(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1や特許文献2に示される天井構造では、通常一般の天井構造のように天井下地材としての野縁受けを天井から吊りボルト等により吊り下げるのではなく、野縁受けの端部を壁部に固定している。そのため、壁部間の間隔が大きくて野縁受けの長さが長くなった場合、その野縁受けが中間部で下側に撓むようになり、それを避けるには野縁受けの中間部を吊り下げて支持する必要が生じる。
【0006】
しかし、特許文献2に示されるような廊下の天井部では、廊下の長さ方向に連続するダクトやケーブルラック等が配置されており、特に、高層ビルではダクトやケーブルラック等の天井空間に占める面積が大きくなる。そのため、例えば野縁受けの中間部の吊下げのための補強材を設け、その補強材をダクト等の下側に廊下の幅方向に延びるように配置して、補強材の両端部をダクト等の側方を通る吊りボルト等により天井から吊り下げる構造等が必要となる。その場合、補強材によって野縁受けの吊元を作る作業が極めて面倒となり、施工時間も長くなるのは避けられなくなる。
【0007】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、天井構造の野縁受け及び野縁の連結構造に工夫を加えることにより、天井の対向する側壁間の間隔が大きくなっても、対向側壁間に延びる部材を端部だけの支持で剛性を保って支持できるようにして野縁受けの吊元を不要にし、天井構造の施工の簡易化や施工時間の短縮を図ることにあることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、天井部の対向する壁にそれぞれメイン下地材を固定支持し、両メイン下地材間にクロス下地材を架け渡して固定するようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明は、建物内の
廊下の天井部に施工される天井構造であって、天井部
において廊下の幅方向に対向する2つの対向側壁に、
直角に折り曲げられたL字板状の複数のアングルピースが廊下の長さ方向に間隔をあけかつ各々の支持部を側壁から突出させた状態で固定され、上記複数のアングルピースの支持部に、廊下の対向側壁に沿って水平に延びるメイン下地材がそれぞれ
ハンガーにより高さ位置を調整可能に吊り下げられた状態で固定支持され、これら両方のメイン下地材間に、上記対向側壁の対向方向に延びかつ対向側壁に沿った方向に間隔をあけて並んだ複数のクロス下地材が両端部で連結され、上記メイン下地材とクロス下地材とに亘って天井板が固定されていることを特徴とする。
【0010】
この第1の発明では、メイン下地材及びクロス下地材がいずれも野縁に相当する。そして、メイン下地材は
廊下の天井部の対向側壁に固定支持されているので、
ダクトやケーブルラック等が大きな空間を占めて配置される廊下の天井部であっても、従来のように野縁受けを
廊下の天井から吊り下げる必要がなく、
廊下の天井部の側壁間の間隔が大きくても、その天井での吊元は不要となり、
廊下の天井構造の施工が簡易となり、施工時間を短縮することができる。
【0011】
また、メイン下地材及びクロス下地材が互いに連結されて、それらに天井板が固定されているので、クロス下地材は天井板と一体化されて剛性が高くなり、対向側壁間の間隔がある程度長くなっても、クロス下地材が中間部で撓み難くなる。
【0012】
また、廊下の対向側壁に、直角に折り曲げられたL字板状の複数のアングルピースが廊下の長さ方向に間隔をあけて固定され、各アングルピースの側壁から突出する支持部にメイン下地材
がハンガーにより高さ位置を調整可能に吊り下げられた状態
で支持されて
おり、このように、廊下の対向側壁に固定したアングルピースの支持部に対しメイン下地材の高さ位置を調整することで、天井板全体の高さや傾きを容易に調整することができる。
【0013】
第
2の発明は、第1の発明
と同様に、建物内の廊下の天井部に施工される天井構造であって、上記天井部において廊下の幅方向に対向する2つの対向側壁に、該対向側壁に沿って水平に延びるメイン下地材がそれぞれ固定具を介して固定支持され、上記両方のメイン下地材間に、上記対向側壁の対向方向に延びかつ対向側壁に沿った方向に間隔をあけて並んだ複数のクロス下地材が両端部で連結され、上記固定具は、対向側壁の所定高さ位置
に複数固定され、
