特許第6893744号(P6893744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893744
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】シャフトアッセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/34 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   F16H61/34
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-230630(P2017-230630)
(22)【出願日】2017年11月30日
(65)【公開番号】特開2019-100425(P2019-100425A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【弁理士】
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】前田 英明
【審査官】 増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−61942(JP,A)
【文献】 特開平10−274329(JP,A)
【文献】 特開昭58−22718(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの動力が入力される手動変速機に設けられるシャフトアッセンブリであって、
中心軸線を中心とするシフト方向に回動可能かつ前記中心軸線に沿ったセレクト方向に移動可能に設けられるシフトアンドセレクトシャフトと、
前記シフトアンドセレクトシャフトに取り付けられて、前記シフトアンドセレクトシャフトの径方向に延びるシフトアウタレバーと、
前記シフトアウタレバーに設けられた慣性マスとを含み、
前記中心軸線の方向から見て、前記エンジンおよび前記手動変速機の弾性ロール軸と直交して前記シフトアンドセレクトシャフトの位置を通る直線上に、前記慣性マスの重心の位置が設定されている、シャフトアッセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動変速機(MT:Manual Transmission)に設けられるシャフトアッセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載される手動変速機には、運転者によるシフトノブ(シフトレバー)の操作に連動するシャフトアッセンブリが設けられている。
【0003】
シャフトアッセンブリは、コントロールカバーおよびシフトアンドセレクトシャフトを備えている。コントロールカバーは、トランスミッションケースに取り付けられる。シフトアンドセレクトシャフトは、コントロールカバーに対して軸線方向に移動可能かつ軸線まわりに回動可能に設けられている。
【0004】
シフトアンドセレクトシャフトの上端部は、コントロールカバーの外部に延出し、その上端部には、シフトアウタレバーが取り付けられている。また、コントロールカバーには、セレクトアウタレバーが設けられている。セレクトアウタレバーは、シフトアンドセレクトシャフトの軸線方向と直交する方向(径方向)に延びる軸線まわりに回動可能に設けられている。シフトアウタレバーおよびセレクトアウタレバーには、それぞれシフトケーブルおよびセレクトケーブルの一端が接続されている。シフトケーブルおよびセレクトケーブルの各他端は、運転者によって操作されるシフトノブに連結されている。
【0005】
シフトノブのセレクト操作が行われると、そのセレクト操作力がセレクトケーブルを介してセレクトアウタレバーに伝達され、セレクトアウタレバーが回動することにより、シフトアンドセレクトシャフトが軸線方向(セレクト方向)に移動する。また、シフトノブのシフト操作が行われると、そのシフト操作力がシフトケーブルを介してシフトアウタレバーに伝達され、シフトアウタレバーが回動することにより、シフトアンドセレクトシャフトが軸線まわり(シフト方向)に回動する。これらの動作により、シフトフォークが選択的に移動され、手動変速機のギヤの噛み合い状態が変更されて、シフトノブのセレクト操作およびシフト操作に応じた変速段が構成される。
【0006】
