(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、
オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、
ポリエチレングリコール(c1成分)と3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物(c2成分)から選ばれる少なくとも1種と、を含み、
該c2成分が、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、エリスリトールのアルキレンオキシド付加体、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体、ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、3−メチル−3−ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体から選ばれる少なくとも1種である、
セメント用添加剤。
前記セメント組成物中の前記A成分の含有量が、前記セメントに対し、0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、前記セメント組成物中の前記B成分の含有量が、前記セメントに対し、0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントである、請求項2に記載のセメント組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中で「(メタ)アクリル」との表現がある場合は、「アクリルおよび/またはメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」との表現がある場合は、「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を意味し、「(メタ)アリル」との表現がある場合は、「アリルおよび/またはメタリル」を意味し、「(メタ)アクロレイン」との表現がある場合は、「アクロレインおよび/またはメタクロレイン」を意味する。また、本明細書中で「酸(塩)」との表現がある場合は、「酸および/またはその塩」を意味する。塩としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩が挙げられ、具体的には、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩などが挙げられる。
【0012】
≪セメント用添加剤≫
本発明のセメント用添加剤は、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、を含む。
【0013】
A成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0014】
B成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0015】
本発明のセメント用添加剤は、A成分とB成分との両方を含むことにより、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得るという効果を発現する。具体的には、本発明が発現し得るセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果は、A成分のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果とB成分のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、顕著に高い相乗効果を示す。
【0016】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分とB成分の合計量の含有割合は、好ましくは50質量%〜100質量%である。本発明のセメント用添加剤中のA成分とB成分の合計量の含有割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。本発明のセメント用添加剤中のA成分とB成分の合計量の含有割合が50質量%未満の場合、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって向上させることが困難となるおそれがある。
【0017】
本発明のセメント用添加剤の一つの実施形態は、本発明のセメント用添加剤がA成分とB成分とからなる。この場合、本発明のセメント用添加剤中の、A成分とB成分の合計量の含有割合は100質量%となる。
【0018】
本発明のセメント用添加剤の別の一つの実施形態は、本発明のセメント用添加剤がA成分とB成分と他の成分からなる。他の成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。この場合、本発明のセメント用添加剤中の、A成分とB成分の合計量の含有割合は、好ましくは50質量%〜99.9質量%であり、より好ましくは52質量%〜95質量%であり、さらに好ましくは53質量%〜90質量%であり、特に好ましくは54質量%〜90質量%である。
【0019】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含まない場合は、好ましくは110%〜10000%であり、より好ましくは120%〜5000%であり、さらに好ましくは130%〜3000%であり、さらに好ましくは150%〜2000%であり、さらに好ましくは180%〜1000%であり、特に好ましくは200%〜800%であり、最も好ましくは300%〜700%である。本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含まない場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0020】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含まない場合は、好ましくは110%〜10000%であり、より好ましくは120%〜5000%であり、さらに好ましくは130%〜3000%であり、さらに好ましくは150%〜2000%であり、さらに好ましくは300%〜1500%であり、特に好ましくは400%〜1300%であり、最も好ましくは500%〜1200%である。特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含まない場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0021】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合は、好ましく10%〜10000%であり、より好ましくは30%〜5000%であり、さらに好ましくは50%〜3000%であり、さらに好ましくは60%〜2000%であり、さらに好ましくは70%〜1000%であり、特に好ましくは80%〜500%であり、最も好ましくは90%〜300%である。本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0022】
