(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の非火薬破砕組成物について詳細に説明する。
【0021】
本発明の非火薬破砕組成物は、テルミット剤とガス発生剤とを混合して造粒することにより得られる。以下、非火薬破砕組成物として、テルミット剤とガス発生剤とを混合し造粒したものを例に挙げて説明するが、造粒したガス発生剤の表面にテルミット剤をコーティングしたものであってもよい。
【0022】
テルミット剤は、酸化剤及び還元剤から構成され、燃焼させたときにテルミット反応を生じさせるものである。酸化剤としては、例えば酸化第二銅、酸化第二鉄、酸化第三鉄、酸化ニッケル(II)又は酸化モリブデン(VI)のいずれか一種類の金属酸化物、又は二種類以上の金属酸化物が用いられる。また、還元剤としては、例えばアルミニウム、マグネシウム、マンガン、チタン等が用いられる。なお、テルミット反応時の発生熱量やテルミット剤の製造コスト等を考慮した場合、テルミット剤として用いる酸化剤及び還元剤の組み合わせは、酸化第二銅及びアルミニウムの組み合わせが一般的に用いられる。
【0023】
ここで、テルミット剤における酸化剤及び還元剤の配合組成は、用いる金属酸化物や金属の種類によって異なる。例えば酸化第二銅及びアルミニウムを用いてテルミット剤を製造する際の配合組成(重量比:wt%)は、酸化第二銅:アルミニウム=90:10〜60:40の範囲内である。酸化第二銅及びアルミニウムの重量比のより好ましい範囲は、酸化第二銅:アルミニウム=88:12〜64:36の範囲であり、更に好ましい範囲は、酸化第二銅:アルミニウム=81.6:18.4〜77:23の範囲である。なお、酸化第二銅は粒子径範囲0.5〜10μmの粒子を使用し、アルミニウムは粒子径範囲10〜100μmの粒子を使用する。
【0024】
周知のように、テルミット剤とガス発生剤とからなる非火薬破砕組成物は、テルミット反応時の生成熱によるガス発生剤の熱分解反応を利用している。したがって、非火薬破砕組成物により発生するガスの組成を改善するためには、熱分解特性を考慮したガス発生剤の選択が重要である。
【0025】
そこで、本実施形態では、非火薬破砕組成物として、一種類の生分解性材料、二種類以上の生分解性材料又は二種類以上の生分解性材料からなるアロイのいずれかが用いられる。
【0026】
例えば生分解性材料は、生分解性樹脂、生分解オリゴマー又は生分解性を有する単量体のいずれかである。また、生分解性材料は、硫黄元素及びハロゲン元素を含有しない、単量体、単独重合体、又は共重合体であり、前記単量体、前記単独重合体の繰返し単位又は前記共重合体の繰返し単位は、エステル、エーテル、ケトン及び水酸基の少なくとも一種類の構造を1つ又は複数有している。
【0027】
また、この他に、生分解性材料は、硫黄元素及びハロゲン元素を含有しない、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテル、脂肪族多価アルコール又は糖質のいずれかである。糖質は、単糖類、少糖類及び多糖類の他、誘導糖が挙げられる。
【0028】
上述した単量体、単独重合体、共重合体において、これらが含有する酸素原子数と炭素原子数との比率(酸素原子数/炭素原子数)は、1/3以上であることが好ましい。上記比率は1/2以上であってもよいし、2/3以上であってもよい。
【0029】
上述した生分解性樹脂は、全面的バイオマス原料プラスチック、部分的バイオマス原料プラスチック又は石油原料プラスチックのいずれかである。
【0030】
生分解性樹脂、生分解性オリゴマーの具体例としては、ポリアスパラギン酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリ[ヒドロキシブチレート/ヒドロキシヘキサノエート]、ポリ−D−乳酸、ポリ−L−乳酸、ポリ−DL−乳酸、ポリ[乳酸/ブチレンサクシネート]、[ポリ乳酸/ポリブチレンサクシネート系]ブロックポリマー、ポリ[乳酸/グリコール酸]、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、ポリ[カプロラクトン/ブチレンサクシネート]、ポリブチレンサクシネート、ポリ[ブチレンサクシネート/アジペート]、ポリ[ブチレンサクシネート/カーボネート]、ポリ[エチレンテレフタレート/サクシネート]、ポリ[ブチレンアジペート/テレフタレート]、ポリ[テトラメチレンアジペート/テレフタレート]、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)、ポリプロピレンオキサイド(ポリプロピレングリコール)などの、ポリエステル、ポリエーテル及び多価アルコールや、澱粉、エステル化澱粉(酢酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、リン酸化澱粉)、エーテル化澱粉(ビドロキシプロピル澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシプロピル澱粉)架橋澱粉(グリセロールジ澱粉、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化リン酸架橋澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉、リン酸架橋澱粉)、グラフト化澱粉、α化澱粉、可溶化澱粉、酸化澱粉デキストリン、セルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、キチン、キトサン、グリコーゲン、デキストリン、グルカン、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖、アカルボース、スタキオース、メレジトース、ラフィノース、メレジトース、マルトトリオース、スクロース、ラクトース、マルトース、マルチトール、フルクタン、トレハロース、ツラノース、セロビオース等の多糖類、オリゴ糖、三糖類及び二糖類が挙げられる。
