特許第6893697号(P6893697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893697
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】イオン化ツールを有するX線源
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/00 20060101AFI20210614BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   H01J35/00 Z
   H01J35/08 B
【請求項の数】17
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-565652(P2018-565652)
(86)(22)【出願日】2017年6月18日
(65)【公表番号】特表2019-525386(P2019-525386A)
(43)【公表日】2019年9月5日
(86)【国際出願番号】EP2017064857
(87)【国際公開番号】WO2017220455
(87)【国際公開日】20171228
【審査請求日】2020年4月23日
(31)【優先権主張番号】16175573.1
(32)【優先日】2016年6月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】317016811
【氏名又は名称】エクシルム・エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】トゥオヒマー、トミ
【審査官】 鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/185829(WO,A1)
【文献】 特開平10−221499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 35/00
H01J 35/08
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互作用領域(I)を備えるチャンバ(110)と、
第1のエネルギーの電子を備え、第1の電子ビームがターゲット(120)と相互作用してX線放射(150)を発生させるように、前記相互作用領域に向かって前記第1の電子ビームを放出するように動作可能な第1の電子源(130)と、
前記チャンバ内の粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームを放出するべく独立して動作するように適応された第2の電子源(160)と、
電磁界(E)によって前記チャンバから前記イオン化された粒子を除去するように適応されたイオン収集ツール(170)と、
を備えるX線源(1)であって、
前記第2の電子源は、電子エミッタ(162)と、加速電位を発生させるための陽極電極(164)と、デフレクタ(166)とを備え、
前記第1のエネルギーは1keV又はそれより高く、前記第2のエネルギーは1keVよりも低い、X線源。
【請求項2】
前記電子エミッタは、ヒータ電流によって加熱されると電子を放出するためのフィラメントを備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項3】
前記ヒータ電流、前記加速電位、及び前記デフレクタのうちの少なくとも1つを調整するように配置されたコントローラ(190)を更に備える、請求項2に記載のX線源。
【請求項4】
前記イオン収集ツールは、イオン化粒子の数の測定値を供給するように配置され、前記コントローラは、前記測定値を増加させる調整を行うように配置される、請求項3に記載のX線源。
【請求項5】
前記イオン収集ツールは、ゲッタ材料を備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項6】
前記イオン収集ツールは、前記イオン化された粒子をイオンダンプの方へ向ける前記電磁界を発生させるための導電性要素(172)を備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項7】
前記イオン収集ツールは、前記第1の電子ビームに対して横方向に配向された電界を発生させるように適応される、請求項1に記載のX線源。
【請求項8】
前記電磁界は、前記第1の電子源の光軸に対して回転対称に配置される、請求項1に記載のX線源。
【請求項9】
ターゲットを形成するように前記相互作用領域を通って伝播するターゲット材料の流れを形成するように適応されたターゲット発生器(140)を更に備える、請求項1に記載のX線源。
【請求項10】
前記ターゲットは、液体金属ジェットから形成される、請求項に記載のX線源。
【請求項11】
前記イオン収集ツールは、前記ターゲット材料を前記ターゲット発生器に再供給するための液体ジェット材料システム(142)に接続される、請求項1に記載のX線源。
【請求項12】
X線窓(180)を更に備え、前記第2の電子源は、前記第2の電子ビームを前記X線窓の方へ向けるように適応される、請求項1に記載のX線源。
【請求項13】
X線放射を発生させるための方法であって、
第1のエネルギーの電子を備える第1の電子ビームがターゲットと相互作用してX線放射を発生させるように、前記第1の電子ビームをチャンバ内の相互作用領域の方へ向けること(20)と、
前記チャンバ内の粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームが、前記第1の電子ビームと前記ターゲットとの前記相互作用から発生したデブリと相互作用するように、前記第1の電子ビームとは独立して、デフレクタによって前記第2の電子ビームを向けて(30)、それによって前記チャンバ内の前記粒子の少なくとも一部をイオン化することと、
電磁界によって前記チャンバから前記イオン化された粒子を除去すること(40)と、
を行うステップを備え、
