特許第6893802号(P6893802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893802噴出ガス応急遮断具及び噴出ガスの応急遮断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893802
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】噴出ガス応急遮断具及び噴出ガスの応急遮断方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/168 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   F16L55/168
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-41538(P2017-41538)
(22)【出願日】2017年3月6日
(65)【公開番号】特開2018-146036(P2018-146036A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2019年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000141082
【氏名又は名称】株式会社キャプティ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 真澄
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 良一
(72)【発明者】
【氏名】安部 浩
(72)【発明者】
【氏名】三和 信二
(72)【発明者】
【氏名】永島 勝
【審査官】 ▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第202007956(CN,U)
【文献】 特開2007−057061(JP,A)
【文献】 実開昭59−141288(JP,U)
【文献】 特開2007−208024(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0237970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 55/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ガス導管の損傷箇所から噴出するガスを応急的に遮断する遮断具であって、
遠隔作業が可能な長さを有する作業棒と、該作業棒の先端に設けた下方が開放された枠状の保持部に保持される永久磁石とを備え、
前記永久磁石は、前記損傷箇所を覆い前記金属ガス導管の表面に磁気吸着する吸着面を有し、該吸着面に前記損傷箇所に密着する粘着部材が付着され、
前記保持部は、前記永久磁石が前記金属ガス導管の表面に磁気吸着しない状態で保持し、
前記作業棒の手元側には、前記永久磁石が前記金属ガス導管に磁気吸着する状態に切り替える操作部が設けられていることを特徴とする噴出ガス応急遮断具。
【請求項2】
前記保持部は、前記金属ガス導管の表面から設定距離以上離れた状態で前記永久磁石を 保持し、
前記操作部は、操作バーを備え、該操作バーと前記永久磁石とは張力線を介して接続され、前記永久磁石に引き上げ張力を付与する状態と引き上げ張力を除く状態を切り替えることを特徴とする請求項記載の噴出ガス応急遮断具。
【請求項3】
金属ガス導管の損傷箇所から噴出するガスを応急的に遮断する遮断具であって、
遠隔作業が可能な長さを有する作業棒と、該作業棒の先端に設けた保持部に保持される永久磁石とを備え、
前記保持部は、前記損傷箇所を覆い前記金属ガス導管の表面に磁気吸着する吸着面を有し、該吸着面に前記損傷箇所に密着する粘着部材が付着され、
前記保持部は、前記吸着面の吸着力を消失させた状態で前記永久磁石を保持し、
前記作業棒の手元側には、前記作業棒内に延設される操作軸を回転して前記吸着面の消失した吸着力を発生させるように永久磁石を回転させる操作部が設けられていることを特徴とする噴出ガス応急遮断具。
【請求項4】
前記吸着面を、前記金属ガス導管の表面形状に応じて湾曲面にしていることを特徴としている請求項1〜のいずれか1項に記載の噴出ガス応急遮断具。
【請求項5】
金属ガス導管の損傷箇所から噴出するガスを応急的に遮断する遮断方法であって、
遠隔作業が可能な長さを有する作業棒と、該作業棒の先端に設けた下方が開放された枠状の保持部に保持される永久磁石とを備えた遮断具を用い、
前記永久磁石は、前記損傷箇所を覆い前記金属ガス導管の表面に磁気吸着する吸着面を有し、該吸着面に前記損傷箇所に密着する粘着部材を付着させ、
前記保持部は、前記永久磁石が前記金属ガス導管の表面に磁気吸着しない状態で保持し、
前記作業棒の手元側の前記永久磁石が前記金属ガス導管に磁気吸着する状態に切り替える操作部を操作することにより、前記吸着面を前記粘着部材を介して前記損傷箇所に磁気吸着させることを特徴とする噴出ガスの応急遮断方法。
【請求項6】
金属ガス導管の損傷箇所から噴出するガスを応急的に遮断する遮断方法であって、
遠隔作業が可能な長さを有する作業棒と、該作業棒の先端に設けた保持部に保持される永久磁石とを備えた遮断具を用い、
前記保持部は、前記損傷箇所を覆い前記金属ガス導管の表面に磁気吸着する吸着面を有し、該吸着面に前記損傷箇所に密着する粘着部材を付着させ、