【0031】
また、生分解性を有する単量体の具体例としては、グルセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、α−メチルグルキシド、Dソルビトール、グルコサミン、デオキシリボース、プシコース、グロース、フコース、フクロース、ラムノース、セドヘプツロースなどの単糖類が挙げられる。
【0032】
これら生分解性材料は、無水物又は水和物を用いることができる。なお、水和物の場合には、結晶水量が増加することに伴って、引火性ガス濃度が増加する傾向があるので、ガス組成を考慮した上で、水和量を選択する必要がある。
【0033】
上述した生分解性材料は、地中に残留した場合、微生物によって完全に消費され、炭酸ガス、メタン、水、バイオマスなどの自然的副産物を生じる。したがって、テルミット剤による燃焼時にガス発生剤が不完全分解や不完全燃焼となり、土中に残留した場合であっても、環境負荷を与えることがない。また、生分解性材料は、酸素含有率が高いことから、発生ガスの毒性及び引火性は低下する。
【0034】
生分解性材料をガス発生剤として用いる場合、生分解性材料の粒子径範囲は5600μm以上、2000μm以上5600μm未満、250μm以上2000μm未満、45μm以上250μm未満、若しくは45μm以上5600μm未満のいずれか1つの粒子径範囲であることが好ましい。ここで、粒子径範囲が45μm以上5600μm未満の範囲を用いる場合には、上述した粒子径範囲の各範囲の生分解性材料を同一量混合したものであってもよいし、予め定めた割合で混合したものであってもよい。なお、生分解性材料の粒度調整方法については、特に限定しないが、通常、粉末及び顆粒を加圧成形し、常温粉砕機や、低温粉砕機を用いて粉砕した後、分級機などを用いて分級する。
【0035】
本発明の実施形態による性能試験法の場合、テルミット反応による燃焼時のガスの発生圧力が8MPa以上となることが好ましいので、上述した粒子径範囲のうち、粒子径範囲250μm以上2000μm未満、粒子径範囲45μm以上250μm未満のいずれかの生分解性材料を用いることが好ましい。
【0036】
なお、生分解性材料の粒子径範囲において、生分解性材料の粒子径が大きくなると、テルミット剤が燃焼したときに発生する熱が粒子の中心まで十分に伝達されず、生分解性材料が不完全分解及び不完全燃焼となりやすい。この場合、生分解性材料の熱分解及び燃焼により発生するガスの発生圧力は低く、また、ガスの発生量も低くなる。しかしながら、生分解性材料が不完全分解及び不完全燃焼となり土中に残留した場合、微生物によって消費されて自然的副産物を生じさせる。したがって、上述した生分解性材料の粒子径範囲は、上限の一例として5600μmとしている。
【0037】
上述したテルミット剤とガス発生剤との配合組成について説明する。非火薬破砕組成物におけるテルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)において、ガス発生剤の含有量が5wt%未満である場合、ガス発生剤は完全に分解燃焼するが、ガス発生剤の分解燃焼により発生するガスの発生圧力は低い。一方、ガス発生剤の含有量が60wt%を超過する場合、ガス発生剤が不完全な分解燃焼となりやすく、ガス発生剤の分解燃焼により発生するガスの発生圧力が低下する。したがって、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=40:60〜90:10の範囲であることが好ましい。
【0038】
次に、非火薬破砕組成物の調合方法を説明する。生分解性材料の一例として、ポリ乳酸を用いた場合を説明する。ポリ乳酸の酸素原子数と炭素原子数との比率は、炭素原子数を基準とした場合、2/3である。なお、ガス発生剤として他の生分解性樹脂、生分解性オリゴマー及び単糖類を用いる場合も、以下の方法に準拠して調合される。
1)融点以上まで温度上昇しないように制御しながら、ポリ乳酸を粉砕機(ワーリング社製 MX1200XTM)にて粉砕する。なお、粉砕時のポリ乳酸の温度制御は、粉砕容器に取り付けた熱電対を用いて実施され、例えば表面温度が約45℃まで上昇した場合、粉砕機を停止し放冷する。
2)JIS Z 8801−1(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)に規定されるふるいを用いて、JIS K 0069(化学薬品のふるい分け試験法)に規定されたふるい分け方法により、粉砕機により粉砕されたポリ乳酸を分級する。
破砕されたポリ乳酸を分級する際に、3.5タイラーメッシュ止まりでふるい分けられた粉体を粒子径範囲5600μm以上の粉体とする。3.5タイラーメッシュ通過、8.6タイラーメッシュ止まりでふるい分けされた粉体を、粒子径範囲2000μm以上5600μm未満の粉体とする。また、8.6タイラーメッシュ通過、60タイラーメッシュ止まりでふるい分けされる粉体を、粒子径範囲250μm以上2000μm未満の粉体とする。さらに、60タイラーメッシュ通過、330タイラーメッシュ止まりでふるい分けされる粉体を、粒子径範囲45μm以上250μm未満の粉体とする。
3)アルミニウム粉11.5重量部に対し、鈍感化剤としてステアリン酸カルシウム2.5重量部を同一容器に入れ、粉体の偏りがないように混合した後、酸化第二銅38.5重量部を加えて混合して、テルミット剤を生成する。
4)分級されたポリ乳酸をテルミット剤に予め設定された量加え、これらを混合する。このとき、最終的に得られる非火薬破砕剤組成物粉体の凝集性や仮比重等を調製したい場合には、生分解性樹脂(ポリ乳酸、ポリビニルアルコール等)をアセトン、エタノール等の溶媒に溶した生分解性樹脂バインダーを6重量部程度加え、混練、乾燥してもよい。
【0039】
以下、粒子径範囲が異なるポリ乳酸をガス発生剤として用いた非火薬破砕組成物の性能試験結果を
図1に示す。
