特許第6893791号(P6893791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

6893791医療用連結器及びその医療用連結器を用いた医療用システム
<>
  • 6893791-医療用連結器及びその医療用連結器を用いた医療用システム 図000002
  • 6893791-医療用連結器及びその医療用連結器を用いた医療用システム 図000003
  • 6893791-医療用連結器及びその医療用連結器を用いた医療用システム 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893791
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】医療用連結器及びその医療用連結器を用いた医療用システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/10 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   A61M39/10 100
   A61M39/10 110
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-7570(P2017-7570)
(22)【出願日】2017年1月19日
(65)【公開番号】特開2017-148493(P2017-148493A)
(43)【公開日】2017年8月31日
【審査請求日】2019年10月21日
(31)【優先権主張番号】10 2016 101 911.9
(32)【優先日】2016年2月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515143739
【氏名又は名称】ビー.ブラウン アビタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ シュテンツェル
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン ブレッゲル
(72)【発明者】
【氏名】ウタ ルートビヒ
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2009/0188575(US,A1)
【文献】 特表2011−525596(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/039501(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
A61M 1/36
F16L 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療機器における二つの液体ガイド部分(16、24、24′)を液密の状態で結合する医療用連結器であって、
前記医療用連結器は軸方向においてロック可能であり、すぐに連結可能な連結器であり、
前記医療用連結器は、連続する第一通路(10、10′、10″)を有する雄連結器部分(6、6″)と、前記雄連結器部分(6、6″)に対して嵌合するようになっており、かつ、連続する第二通路(26、38)を有する雌連結器部分(4、4″、34)と、を備えており、
前記雄連結器部分(6、6″)および前記雌連結器部分(4、4″、34)は相互に係合し、
前記雄連結器部分(6、6″)の外周及び/または前記雌連結器部分(4、4″、34)の内周には半径方向円周シール(20)が設けられており、
前記雄連結器部分(6、6″)は、前記雌連結器部分(4、4″、34)の少なくとも一つのスナップフック(28)と係合する円周溝(18)を備えており、
前記雄連結器部分(6、6″)は、前記雄連結器部分(6、6″)の端部に形成されたストップまたはショルダ(22)を含み、
前記ストップまたは前記ショルダ(22)は半径方向外側に延び、前記雌連結器部分(4、4″、34)の軸方向への動きを制限して、前記スナップフック(28)が前記円周溝(18)からすべり出して前記円周溝(18)から外れないように形成されていることを特徴とする
医療用連結器。
【請求項2】
前記雄連結器部分(6、6″)は医療用機器(16)と一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の医療用連結器。
【請求項3】
前記雄連結器部分(6、6″)は第一係止部分(8)を備えており、前記雄連結器部分(6、6″)は前記第一係止部分(8)を介して医療用機器(16)と結合されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の医療用連結器。
【請求項4】
前記雄連結器部分(6、6″)の前記第一係止部分(8)は雌内部コーン(12)を備えているルアーロックであり、このルアーロックは、雄外部コーンを備えている前記医療用機器(16)のルアーロックに連結可能であることを特徴とする請求項3に記載の医療用連結器。
【請求項5】