前記第1のエネルギーは1keV又はそれより高く、前記第2のエネルギーは1keVよりも低い、方法。
【請求項14】
前記イオン化された粒子を収集すること(50)と、イオン化粒子が収集された割合を測定すること(60)と、前記割合が増加するように前記第2の電子ビームを調整すること(70)とを更に備える、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ターゲットを形成するように前記チャンバ内の前記相互作用領域を通って伝搬するターゲット材料の流れを形成すること(10)を更に備える、請求項1又は1に記載の方法。
【請求項16】
前記チャンバから除去された前記粒子を前記ターゲットに再供給すること(80)を更に備える、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項17】
収集された前記イオン化された粒子を前記ターゲット材料の流れに再供給することを更に備える、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される発明は、概して、X線放射の発生に関する。特に、本発明は、粒子をイオン化するためのイオン化ツールを有する電子衝突X線源と、そのイオン化された粒子を除去するためのイオン収集ツールとに関する。
【技術背景】
【0002】
液体ターゲットを照射することによってX線を発生させるためのシステムが、出願人の国際特許出願PCT/EP2012/061352及びPCT/EP2009/000481に説明されており、ここにおいて、高電圧陰極を備える電子銃が、液体ジェットに衝突する電子ビームを生成するために利用される。動作中に液体ジェットの一部分が電子ビームによって衝突される空間の位置は、相互作用領域又は相互作用ポイントと称される。電子ビームと液体ジェットとの相互作用によって発生するX線放射は、真空チャンバを周囲雰囲気から分離するX線窓を通って真空チャンバを出ることができる。
【0003】
液体ターゲットからのデブリ及び蒸気を含む自由粒子は、窓及び陰極に堆積する傾向がある。これは、堆積するデブリが窓を覆い、陰極の効率を低下させることもあるので、システムの性能の漸進的な劣化を引き起こす。PCT/EP2012/061352では、陰極に向かって動く荷電粒子を偏向させるように配置された電界によって陰極が保護される。PCT/EP2009/000481では、窓に堆積した汚染物質を蒸発させるために熱源が用いられる。
【0004】
このような技術は、真空チャンバ内の汚染物質によって引き起こされる問題を軽減することができるが、増加した耐用年数及び増加したメンテナンス間隔を有する改良されたX線源が依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、上記問題点の少なくとも一部に対処するX線源を提供することである。具体的な目的は、メンテナンスをあまり必要としない、増加した耐用年数を有するX線源を提供することである。
【0006】
開示される技術のこの目的及び他の目的は、独立請求項に規定された特徴を有するX線源及び方法によって達成される。有利な実施形態が従属請求項に規定されている。
【0007】
したがって、本発明の第1の態様によれば、相互作用領域を有するチャンバ、第1の電子源、及び第2の電子源を備えるX線源が設けられる。第1の電子源は、第1のエネルギーを有する電子を備える第1の電子ビームがターゲットと相互作用してX線放射を発生させるように、相互作用領域に向かって第1の電子ビームを放出するように動作可能である。第2の電子源は、チャンバ内に存在する粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームを放出するように独立して動作するように適応される。第2の電子源は、電子エミッタと、加速電位を発生させるための陽極電極と、デフレクタとを備え得る。更に、イオン収集ツールが、電磁界によってチャンバからイオン化粒子を除去するように配置され得る。
【0008】
第2の態様によれば、X線放射を発生させるための方法が提供され、本方法は、
第1の電子ビームをチャンバ内の相互作用領域の方へ向けることと、ここで、第1の電子ビームの電子は、相互作用領域内のターゲットと相互作用するとX線放射を発生させるための第1のエネルギーを有する、
チャンバ内の粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームが、第1の電子ビームとターゲットとの相互作用から発生したデブリと相互作用してチャンバ内の粒子の少なくとも一部をイオン化するように、第1の電子ビームとは独立して、第2の電子ビームを向けることと、
電磁界によってチャンバからイオン化粒子を除去することと、を行うステップを備える。
【0009】
第1の電子ビームが相互作用領域内の照射物体と相互作用すると、蒸気、デブリ、及び他の粒子が発生し得る。しかしながら、自由粒子又は他の汚染物質が、チャンバを周囲雰囲気から分離するブッシング又はシーリング若しくはチャンバを画定するハウジングのようなX線源の他の部分から生じることもあることが理解されるであろう。中性粒子及び荷電粒子の両方がチャンバ内に存在し得る。荷電粒子は、例えば、第1の電子ビームの近傍、主に相互作用領域の上流で発生し得る(本開示で使用されるとき、「上流」及び「下流」という用語は、第1の電子ビームが伝播する方向を指す)。荷電粒子はまた、中性粒子を形成するように互いに再結合し得る。
【0010】
陽イオンが陰極に向かって加速され、スパッタリングダメージ及び腐食を引き起こすこともあるので、荷電粒子は陰極にとって特に有害であることもある。例えば蒸気のような中性汚染物質は、陰極上で凝縮し、時間とともに陰極を劣化させる液滴又はより大きい堆積物を形成することもある。しかしながら、この劣化プロセスは、荷電粒子によって引き起こされる劣化よりも著しく遅いこともある。帯電した汚染物質及び中性汚染物質も、X線窓に有害であることもあり、それらはその上に堆積することによってX線を吸収し、よって窓の効率を低下させる。