図1に示すように、実施例1の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲5600μm以上のポリ乳酸を用い、実施例2の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲2000μm以上5600μm未満のポリ乳酸を用いている。また、実施例3の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲250μm以上2000μm未満のポリ乳酸を用い、実施例4の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲45μm以上250μm未満のポリ乳酸を用いている。さらに、実施例5の非火薬破砕組成物は、粒子径範囲45μm以上5600μm未満のポリ乳酸を用いている。なお、実施例1から実施例5に示す非火薬破砕組成物のいずれもが、テルミット剤とポリ乳酸との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=50:50である。
【0040】
性能試験は、非火薬破砕組成物の燃焼時のガス発生量の計測試験、非火薬破砕組成物の燃焼時のガス発生圧力の計測試験、JIS落鎚感度試験、BAM式摩擦感度試験及び小ガス炎着火試験としている。
【0041】
<燃焼時のガス発生量の計測試験>
燃焼時のガス発生量の計測試験は、以下の手順で実施された。
1)実施例1から実施例5の配合組成で配合した破砕薬剤0.8gを、直径約7mm、肉厚0.1mmのアルミニウム製の管体に充填する。
2)0.2gのボロン−酸化銅着火薬カプセルを装着した白金線付き脚線を、管体に装着した後、かしめを行うことで供試体を生成する。
3)生成した供試体を治具に嵌め込んだ後、ガス漏れを防止する対策として、供試体と治具との隙間にエポキシ樹脂を充填する。
4)1.93cc密閉タンクに供試体を螺着する。
5)脚線に通電を行い着火薬を点火させ、管体を破砕して1.93cc密閉タンクに接続されたエアホースに流れ込んだガスを水上置換により捕集し、捕集された燃焼ガスの量を測定する。
【0042】
<燃焼時のガス発生圧力の計測試験>
燃焼時のガス発生圧力の計測試験は、以下の手順で実施された。
1)実施例1から実施例5の配合組成で配合した破砕薬剤0.8gを、直径約7mm、肉厚0.1mmのアルミニウム製の管体に充填する。
2)0.2gのボロン−酸化銅着火薬カプセルを装着した白金線付き脚線を管体に装着した後、かしめることで、供試体を生成する。
3)生成した供試体を治具に嵌め込んだ後、ガス漏れを防止する対策として、供試体と治具との隙間にエポキシ樹脂を充填する。
4)ひずみゲージ(KYOWA製 PGM−200KE)を取り付けた10cc密閉タンクに供試体を螺着する。
5)脚線に通電を行い着火薬を点火させることで、管体を破砕して10cc密閉タンクの内部に放出される燃焼ガスの圧力をひずみゲージにより測定する。
【0043】
<JIS落鎚感度試験>
JIS落鎚感度試験は、周知のように、試験器のかなしきの上に置いた2個の円筒ころの間に試料となる非火薬破砕組成物を挟みこんだ後、鉄鎚を落とし、落下させる鉄槌の高さと爆発の状態との関係から火薬類の感度を調べる試験である。このJIS落鎚感度試験は、JIS K 4810 2003に従って実施される。なお、JIS落鎚感度試験は、例えば試料約0.1mlに重量5kgの鉄槌を落下させる試験を同一高さで6回行い、1回だけ爆発する、または1回だけ爆発すると推定される高さ(1/6爆点)を求め、1/6爆点の高さに基づいた等級を決定する。
【0044】
<BAM式摩擦感度試験>
BAM式摩擦感度試験は、周知のように、ドイツ材料試験所(BAM)で開発された摩擦感度試験機に取り付けた磁器製の摩擦棒と摩擦板との間に試料となる非火薬破砕組成物を挟み、荷重を掛けた状態で摩擦運動を行って、荷重と爆発の成否との関係から試料の感度を調べる試験である。なお、BAM式摩擦感度試験は、同一荷重で試料に摩擦を加える試験を同一荷重で6回行い、1回だけ爆発する、または1回だけ爆発すると推定される荷重(1/6爆点)を求め、1/6爆点における荷重に基づいた等級を決定する。
【0045】
<小ガス炎着火試験>
小ガス炎着火試験は、消防法危険物評価試験に準じた試験である。この小ガス炎着火試験は、着火までの時間から危険物(可燃性固体)の消防法上の種別の判定、詳細には、着火までの時間から「燃えやすさ」を評価する試験である。試験の方法は以下の通りである。厚さが10mm以上の無機質の断熱板上に3cm
3の試料を載置する。ここで、試料は乾燥用シリカゲルを入れたデシケータ中に温度20℃で24時間以上保存されているものを使用する。ここで、試料が粉状又は粒状の場合には、試料は無機質の断熱材上に半球状に載置される。液化石油ガスの火炎を試料に10秒間接触させる。ここで、液化石油ガスの火炎は、先端が棒状の着火器具の拡散炎とし、火炎の長さが着火器具の口を上方に向けた状態で70mmとなるように調節される。また、上記火炎を試料に10秒間接触させる条件として、例えば火炎と試料との接触面積を2cm
2とし、接触角度は30°とする。火炎を試料に接触させてから試料が着火するまでの時間を測定し、試料が燃焼(炎を上げずに燃焼する状態を含む)を継続するか否かを観察する。火炎を試料に接触させている間に試料の全てが燃焼した場合、火炎を離した後10秒経過するまでの間に試料の全てが燃焼した場合、或いは火炎を離した後10秒以上継続して試料が燃焼した場合、燃焼を継続したものとする。
【0046】
図1に示すように、実施例1の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は92.5cc/0.8g、ガス発生圧力は6.89MPaであった。また、実施例2の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は87.5cc/0.8g、ガス発生圧力は7.05MPaであった。実施例3の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は175.5cc/0.8g、ガス発生圧力は9.49MPaであった。また、実施例4の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は153.6cc/0.8g、ガス発生圧力は9.85MPaであった。さらに、実施例5の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は121.5cc/0.8g、ガス発生圧力は8.26MPaであった。