前記雌連結器部分(4、4″)は液体流路(24)と一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の医療用連結器。
【請求項6】
前記雌連結器部分(34)は第2係止部分(36)を備えており、
前記雌連結器部分(34)は前記第2係止部分(36)を介して液体流路(24)に係止可能であるようになっていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の医療用連結器。
【請求項7】
前記雌連結器部分(34)の前記第2係止部分(36)は雄内部コーン(40)を備えるルアーロックであり、このルアーロックは、前記液体流路(24)の雌内部コーン(44)を備えるルアーロックに連結可能であることを特徴とする請求項6に記載の医療用連結器。
【請求項8】
前記雄連結器部分(6″)及び前記雌連結器部分(4″)は取り外し器具(48)により相互に取り外し可能であることを特徴とする請求項1乃至の何れか一項に記載の医療用連結器。
【請求項9】
第一の液体流路(24、24′)と、
医療用機器(16)及び/または第二の液体流路と、
を備える医療用システムであって、
前記第一の液体流路(24、24′)の内部には第一通路(26、26′)が設けられ、前記医療用機器(16)及び/または前記第二の液体流路の内部には第二通路(10、10′、10″)が設けられ、
前記第一の液体流路(24、24′)と前記医療用機器(16)及び/または前記第二の液体流路とは、請求項1乃至の何れか一項に記載の医療用連結器を介して、前記第一通路(26、26′)及び前記第二通路(10、10′、10″)が相互にシーリングし合うように、相互に連結可能である医療用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器における二つの液体ガイド部分を液密の状態で結合する医療用連結器に関する。この医療用連結器は、体外血管システムを体外血流処理装置や透析装置に結合することを可能にするものである。本発明は、さらに、この医療用連結器を備える医療用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体外血液処理療法やその他の腎臓置換療法においては、患者から取り出された血液は患者の体外において連続的に透析装置を介して循環された後、再び患者に戻される。このためには、患者の血液を運ぶ体外血流システムを透析装置に結合することが必要になる。この結合はルアーロックを介して行われることが多い。
【0003】
例えば、ドイツ特許公報DE 60 2004 003 477 T2 にあるように、チューブを医療機器に結合する医療用連結器が知られている。この医療用連結器は、その一端にルアーロックを有しており、このルアーロックを介して、他の医療機器に結合される。この医療用連結器は他端においてチューブに密に結合されているか、あるいは、この医療用連結器にチューブが接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】ドイツ特許公報DE 60 2004 003 477 T2
【発明の概要】
【0005】
ルアーロックを介して血流管が透析装置その他の医療機器に結合されるシステムにおいては、次のような問題が生じる。例えば、血流管がねじれることがあり、これによって、ネジ止めされているネジが緩むことがあり、しかも、ネジの緩みが発見されない。このような問題には、透析装置のルアーロックがチューブに強く結合されていないという技術的な理由がある。ルアーロックが熱膨張を起こすと、摩擦力が減少し、その結果として、ネジが自然に締まる。チューブとルアーロックとが強く結合すると、ネジを緩める力がチューブによって継続的にネジに作用することとなる。さらに、ネジ止めの状態の良否は医療スタッフにも依存する。すなわち、治療の途中において、正常に結合しているかどうかを確認するためにネジ止めの状態をチェックすることが必要であり、必要に応じて、医療スタッフがネジ止めをやり直すことが必要になってくる。
【0006】
従って、本発明の目的は、チューブまたは血流管がねじれることを防止し、使用者の行動にかかわりなく必要な結合力を確保し、時間がかかるチェックや結合のやり直しを回避することが可能な連結器を提供することにある。
【0007】
この目的は請求項1の特徴を備える医療用連結器及び請求項10の特徴を備える医療用システムにより達成される。従属項には、さらに有効に改良された連結器及びシステムが記載されている。
【0008】
本発明に係る医療用(液体)連結器は、医療機器における(少なくとも)二つの液体ガイド部分を液密の状態で結合する医療用連結器であって、軸方向においてロック可能であり、すぐに連結可能な連結器であり、連続する第一通路を有する雄連結器部分と、雄連結器部分に対して嵌合するようになっており、かつ、連続する第二通路を有する雌連結器部分と、を備えている。さらに、雄連結器部分の外周及び/または雌連結器部分の内周には半径方向円周シールが設けられている。
【0009】
