特許第6893622号(P6893622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893622
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】水溶液中のカルボン酸の分析法
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/88 20060101AFI20210614BHJP
   C07C 69/63 20060101ALI20210614BHJP
   C07C 67/10 20060101ALI20210614BHJP
   C07C 67/58 20060101ALI20210614BHJP
   G01N 30/06 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   G01N30/88 C
   C07C69/63
   C07C67/10
   C07C67/58
   G01N30/06 E
   G01N30/06 Z
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-202331(P2017-202331)
(22)【出願日】2017年10月19日
(65)【公開番号】特開2019-74482(P2019-74482A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151243
【氏名又は名称】株式会社東レリサーチセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】上田 重実
(72)【発明者】
【氏名】竹本 紀之
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 理佐
(72)【発明者】
【氏名】芝田 育也
(72)【発明者】
【氏名】角井 伸次
【審査官】 高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−504917(JP,A)
【文献】 特許第6112105(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0079692(US,A1)
【文献】 特開2004−115385(JP,A)
【文献】 片岡洋行 ほか,イオン対抽出法を用いるガスクロマトグラフィーによるオロット酸の定量,分析化学,日本,1989年,38巻,P327-330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 30/96
B01J 20/281−20/292
G01N 31/00 −31/22
B01D 11/00 −12/00
C07C 67/10
C07C 67/58
C07C 69/63
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸を含む水溶液に、第四級アンモニウム塩、ハロゲン化アルキル、疎水性有機溶媒を加え、カルボン酸をアルキル化した後、そのカルボン酸アルキルである誘導体化物を含む疎水性有機溶媒から、第四級アンモニウム塩を除去した後に、疎水性有機溶媒の機器測定を行う水溶液中のカルボン酸の分析法であって、
疎水性有機溶媒からの第四級アンモニウム塩除去剤が過塩素酸、その水溶液、硫酸、その水溶液、有機スルホン酸、その水溶液、らなる群から選ばれる少なくとも一種、及び、飽和炭化水素である水溶液中のカルボン酸の分析法。
【請求項2】
機器測定が、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー・質量分析法、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー・質量分析法、からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の水溶液中のカルボン酸の分析法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸が、第四級アンモニウム塩を触媒とし、ハロゲン化アルキルと反応、カルボン酸アルキルと成る抽出アルキル化(誘導体化)を利用し、水溶液中のカルボン酸を分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カルボン酸は、カルボキシル基(−COOH)を有している有機化合物である。カルボキシル基は、活性水素を有していることから低分子量物は特に水に溶け易く、酸性を呈し、且つ、脱水縮合し易い性質を有している。このために縮合系合成樹脂の原材料(モノマ)、液性調整剤等として多くの分野で用いられており、化学工業分野では必要不可欠な物質の一つである。そして、樹脂、樹脂の浸漬水溶液、廃水等に含まれるカルボン酸の濃度を測定することは、従来からも需要が有り、非常に有意義なことである。また、有機化合物が酸化劣化する過程では、必ずと言っていい程、カルボン酸を生成するため、そのカルボン酸を定性、定量することは、酸化の度合いを知る上で、非常に重要な知見を与えてくれる。
【0003】