【0047】
上述した特許文献2に開示される非火薬破砕組成物、言い換えればカリウム明礬やアンモニウム明礬をガス発生剤として用いた非火薬破砕組成物では、燃焼時のガス発生量は170cc/0.8g、ガス発生圧力は8.45MPaであった。
【0048】
図1中「破砕剤としての性能(発生圧力基準)」の項目において、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力8.45MPa以上となる場合に「◎」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa以上、8.45MPa未満となる場合に「○」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa未満となる場合に「△」としている。
【0049】
実施例1、実施例2及び実施例5の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物の性能に劣っていることがわかった。一方、実施例3及び実施例4の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物の性能に遜色ない性能を有することがわかった。上述したように、非火薬破砕組成物の燃焼時において発生するガスの発生圧力は、8MPaが好ましいとされている。このことからも、実施例3及び実施例4の非火薬破砕組成物の性能は良好であることがわかった。
【0050】
なお、上述した実施例1から実施例5のいずれもが、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級、小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体となることがわかった。
【0051】
したがって、実施例3及び実施例4の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物におけるガス発生圧力を超過している点で、優れた性能を有している。一方、実施例1、実施例2及び実施例5の非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物におけるガス発生圧力の80%を満足する程度の性能であることがわかった。実施例1、実施例2及び実施例5の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力の点で特許文献2に開示される非火薬破砕組成物に劣っているが、ガス発生剤が不完全分解や不完全燃焼となった場合に、地中にて消費される、言い換えれば環境負荷が低いことを考慮すると、実施例1、実施例2及び実施例5の非火薬破砕組成物を非火薬破砕組成物として使用することは可能である。これら性能試験の結果を考慮すると、ガス発生剤の粒子径範囲としては、5600μm以上、2000μm以上5600μm未満、250μm以上2000μm未満、45μm以上250μm未満、若しくは45μm以上5600μm未満のいずれか1つの粒子径範囲であることが好ましく、なかでも、250μm以上2000μm未満、45μm以上250μm未満のいずれかであることが特に好ましいことがわかった。
【0052】
次に、テルミット剤とガス発生剤との配合率を変化させた非火薬破砕組成物の性能試験結果を
図2に示す。
図2に示す各実施例にて使用したガス発生剤の粒子径範囲は、250μm以上2000μmである。ここで、
図2に示す各実施例における非火薬破砕組成物におけるテルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、実施例6はテルミット剤:ガス発生剤=95:5、実施例7はテルミット剤:ガス発生剤=90:10、実施例8はテルミット剤:ガス発生剤=80:20、実施例9はテルミット剤:ガス発生剤=70:30である。また、実施例10はテルミット剤:ガス発生剤=60:40、実施例11はテルミット剤:ガス発生剤=40:60である。さらに、実施例12は、テルミット剤:ガス発生剤=30:70である。ここで、比較例1として、テルミット剤:ガス発生剤=20:80の場合についても性能試験を行った。
【0053】
実施例6の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は150.0cc/0.8g、ガス発生圧力は6.55MPaであった。また、実施例7の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は176.7cc/0.8g、ガス発生圧力は9.45MPaであった。実施例8の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は176.7cc/0.8g、ガス発生圧力は9.39MPaであった。また、実施例9の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は178.0cc/0.8g、ガス発生圧力は8.96MPaであった。さらに、実施例10の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は170.0cc/0.8g、ガス発生圧力は9.63MPaであった。また、実施例11の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は145.0cc/0.8g、ガス発生圧力は8.50MPaであった。実施例12の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は120.0cc/0.8g、ガス発生圧力は6.69MPaであった。一方、比較例1の非火薬破砕組成物は、燃焼しないという結果が得られた。