このため、本発明に係る医療用連結器は、例えば、液体流路と医療用機器または液体をガイドする部分の一例としての他の二つの液体流路とを容易に相互に連結することを可能にする。この医療用連結器は雄連結器部分と雌連結器部分とを連結することにより完成する。このため、雄連結器部分は、連続した内部通路を含む円筒型の凸型構造として形成される。雌連結器部分は、雄連結器部分の一部または全部を収容可能なスリーブ型として形成される。
【0010】
雄連結器部分と雌連結器部分とを連結させる際には、雌連結器部分をスリーブの軸方向において円筒型凸型構造の雄連結器部分に滑り込ませる。このようにして、二つの連結器部分は(永久的に)相互に係合する。腎臓置換療法に用いる場合には、例えば、体外血流システムと透析装置とは、治療開始後においては、切り離されることはない。このため、永久的に連結させることは悪いことではない。さらに、雄連結器部分と雌連結器部分との間に半径方向のシールを配置することにより、二つの連結器部分、ひいては、二つの液体ガイド部分がシールされた状態で内部結合することになる。
【0011】
以上のように構成された連結器により、二つの液体ガイド部分を短時間で、かつ、容易に連結させることが可能になる。この目的を達成するために、他の部品を追加で必要とすることはない。さらに、時間のかかるネジ止めや二つの連結器部分を相互に回転させることなどの作業も不要である。二つの連結器部分が相互に独立に外れたり、緩んだりすることはないので、二つの連結器部分は安全に結合される。さらに、半径方向のシールが配置されているため、雄連結器部分に対して雌連結器部分をその長手方向軸の回りに回転させることも可能である。
【0012】
本発明の一態様においては、雄連結器部分は医療用機器または医療器具、特に、透析装置または体外血液処理装置と一体的に形成することが可能である。
【0013】
このように、医療用機器への結合のために他の部品を追加で必要とすることはなく、単純かつ廉価で、少数の部品からなる構造を実現することができる。
【0014】
本発明の一態様においては、雄連結器部分は第一係止部分を備えることができる。
【0015】
本発明の一態様においては、雄連結器部分はこの第一係止部分を介して医療用機器と結合するようにすることができる。
【0016】
本発明の一態様においては、雄連結器部分の第一係止部分はルアーロックとすることが可能であり、このルアーロックに医療用機器のルアーロックを結合させるようにすることができる。
【0017】
本発明の一態様においては、雄連結器部分の第一係止部分は、医療用機器の雄外部コーンに連結可能な雌内部コーンを備えたルアーロックとして構成することが可能である。
【0018】
第一係止部分を介して雄連結器部分を医療用機器に連結することにより、本発明に係る医療用連結器を既存の医療用機器に対しても使用することが可能になる。換言すれば、雄連結器部分を、アダプターの一つとしてのネジを用いて、例えば、医療用機器のルアーロックにネジ止めすることが可能であり、このようにして、雄連結器部分を介して医療用機器を雌連結器部分に連結することができる。
【0019】
本発明の一態様においては、雄連結器部分の第一係止部分は、医療用機器の外ネジに結合可能であるようになっている内ネジとして構成することが可能である。
【0020】
このため、雄連結器部分は、例えば、ネジにより医療用機器のハウジングにネジ止め可能な当該医療用機器のカバーの一部として構成することも可能である。
【0021】
本発明の一態様においては、雌連結器部分は液体流路と一体に形成することができる。
【0022】
このように、液体流路への結合のために他の部品を追加で必要とすることはなく、単純かつ廉価で、少数の部品からなる構造を実現することができる。
【0023】
本発明の一態様においては、雌連結器部分は第2係止部分を備えるものとすることができる。
【0024】
本発明の一態様においては、雌連結器部分は第2係止部分を介して液体流路に係止可能であるように構成することが可能である。
【0025】
本発明の一態様においては、雌連結器部分の第2係止部分は、液体流路のルアーロックに結合可能になっているルアーロックとして構成することができる。
【0026】
本発明の一態様においては、雌連結器部分の第2係止部分は雄内部コーンを備えるルアーロックとして構成することができ、この雄内部コーンには、液体流路の雌内部コーンを有するルアーロックが連結可能であるようになっている。
【0027】
雌連結器部分は第2係止部分を介して液体流路に結合されるため、本発明に係る医療用連結器は既存の液体流路にも用いることが可能になっている。換言すれば、雄連結器部分を、結合手段の一つとしてのネジを用いて、例えば、液体流路のルアーロックにネジ止めすることが可能であり、このようにして、雌連結器部分を介して液体流路を雄連結器部分に連結することができる。
【0028】
本発明の一態様においては、雄連結器部分は、雌連結器部分の一部が係合する円周溝を備える。
【0029】
本発明の一態様においては、雄連結器部分は、少なくとも雌連結器部分のスナップフックが係合する円周溝を備える。
【0030】
