特許第6893655号(P6893655)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893655
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】フォトルミネッセント材料
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20210614BHJP
   G02F 1/13357 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   C09K11/64
   G02F1/13357
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-520888(P2018-520888)
(86)(22)【出願日】2017年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2017019874
(87)【国際公開番号】WO2017209033
(87)【国際公開日】20171207
【審査請求日】2020年4月15日
(31)【優先権主張番号】特願2016-107741(P2016-107741)
(32)【優先日】2016年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390016090
【氏名又は名称】ユニオン昭和株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391031764
【氏名又は名称】株式会社シナネンゼオミック
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122345
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 繁久
(72)【発明者】
【氏名】杉山 公寿
(72)【発明者】
【氏名】花谷 俊和
(72)【発明者】
【氏名】山口 薫
(72)【発明者】
【氏名】藤木 伸爾
(72)【発明者】
【氏名】松倉 実
(72)【発明者】
【氏名】藤原 省悟
(72)【発明者】
【氏名】谷口 明男
(72)【発明者】
【氏名】内田 純一
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−037492(JP,A)
【文献】 特開2012−052102(JP,A)
【文献】 特開2005−048107(JP,A)
【文献】 特開2006−225227(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
G02F 1/13357
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、銀イオンと、亜鉛イオンとを含有するA型ゼオライトであり、光の照射によって可視光を発光するフォトルミネッセント材料。
【請求項2】
照射する光の波長が、200nm以上450nm以下である請求項1に記載のフォトルミネッセント材料。
【請求項3】
セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つが、セシウムイオンである請求項1または2に記載のフォトルミネッセント材料。
【請求項4】
セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が、1重量%以上25重量%以下である請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトルミネッセント材料。
【請求項5】
銀イオンの含有量が、0.5重量%以上30重量%以下である請求項1〜4のいずれか一項に記載のフォトルミネッセント材料。
【請求項6】
亜鉛イオンの含有量が、0.5重量%以上15重量%以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトルミネッセント材料。
【請求項7】
光源および請求項1〜6のいずれか一項に記載のフォトルミネッセント材料を含む照明装置。
【請求項8】
液晶表示装置用バックライトである請求項7に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトルミネッセント材料に関する。ここで「フォトルミネッセント(photoluminescent)材料」とは、「フォトルミネセンス(photoluminescence、即ち、光照射によって可視光を発光する現象)を利用する用途に用いられる材料」を意味する。
【背景技術】
【0002】
光照射によって可視光(一般に、波長が380nm以上830nm未満の光)を発光するフォトルミネッセント材料は、照明装置や液晶装置用バックライトなどに使用されている。そのようなフォトルミネッセント材料として、例えば、特許文献1には、銀イオンおよび亜鉛イオンを含有するA型ゼオライトが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−37492号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フォトルミネッセント材料を照明装置中で使用する場合、使用環境の温度上昇によって、フォトルミネッセント材料の発光強度が低下する場合がある。例えば、LED照明装置の使用環境温度は一般に60〜70℃程度まで上昇するため、このようなLED照明装置にフォトルミネッセント材料を使用すると、フォトルミネッセント材料の発光強度が低下する場合がある。
【0005】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、温度上昇による発光強度の低下を抑制し得るフォトルミネッセント材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、特許文献1に記載の銀イオンおよび亜鉛イオンを含有するA型ゼオライトに、さらにセシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含有させることによって、温度上昇による発光強度の低下を抑制し得ることを見出した。この知見に基づく本発明は、以下の通りである。