本発明のセメント用添加剤中の、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合は、好ましくは10%〜10000%であり、より好ましくは30%〜5000%であり、さらに好ましくは50%〜3000%であり、さらに好ましくは80%〜2000%であり、さらに好ましくは100%〜1000%であり、特に好ましくは150%〜700%であり、最も好ましくは180%〜500%である。特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0023】
<A成分>
A成分は、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種である。A成分としてこのような成分を採用することにより、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得る。
【0024】
<B成分>
B成分は、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種である。すなわち、B成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0025】
B成分が、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる2種以上である場合は、好ましい組み合わせは、オキシカルボン酸もしくはその塩を必須に含む組み合わせである。例えば、B成分が、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる2種である場合には、好ましい組み合わせは、オキシカルボン酸もしくはその塩の2種、オキシカルボン酸もしくはその塩の1種とケト酸もしくはその塩の1種、オキシカルボン酸もしくはその塩の1種と糖の1種、オキシカルボン酸もしくはその塩の1種と糖アルコールの1種である。
【0026】
オキシカルボン酸としては、任意の適切なオキシカルボン酸を採用し得る。このようなオキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸などが挙げられ、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、グリコール酸、グルコン酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸から選ばれる少なくとも1種である。
【0027】
オキシカルボン酸の塩として採用し得る塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の、無機塩または有機塩が挙げられる。
【0028】
ケト酸としては、任意の適切なケト酸を採用し得る。このようなケト酸としては、例えば、ピルビン酸、オキソグルタル酸などが挙げられ、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、ピルビン酸である。
【0029】
ケト酸の塩として採用し得る塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミン等の、無機塩または有機塩が挙げられる。
【0030】
糖としては、任意の適切な糖を採用し得る。このような糖としては、例えば、グルコース、フラクトース、ガラクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、リボース、異性化糖などの単糖類;マルトース、スクロース(シュークロースともいう)、ラクトースなどの二糖類;ラフィノースなどの三糖類;デキストリンなどのオリゴ糖;などが挙げられ、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、グルコース、スクロースである。
【0031】
糖アルコールとしては、任意の適切な糖アルコールを採用し得る。このような糖アルコールとしては、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、ソルビトールである。
【0032】
<他の成分>
本発明のセメント用添加剤が含み得る他の成分としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他の成分を採用し得る。このような他の成分としては、本発明の効果がより発現し得る点で、好ましくは、ポリエチレングリコール(c1成分)と3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物(c2成分)から選ばれる少なくとも1種、上記A成分以外のアルカノールアミン化合物、フッ素含有化合物が挙げられる。
【0033】
(c1成分)
c1成分は、ポリエチレングリコールである。c1成分がポリエチレングリコールであることにより、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0034】
c1成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0035】
c1成分の重量平均分子量は、好ましくは150000以上であり、より好ましくは150000〜5000000であり、さらに好ましくは160000〜3000000であり、さらに好ましくは180000〜1000000であり、特に好ましくは200000〜800000であり、最も好ましくは300000〜600000である。c1成分の重量平均分子量が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0036】
(c2成分)
c2成分は、3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物である。a2成分が3価以上の多価アルコールにアルキレンオキシドが付加された構造を有する化合物であることにより、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたって顕著に向上させ得る。
【0037】
c2成分は、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0038】
3価以上の多価アルコールとしては、3個以上のヒドロキシル基を有する化合物であればよく、低分子化合物やポリマーでもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な3価以上の多価アルコールを採用し得る。このような3価以上の多価アルコールとしては、好ましくは3価〜500価のアルコールであり、より好ましくは3価〜100価のアルコールであり、さらに好ましくは3価〜50価のアルコールである。このような多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、エリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。
【0039】
多価アルコールとしては、水酸基を有するモノマーを重合して得られるものも挙げられる。水酸基を有するモノマーとしては、例えば、ビニルアルコール、アリルアルコール、メタアリルアルコール、ブテニルアルコール、3−メチル−3−ブテニルアルコール、3−メチル−2−ブテニルアルコール、2−メチル−3−ブテニルアルコールなどが挙げられる。これらは、単独で重合させてもよく、他の重合可能なモノマーと共重合させてもよい。ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へアルキレンオキシドを付加したものも多価アルコールに含まれる。
【0040】