従来、水溶液中のカルボン酸を分析する手法として、イオンクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクマトグラフィーが報告されている。また、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーで測定する前処理として誘導体化する場合も有り、その方法として、メチルエステル化法、トリメチルシリルエーテル化法、抽出アルキル化法(非特許文献1、2)が報告されている。さらに、抽出アルキル化した後に硫酸銀水溶液や固相抽出カラムを用いて、カルボン酸アルキルを含有する疎水性有機溶媒から触媒である第四級アンモニウム塩を除去した後に、ガスクロマトグラフィーで分析する方法(非特許文献3、4、5)が報告されている。加えて、疎水性有機溶媒から第四級アンモニウム塩を除去する方法(特許文献1)が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6112105号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Journal of Chromatography, vol.447, p329-340, 1988
【非特許文献2】Journal of Chromatography A, vol.1041, p11-18, 2004
【非特許文献3】Analytical Chemistry, vol.46, No.7, p922-924, 1974
【非特許文献4】分析化学 vol.38, p327-330, 1989
【非特許文献5】Journal of Chromatography B, vol.714, p181-195, 1998
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方法は、以下の様な問題点があった。
【0007】
イオンクロマトグラフィーは、水溶液を直接測定でき、カルボン酸を分離、検出できるものである。しかし、この方法では、高濃度の無機塩や親水性有機溶媒が共存した場合、カラムの劣化、及び、無機塩ピークの一部がカルボン酸ピークに重なり、検出を妨げるという問題点があった。これを回避するために試料溶液を10倍以上希釈する場合も有るが、その分感度が低下するという問題点があった。
【0008】
液体クロマトグラフィーは、水溶液を直接測定でき、カルボン酸を分離、検出できるものである。しかし、この方法では、ギ酸や酢酸等の炭素数の低いカルボン酸は、カラム固定相への保持が弱く、溶媒や共存化合物と重なって溶出し、良好に分離、検出できない場合があるという問題点があった。
【0009】
ガスクロマトグラフィーは、水溶液を直接測定でき、カルボン酸を分離、検出できるものである。しかし、この方法では、専用のカラムを用いたとしても、カルボン酸が酸性化合物のために、ピークがテーリングし、十分な感度が得られないという問題点があった。また、無機塩が共存した場合、カルボン酸が不揮発性無機塩に吸着し、良好に気化せずに、検出できないという問題点があった。
【0010】
誘導体化法は、カルボン酸の活性水素を無くし中性化合物とすることにより、ガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーでの検出を容易にするものである。メチルエステル化法は、カルボン酸をジアゾメタンやトリメチルシリルジアゾメタンと反応させ、カルボン酸メチルエステル(−COOCH)とするものである。トリメチルシリルエーテル化法は、カルボン酸をN,O−ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセトアミドといったトリメチルシリルエーテル化剤と反応させ、カルボン酸トリメチルシリルエーテル(−COOSi(CH)とするものである。しかし、この方法では、水溶液中のカルボン酸を直接誘導体化できないという問題点があった。これを補う手法として、これら誘導体化前に水溶液からカルボン酸を液液抽出法で疎水性有機溶媒に取り出す方法があるが、分子内のカルボキシル基の割合が高い炭化水素鎖の短いカルボン酸や多価カルボン酸はその性質のために疎水性有機溶媒へ移行し難く抽出効率が低いという問題点があった。
【0011】
抽出アルキル化法は、試料水溶液を液性調整した後、疎水性有機溶媒、第四級アンモニウム塩、ハロゲン化アルキル(R−X、R:アルキル基、X:ハロゲン)を添加して、カルボン酸をアルキル化(−COOR)し、疎水性有機溶媒に抽出するものである。そして、その疎水性有機溶媒をガスクロマトグラフィーや液体クロマトグラフィーで測定し、カルボン酸を分析するものである。しかし、この方法では、一部の第四級アンモニウム塩が疎水性有機溶媒に移行するため、ガスクロマトグラムや液体クロマトグラムにおいて第四級アンモニウム塩やその分解物が高強度のピークとして検出され、カルボン酸(アルキル)検出の大きな障害になるという問題点があった。これを補う手法として、ハロゲン化アルキルのアルキル基にハロゲンを含む化合物を用いてカルボン酸を含ハロゲン化合物として電子捕獲検出器(ECD)で検出するものがあり、ハロゲンを含有しない第四級アンモニウム塩由来化合物は検出されないという特徴がある。しかし、この方法では、電子捕獲検出器は放射線源を用いるために装置が高価であり、しかも、管理が非常に煩雑であるという問題点があった。加えて、カルボン酸の定性は、保持時間による比較しかできないという問題点もあった。