各固定具は、上下に並んで対向側壁に固定される上部材及び下部材と、該上部材及び下部材を連結する中間部材とを備え、上記上部材は、中間部材よりも突出する突出部を有し、該突出部と中間部材との間に位置決め部が形成されており、メイン下地材は上記固定具にメイン下地材の上端部が上記位置決め部
に押し当てられて位置決めされて取り付けられており、
上記メイン下地材とクロス下地材とに亘って天井板が固定されていることを特徴とする。
【0014】
この
第2の発明では、第1の発明と同様に、メイン下地材及びクロス下地材がいずれも野縁に相当する。メイン下地材は、廊下の天井部の対向側壁に対し該対向側壁の所定高さ位置に固定した複数の固定具を介して固定支持されているので、ダクトやケーブルラック等が大きな空間を占めて配置される廊下の天井部であっても、従来のように野縁受けを廊下の天井から吊り下げる必要がなく、廊下の天井部の側壁間の間隔が大きくても、その天井での吊元は不要となり、廊下の天井構造の施工が簡易となり、施工時間を短縮することができる。
【0015】
また、メイン下地材及びクロス下地材が互いに連結されて、それらに天井板が固定されているので、クロス下地材は天井板と一体化されて剛性が高くなり、対向側壁間の間隔がある程度長くなっても、クロス下地材が中間部で撓み難くなる。
【0016】
さらに、各固定具は、上下に並んで対向側壁に固定される上部材及び下部材と、上部材及び下部材を連結する中間部材とを備え、上部材は、中間部材よりも突出する突出部を有し、該突出部と中間部材との間に位置決め部が形成されていることから、対向側壁の適正の高さ位置に固定具が固定されて
いさえすれば、その固定具に
対し該固定具の位置決め部を利用してメイン下地材を取り付けるだけの少ない作業工程で、メイン下地材を対向側壁に固定することができ、作業量を低減することができる。
【0017】
第
3の発明は、第1
又は第
2の発
明において、メイン下地材及びクロス下地材は、細長板状の水平部と、該水平部の幅方向中央から上方に突出された垂直部とを有する断面略T字状のものとされ、クロス下地材はメイン下地材に対し、クロス下地材における水平部の長さ方向端部をメイン下地材における水平部の幅方向側縁に両水平部が面一になるように突き合わされた状態で連結され、メイン下地材の水平部とクロス下地材の水平部とに亘って天井板が固定されていることを特徴とする。
【0018】
この第
3の発明では、メイン下地材及びクロス下地材は共に断面略T字状の部材であり、メイン下地材とクロス下地材との連結部では、クロス下地材における水平部の長さ方向端部がメイン下地材における水平部の幅方向側縁に突き合わされて連結され、両下地材の両水平部が面一になっており、この両水平部に亘って天井板が固定されている。このことで、対向側壁間に延びるクロス下地材は、それ自体で剛性が高くなり、対向側壁間の間隔が大きくなってクロス下地材の長さが長くなっても、クロス下地材が中間部で撓むことはない
。
【0019】
第
4の発明は、第1〜第
3の発明のいずれか1つにおいて、対向側壁の間隔は2100mm以下であることを特徴とする。こうして、
廊下の対向側壁の間隔が2100mm以下であれば、クロス下地材が中間部で撓むのを安定して抑制することができ。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によると、建物の
廊下における天井部の対向側壁に沿ってメイン下地材を固定支持し、
そのメイン下地材は、対向側壁に固定されたL字状のアングルピースの支持部に高さ位置を調整可能に吊り下げ、或いは対向側壁に固定しされた固定具の位置決め部への押し付けにより高さ位置を位置決めして支持し、両メイン下地材間にクロス下地材を架け渡して連結固定し、メイン下地材とクロス下地材とに亘って天井板を固定したことにより、クロス下地材の長さの増大による撓みを抑制しつつ、野縁受けを吊り下げるための吊元を不要として、天井構造の施工の簡易化及びその施工時間の短縮化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0023】
(実施形態1)
図1は、例えば6階以上の高さを有する高層ビルにおける1つのフロアの間取りを示し、そのフロアには、例えば3基ずつのエレベータEV,EV,…の昇降路S,S(エレベータシャフト)の間にエレベータホールEHが配置され、このエレベータホールEHに通じる2つの廊下C,Cが互いに平行に形成されており、各廊下Cの天井部に本発明の実施形態1に係る天井構造が施工されている。廊下Cはその幅方向に対向する側壁1,1(対向側壁)を有し、両側壁1,1の間隔は2100mm以下であり、本実施形態では例えば1785mmである。
