特許第6893704号(P6893704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893704
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】流路切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   F16K11/065 Z
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-153120(P2019-153120)
(22)【出願日】2019年8月23日
(65)【公開番号】特開2021-32330(P2021-32330A)
(43)【公開日】2021年3月1日
【審査請求日】2020年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】特許業務法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 聡志
(72)【発明者】
【氏名】木船 仁志
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−44666(JP,A)
【文献】 特開2019−65895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室が設けられた筒状の弁ハウジングと、前記弁室に配置された第1弁座と、前記弁室に前記第1弁座と対向して配置された第2弁座と、前記第1弁座と前記第2弁座との間に軸線方向にスライド可能に配置された弁体と、を有する流路切換弁であって、
前記弁体は、前記第1弁座側に配置された筒状の第1弁体部と、前記第2弁座側に配置された第2弁体部と、前記第1弁体部と前記第2弁体部との間に配置された仕切り部材と、を有し、
前記仕切り部材は、前記第1弁体部に対して前記第1弁座と前記第2弁座との対向方向に移動可能でかつ前記第1弁体部における前記第2弁座側の開口を塞ぐように配置され、
前記第1弁体部と前記仕切り部材とは、前記第1弁座に設けられた複数のポートのうちの2つのポートを連通させる第1Uターン通路を形成するように構成され、
前記第2弁体部は、前記第2弁座に設けられた複数のポートのうちの2つのポートを連通させる第2Uターン通路が設けられ、
前記仕切り部材と前記第2弁体部との間には前記弁室と連通された背圧空間が設けられていることを特徴とする流路切換弁。
【請求項2】
前記仕切り部材は、底壁部と、前記底壁部の周縁に連設された周壁部とを有し、
前記第1弁体部と前記仕切り部材の周壁部との間に封止部材が配置され、
前記封止部材の外形について前記対向方向に投影した投影面積が、前記第1弁体部における前記第1弁座側の開口面積より大きい、請求項1に記載の流路切換弁。
【請求項3】
前記第1弁体部と前記第2弁体部との間に圧縮コイルばねが配置されている、請求項1または請求項2に記載の流路切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド式の流路切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ルームエアコン、カーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムにおいて、冷暖房運転の切り換えに応じて冷媒の流れ方向を切り換える流路切換弁が用いられる。
【0003】
従来の流路切換弁が特許文献1に開示されている。図5に示すように、流路切換弁901は、六方切換弁であって、筒状の弁ハウジング910と、弁ハウジング910内にブラケット953に押されることで軸線L方向にスライド可能に配置された弁体920と、を有している。弁ハウジング910内には、軸線Lと直交する方向に対向して配置された第1弁座913と第2弁座915とが設けられている。第1弁座913には、3つのポートpB、pA、pFが軸線L方向に順に並んで設けられている。第2弁座915には、3つのポートpB、pA、pFと対向するように別の3つのポートpC、pD、pEが軸線L方向に順に並んで設けられている。
【0004】
弁体920は、第1スライド弁体921と第2スライド弁体924とを有している。第1スライド弁体921は筒状に形成されている。第1スライド弁体921の内側に第2スライド弁体924の凸部924aが挿入されている。第1スライド弁体921の内周面と第2スライド弁体924の外周面との間には、封止部材923が配置されている。第1スライド弁体921の内周面と第2スライド弁体924における第1弁座913側の端面とにより、第1Uターン通路928が形成されている。第2スライド弁体924における第2弁座915側の端面には、第2Uターン通路929が形成されている。