【0011】
よって、本発明は、中性粒子をイオン化するための、第2の電子源が好ましい実施形態である、イオン化ツールとイオン収集ツールを組み合わせることによって、X線源の損傷を受けやすい部分に到達するデブリの量が更に制限されることができるという認識に基づくものである。よって、窓を覆い、陰極の効率を低下させる堆積物及び汚染物質によって引き起こされるX線源の性能の漸進的な劣化が軽減されることができる。
【0012】
イオン収集ツールそれ自体が陰極又はX線窓に向かう粒子の輸送を制御(例えば、逆転、捕捉、又は方向転換)する目的で効率的であり得ても、電気的に中性の粒子は、上述されたように、依然としてチャンバ内を比較的影響を受けずに伝播し、X線源の損傷を受けやすい部分を劣化させることもある。それゆえイオン化ツールの使用が、イオン化ツールと相互作用すると帯電することによってイオン収集ツールによって捕捉されることが可能となり得る中性粒子を捕捉することにも特に有利である。イオン化ツールの使用はまた、ヒータがシステムにコスト及び複雑さを加えることもあるので、例えば、X線窓に堆積した材料を蒸発させるための加熱手段を利用する先行技術よりも有利である。
【0013】
イオン化ツールは、代替的又は追加的に、例えば電界、イオン銃、又はレーザを備え得る。好ましくはイオン化ツールの性能は、第1の電子ビームとターゲットとの相互作用から発生するデブリについてのイオン化断面を最大にするように調整され得る。
【0014】
イオン化ツールはまた、再結合粒子がイオン収集ツールによって捕獲されることができるように、再結合粒子を再イオン化することによって再結合の影響を低減することができる。
【0015】
イオン化ツールは、例えば、相互作用領域、X線窓、及び/又は第1の電子源(例えば、陰極領域)の近傍で粒子をイオン化するように適応され得る。更に、イオン化ツールは、相互作用領域とX線窓との間の位置、及び/又は相互作用領域の上流、すなわち相互作用領域と陰極領域との間の位置で粒子をイオン化し得る。相互作用領域とX線窓との間で粒子をイオン化することによって、汚染物質の少なくとも一部がX線窓に到達する前に方向転換されることが可能となる。相互作用領域と陰極領域との間で粒子をイオン化することによって、中性粒子は、第1の電子源に向かって更に伝播する前に、イオン化及び方向転換されることができる。したがって、いくつかの異なる構成が考えられ、例えば、チャンバ内のどこで粒子が発生するか、それらがどこから除去されるべきか、イオン収集ツールの位置等に依存して選択され得る。
【0016】
一実施形態では、イオン化ツールは、第1の電子源とは独立して動作及び制御され得る。よって、チャンバ内の粒子をイオン化するイオン化ツールの能力は、第1の電子源の動作、発生したX線放射、チャンバ内に存在する後方散乱電子の量、及び/又は相互作用領域から発生した粒子の数から独立して調整及び制御され得る。これは、X線生成を妨げることなく粒子のイオン化の割合が調整されることができるという点で利点を提供することができる。特定の一実施形態によれば、イオン化ツールは、電子エミッタと、所望の電子エネルギーを供給するために加速電位を発生させる陽極電極と、出ていく電子ビームを意図された領域の方へ向けるためのデフレクタとを備える、電子銃のような、第2の電子源を備え得る。一実施形態では、該電子エミッタは、いわゆる熱電子放出を利用する加熱されたフィラメントから形成され得る。フィラメントは、ヒータ電流をフィラメントに通すことによって加熱され得る。フィラメントの温度を増加させることによって、すなわち電流を上げ、ひいてはより多くの熱を供給することによって、放出される電子の数が増加し得、すなわち電子電流が増加する。
【0017】
イオン化ツールは更に、イオン化率を増加させるように、電子電流、電子エネルギー、及び電子ビーム方向のようなイオン化パラメータを調整するためのコントローラを備え得る。イオン収集ツールは、特定の時間の間に収集されたイオン化粒子の数を測定する能力を有してもよく、よって、イオン化率の推定値として使用され得る、粒子が収集される割合を供給する。これらの測定値は、イオン化率を増加させるようにイオン化パラメータを調整するための根拠として使用され得る。これは、イオン収集ツールによって供給されるイオン化粒子の数の測定値が増加するようにイオン化パラメータを調整するためのコントローラを配置することによって実行され得る。X線源の性能を損なわずに必要な調整を可能にするために、イオン化ツール設定は、上述されたように第1の電子源とは独立していてもよい。
【0018】
イオン収集ツールは、X線源の損傷を受けやすい部分から離れる方に荷電粒子を向ける又は誘導するための機能性を備え得る。陽イオンの第1の電子ビームへの引力が、ビームの形状及び/又は方向に影響を及ぼす場合もあることに留意されたい。この影響が低減されるようにイオン収集ツールが配置される場合、第1の電子ビームの制御が幾分単純になり得る。
【0019】
粒子は更に収集され、容器に輸送され得るか、又は再度ターゲットの一部を形成するように再循環されるように輸送され得る。イオン収集ツールはまた、収集された粒子の量を測定するための手段を備え得る。これは、荷電粒子によって生成される電流を測定する電流計又は同様の電流測定デバイスを用いて実現されることができる。この電流は、デブリの生成率に関連している。
【0020】
いくつかの例によれば、電界は、2つ以上の導電性要素すなわち電極間に発生し得、その少なくとも1つは、チャンバを囲むハウジングの少なくとも一部分に電気接続され、及び/又はその一部を形成し得る。よってハウジングは、金属製の真空エンベロープ部品のアセンブリのような、1つ又はいくつかの導電性要素を備え得る。ハウジングは、単一の導電性要素からなり、モノリシックであり得、その上に、例えばアイソレータに搭載された高電圧陰極といった、照射機器及び他の機器が搭載されている。代替的に、ハウジングは更に、非導電部分を備えてもよい。特に、ハウジングは、複数の相互絶縁した導電性要素からなり得、それは、絶縁した各導電性要素が、ハウジングを構成する他の要素とは独立して電位に置かれることを可能にする。