【0054】
図2においても、
図1と同様に、「破砕剤としての性能(発生圧力基準)」の項目を設けている。この項目においては、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力8.45MPa以上となる場合に「◎」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa以上、8.45MPa未満となる場合に「○」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa未満となる場合に「△」としている。
【0055】
上述した実施例3、実施例6から実施例12のいずれもが、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級となることがわかった。また、同時に、実施例6から実施例8における小ガス炎着火試験の結果は第1種可燃性固体、実施例9から実施例12における小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体となることがわかった。
【0056】
したがって、実施例3、実施例7から実施例11の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力を超過しており、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物の性能に遜色ない性能を有することがわかった。一方、実施例6及び実施例12の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力の80%以下であり、また比較例1は着火燃焼しないことから、これら実施例6、実施例12及び比較例1は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物の性能に劣った非火薬破砕組成物であることがわかった。
【0057】
これら性能試験の結果を考慮すると、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=40(wt%):60(wt%)〜90(wt%):10(wt%)の範囲であることが好ましいことがわかった。
【0058】
次に、異なるガス発生剤を用いた非火薬破砕組成物を燃焼させたときの性能試験結果を
図3に示す。
図3に示す各実施例にて使用したガス発生剤の粒子径範囲は、250μm以上2000μmである。また、
図3に示す各実施例における非火薬破砕組成物におけるテルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)は、テルミット剤:ガス発生剤=70:30である。
【0059】
ここで、実施例13から実施例24における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は以下の通りである。
【0060】
実施例13における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、ポリグリコール酸であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。実施例14における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、ポリ[乳酸/グリコール酸](乳酸/グリコール酸=50/50)であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=5/6である。実施例15における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、ポリビニルアルコールであり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/2である。実施例16における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、澱粉であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=5/6である。実施例17における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、酢酸澱粉であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=2/3〜3/4である。実施例18における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、セルロースであり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=5/6である。
【0061】
また、実施例19における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、トレハロース二水和物であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=13/12である。実施例20における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、トレハロース無水物であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=11/12である。実施例21における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、D(+)−マルトース一水和物であり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。