(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893746
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】重機の遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20210614BHJP
B64D 47/08 20060101ALI20210614BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20210614BHJP
B64C 39/02 20060101ALN20210614BHJP
【FI】
E02F9/26 A
B64D47/08
H04N7/18 J
!B64C39/02
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-87977(P2018-87977)
(22)【出願日】2018年5月1日
(65)【公開番号】特開2019-194393(P2019-194393A)
(43)【公開日】2019年11月7日
【審査請求日】2018年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】517396652
【氏名又は名称】立花 純江
(72)【発明者】
【氏名】利元 道隆
【審査官】
柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/099070(WO,A1)
【文献】
特開2017−071991(JP,A)
【文献】
特開2016−181119(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3208973(JP,U)
【文献】
国際公開第2015/180180(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
B64D 47/08
H04N 7/18
B64C 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
持ち運び自由な遠隔操作装置で直接操縦させる重機と、前記重機の上空を飛行する飛行体に取り付けられた撮像
装置が撮影した映像を前記遠隔操作装置に直接送信する前記飛行体において、前記遠隔操作装置は、前記飛行体の操作と前記重機の操作を行う事ができる操作部と、前記飛行体から送信された前記重機と周辺状況が確認できる映像を表示する表示部とを持ち、前記重機の旋回部の回転角度に相応する回転データを前記飛行体に送信することで、前記飛行体を前記重機にシンクロして回転させることで、前記飛行体の位置を特定することを可能とする前記遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーショベルやブルドーザといった重機の遠隔操作を可能とする、いわゆる、無線によるリモートコントローラ(以下、リモコンと記す)に関するもので、その重機の上空に同じく無線で操作する飛行体を飛ばし、飛行体から撮影された映像を、前記リモコンに表示させる。
【背景技術】
【0002】
日本を含む世界各地で発生する自然災害では、発生直後に重機を導入する際、二次災害が懸念される。そこで、重機を遠方からリモコンで操作するが、災害現場を俯瞰することが困難なため、作業に困難を来たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2017/131194A1号 「ショベル及びショベルの周囲を飛行する自律式飛行体」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、飛行体に取り付けられた撮像装置で撮影した映像を、複数のショベルに送信し、ショベルの運転者が映像を確認できるメリットはあるものの、二次災害の観点からは非常に危険である。また、飛行体を操作する人間が別途必要であり、ショベルの運転者の知りたい映像が必ずしも、リアルタイムで送信される訳ではなく、操作精度が低下する。
【0005】
そこで、本発明の目的は、特許文献1とは異なる、2次災害を回避することに主眼を置いている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はでは上記課題を解決するために、飛行体に取り付けられた撮像装置で撮影した映像を、重機ではなく、重機を操作しているリモコンに送信することで、重機は無人で操作され、2次災害を防止する。重機をリモコンで操作する操縦者は、飛行体から送信される重機周辺の映像を、リモコンにある表示部で確認しながら、重機を操縦することができる。
【0007】
さらには、飛行体と重機の位置関係をシンクロさせることで、重機の動きに合わせて、飛行体も同じ方向に同じ距離だけ移動するため、操縦者は重機を操縦することにだけ、専念できる。もちろん、重機の操作に当たって、前もって飛行体を飛行させて、重機の周辺の地形など確認するために、飛行体のみをリモコンで操作し、重機とのシンクロ位置を事前に確定させることが重要となる。重機と飛行体のシンクロ方法は、シンクロを実行する前のリモコンと重機の距離及びリモコンと飛行体との距離で確定される。
【発明の効果】
【0008】
上述した本発明によると、重機と飛行体を1つのリモコンで、それぞれシンクロさせた状態で操縦することで、2次災害を防ぎ、且つ、精度が高く、効率の良い重機の操縦を行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のリモコンによる重機と飛行体の位置関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係わる重機と飛行体を操作するリモコンの関係を示す。
【実施例】
【0011】
以下本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は操縦者が、リモコン100を操作して、重機102、及び飛行体101を操作している関係図であり、2次災害の恐れのある場合、操縦者が重機102に乗り、操作できないため、リモコン100で重機102を操作する。また、重機102の周辺の地形や、崩落した土砂の状況などを俯瞰する手助けとして、撮像部いわゆる、カメラ機能搭載のドローンなど飛行体101を重機102の活動範囲の上空に飛ばして、重機102の操作補助を行うものである。リモコン100には、表示部202があり、飛行体101が撮像した映像がリアルタイムで表示される。重機102は、駆動部404として、前進や後退を行うクローラからなる下部走行部103、その上に載っている運転室やエンジン部がある上部旋回部104、その上部旋回部に取り付けられたブーム105とアーム106、そしてアーム106の先端に取り付けられたバケット107からなる。
【0012】