シフトアウタレバーの先端部には、シフトアウタレバーの回動にイナーシャを付与するための慣性マス(錘)が設けられている。シフトノブのシフト操作時に、シフトアウタレバーの回動に伴って、慣性マスがシフトアンドセレクトシャフトの軸線を中心に回動する。このとき、慣性マスに生じる慣性力がシフトアンドセレクトシャフトの回動に作用し、シフト操作の操作フィーリング(シフトフィーリング)が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015−4392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、慣性マスを設けた構成では、シフトフィーリングの向上の背反として、シャフトアッセンブリの振動によるシフトアウタレバーの揺動の問題がある。シフトアウタレバーが揺動すると、その揺動がシフトケーブルを介してシフトレバーに伝達され、シフトレバー(シフトノブ)が振動する。シフトレバーの振動(ノブ振動)は、運転者や同乗者によっては不快に感じてしまう。
【0009】
本発明の目的は、慣性マスを設けることによるシフトフィーリングの向上を図りつつ、ノブ振動を低減できる、シャフトアッセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するため、本発明に係るシャフトアッセンブリは、エンジンからの動力が入力される手動変速機に設けられるシャフトアッセンブリであって、中心軸線を中心とするシフト方向に回動可能かつ中心軸線に沿ったセレクト方向に移動可能に設けられるシフトアンドセレクトシャフトと、シフトアンドセレクトシャフトに取り付けられて、シフトアンドセレクトシャフトの径方向に延びるシフトアウタレバーと、シフトアウタレバーに設けられた慣性マスとを含み、中心軸線の方向から見て、エンジンおよび手動変速機の弾性ロール軸と直交してシフトアンドセレクトシャフトの位置を通る直線上に、慣性マスの重心の位置が設定されている。
【0011】
この構成によれば、シフトアンドセレクトシャフトには、シフトアウタレバーが取り付けられている。シフトアウタレバーには、慣性マスが設けられている。シフトアウタレバーに慣性マスが設けられることにより、シフトアウタレバーの回動にイナーシャを付与することができ、シフトフィーリングが向上する。
【0012】
そして、慣性マスの重心の位置は、中心軸線の方向から見て、エンジンおよび手動変速機の弾性ロール軸と直交してシフトアンドセレクトシャフトの位置を通る直線上に設定されている。そのため、エンジンおよび手動変速機が弾性ロール軸まわりに振動したとしても、シフトアウタレバーがシフトアンドセレクトシャフトを中心に揺動することを抑制できる。その結果、ノブ振動を低減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、慣性マスを設けることによるシフトフィーリングの向上を図りつつ、ノブ振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係るシャフトアッセンブリを備える手動変速機が搭載された車両の前部の構成を示す平面図である。
図2】シャフトアッセンブリの平面図である。
図3】シャフトアッセンブリを上下方向に延びる切断面で切断した断面図である。
図4図3に示される切断面線IV−IVにおけるシャフトアッセンブリの断面図である。
図5】カム/ガイド部材の斜視図である。
図6】カム/ガイド部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
<車両の前部>
図1は、本発明の一実施形態に係るシャフトアッセンブリ6を備える手動変速機3が搭載された車両1の前部の構成を示す平面図である。
【0017】
車両1は、エンジン2および手動変速機3を搭載した四輪自動車であり、FF(Front-engine Front-wheel-drive:フロントエンジン・フロントドライブ)方式を採用している。エンジン2および手動変速機3は、一体化されて、車両1の前部のエンジンコンパートメントに、車両1の前後方向に対してエンジンのクランクシャフトが横向きになる横置きで配置されている。そして、その一体化されたエンジン2および手動変速機3は、車両1の左右一対のサイドフレーム4L,4Rにそれぞれ防振マウント5L,5Rを介して支持されている。
【0018】
<シャフトアッセンブリ>
図2は、シャフトアッセンブリ6の平面図である。図3は、シャフトアッセンブリ6を上下方向に延びる切断面で切断した断面図である。図4は、図3に示される切断面線IV−IVにおけるシャフトアッセンブリ6の断面図である。
【0019】