【0007】
[1] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、銀イオンと、亜鉛イオンとを含有するA型ゼオライトであり、光の照射によって可視光を発光するフォトルミネッセント材料。
[2] 照射する光の波長が、200nm以上450nm以下である前記[1]に記載のフォトルミネッセント材料。
【0008】
[3] 照射する光の波長が、250nm以上である前記[2]に記載のフォトルミネッセント材料。
[4] 照射する光の波長が、280nm以上である前記[2]に記載のフォトルミネッセント材料。
【0009】
[5] 照射する光の波長が、440nm以下である前記[2]〜[4]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
[6] 照射する光の波長が、430nm以下である前記[2]〜[4]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0010】
[7] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つが、セシウムイオンである前記[1]〜[6]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
[8] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が、1重量%以上25重量%以下である前記[1]〜[7]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0011】
[9] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が、1.5重量%以上である前記[8]に記載のフォトルミネッセント材料。
[10] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が、2重量%以上である前記[8]に記載のフォトルミネッセント材料。
【0012】
[11] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が、24重量%以下である前記[8]〜[10]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
[12] セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量が、23重量%以下である前記[8]〜[10]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0013】
[13] 銀イオンの含有量が、0.5重量%以上30重量%以下である前記[1]〜[12]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0014】
[14] 銀イオンの含有量が、1重量%以上である前記[13]に記載のフォトルミネッセント材料。
[15] 銀イオンの含有量が、1.5重量%以上である前記[13]に記載のフォトルミネッセント材料。
【0015】
[16] 銀イオンの含有量が、29重量%以下である前記[13]〜[15]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
[17] 銀イオンの含有量が、28重量%以下である前記[13]〜[15]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0016】
[18] 亜鉛イオンの含有量が、0.5重量%以上15重量%以下である前記[1]〜[17]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0017】
[19] 亜鉛イオンの含有量が、1重量%以上である前記[18]に記載のフォトルミネッセント材料。
[20] 亜鉛イオンの含有量が、5重量%以上である前記[18]に記載のフォトルミネッセント材料。
【0018】
[21] 亜鉛イオンの含有量が、14重量%以下である前記[18]〜[20]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
[22] 亜鉛イオンの含有量が、13重量%以下である前記[18]〜[20]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0019】
[23] A型ゼオライトの粒子径が、0.1〜20μmである前記[1]〜[22]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
[24] A型ゼオライトの粒子径が、0.5〜10μmである前記[1]〜[22]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料。
【0020】
[25] 光源および前記[1]〜[24]のいずれか一つに記載のフォトルミネッセント材料を含む照明装置。
[26] 液晶表示装置用バックライトである前記[25]に記載の照明装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のフォトルミネッセント材料は、特許文献1に記載の従来のフォトルミネッセント材料に比べて、温度上昇による発光強度の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のフォトルミネッセント材料は、特許文献1に記載のフォトルミネッセント材料(即ち、銀イオンおよび亜鉛イオンを含有するA型ゼオライト)に、さらにセシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含有させることを特徴とする。セシウムイオンおよびルビジウムイオンのような大きなイオンは、ゼオライト等の多孔質担体に入りにくいため、上述したような本発明の構成は、特許文献1から当業者が容易に想到し得たものではない。
【0023】
