケールドラム内側表面上に形成され、それにより、リッジ構造は、用量設定中に軸方向に移動する軸方向位置を有する。そのようなスプライン連結の場合、リッジ構造の最近位は、スプライン連結の最近位軸方向位置を画定すると言うことができる。これはいわば、大部分のスプライン連結において、リッジ構造は、同じ軸方向位置に配置され、ちょうどリッジ構造は、2つのスプライン式部材のどちらかに配置される。図の実施形態では、ハウジング螺旋ねじ山は、表示窓304の近位に配置される。螺旋ねじ山の向きに応じて、スケールドラムは、用量設定中、初期遠位位置から近位に移動することができ、または用量設定中、初期近位位置から遠位に移動することができる。
【0068】
用量設定部材は、組み合わされた用量設定解放部材380の形態である。第1の実施形態とは対照的に、可動のばねハウジングは設けられないが、組み合わされた用量設定解放部材380が、電子回路を備える用量ロギングユニット385と、回転センサと、ディスプレイとを収容し、ロギングユニットは、設定投与量および/または吐出投与量のサイズを検出するように適合される。ディスプレイは、吐出機構を解放するためのボタン表面として働く近位窓390によって覆われる。ロギングユニットは本発明の一部でないので、これ以上詳細には述べない。
【0069】
伝達部材340は、駆動ばねの遠位に位置し、第1の実施形態と同様に、ハウジングと相互作用し、二方向用量設定ラチェット機構を提供し、また駆動チューブと相互作用し、解放カップリングを提供する。スケールドラム370、駆動部材330、駆動カップリング、および内容物終了部材325は、第1の実施形態と同様に配置され、概して同じように働く。
【0070】
第2の実施形態の動作および作動原理は、概して第1の実施形態と同一であり、すなわち、ユーザは、組み合わされた用量設定解放部材380を回転させることによって、吐出されることになる用量を設定し、駆動ばねを引っ張り、駆動チューブおよび駆動ばねは、解放カップリングによりそれらの設定回転位置で保持される。その後、ユーザは、組み合わされた用量設定解放部材380を遠位に移動し、これにより駆動カップリングが活動状態にされ、その後、解放カップリングが解放され、それにより設定用量の薬剤が吐出される。
【0071】
明らかなように、図8に開示されている駆動機構は、駆動ばね355およびスケールドラム370を備え、これらは共に、駆動チューブ360とハウジング301、302との間の周方向空間内に、しかし軸方向に離れて配置され、したがってその最近位位置でスケールドラムと重なり合わない。
【0072】
さらに、駆動カップリングは駆動チューブの遠位端に位置し、これは間に配置される追加の構成部品なしにピストンロッド320の近位部分が駆動チューブ内に収容されることを可能にするので、これは、「層」の数がより少ない、したがって普通ならそうでないはずのより小さい直径を有する設計を提供する。
【0073】
図9を参照して、本発明の態様を組み込む第3の例示的な実施形態、薬剤送達装置のためのコンパクトな吐出機構について述べる。この機構の近位の図示されない部分は、図8を参照して上述した機構と同様であるが、駆動カップリングを備えるこの機構の遠位部分は、修正されている。
【0074】
より具体的には、薬剤送達装置400は、共通の管状スリーブ402内に配置され、組み合わされたハウジングを提供するいくつかの内側ハウジング部分401と、ハウジングナット部分407と、駆動チューブ460と、ハウジング部分と駆動チューブとの間に配置されたスケールドラム470と、スパイラル駆動ばね455と、ねじ山付きピストンロッド420と、ピストンドライバ430と、結合部材410と、結合部材ばね411と、ラチェット部材440とを備える。デバイスは、結合アクチュエータ415、カートリッジホルダ部材416、カートリッジ支持体417、カートリッジ支持ばね418、ブレーキ部材445、および内容物終了部材435をさらに備える。内側ハウジングは、駆動ばねの外側端部のためのアンカー構造として働く管状内側ハウジング部分405を備え、周方向空間406が内側ハウジングと管状内側ハウジング部分との間に画定される。
【0075】
