特許第6893800号(P6893800)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893800
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】シートレール装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/06 20060101AFI20210614BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20210614BHJP
【FI】
   B60N2/06
   B60N2/90
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-39295(P2017-39295)
(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公開番号】特開2018-144537(P2018-144537A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143639
【氏名又は名称】株式会社今仙電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】原 和良
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−335153(JP,A)
【文献】 特開2008−155783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
B60N 2/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用フロアに直接的又は間接的に取り付けられるロアレールと、
車両用シートに直接的又は間接的に取り付けられ、かつ前記ロアレールに対してスライド自在に設けられるアッパーレールと、
前記アッパーレール内に設けられるスクリューネジと、
前記スクリューネジに設けられてなるブッシュと、前記ブッシュに対して回転可能に取り付けられるブッシュ取付片及び二股に分岐して前記スクリューネジの側方に配置されている可動側片を有するように略U字状に湾曲して形成されている保持ブラケットと、を有する保持部材と、
を備え、
前記ブッシュ取付片及び前記可動側片の幅は、前記アッパーレールの両側の側面部間の間隔よりも広く形成されており、
前記アッパーレールは、前記アッパーレールのそれぞれ後方側及び前方側の両側面部に前記ブッシュ取付片を開放された底面側から挿入可能な直線状貫通孔と、前記直線状貫通孔の近傍であって、前記アッパーレールの両側面部に前記可動側片を開放された底面側から挿入可能であって、かつ挿入後は外す方向に前記可動側片を移動させた場合には前記可動側片と係止する係止面を有する異形貫通孔と、を有することを特徴とするシートレール装置。
【請求項2】
前記異形貫通孔は、斜め上方方向を向いた斜面を有しており、
前記可動側片は、前記斜面に面接触可能な面を有することを特徴とする請求項1に記載のシートレール装置。
【請求項3】
前記保持ブラケットは、前記ブッシュ取付片及び前記可動側片が、それぞれ前記直線状貫通孔及び前記異形貫通孔に挿入された際に、それぞれが離間する方向へ貫通孔を押圧することを特徴とする請求項1又は2に記載のシートレール装置。
【請求項4】
前記保持部材は、前記スクリューネジの前後に2箇所に設けられ、
前記アッパーレールには、それぞれの前記保持部材の前記ブッシュ取付片及び前記可動側片に対応して、前記異形貫通孔が前記直線状貫通孔に対して中央側に配置されるように、前記アッパーレールの後方側及び前方側のそれぞれ両側面部に2箇所に設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のシートレール装置。
【請求項5】
2箇所に設けられた前記保持部材は、互いに対称に設けられ、
前記直線状貫通孔及び前記異形貫通孔も対称に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のシートレール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートレール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レール部材に対してスクリューネジが固定されているシートレール装置として、ブラケットの両支持片の挿通部に対して、挿通不能なブッシュが当該挿通部を挿通するスクリューネジの前側端部に直接固定され、またブラケットはアッパーレールに形成される切欠きに係合するとともに、連結部がアッパーレールの上壁にプレートを介してリベットでかしめられることにより、アッパーレールに固定されるシートレール装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