【0005】
第1Uターン通路928は、第1弁座913に開口する3つのポートのうちの2つのポート(ポートpAとポートpB、または、ポートpAとポートpF)を連通させる。第2Uターン通路929は、第2弁座915に開口する3つのポートのうちの2つのポート(ポートpCとポートpD、または、ポートpEとポートpD)を連通させる。
【0006】
流路切換弁901は、第1Uターン通路928を流れる高圧冷媒から受ける圧力と第2Uターン通路929を流れる低圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、第2スライド弁体924が第2弁座915に押し付けられる。また、流路切換弁901は、封止部材923の外形の投影面積Sbが、第1Uターン通路928の開口面積Saより大きい。そのため、投影面積Sbと開口面積Saとの差分面積に対して、第1Uターン通路928を流れる高圧冷媒と弁室959内の中圧冷媒との差圧が、第1スライド弁体921を第1弁座913に押し付ける圧力として作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019−65895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した流路切換弁901は、ポートpAに高圧冷媒が流れ込み、ポートpDから低圧冷媒が流れ出すシステムで用いられる。このシステム以外にも、例えば、図6に示すように、ポートpBに高圧冷媒が流れ込み、ポートpFから低圧冷媒が流れ出す構成を有する他のシステムが存在する。このような他のシステムにおいて流路切換弁901が用いられると、第1Uターン通路928に低圧冷媒が流れ、かつ、第2Uターン通路929に中圧冷媒が流れ、弁室959に高圧冷媒が流れる場合がある。
【0009】
この場合、第1Uターン通路928を流れる低圧冷媒から受ける圧力と第2Uターン通路929を流れる中圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、第2スライド弁体924に対して第2弁座915から離そうとする力が加わる。そのため、第2スライド弁体924と第2弁座915との間に隙間が生じて、弁漏れが発生するおそれがある。
【0010】
また、投影面積Sbと開口面積Saとの差分面積に対して、第1Uターン通路928を流れる低圧冷媒と弁室959内の高圧冷媒との差圧が、第1スライド弁体921を第1弁座913から引き離す圧力として作用する。そのため、第1スライド弁体921と第1弁座913との間に隙間が生じて、弁漏れが発生するおそれがある。
【0011】
そこで、本発明は、弁体を弁座に押し付ける力を効果的に確保できる流路切換弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の流路切換弁は、弁室が設けられた筒状の弁ハウジングと、前記弁室に配置された第1弁座と、前記弁室に前記第1弁座と対向して配置された第2弁座と、前記第1弁座と前記第2弁座との間に軸線方向にスライド可能に配置された弁体と、を有する流路切換弁であって、前記弁体は、前記第1弁座側に配置された筒状の第1弁体部と、前記第2弁座側に配置された第2弁体部と、前記第1弁体部と前記第2弁体部との間に配置された仕切り部材と、を有し、前記仕切り部材は、前記第1弁体部に対して前記第1弁座と前記第2弁座との対向方向に移動可能でかつ前記第1弁体部における前記第2弁座側の開口を塞ぐように配置され、前記第1弁体部と前記仕切り部材とは、前記第1弁座に設けられた複数のポートのうちの2つのポートを連通させる第1Uターン通路を形成するように構成され、前記第2弁体部は、前記第2弁座に設けられた複数のポートのうちの2つのポートを連通させる第2Uターン通路が設けられ、前記仕切り部材と前記第2弁体部との間には前記弁室と連通された背圧空間が設けられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第1Uターン通路に低圧冷媒が流れ、第2Uターン通路に中圧冷媒が流れ、弁室に高圧冷媒が流れる場合に、仕切り部材と第2弁体部との間の背圧空間に高圧冷媒が導入される。これにより、第1Uターン通路の低圧冷媒から受ける圧力と背圧空間の高圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、仕切り部材で第2弁座側の開口が塞がれた第1弁体部が、第1弁座に押し付けられる。また、第2Uターン通路の中圧冷媒から受ける圧力と背圧空間の高圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、第2弁体部が第2弁座に押し付けられる。
