(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893742
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】足場板材の連結具およびその連結金具を用いた足場板材の連結構造
(51)【国際特許分類】
E04G 5/08 20060101AFI20210614BHJP
E04G 7/32 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
E04G5/08 P
E04G7/32 C
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-222785(P2017-222785)
(22)【出願日】2017年11月20日
(65)【公開番号】特開2019-94634(P2019-94634A)
(43)【公開日】2019年6月20日
【審査請求日】2019年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】501415659
【氏名又は名称】JFE機材フォーミング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 潔
(72)【発明者】
【氏名】山根 弘郷
【審査官】
山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−023755(JP,U)
【文献】
特開2011−169012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/08
E04G 7/32
E04G 7/28
E04G 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足場板材同士をその長手方向の端部で相互に連結する連結具であって、
足場板材の本体部分の底壁面に配置され、連結すべき足場板材のそれぞれに跨って固定保持される連結具本体と、該連結具本体の幅方向の端縁にそれぞれにつながる一対の脚部と、該一対の脚部の各先端部につながるとともに該足場板材の幅方向の各端縁に形成された布板のフランジ部に接地する接地片と、該接地片の端縁から該布板の内壁面に沿い該足場板材の本体部分に向けて隙間を隔てて立ち上がる側板と、該側板の端部から幅方向の内側に向けて屈曲するリップとからなることを特徴とする足場板材の連結具。
【請求項2】
前記連結具本体は、連結すべき足場板材のそれぞれに向けて開口し、連結ボルトのねじ込みを可能とする少なくとも二つの開孔を有することを特徴とする請求項1に記載した足場板材の連結具。
【請求項3】
前記接地片は、前記本体部分に面してそれぞれ開口され、しのの先端部の差込みを許容する少なくとも二つの抉り孔を有することを特徴とする請求項1または2に記載した足場板材の連結具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載した連結具を用いて足場板材同士をその長手方向の端部で相互に連結することにより構成されたことを特徴とする足場板材の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築工事や工場、仮設工事(シールド工法トンネル工事等の土木工事現場)、本設工事(ビル屋上の点検歩廊等の床)等において作業通路や作業スペースを形成する床材として使用される足場板材をその長手方向で相互に連結するのに好適な連結具およびその連結具を用いた足場板材の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築工事や工場、本設工事においては、足場板材を支持梁の上に適宜、設置、固定することにより作業通路や作業スペースを形成するようにしており、足場板材を連結するに当たっては、連結部位での強度を確保するため、連結部位が支持梁の上にくる長さに設計されている。
【0003】