しかしながら、かかるシートレール装置は、ブラケットをアッパーレールに固定する際に、リベットでかしめるという手段を採用しているため、部品費及び組み付け費が高いうえ、作業工程が多いという問題点があった。また、リベットがアッパーレール上面に突出するため、アッパーレール周辺の部品配置へ影響を与えるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−173556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、リベットやボルト等の締結部材を使用することなく、スクリューネジをアッパーレールに固定することができ、組付け工程が容易なシートレール装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために、以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかるシートレール装置は、
車両用フロアに直接的又は間接的に取り付けられるロアレールと、
車両用シートに直接的又は間接的に取り付けられ、かつ前記ロアレールに対してスライド自在に設けられるアッパーレールと、
前記アッパーレール内に設けられるスクリューネジと、
前記スクリューネジに設けられてなるブッシュと、前記ブッシュに対して回転可能に取り付けられるブッシュ取付片及び二股に分岐して前記スクリューネジの側方に配置されている可動側片を有するように略U字状に湾曲して形成されている保持ブラケットと、を有する保持部材と、
を備え、
前記ブッシュ取付片及び前記可動側片の幅は、前記アッパーレールの両側の側面部間の間隔よりも広く形成されており、
前記アッパーレールは、前記ブッシュ取付片を開放された底面側から挿入可能な直線状貫通孔と、前記可動側片を開放された底面側から挿入可能であって、かつ挿入後は外す方向に前記可動側片を移動させた場合には前記可動側片と係止する係止面を有する異形貫通孔と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるシートレール装置は、スクリューネジに設けられた保持ブラケットを、アッパーレールの開放底面側から挿入すると、保持ブラケットが異形貫通孔の係止面で係止されることによってアッパーレール内に保持される。このように本発明にかかるシートレール装置によれば、差し込むという作業のみでスクリューネジをアッパーレールに固定することができる。この際に、ボルトやリベットといった締結部材を使用しないので、作業工程を簡素化することができるとともに、コストの低減を図ることができる。また、ボルトやリベット等の締結部材を使用しないことで、アッパーレールの外にこうした締結部材が突出することがなく、アッパーレール周辺の他の部品に影響をあたえることがないので、自由にレイアウトすることができる。
【0009】
また、本発明にかかるシートレール装置において、
前記異形貫通孔は、斜め上方方向を向いた斜面を有しており、
前記可動側片は、前記斜面に面接触可能な面を有することを特徴とするものであってもよい。
【0010】
かかる構成を採用することによって、保持ブラケットは、前後方向及び上方向に付勢されることになるため、この付勢力を利用してスクリューネジの位置決めができ、かつガタツキを防止することができる。
【0011】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、
前記保持ブラケットは、前記ブッシュ取付片及び前記可動側片が、それぞれ前記直線状貫通孔及び前記異形貫通孔に挿入された際に、それぞれが離間する方向へ貫通孔を押圧することを特徴とするものであってもよい。
【0012】
かかる構成を採用することによって、保持ブラケットは、貫通孔を強く押圧することになる。これにより、保持部材のガタツキをさらに防止することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、
前記保持部材は、前記スクリューネジの前後に2箇所に設けられ、
前記アッパーレールには、それぞれの前記保持部材の前記ブッシュ取付片及び前記可動側片に対応して、前記直線状貫通孔及び前記異形貫通孔が2箇所に設けられていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
2箇所に固定部を設けることによって、長尺に形成されるスクリューネジをより効果的にアッパーレールに固定することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるシートレール装置において、
2箇所に設けられた前記保持部材は、互いに対称に設けられ、