【0014】
本発明において、前記仕切り部材は、底壁部と、前記底壁部の周縁に連設された周壁部とを有し、前記第1弁体部と前記仕切り部材の周壁部との間に封止部材が配置され、前記封止部材の外形について前記対向方向に投影した投影面積が、前記第1弁体部における前記第1弁座側の開口面積より大きいことが好ましい。このようにすることで、第1Uターン通路に高圧冷媒が流れ、弁室に低圧冷媒が流れる場合に、投影面積と開口面積との差分面積に対して、第1Uターン通路を流れる高圧冷媒と弁室内の低圧冷媒との差圧が、第1弁体部を第1弁座に押し付ける圧力として作用する。
【0015】
本発明において、前記第1弁体部と前記第2弁体部との間に圧縮コイルばねが配置されていることが好ましい。このようにすることで、圧縮コイルばねによって第1弁体部と第2弁体部とに対して互いに引き離す力が加わり、第1弁体部が第1弁座に押し付けられ、第2弁体部が第2弁座に押し付けられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、弁体を弁座に押し付ける力を効果的に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施例に係る流路切換弁の断面図である。
図2図1の流路切換弁の他の状態を示す断面図である
図3図1の流路切換弁が有する弁体を説明する図である。
図4図3の弁体の変形例の構成を説明する図である。
図5】従来の流路切換弁の断面図である。
図6】従来の流路切換弁の他の接続構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係る流路切換弁について図1図4を参照して説明する。
【0019】
本実施例の流路切換弁は、六方切換弁であって、ルームエアコン、カーエアコン等のヒートポンプ式冷暖房システムにおいて、冷暖房運転の切り換えに応じて流体としての冷媒の流れ方向を切り換えるために用いられる。
【0020】
図1図2は、本発明の一実施例に係る流路切換弁の断面図である。図1は、弁体が第1の停止位置(冷房運転時の停止位置)にある状態を示す。図2は、弁体が第2の停止位置(暖房運転時の停止位置)にある状態を示す。図1図2において、太線の矢印は流体の流れの例を模式的に示している。図3は、図1の流路切換弁が有する弁体を説明する図である。図4は、図3の弁体の変形例の構成を説明する図である。図3図4において、(a)は軸線L方向に沿う断面図であり、(b)は軸線Lと直交する方向に沿う断面図である。
【0021】
図1図2に示すように、本実施例の流路切換弁1は、弁ハウジング10と、弁体20と、ピストン部50と、パイロット部60と、を有している。
【0022】
弁ハウジング10は、円筒状に形成されている。弁ハウジング10の軸は軸線Lに一致する。弁ハウジング10の一端部(図1図2において右端部)には蓋部材11が固着され、他端部(図1図2において左端部)には蓋部材12が固着されている。弁ハウジング10の内部には、第1弁座13と第2弁座15とが配置されている。
【0023】
第1弁座13は、弁ハウジング10の内周面に固着されている。第1弁座13は、第1弁座面14を有している。第1弁座面14には、図1図2において右側から左側に向かって軸線L方向に順に並ぶ円形のポートpB、pA、pFが設けられている。ポートpB、pA、pFには、それぞれ弁ハウジング10を貫通する円管状の管継手B、A、Fが接続されている。
【0024】
第2弁座15は、弁ハウジング10の内周面に固着されている。第1弁座13と第2弁座15とは、軸線Lと直交する方向に対向している。第1弁座13と第2弁座15との対向方向を、単に「対向方向」という。第2弁座15は、第2弁座面16を有している。第2弁座面16には、図1図2において右側から左側に向かって軸線L方向に順に並ぶ円形のポートpC、pD、pEが設けられている。ポートpC、pD、pEは、第1弁座13のポートpB、pA、pFと対向している。ポートpC、pD、pEには、それぞれ弁ハウジング10を貫通する円管状の管継手C、D、Eが接続されている。
【0025】
本実施例において、ポートpBに接続される管継手Bは、ヒートポンプ式冷暖房システムの圧縮機の吐出部に接続されており、高圧冷媒が流れる。ポートpFに接続される管継手Fは、圧縮機の吸込部に接続されており、低圧冷媒が流れる。
【0026】
弁体20は、第1弁座13と第2弁座15との間に軸線L方向にスライド可能に配置されている。弁体20は、後述するピストン部50のブラケット53によって保持されている。