一方、仮設の足場等を構築する際に使用される足場板材は、1〜4m程度の長さで製作されているのが一般的である。かかる足場板材を用いて作業通路や作業スペースを形成する場合にあっては、足場板材の連結部位が支持梁以外の領域で接続されることが多く、該連結部位が支持梁に位置せずとも連結強度が確保できるように、連結具を使用して足場板材同士を連結しているのが普通である。この点に関する先行技術としては、例えば、特許文献1が参照される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平7−48875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された技術は、予め各足場板の長手方向の一端の底面板に連結板を嵌合させ、各連結板のボルト孔を各足場板の端部の長孔に合致させるとともに、各長孔からボルト孔にボルトを螺通締着して固定しておいた各足場板の連結板に、接続すべき足場板の他端の底面部に差し込むことにより足場板同士を長手方向に連結するものであって、これによれば足場板同士を、簡単な作業のもとで効率的に連結することができるとされていた。
【0006】
ところで、この種の連結構造においては、荷重の付加により、足場板材が撓み変形を起しその布板(側片)が開放されるような状況におかれた場合に、連結板の側壁もそれに追随して変形してしまったり、連結板の固定姿勢が不安定となる不具合があり、これにより足場板の連結部分において強度低下を引き起こすことが懸念されていた。
【0007】
本発明の課題は、足場板材の連結部分において該足場板材が撓み変形を起すような状況にあっても、足場板材同士を確実に連結することができる連結具およびその連結具を用いた足場板材の連結構造を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、足場板材同士をその長手方向の端部で相互に連結する連結具であって、足場板材の本体部分の底壁面に沿って配置され、連結すべき足場板材のそれぞれにおいて固定保持される連結具本体と、該連結具本体の幅方向の端縁にそれぞれつながる一対の脚部と、該一対の脚部の各先端部につながるとともに該足場板材の各端縁に形成された布板のフランジ部に接地する接地片と、該接地片の端縁から該布板の内壁面に沿い該足場板の本体部分に向けて極僅かな隙間を隔てて立ち上がる側板と、該側板の端部から幅方向の内側に向けて屈曲するリップとからなることを特徴とする足場板材の連結具である。
【0009】
上記の構成からなる足場板材の連結具において、連結具本体は、連結すべき足場板材のそれぞれに向けて開口し、連結ボルトのねじ込みを可能とする少なくとも二つの開孔を有することが好ましい。また、前記接地片は、前記本体部分に面してそれぞれ開口し、しの(シノ)の先端部の差込みを許容する少なくとも二つの抉り孔を有することが好ましい。
【0010】
また、本発明は、上記の構成からなる連結具を用いて足場板材同士をその長手方向の端部で相互に連結することにより構築されたことを特徴とする足場板材の連結構造である。前記連結具は、連結すべき足場板材のそれぞれに跨って配置して該連結具を各足場板材に固定保持するとともに、該連結具の長手方向の端部が位置する領域で足場板材の各布板に梁部材を差し渡して該梁部材を該布板に接続するのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連結具の連結具本体が足場板材の本体部分の底壁面に当接した状態におかれ、接地片が足場板材の布板のフランジ部に接触した状態におかれるため、連結部分において足場板材の布板が開放されるような撓み変形が起きても連結具が足場板材から外れたり連結具の固定姿勢が不安定になることはない。
【0012】
とくに、脚部に連結具本体から足場板材の布板のフランジ部に向けて低くなる傾斜を付与しておくことにより、該脚部を足場板材の撓み変形に対する抵抗力を高めることができる。
【0013】
また、本発明によれば、連結具本体に、連結すべき足場板材に向けて開口する開孔を設けたため、その開孔を利用して連結具を簡便な作業のもとで足場板材に固定することができる。また、接地片に抉り孔を設けることにより、しの(先端部が尖った工具等)の先端部を抉り孔に差し込んで抉ることが可能で、連結具を、足場板材の長手方向に沿って簡便に移動させることができ、足場板材の取り外しも容易となる。
【0014】
さらに、本発明の連結構造によれば、連結具の長手方向の端部が位置する領域で足場板材の各布位置に梁部材を差し渡して該梁部材を布板に接続することにより足場板材の連結強度をより一層向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明にしたがう連結具の実施の形態を模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した連結具の正面を示した図である。
【
図3】
図1に示した連結具の平面を示した図である。
【
図4】
図1に示した連結具の右側面を示した図である。
【
図5】
図1に示した連結具の底面を示した図である。
【
図7】