実施例22における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、D(+)−グルコースであり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。実施例23における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、D(−)−フルクトースであり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。実施例24における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、D(−)−ソルビトールであり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。実施例25における非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、D(+)−グルコースとD(−)−フルクトースを50:50(重量比)で配合したものでり、酸素原子数と炭素原子数との比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。
【0062】
ここで、実施例13のガス発生剤で用いるポリグリコール酸は、例えば米国特許US5227415号公報を元に、ステンレス製オートクレーブにトリオキサンと、クロロ硫酸とジクロロメタンを封入し、内圧が55kg/cm
2になるまで一酸化炭素を導入し攪拌下で180°Cで2時間反応した後、容器内の未反応一酸化炭素を取り除き、生成物をアセトンで濾過・洗浄し、乾燥させることで調整した。
【0063】
また、実施例20のガス発生剤で用いるトレハロース(無水物)は、トレハロース二水和物を真空乾燥機で50°C−48時間乾燥させることで調整した。
【0064】
上述した実施例13から実施例15におけるガス発生剤は、凍結粉砕機(ASONE製 TPH−01)で凍結粉砕した後、JIS Z 8801−1(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)に規定されるふるいを用いて、JIS K 0069(化学薬品のふるい分け試験法)に規定されたふるい分け方法により凍結粉砕した樹脂を分級し、分級された樹脂のうち、粒子径範囲250μm以上2mm未満の粒子を用いている。
【0065】
また、実施例16から実施例24におけるガス発生剤は、加圧成形機でペレット成形し、メノウ乳鉢でペレットを砕いた後、JIS Z 8801−1(試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい)に規定されるふるいを用いて、JIS K 0069(化学薬品のふるい分け試験法)に規定されたふるい分け方法により砕いたペレットを分級し、分級されたペレットのうち、粒子径範囲250μm以上2mm未満の粒子を用いている。
【0066】
以下、実施例13から実施例24における非火薬破砕組成物の性能試験の結果について説明する。なお、実施例15から実施例23の非火薬破砕組成物に用いたガス発生剤は、熱分解において水分発生量が多いことが想定されるため、水上置換によるガス発生量の測定は行っていない。
【0067】
図3に示すように、実施例13の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は181.3cc/0.8g、発生したガスの圧力(ガス発生圧力)は9.13MPaであった。実施例14の非火薬破砕組成物は、燃焼時のガス発生量は153.9cc/0.8g、ガス発生圧力は8.51MPaであった。
【0068】
実施例15の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.49MPaであった。実施例16の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.72MPaであった。実施例17の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.89MPaであった。実施例18の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.61MPaであった。実施例19の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は9.01MPaであった。実施例20の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は9.22MPaであった。実施例21の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.68MPaであった。実施例22の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は9.03MPaであった。実施例23の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.88MPaであった。実施例24の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.85MPaであった。実施例25の非火薬破砕組成物は、ガス発生圧力は8.41MPaであった。
【0069】
図3においても、
図1及び
図2と同様に、「破砕剤としての性能(発生圧力基準)」の項目を設けている。この項目においては、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力8.45MPa以上となる場合に「◎」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa以上、8.45MPa未満となる場合に「○」、特許文献2における非火薬破砕組成物を燃焼させたときのガス発生圧力の80%圧力である6.76MPa未満となる場合に「△」としている。