【0021】
第2の導電性要素は、共通バイアス電圧だけ第1の導電性要素から分離された複数の物理的に分離した導電性要素であり得ることに留意されたい。代替的に、第2の導電性要素は、複数の(又はグループの)導電性要素からなり得、それらは、独立した(ただし必ずしも別個ではない)電位に接続され、その結果、第1の導電性要素から複数の独立したバイアス電圧だけ分離される。
【0022】
主に静電界又は電界が荷電粒子のエネルギーとは独立して荷電粒子に影響を与え得るので、本発明は、イオン化粒子の移動を制御又はそれに少なくとも影響を及ぼすために磁気手段よりもむしろ静電手段を優先する。逆に、第1の電子ビーム中の電子は、典型的には荷電粒子よりも更に速く移動するので、例えば陰極領域又はX線窓へ向かうデブリ輸送を効率的に防ぐが、依然として第1の電子ビームを重大なレベルまで妨害しない磁界を設計することはより精密なタスクになるであろう。
【0023】
電子銃とも称されることもある第1の電子源は、電圧供給によって電力供給され、及び例えば、熱電子、熱電界又は冷電界荷電粒子源のような電子源を含む、陰極を備え得る。電子ビームは加速開口部に向かって加速され得、そのポイントでそれは、整列板、レンズ、及び偏向板の配置を備え得る電子光学システムに入り得る。整列手段、偏向手段、及びレンズの可変特性が、コントローラによって供給される信号によって制御可能であり得る。整列手段、偏向手段、及びレンズは、静電、磁気、及び/又は電磁構成要素を備え得る。電子光学システム(単数又は複数)は、第1の電子ビームを相互作用領域内のターゲット上に向け、及び/又は第2の電子ビームを、それが粒子と相互作用し得るチャンバ内の領域に向けるように較正及び動作され得る。
【0024】
「イオン収集ツール」という用語は、通常であればチャンバ内部を自由に動くか又はX線源の機能を悪化させることになる粒子を方向転換、除去、収集、格納、又は測定することが可能である構造及び手段を指すこともある。よって、「除去」という用語は、チャンバ内のイオンの「固定化」と置き換えられることもある。イオン収集ツールは、例えば、粒子が付着することもあるチャンバの内壁から形成され、及び/又は粒子を除去するためのゲッタ材料を備え得る。いくつかの例では、イオン収集ツールは、電界発生器とイオンダンプとの組合せを指すこともあり、ここにおいて、電界発生器は、粒子をイオンダンプに向ける電界を発生させるように動作可能であり得る。いくつかの例では、イオン収集ツールは、第1の電子ビームをフォーカス又はデフォーカスするための磁気レンズを備え得る。このレンズの磁界に入るイオンは、特にイオンの軌道が磁界と平行ではない場合、光軸から離れる方に偏向され得る。
【0025】
「粒子」という用語は、一般に、デブリ、蒸気、及び他の材料の破片、特にチャンバ内を泳動し、場合によってはX線源の機能に悪影響を及ぼすこともある材料を指すこともある。「粒子」という用語が、本願のコンテキストでは、「デブリ」と交換可能に使用されてもよいことが理解されるであろう。
【0026】
一実施形態によれば、イオン化ツールは、チャンバ内の粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームを放出するように動作可能な第2の電子源によって形成される。第2の電子源は、第1の電子源と同様に構成され得る。第2の電子ビームの電子は、整列板、レンズ、及び偏向板の配置を備え得る電子光学システムを通過し得る。整列手段、偏向手段、及び/又はレンズの可変特性が、コントローラによって供給される信号によって制御可能であり得る。整列手段、偏向手段、及び/又はレンズは、静電、磁気、及び/又は電磁構成要素を備え得る。電子光学システムは、第2の電子ビームを、それが粒子と相互作用し得るチャンバ内の領域に向けるように較正及び動作され得る。
【0027】
X線源は、粒子をイオン化するための単一の第2の電子源に限定されるわけではない。いくつかの例では、X線源は、第1の電子源に加えて、第1の電子源の陰極領域の方へ向けられた電子源と、X線窓領域の方へ向けられた別の電子源とを備え得る。
【0028】
しかしながら、「第2の電子源」という用語は、チャンバ内の粒子をイオン化するための電子を発生させることが可能な任意の構造又は特徴を指してもよいことに留意されたい。第2の電子源は、例えば、二次放出電子(又は略して二次電子)を発生させやすい材料に第1の電子ビームを衝突させることによって、第1の電子源によって誘起され得る。このプロセスの歩留まりが1よりも大きい場合、電子なだれを達成することができる。これらの二次電子は、例えば、第1の電子ビームの電子がターゲットに衝突したときに発生し、それゆえ、相互作用ポイントに近接した粒子をイオン化し得る。
【0029】
第1の電子源は、例えば1keV以上といったX線放射を発生させるのに好適であるエネルギーを有する電子を供給するように適応され得、これに対して、第2の電子源は、チャンバ内の粒子をイオン化するのに好適であるエネルギーを有する電子を供給するように適応され得る。X線は、連続的な制動放射及び特徴的な線放出の両方として放出され得、特定の放出特徴は、使用されるターゲット材料に依存し得る。X線放射を発生させるための電子エネルギーは、ターゲット材料及びジオメトリに依存して選択され得る。X線の線放出を生成することができるように、利用可能なエネルギーは、ターゲット材料からK電子をノックアウトするのに必要とされるエネルギーよりも大きくなるべきである。より高い電子エネルギーは、各衝突電子がいくつかのターゲット電子をノックアウトすることもあるので、より多くのX線生成をもたらし得る。しかしながら、より大きいエネルギーは、電子がターゲット材料により深く侵入することをもたらすこともあり、よって、発生したX線光子のより大きい部分が放出されることができる前にターゲット材料によって吸収される。ガリウム合金液体金属ジェットシステムでは、エネルギーは10乃至160keVの範囲内にあり得る。典型的には、第2のエネルギーは、粒子と相互作用するための比較的大きい断面を供給するために1keVよりも低いこともある。これは、粒子の材料に依存して、例えば、10乃至100eVの範囲内にある第2のエネルギーに対応し得る。例えばガリウムには20乃至30eVが、インジウムには30eVが使用され得る。