図6に示した足場板材のC−C断面を一部分について示した図である。
【
図9】本発明にしたがう連結具を用いて足場板材を連結する状況を示した図である。
【
図10】(a)(b)は、連結状態におかれた足場板材の平面とそのD−D断面を要部について示した図である。
【
図11】足場板材の取り外し状況を示した図である。
【
図12】本発明にしたがう連結具を足場板材の長手方向に沿って移動させる状況を示した図である。
【
図13】足場板材の取り外し状況を示した図である。
【
図14】(a)(b)は、従来の連結板を使用して足場板材同士を連結した場合の足場板材の変形状況を模式的に示した図である。
【
図15】本発明にしたがう連結具を使用して足場板材同士を連結した場合の足場板材の変形状況を模式的に示した図である。
【
図16】本発明にしたがう足場板材の連結構造を平面について示した図である。
【
図17】本発明にしたがう足場板材の連結構造を底面について示した図である。
【
図18】(a)〜(e)は、本発明にしたがう連結具の他の実施の形態を正面について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう足場板材の連結具の実施の形態を模式的に示した外観斜視図であり、
図2〜5は、
図1に示した連結具の正面(背面は正面と同一に現れる)、平面、右側面(左側面は右側面と同一に現れる)および底面をそれぞれ示した図であり、
図6は、
図1に示した連結具を用いて連結するのに好適な足場板材の外観斜視図であり、さらに、
図7は
図6のC−C断面を一部分について示した図である。
【0017】
なお、
図6に示した足場板材は、偏平矩形状をなす本体部分Aの幅方向に沿って延びる横長の絞り孔aを該本体部分Aの長手方向に間隔をおいて複数配列するとともに、該絞り孔aの相互間に滑り止め用の突起bを複数個設けたものを例として示してあるが、足場板材は、種々のものを用いることが可能であり、図示のものに限定されることはない。また、足場板材は、板厚0.8〜3.2mm程度の鋼板(一般構造用圧延鋼材(板)、溶融亜鉛めっき鋼板等)に、曲げ加工、プレス成形あるいは孔あけ加工を施すことにより製造されるものである。
【0018】
本発明にしたがう連結具は、足場板材の本体部分A、A′(
図9参照)の底壁面に沿って配置され、連結すべき足場板材の本体部分A、A′のそれぞれにおいて固定保持される連結具本体1と、該連結具本体1の幅方向の端縁に角度をもってそれぞれつながる一対の脚部2a、2bと、該一対の脚部2a、2bの各先端部につながるとともに該足場板材の本体部分A、A′の幅方向の端縁に形成された布板A1、A2、A1′、A2′のフランジ部F1、F2、F1′、F2′に接地する接地片3a、3bと、接地片3a、3bの端縁から布板A1、A2、A1′、A2′の内壁面に沿い足場板材の本体部分A、A′に向けて極わずかな隙間t(
図11参照)を隔てて立ち上がる側板4a、4bから構成されている。側板4a、4bはその端部(上端部)に、幅方向の内側に向けて屈曲するリップ4a1、4b1が設けられている。側板4a、4bの端部にリップ4a1、4b1を設ける理由は、足場板材と他の足場板材の接続部に荷重が加わった場合、リップ4a1、4b1が存在していないと、側板4a、4bと足場板材の本体部分Aとが点接触となり、強度的に弱い構造になることが懸念されるからである。リップ4a1、4b1は、側板4a、4bの立ち上がり壁に対して90°の角度で屈曲させるのが好ましい。
【0019】
連結具を構成する部材は、足場板材と同程度の材質、厚さからなる鋼板が使用され、一枚の板材にプレス加工を施すことにより連結具本体1、脚部2a、2b、接地片3a、3b、側板4a、4bおよびリップ4a1、4b1が一体形成された単一部材として製作される。
【0020】
上記の構成からなる連結具において、連結具本体1には、連結すべき足場板材のそれぞれに向けて開孔し、連結ボルトのねじ込みを可能とする少なくとも二つ開孔(めじねを有する開孔)5a、5bが形成されており(バーリング加工等によるもの)、接地片3a、3bには、足場板材の本体部分A、A′に面してそれぞれ開口され、しのの先端部の差込みを許容する少なくとも二つの抉り孔6a、6bが形成されている。開孔5a、5b、抉り孔6a、6bは、連結すべき足場板材の本体部分A、A′のそれぞれに対応する位置に設けられる。
【0021】
かかる連結具を足場板材に固定するには、縁部にフランジ7aを有し中央部に凹部7bが形成された、例えば
図8に示す如き矩形形状からなる当て板7を用いるのが好ましく、この当て板7を