【0070】
上述した実施例13から実施例25のいずれもが、JIS落鎚感度試験の結果は8級、BAM式摩擦感度試験の結果は7級となることがわかった。また、同時に、実施例13から実施例25における小ガス炎着火試験の結果は第2種可燃性固体となることがわかった。
【0071】
したがって、実施例13から実施例25の非火薬破砕組成物のいずれもが、ガス発生圧力が特許文献2に開示される非火薬破砕組成物のガス発生圧力を超過しており、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物に遜色ない性能を有することがわかった。
【0072】
図3に示す性能試験の結果を考慮すると、生分解性樹脂、多糖類、単糖類等に代表される生分解性材料をガス発生剤として用いることが好ましいことがわかった。
【0073】
最後に、非火薬破砕組成物を燃焼させたときに発生するガスの組成分析試験を行った。発生するガスの組成分析試験の結果を
図4に示す。ガス組成分析試験は、例えば組成物が燃焼したときの発生ガスを分析して、有害性の指標を求めるものである。
【0074】
ガス組成分析試験は、以下の手順で実施した。
1)実施例3、実施例9、実施例14、実施例16、実施例20、実施例22の他、比較例2から比較例4の配合組成にて配合した破砕薬剤0.8gを、直径約7mm、肉厚0.1mmのアルミニウム製の管体に充填する。
【0075】
ここで、実施例3の非火薬破砕組成物は、ポリ乳酸をガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=50:50として配合した非火薬破砕組成物である。実施例3において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=2/3である。実施例9の非火薬破砕組成物は、ポリ乳酸をガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=70:30として配合した非火薬破砕組成物である。実施例9において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=2/3である。
【0076】
また、実施例14の非火薬破砕組成物は、ポリ[乳酸/グリコール酸](乳酸/グリコール酸=50/50)をガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=70:30として配合した非火薬破砕組成物である。実施例14において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=5/6である。実施例16の非火薬破砕組成物は、澱粉をガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=70:30として配合した非火薬破砕組成物である。実施例16において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=5/6である。
【0077】
実施例20の非火薬破砕組成物は、トレハロース(無水物)をガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=70:30として配合した非火薬破砕組成物である。実施例20において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=11/12である。実施例22の非火薬破砕組成物は、D(+)−グルコースをガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=70:30として配合した非火薬破砕組成物である。実施例22において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。
【0078】
一方、比較例2の非火薬破砕組成物は、ポリ乳酸及びポリプロピレンをガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤であるポリ乳酸及びポリプロピレンとの配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ポリ乳酸:ポリプロピレン=70:15:15で配合した非火薬破砕組成物である。比較例2において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=約1/4である。また、比較例3の非火薬破砕組成物は、カリウム明礬をガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ガス発生剤=50:50で配合した非火薬破砕組成物である。また、比較例4の非火薬破砕組成物は、ポリアセタールをガス発生剤として用い、テルミット剤とガス発生剤との配合組成(重量比:wt%)をテルミット剤:ポリアセタール=50:50で配合した非火薬破砕組成物である。比較例4において、ガス発生剤における酸素原子数と炭素原子数の比率は、酸素原子数/炭素原子数=1/1である。
【0079】
なお、比較例3に示す非火薬破砕組成物は、特許文献2に開示される非火薬破砕組成物、比較例4に示す非火薬破砕組成物は、特許文献1に開示される非火薬破砕組成物である。
2)0.2gのボロン−酸化銅着火薬カプセルを装着した白金線付き脚線を、管体に装着し、かしめを行うことで供試体を生成する。
3)生成した供試体を治具に嵌め込んだ後、ガス漏れを防止する対策として、供試体と治具との隙間にエポキシ樹脂を充填する。
4)1.93cc密閉タンクに供試体を螺着する。
5)脚線に通電を行い着火薬を点火させ、管体を破砕して1.93cc密閉タンクに接続された1Lガスサンプリングバッグに流し込んだ燃焼ガスをガスタイトシリンジで50cc吸引し、別のガスサンプリングバッグ内で10倍に希釈する。なお、燃焼ガスは、空気を用いて希釈される。