【0027】
弁体20は、図3に示すように、第1弁体部21と、仕切り部材22と、封止部材23と、第2弁体部24と、側板26、26と、を有している。
【0028】
第1弁体部21は、例えば、合成樹脂製であり、略四角筒状に形成されている。第1弁体部21は、第1弁座13側に配置されている。第1弁体部21における第1弁座13側の端部には外側に向けて突出した環状の外鍔部21aが設けられている。第1弁体部21における第1弁座13側の端面は、外鍔部21aとともに、第1弁座面14に接している。第1弁体部21における第2弁体部24側の端面には第1弁体部21の内側と外側とを連通する凹溝21bが設けられている。
【0029】
仕切り部材22は、例えば、金属製であり、角皿状(トレー状)に形成されている。仕切り部材22は、底壁部22aと、底壁部22aの周縁に連設された周壁部22bとを有している。周壁部22bの内側には、第1弁体部21における第2弁座15側の端部がはめ込まれている。仕切り部材22は、第1弁体部21における第2弁座15側の開口を塞いでいる。第1弁体部21と仕切り部材22とは、第1Uターン通路28を形成するように構成されている。仕切り部材22は、第1弁体部21に対して上記対向方向に移動可能に配置されている。
【0030】
封止部材23は、例えば、弾性部材からなるOリングである。封止部材23は、第1弁体部21の外周面と仕切り部材22の周壁部22bの内周面との間に挟まれて配置されている。弁体20は、封止部材23の外形について上記対向方向に投影した投影面積Sbが、第1弁体部21における第1弁座13側の開口面積Saより大きくなるように構成されている。
【0031】
第2弁体部24は、例えば、合成樹脂製であり、略直方体状に形成されている。第2弁体部24は、第2弁座15側に配置されている。第2弁体部24における第1弁座13側の端部には環状壁部24aが設けられている。環状壁部24aの内側には、仕切り部材22とともに第1弁体部21における第2弁体部24側の端部がはめ込まれている。換言すると、第2弁体部24は第1弁体部21と組み合わされており、第1弁体部21と第2弁体部24との間に仕切り部材22が配置されている。第2弁体部24における第2弁座15側の端面は第2弁座面16に接しており、当該端面には略半楕円球状(または長円球を半分にした形状)の凹部である第2Uターン通路29が設けられている。第2弁体部24は、第1弁体部21に対して上記対向方向に移動可能に配置されている。
【0032】
側板26、26は、金属製であり、平板状に形成されている。側板26、26は、第1弁体部21および第2弁体部24を軸線L方向に挟むように配置されている。剛性の高い金属製の側板26、26を配置することで、ブラケット53が側板26、26を介して第1弁体部21における第1弁座13寄りの部分を押すことができる。具体的には本実施例では、環状壁部24aおよび仕切り部材22を介して、第1弁体部21における第1弁座13寄りの部分を押す構成となっている。そのため、第1弁体部21における第1弁座13から離れた部分を押す構成に比べて、第1弁体部21がスライド時に第1弁座面14から浮き上がってしまうことをより効果的に抑制でき、耐久性を高めることができる。同様に、ブラケット53が側板26、26を介して第2弁体部24における第2弁座15寄りの部分を押すことができる。そのため、第2弁体部24における第2弁座15から離れた部分を押す構成に比べて、第2弁体部24がスライド時に第2弁座面16から浮き上がってしまうことをより効果的に抑制でき、耐久性を高めることができる。また、スティックスリップを原因とする異音の発生を抑制できる。
【0033】
また、弁体20は、第1弁体部21と第2弁体部24との間に図示しない複数の圧縮コイルばねが配置されている。複数の圧縮コイルばねによって第1弁体部21と第2弁体部24とに対して上記対向方向に引き離す力が加わり、第1弁体部21が第1弁座面14に押し付けられ、第2弁体部24が第2弁座面16に押し付けられる。
【0034】
弁体20は、仕切り部材22の底壁部22aと第2弁体部24との間に背圧空間27が設けられている。背圧空間27は、周囲を囲われた閉空間であり、後述する弁室59と区画されている。背圧空間27は、第2弁体部24に設けられた連通路24bおよび側板26に設けられた貫通孔26aによって弁室59と連通されている。
【0035】
弁体20は、第1弁座面14上および第2弁座面16上で軸線L方向に沿って弁ハウジング10の一端部側にスライドされると第1の停止位置に位置づけられ、弁ハウジング10の他端部側にスライドされると第2の停止位置に位置づけられる。
【0036】