【0030】
一実施形態によれば、イオン収集ツールは、粒子が第1の電子ビームの経路から離れる方に輸送されることを可能にするように、第1の電子ビームに対して横方向に配向された電界を発生させるように適応され得る。
【0031】
イオン収集ツールによって使用される電磁界は、例えば、第1の電子ビームに対する電磁界の影響を更に低減するように、第1の電子源の光軸に対して回転対称に配置されたコイル又は電極によって供給され得る。
【0032】
一実施形態では、イオン収集ツールによって使用される電磁界は、第1の導電性要素、第2の導電性要素、及び第1の導電性要素と第2の導電性要素との間で非ゼロバイアス電圧を印加するように動作可能な電源によって発生される電界を備え得る。第1及び第2の導電性要素の幾何学的構成及びバイアス電圧の大きさが、結果として生じる電界がチャンバからイオン化粒子を除去するために選択され得る。イオンは典型的には熱エネルギー(1eV未満)を有するので、イオン軌道を著しく変更するのに数百ボルトのバイアスが十分であり得る。1つの例では、幾何学的構成は、荷電粒子が陰極領域及び/又はX線窓に入るのを防ぐように選択される。
【0033】
ターゲットは、固体、液体、又は気体の材料を備え得る。本発明は、デブリ粒子の放出をもたらすターゲットの劣化が、結果として得られるX線性能の悪化なく許容されることができるケースのように、再生ターゲットと共に使用するのに有利である。
【0034】
好ましい一実施形態によれば、X線源は更に、相互作用領域を通って伝播する、例えば気体又は液体ジェットのような材料の流れの形態のターゲットを発生させるように適応されるターゲット発生器を備え得る。ジェットは、例えば、液体金属のような液体物質を出口開口を通して圧力をかけることによって形成され得る。ジェットは、10m/s以上の速度で伝播する高速ジェット、又は10m/s未満の速度で伝播する低速ジェットであり得る。ジェットはその性質上再生式であるので、ターゲット材料の更なる冷却の必要はない。よって、ターゲットにおける電子ビーム出力密度は、非再生ターゲットと比較して著しく増加することもある。ターゲット材料は、例えば、インジウム、スズ、ガリウム、鉛、又はビスマス、若しくはこれらの合金のような、低融点を有する金属によって形成され得、所望のエネルギーでのX線の線放射を示す。同じ利点を実現する代替案は、濃縮された気体ジェットの形態のターゲットを供給することを含み得る。
【0035】
一実施形態によれば、チャンバから除去された粒子は、ターゲットを再供給するために使用され得る。特に、イオン収集ツールは、収集された材料をターゲット発生器に再供給するための液体ジェット材料システムに接続され得る。イオン収集ツールすなわちイオンダンプは、例えば、イオン化粒子が収集及び再利用されてもよい平滑及び/又は斜めの表面を備え得る。有利なことに、イオン収集ツールは、毛管作用によって、例えば液体ターゲットからのデブリのような粒子の輸送を容易にする表面を備え得る。更に、毛管効果は、電気光学的に活性である表面の表面粗さを低減するのに有用であり得る。粒子を離れる方に輸送することは、例えば、第1の電子源上の凝縮液滴及びバンプの形成のリスクを低減するのに役立つことができ、これは、そうでなければE界分布を歪め、時間と共に電子ビームの位置をずらす傾向がある。表面の平滑性はまた、高電圧構成要素の信頼性のために重要であり得る。液滴又は凝縮は、電界放出及びアーク放電を誘起し、よって、高電圧機器(発生器、配線、等)を悪化させ、早期にストレスを加えて老化させる局所E界強度を増加させる傾向がある。
【0036】
一実施形態によれば、第2の電子源は、発散する第2の電子ビームを放出するように動作可能であり得る。イオン化が電子ビームの近傍で起こると考えられるので、発散ビームは、あまり発散しないビームと比較して、より多くの粒子をイオン化し得る。このように、本実施形態は、チャンバ内の粒子をイオン化する能力が増加したX線源を供給し得る。一方、より小さい電子密度がイオン化断面を低下させることもある。よって、中性粒子の位置が分かっている場合、その位置に第2の電子ビームをフォーカスすることが有利となる。更なる実施形態は、第2の電子源から放出された電子が、中性粒子に遭遇することになる確率を増加させる経路、例えばX線窓又は相互作用領域の近傍で円形又は螺旋状の経路に沿って移動することを確実にする誘導電磁界を含むことであろう。
【0037】
本発明は、相互に異なる請求項に記載されていても、上で概説された技術的特徴の全組合せに関することに留意されたい。よって、上記第1の態様に従って説明された特徴のいずれも、本発明の第2の態様に係る方法と組み合わされることができる。
【0038】
本発明の更なる目的、特徴、及び利点は、以下の詳細な開示、図面、及び添付の特許請求の範囲を参酌すると明らかになる。
【0039】
本発明がここで、添付の図面を参照して例示の目的で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明のいくつかの実施形態のうちの1つに係るX線源の概略的な側面断面図。
図2】本発明のいくつかの実施形態のうちの1つに係るX線源の概略的な側面断面図。
図3】本発明のいくつかの実施形態のうちの1つに係るX線源の概略的な側面断面図。
図4】一実施形態に係る第2の電子源の側面断面図。
図5】本発明の一実施形態に係るX線放射を発生させるための方法を概略的に例示する図。
【0041】
すべての図は概略的であり、必ずしも縮尺通りではなく、一般に、本発明を明瞭にするために必要である部分のみを示しており、他の部分は省略されているか又は単に示唆されていることもある。
【発明を実施するための形態】
【0042】