アルキレンオキシドとしては、本発明の効果をより発現し得る点で、好ましくは炭素数2〜10のアルキレンオキシドであり、さらに好ましくは炭素数2〜8のアルキレンオキシドであり、より好ましくは炭素数2〜6のアルキレンオキシドであり、特に好ましくは炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、最も好ましくは炭素数2〜3のアルキレンオキシド(すなわち、エチレンオキシド、プロピレンオキシド)である。また、アルキレンオキシドは、1種であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0041】
多価アルコール1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数は、好ましくは5モル以上であり、より好ましくは10モル〜100000モルであり、さらに好ましくは20モル〜50000モルであり、さらに好ましくは30モル〜10000モルであり、特に好ましくは40モル〜5000モルであり、最も好ましくは50モル〜1000モルである。多価アルコール1モルに対するアルキレンオキシドの付加モル数が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0042】
c2成分の重量平均分子量は、好ましくは3000以上であり、より好ましくは4000〜5000000であり、さらに好ましくは5000〜1000000であり、さらに好ましくは8000〜500000であり、さらに好ましくは10000〜300000であり、特に好ましくは12000〜200000であり、最も好ましくは13000〜150000である。a2成分の重量平均分子量が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0043】
c2成分は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な官能基を有していてもよい。しかしながら、c2成分は、本発明の効果を十分に発現し得る点で、カルボキシル基は有さないことが好ましい。
【0044】
c2成分を合成する方法としては、公知の方法など、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。このような方法としては、例えば、水酸基を有するモノマーを重合した後、アルキレンオキシドを付加する方法、水酸基を有するモノマーに先にアルキレンオキシドを付加してから、重合する方法、などが挙げられる。
【0045】
c2成分としては、具体的には、例えば、グリセリンのアルキレンオキシド付加体、エリスリトールのアルキレンオキシド付加体、メタクリル酸のアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体、ソルビトールのアルキレンオキシド付加体、3−メチル−3−ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体、ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体から選ばれる少なくとも1種などが挙げられる。ここで、「ポリエチレンイミンのアミノ基に結合している活性水素へのアルキレンオキシド付加体」とは、ポリエチレンイミンが有するアミノ基に結合している活性水素にアルキレンオキシド(エチレンオキシドなど)が任意の適切な付加モル数で付加した付加体をいう。
【0046】
c2成分が3−メチル−3−ブテニルアルコールのアルキレンオキシド付加体由来の構造単位を有する共重合体の場合、本発明の効果をより発現し得る点で、該共重合体がカルボキシル基またはその塩(アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩など)を含まないことが好ましい。
【0047】
(A成分以外のアルカノールアミン化合物)
A成分以外のアルカノールアミン化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で、A成分以外の、任意の適切なアルカノールアミン化合物を採用し得る。このようなA成分以外のアルカノールアミン化合物としては、例えば、A成分以外の低分子型のアルカノールアミン化合物、高分子型のアルカノールアミン化合物などが挙げられる。
【0048】
A成分以外の低分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、メチルエタノールアミン、メチルイソプロパノールアミン、メチルジエタノールアミン、メチルジイソプロパノールアミン、ジエタノールイソプロパノールアミン、テトラヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−プロパノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2−ヒドロキシブチル)アミン、などが挙げられる。他の、A成分以外の低分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、トリイソプロパノールアミンの骨格を有するモノマーなども挙げられる。
【0049】
高分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、アルカノールアミンの一部がポリマーと結合している構造のアルカノールアミンが挙げられる。このような高分子型のアルカノールアミン化合物としては、例えば、トリイソプロパノールアミンの骨格を有するポリマーが挙げられる。
【0050】
(フッ素含有化合物)
本発明のセメント用添加剤がフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得るという効果を発現する。具体的には、本発明のセメント用添加剤がフッ素含有化合物を含む場合、本発明が発現し得るセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果は、A成分とB成分の相乗効果に起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果と、フッ素含有化合物のみに起因するセメント組成物の硬化物の長期強度向上効果との和から予想される効果に比べて、高い相乗効果を示す。
【0051】
フッ素含有化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0052】
フッ素含有化合物としては、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切なフッ素含有化合物を採用し得る。このようなフッ素含有化合物としては、例えば、
(1)XF
n系化合物(Xとしては、H、1価〜3価の金属(例えば、Li、Na、K、Mg、Ag、Ni、Pb、Zn、Cs、Co、Geなど)、Si、B、NH
4などが挙げられ、nはXの価数に対応して決まる数である。)、
(2)XSiF
6系化合物(Xとしては、H
2、Li
2、Na
2、K
2、Mg、(NH
4)
2、Pbなどが挙げられる。)、
(3)XPF
6系化合物(Xとしては、H、Li、Na、K、Ag、NH
4などが挙げられる。)、
(4)XBF
4系化合物(Xとしては、H、Li,Na、K、Cu、Ag、Ni、NH
4、Znなどが挙げられる。)、
(5)XHF
2系化合物(Xとしては、Na、K、NH
4などが挙げられる。)
などが挙げられる。
【0053】