スケールドラム470は、長手方向スプライン(図示せず)を介して駆動チューブに回転的にロックされ、協働するねじ山構造473を介してハウジング部材の内側螺旋ねじ山403と回転ねじ係合し、それにより、ドラムが駆動チューブによってハウジングに対して回転されたとき、数字の螺旋状の列がハウジング部材内の表示窓開口404を通る。図の遠位部分では、スケールドラム470は、駆動チューブ460とハウジング部材401との間の周方向空間内に配置され、一方、近位に移動されたとき、周方向ハウジング空間406内に受け取られる。駆動チューブは、その近位位置内にピストンロッドを受け取るように適合された近位細径部分468を備える。
【0076】
駆動ばね455は、駆動チューブ細径近位部分468と管状内側ハウジング部分405との間の周方向空間内に配置される。明らかなように、スケールドラム470は、その最遠位位置にあるとき、駆動ばね455の遠位に配置され、一方、スケールドラムは、用量設定中、近位に移動されたとき、駆動ばねとの重なり合う状態に移動する。
【0077】
スプライン連結は、対応する溝と摺動係合するいくつか、典型的には2つまたは3つのリッジ/歯構造を備える。溝は、スケールドラム内側表面内に形成されてもよく、リッジ構造は、駆動チューブ外側表面上に形成され、それにより、リッジ構造は、用量設定中に移動しない軸方向位置を有する。あるいは、溝は、駆動チューブ外側表面内に形成されてもよく、リッジ構造は、スケールドラム内側表面上に形成され、それにより、リッジ構造は、用量設定中に軸方向に移動する軸方向位置を有する。そのようなスプライン連結の場合、リッジ構造の最近位は、スプライン連結の最近位軸方向位置を画定すると言うことができる。これはいわば、大部分のスプライン連結において、リッジ構造は、同じ軸方向位置に配置され、ちょうどリッジ構造は、2つのスプライン式部材のどちらかに配置される。図の実施形態では、ハウジング螺旋ねじ山403は、表示窓404の遠位に配置される。螺旋ねじ山の向きに応じて、スケールドラムは、用量設定中、初期遠位位置から近位に移動することができ、または用量設定中、初期近位位置から遠位に移動することができる。図の実施形態では、スケールドラム470は、用量設定中、初期遠位位置から近位に移動する。
【0078】
ピストンドライバ430は、回転不可能に、しかし軸方向に可動に、ピストンロッド上に配置される。ピストンドライバ430は、内容物終了部材435がねじ係合で配置される近位管状延長部431を備え、内容物終了部材は、スプラインによって駆動チューブ460にさらに結合され、これにより、内容物終了部材は、用量設定中、近位に移動されるようになっている。ラチェット部材440は、ハウジングに結合され、アウトドージング(out−dosing)中、一方向に回転することが可能にされる。結合部材410は、駆動部材430およびラチェット部材440の両方とスプライン式連結し、これにより、駆動部材430は、用量設定中、ハウジングに回転的にロックされるようになっている。ラチェット部材440は、駆動チューブ遠位外側スプライン461を受け取るように適合された内側近位スプライン441を備え、これは、作動可能な駆動カップリングを提供する。リング状のブレーキ部材445は、ハウジングとラチェット部材440との間に配置される。ブレーキ部材の作動原理は、WO2015/055642に詳細に記載されている。
【0079】
カートリッジ支持ばね418は、カートリッジ支持体417と結合アクチュエータ415との間に配置され、カートリッジ支持体417に対して遠位方向の付勢力を及ぼす。駆動部材ばね411は、結合部材410と駆動部材430との間に配置され、結合部材410に対して遠位方向の付勢力を及ぼす。
【0080】
設定用量の薬剤を吐出するためには、作動ボタンが戻しばねの軸方向の力に逆らって遠位に移動され(図8の実施形態と同様)、それにより、第1に駆動チューブ460の遠位スプライン端部461が、ラチェット部材近位スプライン441、ひいては結合部材410を介してピストンドライバ430と係合し、第2に駆動チューブ解放カップリングが係合解除し(図8の実施形態と同様)、これは、引っ張られたばねが駆動チューブと、そこに結合されたピストンドライバおよびピストンロッド420とを回転させることを可能にし、これによりピストンロッドがねじ山付きハウジングナット407を通じて遠位に移動される。ユーザが作動ボタンに対する圧力を解放したとき、戻しばねは、ボタンおよび駆動チューブを近位方向に戻すように働き、それにより、第1に近位解放カップリングを再係合し、第2に駆動チューブ460をラチェット部材440から、ひいてはピストンドライバ430から係合解除し、この動きは、一部吐出された用量が休止されることをも可能にする。