【0024】
図2、
図4及び
図5に示すように、天井構造は、廊下Cの長さ方向に延びる1対のメイン下地材3,3と、廊下Cの幅方向に延びる複数本のクロス下地材5,5,…とを備え、クロス下地材5,5,…は廊下Cの長さ方向に一定間隔(例えば364mm)をあけて配置され、これらメイン下地材3,3とクロス下地材5,5,…とによって下地材が形成されている。尚、メイン下地材3,3及びクロス下地材5,5,…はいずれも野縁に相当する。
【0025】
各メイン下地材3及び各クロス下地材5は、いずれも帯状の金属板(例えば溶融亜鉛メッキ鋼板)を折り曲げ成形加工してなる長尺材であり、それらは、互いに連結するための連結部分の構造が異なるのみで、縦断面形状は同一で略T字状である。そのため、以下の説明では、互いに同じ部分については同じ符号を付して説明する。
【0026】
すなわち、
図8はメイン下地材3を、また
図9はクロス下地材5をそれぞれ示している。メイン下地材3及びクロス下地材5は、1枚の帯状の鋼板を幅方向の中央部で折り曲げて重ね合わせかつその重ね合わせ部分の先端側の略半部を他の部分と直角になるように逆方向に折り曲げる曲げ加工をすることで、断面略T字状に成形されたものであり、上記逆方向に折り曲げられた部分からなる所定幅の細長い板状の水平部7と、この水平部7の幅方向中央から上方に突出するように延び、重ね合わせ部分からなる細長い板状の垂直部8とを有している。水平部7の幅方向両端部には、上方に折り曲げられた起立部7a,7aが形成されている。水平部7の幅方向中央寄り位置には、上方に起立状に折り曲げられた補強リブ7b,7b(
図15参照)が設けられており、これらの起立部7aや補強リブ7bにより水平部7の剛性を増大させるようにしている。
【0027】
上記垂直部8(重ね合わせ部分)の下部では、重ね合わせ部分がリベットによるカシメ結合等により固着されて分離不能となるように一体化されている。また、垂直部8の上端部には中空の矩形筒状の接続部9が一体に設けられている。この接続部9は、重ね合わせ部分からなる垂直部8の上端部(折り曲げ端部)を部分的に重ね合わせ方向と反対側に重ね合わせ部分が拡がるように折り曲げることにより、重ね合わせ部分の厚さよりも厚くなった矩形筒状部分であり、この矩形筒状部分によって接続部9の曲げ剛性を増大させるようにしている。
【0028】
以上の構造がメイン下地材3及びクロス下地材5の共通構造である。そして、互いに異なる構造として、メイン下地材3の垂直部8には、長さ方向の所定位置に、クロス下地材5の端部を連結するための複数の連結係合部10,10,…,10′,10′,…が一定の間隔をあけて形成されている。
【0029】
図13及び
図14に示すように、この各連結係合部10,10′は、垂直部8においてその長さ方向に離れた位置に略円弧状の2つのスリットを形成して両スリット間部分の2枚の鋼板を他の部分に対し頂部が他の部分と平行になるように切り起こした膨隆部10aを有し、その膨隆部10aの一側には一方のスリットによる入口10bが、また他側には他方のスリットによる出口10cがそれぞれ互いに連通するように開口している。膨隆部10aの出口10c側の垂直部8には、膨隆部10aから所定間隔をあけた位置に係合突起10dが形成されている。この係合突起10dは、垂直部8においてコ字状のスリットを形成してスリット内部分の2枚の鋼板をスリット外の他の部分と傾斜するように切り起こしてなるもので、膨隆部10aから離れるに連れて垂直部8から離れるように傾斜している。係合突起10dは、クロス下地材5の後述する連結係合片12における係合孔12cと係合する。さらに、係合突起10dの膨隆部10aと反対側の垂直部8には、係合突起10dから所定間隔をあけた位置に位置決め突起10eが形成されている。この位置決め突起10eは、垂直部8においてコ字状のスリットを形成してスリット内部分の2枚の鋼板をスリット外の他の部分と直交するように切り起こしたものであり、クロス下地材5の連結係合片12における位置決め切欠き12dと係合する。上記膨隆部10a、係合突起10d及び位置決め突起10eで連結係合部10が構成されている。
【0030】