本発明のセメント用添加剤がフッ素含有化合物を含む場合、A成分に対するフッ素含有化合物の質量の割合(フッ素含有化合物の質量/A成分の質量)は、好ましく10%〜10000%であり、より好ましくは30%〜5000%であり、さらに好ましくは50%〜3000%であり、さらに好ましくは60%〜2000%であり、さらに好ましくは70%〜1000%であり、特に好ましくは80%〜500%であり、最も好ましくは90%〜300%である。本発明のセメント用添加剤がフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するフッ素含有化合物の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0054】
≪セメント組成物≫
本発明のセメント組成物は、トリイソプロパノールアミン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミンから選ばれる少なくとも1種(A成分)と、オキシカルボン酸もしくはその塩、ケト酸もしくはその塩、糖、糖アルコールから選ばれる少なくとも1種(B成分)と、セメントと、を含む。
【0055】
本発明のセメント組成物は、好ましくは、A成分とB成分とセメントの他に、水と骨材を含み、より好ましくは、A成分とB成分とセメントと水と骨材とセメント混和剤を含む。
【0056】
本発明のセメント組成物は、A成分とB成分とセメントを含んでいれば、その調製方法としては、任意の適切な調製方法を採用し得る。例えば、A成分とB成分が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されて本発明のセメント組成物が調製されてもよいし、A成分とB成分が本発明のセメント用添加剤の形態を採らずに配合(例えば、A成分とB成分がそれぞれ別個に配合)されて本発明のセメント組成物が調製されてもよい。
【0057】
本発明のセメント組成物は、A成分とB成分とセメントに加えて、前述のフッ素含有化合物を含んでいてもよい。本発明のセメント組成物が前述のフッ素含有化合物を含む場合、その調製方法としては、任意の適切な調製方法を採用し得る。例えば、A成分とB成分とフッ素含有化合物が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されて本発明のセメント組成物が調製されてもよいし、A成分とB成分が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されてフッ素含有化合物が別個に配合されて本発明のセメント組成物が調製されてもよい。
【0058】
骨材としては、細骨材(砂等)や粗骨材(砕石等)などの任意の適切な骨材を採用し得る。このような骨材としては、例えば、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材が挙げられる。また、このような骨材として、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材も挙げられる。
【0059】
本発明のセメント組成物中のA成分の含有量は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.50質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.30質量%/セメントであり、特に好ましくは0.007質量%/セメント〜0.15質量%/セメントであり、最も好ましくは0.01質量%/セメント〜0.06質量%/セメントである。
【0060】
本発明のセメント組成物中のB成分の含有量は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.50質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.30質量%/セメントであり、特に好ましくは0.01質量%/セメント〜0.15質量%/セメントであり、最も好ましくは0.02質量%/セメント〜0.05質量%/セメントである。
【0061】
本発明のセメント組成物中のB成分の含有量は、特にB成分が2種以上の場合には、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.50質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.30質量%/セメントであり、特に好ましくは0.015質量%/セメント〜0.20質量%/セメントであり、最も好ましくは0.03質量%/セメント〜0.10質量%/セメントである。
【0062】
A成分とB成分が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されて本発明のセメント組成物となる場合であって、本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含まない場合は、本発明のセメント組成物中の本発明のセメント用添加剤の含有量は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.7質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.5質量%/セメントであり、特に好ましくは0.007質量%/セメント〜0.3質量%/セメントであり、最も好ましくは0.01質量%/セメント〜0.1質量%/セメントである。
【0063】
A成分とB成分が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されて本発明のセメント組成物となる場合であって、本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含まない場合は、本発明のセメント組成物中の本発明のセメント用添加剤の含有量は、特にB成分が2種以上の場合には、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.7質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.5質量%/セメントであり、特に好ましくは0.01質量%/セメント〜0.3質量%/セメントであり、最も好ましくは0.02質量%/セメント〜0.15質量%/セメントである。
【0064】
本発明のセメント組成物中、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含まない場合は、好ましくは110%〜10000%であり、より好ましくは120%〜5000%であり、さらに好ましくは130%〜3000%であり、さらに好ましくは150%〜2000%であり、さらに好ましくは180%〜1000%であり、特に好ましくは200%〜800%であり、最も好ましくは300%〜700%である。本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含まない場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0065】
本発明のセメント組成物中、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含まない場合は、好ましくは110%〜10000%であり、より好ましくは120%〜5000%であり、さらに好ましくは130%〜3000%であり、さらに好ましくは150%〜2000%であり、さらに好ましくは300%〜1500%であり、特に好ましくは400%〜1300%であり、最も好ましくは500%〜1200%である。特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含まない場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0066】