【0081】
図9には示されていないが、第3の実施形態は、結合アクチュエータに結合される図の回転可能なカートリッジホルダ部材416を備える前面装填式のカートリッジホルダを備える。カートリッジホルダ部材416がカートリッジホルダの遠位カートリッジ受取り端部を開くように回転されたとき、結合アクチュエータ415が近位に移動され、それにより結合部材410が結合部材ばね411の付勢に逆らってラチェット部材440とのそのスプライン式係合から外れて移動され、これは、結合部材、駆動部材430、ひいてはピストンロッド420が回転することを可能にし、それによりピストンロッドをねじ山付きナット部分407を通じて近位に回転させることができ、これは、新しいカートリッジをカートリッジホルダ内に挿入することを可能にする。カートリッジホルダ部材416がカートリッジホルダを閉じるように反対方向に回転されたとき、結合アクチュエータ415が遠位に移動され、これは結合部材410がラチェット部材440と再係合することを可能にし、結合部材は、結合部材ばね411によって遠位に付勢される。
【0082】
代替の実施形態(図示せず)では、図9を参照して述べた薬剤送達装置は、従来の後部装填式カートリッジホルダを備えてもよく、結合アクチュエータ415は、カートリッジホルダが駆動アセンブリ部分から切り離されたとき作動される。
【0083】
図10図15を参照して、本発明の状況において使用され得るさらなるラチェット機構の例示的な実施形態について述べる。上記の実施形態に対応する駆動ばねは配置されないことに留意されたい。この機構は、基本的に、ハウジング部材501と、駆動チューブ560と、ハウジングと駆動チューブとの間に配置された螺旋ねじりばね555と、伝達部材540と、駆動・持上げ制御部材590と、組み合わされた用量設定解放部材580と、戻しばね595とを備える。第1の実施形態と第2の実施形態との主な違いは、用量設定部材の機能が2つの部材に分割されていることであり、これは、用量設定部材がハウジングに対して軸方向に移動することを可能にする。その他の点では、2つの実施形態の一般的な作動原理は、下記に与えられている作動原理の詳細な説明から明らかになるように同じであるが、用量設定機構の中心構成要素の最初のいくつかについて詳細に述べる。
【0084】
図10に移ると、長手方向基準軸を画定するハウジングベース部材501が示されている。ハウジングベース部材は、管状主ハウジング部材509の近位端部に取り付けられ(図14参照)、駆動ばねのためのベースを形成する。ハウジング部材は、複数のラチェット歯構造503(ここでは24個)が中央開口周りに配置される、近位に面する円錐表面を備え、各歯は、傾斜したラチェット表面504と、ハウジング部材断面平面に対して直角に向けられたストップ表面505とを備える三角形構成を有する。ハウジングベース部材は、用量設定部材と係合するように適合された長手方向スプライン508の外側周方向のアレイをさらに備える。このようにして、ハウジングに回転不可に結合され、複数のラチェット歯を備える第1のラチェット部が形成される。明らかなように、この実施形態では、第1のラチェット部は、ハウジングベース部材と一体に形成される。
【0085】
図11は、伝達部材540を示し、この伝達部材は、駆動チューブ上の対応するスプライン溝と摺動係合するように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン542を備える中央開口を有するリング状の本体部分541を有する。伝達部材は、第1の複数のラチェット歯構造543(ここでは24個)が中央開口周りに配置される、遠位に面する(装着されたとき)凸型表面を備え、各歯は、傾斜したラチェット表面544と、ハウジング部材断面平面に対して直角に向けられたストップ表面545とを備える三角形構成を有し、ラチェット歯は、ハウジング部材上の対応するラチェット歯とインターフェースするように構成され、それにより一方向ラチェットを提供する。