下記実施例で示されるように、銀イオンおよび亜鉛イオンを含有するA型ゼオライトに、さらにセシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含有させることによって、温度上昇による発光強度の低下を抑制することができる。このような効果が達成されるメカニズムとしては、セシウムイオンおよびルビジウムイオンのような大きなイオンを含有させることによって、A型ゼオライト中での銀イオンの温度上昇に伴う移動が制限され、発光強度の低下が抑制されることが推定される。但し、本発明は、このような推定メカニズムに限定されない。
【0024】
また、下記実施例で示されるように、銀イオンおよび亜鉛イオンを含有するA型ゼオライトに、さらにセシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含有させることによって、驚くべきことに、発光強度自体を向上させることができる。
【0025】
セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つは、好ましくはセシウムイオンである。
【0026】
フォトルミネッセント材料中のセシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つの合計含有量(これらが一つのみの場合は、その含有量)は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上、さらに好ましくは2重量%以上であり、好ましくは25重量%以下、より好ましくは24重量%以下、さらに好ましくは23重量%以下である。これらの含有量は、下記実施例に示す方法またはそれに準じた方法によって測定することができる。
【0027】
フォトルミネッセント材料中の銀イオン含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは1.5重量%以上であり、好ましくは30重量%以下、より好ましくは29重量%以下、さらに好ましくは28重量%以下である。この含有量は、下記実施例に示す方法またはそれに準じた方法によって測定することができる。
【0028】
フォトルミネッセント材料中の亜鉛イオン含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは5重量%以上であり、好ましくは15重量%以下、より好ましくは14重量%以下、さらに好ましくは13重量%以下である。この含有量は、下記実施例に示す方法またはそれに準じた方法によって測定することができる。
【0029】
本発明のフォトルミネッセント材料は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述のイオン以外のイオン(以下「他のイオン」と略称することがある)を含有していてもよい。他のイオンは、1種だけでもよく、2種以上であってもよい。他のイオンとしては、例えば、アンモニウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等が挙げられる。
【0030】
本発明のフォトルミネッセント材料は、後述するように、A型ゼオライトのイオン交換によって製造することができる。そのため、他のイオンは、イオン交換前の元のA型ゼオライトが有していたイオン(例えば、ナトリウムイオン等)でもよい。また、他のイオンを含有する水溶液を用いるイオン交換によって、本発明のフォトルミネッセント材料に、他のイオンを導入してもよい。
【0031】
本発明で使用するA型ゼオライトは、ユニオン昭和社等から市販されており、容易に入手することができる。A型ゼオライトの粒子径は、好ましくは0.1〜20μm、より好ましくは0.5〜10μmである。この粒子径は、レーザ回折およびレーザ散乱法によって測定することができる。この測定には、例えば、(株)島津製作所製のレーザ回折式粒度分布測定装置:「SALD−2100」などを使用することができる。
【0032】
フォトルミネッセント材料に含まれるゼオライトがA型ゼオライトであるか否かは、粉末X線回折法により回折ピークを測定する構造解析、または固体NMRでMAS(マジック角回転:Magic-Angle Spinning)NMRスペクトルを測定する構造解析などによって判定することができる。
【0033】
本発明のフォトルミネッセント材料は、下記実施例に示すように、A型ゼオライトのイオン交換によって製造することができる。このイオン交換の方法に特に限定はない。例えば、セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つ、銀イオンおよび亜鉛イオン、並びに必要に応じて他のイオンの全てを含有する水溶液中でA型ゼオライトを撹拌・保持することによって、一度にイオン交換を行うことができる。また、セシウムイオンおよびルビジウムイオンからなる群から選ばれる少なくとも一つを含有する水溶液、銀イオンを含有する水溶液、亜鉛イオンを含有する水溶液、並びに必要に応じて他のイオンを含有する水溶液のそれぞれにA型ゼオライトを撹拌・保持させて、順次イオン交換させてもよい。順次イオン交換させて本発明のフォトルミネッセント材料を製造する場合、イオン交換の順序に特に限定はない。
【0034】
イオン交換に用いるセシウムイオンの供給源としては、例えば、硝酸セシウムが挙げられる。ルビジウムイオンの供給源としては、例えば、硝酸ルビジウムが挙げられる。銀イオンの供給源としては、例えば、硝酸銀が挙げられる。亜鉛イオンの供給源としては、例えば、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛が挙げられる。
【0035】
水溶液の各イオンの濃度は、下記実施例に示すように、本発明のフォトルミネッセント材料の各イオンの含有量の設計値に応じて、適宜調整することができる。イオン交換は室温で行うことができ、その時間(即ち、イオン含有水溶液中のA型ゼオライトの撹拌・保持時間)は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
【0036】