尚、垂直部8には、上記各連結係合部10を表側の連結部分としたときにそれに隣接して同様の裏側の連結係合部10′が表側の連結係合部10と対になるように形成されている。裏側の連結係合部10′は表側の連結係合部10と同じ構造であり、その膨隆部10a、係合突起10d及び位置決め突起10eの突出方向や切り起こし方向が表側の連結係合部10と反対側になっている。また、表側及び裏側の連結係合部10,10′は垂直部8の長さ方向にずれてかつ両者間の中央の位置に対し線対称となるように配置されている。本発明では、メイン下地材3にその一側面(表面側)のみからクロス下地材5が連結されるので、裏側の連結係合部10′は必須でなく、省略することもできるが、他の下地材と汎用する場合には残しておいても差し障りはない。
【0031】
一方、クロス下地材5の長さ方向の両端部には連結係合片12がリベットによるカシメ結合等により一体的に固定されている。具体的には、
図15及び
図16に示すように、クロス下地材5の長さ方向両端部において、垂直部8が水平部7よりも突出するように延びており(例えば水平部7の長さ方向端部を切除することで、残った垂直部8を突出させる)、その突出部分に連結係合片12がカシメ結合等により一体的に固定されている。連結係合片12は、途中で直角に折り曲げ加工された平面視略L字状の板材で、その一側部は、クロス下地材5の垂直部8における接続部9を除く端部に該端部から僅かに突出するように固定される固定部12aに形成され、他側部には、メイン下地材3の連結係合部10の膨隆部10a内に入口10bから挿入可能な挿入部12bが形成されている。この挿入部12bは、その断面形状が連結係合部10の膨隆部10a内の空間形状と同等に形成され、長さが膨隆部10aよりも長くなっており、
図17に示すように、挿入部12bを膨隆部10a内に入口10bから挿通することで、クロス下地材5が端部でメイン下地材3に連結され、その連結状態ではがたつきが生じず、挿入部12bの先端部が膨隆部10aの出口10cから突出するようになっている。
【0032】
挿入部12bの先端側寄りの中央部には例えば矩形状の係合孔12cが貫通形成されている。また、挿入部12bの先端部にはコ字状に切り欠いた位置決め切欠き12dが形成されており、メイン下地材3へのクロス下地材5の連結状態で、係合孔12cが連結係合部10の係合突起10dと係合するとともに、位置決め切欠き12dが連結係合部10の位置決め突起10eと係合して連結係合部10の先端位置を規定するようになっている。
【0033】
そして、このようにクロス下地材5が端部の連結係合片12でメイン下地材3の連結係合部10に連結された連結状態では、クロス下地材5の水平部7の長さ方向端部がメイン下地材3の水平部7の幅方向側縁に両水平部7が面一になるように突き合わされた状態で連結される。尚、
図16に示すように、クロス下地材5の長さ方向両端部の連結係合片12,12は、それぞれ挿入部12b,12bの折り曲げ方向が互いに逆方向になっている。
【0034】
天井構造の説明に戻ると、
図6及び
図7に示すように、上記廊下Cの天井部の幅方向に対向する2つの側壁1,1(対向側壁)にそれぞれ上記メイン下地材3,3が側壁1に沿って廊下Cの長さ方向に水平に延びるように固定支持されている。具体的には、各側壁1の同じ高さ位置に複数のアングルピース15,15,…(1つのみ図示する)が廊下Cの長さ方向に間隔をあけて取付固定されている。
図10に示すように、各アングルピース15は、矩形板材を直角に折り曲げたL字状の板材からなっていて、垂直上下方向に延びる取付部15aと、この取付部15aの下端から水平方向に延びる支持部15bとを有する。取付部15aには複数の取付孔16,16,…が、また支持部15bには取付部15aに対し接離する方向に延びる長孔17がそれぞれ貫通形成されており、
図6に示すように、ビスVを各取付孔16に挿通させて側壁1に締結することで、アングルピース15が支持部15bを側壁1から突出させた状態で固定されている。
【0035】
上記側壁1から突出したアングルピース15の支持部15bの長孔17には吊りボルト20の上端部が挿通され、その支持部15b両側の吊りボルト20にはそれぞれナット21,21が螺合されており、両ナット21,21をナット21,21間に支持部15bを挟み込んだ状態で締結することにより、吊りボルト20がアングルピース15の支持部15bに固定され、ナット21,21の締結位置の変更により吊りボルト20の高さ位置を調整可能となっている。