このように、単純な方法により、雄連結器部分と雌連結器部分とを安全に、かつ、緊密に連結させることが可能である。雌連結器部分を可塑性の材料でつくることは有効である。これにより、雌連結器部分を雄連結器部分の内部に挿入する際に、損傷させることなく、雌連結器部分を半径方向に大きくすることが可能になる。スナップフックが溝と重なると、双方が係合し、これにより、二つの連結器部分が連結される。なお、リング状の連結用スナップその他の連結用スナップを用いて、二つの連結器部分を連結させることも可能である。
【0031】
本発明の一態様においては、雄連結器部分と雌連結器部分とはロック用器具を介して相互に連結させることも可能である。
【0032】
本発明の一態様においては、このロック用器具は雄連結器部分に設けることができる。
【0033】
本発明の一態様においては、このロック用器具は雌連結器部分に設けることができる。
【0034】
ロック用器具は、連結用スナップとは別の、雄連結器部分と雌連結器部分とを相互に連結させるための他の手段である。ロック用器具は、例えば、レバーを介して作動するピンが溝の内部に嵌まるように構成することができる。このように、ロック用器具は、雌連結器部分の材料に過大な負荷を及ぼすことなく、あるいは、例えば、シール材を損傷させることなく、安全に雄連結器部分と雌連結器部分とを連結する。
【0035】
本発明の一態様においては、雄連結器部分は、雌連結器部分の軸方向における動きを制限するストッパまたはショルダを備えることが可能である。
【0036】
ショルダを設けることにより、雄連結器部分上において雌連結器部分がシフトする距離を予め固定させることが可能である。例えば、溝とスナップフックを備える上記の構造を用いる場合、ショルダを設けることにより、スナップフックが溝から滑り出して溝から外れないようにすることができる。
【0037】
本発明の一態様においては、雄連結器部分及び雌連結器部分は取り外し器具により相互に取り外すことが可能である。
【0038】
本発明の一態様においては、この取り外し器具は雄連結器部分に設けることができる。
【0039】
本発明の一態様においては、この取り外し器具は雌連結器部分に設けることができる。
【0040】
本発明の一態様においては、ロック用器具と取り外し器具とは同様の形状とすることができる。
【0041】
このように、取り外し用キーまたはレバーを用いて、相互に連結している雄連結器部分及び雌連結器部分を非破壊的に取り外すことができる。あるいは、二つの連結器部分の連結及び取り外しはそれぞれロック用器具または取り外し器具を用いて行うことも可能である。
【0042】
本発明に係る医療用システムは、第一の液体流路と、医療用機器及び/または第二の液体流路と、を備える。第一の液体流路の内部には第一通路が設けられ、医療用機器及び/または第二の液体流路の内部には第二通路が設けられている。第一の液体流路と医療用機器及び/または第二の液体流路とは、本発明に係る医療用連結器を介して、第一通路と第二通路とがシールされた状態で相互に連結されるように、相互に連結させることが可能である。
【0043】
この医療用システムにおいては、医療用連結器は少なくとも二つの液体ガイド部分を内部結合させ、液体が一のラインから医療用機器または他のラインへ、あるいは、医療用機器または他のラインから一のラインへ流れるようにする。このため、医療用連結器は一つまたは二つ以上の上記の態様及び利点を有する。
【0044】
要約すれば、本発明に係る医療用連結器及び本発明に係る医療用システムは、ユーザーの使いやすさ、特に、腎臓置換療法におけるユーザーの使いやすさを向上させるものであり、準備のための時間をも短縮する。さらに、血流管が捩じれることを防止するとともに、療法実施中に自然に緩むことのない、捩じり力に影響されない連結を実現するものである。このように、時間がかかる、ユーザーによる連結状態のチェック及び修正はもはや不要であり、患者に対するリスクを伴う血液のロスに気がつかないこともなくなり、療法実施中における血圧測定の間違いも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】第一の実施形態に係る連結スリーブが結合されているアダプターの断面図である。
図2】第二の実施形態に係る連結スリーブが結合されている医療用機器の断面図である。
図3】第三の実施形態に係る連結スリーブであって、取り外し器具を備える連結スリーブが結合されているアダプターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、本発明の第一の実施形態に係る医療用連結器を示す。ほぼ円筒形のアダプター2と連結スリーブ4とが相互に連結されている。アダプター2は、連結スリーブ4に対向している一端において、雄連結器部分すなわち第一連結器部分6と、連結スリーブ4から離れている他端において、第一係止部分8と、を備えている。アダプター2は、さらに、連続した第一通路10を備えており、この第一通路10は、連結スリーブ4から離れる方向に連結スリーブ4と同軸に広がる部分、すなわち、第一雌ルアーロック内部コーン12を備えている。さらに、連結スリーブ4から離れている方の第一係止部分8の端部には、第一外ネジ部分あるいは第一ネジ部分14が形成されている。第一雌ルアーロック内部コーン12及び第一ネジ部分14を介して、アダプター2を透析装置あるいは体外血液処理装置などの医療用機器16(図1には図示せず)に結合させることができる。透析装置に結合させる場合には、血液をガイドする管が結合され、体外血液処理装置に結合させる場合には、血液をガイドする管から枝分かれし、空気柱を吸圧器に導く血圧ラインが結合される。換言すれば、アダプター2は、雄外部コーンを備える補助装置の各ルアーロックに留めることが可能である。