図2は、リモコン100の機能ブロック図であり、重機の操作を行う、重機操作部205を操作することで、重機102は、前進、後退、回転といった動作や、ショベルで土砂をすくうといった通常の重機の操作をリモコンで行う事ができる。また、飛行体101を操作する飛行体操作部206を操作することで、飛行体101を浮かし、任意の位置まで移動させ、確認したい位置まで来ると、飛行体101を空中静止状態(以下、ホバリングと記す)とし、重機102の周辺状況の映像をリモコン100の表示部に映す。もちろん、重機102の操作が容易になるために、撮像される映像をズームアップしたり、広角にすることは可能である。次に、重機102と飛行体101のシンクロ方法について、説明する。
【0013】
先ず、重機102をリモコン100で操作し、作業開始を行う位置まで移動させる。この時の下部走行部103及び上部旋回部104の重機102の位置を基準点として、リモコン200の記憶部207に記憶させる。次に、飛行体101を操作し、重機102と周辺状況が確認できる映像を表示部202に表示させた位置を飛行体101の基準点としてリモコン200の記憶部207に記憶させる。それぞれの基準点を設定することで、シンクロが可能となる。例えば、重機102の基準点からリモコン100で重機102を前進させると、重機102の下部走行部103のクローラの動いた距離を移動距離計算部204が、実際にどれだけ動いたか計測する。次に、実際に動いた距離に相当する距離データが、重機102と飛行体101との位置相関データベース部208で、飛行体101が同じ距離だけ移動するデータとして検出され、制御部201は、その距離分だけ、飛行体101を移動させるために飛行体101の操作部206に指示し、飛行体101も重機102と同じ距離分移動する。
【0014】
同様に、重機102の上部旋回部104が、基準点から右に60度旋回すると、移動距離計算部204がその回転度を計算し、その回転度に匹敵する飛行体の回転データを、重機と飛行体との距離相関データベース部から検出し、その回転度に相当するデータを飛行体操作部206に送信することで、飛行体101も同様に右に60度旋回する。これにより、重機102の下部走行部103の移動距離及び上部旋回部104の回転度にシンクロして飛行体101が移動する。
【0015】
また、重機102の作業場所が崖や山の急斜面である場合、重機102の移動により、飛行体101との距離が急接近する、あるいは遠くなるという場合もあり、飛行体101の撮影距離が不安定になる。そこで、重機102は、基準点からどれだけ、高度が変化したかを測定する高度検出部407により、高度変化分をリモコン100に送信し、リモコン100の移動距離計算部204が変化分の高度データを計算すると、重機102と飛行体101との距離相関データベース部208で高度の変化分を検出し、飛行体操作部206がその変化分だけ、飛行体101の高度を自動で変化させる。
【0016】
これにより、リモコン100を操作する操縦者は飛行体101の操作に気を遣うことなく、重機102の操作に集中することができる。
もちろん、飛行体101のシンクロは、重機102の下部走行部103のみ、あるいは上部旋回部104のみに限定される事も可能である。
さらに、重機102の向きを変えるたびに、飛行体101が撮影する画像が変わると重機102の操縦が難しくなることもあり、重機102と飛行体101とのシンクロをルーズに可変できる。
【0017】
図3は飛行体101の機能ブロック図であり、リモコン100との間で電波を送受信する送受信部302、飛行体のプロペラなどを動かす起動部303、その駆動部303の動力となる動力部304、飛行体101から撮影する撮像部305からなり、それらを制御部301が制御する。カメラ付きドローンの構成と同様である。
【0018】
図4は重機102の構造ブロック図であり、リモコン100との間で電波を送受信する送受信部402、重機102を実際に操作する操作部403、エンジンなど重機の駆動部404、一般にキャタピラと呼ばれる下部走行部位置検出部405、上部旋回部位置検出部406からなり、制御部401が制御する。
【0019】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更出来る事は勿論である。
例えば、重機102と飛行体101とのシンクロ方法であるが、リモコン100で重機102を撮影し、飛行体101に前もって重機の映像データを形状データとして、形状記憶部308に記憶させる。リモコン100で重機102を移動させ、飛行体101が撮影する重機102の形状が、形状記憶部308に記憶させた画像データと規定値以上差分があると、形状認識部306が、差分補正を行うために、飛行体101の位置を変える。飛行体101が撮影する重機102の形状が差分以内に収まると、飛行体101は停止状態となり、シンクロが完了する。
【0020】
また、飛行体101及び重機102にGPS機能を持たせ、お互いに位置情報をリモコン100に送信する。リモコン100はそれぞれのGPS情報をGPS位置相関部210で解析し、現在の重機102と飛行体101の相関位置を確定する。この状態から、重機102が移動すると、重機のGPS機能部から送られるGPS情報と、以前確定したGPS情報とに差分が生じる。すると、リモコン100の重機と飛行体との距離相関データベース部208で差分に相当するGPS情報がリモコン100から飛行体101に送信され、飛行体101の差分データ解析部で移動する情報が駆動部303に送られ、重機102に追従し、シンクロが完了する。
【0021】
上記例は、重機が高度を変えて移動しても、形状認識方法は、対応可能であり、飛行体101は、形状認識のために、高度を変えることは言うまでもない。また、GPS情報には高度情報も含まれるために、重機102の高低移動にも十分対応する。
それ以外にも、飛行体101から、重機に対して赤外線を当て、その反射光から重機102の位置を認識する方法や、重機102から重機を特定する電波を飛行体101に照射し、飛行体101はその電波を受信できる範囲で飛行する方法もある。
【産業上の利用可能性】
【0022】
上述の発明は、2次災害の危険がある場所での、重機のリモコン操作の画期的な作業効率アップに利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
100リモコン 101飛行体 102重機 103下部走行部 104上部旋回部 105ブーム 106アーム 107バケット
201制御部 202表示部 203送受信部 204移動距離計算部 205重機操作部 206飛行体操作部 207記憶部
208重機と飛行体との距離相関データベース部 209動力部 210GPS位置相関検出部 301制御部 302送受信部
303駆動部 304動力部 305撮像部 306形状認識部 307GPS機能部 308形状記憶部 309差分データ解析部401制御部 402送受信部 403操作部 404駆動部 405下部走行部位置検出部 406上部旋回部位置検出部 407高度検出部 408GPS機能部