このようにして、第2のラチェット部が形成される。伝達部材は、第2の複数(ここでは24個)の遠位に面する(装着されたとき)ラチェット歯構造548を有する外側周方向のフランジ549をさらに備え、各歯は、傾斜した持上げ表面546と、ハウジング部材断面平面に対して直角に向けられた駆動表面547とを備える構成を有する。図の実施形態では、各歯は、平坦な頂部を有する。明らかなように、第1の実施形態に比べて、駆動・持上げ表面は、主ラチェット構造から分離されている。
【0086】
図12は、用量設定部材580を示し、用量設定部材は、複数の長手方向に配置されたリッジ581が把持表面を提供する外側円筒形表面と、ハウジング部材スプライン508とインターフェースするように適合されたいくつかの長手方向に配置されたスプライン588を遠位端部に備える内側円筒形表面とを有する概して管状の構成を有する。用量設定部材は、駆動チューブ近位端部と回転的にインターフェースするように適合された中央開口586を有する内側のリング形成された横断方向間仕切り壁585をさらに備える。
【0087】
第1の実施形態の用量設定部材の一体型の駆動・持上げ制御構造は、別個の駆動・持上げ制御部材に移転されている。より具体的には、図13に示されているように、駆動・持上げ部材590は、用量設定部材スプライン588とインターフェースするように適合された複数の長手方向に配置されたスプライン598を有する外側周方向の表面と、近位周方向の縁部上に配置された、複数の近位に面する駆動・持上げ歯599とを有するリング形成された部材として構成され、各歯は、伝達部材540上の対応する駆動・持上げ表面547、546と係合するように適合された長手方向に向けられた駆動表面597および傾斜した持上げ表面596を有する三角形態を有する。
【0088】
図14および図15に移ると、一部および完全に組み立てられたデバイス500の近位部分が示されている。図14は、ハウジングベース部材501が取り付けられる管状主ハウジング509と、駆動・持上げ制御部材590と、駆動チューブ560およびそこに装着されたボールベアリング565と、駆動チューブの一部分周りに配置され、ばねベースハウジング部材501または駆動チューブに連結される螺旋駆動ばね555と、駆動チューブ560内に配置されたねじ山付きピストンロッド520と、ハウジングとねじ係合するスケールドラム570とを示す。さらに、図15では、伝達部材540、用量設定部材580、および戻しばね595が装着されている。第1の実施形態に対応して、デバイスの遠位部分は、ピストン駆動部材および駆動結合装置(図示せず)を備える。
【0089】
より具体的には、用量設定部材580は、スプライン588が駆動・持上げ制御部材590上のスプライン598と係合し、これが用量設定中、用量設定部材が回転することを可能にする近位位置(図15に示されている)と、スプライン588がハウジング部材上のスプライン508と係合し、これが用量設定部材をハウジング部材に回転的にロックする遠位位置との間で、ハウジング部材501に対して軸方向に可動に装着される。図の実施形態では、用量設定部材は、制御部材とスプライン式連結したままである。さらに、用量設定部材は、軸方向にロックされ、しかしボールベアリング565によって駆動チューブ近位端部上で回転自在に装着され、これは、下記で述べるように、用量設定部材が組み合わされた用量設定作動部材として働くことを可能にする。用量設定部材の開いた近位端部は、円形プレート(図示せず)によって閉じられる。
【0090】
伝達部材540は、伝達部材が駆動チューブおよび用量設定部材の両方に対して軸方向に移動することを可能にするスプライン式連結542、562によって駆動チューブ上で回転不可に装着される。戻しばね595の形態の付勢手段が伝達部材と用量設定部材間仕切り壁585との間に配置され、戻しばねは、図のように伝達部材ラチェット歯543を押してハウジング部材ラチェット歯503に係合させる。明らかなように、係合された位置では、ラチェットは、伝達部材、したがって駆動チューブが反時計回りに回らないようにする。図14に示されているように、駆動・持上げ制御部材590は、用量設定中、スプライン式連結を介して用量設定部材に回転的にロックされ、駆動・持上げ部材の駆動・持上げ歯および伝達部材は、戻しばねによって押され係合する。