6)ガス検知器(RAE systems社製 MultiRAE Lite及びMiniRAE3000)にて、希釈された燃焼ガスを計測し、燃焼ガスの組成データを記録する。
【0080】
図4に示すように、上述したガス組成分析試験では、総VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)の値及び可燃性ガス濃度を測定している。ここで、総VOCの値は、アセトアルデヒド換算した値である。また、可燃性ガスの濃度は水素換算した値である。なお、可燃性ガスの濃度の単位である「%LEL(% Lower Explosive Limit)」は、爆発下限界濃度を示すものであり、可燃性ガスが空気と混合したときに着火により爆発を起こす最低濃度を示すものである。例えば水素の爆発下限界は4vol%であるので、水素換算した爆発下限界濃度は100%LELとなる。また、水素が1vol%含まれる場合には、上記爆発下限界の1/4の値となるので、可燃性ガス濃度は25%LELで示すことができる。
【0081】
実施例3の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は2120ppm、可燃性ガスの濃度は88%LELであった。また、実施例9の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は1140ppm、可燃性ガスの濃度は79%LELであった。
【0082】
実施例14の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は1050ppm、可燃性ガスの濃度は76%LELであった。また、実施例16の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は1520ppm、可燃性ガスの濃度は85%LELであった。
【0083】
実施例20の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は1470ppm、可燃性ガスの濃度は79%LELであった。また、実施例22の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は1280ppm、可燃性ガスの濃度は83%LELであった。
【0084】
また、これら実施例3、実施例9、実施例14、実施例16、実施例20及び実施例22の非火薬破砕組成物は、発生したガス中の硫化水素・硫黄酸化物は検出限界以下、言い換えれば発生したガス中にほぼ含まれていないことがわかった。
【0085】
比較例2の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は2630ppm、可燃性ガスの濃度は90%LELであった。比較例3の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は3040ppm、可燃性ガスの濃度は92%LELであった。なお、比較例3の非火薬破砕組成物が燃焼時に発生するガスは、鈍感化剤及びバインダーの熱分解ガスに加えて、結晶水の熱分解で生成される水素に由来している。比較例4の非火薬破砕組成物は、燃焼時に発生するガスの総VOCの値は5870ppm、可燃性ガスの濃度は99%LEL以上であった。
【0086】
また、比較例2及び比較例4の非火薬破砕組成物では、発生したガス中の硫化水素・硫黄酸化物は検出限界以下、言い換えれば発生したガス中にほぼ含まれていないことがわかった。一方、比較例3の非火薬破砕組成物は、発生したガス中に硫化水素・硫黄酸化物が含まれており、これらの濃度は200ppm以上であることがわかった。
【0087】
実施例3及び実施例9の非火薬破砕組成物のガス組成分析試験の結果を比較すると、非火薬破砕組成物に含まれるポリ乳酸の配合率が増えるにつれ、VOCが増加することがわかった。同時に、可燃性ガス濃度も増加することがわかった。実施例3及び実施例9の非火薬破砕組成物は、比較例2から比較例4の非火薬破砕組成物よりもVOCの値や可燃性ガスの値が低く、硫化水素や硫黄酸化物が発生していないことがわかった。
【0088】
同様にして、実施例14、実施例16、実施例20及び実施例22の非火薬破砕組成物は、比較例2から比較例4の非火薬破砕組成物よりもVOCの値や可燃性ガスの値が低く、硫化水素や硫黄酸化物が発生していないことがわかった。
【0089】
したがって、
図2、
図3及び
図4に示す性能試験の結果を考慮すると、従来の非火薬破砕組成物と同様の破砕性能を維持することができ、また燃焼時に有毒ガスや引火性の高いガスの発生を低減させることが可能である。
【0090】
なお、非火薬破砕組成物を製造する際に用いた配合物質を以下に示す。
・アルミニウム:東洋アルミニウム株式会社 商品名PF0100S
・ステアリン酸カルシウム:関東化学株式会社 試薬鹿一級
・酸化第二銅:日新ケムコ株式会社 N-10
・カリウム明礬:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・ポリ乳酸:ユニチカ株式会社 テラマック(登録商標) TE2000
・ポリプロピレン:旭化成株式会社(テルペット560F)
・ポリ[乳酸/グリコール酸]:Sigma-Aldrich Co LLC試薬 Resomer RG503H
・ポリビニルアルコール:和光純薬工業株式会社 試薬特級(Mw=133000)
・澱粉:和光純薬工業株式会社 試薬一級(トウモロコシ由来)
・酢酸澱粉:三晶工業株式会社 SB GUM-R
・セルロース:和光純薬工業株式会社 試薬一級(微結晶)
・トレハロース二水和物:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・D(+)−マルトース一水和物:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・D(+)−グルコース:和光純薬工業株式会社 試薬一級
・D(+)−フルクトース:和光純薬工業株式会社 試薬特級
・D(−)−ソルビトール:和光純薬工業株式会社 試薬一級