【0012】
抽出アルキル化した後に硫酸銀水溶液を用いて、カルボン酸アルキルを含有する疎水性有機溶媒から第四級アンモニウム塩を除去した後に、ガスクロマトグラフィーで分析する方法は、硫酸銀の水溶解性が乏しく(0.8g/水100mL(20℃))、疎水性有機溶媒から第四級アンモニウム塩を十分に除去できないという問題点があった。また、カルボン酸アルキルを含有する疎水性有機溶媒から固相抽出カラムを用いて第四級アンモニウム塩を吸着除去した後に、溶媒を濃縮乾固、残留物を有機溶媒で再溶解し、ガスクロマトグラフィーで分析する方法は、疎水性有機溶媒が5mL以上必要であるために微量分析に適さない、溶媒の濃縮乾固時にカルボン酸アルキルが散逸する、さらに、操作が煩雑であるという問題点があった。
【0013】
そこで、本発明は、上記の課題を解決すべく、抽出アルキル化法に疎水性有機溶媒から第四級アンモニウム塩除去法を組み合せ、第四級アンモニウム塩を高効率で除去し、且つ、煩雑な操作を伴わない、水溶液中のカルボン酸の分析法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明は以下の手段から成る。
1.カルボン酸を含む水溶液に、第四級アンモニウム塩、ハロゲン化アルキル、疎水性有機溶媒を加え、カルボン酸をアルキル化した後、そのカルボン酸アルキルである誘導体化物を含む疎水性有機溶媒から、第四級アンモニウム塩を除去した後に、疎水性有機溶媒の機器測定を行う水溶液中のカルボン酸の分析法であって、疎水性有機溶媒からの第四級アンモニウム塩除去剤が過塩素酸、その水溶液、硫酸、その水溶液、有機スルホン酸、その水溶液、及び、飽和炭化水素系溶剤、からなる群から選ばれる少なくとも一種である水溶液中のカルボン酸の分析法。
2.機器測定が、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー・質量分析法、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー・質量分析法、からなる群から選ばれる少なくとも一種である前記水溶液中のカルボン酸の分析法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水溶液中のカルボン酸を分析する際に、厳密な液性調整、液液抽出、水分除去といった煩雑な操作を伴わずに、且つ、クロマトグラム上、第四級アンモニウム塩及びその由来物のピークによる検出妨害を軽減し、カルボン酸を分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1のガスクロマトグラムを示した図である。
図2】比較例1のガスクロマトグラムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
カルボン酸は、分子内にカルボキシル基(−COOH)を有する有機化合物である。具体的には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アジピン酸、フタル酸が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらカルボン酸は、ナトリウム、カリウムやアンモニウム等のアルカリ性化合物と塩を形成していても良い。また、カルボン酸を含む水溶液には、カルボキシル基を有しない化合物が溶解していても良い。
【0018】
本発明で使用できる第四級アンモニウム塩は、具体的には、臭化テトラブチルアンモニウム、臭化テトラヘキシルアンモニウム、臭化テトラオクチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウムが挙げられるが、これらに限定されない。これら第四級アンモニウム塩は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。
【0019】
本発明で使用できる疎水性有機溶媒は、具体的には、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、キシレンが挙げられるが、これらに限定されない。これら疎水性有機溶媒は単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせても良い。
【0020】
本発明で使用できるハロゲン化アルキルは、具体的には、臭化ベンジル、臭化ペンタフルオロベンジル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルが挙げられるが、これらに限定されない。これらアハロゲン化アルキルは単独で用いても良く、2種類以上を組み合わせても良い。
【0021】
本発明で抽出アルキル化において設定できる温度は、カルボン酸が、第四級アンモニウム塩を触媒として、ハロゲン化アルキルと反応する温度であれば、任意であるが、60〜110℃が好ましい。
【0022】
本発明で抽出アルキル化において設定できる撹拌は、カルボン酸が、第四級アンモニウム塩を触媒として、ハロゲン化アルキルと反応する撹拌であれば、任意である。
【0023】