【0091】
用量を設定するとき、用量設定部材は、その近位位置において、時計回りに回転される。駆動・持上げ制御部材590の駆動表面597は、伝達部材540上の対応する駆動表面547と係合しているので、駆動表面547は、用量設定部材と共に所望の回転位置へ回転させられ、これにより伝達部材ラチェット歯543がハウジング部材ラチェット歯503を通り越し、その間に、伝達部材は、傾斜したラチェット歯、戻しばね595、および駆動チューブとのスプライン式連結により前後に移動される。用量は、1つのラチェット歯に対応するインクリメントで設定することができ、これは、たとえば所与のインスリン送達デバイスについて、典型的には1単位(1U)のインスリン製剤に対応することになる。
【0092】
設定用量を減らすとき、用量設定部材は、反時計回りに回転され、それにより駆動・持上げ制御部材590または伝達部材540上の駆動表面間に間隙が生まれる。しかし、駆動・持上げ制御部材の傾斜した持上げ表面596は、伝達部材上の対応する持上げ表面546と係合しているので、持上げ表面546は、伝達部材ラチェット歯がハウジング部材ラチェット歯をちょうど係合解除するまで戻しばねに逆らって近位に移動され、その点で、引っ張られた駆動ばね555からの力が、駆動チューブを反時計回りに回転させ、それにより伝達部材をも回転させることになり、これにより傾斜した持上げ表面が互いに係合解除する。結果として、伝達部材を戻しばねによって遠位に移動させることができ、それによりラチェット歯は再係合することになり、これは、1インクリメントだけ減らされた以前の設定用量に対応する。ユーザが用量設定部材を反時計回りに回転させ続けた場合、設定用量は、伝達部材の各前後移動ごとに1インクリメントだけ引き続き低減されることになる。同時に、スケールドラムもまた反時計回りに回転され、表示窓内に示される用量サイズが、それに対応して低減される。
【0093】
設定用量の薬剤を吐出するためには、組み合わされた用量設定作動部材580が戻しばね595の力に逆らって遠位に移動され、それにより、最初、用量設定部材は、ハウジングばねベース部材501のスプライン508に連結し、設定用量のさらなる調整を防止し、第2に、駆動チューブ560の遠位端部は、駆動カップリングを介してピストンドライバに係合し、第3に、駆動チューブスプラインは、伝達部材スプライン542を係合解除し、これは、引っ張られたばね555が駆動チューブと、そこに結合されたピストンドライバおよびピストンロッド520とを反時計回りに回転させることを可能にし、これによりピストンロッドがねじ山付きハウジングナットを通じて遠位に移動される。ユーザが組み合わされた用量設定作動部材に対する圧力を解放したとき、戻しばねは、その部材および駆動チューブを近位方向に戻すように働き、それにより、第1に駆動チューブと伝達部材との間のスプライン式連結を再係合し、第2に駆動チューブをピストンドライバから係合解除し、この動きは、一部吐出された用量が休止されることをも可能にする。
【0094】
ラチェット部材540または制御部材590上の駆動・持上げ歯構造は、2つの代替形態に対応して、すなわち、図10図15を参照して述べた実施形態に対応する「傾斜していない」駆動表面を有して、または代替として、「傾斜した」駆動表面を有して構成し、ダイヤルアップ中、過トルク保護機構を提供してもよく、これは、EP16186501.9により多く記載されている。
【0095】
図16を参照して、本発明の態様を組み込むさらなる例示的な実施形態、薬剤送達装置のためのコンパクトな吐出機構について述べる。より具体的には、図16は、ハウジング部材、駆動チューブ、駆動部材、ピストンロッド、および駆動ばねのコンパクトな構成を実施する駆動機構の中央部分を示す。薬剤送達装置の遠位部分および近位部分は、本発明の記載の態様にとって重要と考えられていないので、この図はこれらを示さない。
【0096】