手動変速機3には、シャフトアッセンブリ6が備えられている。シャフトアッセンブリ6は、コントロールカバー11、シフトアンドセレクトシャフト12、シフトアウタレバー13およびセレクトアウタレバー14(図3参照)を備えている。
【0020】
コントロールカバー11は、下側に開放された略ハット形状に形成されている。コントロールカバー11の下端部は、図1に示されるように、手動変速機3の外殻をなすトランスミッションケース15に形成された開口を取り囲む周囲に上側から当接されて、トランスミッションケース15にボルト16で締結される。
【0021】
シフトアンドセレクトシャフト12は、図3に示されるように、その中心軸線Cが上下方向に延びるように設けられている。また、シフトアンドセレクトシャフト12は、コントロールカバー11を貫通して、コントロールカバー11に対して、中心軸線Cを中心とするシフト方向に回動可能、かつ中心軸線Cに沿ったセレクト方向に移動可能に設けられている。シフトアンドセレクトシャフト12の上端部は、コントロールカバー11の外部に配置され、下端部は、トランスミッションケース15内に配置されている。
【0022】
シフトアウタレバー13は、その一端部がシフトアンドセレクトシャフト12の上端部に固定され、シフトアンドセレクトシャフト12の径方向(以下、単に「径方向」という。)に延びている。シフトアウタレバー13の先端部には、慣性マス21が取り付けられている。シフトアウタレバー13の途中部には、シフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線C上から外れた位置に、棒状のケーブル接続部22が立設されている。ケーブル接続部22には、図1に示されるように、シフトケーブル23の一端が接続され、シフトケーブル23の他端は、運転者により操作されるシフトレバー(シフトノブ)24に接続されている。シフトレバー24は、車室内に配設されている。
【0023】
セレクトアウタレバー14は、コントロールカバー11の外部に配置され、径方向に延びる回動軸25の一端部に固定されている。回動軸25は、コントロールカバー11の側面を貫通し、コントロールカバー11に対して回動可能に設けられている。回動軸25の他端部には、操作部材26が固定されている。操作部材26は、シフトアンドセレクトシャフト12と係合している。セレクトアウタレバー14には、回動軸25と平行に延びる棒状のケーブル接続部27が設けられている。ケーブル接続部27には、セレクトケーブル28(図1参照)の一端が接続され、セレクトケーブル28の他端は、シフトレバー24に接続されている。また、回動軸25には、1本の金属線材を巻回および屈曲させることにより形成されるトーションスプリング29が外装されている。トーションスプリング29は、シフトアンドセレクトシャフト12がシフトレバー24のニュートラルの位置に対応する位置からセレクト方向に移動したときに、シフトアンドセレクトシャフト12を元の位置に戻そうとする弾性力を回動軸25に付与する。
【0024】
シフトレバー24のセレクト操作が行われると、そのセレクト操作力がセレクトケーブル28を介してセレクトアウタレバー14に伝達され、セレクトアウタレバー14が回動することにより、シフトアンドセレクトシャフト12がセレクト方向に移動する。シフトレバー24のシフト操作が行われると、そのシフト操作力がシフトケーブル23を介してシフトアウタレバー13に伝達され、シフトアウタレバー13が回動することにより、シフトアンドセレクトシャフト12が中心軸線Cを中心にシフト方向に回動する。
【0025】
<カム/ガイド部材>
図5は、カム/ガイド部材31の斜視図である。図6は、カム/ガイド部材31の断面図である。
【0026】
コントロールカバー11の内側には、図4に示されるように、カム/ガイド部材31が設けられている。カム/ガイド部材31は、外嵌部材32、シフトカム33およびシフトアンドセレクトガイド34を一体に備えている。
【0027】
外嵌部材32は、略円筒状を有し、図3に示されるように、シフトアンドセレクトシャフト12に外嵌されている。外嵌部材32には、ピン挿通孔35が側面を貫通して形成されている。外嵌部材32は、ピン挿通孔35がシフトアンドセレクトシャフト12に形成されたピン挿通孔(図示せず)と重なるように位置合わせされて、ピン挿通孔35およびシフトアンドセレクトシャフト12のピン挿通孔に跨がってグローブピン36が挿通されることにより、シフトアンドセレクトシャフト12に固定的に(シフトアンドセレクトシャフト12に対して軸線方向および回動方向に変位不能に)取り付けられている。