前記吸着面の吸着力を消失させた状態で前記永久磁石を保持し、
前記作業棒の手元側には、前記作業棒内に延設される操作軸を回転して前記吸着面の消失した吸着力を発生させるように永久磁石を回転させる操作をすることにより、前記吸着面を前記粘着部材を介して前記損傷箇所に磁気吸着させることを特徴とする噴出ガスの応急遮断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ガス導管(鋼管、鋳鉄管など)の損傷箇所から噴出するガスを応急的に遮断する遮断具とこれを用いた遮断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地中等に敷設された金属ガス導管は、その周囲で行われる他工事で使用される建設機械(パワーシャベルやバックホーなど)の作業部に接触するなどして、損傷する事例が確認されている。ガス導管が損傷すると、損傷箇所からガスが噴出するので、速やかにガス噴出を遮断することが求められる。
【0003】
このようなガス噴出を応急的に遮断する方法としては、ガス導管の損傷箇所周辺の土砂に、固化材と硬化材を混合した遮断材料を供給或いは充填して、周辺土砂ごと硬化させて損傷箇所を閉塞することが提案されている(下記特許文献1参照)。また、硬化時間が調整可能な注入硬化材を用い、ガス導管のガス噴出箇所周囲又はガス導管の内部に注入硬化材を注入・充填して、その後硬化させることでガス遮断を行うことも提案されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−57061号公報
【特許文献2】特開2011−220433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術は、応急的に噴出ガスを遮断することは可能であるが、ガス導管の損傷箇所周囲が遮断材料で覆われた状態になったり、ガス導管の損傷箇所内部に硬化材が充填された状態になるので、その後の復旧工事で、固まった土砂の排除や、硬化材が充填されたガス導管の排除が大掛かりにならざるを得ず、復旧工事に大きな労力と時間を要する問題があった。
【0006】
また、使用する遮断材料や硬化材は、作業時の緊急性を考慮して硬化時間の短いものを使用してはいるが、硬化にある程度の時間が掛かることは避けられない。このため、更に速効性が高く安全な応急的ガス遮断方法が求められている。
【0007】
本発明は、このような事情に対処するために提案されたものである。すなわち、本発明は、金属ガス導管の損傷箇所から噴出するガスを遮断するに際して、安全且つ速やかにガス遮断を行うこと、更には、遮断後の復旧工事を簡易に行うことができるようにすること、などを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
金属ガス導管の損傷箇所から噴出するガスを応急的に遮断する遮断具であって、遠隔作業が可能な長さを有する作業棒と、該作業棒の先端に設けた保持部に保持される永久磁石とを備え、前記永久磁石又は前記保持部は、前記損傷箇所を覆い前記金属ガス導管の表面に磁気吸着する吸着面を有し、該吸着面に前記損傷箇所に密着する粘着部材が付着させていることを特徴とする噴出ガス応急遮断具。
【発明の効果】
【0009】
このような特徴を有する本発明は、遠隔作業が可能な作業棒の先端に永久磁石を保持して、粘着部材を介して永久磁石を金属ガス導管の損傷箇所に吸着させることで、損傷箇所から噴出するガスを遮断するので、安全且つ速やかにガス遮断を行うことができ、また、周辺土壌を硬化させたり、ガス導管内に硬化材を充填することが無いので、ガス遮断後に速やか且つ簡易に復旧工事を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る噴出ガス応急遮断具の全体構成を示した説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る噴出ガス応急遮断具の具体例を示した説明図である。
図3】本発明の実施形態に係る噴出ガス応急遮断具の他の具体例を示した説明図である。
図4】本発明の実施形態に係る噴出ガス応急遮断具の他の具体例を示した説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る噴出ガス応急遮断具の他の具体例を示した説明図である((a)が吸着力が消失した状態、(b)が吸着力が発生した状態を示している。)。
図6】本発明の遮断具を用いた作業例を示した説明図である。
図7】本発明の遮断具の応用例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る噴出ガス応急遮断具(以下、遮断具という。)1は、永久磁石2と、この永久磁石2を先端に保持する作業棒3とを備えている。永久磁石2は、金属ガス導管Pの損傷箇所Ps(図2参照)を覆う吸着面2Aを有しており、この吸着面2Aに損傷箇所Psに密着する粘着部材4を付着させている。作業棒3は、遠隔作業が可能な長さを有し、その先端に永久磁石2を保持する保持部3Aを備えている。永久磁石2は、鋼材に対する磁気吸着力が高いものが好ましく、例えば、希土類磁石(ネオジム磁石など)を用いることが好ましい。
【0013】