前記直線状貫通孔及び前記異形貫通孔も対称に形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
かかる構成を採用することによって、スクリューネジの前後方向のガタツキを効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、リベットやボルト等の締結部材を使用することなく、スクリューネジをアッパーレールに固定することができ、組付け工程が容易なシートレール装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態にかかるシートレール装置100の分解斜視図である。
図2図2は、実施形態にかかるシートレール装置100の平面図及びA−A断面図である。
図3図3は、図2のD部の拡大図である。
図4図4Aは、実施形態にかかる保持部材40の斜視図であり、図4Bは、実施形態にかかる保持部材40の分解斜視図である。
図5図5は、実施形態にかかる保持ブラケット42の側面図である。
図6図6は、実施形態にかかる保持ブラケット42をアッパーレール20に組み付ける工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではない。また、各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。また、明細書、特許請求の範囲において、「前後」、「左右」及び「上下」とは、図1に示された方向を指す。
【0020】
本実施形態にかかるシートレール装置100は、図1に示すように、主として、車両用フロアー(図示しない。)に直接又は間接的に固定されるロアレール10と、車両用シート(図示しない)に直接又は間接的に取り付けられ、かつロアレール10に対してスライド可能に設けられるアッパーレール20と、アッパーレール20に対して回転可能に組み付けられるスクリューネジ30と、スクリューネジ30をアッパーレール20に保持するための保持部材40と、スクリューネジ30に螺合され、かつロアレール10に固定されるナット部材50と、このスクリューネジ30を回転させる動力装置60と、を備えている。
【0021】
本実施形態にかかるシートレール装置100は、動力装置60から伝達された回転力によってスクリューネジ30を回転させ、この回転によってロアレール10に固定されているナット部材50に対してスクリューネジ30の相対的な位置を変化させてスクリューネジ30を前後に移動させるものである。スクリューネジ30が前後に移動することによって、これを支持しているアッパーレール20が前後に移動し、アッパーレール20に固定されている車両用シートが前後に移動することになる。
【0022】
次に各構成部品について説明する。
【0023】
ロアレール10は、特に限定するものではなく、種々の既知のロアレールを採用することができる。本実施形態においては、図1に示すように、底面部11と、この底面部11の両側から上方に立設されている立設側面部12と、この立設側面部12から内側方向へ略水平に形成される水平部13と、この水平部13から下方方向へ形成される内側垂直部14とを有する長尺の部材を使用している。
【0024】
アッパーレール20は、水平面部21と、この水平面部21の両側から垂下して形成される側面部22と、この側面部22から外側方向へ形成される外側延設部23と、この外側延設部23から上方方向へ立設している外側立設部24とを有する長尺の部材からなり、下方側の底面は開放されている。水平面部21と側面部22とで内側にスクリューネジ30、ナット部材50及び保持部材40等が配置可能な収容領域αを形成する。なお、アッパーレール20の構成もこれに限定するものではなく、スクリューネジ30、ナット部材50及び保持部材40等が配置可能な構成であればよい。アッパーレール20の側面部22には、図2のA−A断面図に示すように、後方側及び前方側にそれぞれ後述する保持ブラケット42がそれぞれ挿入される直線状貫通孔25及び異形貫通孔26が形成されている。直線状貫通孔25は、垂直かつ直線状に形成された貫通孔であり、下方端まで形成されており、保持ブラケット42を下方側(底面開放側)から挿入可能である。後方側直線状貫通孔25bは、前方側直線状貫通孔25aよりも広い幅を有する。異形貫通孔26は、直線状貫通孔25の近傍であって、かつアッパーレール20の中央側に設けられる。すなわち、前方側異形貫通孔26aは前方側直線状貫通孔25aの後方に、後方側異形貫通孔26bは後方側直線状貫通孔25bの前方に設けられる。後方側異形貫通孔26bは、図3に示すように、下方側に対して上方側が幅の広い貫通孔となるように形成され、下方側の幅の狭い部分Aと上方側の幅の広い部分Bとによって、後方側異形貫通孔26bに係止面26fが形成される。かかる係止面26fによって一端挿入された保持ブラケット42は、人によって可動側片42dを移動させない限り後方側異型貫通孔26bから外せなくなる。