【0028】
シフトカム33は、シフトアンドセレクトシャフト12側と反対側を向き、シフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線Cからの径方向の距離がシフト方向の位置により変化するカム面41を有している。カム面41は、中心軸線C側に凹状をなす凹面42と、凹面42のシフト方向の両側で凹面42から離れるにつれてシフトアンドセレクトシャフト12に近づくように延びる平面からなる斜面43,44とを含む。
【0029】
シフトカム33と径方向に対向する位置には、図4に示されるように、カム当接部材51が設けられている。カム当接部材51は、略円筒状の外筒部材52と、外筒部材52内に移動可能に設けられた移動部材53と、移動部材53を外筒部材52の開口側に付勢する付勢部材54と、付勢部材54の付勢力によりシフトカム33のカム面41に弾性的に当接するボール55とを備えている。外筒部材52は、コントロールカバー11の側面に形成された開口56にコントロールカバー11の外側から挿入されて、コントロールカバー11に保持されている。
【0030】
シフトレバー24がニュートラルの位置に位置する状態では、ボール55がカム面41の凹面42の最奥部に当接するように、シフトカム33およびカム当接部材51の相対位置が決められている。シフトレバー24のシフト操作により、シフトアンドセレクトシャフト12がシフト方向に回動し、ボール55が凹面42の最奥部から凹面42上を斜面43,44の一方に向けて移動すると、ボール55が凹面42に押圧されて、付勢部材54が圧縮される。凹面42には、その反力が付与される。ボール55が凹面42と斜面43,44との境界を乗り越えるまで、ボール55から凹面42に付与される反力が増大し、これに伴い、シフトアンドセレクトシャフト12を回動させるシフト操作の荷重が増大する。そして、ボール55が凹面42と斜面43,44との境界を乗り越えると、ボール55からシフトカム33に付与される反力が急激に低減し、これに伴い、シフトアンドセレクトシャフト12を回動させるシフト操作の荷重が低減する。
【0031】
このように、シフトカム33およびカム当接部材51は、シフトアンドセレクトシャフト12を回動させるシフト操作の荷重を変化させるディテント機構を構成している。
【0032】
カム面41を径方向に沿って切断したときの断面形状には、図5に示されるように、上側ほどシフトアンドセレクトシャフト12側と反対側に位置するように傾斜して延びる第1線分61と、第1線分61の下方で中心軸線Cと平行に延びる第2線分62とが含まれる。そして、中心軸線Cに対する第1線分61の傾斜角αは、中心軸線Cに対する第2線分62の傾斜角βよりも大きい。なお、この実施形態では、第2線分62が中心軸線Cと平行に延びているので、中心軸線Cに対する第2線分62の傾斜角βは0°である。
【0033】
シフトアンドセレクトガイド34は、側面視で略矩形状の外形を有している。シフトアンドセレクトガイド34の外周面には、ガイド溝71が形成されている。ガイド溝71は、シフトレバー24の操作をガイドするためのシフトゲートに対応した形状に形成されている。
【0034】
具体的には、ガイド溝71は、図5に示されるように、セレクト方向に延びるセレクト溝部72と、セレクト溝部72の一端からシフト方向の両側に延びる第1シフト溝部73と、セレクト溝部72の中央からシフト方向の両側に延びる第2シフト溝部74と、セレクト溝部72の他端からシフト方向の両側に延びる第3シフト溝部75とを有している。
【0035】
シフトアンドセレクトガイド34と径方向に対向する位置には、図4に示されるように、ガイドピン81が設けられている。ガイドピン81は、コントロールカバー11の側面に形成された開口82に挿通されて、コントロールカバー11に保持されている。ガイドピン81の先端部83は、ガイド溝71の溝幅よりも小さい直径の円柱状に形成されており、ガイド溝71に挿入されている。
【0036】
シフトレバー24がニュートラルの位置に位置する状態では、ガイドピン81の先端部83がセレクト溝部72と第2シフト溝部74との交差点に位置する。シフトレバー24がニュートラルの位置からセレクト操作されると、ガイドピン81の先端部83がセレクト方向に移動する。
【0037】
シフトレバー24がニュートラルの位置から1速段の位置に操作されると、ガイドピン81の先端部83は、セレクト溝部72から第1シフト溝部73の一方の端部84に移動する。