弁体20が第1の停止位置にあるとき、第1Uターン通路28は、第1弁座13に設けられた複数のポートpB、pA、pFのうちのポートpBとポートpAとを連通させる。第2Uターン通路29は、第2弁座15に設けられた複数のポートpC、pD、pEのうちのポートpDとポートpCとを連通させる。弁室59は、第1弁座13に設けられたポートpFと第2弁座15に設けられたポートpEとを連通させる。
【0037】
弁体20が第2の停止位置にあるとき、第1Uターン通路28は、第1弁座13に設けられた複数のポートpB、pA、pFのうちのポートpAとポートpFとを連通させる。第2Uターン通路29は、第2弁座15に設けられた複数のポートpC、pD、pEのうちのポートpEとポートpDとを連通させる。弁室59は、第1弁座13に設けられたポートpBと第2弁座15に設けられたポートpCとを連通させる。
【0038】
上述した弁体20は、第1弁体部21が仕切り部材22とともに第2弁体部24にはめ込まれた構成を有している。このような弁体20に代えて、図4に示すように、仕切り部材22が上下反転して配置され、仕切り部材22の周壁部22bの内側に第2弁体部24における第1弁座13側の端部がはめ込まれ、第2弁体部24が仕切り部材22とともに第1弁体部21の内側にはめ込まれた構成を有する弁体20Aを採用してもよい。図4において、弁体20の構成要素と同様の機能を有する構成要素には、弁体20の構成要素と同一の符号を付している。なお、図4に示す弁体20Aは、弁体20と同様に側板26、26を有していてもよい。
【0039】
ピストン部50は、第1ピストン51と、第2ピストン52と、ブラケット53と、を有している。
【0040】
第1ピストン51は、蓋部材11と第1弁座13および第2弁座15との間に配置されている。第1ピストン51と蓋部材11との間に第1作動室57が形成される。第2ピストン52は、蓋部材12と第1弁座13および第2弁座15との間に配置される。第2ピストンと蓋部材12との間に第2作動室58が形成される。第1ピストン51と第2ピストン52との間に弁室59が形成される。弁室59には、第1弁座13と、第2弁座15と、弁体20とが配置されている。
【0041】
金属製のブラケット53は、長方形板状に形成されたブラケット本体54と、ブラケット本体54の両端に設けられたピストン取付片55、56と、を一体に有している。ブラケット本体54は、弁体20が挿入される略長方形状の弁体保持孔54aが設けられている。ピストン取付片55には、第1ピストン51が取り付けられる。ピストン取付片56には、第2ピストン52が取り付けられる。ブラケット53は、第1ピストン51と第2ピストン52とを連結する。
【0042】
パイロット部60は、例えば、ソレノイド式の流路切換弁で構成されている。パイロット部60は、細管71〜74の接続を切り換えることにより、第1作動室57および第2作動室58と、管継手Bおよび管継手Fとの接続を切り換えて、第1作動室57および第2作動室58内の冷媒圧力を制御する。これにより、第1作動室57および第2作動室58内の冷媒圧力の差によってピストン部50を弁ハウジング10の一端部側または他端部側へ移動させる。ピストン部50の移動に伴って、ブラケット53に保持された弁体20が軸線L方向にスライドされ、図1に示す第1の停止位置または図2に示す第2の停止位置に位置づけられる。
【0043】
次に、上述した流路切換弁1の動作の一例について説明する。
【0044】
冷房運転時に、流路切換弁1は、パイロット部60により細管71と細管72とを接続し、細管73と細管74とを接続する。これにより、管継手Bと第2作動室58とが接続されかつ管継手Fと第1作動室57とが接続されて、第1作動室57の冷媒圧力が低くなり、第2作動室58の冷媒圧力が高くなる。冷媒圧力の差によってピストン部50が弁ハウジング10の一端側に移動して、図1に示すように、弁体20が第1の停止位置に位置づけられる。
【0045】
第1の停止位置において、第1Uターン通路28はポートpBとポートpAとを連通させ、第1Uターン通路28には高圧冷媒が流れる。第2Uターン通路29はポートpDとポートpCとを連通させ、第2Uターン通路29には中圧冷媒が流れる。弁室59は、ポートpEとポートpFとを連通させ、弁室59には低圧冷媒が流れる。背圧空間27には低圧冷媒が導入される。このとき、弁体20において、第1Uターン通路28を流れる高圧冷媒から受ける圧力によって仕切り部材22が第2弁体部24側に移動して第2弁体部24に突き当たり、第2弁体部24が第2弁座面16に押し付けられる。また、弁体20において、封止部材23の外形の投影面積Sbが、第1Uターン通路28の開口面積Saより大きいので、投影面積Sbと開口面積Saとの差分面積に対して、第1Uターン通路28を流れる高圧冷媒と弁室59の低圧冷媒との差圧が、第1弁体部21を第1弁座面14に押し付ける圧力として作用する。これにより、第1弁体部21が第1弁座面14に押し付けられる。