ここで本発明の一実施形態に係るX線源100が図1を参照して説明される。図1に示されるように、真空チャンバ110は、囲い112と、真空チャンバ110を周囲雰囲気から分離するX線透過窓180とによって画定され得る。X線150は、第1の電子ビームからの電子がターゲット120と相互作用し得る、相互作用領域Iから発生し得る。
【0043】
電子ビームは、相互作用領域Iの方へ向けられた、高電圧陰極を備える電子銃130のような第1の電子源130によって発生され得る。
【0044】
本実施形態によれば、ターゲット120は、例えば、相互作用領域Iと交差する液体ジェット120から形成され得る。液体ジェット120は、相互作用領域Iに向かって及びそれを通って伝播するジェット120を形成するように、例えば液体金属のような、例えば液体又は気体が噴出され得るノズルを備えるターゲット発生器140によって発生され得る。
【0045】
X線源100は更に、液体ジェット120の材料を収集するための収集リザーバとターゲット発生器140との間に位置する閉ループ循環システム142を備え得る。閉ループシステム142は、ターゲットジェット120を発生させるために、少なくとも10バール、好ましくは少なくとも50バール以上に圧力を上げるように適応された高圧ポンプによって、収集された液体金属をターゲット発生器140に循環させるように適応され得る。
【0046】
更に、X線源は、チャンバ110内の粒子をイオン化するように適応されたイオン化ツール160を備え得る。イオン化ツール160は、好ましくは第1の電子源130の動作から独立して、1つ又は複数の第2の電子ビーム(単数又は複数)を放出するように動作可能であり得る、例えば、第1の電子ビームとターゲット材料との相互作用時に発生し得るデブリをイオン化するのに好適な第2のエネルギーの電子を備える、例えば、第2の電子源160から形成され得る。本図によって例示される例では、第2の電子源160は、電子エミッタ、1つ又は複数の陽極電極、及びデフレクタを備え得る。第2の電子源160すなわち電子銃は、第1の電子ビームの方向と交差する方向に少なくとも1つの電子ビームを放出するように配置、すなわち第1の電子ビームに対して横方向に配向され得る。更に、横断する第2の電子ビームは、粒子が相互作用領域IからX線窓180に向かう途中でイオン化されることができるように、X線窓180と相互作用領域Iとの間の位置で粒子と相互作用するように配向され得る。更に、第2の電子源から放出された電子が中性粒子に遭遇することになる確率を増加させる経路、例えばX線窓又は相互作用領域の近傍の円形又は螺旋状の経路に沿って移動することを確実にする誘導電磁界(図示せず)が設けられ得る。
【0047】
X線源100は更に、イオン化ツール160に動作可能に接続され得るコントローラ190又は制御回路190を備え得る。コントローラ190は、イオン化ツール160の動作を制御し、例えば第2の電子ビームが所望の位置に向けられることを可能にするように構成され得る。またコントローラは、チャンバ110において発生するか又はチャンバ110に存在するイオン化粒子の数の測定値を検索するために、例えば、イオン収集ツール又は粒子センサ(図示せず)に更に接続されてもよいことも理解されるであろう。この測定値は、例えば、イオン化ツールの動作を制御するときの入力として使用され得る。
【0048】
図1はまた、X線源100が、イオン化粒子を除去する又は少なくとも固定化するためのイオン収集ツール170を備え得ることを示す。収集ツール170は、粒子の移動を制御するため又はそれに少なくとも影響を及ぼすための電磁界Eを利用し得る。電磁界Eには、例えば、X線源の光軸に対して横方向の構成要素が設けられ得、その結果、荷電粒子は、例えばX線窓180又は第1の電子源130までつながる軌道から離れる方に偏向され得る。電磁界Eは、例えば光軸の反対側に配置された第1及び第2の導電板から形成され得、2つの電極172間に発生し得る。バイアス電圧が、電極172に電気接続された電圧源174によって電極172に印加され得る。
【0049】
本実施形態では、電極172のうちの1つは、イオン化粒子を収集するように適応された、イオンコレクタすなわちイオンダンプ176と組み合わされ得る。よって、荷電粒子は、電界Eによって捕獲され、例えば、凝縮、静電引力、及び/又はゲッタ材料によってそれらが捕捉又は収集され得るイオンコレクタ176の方へ向けられ得る。更に、イオンコレクタ176は、収集された粒子がターゲット120の発生で再使用されることができるように、閉ループリサイクルシステム142に接続され得る。代替的又は追加的に、イオンコレクタ176は、収集された粒子の量を測定するための測定デバイス(図示せず)と組み合わされてもよい。測定デバイスは、例えば、荷電粒子によって生成された電流を測定するための、電流計のような電流測定デバイスを備え得、よって、チャンバ内のイオン化率の測定値を供給する。測定デバイスは更に、コントローラ190に接続され得る。
【0050】
図2は、図1を参照して説明された実施形態と同様に構成され得る実施形態に係るX線源を開示する。本実施形態において、イオン収集ツール170は、第1の電子ビームの方向に沿って電界Eを発生させるように配置され得る。電界は好ましくは、回転対称の電極172によって発生され得る。この装備を用いると、電界は、制限された程度に、すなわちデフォーカス又はリフォーカスすることによって容易に補償されることができるように、第1の電子ビームを乱すことになる。特に、回転対称の電極の主な効果は、電子ビームの発散を変化させることである。この例では、イオン収集ツール170は、第1の電子ビームがターゲット120(例えば、固定の固体ターゲット又は液体ジェットターゲットのような任意のターゲットであり得る)への途中で伝播し得る開口部を有する電極172を備える。したがって開口部のサイズに依存して、第1の電極172は、少なくとも一部の粒子が第1の電子源130に向かって伝搬することを防ぐ機械シールドを形成し得る。更に、結果として生じる電界Eが、荷電粒子が開口部を介して第1の電子源130の領域に入ることを防ぐように、イオン収集ツール170の幾何学的構成及びバイアス電圧の大きさが選択され得る。電界Eを発生させるために印加されることになるバイアス電圧は、相互作用領域Iから電界Eを通った電極172の開口部までの最大エネルギーを下回る運動エネルギーで単独で帯電した陽イオンを動かす作用が、該最大エネルギーよりも大きい働きを必要とするように、選択されることになる。換言すれば、最大エネルギーを下回る運動エネルギーですべてのイオンを止めるのに十分高いエネルギー閾値を実現するように、平行電界が設計され得る。