本発明で使用できる疎水性有機溶媒からの第四級アンモニウム塩除去剤は、過塩素酸、その水溶液、硫酸、その水溶液、有機スルホン酸、その水溶液、及び、飽和炭化水素系溶媒である。これら化合物は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。有機スルホン酸は、具体的に、1,2‐エタンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸、1,4−ブタンジスルホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。これら化合物は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。飽和炭化水素系溶媒は、具体的に、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルオクタンが挙げられるが、これらに限定されない。これら化合物は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。
【0024】
本発明で疎水性有機溶媒からの第四級アンモニウム塩除去において設定できる温度は、第四級アンモニウム塩が疎水性有機溶媒から除去できる温度であれば、任意であるが、0〜40℃が好ましい。
【0025】
本発明で疎水性有機溶媒からの第四級アンモニウム塩除去において設定できる撹拌は、第四級アンモニウム塩が疎水性有機溶媒から除去できる撹拌であれば、任意であるが、相分離している溶液に対し縦方向に振盪することが好ましい。
【0026】
本発明で使用できる機器測定の手法は、ガスクロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー・質量分析法、液体クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー・質量分析法が好ましく例示される。これら機器は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。ガスクロマトグラフィーの検出器は熱電導度検出器(TCD)、水素炎イオン化検出器(FID)、電子捕獲検出器(ECD)が挙げられるが、これらに限定されない。これらガスクロマトグラフィーの検出器は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。液体クロマトグラフィーの検出器は、示差屈折率検出器(RI)、紫外光分光検出器(UV)が挙げられるが、これらに限定されない。これら液体クロマトグラフィーの検出器は単独で用いても良く、2種類以上を組み合せても良い。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明する。
【0028】
[実施例1]
各々濃度約100μg/mLのギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の、濃度0.03mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1mL、濃度2mol/LのpH7リン酸緩衝液0.1mL、濃度0.1mol/Lの臭化テトラヘキシルアンモニウムのトルエン溶液1mL、及び、臭化ペンタフルオロベンジル0.25mmolをガラス容器に入れ、100℃で加熱撹拌した。相分離している水溶液を除去した後、濃度2mol/Lの過塩素酸水溶液1mLを加え、振盪した。相分離しているトルエン溶液を取り出し、ガスクロマトグラフィーで測定した。
【0029】
(ガスクロマトグラフィー条件)
装置本体:6890(アジレント・テクノロジー社製)
注入口:スプリット/スプリットレス注入口(アジレント・テクノロジー社製)
温度250℃、スプリットモード、スプリット比1/20、注入量1μL
カラム:DB−WAX(アジレント・テクノロジー社製)
内径0.25mm、長さ30m、膜厚0.25μm、流量2mL/分(一定)
検出器:水素炎イオン化検出器(FID)(アジレント・テクノロジー社製)
温度250℃
オーブン:初期温度50℃(1分保持)、昇温20℃/分、終期温度250℃(1分保持)
キャリアガス:ヘリウム。
【0030】
[実施例2]
実施例1における過塩素酸の代りに硫酸を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0031】
[実施例3]
実施例1における過塩素酸の代りに1,2‐エタンジスルホン酸を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0032】
[実施例4]
各々濃度約100μg/mLのギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の、濃度0.03mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1mL、濃度2mol/LのpH7リン酸緩衝液0.1mL、濃度0.2mol/Lの臭化テトラヘキシルアンモニウムのトルエン溶液0.5mL、及び、臭化ペンタフルオロベンジル0.25mmolをガラス容器に入れ、100℃で加熱撹拌した。ノルマルヘキサン0.5mLを加え、振盪した。相分離しているトルエン及びノルマルヘキサン混合溶液を取り出し、ガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの測定条件は実施例1と同様である。