A成分とB成分とフッ素含有化合物が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されて本発明のセメント組成物となる場合は、本発明のセメント組成物中の本発明のセメント用添加剤の含有量は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.7質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.5質量%/セメントであり、特に好ましくは0.007質量%/セメント〜0.3質量%/セメントであり、最も好ましくは0.01質量%/セメント〜0.1質量%/セメントである。
【0067】
A成分とB成分とフッ素含有化合物が本発明のセメント用添加剤の形態として配合されて本発明のセメント組成物となる場合は、本発明のセメント組成物中の本発明のセメント用添加剤の含有量は、特にB成分が2種以上の場合には、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント〜1質量%/セメントであり、より好ましくは0.003質量%/セメント〜0.7質量%/セメントであり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント〜0.5質量%/セメントであり、特に好ましくは0.01質量%/セメント〜0.3質量%/セメントであり、最も好ましくは0.02質量%/セメント〜0.15質量%/セメントである。
【0068】
本発明のセメント組成物中、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合は、好ましく10%〜10000%であり、より好ましくは30%〜5000%であり、さらに好ましくは50%〜3000%であり、さらに好ましくは60%〜2000%であり、さらに好ましくは70%〜1000%であり、特に好ましくは80%〜500%であり、最も好ましくは90%〜300%である。本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0069】
本発明のセメント組成物中、A成分に対するB成分の質量の割合(B成分の質量/A成分の質量)は、特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合は、好ましく10%〜10000%であり、より好ましくは30%〜5000%であり、さらに好ましくは50%〜3000%であり、さらに好ましくは80%〜2000%であり、さらに好ましくは100%〜1000%であり、特に好ましくは150%〜700%であり、最も好ましくは180%〜500%である。特にB成分が2種以上の場合であって且つ本発明のセメント用添加剤が後述するフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント用添加剤中のA成分に対するB成分の割合が上記範囲内にあれば、本発明のセメント用添加剤は、セメント組成物の硬化物の強度を長期にわたってより顕著に向上させ得る。
【0070】
本発明のセメント用添加剤が前述するフッ素含有化合物を含む場合、本発明のセメント組成物中のフッ素含有化合物の含有量は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは0.001質量%/セメント以上であり、より好ましくは0.003質量%/セメント以上であり、さらに好ましくは0.005質量%/セメント以上であり、特に好ましくは0.01質量%/セメント以上であり、最も好ましくは0.02質量%/セメント以上である。一方で、フッ素含有化合物の多量の添加はコストの観点から好ましくないので、本発明のセメント組成物中のフッ素含有化合物の含有量は、セメントに対する含有量(質量%/セメント)として、好ましくは1質量%/セメント以下であり、より好ましくは0.50質量%/セメント以下であり、さらに好ましくは0.20質量%/セメント以下であり、さらに好ましくは0.10質量%/セメント以下であり、特に好ましくは0.07質量%/セメント以下であり、最も好ましくは0.05質量%以下である。
【0071】
上記セメント混和剤は、本発明の効果をより効果的に発現し得る点で、好ましくは、セメント混和剤用ポリマーを含む。
【0072】
セメント混和剤用ポリマーとしては、例えば、セメント分散剤(減水剤と称する場合もある。他の「セメント分散剤」なる記載も同様。)が挙げられる。セメント分散剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0073】
セメント分散剤としては、例えば、分子中にスルホン酸基を有するスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤などが挙げられる。
【0074】
ポリカルボン酸系分散剤は、好ましくは、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)と一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とを含むポリカルボン酸系共重合体(P)である。
【化1】
【化2】
【0075】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)由来の構造単位(I)とは、具体的には、下記式で表される。
【化3】
【0076】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)由来の構造単位(II)とは、具体的には、下記式で表される。
【化4】
【0077】
一般式(1)および一般式(I)中、R
1およびR
2は、同一または異なって、水素原子またはメチル基を表す。
【0078】
一般式(1)および一般式(I)中、R
3は、水素原子または炭素原子数1〜30の炭化水素基を表す。炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜30のアルキル基(脂肪族アルキル基や脂環式アルキル基)、炭素原子数1〜30のアルケニル基、炭素原子数1〜30のアルキニル基、炭素原子数6〜30の芳香族基などが挙げられる。
【0079】
一般式(1)および一般式(I)中、AOは、炭素原子数2〜18のオキシアルキレン基であり、好ましくは炭素原子数2〜8のオキシアルキレン基であり、より好ましくは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基である。
【0080】
一般式(1)および一般式(I)中、nは、AOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜500である。
【0081】
一般式(1)および一般式(I)中、xは0〜2の整数である。
【0082】
一般式(1)および一般式(I)中、yは0または1である。y=0の場合、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、エーテル構造を有する単量体(不飽和ポリアルキレングリコールエーテル系単量体(a1))となる。y=1の場合、一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)は、エステル構造を有する単量体(不飽和ポリアルキレングリコールエステル系単量体(a1))となる。
【0083】