【0038】
シフトレバー24がニュートラルの位置から2速段の位置に操作されると、ガイドピン81の先端部83は、セレクト溝部72から他方の端部85に移動する。
【0039】
シフトレバー24がニュートラルの位置から3速段の位置に操作されると、ガイドピン81の先端部83は、セレクト溝部72から第2シフト溝部74の一方の端部86に移動する。
【0040】
シフトレバー24がニュートラルの位置から4速段の位置に操作されると、ガイドピン81の先端部83は、セレクト溝部72から他方の端部87に移動する。
【0041】
シフトレバー24がニュートラルの位置から5速段の位置に操作されると、ガイドピン81の先端部83は、セレクト溝部72から第3シフト溝部75の一方の端部88に移動する。
【0042】
シフトレバー24がニュートラルの位置からリバースの位置にシフト操作されると、ガイドピン81の先端部83は、セレクト溝部72から第3シフト溝部75の他方の端部89に移動する。
【0043】
<慣性マスの重心位置>
シフトレバー24が3速段の位置と4速段の位置との間でニュートラルの位置を経由してシフト操作されると、シフトアウタレバー13が回動して、シフトアンドセレクトシャフト12が中心軸線Cを中心にシフト方向に回動する。これに伴い、慣性マス21は、図1に示されるように、シフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線Cを中心に、所定の回動範囲内、つまりシフトレバー24が3速段の位置にあるときの慣性マス21の位置とシフトレバー24が4速段の位置にあるときの慣性マス21の位置との間の範囲内で回動する。
【0044】
そして、慣性マス21がその回動範囲内の所定位置(この実施形態では、ニュートラルの位置)に位置するときに、一体化されたエンジン2および手動変速機3の弾性ロール軸91と直交してシフトアンドセレクトシャフト12の位置を通る直線92上に、慣性マス21の重心が位置するように、慣性マス21の重量、サイズおよびシフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線Cからの距離などが設計されている。
【0045】
<作用効果>
以上のように、シフトアンドセレクトシャフト12は、その中心軸線Cが上下方向に延びるように設けられている。また、シフトアンドセレクトシャフト12は、コントロールカバー11に対して、その中心軸線Cを中心とするシフト方向に回動可能かつ中心軸線Cに沿ったセレクト方向に移動可能に設けられている。車室内に設けられたシフトレバー24がシフト操作されると、シフトアンドセレクトシャフト12がシフト方向に回動し、シフトレバー24がセレクト操作されると、シフトアンドセレクトシャフト12がセレクト方向に移動する。
【0046】
シフトアンドセレクトシャフト12と一体的に回動するように、シフトカム33が設けられている。シフトカム33には、シフトアンドセレクトシャフト12側と反対側に向いたカム面41が形成されている。カム面41には、カム当接部材51が弾性的に当接している。カム面41を中心軸線Cおよびシフトアンドセレクトシャフト12の径方向に沿って切断したときの断面形状には、上側ほどシフトアンドセレクトシャフト12側と反対側に位置するように傾斜して延びる第1線分61と、第1線分61の下方で中心軸線Cと平行または下側ほどシフトアンドセレクトシャフト12側と反対側に位置するように傾斜して延びる第2線分62とが含まれる。
【0047】
そのため、セレクト操作の方向がシフトアンドセレクトシャフト12を下降させる方向、つまりニュートラルの位置から1速段および2速段の位置側に向かう方向であるときには、カム面41の第1線分61を含む部分がカム当接部材51に当接して、当該部分がカム当接部材51から反力(以下、「第1反力」という。)を受ける。この第1反力には、上方向の力成分が含まれる。一方、セレクト操作の方向がシフトアンドセレクトシャフト12を上昇させる方向、つまりニュートラルの位置から5速段およびリバースの位置に向かう方向であるときには、カム面41がカム当接部材51から反力を受けない。
【0048】
これにより、シフトアンドセレクトシャフト12を下降させる方向のセレクト操作の荷重をとくに増大させることができ、その結果として、セレクト操作の方向によって生じるセレクト操作の荷重差を縮小することができる。
【0049】