イオン交換後のセシウムイオン等を含有するA型ゼオライトは、イオン含有水溶液からろ過し、水洗した後、乾燥することが好ましい。乾燥は、大気雰囲気下、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気下または減圧雰囲気下で行うことができる。大気雰囲気下での乾燥が、操作を簡便に行うことができるため好ましい。乾燥温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは100℃以上であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。乾燥時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下である。
【0037】
乾燥後のセシウムイオン等を含有するA型ゼオライトに、さらに加熱処理を施してもよい。加熱は、大気雰囲気下、不活性ガス(例えば窒素ガス)雰囲気下または減圧雰囲気下で行うことができる。大気雰囲気下での加熱が、操作を簡便に行うことができるため好ましい。加熱温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下である。加熱時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは2時間以上であり、好ましくは10時間以下、より好ましくは5時間以下である。
【0038】
本発明のフォトルミネッセント材料に照射する光の波長は、好ましくは200nm以上、より好ましくは250nm以上、さらに好ましくは280nm以上であり、好ましくは450nm以下、より好ましくは440nm以下、さらに好ましくは430nm以下である。このように本発明のフォトルミネッセント材料は、波長が380nm未満である紫外線領域の光だけでなく、波長が380nm以上である可視光領域の光を照射しても、可視光を発光することができる。
【0039】
本発明のフォトルミネッセント材料は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明のフォトルミネッセント材料を、他のフォトルミネッセント材料と組み合わせて使用してもよい。本発明のフォトルミネッセント材料は、例えば、照明装置、発光塗料、発光繊維、樹脂成形品、発光素子、センサーなどに利用することができる。
【0040】
本発明は、光源および本発明のフォトルミネッセント材料を含む照明装置も提供する。本発明の照明装置では、公知の光源、例えば水銀ランプやLEDを使用することができる。光源としては、環境汚染の原因となる水銀を使用せず、且つエネルギー効率の高いLEDが好ましい。
【0041】
本発明の照明装置は、蛍光灯のような日常生活に用いられるライトや液晶表示装置用バックライトなどに用いることができる。
【0042】
照明装置中でのフォトルミネッセント材料の使用方法に特に限定はない。例えば、光源をガラスで覆い、バインダー(例えば透明のエポキシ樹脂)を使用して該ガラスの内側または外側にフォトルミネッセント材料を固定することができる。また、本発明のフォトルミネッセント材料を練りこんだガラスまたは樹脂で、光源を覆ってもよい。さらに、本発明のフォトルミネッセント材料を練りこんだ紙で光源を覆うことによって、行灯のようなやわらかな光を照射する照明装置を製造し得る。
【実施例】
【0043】
以下、実施例等を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお以下では、銀イオンおよび亜鉛イオンを含有するA型ゼオライトを「銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライト」と、銀イオン、亜鉛イオンおよびセシウムイオンを含有するA型ゼオライトを「銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライト」と略称する。
【0044】
比較例1:銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライト
A型ゼオライト(ユニオン昭和社製、商品名「モレキュラーシーブ 4A POWDER」、粒子径:約5μm、イオン交換用の陽イオンとしてナトリウムイオンを含有、イオン交換容量:約5.5meq/g)(5g)を硝酸銀および硝酸亜鉛の混合水溶液(500mL)中にて室温で1時間撹拌・保持して、銀イオンおよび亜鉛イオンの交換処理を行った。なお、得られる銀/亜鉛含有A型ゼオライトの銀イオン含有量および亜鉛イオン含有量が、それぞれ2.2重量%および8.8重量%となるように、混合水溶液の硝酸銀濃度を2.74mmol/L、硝酸亜鉛・6水和物濃度を19.18mmol/Lに調整した。次いで、水中に懸濁された銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトをろ過し、水洗して、湿潤状態の銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトを得た。次いで、水洗後の銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトを、大気雰囲気下にて105℃で16時間乾燥して、乾燥状態の銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトを得た。この乾燥状態の銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトを23℃、相対湿度50%の環境中にて24時間保持して放冷し、銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトを得た。
【0045】
日本電子(株)製のJSM−6010PLUS/LAを用いて、得られた比較例1のフォトルミネッセント材料(銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライト)のエネルギー分散型X線分析(EDS、加速電圧15kV)を行い、銀イオンおよび亜鉛イオンの含有量を測定した。これらの含有量を表1に示す。
【0046】
実施例1:銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライト
比較例1と同様にして得られた銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライト(5g)を硝酸セシウム水溶液(500mL)中にて室温で1時間撹拌・保持して、セシウムイオンの交換処理を行った。なお、得られる銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトのセシウムイオン含有量が4.0重量%となるように、水溶液中の硝酸セシウム濃度を5.48mmol/Lに調整した。次いで、水中に懸濁された銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトをろ過し、水洗して、湿潤状態の銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトを得た。次いで、水洗後の銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトを大気雰囲気下にて105℃で16時間乾燥して、乾燥状態の銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトを得た。この乾燥状態の銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトを23℃、相対湿度50%の環境中にて24時間保持して放冷し、銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトを得た。
【0047】
日本電子(株)製のJSM−6010PLUS/LAを用いて、得られた実施例1のフォトルミネッセント材料(銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライト)のエネルギー分散型X線分析(EDS、加速電圧15kV)を行い、銀イオン、亜鉛イオンおよびセシウムイオンの含有量を測定した。これらの含有量を表1に示す。
【0048】
実施例2:銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライト
比較例1と同様にして得られた銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライト(5g)に対して、実施例1と同様にして、硝酸セシウム水溶液中にてセシウムイオンの交換処理を行った。なお、得られる銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトのセシウムイオン含有量が16.6重量%となるように、水溶液中の硝酸セシウム濃度を109.6mmol/Lに調整した。次いで、実施例1と同様に、ろ過、水洗、乾燥および放冷処理を行って、銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライトを得た。
【0049】
得られた実施例2のフォトルミネッセント材料(銀/亜鉛/セシウムイオン含有A型ゼオライト)の銀イオン、亜鉛イオンおよびセシウムイオンの含有量を、実施例1と同様にして測定した。これらの含有量を表1に示す。
【0050】
試験例1
比較例1、並びに実施例1および2のフォトルミネッセント材料の発光の開始波長、ピーク波長および終了波長を、(株)堀場製作所製の蛍光分光光度計FluоrоMax−4を使用して測定した。波長が420nmである励起光を照射した場合、比較例1、並びに実施例1および実施例2のフォトルミネッセント材料はいずれも、発光の開始波長、ピーク波長および終了波長は、それぞれ450nm、650nmおよび750nmであった。
【0051】
試験例2
(株)堀場製作所製の蛍光分光光度計FluоrоMax−4を使用して、同じ励起光(波長:420nm)を照射した場合における、比較例1、並びに実施例1および2のフォトルミネッセント材料の25℃での発光ピーク強度を測定し、比較例1のフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度に対する実施例1または2のフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度の割合(%)(=100×実施例1または2のフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度/比較例1のフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度)を算出した。結果を表1に示す。
【0052】
試験例3
(株)堀場製作所製の蛍光分光光度計FluоrоMax−4を使用して、同じ励起光(波長:420nm)を照射した場合における、比較例1、並びに実施例1および2のフォトルミネッセント材料の25℃および75℃での発光ピーク強度を測定し、比較例1、並びに実施例1および2のフォトルミネッセント材料のそれぞれについて、25℃でのフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度に対する75℃でのフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度の割合(%)(=100×75℃でのフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度/25℃でのフォトルミネッセント材料の発光ピーク強度)を算出した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に記載の割合2の結果から示されるように、銀/亜鉛イオン含有A型ゼオライトに、さらにセシウムイオンを含有させることによって、高温(75℃)での発光強度低下を抑制することができる。また、表1に記載の割合1の結果から示されるように、さらにセシウムイオンを含有させることによって、発光強度自体を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のフォトルミネッセント材料は、照明装置、発光塗料等に利用することができる。
【0056】
本願は、日本で出願された特願2016−107741号を基礎としており、その内容は本願明細書に全て包含される。