【0046】
また、暖房運転時に、流路切換弁1は、パイロット部60により細管71と細管74とを接続し、細管73と細管72とを接続する。これにより、管継手Bと第1作動室57とが接続されかつ管継手Fと第2作動室58とが接続されて、第1作動室57の冷媒圧力が高くなり、第2作動室58の冷媒圧力が低くなる。冷媒圧力の差によってピストン部50が弁ハウジング10の他端側に移動して、図2に示すように、弁体20が第2の停止位置に位置づけられる。
【0047】
第2の停止位置において、第1Uターン通路28はポートpAとポートpFとを連通させ、第1Uターン通路28には低圧冷媒が流れる。第2Uターン通路29はポートpEとポートpDとを連通させ、第2Uターン通路29には中圧冷媒が流れる。弁室59は、ポートpBとポートpCとを連通させ、弁室59には高圧冷媒が流れる。背圧空間27には高圧冷媒が導入される。このとき、背圧空間27に導入された高圧冷媒から受ける圧力によって仕切り部材22が第1弁体部21側に移動して底壁部22aが第1弁体部21に突き当たる。そして、第1Uターン通路28を流れる低圧冷媒から受ける圧力と背圧空間27に導入された高圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、仕切り部材22が第1弁座13側に向けて押されて、第1弁体部21が第1弁座面14に押し付けられる。また、第2Uターン通路29を流れる中圧冷媒から受ける圧力と背圧空間27に導入された高圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、第2弁体部24が第2弁座面16に押し付けられる。
【0048】
このように、第1の停止位置および第2の停止位置のいずれにおいても、冷媒から受ける圧力によって第1弁体部21を第1弁座13に押し付け、第2弁体部24を第2弁座15に押し付けることができる。
【0049】
以上より、本実施例の流路切換弁1によれば、第1Uターン通路28に低圧冷媒が流れ、第2Uターン通路29に中圧冷媒が流れ、弁室59に高圧冷媒が流れる場合に、仕切り部材22と第2弁体部24との間の背圧空間27に高圧冷媒が導入される。これにより、第1Uターン通路28の低圧冷媒から受ける圧力と背圧空間27の高圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、仕切り部材22で第2弁座15側の開口が塞がれた第1弁体部21が第1弁座13に押し付けられる。また、第2Uターン通路29の中圧冷媒から受ける圧力と背圧空間27の高圧冷媒から受ける圧力との差圧によって、第2弁体部24が第2弁座15に押し付けられる。
【0050】
また、第1弁体部21と仕切り部材22の周壁部との間に配置された封止部材23の外形について上記対向方向に投影した投影面積Sbが、第1弁体部21における第1弁座13側の開口面積Saより大きい。このようにすることで、第1Uターン通路28に高圧冷媒が流れ、弁室59に低圧冷媒が流れる場合に、投影面積Sbと開口面積Saとの差分面積に対して、第1Uターン通路28を流れる高圧冷媒と弁室59内の低圧冷媒との差圧が、第1弁体部21を第1弁座13に押し付ける圧力として作用する。これにより、第1弁体部21が第1弁座13に押し付けられる。
【0051】
したがって、弁体20の第1弁体部21を第1弁座13に押し付ける力、および、第2弁体部24を第2弁座15に押し付ける力を効果的に確保できる。
【0052】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
1…流路切換弁、10…弁ハウジング、11、12…蓋部材、13…第1弁座、14…第1弁座面、15…第2弁座、16…第2弁座面、20…弁体、21…第1弁体部、21a…外鍔部、21b…凹溝、22…仕切り部材、22a…底壁部、22b…周壁部、23…封止部材、24…第2弁体部、24a…環状壁部、24b…連通路、26…側板、26a…貫通孔、27…背圧空間、28…第1Uターン通路、29…第2Uターン通路、50…ピストン部、51…第1ピストン、52…第2ピストン、53…ブラケット、54…ブラケット本体、54a…弁体保持孔、55、56…ピストン取付片、57…第1作動室、58…第2作動室、59…弁室、60…パイロット部、pA、pB、pC、pD、pE、pF…ポート、A、B、C、D、E、F…管継手、L…軸線、Sa…開口面積、Sb…投影面積
図1
図2
図3
図4
図5
図6