【0036】
吊りボルト20の下端部にはハンガー24が連結されている。
図11に示すように、ハンガー24は、上部が水平板状になっている断面コ字状のハンガー本体25と、このハンガー本体25の上下中間部に上端部で揺動可能に支持された挟持片26とを有する。ハンガー本体25上部の水平板状部には吊りボルト20の下部が挿通されるボルト挿通孔25aが貫通形成されており、ボルト挿通孔25aに吊りボルト20の下部を挿通させ、水平板状部両側の吊りボルト20に螺合されたナット22,22を締結することで、吊りボルト20の下端部にハンガー24(ハンガー本体25)が連結され、ナット22,22の締結位置の変更によりハンガー24の高さ位置を調整可能となっている。
【0037】
ハンガー本体25の下端部には断面略L字状に折り曲げられた係止爪部25bが形成されている。上記挟持片26は、上端部でハンガー本体25の上下中間部に揺動可能に係合支持されることで、下部がハンガー本体25と接離可能となっており、この挟持片26の下端部には、ハンガー本体25の係止爪部25bに対向するように断面略L字状に折り曲げられた係止爪部26aが形成されている。そして、挟持片26はハンガー本体25に対し、ハンガー本体25に挿通した締結ネジ28の螺合により接離するようになっており、
図12に示すように、このハンガー本体25の係止爪部25bと挟持片26の係止爪部26aとの間に上記メイン下地材3の垂直部8上端の接続部9を挟み込み、締結ネジ28により挟持片26をハンガー本体25に近付けて両係止爪部25b,26a間で接続部9を挟んで固定支持するようになっている。このようにハンガー本体25及び挟持片26の係止爪部25b,26aで接続部9を挟持することで、メイン下地材3が廊下Cの側壁1に対しハンガー24、吊りボルト20及びアングルピース15によって吊り下げられた状態で固定支持されている。そして、アングルピース15に対する吊りボルト20の高さ位置や吊りボルト20に対するハンガー24の高さ位置を調整することにより、メイン下地材3の側壁1に対する高さ位置が調整可能となっている。こうしてメイン下地材3が廊下Cの側壁1に吊り下げられた状態では、そのメイン下地材3の水平部7がその幅方向の一側縁部(側壁1側の側縁部)で側壁1に当接している。また、両メイン下地材3,3は、その一方の連結係合部10,10,…と他方の連結係合部10,10,…とが廊下Cの幅方向に対向するように配置され、詳細には、両メイン下地材3,3の対向する連結係合部10,10は、クロス下地材5両端の連結係合片12,12が逆向きになっている分だけ廊下Cの長さ方向にずれている。
【0038】
このように廊下Cの対向する両側の側壁1,1に吊下げ状態で固定支持されたメイン下地材3,3間に複数本の上記クロス下地材5,5,…が架け渡されている。それら複数本のクロス下地材5,5,…は、両側壁1,1の対向方向である廊下Cの幅方向に互いに平行に延びかつ側壁1に沿った方向である廊下Cの長さ方向に間隔をあけて並んだ状態に配置されている。各クロス下地材5の端部はメイン下地材3に、上記連結係合片12の挿入部12bをメイン下地材3の対応する連結係合部10の膨隆部10a内に挿通することで連結されている。このとき、
図7に示すように、各クロス下地材5はメイン下地材3に対し直角になり、クロス下地材5における水平部7の長さ方向端部をメイン下地材3における水平部7の幅方向他側縁部(側壁1と反対側の側縁部)に両水平部7が面一になるように突き合わされた状態で連結されている。尚、クロス下地材5に固定された連結係合片12の挿入部12bは、クロス下地材5の垂直部8(接続部9)よりも所定寸法だけクロス下地材5の長さ方向に突出しているので、クロス下地材5が挿入部12bでメイン下地材3の連結係合部10に連結されたときに、クロス下地材5の接続部9の長さ方向の端部がメイン下地材3の接続部9とは当接せず、両者間にハンガー24のハンガー本体25及び挟持片26の係止爪部25b,26aが通る隙間が形成される。
【0039】
そして、このように連結されたメイン下地材3,3とクロス下地材5,5,…とに亘って天井板33,33,…が固定されている。具体的には、メイン下地材3の水平部7とクロス下地材5の水平部7とは水平で互いに面一であり、各々の水平部7,7の下面に各天井板33が接着剤による接着、ビス止め、ステープル又はそれらの組み合わせにより固定されている。天井板33は例えば300mm×600mmの長方形状の板材である。複数枚の天井板33,33,…は、