【0047】
第一連結器部分6は円周溝18を備えている。さらに、シール部材としてのOリング20が円周溝18と、連結スリーブ4に面している第一連結器部分6の端部との間に配置されている。Oリング20は第一連結器部分6の外周に接しているが、図3に示すように、追加のシール溝の内部に嵌め込むことも可能である。また、Oリング20は、2Kインジェクションモールド法により、シール部材として、第一連結器部分6と一体的に形成することもできる。さらに、連結スリーブ4から遠い方の第一連結器部分6の端部に、あるいは、第一連結器部分6と第一係止部分8との間に、半径方向外側に延びるショルダ22を形成することもできる。
【0048】
連結スリーブ4は雌連結器部分として機能する。連結スリーブ4には、アダプター2から遠い方の連結スリーブ4の端部に結合している液体流路すなわちチューブ24が一体的に形成されている。チューブ24及び連結スリーブ4の内部には第二通路26が形成されている。さらに、連結スリーブ4の内側表面には、円周方向において等間隔に複数のスナップフック28が形成されている。なお、スナップフック28は円周方向に1個のみ形成することも可能である。
【0049】
連結スリーブ4がスライド方向SRにスライドすると、すなわち、アダプター2及び連結スリーブ4の長手方向軸LAに沿ってアダプター2の方向にスライドすると、スナップフック28が連結スリーブ4に面しているアダプター2の端面30に当接する。これにより、可塑性材料からなる連結スリーブ4は半径方向に広がり、連結スリーブ4がスライド方向SRにおいてアダプター2すなわち第一連結器部分6にさらに嵌まり込む。軸方向において、すなわち、長手方向軸LAに沿って、スナップフック28が溝18と並ぶと、双方が係合し、連結スリーブ4は半径方向に広がっていない元の位置に戻る。これにより、アダプター2のOリング20は連結スリーブ4の内部においてシール面32上で停止する。このようにして、アダプター2の第一通路10と連結スリーブ4すなわちチューブ24の第二通路26との間に、好適な流路が形成される。さらに、ショルダ22がスライド方向における連結スリーブ4の移動を制限するため、スナップフック28は溝18の内部に保持され、従って、連結スリーブ4は安全にアダプター2に連結された状態が維持される。ただし、スナップフック28が溝18から外れることなく、かつ、Oリング20がシール面32上に停まる限りにおいて、アダプター2と連結スリーブ4との間に軸方向の多少の遊びがあってもよい。
【0050】
本発明に係る医療用連結器すなわち短時間式連結器により、チューブ24とアダプター2とを備える連結スリーブ4のような二つの液体ガイド部分を緊密に、かつ、外そうとする力の影響を受けずに、短時間で連結させることができる。加えて、Oリング20による半径方向のシールによって、連結スリーブ4とアダプター2とを長手方向軸LAの回りに相互に回転させることも可能である。このように、チューブ24が捩じれることは防止され、さらに、アダプター2と医療用機器16との間のルアーロックが外れることもない。また、連結スリーブ4の内部にシール材を設け、連結スリーブ4とアダプター2とが連結した後に、アダプター2のシール面に接触するようにすることも可能である。
【0051】
図2は本発明の第二の実施形態に係る医療用連結器を示す。第一の実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0052】
第二の実施形態においては、アダプター2′は医療用機器16と一体的に形成されている。すなわち、アダプター2′は医療用機器16の延長部分であり、連結スリーブ4′に面している医療用機器16の端部には、第一連結器部分6が雄連結器部分として形成されている。
【0053】
第二の実施形態においては、連結スリーブ4′は連結器として機能し、このため、連結スリーブ4′はチューブ24′を医療用機器16に連結する。連結スリーブ4′は、医療用機器16に面する端部において、雌連結器部分すなわち第二連結器部分34を備え、チューブ24′に面する端部において、第二係止部分36を備えている。アダプター2′と連結スリーブ4′との連結、すなわち、第一連結器部分6と第二連結器部分34との連結は第一実施形態の場合と同様にして行われる。
【0054】