より具体的には、薬剤送達装置600は、組み合わされたハウジングを提供するように管状スリーブ602内に配置された内側ハウジング601と、駆動チューブ660と、ハウジング部分と駆動チューブとの間に配置されたスケールドラム670と、駆動ばね655と、ねじ山付きピストンロッド620と、ドライバ630と、結合部材610とを備える。内側ハウジングは、駆動チューブのための近位ストップとして働く管状内側ハウジング部分605と、駆動ばねの近位端部のためのアンカー構造とを備える。
【0097】
スケールドラム670は、駆動チューブ660とハウジング部材601との間の周方向空間内に配置され、スケールドラムは、長手方向スプライン662、672を介して駆動チューブに回転的にロックされ、協働するねじ山構造673を介してハウジング部材の内側螺旋ねじ山603と回転ねじ係合し、それにより、ドラムが駆動チューブによってハウジングに対して回転されたとき、数字の螺旋状の列がハウジング部材内の表示窓開口604を通る。
【0098】
駆動チューブは、機能的に単一部材であるが、図の実施形態では、製造目的で、回転的にかつ軸方向にロックされた連結をもたらすように互いに結合されたより長い内側管状部材660およびより短い外側管状スカート部材669を備える。スカート部材669は、吐出状態において結合部材610上の対応するスプライン構造と係合するように適合された、軸方向に向けられた遠位に面するスプライン663の内側アレイを遠位端部に備える。駆動チューブは、ほぼ中間に、中央周方向のフランジ661を備える。駆動チューブは、ピストンロッドをその近位位置で受け取るように適合された近位細径部分668を備える。
【0099】
スプライン連結は、対応する溝と摺動係合するいくつかのリッジ/歯構造(ここでは2つ)を備える。図の実施形態では、溝672は、スケールドラム内側表面内に形成され、リッジ構造662は、駆動チューブ外側表面上に形成され、それにより、リッジ構造は、用量設定中に移動しない軸方向位置を有する。そのようなスプライン連結の場合、リッジ構造の最近位は、スプライン連結の最近位軸方向位置を画定すると言うことができるが、図の実施形態では、リッジ構造は、同じ軸方向位置に配置される。図の実施形態では、ハウジング螺旋ねじ山603は、表示窓604の遠位に配置される。螺旋ねじ山の向きに応じて、スケールドラムは、用量設定中、初期遠位位置から近位に移動することができ、または用量設定中、初期近位位置から遠位に移動することができる。図の実施形態では、スケールドラムは、初期近位位置に位置決めされる。
【0100】
駆動ばね655は、中央フランジ661に対応する駆動チューブに取り付けるための遠位フック部分と、内側管状部分605に対応するハウジング部材に取り付けるための近位フック部分とを有する螺旋オープンワウンド(open wound)ねじりばねの形態である。組み立てられた状態では、駆動ばねは、望ましい初期トルクをもたらすように予め巻かれている。明らかなように、駆動ばねは、スプラインリッジ構造のちょうど近位に配置される。スケールドラム670が最近位位置にある状態で、駆動ばねは、駆動チューブ660とスケールドラム670との間の周方向空間内に収容され、一方、スケールドラムがその最遠位位置にある状態で、駆動ばねは、内側ハウジングに面する。
【0101】
図9の実施形態に対応して、ドライバ630は、1対の対向するスプラインを介してピストンロッド620と係合し、それにより、ピストンロッドおよびドライバは、ドライバが結合部材610を介して、用量吐出中、駆動チューブによって回転されたとき、共に回転する。ドライバ630は、内容物終了部材635がねじ係合で配置される近位管状延長部631を備え、内容物終了部材は、スプラインによって駆動チューブ660にさらに結合され、これにより、内容物終了部材は、用量設定中、近位に移動されるようになっている。
【0102】
例示的な実施形態の上記の説明では、異なる構成要素のために記載の機能を提供する異なる構造および手段について、本発明の着想が当業者に明らかになる程度に述べられている。これらの異なる構成要素のための詳細な構造および仕様は、本明細書に記載の道筋に沿って当業者によって実施される通常の設計手順の目的と考えられる。たとえば、従来の螺旋駆動ねじりばねを使用してもよい。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図16