一般式(1)で表される不飽和ポリアルキレングリコール系単量体(a)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステル;ビニルアルコール、(メタ)アリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オールのいずれかにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物;であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸のアルコキシポリアルキレングリコール類のエステル、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキシドを1〜500モル付加した化合物である。
【0084】
一般式(2)および一般式(II)中、R
4〜R
6は、同一または異なって、水素原子、メチル基、または−(CH
2)
zCOOM基を表す。−(CH
2)
zCOOM基は−COOX基または他の−(CH
2)
zCOOM基と無水物を形成していても良い。zは0〜2の整数である。
【0085】
Mは、水素原子、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
【0086】
Xは、水素原子、メチル基、エチル基、一価金属原子、二価金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基を表す。
【0087】
一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体(b)としては、本発明の効果を一層発現させ得る点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸であり、より好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0088】
ポリカルボン酸系共重合体(P)中には、構造単位(I)と構造単位(II)以外に、他の単量体(c)由来の構造単位(III)を含んでいても良い。
【0089】
スルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アントラセンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、ポリアルキルアリールスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等の、メラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の、芳香族アミノスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;リグニンスルホン酸塩、変性リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;ポリスチレンスルホン酸塩系スルホン酸系分散剤;などが挙げられる。
【0090】
セメント混和剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な他のセメント添加剤(材)を含有することができる。このような他のセメント添加剤(材)としては、例えば、以下の(1)〜(11)に例示するような他のセメント添加剤(材)が挙げられる。セメント混和剤に含まれ得るセメント混和剤用ポリマーとこのような他のセメント添加剤(材)との配合比は、用いる他のセメント添加剤(材)の種類や目的に応じて、任意の適切な配合比を採用し得る。
【0091】
(1)水溶性高分子物質:メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の非イオン性セルロースエーテル類;酵母グルカンやキサンタンガム、β−1.3グルカン類等の微生物醗酵によって製造される多糖類;ポリアクリルアミド等。
【0092】
(2)高分子エマルジョン:(メタ)アクリル酸アルキル等の各種ビニル単量体の共重合物等。
【0093】
(3)早強剤・促進剤:塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム等の可溶性カルシウム塩;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物;硫酸塩;水酸化カリウム;水酸化ナトリウム;炭酸塩;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩;アルカノールアミン;アルミナセメント;カルシウムアルミネートシリケート等。
【0094】
(4)オキシアルキレン系消泡剤:ジエチレングリコールヘプチルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル類;ポリオキシアルキレンアセチレンエーテル類;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩類;ポリオキシアルキレンアルキルリン酸エステル類;ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンラウリルアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)、アルキレンオキシドを付加させた硬化牛脂から得られる脂肪酸由来のアミン(プロピレンオキシド1〜20モル付加、エチレンオキシド1〜20モル付加物等)等のポリオキシアルキレンアルキルアミン類;ポリオキシアルキレンアミド等。
【0095】
(5)オキシアルキレン系以外の消泡剤:鉱油系、油脂系、脂肪酸系、脂肪酸エステル系、アルコール系、アミド系、リン酸エステル系、金属石鹸系、シリコーン系等の消泡剤。
【0096】
(6)AE剤:樹脂石鹸、飽和又は不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)、アルカンスルホネート、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル又はその塩、ポリオキシエチレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル又はその塩、タンパク質材料、アルケニルスルホコハク酸、α−オレフィンスルホネート等。
【0097】
(7)その他界面活性剤:各種アニオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の各種カチオン性界面活性剤;各種ノニオン性界面活性剤;各種両性界面活性剤等。
【0098】
(8)防水剤:脂肪酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコン、パラフィン、アスファルト、ワックス等。
【0099】
(9)防錆剤:亜硝酸塩、リン酸塩、酸化亜鉛等。
【0100】
(10)ひび割れ低減剤:ポリオキシアルキルエーテル等。
【0101】
(11)膨張材;エトリンガイト系、石炭系等。
【0102】
その他の公知のセメント添加剤(材)としては、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤等を挙げることができる。これら公知のセメント添加剤(材)は1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0103】