図3及び
図5に示すように、例えば各々の長さ方向が廊下Cの長さ方向に(幅方向が廊下Cの幅方向に)延びた状態で廊下Cの幅方向に複数列に並び、廊下Cの幅方向に隣接する天井板33が廊下Cの長さ方向に長さの半分だけずれた状態で配置されている。また、廊下Cの長さ方向に隣接する天井板33の長さ方向の端部同士はクロス下地材5の水平部7の幅方向中央部で突き合わされるように配置されている。
【0040】
各天井板33は、石膏ボードや木質板等の単層板又は複層板が用いられる。図示しないが、本実施形態では、メイン下地材3及びクロス下地材5に直接に固着される石膏ボード等の下地板と、その下地板の下面に貼り付けられた化粧材とからなる積層板が用いられ、具体的には、耐震性を得るのに有利となる軽量なロックウール化粧吸音板である。天井板33は、長方形状でなくて正方形状の板材であってもよい。
図6中、35はメイン下地材3,3及びクロス下地材5,5,…上側の天井空間に配置されるダクトやケーブルラック等の天井収容機器部材である。
【0041】
したがって、上記実施形態においては、1対のメイン下地材3,3が廊下Cの長さ方向に延び、その各メイン下地材3は側壁1に吊り下げられて固定支持され、この両メイン下地材3,3間に廊下Cの幅方向に延びる複数のクロス下地材5,5,…が架け渡されて連結されている。そのため、廊下Cの天井部の幅方向の側壁1,1間の間隔が大きくても、従来のように野縁受けを天井等から吊り下げる必要がなく、その天井での吊元は不要となる。特に、6階以上の高層ビルの廊下Cの天井部は、ダクトやケーブルラック等の天井収容機器部材35の天井空間に占める面積が大きくて、野縁受けを吊り下げる吊元を作り難い構造であっても、その吊元の不要化により、廊下Cの天井構造の施工が簡易となり、施工時間も短縮することができる。
【0042】
また、メイン下地材3及びクロス下地材5は共に断面略T字状の部材であり、クロス下地材5はメイン下地材3に対し、クロス下地材5における水平部7の長さ方向端部がメイン下地材3における水平部7の幅方向側縁に突き合わされて両下地材3,5の両水平部7,7が面一になるように連結され、この両水平部7,7に亘って各天井板33が固定されている。この廊下Cの幅方向に延びるクロス下地材5が断面略T字状の部材であるので、それ自体の剛性は高いものとなる。クロス下地材5が高剛性であることについて説明すると、例えば、天井板を貼る場合に一般的に用いられる野縁として、細長い金属板材を断面コ字状に折り曲げ、さらに両端部を内側に対向するように折り曲げたMバーがある。細長い材料の曲げ難さを表す特性として断面二次モーメントがあり、この断面二次モーメントは、断面積の大きさや断面形状によって決定される。Mバーの断面二次モーメントは例えば3811mm
4であるのに対し、本実施形態に係る天井構造のクロス下地材5(及びメイン下地材4)は、断面略T字状の構造により断面二次モーメントが例えば15894mm
4でMバーの4倍以上であり、Mバーよりも曲げ難さを有していて高剛性となっている。しかも、メイン下地材3及びクロス下地材5が互いに連結され、それらに天井板33が一体的に固定されているので、クロス下地材5は天井板33との一体化によっても剛性が高くなる。これらにより、廊下Cの幅方向の側壁1,1間の間隔が大きくなってクロス下地材5の長さが長くなっても、そのクロス下地材5は中間部で撓み難くなる。
【0043】
そして、廊下Cの幅方向に対向する側壁1,1の間隔が2100mm以下であれば、クロス下地材5が中間部で撓むのを安定して抑制することができ。
【0044】
さらに、上記各メイン下地材3が廊下Cの側壁1に対しハンガー24、吊りボルト20及びアングルピース15によって吊り下げられた状態で固定支持され、アングルピース15に対する吊りボルト20の高さ位置や吊りボルト20に対するハンガー24の高さ位置を調整することにより、メイン下地材3の側壁1に対する高さ位置を調整可能となっている。そのため、メイン下地材3の高さ位置を調整することで、天井板33全体の高さや傾きを調整することができる。
【0045】
(実施形態2)
図18及び
図19は実施形態2を示し(尚、
図1〜