【0033】
[実施例5]
各々濃度約100μg/mLのギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の、濃度0.03mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1mL、濃度2mol/LのpH7リン酸緩衝液0.1mL、濃度0.2mol/Lの臭化テトラヘキシルアンモニウムのトルエン溶液0.5mL、及び、臭化ペンタフルオロベンジル0.25mmolをガラス容器に入れ、加熱撹拌した。ノルマルヘキサン0.5mLを加え、振盪した。相分離している水溶液を除去した後、水1mLを加え、振盪した。相分離しているトルエン及びノルマルヘキサン混合溶液を取り出し、ガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの測定条件は実施例1と同様である。
【0034】
[実施例6]
実施例5における水の代りに濃度2mol/Lの過塩素酸水溶液を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行った。
【0035】
[実施例7]
実施例6における過塩素酸の代りに硫酸を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0036】
[実施例8]
実施例6における過塩素酸の代りに1,2−エタンジスルホン酸を用いた以外は、実施例6と同様の操作を行った。
【0037】
[実施例9]
実施例5における水の代りに硫酸銀飽和水溶液を用いた以外は、実施例5と同様の操作を行った。
【0038】
[比較例1]
各々濃度約100μg/mLのギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の、濃度0.03mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1mL、濃度2mol/LのpH7リン酸緩衝液0.1mL、濃度0.1mol/Lの臭化テトラヘキシルアンモニウムのトルエン溶液1mL、及び、臭化ペンタフルオロベンジル0.25mmolをガラス容器に入れ、100℃で加熱撹拌した。相分離しているトルエン溶液を取り出し、ガスクロマトグラフィーで測定した。ガスクロマトグラフィーの測定条件は実施例1と同様である。
【0039】
[比較例2]
実施例1における濃度2mol/Lの過塩素酸水溶液の代りに水を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0040】
[比較例3]
実施例1における濃度2mol/Lの過塩素酸水溶液の代りに飽和硫酸銀水溶液を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0041】
実施例1で得られたガスクロマトグラムを図1に、比較例1で得られたガスクロマトグラムを図2に示す。
【0042】
ガスクロマトグラム上、比較例1の臭化テトラヘキシルアンモニウム由来である臭化アルキル及びトリアルキルアミンの合計ピーク面積を100とし、実施例1〜9並びに比較例2及び3の同化合物の合計ピーク面積を表1に示す。
【0043】
ガスクロマトグラム上、比較例1のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の誘導体化物(カルボン酸ペンタフルオロベンジル)それぞれのピーク面積を100とし、実施例1〜9、比較例2、3の同化合物のピーク面積を表2に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
図1及び2に示されるように、実施例1は比較例1に比べ、臭化テトラヘキシルアンモニウム由来である臭化アルキル及びトリアルキルアミンのピークが非常に小さくなっていることが分る。一方、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の誘導体化物(カルボン酸ペンタフルオロベンジル)のピークは、実施例1は比較例1に比べ、小さくなっていないことが分る。
【0047】
表1に示されるように、実施例1〜9の臭化テトラヘキシルアンモニウム由来である臭化アルキル及びトリアルキルアミンの合計ピーク面積が、比較例1のそれに比べ70%以上減少していることが分る。比較例2及び3は比較例1に比べ、合計ピーク面積がそれぞれ15、66%減少しているが、その割合は実施例1〜9に比べ少ないことが分る。
【0048】
表2に示されるように、実施例1〜9、比較例2、3のギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸の誘導体化物(カルボン酸ペンタフルオロベンジル)のピーク面積は、比較例1のそれ(100)に比べ71〜101であり、第四級アンモニウム塩除去によるカルボン酸(アルキル)の検出への影響が僅かであることが分る。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、水溶液中のカルボン酸を定性、定量することが可能であり、化学分析分野で有効に利用できる。
図1
図2