本発明のセメント組成物に含まれるセメントとしては、任意の適切なセメントを採用し得る。このようなセメントとしては、例えば、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)などが挙げられる。さらに、本発明のセメント組成物には、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏が添加されていても良い。本発明のセメント組成物に含まれるセメントは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0104】
本発明のセメント組成物においては、その1m
3あたりの単位水量、セメント使用量、および水/セメント比としては任意の適切な値を設定し得る。このような値としては、好ましくは、単位水量が100kg/m
3〜185kg/m
3であり、使用セメント量が250kg/m
3〜800kg/m
3であり、水/セメント比(質量比)=0.1〜0.7であり、より好ましくは、単位水量が120kg/m
3〜175kg/m
3であり、使用セメント量が270kg/m
3〜800kg/m
3であり、水/セメント比(質量比)=0.12〜0.65である。このように、本発明のセメント組成物は、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m
3以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0105】
本発明のセメント組成物がセメント混和剤用ポリマーを含む場合、本発明のセメント組成物中の、セメント混和剤用ポリマーの含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、水硬セメントを用いるモルタルやコンクリート等に使用する場合には、セメント100質量部に対するセメント混和剤用ポリマーの含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.02質量部〜5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部〜3質量部である。このような含有割合とすることにより、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0106】
本発明のセメント組成物中のセメント混和剤の含有割合としては、目的に応じて、任意の適切な含有割合を採用し得る。このような含有割合としては、セメント100質量部に対するセメント混和剤の含有割合として、好ましくは0.01質量部〜10質量部であり、より好ましくは0.05質量部〜8質量部であり、さらに好ましくは0.1質量部〜5質量部である。上記含有割合が0.01質量部未満の場合、十分な性能を発現できないおそれがあり、上記含有割合が10質量部を超える場合、発現できる効果が実質上頭打ちとなって経済性の面からも不利となるおそれがある。
【0107】
本発明のセメント組成物は、レディーミクストコンクリート、コンクリート2次製品用のコンクリート、遠心成形用コンクリート、振動締め固め用コンクリート、蒸気養生コンクリート、吹付けコンクリート等に有効であり得る。本発明のセメント組成物は、中流動コンクリート(スランプ値が22〜25cmのコンクリート)、高流動コンクリート(スランプ値が25cm以上で、スランプフロー値が50〜70cmのコンクリート)、自己充填性コンクリート、セルフレベリング材等の高い流動性を要求されるモルタルやコンクリートにも有効であり得る。
【0108】
本発明のセメント組成物は、構成成分を任意の適切な方法で配合して調製すれば良い。例えば、構成成分をミキサー中で混練する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0109】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、部とある場合は質量部を意味し、%とある場合は質量%を意味する。
【0110】
<重量平均分子量分析条件>
ポリエチレングリコールの重量平均分子量については、市販品でカタログやホームページ上で公開されている場合は、実施例および比較例において特記(例えば、「実測値」などと記載)していない限り、その値を採用した(カタログやホームページ上での公開が「平均分子量」等の他の表現になっている場合はその値を採用した)。
・使用カラム:東ソー株式会社製、TSKguardcolumnα+TSKgelα−5000+TSKgelα−4000+TSKgelα−3000を各1本ずつ連結して使用した。
・溶離液:リン酸二水素ナトリウム・2H
2O:62.4g、リン酸水素二ナトリウム・12H
2O:143.3gを、イオン交換水:7794.3gに溶解させた溶液に、アセトニトリル:2000gを混合した溶液を用いた。
・検出器:Viscotek社製のトリプル検出器「Model302光散乱検出器」、直角光散乱として90°散乱角度、低角度光散乱として7°散乱角度、セル容量として18μL、波長として670nm。
・標準試料:東ソー株式会社製、ポリエチレングリコールSE−8(Mw=l07000)を用い、そのdn/dCを0.135ml/g、溶離液の屈折率を1.333として装置定数を決定した。
・打ち込み量
標準試料:ポリマー濃度が0.2vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
サンプル:ポリマー濃度が1.0vol%になるように上記溶離液で溶解させた溶液を100μL注入した。
・流速:0.8ml/min
・カラム温度:40℃
【0111】
<28日圧縮強度の測定(実施例29〜56、比較例18〜36用)>
(フロー値と空気量の測定)
セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)、細骨材として大井川水系産陸砂、粗骨材として青海産砕石、A成分および/またはB成分、減水剤(セメント分散剤と称する場合もある。他の「減水剤」なる記載も同様。)、混練水として水道水を用い、セメント:382kg/m
3、水:172kg/m
3、細骨材:796kg/m
3、粗骨材:930kg/m
3、細骨材率(細骨材/細粗骨材+粗骨材)(容積比):47%、水/セメント比(質量比)=0.45の配合にてセメント組成物を調製した。
なお、セメント組成物の温度が20℃の測定温度になるように、測定に使用する材料、強制練りミキサー、測定器具類を上記の測定温度雰囲気下で調温し、混練および各測定は上記の測定温度雰囲気下で行った。また、セメント組成物中の気泡がセメント組成物の流動性に及ぼす影響を避けるために、必要に応じてオキシアルキレン系消泡剤を用い、空気量が1.0±0.5%となるように調整した。
上記条件下に強制練りミキサーを用いて混練時間90秒間でコンクリートを製造し、フロー値と空気量を測定した。なお、フロー値と空気量の測定は、日本工業規格(JIS−A−1101、1128)に準拠して行った。また、A成分および/またはB成分、減水剤の添加量は、フロー値が37.5〜42.5cmになる添加量とした。
(28日圧縮強度)
フロー値と空気量を測定した後、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:100mm×200mm
供試体養生(28日):温度約20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
なお、実施例、比較例における「強度(%)対比較例18or比較例19