図17と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する)、上記実施形態1では、メイン下地材3を天井部の側壁1にハンガー24、吊りボルト20及びアングルピース15により吊下げ状態で固定支持されているのに対し、メイン下地材3の側壁1への取付構造を変更して、メイン下地材3を側壁1に直接に固定するようにしたものである。
【0046】
この実施形態では、天井部の側壁1において、メイン下地材3を固定しようとする所定位置に固定具40が取付固定され、メイン下地材3は側壁1に固定具40を介して固定支持されている。
【0047】
図20〜
図22に示すように、固定具40は上部材41、下部材46及び中間部材51を有し、これら部材41,46,51の左右方向(
図22(a)の左右方向)の幅は互いに同じとされている。上部材41は鋼板等の金属製の矩形板材を略L字状に折り曲げたもので、上下方向に延びる縦部41aと、この縦部41aの下端から縦部41aと直角に水平に延びる横部41bとからなる。縦部41aにはその左右方向(
図22(a)の左右方向)の両側に2つの円形の取付孔42,42が貫通形成されている。横部41bの中央には縦部41aに対し接離する方向に延びる長孔からなるビス挿通孔43が貫通形成されている。横部41bの先端部には、その左右方向(
図22(a)の左右方向)両側の所定位置に2つの目印44,44が形成されている。この各目印44は、例えば横部41bの先端面を部分的に凹陥させたものである。
【0048】
下部材46も鋼板等の金属製の矩形板材を略L字状に折り曲げたもので、上下方向に延びる縦部46aと、この縦部46aの下端から縦部46aと直角に水平に延びる横部46bとからなる。縦部46aにはその左右方向(
図22(a)の左右方向)の両側に2つの円形の取付孔47,47が貫通形成されている。横部46bの左右中央で先端寄り位置にはネジ孔48(孔の周囲面に雌ネジが形成されたタップ孔)が貫通形成されている。
【0049】
中間部材51は、鋼板等の金属製の矩形板材を略コ字状に折り曲げたもので、上下方向に延びる縦部51aと、この縦部51aの上端から縦部51aと直角に水平に延びる上側横部51bと、縦部51aの下端から縦部51aと直角にかつ上側横部51bと同じ向きに水平に延びる下側横部51cとからなり、上側及び下側横部51b,51cの縦部51aからの奥行きは略同じとなっている。上側横部51bの中央には、上記下部材46における横部46bのネジ孔48と同様のネジ孔52が貫通形成されている。下側横部51cには、縦部51aに対し接離する方向に延びる長孔からなるビス挿通孔53が貫通形成されている。また、縦部51aには左右2つの円形のドリルビット孔54,54が貫通形成されている。これらのドリルビット孔54,54は、後述するように中間部材51が下部材46と組み付けられたときに、下部材46の縦部46aの取付孔47,47と水平方向に同心状に一致するように配置され、その内径は取付孔47よりも大きく、締結工具としてのドライバーのビット(図示せず)が隙間を空けて挿通可能となっている。
【0050】
そして、下部材46の縦部46aを側壁1側に、また中間部材51の縦部51aを側壁1と離れる側にそれぞれ配置して、下部材46の横部46bの下側に中間部材51の下側横部51cを上下に重ね、その下側横部51cのビス挿通孔53(長孔)に連結用の例えばワッシャ付きビスV(ボルト部材)を挿通して下部材46の横部46bのネジ孔48に螺合締結することで、中間部材51と上部材41とが互いに一体的に組み付けられる。また、このような中間部材51と下部材46との組付状態で、上部材41の縦部41aを側壁1側に配置して、その上部材41の横部41bを中間部材51の上側横部51bの上側に上下に重ね、その横部41bのビス挿通孔43(長孔)に連結用の例えばワッシャ付きビスV(ボルト部材)を挿通して上側横部51bのネジ孔52に螺合締結することで、上部材41と中間部材51とが互いに一体的に組み付けられる。このことで、上部材41、中間部材51及び下部材46が一体的に連結されて固定具40となっている。
【0051】
さらに、
図19に示すように、固定具40は、上記のように上部材41、中間部材51及び下部材46が一体的に組み付けられた状態で、上部材41及び下部材46の縦部41a,46aをそれぞれ側壁1に当て、それら縦部41a,46aの取付孔42,47に取付用のビスVを挿通させて側壁1に締結することで、側壁1に固定される。
【0052】