また、後方側異形貫通孔26bの上方側の幅の広い部分の前面側には、上方にいくほど徐々に幅が広くなるように斜め上方を向いた斜面26gが形成される。具体的には、本実施形態においては、異形貫通孔26は、後方側面26cが垂直直線状に形成され、前方側面26dが下方側から垂直面26e、係止面26f、斜面26g及び垂直面26hの組み合わせで作製され、下方側から順に一定の幅βの貫通孔Aの領域、急激に太くなり徐々に幅が広くなる貫通孔Bの領域、一定の幅δの貫通孔Cの領域とを組み合わせた形態の貫通孔に形成されている。なお、垂直面26hも斜面26gに形成してもよい。なお、前方側異形貫通孔26aは、後方側異形貫通孔26bに対して前後対称となるに形成されている。それ以外は同様であるので、説明を省略する。
【0025】
こうして作製されたロアレール10とアッパーレール20は、ロアレール10の立設側面部12と内側垂直部14との間に、アッパーレール20の外側立設部24が配置されるように取り付けられる。ロアレール10とアッパーレール20は、これらの間に任意にスライド用のローラやベアリング等が設けられ、互いにスライド可能に設けられる。
【0026】
スクリューネジ30は、長尺の円柱状部材であり、その外周面には雄ねじ(図示しない。)が螺刻されている。
【0027】
保持部材40は、スクリューネジ30の前方側と後方側の2箇所に前述した直線状貫通孔25及び異形貫通孔26に対応する位置に取り付けられる。これら2箇所の保持部材40は、対称に取り付けられること以外は同様の構成であるので、後方側の保持部材40を例に説明し、前方側の保持部材40の説明は省略する。保持部材40は、図4Aに示すように、スクリューネジ30の端部に挿入されるブッシュ41と、このブッシュ41に回転可能に取り付けられる保持ブラケット42と、を有している。
【0028】
ブッシュ41は、スクリューネジ30の端部側に取り付けられる端部保持部材43と、中央側に設けられる締結部材44と、その間に設けられる押圧部材45を備えている。いずれも中心にスクリューネジ30が挿通可能な孔を有しており、それぞれの締結部材44、押圧部材45及び端部保持部材43の順にスクリューネジ30に挿入した状態で、端部保持部材43を締結部材44に対して締め付けることによって、押圧部材45が締結部材44の締付部44aをスクリューネジ30に押し付けることによりスクリューネジ30に固定される。
【0029】
保持ブラケット42は、金属板等の弾性部材を折り曲げて作製されており、図4Bに示すように、ブッシュ取付片42a、可動側片42dが水平連結部42cで一体に形成され、左右側面側から見た場合に逆略U字形状になるように形成されている。ブッシュ取付片42aは平面で形成され、端部保持部材43と押圧部材45との間に回転可能に配置できるようにスクリューネジ30とより若干大きな挿通孔42bが設けられている。可動側片42dの幅δは、アッパーレール20の両側の側面部22の間隔よりも広い幅に作製されている。また、上方側は、上方に向かって徐々に幅が狭くなるように形成される。水平連結部42cの幅εは、アッパーレール20の側面部22の間の間隔よりも狭い幅に作製される。可動側片42dは、図4Aに示すように、スクリューネジ30に取り付けられたときに、スクリューネジ30の左右両側に配置されるように途中から二股に分岐して形成されている。また、可動側片42dは、図5に示すように、側方から視認した場合に、水平連結部42cの付け根から下方に向かって、ブッシュ取付片42aとの間隔が徐々に広くなるように形成され、その後、ブッシュ取付片42aとの間隔が狭くなるように形成される。すなわち、可動側片42dは、側面から見た場合に「く」の字を描くように形成され、可動側片42dの一部が、異形貫通孔26の斜面42fに面で接触するように形成されている。また、ブッシュ取付片42aと可動側片42dとの間隔は、力が加わっていない通常の状態では、図3に示す直線状貫通孔25及び異形貫通孔26より広い間隔を有するように作製され、取り付けられた状態で金属の弾性力によりブッシュ取付片42aと可動側片42dとの間隔が広がる方向に押し付けるような力が加わるようにしてある。また、二股に分岐された可動側片42dの幅ζは、図4Bに示すように、アッパーレール20の両側の側面部22の間隔よりも広い幅となるように作製される。こうして作製された保持ブラケット42は、図4Aに示すように、端部保持部材43と押圧部材45との間に回転可能に取り付けられる。従って、スクリューネジ30は、保持ブラケット42に対して回転自在となる。
【0030】
動力装置60は、スクリューネジ30を駆動するための動力手段であり、モータ(図示しない。)及び、モータの回転及びトルクを調整するギアボックス等とからなる。ギアボックスのギアはスクリューネジ30の端部と噛合して、モータの回転をスクリューネジ30に伝達する。
【0031】