連結スリーブ4′の内部には、長手方向軸LAに沿って、連続する第三通路38が形成されている。第二係止部分36はルアーロックを構成している。すなわち、第三通路38は、チューブ24′の方向に延びる雄ルアーロック外部コーン40に囲まれている。さらに、第二係止部分36の半径方向の外側端部には、内ネジすなわち第二ネジ部分42が形成されている。
【0055】
連結スリーブ4′に面しているチューブ24′の端部は、連結スリーブ4′のルアーロックと結合する相手方のルアーロックとして構成されている。第二通路26′は連結スリーブ4′に向って連結スリーブ4′と同軸に広がっている。すなわち、第二の雌ルアーロック内部コーン44が形成されている。さらに、連結スリーブ4′から遠い方のホース24′の端部には、第二の外ネジすなわち第三ネジ部分46が形成されている。
【0056】
第一連結器部分6と連結スリーブ4′とを結合させると、さらには、チューブ24′と連結スリーブ4′とをルアーロックを介して結合させると、チューブ24′の内部の第二通路26から連結スリーブ4′の内部の第三通路38を介して医療用機器16の内部の第一通路10′に至る密な液体通路が形成される。
【0057】
上述の実施形態においては、チューブ24と医療用機器16とを様々な方法で連結している。これらの方法に限らず、種々の連結方法を組み合わせることも可能である。例えば、ルアーロックを介してアダプター2を医療用機器に結合してもよく、あるいは、アダプター2を、ルアーロックを介してチューブ24′に結合されている連結スリーブ4′に係合させることも可能である。
【0058】
図3は本発明の第三の実施形態に係る医療用連結器を示す。第一及び第二の実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0059】
第三の実施形態においては、連結スリーブ4″は、レバー50とピン52とからなる取り外し器具48をさらに備えている。図3に示すロックの状態においては、レバー50は長手方向軸LAと平行であり、ピン52は長手方向軸LAと直交している。レバー50は、アダプター2″に面している端部において、アダプター2″から遠い方のピン52の端部に連結されている。さらに、取り外し器具48は連結スリーブ4″の凹部54の内部に配置されているとともに、枢軸点56を介して連結スリーブ4″に連結されている。
【0060】
連結スリーブ4″をアダプター2″に連結させるためには、レバー50は、アダプター2″から遠い方の端部において、半径方向内側に移動することが必要になる。これにより、ピン52は半径方向外側に移動し、連結スリーブ4″はスライド方向SRにおいてアダプター2″ひいては第一連結器部分6″に嵌合する。アダプター2″に面している連結スリーブ4″の前方境界領域58がショルダ22に当接すると、軸方向において溝18がピン52と重なり合う。レバー50がリリースされると、すなわち、レバー50に対する付勢力が解除されると、レバー50は長手方向軸LAと平行な元の位置に戻り、ピン52は溝18に入り込む。これにより、アダプター2″と連結スリーブ4″とが相互に連結される。アダプター2″と連結スリーブ4″との連結を解除するためには、レバー50を付勢する、すなわち、半径方向内側に回動させる。これにより、ピン52は溝18から抜け出し、連結スリーブ4″はスライド方向SRとは反対の方向にアダプター2″から抜け出ることが可能になる。
【0061】
このように、本実施形態の医療用連結器は軸方向において取り外すことが可能になっている。なお、取り外しは、取り外しレバーに代えて、取り外しキーその他同様の手段を用いても実行可能である。上述の第三の実施形態においては、ロック解除器具48は連結スリーブ4″に配置されている。この取り外し器具48をアダプター2″に配置することも可能である。
【0062】
以下、第一及び第二の実施形態との比較における第三の実施形態の変更及び有効な改良について説明する。
【0063】
第三の実施形態においては、Oリング20はシール溝60の内部に収容されている。これにより、シール部材が半径方向に拡張することを制限することができる。連結スリーブを連結させるときに、スナップフック28がスライドしながらOリング20を適切に通過するように構成することにより、Oリング20をシール溝60の内部に収容する構造は第一及び第二の実施形態にも適用可能である。
【0064】
さらに、第三の実施形態においては、アダプター2″の端面30は連結スリーブ4″に対しては直接的には接していない。第一連結器部分6″を収容可能な、半径方向外側に広がる収容開口部62がアダプター2″の方向において第二通路26と結合されている。第一通路10″も連結スリーブ4″に向って半径方向外側に広がっている。
【0065】
さらに、第三の実施形態に設けられるロック及び取り外し器具48の数は1個には限定されない。2個または3個以上のロック及び取り外し器具48を設けることが可能であり、それらは円周方向に等間隔に配置することが好ましい。さらに、第三の実施形態におけるアダプター2″は、第一の実施形態におけるアダプター2と同様に、医療用機器16に結合することもでき、あるいは、第二の実施形態におけるアダプター2′と同様に、医療用機器16と一体的に形成することもできる。
図1
図2
図3