【0051】
しかしながら、導電性要素又は電極が、電界発生手段の一部を形成しないシールドの開口部の内側に配置されてもよいことが理解されるであろう。本図に示されるように、電極172とハウジングの一部分との間に電界Eが発生し得、それは、接地電位又は所望の電界Eを発生させるのに好適な他の任意の電位に保たれ得る。
【0052】
更に、イオン化ツール160は、相互作用領域Iと第1の電子源130との間を通過する粒子を照射するように配置された複数の第2の電子源を備え得る。イオン化ツール160は、例えば、相互作用領域Iとイオン収集ツール170との間の通路に配置され得る。
【0053】
図3は、イオン化ツール(例えば、第2の電子源160を備える)が第1の電子源130から見て相互作用領域Iの上流に配置されている、図1及び図2に関連して説明された実施形態に類似し得るX線源100を例示する。本図に示されるように、1つ又は複数の電気コイル170が、第1の電子ビームを少なくとも部分的に囲むように配置され得る。図3では、コイルの断面が示されており、ここにおいて、コイル170は、X線源100の光軸と平行であり得る磁界Bを発生させるように構成され得る。コイル170は、電子ビームの品質を制御及び改良するための電子光学システムの一部を形成し得る。代替的に、又は結果として、コイル170は、コイルに入る少なくとも一部の荷電粒子を偏向させるように配置され得る。本図によって例示される例を参照すると、磁界Bに非平行な軌道を有する荷電粒子は、それらが第1の電子源130に到達するのを防ぐことができるように、コイル170内の磁界と相互作用し得る。しかしながら、光軸に沿って移動する粒子は、磁界Bに沿って移動するので、コイル170によってあまり影響を受けないこともある。それらは他方では、第1の電子源の電子によって衝撃が与えられ、場合によっては、光軸に対して垂直の非ゼロ速度の構成要素が与えられ得る。
【0054】
更に、例えば、負帯電板であり得るイオンダンプ178又は開口部が、磁界Bによって偏向される粒子の少なくとも一部を収集するためにコイル170の上流に配置され得る。よって、ターゲット120の近傍に発生した粒子は、第1の電子源130に到達する前に磁界B及びイオンダンプ178の開口部を通過する必要がある。
【0055】
一実施形態によれば、例えば図3に示されるような磁界Bは、図2に示されるものと同様の配向を有する電界と組み合わされてもよい。そのケースでは、イオンダンプ178は、例えば第1の電子ビームがターゲットへの途中で伝搬し得る開口部を有する回転対称の電極と置き換えられ得る。
【0056】
図4は、一実施形態に係る第2の電子源160の断面である。電子源160は、前の図に関連して説明されたイオン化ツールと同様に構成され得る。第2の電子源160は、ヒータ電流によって加熱されると電子を放出するように構成され得る、例えばフィラメント162のような電子エミッタ162を備え得る。更に、放出された電子を加速するための電界EAを発生させるために陽極装置164が設けられ得る。放出された電子はそして、例えば、異なる方向に電子ビームを向けるための複数のプレートから形成され得るデフレクタ装置166を通過し得る。本図には例示されていないが、チャンバ内の粒子をイオン化するための所望の特性を有する第2の電子ビームを供給するようにヒータ電流、加速電位、及び/又はデフレクタ166を制御するために、コントローラが配置され得る。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態に係るX線放射を発生させるための方法を例示するフローチャートである。本方法は、ターゲット120を形成するようにチャンバ110内の相互作用領域Iを通って伝搬するターゲット材料の流れを形成するステップ10と、第1のエネルギーの電子を備える第1の電子ビームを、その電子ビームがターゲット120と相互作用してX線放射を発生させるように相互作用領域Iの方へ向けるステップ20とを備え得る。本方法は更に、チャンバ内の粒子をイオン化するステップ30と、電界Eによってチャンバ110からイオン化粒子を除去するステップ40とを備え得る。粒子をイオン化するステップ30は、いくつかの実施形態において、粒子をイオン化するのに好適な第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームが、第1の電子ビームとターゲットとの相互作用から発生したデブリと相互作用するように第2の電子ビームを向けるステップ30を備え得、それによって、チャンバ内の粒子の少なくとも一部をイオン化する。本方法は更に、イオン化粒子を収集するステップ50と、イオン化粒子が収集された割合を測定するステップ60と、割合が増加するように該第2の電子ビームを調整するステップ70とを備え得る。また更なる実施形態において、本方法は、チャンバから除去された粒子をターゲットに再供給するステップ80を備え得る。本方法を備えるターゲット120を形成するようにチャンバ110内の相互作用領域Iを通って伝搬するターゲット材料の流れを形成するステップ10を備える実施形態の場合、収集された粒子をターゲット材料の流れに再供給するステップ80を更に備え得る。
【0058】