シフトアンドセレクトシャフト12にシフトアウタレバー13が取り付けられ、シフトアウタレバー13に慣性マス21が設けられている。これにより、シフトレバー24のシフト操作により、シフトアウタレバー13およびシフトアンドセレクトシャフト12が一体に回動するときに、慣性マス21がシフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線Cを中心に回動する。このとき、慣性マス21に生じる慣性力がシフトアンドセレクトシャフト12の回動に作用し、シフト操作の操作フィーリング(シフトフィーリング)が向上する。ところが、慣性マス21が設けられると、慣性マス21の重量がシフトアンドセレクトシャフト12に加わるため、セレクト操作の方向による荷重差が大きくなりやすい。したがって、慣性マス21が設けられる構成では、カム面41が第1線分61および第2線分62を含む断面形状を有する構成がとくに効果を発揮する。
【0050】
また、慣性マス21の重心の位置は、中心軸線Cの方向から見て、エンジン2および手動変速機3の弾性ロール軸91と直交してシフトアンドセレクトシャフト12の位置を通る直線92上に設定されている。そのため、エンジン2および手動変速機3が弾性ロール軸91を中心に振動(往復回動)したとしても、シフトアウタレバー13がシフトアンドセレクトシャフト12を中心に揺動することを抑制できる。その結果、シフトレバー24の振動(ノブ振動)を低減することができる。
【0051】
カム面41は、シフトアンドセレクトシャフト12の中心軸線C側に凹状をなす凹面42と、凹面42に対するシフト方向の両側で凹面42から離れるにつれてシフトアンドセレクトシャフト12に近づくように延びる斜面43,44とを含む。これにより、シフトアンドセレクトシャフト12がシフト方向に回動されると、カム当接部材51が凹面42の一端または他端を乗り越えて斜面43,44に至る。そのため、カム当接部材51が凹面42の一端または他端を乗り越えるときに、シフト操作の荷重が最大となり、カム当接部材51が凹面42の一端または他端を乗り越えると、シフト操作の荷重が急激に低減し、シフトレバー24がシフト操作の方向に吸い込まれる感覚(シフトレバー24の吸い込み感)を運転者に与えることができる。
【0052】
<変形例>
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
【0054】
たとえば、前述の実施形態では、第2線分62が中心軸線Cと平行に延びて、中心軸線Cに対する第2線分62の傾斜角βは0°である場合を例にとって、セレクト操作の方向がシフトアンドセレクトシャフト12を上昇させる方向であるときには、カム面41がカム当接部材51から反力を受けないとした。しかしながら、中心軸線Cに対する第2線分62の傾斜角βが0°よりも大きい場合には、セレクト操作の方向がシフトアンドセレクトシャフト12を上昇させる方向であるときには、カム面41がカム当接部材51から反力を受ける。この場合においても、中心軸線Cに対する第1線分61の傾斜角αは、中心軸線Cに対する第2線分62の傾斜角βよりも大きいので、第1反力に含まれる上方向の力成分は、第2反力に含まれる下方向の力成分よりも大きくなる。よって、シフトアンドセレクトシャフト12を下降させる方向のセレクト操作の荷重をとくに増大させることができ、その結果として、セレクト操作の方向によって生じるセレクト操作の荷重差を縮小することができる。
【0055】
また、前述の実施形態では、シフトレバー24がニュートラルの位置に位置するときの慣性マス21の重心が、弾性ロール軸91と直交してシフトアンドセレクトシャフト12の位置を通る直線92上に位置するとした。しかしながら、シフトレバー24が3速段の位置と4速段の位置との間に位置するときの慣性マス21の重心が、弾性ロール軸91と直交してシフトアンドセレクトシャフト12の位置を通る直線92上に位置すればよい。ただし、強いて言うならば、シフトレバー24がニュートラルの位置または3速段の位置に位置するときの慣性マス21の重心が、弾性ロール軸91と直交してシフトアンドセレクトシャフト12の位置を通る直線92上に位置することが好ましい。
【0056】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0057】
2:エンジン
3:手動変速機
6:シャフトアッセンブリ
12:シフトアンドセレクトシャフト
13:シフトアウタレバー
21:慣性マス
91:弾性ロール軸
92:直線
C:中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6