保持部3Aでは、永久磁石2が金属ガス導管の表面に磁気吸着しない状態で保持されている。図1の例では、下方が開放された枠状の保持部3A内に永久磁石2が保持されており、永久磁石2は、張力線5で上方に引き上げられ、この張力線5が作業棒3の手元側端部に支持された操作バー6に接続されている。作業棒3の手元側端部には、この操作バー6を備える操作部3Bが設けられ、保持部3Aは、枠内で永久磁石2を上方の引き上げた状態で保持することで、金属ガス導管Pの表面から設定距離以上離れた状態で永久磁石2を保持している。
【0014】
操作部3Bに設けられる操作バー6は、永久磁石2を金属ガス導管Pに磁気吸着する状態に切り替える操作を行う。図2に示した例では、作業棒3の操作部3Bに、作業棒3の長手方向に沿ったスリット3Pを設けており、作業棒3の軸周りに90°回転した操作バー6をこのスリット3Pに落とし込むことで、操作バー6に接続された張力線5の引き上げ張力を除き、永久磁石2を、粘着部材4を介して、磁気吸着力で金属ガス導管Pの表面に吸着させる。
【0015】
永久磁石2が粘着部材4を介して金属ガス導管Pに吸着すると、その吸着力で粘着部材4は押し潰されて、金属ガス導管Pの損傷箇所Ps内に一部が充填され、損傷箇所Psに密着することになり、即座に損傷箇所Psからのガス噴出が遮断される。
【0016】
このような遮断具1によると、磁気吸着力の高い永久磁石2は、操作棒3の先端に設けた保持部3Aに、金属ガス導管Pの表面に磁気吸着しない状態で保持されているので、誤って損傷箇所Psとは異なる箇所に永久磁石2を吸着させてしまう不具合が無く、損傷箇所Psを正確に狙って、その直上に永久磁石2の吸着面2Aを移動させることができる。そして、永久磁石2の吸着面2Aを損傷箇所Psの直上に位置した状態で、操作部3Bの操作バー6を操作して、永久磁石2を引き上げている張力線5の張力を緩めることで、永久磁石2を金属ガス導管Pの表面に吸着させるので、確実に損傷箇所Psに粘着部材4を密着させて損傷箇所Psの孔や亀裂を塞ぐことができる。
【0017】
図3は、永久磁石2の吸着面2Aの形状例を示している。図示の例は、金属ガス導管Pの表面形状に応じて、吸着面2Aを湾曲面にしている。これによると、吸着面2Aの吸着面積を拡げることができ、より確実に損傷箇所Psからのガス噴出を抑止することができる。永久磁石2の吸着面2Aは、この例に限らず、損傷箇所Psの形態に応じて適宜設定することができる。
【0018】
図4及び図5は、遮断具1の他の構成例を示している。この例では、保持部3Aは、吸着面2Aの吸着力を消失させた状態で永久磁石2を保持し、操作部3Bは、吸着面2Aの消失した吸着力を発生させるように切り替える。この例では、保持部3Aは、図5に示すように、永久磁石2を囲む一対のヨーク30とそのヨーク30間に介在する非磁性材31によって構成されている。これよって、図5(a)に示すように、非磁性材31に対向して磁極を配置すると、ヨーク30内に磁力線が止まって、吸着面2Aの吸着力が消失した状態になる。また、図5(b)に示すように、ヨーク30に対向して磁極を配置すると、ヨーク30の外に磁力線が引き出され、保持部3Aの吸着面2Aに吸着力が発生した状態になる。
【0019】
この例では、図4に示すように、操作部3Bは、作業棒3内に延設される操作軸33を回転して、永久磁石2を図5(a)の状態から図5(b)の状態に切り替える。操作軸33の回転は、図示の例では、ウォームギヤを介して永久磁石2の回転軸2Bを回転させている。
【0020】
このような例の遮断具1によっても、前述した例と同様に、保持部3Aが金属ガス導管Pの表面に磁気吸着しない状態で永久磁石2を保持しているので、誤って損傷箇所Psとは異なる箇所に永久磁石2を吸着させてしまう不具合が無く、損傷箇所Psを正確に狙って、その直上に粘着部材4が付着した吸着面2Aを移動させることができる。そして、その状態で、操作部3Bを操作して、吸着面2Aの磁気吸着力を発生させることで、吸着面2Aを金属ガス導管Pの表面に吸着させ、確実に損傷箇所Psに粘着部材4を密着させることができる。
【0021】
図6は、遮断具1を用いた遮断方法の作業例を示しており、地下に埋設された金属ガス導管Pの損傷箇所Psから噴出するガスを、地上の作業者が遮断具1を用いて遮断する例を示している。作業者Mは、形成されている立て坑Tを介して、地上から作業棒3の操作部3Bを持って、作業棒3の先端に設けた保持部3Aを、金属ガス導管Pの損傷箇所Ps上に置く。そして、前述したように、操作部3Bを操作することで、保持部3Aに保持された永久磁石2を金属ガス導管Pの表面に吸着される。この際、作業棒3は、地上からの遠隔作業が可能になるように、十分な長さが確保されている。これによって、作業者Mは、立て坑Tに入ること無く、安全な地上で速やかにガス遮断の作業を行うことができる。
【0022】
図7は、遮断具1の応用例を示している。この例では、中空の作業棒3を放散管にして、損傷箇所Psからの噴出ガスを地上に放散させている。この使用例を実施するためには、永久磁石2と粘着部材4にガス流通孔を設けて、そのガス流通孔を通ったガスを中空の作業棒3内に進入させる。放散管を兼ねた作業棒3は、端部にバルブVや延長管を設けることで、噴出ガスを大気中に放散することができ、地上部においてバルブを操作することで噴出ガスを遮断することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0024】
1:噴出ガス応急遮断具(遮断具),2:永久磁石,2A:吸着面,
3:作業棒,3A:保持部,3B:操作部,
4:粘着部材,5:張力線,6:操作バー,
P:金属ガス導管,Ps:損傷箇所
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7