当業者は、本発明が、上述された例となる実施形態に決して限定されないことを理解する。それどころか、添付の特許請求の範囲内で多くの変更及び変形が可能である。例えば、イオン化ツール及び/又はイオン収集ツールの電極は、他の幾何学的位置に配置されてもよい。印加される電磁界は、純粋に軸方向でも純粋に横方向でもある必要はないが、特にX線源の損傷を受けやすい部分から離れる方にデブリ粒子を加速させること又は吸着によってそれらを表面上又はイオンダンプに固定化することによってデブリ粒子の移動性を制限するのに有効であれば異なるように配向されてもよい。特に、イオン化ツール及び/又は電磁界は、時間と共に変化するように配備されてもよく、これは、デブリ粒子を、損傷を受けやすい部分(例えば、X線窓又は陰極)から、それらが無害である領域へと方向転換する、より洗練された方法を提供する。時間変化する配備はまた、周期的な間隔でより完全に、自由に動くデブリから照射領域をクリアにするために使用されることもある。
【0059】
追加的に、開示された実施形態に対する変形が、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、特許請求された発明を実施する際に当業者によって理解及び遂行されることができる。特許請求の範囲において、「備える」という単語は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数性を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に使用できないことを示すものではない。
以下に、出願当初の特許請求の範囲に記載の事項を、そのまま、付記しておく。
[1] 相互作用領域(I)を備えるチャンバ(110)と、
第1のエネルギーの電子を備え、第1の電子ビームがターゲット(120)と相互作用してX線放射(150)を発生させるように、前記相互作用領域に向かって前記第1の電子ビームを放出するように動作可能な第1の電子源(130)と、
前記チャンバ内の粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームを放出するべく独立して動作するように適応された第2の電子源(160)と、
電磁界(E)によって前記チャンバから前記イオン化された粒子を除去するように適応されたイオン収集ツール(170)と、
を備え、
前記第2の電子源は、電子エミッタ(162)と、加速電位を発生させるための陽極電極(164)と、デフレクタ(166)とを備える、X線源(1)。
[2] 前記電子エミッタは、ヒータ電流によって加熱されると電子を放出するためのフィラメントを備える、[1]に記載のX線源。
[3] 前記ヒータ電流、前記加速電位、及び前記デフレクタのうちの少なくとも1つを調整するように配置されたコントローラ(190)を更に備える、[2]に記載のX線源。
[4] 前記イオン収集ツールは、イオン化粒子の数の測定値を供給するように配置され、前記コントローラは、前記測定値を増加させる調整を行うように配置される、[3]に記載のX線源。
[5] 前記第1のエネルギーは1keV又はそれより高く、前記第2のエネルギーは1keVよりも低い、[1]に記載のX線源。
[6] 前記イオン収集ツールは、ゲッタ材料を備える、[1]乃至[5]のいずれか一項に記載のX線源。
[7] 前記イオン収集ツールは、前記イオン化された粒子をイオンダンプの方へ向ける前記電磁界を発生させるための導電性要素(172)を備える、[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のX線源。
[8] 前記イオン収集ツールは、前記第1の電子ビームに対して横方向に配向された電界を発生させるように適応される、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のX線源。
[9] 前記電磁界は、前記第1の電子源の光軸に対して回転対称に配置される、[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のX線源。
[10] ターゲットを形成するように前記相互作用領域を通って伝播するターゲット材料の流れを形成するように適応されたターゲット発生器(140)を更に備える、[1]乃至[9]のいずれか一項に記載のX線源。
[11] 前記ターゲットは、液体金属ジェットから形成される、[10]に記載のX線源。
[12] 前記イオン収集ツールは、前記ターゲット材料を前記ターゲット発生器に再供給するための液体ジェット材料システム(142)に接続される、[11]に記載のX線源。
[13] X線窓(180)を更に備え、前記第2の電子源は、前記第2の電子ビームを前記X線窓の方へ向けるように適応される、[1]に記載のX線源。
[14] X線放射を発生させるための方法であって、
第1のエネルギーの電子を備える第1の電子ビームがターゲットと相互作用してX線放射を発生させるように、前記第1の電子ビームをチャンバ内の相互作用領域の方へ向けること(20)と、
前記チャンバ内の粒子をイオン化するための第2のエネルギーの電子を備える第2の電子ビームが、前記第1の電子ビームと前記ターゲットとの前記相互作用から発生したデブリと相互作用するように、前記第1の電子ビームとは独立して、前記第2の電子ビームを向け(30)、それによって前記チャンバ内の前記粒子の少なくとも一部をイオン化することと、
電磁界によって前記チャンバから前記イオン化された粒子を除去すること(40)と、
を行うステップを備える、方法。
[15] 前記イオン化された粒子を収集すること(50)と、イオン化粒子が収集された割合を測定すること(60)と、前記割合が増加するように前記第2の電子ビームを調整すること(70)とを更に備える、[14]に記載の方法。
[16] 前記ターゲットを形成するように前記チャンバ内の前記相互作用領域を通って伝搬するターゲット材料の流れを形成すること(10)を更に備える、[14]又は[15]に記載の方法。
[17] 前記チャンバから除去された前記粒子を前記ターゲットに再供給すること(80)を更に備える、[14]乃至[16]のいずれか一項に記載の方法。
[18] 収集された前記イオン化された粒子をターゲット材料の前記流れに再供給することを更に備える、[16]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5