図9に示すように、足場板材の本体部分A、A′の表面に絞り孔a、a′に面して配置するとともに、該当て板7の凹部7bの底壁に形成された開孔7cを通して連結ボルト8を差し入れ、連結具本体1の開孔5a、5bにねじ込めばよい。
【0022】
足場板材の連結構造を構成するには、一方の足場板材に本発明にしたがう連結具をその長手方向のほぼ半分程度が足場板材の端部から露出するように固定し、次いで、連結すべきもう一方の足場板材の長手方向の端部に、該一方の足場板材の端部から露出する部分を差し込むとともに当て板7、連結ボルト8を用いて連結具を足場板材に固定する。
【0023】
図10(a)(b)は、連結状態におかれた足場板材の平面とそのD−D断面を要部について示した図である。かかる足場板材の連結構造において、足場板材を取り外すには、連結ボルト8、当て板7による連結を解除するとともに、
図11に示すように、足場板材の本体部分A、A′に設けられた絞り孔a、a′を通して抉り孔6a、6bにしのの先端部を適宜差し込むとともに梃子の原理を利用して抉り、
図12に示す如く、連結具を足場板材の長手方向に沿って移動させればよい。これにより、足場板材の複数枚が既に敷き詰められていたとしても、
図13に示すように、任意の位置で足場板材を簡単に取り外すことができる。
【0024】
図14(a)(b)は、従来の連結板を適用して足場板材を連結した場合の連結部分を模式的に示したものである。従来の連結構造においては、連結部分で足場板材が撓み変形を起した場合、連結具からの荷重が足場板材のフランジ部F1、F2に伝達され、該布板A1、A2の下端において一体連結するフランジ部F1、F2が傾き、これに引きずられて連結板の側壁が内側に倒れ込んだり(
図14(a))、連結板の固定姿勢が不安定となって(
図14(b))連結板が足場板材から抜け出すおそれもあった。しかし、本発明にしたがう連結具は、
図15に示すように、連結具本体1が足場板材の本体部分A、A′の底壁面に当接しており、接地片3a、3bが足場板材のフランジ部F1、F2に接触した状態で足場板材に固定されることから、足場板材が撓み変形を起したとしても従来の連結板のように側板4a、4bが倒れ込んだり、固定姿勢が不安定になることはない。
【0025】
側板4a、4bと布板A1、A2の内壁面との間に、極僅かな隙間t(
図11参照)を設けておくことにより、
図16に示すように、足場板材をその軸芯L、L′が交差するような連結形態をとることも可能であり、これにより、トンネル工事等の湾曲部(R部)に対応した作業通路、作業スペースを設けることができる。なお、上記の隙間tが大きすぎると、連結具が足場板材から外れやすくなるので、該隙間tは、片側で1〜5mm程度、合計で2〜10mm程度とのするのが望ましい。側板4a、4bは、リップ4a1、4b1が足場板材の本体部分A、A′の底面に当接する高さに設定する。
【0026】
図17は、本発明にしたがう連結具を用いて足場板材同士を連結した連結構造につき、その底面を模式的に示した図である。本発明においては、連結具の長手方向の端部が位置する領域で足場板材の各布板A1、A2の間に梁部材9を差し渡して該梁部材9を溶接等の接合手段により布板A1、A2に接続しておくことも可能であり、これによれば、連結部分における強度をより一層高めることができる。
【0027】
図18(a)〜(e)は、本発明にしたがう連結具の他の例を示した図である。連結具の連結具本体1の幅寸法W、脚部2a、2bの長さH、傾斜角度θ、接地片3a、3bの幅寸法I等は、適宜変更することができる。
【0028】
連結具は、基本的には、足場板材に付加される荷重を、リップ4a1(4a1′)、4b1(4b1′)、接地片3a(3a′)、3b(3b′)において面で受けるのが好ましいが、上掲
図10(b)に示すような位置u1〜u2、u3〜u4、u1′〜u2′、u3′〜u4′で線状に荷重を受けるようにしてもよく、この点についてはとくに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明によれば、足場板材同士を高い強度のもとで連結可能な連結具およびその連結具を用いた連結構造が提供できる。
【符号の説明】
【0030】
1 連結具本体
2a、2b 脚部
3a、3b 接地片
4a、4b 側板
4a1、4a1′、4b1、4b1′ リップ
5a、5b 開孔
6a、6b 抉り孔
7 当て板
7a フランジ
7b 凹部
7c 開孔
8 連結ボルト
9 梁部材
A、A′ 本体部分
A1、A1′、A2、A2′ 布板
F1、F1′、F2、F2′ フランジ部
a、a′ 絞り孔
b、b′突起
t 隙間
L、L′ 足場板材の軸芯