そのとき、下部材46の縦部46aの各取付孔47に挿通される取付用ビスVは、中間部材51の縦部51aのドリルビット孔54を通して各取付孔47に挿通されるとともに、そのドリルビット孔54を通るドライバードリルにより回し操作されて側壁1にねじ込まれるようになっている。
【0053】
また、上記上部材41の横部41bのビス挿通孔43と中間部材51の下側横部51cのビス挿通孔53とはいずれも長孔であるので、それらのビス挿通孔43,53における連結用のビスVの位置を変更することができる。この変更により、中間部材51の縦部51aの側壁1(その側壁1に固定された上部材41及び下部材46の縦部41a,46a)からの距離、従って後述するように中間部材51の縦部51aに取付固定されるメイン下地材3の側壁1からの位置を変更可能となっている。
【0054】
上記上部材41における横部41bの縦部41aからの突出長さは、下部材46における横部46bの縦部46aからの突出長さよりも大きくなっており、上記のように上部材41、中間部材51及び下部材46が一体的に組み付けられた状態では、中間部材51の縦部51aの側壁1からの距離が変更されても、常に上部材41の横部41bが該中間部材51の縦部51aよりも突出しており、この横部41bの中間部材51の縦部51aからの突出部と中間部材51の縦部51aとの角部により、メイン下地材3の高さ位置を位置決めするための位置決め部56が形成されている。そして、メイン下地材3は、その上端部の角筒状の接続部9が固定具40の位置決め部56、つまり上部材41の横部41bの突出部と中間部材51の縦部51aとの角部に押し当てられて位置決めされ、その位置決め状態で接続部9を水平に貫通する下地材取付用のビスV(
図19で仮想線にて示す)を中間部材51の縦部51aに螺合締結することで固定具40に取り付けられている。以上によりメイン下地材3は側壁1に上記固定具40を介して固定支持されている。
【0055】
したがって、この実施形態でも実施形態1と同様の作用効果が得られる。特に、この実施形態では、側壁1の所定高さ位置に、メイン下地材3の高さ位置を位置決めする位置決め部56を有する固定具40が固定され、メイン下地材3はこの固定具40にメイン下地材3上端部の接続部9が上記位置決め部56で位置決めされて取り付けられているので、側壁1の適正の高さ位置に固定具40が固定されていれば、その固定具40に位置決め部56を利用してメイン下地材3を取り付けるだけで、メイン下地材3を側壁1の目的の高さ位置に固定することができる。
【0056】
そのため、メイン下地材3が側壁1に対しハンガー24、吊りボルト20及びアングルピース15によって吊り下げられた状態で固定支持されている実施形態1の構造では、側壁1へのアングルピース15の取付け、そのアングルピース15への吊りボルト20によるハンガー24の吊下げ、及びハンガー24へのメイン下地材3の挟持の3つの作業工程が必要であるのに対し、この実施形態では、側壁1への固定具40の取付け、及び固定具40へのメイン下地材3のビス固定の2つの作業工程で済み、少ない作業工程でメイン下地材3を側壁1に固定できて、作業量を低減することができる。
【0057】
また、メイン下地材3の接続部9を固定具40の位置決め部56に押し当てて位置決めし、その位置決め状態で接続部9を下地材取付用のビスVにより中間部材51の縦部51aに螺合締結する際、固定具40の上部材41の横部41b先端に目印44,44が形成されているので、メイン下地材3の接続部9において目印44,44の下側位置にビスVをねじ込めば中間部材51の縦部51aに螺合締結することができ、そのビスVによる固定作業が容易になる。
【0058】
尚、固定具40は実施形態2の構造に限定されず、メイン下地材3上端部の接続部9に当接等してメイン下地材3の高さ位置を位置決めする位置決め部を有するものであれば他の構造であってもよい。
【0059】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、メイン下地材3及びクロス下地材5を共に断面略T字状の部材で構成しているが、他の構造の部材を用いてもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態では、本発明を高層ビルの廊下Cの天井部に適用しているが、高層ビル以外の建物の廊下の天井部にも適用することができる。また、天井部の対向する側壁1,1の間隔が例えば2100mm以下で短い場合には、廊下C以外の天井部にも適用が可能である。