ナット部材50は、スクリューネジ30の雌ねじとして機能するものであり、ロアレール10にブラケット51を介して固定されている。よって、スクリューネジ30が回転することによってナット部材50との相対位置が変更され、スクリューネジ30が前後に移動することになる。
【0032】
以上のように構成されたシートレール装置100の各部材の組み立て方法について説明する。まず、スクリューネジ30に対して、ナット部材50と、前側端部近傍及び後側端部の所定位置に保持部材40(ブッシュ41及び保持ブラケット42)と、を固定する。次に、アッパーレール20にスクリューネジ30を組み付ける。アッパーレール20にスクリューネジ30を組み付けるには、アッパーレール20の下方側から、アッパーレール20の直線状貫通孔25及び異形貫通孔26に保持ブラケット42を嵌め込むことによって組み付けられる。具体的には、図6Aに示すように、直線状貫通孔25及び異形貫通孔26に対して保持ブラケット42を下方から差し込むと、保持ブラケット42は金属板等で作製されているので、図6Bに示すように、可動側片42dが変形して、ブッシュ取付片42aと可動側片42dとの間隔が狭まった状態で挿入されていく。さらに深く挿入し、図6Cに示すように、異形貫通孔26の幅の広い部分(図3のBの領域)まで到達すると、金属の弾性力により保持ブラケット42は元の位置に戻ろうとする。そして保持ブラケット42の可動側片42dが斜面26gに当接することによって組み付けられる。一端組み付けられた保持ブラケット42は、ブッシュ取付片42aと可動側片42dの間隔を人為的に狭めない限り外れることはない。続いて、スクリューネジ30の前側端部に動力装置60を取り付ける。そして、アッパーレール20とロアレール10を組み付け、ナット部材50をロアレール10に固定する。これにより、シートレール装置100が完成する。
【0033】
こうして完成したシートレール装置100によれば、保持ブラケット42はアッパーレール20の異形貫通孔26の斜面26gと当接しているので、保持ブラケット42が異形貫通孔26から受ける力Fは、上方方向の分力Fyと水平方向の分力Fxとに分力される。分力Fyによって保持ブラケット42は、アッパーレール20の水平面部21に水平連結部42cを押し当てるようにして位置決めがされる。一方、分力Fxによって保持ブラケット42のブッシュ取付片42aを末端方向へ押圧する。前方側の保持ブラケット42はブッシュ41を前方方向に、後方側の保持ブラケット42はブッシュ41を後方方向に押圧するので、スクリューネジ30が前後方向にガタつくのを防止することができる。この際に、前方側の保持ブラケット42の直線状貫通孔25は、幅が狭く形成されているので、直線状貫通孔25の壁面によって前後方向の位置決めがされ、後方側の保持ブラケット42は幅が広く設定されているので、この隙間によりばらつきを吸収させることができる。このように、本発明によるシートレール装置100によれば、スクリューネジ30の前後及び上下のガタツキを防止することができる。
【0034】
また、本発明にかかるシートレール装置100によれば、スクリューネジ30をアッパーレール20に取り付ける際に、単に押し込むという動作のみで固定することができ、従来のようにリベットやボルトのような締結部材や溶接といった手段が必要なくなるため、組付け工数を削減することができる。
【0035】
さらに、本発明にかかるシートレール装置100によれば、アッパーレール20の外に締結部材等が突出することがないので、レール周辺の部材に対して突出する部材によって影響を与えることがない。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得る。
【産業上の利用可能性】
【0037】
上述した実施形態で示すように、シートレール装置として、産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10…ロアレール、11…底面部、12…立設側面部、13…水平部、14…内側垂直部、20…アッパーレール、21…水平面部、22…側面部、23…外側延設部、24…外側立設部、25…直線状貫通孔、25a…前方側直線状貫通孔、25b…後方側直線状貫通孔、26…異形貫通孔、26a…前方側異形貫通孔、26b…後方側異形貫通孔、26c…後方側面、26d…前方側面、26e…垂直面、26f…係止面、26g…斜面、26h…垂直面、30…スクリューネジ、40…保持部材、41…ブッシュ、42…保持ブラケット、42a…ブッシュ取付片、42b…挿通孔、42c…水平連結部、42d…可動側片、42f…斜面、43…端部保持部材、44…締結部材、44a…締付部、45…押圧部材、50…ナット部材、51…ブラケット、60…動力装置、100…シートレール装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6