*」とは、減水剤として共重合体(1)を用いた実施例、比較例については比較例18(共重合体(1)を用いたブランク試験に相当)で測定された28日圧縮強度を100(%)としたときの強度比、減水剤として共重合体(2)を用いた実施例、比較例については比較例19(共重合体(2)を用いたブランク試験に相当)で測定された28日圧縮強度を100としたときの強度比のことである。また、「強度(%)相乗効果分」とは、A成分とB成分を併用した実施例において、「用いたA成分のみを用いた場合の対応する比較例における強度(%)−100(%)」と「用いたB成分のみを用いた場合の対応する比較例における強度(%)−100(%)」との単純和をX(%)とし、「該A成分とB成分を併用した実施例における強度(%)−100(%)」をY(%)としたときの、「Y(%)−X(%)」のことであり、この値が大きいほど、A成分とB成分を併用したことによる単純和に対する相乗効果が大きいことを示している。
【0112】
<28日圧縮強度の測定(実施例60〜62、比較例39〜41用)>
JIS−R5201−1997に準拠した機械練り用練混ぜ機、さじ、フローテーブル、フローコーンおよび突き棒を使用した。この際、特記しない限りは、JIS−R5201−1997に準拠してモルタル試験を行なった。
試験に使用した材料およびモルタルの配合は、太平洋セメント社製普通ポルトランドセメント587g、砂1350g、減水剤の水溶液、消泡剤、添加剤を含むイオン交換水264.1g、である。消泡剤は、気泡がモルタル組成物の分散性に及ぼす影響を避けることを目的に添加し、空気量が3.0%以下になるようにした。具体的にはオキシアルキレン系消泡剤を、減水剤に対して0.1%になるような量で使用した。なお、モルタルの空気量が3.0%より大きい場合には、空気量が3.0%以下になるように消泡剤の添加量を調節した。
モルタルは、室温(20±2℃)にてホバート型モルタルミキサー(型番N−50、ホバート社製)を用いて、4分30秒間で調製した。具体的には、練り鉢に規定量のセメントを入れ、練混ぜ機に取り付けた直後、規定量のセメント混和剤用ポリマーおよび消泡剤を含んだ水を加え、低速で始動させ30秒間練り混ぜた。その後、低速で練り混ぜを続けながら砂を30秒間かけて投入した後、高速にして引き続き30秒間練混ぜを続けた。練り鉢を練混ぜ機から取り外し、120秒間練混ぜを休止した後、再度練り鉢を練混ぜ機へ取り付け、高速で60秒間練混ぜた後(1番始めに低速で始動させてから4分30秒後)、さじで左右各10回かき混ぜた。練混ぜたモルタルをフローテーブル上に置いたフローコーンに2層に分けて詰めた。各層は、突き棒の先端がその層の約1/2の深さまで入るように、全面にわたって各々15回突き、最後に不足分を補い、表面をならし、1番始めに低速で始動させてから6分後に、フローコーンを垂直に持ち上げた後、テーブルに広がったモルタルの直径を2方向について測定し、この平均値をフロー値とした。
混練後フロー値と空気量を測定し、圧縮強度試験用試料を作成し、以下の条件にて、28日後の圧縮強度を測定した。
供試体作成:50mm×100mm
供試体養生(28日):温度20℃、湿度60%、恒温恒湿空気養生を24時間行った後、27日間水中で養生
供試体研磨:供試体面 研磨(供試体研磨仕上げ機使用)
圧縮強度測定:自動圧縮強度測定器(前川製作所)
なお、実施例、比較例における「強度(%)対比較例39」とは、比較例39(共重合体(1)を用いたブランク試験に相当)で測定された28日圧縮強度を100(%)としたときの強度比のことである。また、「強度(%)相乗効果分」とは、A成分とB成分とフッ素含有化合物を併用した実施例において、「用いたA成分とB成分を用いてフッ素含有化合物を用いない場合の対応する実施例における強度(%)−100(%)」と「用いたフッ素含有化合物のみを用いた場合の対応する比較例における強度(%)−100(%)」との単純和をX(%)とし、「該A成分とB成分とフッ素含有化合物を併用した実施例における強度(%)−100(%)」をY(%)としたときの、「Y(%)−X(%)」のことであり、この値が大きいほど、A成分とB成分とフッ素含有化合物を併用したことによる単純和に対する相乗効果が大きいことを示している。
【0113】
〔製造例1〕:共重合体(1)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水80.0部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数9個)133.4部、メタクリル酸26.6部、メルカプトプロピオン酸1.53部およびイオン交換水106.7部の混合溶液を4時間かけて滴下し、それと同時に過硫酸アンモニウム1.19部とイオン交換水50.6部の混合溶液を5時間かけて滴下した。滴下完了後1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量100000の共重合体(1)の水溶液を得た。
【0114】
〔製造例2〕:共重合体(2)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器に、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)の水酸基にエチレンオキシドを付加(エチレンオキシドの平均付加モル数50)させたもの(以下、IPN−50と称す)(80%水溶液)198.2部、アクリル酸0.32部、過酸化水素水(2%水溶液)12.47部、イオン交換水44.75部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら58℃まで加温した。次に、アクリル酸27.12部、イオン交換水108.5部からなる混合溶液を3時間かけ滴下し、それと同時にL−アスコルビン酸0.74部、3−メルカプトプロピオン酸1.61部、イオン交換水86.31部からなる混合溶液を3時間30分かけて滴下した。滴下完了後1時間、58℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量140000の共重合体(2)の水溶液を得た。
【0115】
〔製造例3〕:共重合体(3)の製造
ジムロート冷却管、テフロン(登録商標)製の撹拌翼と撹拌シール付の撹拌器、窒素導入管、温度センサーを備えたガラス製反応容器にイオン交換水103.7部を仕込み、250rpmで撹拌下、窒素を200mL/分で導入しながら70℃まで加温した。次に、IPN−50(80%水溶液)188部、アクリルアミド9.6部、イオン交換水53.07部からなる混合溶液を4時間かけ滴下し、それと同時に3−メルカプトプロピオン酸0.13部、イオン交換水29.47部からなる混合溶液と過硫酸アンモニウム0.48部とイオン交換水15.55部の混合溶液をそれぞれ5時間かけて滴下した。滴下完了後1時間、70℃に保って重合反応を完結させた。そして、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、重量平均分子量130000の共重合体(3)の水溶液を得た。
【0116】
〔実施例1〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(1)を調製した。
【0117】
〔実施例2〕
グルコン酸ナトリウムの配合量を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行い、セメント用添加剤(2)を調製した。
【0118】
〔実施例3〕
TIPA、グルコン酸ナトリウムの配合量を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行い、セメント用添加剤(3)を調製した。
【0119】
〔実施例4〕
TIPA、グルコン酸ナトリウムの配合量を表1のように変えた以外は実施例1と同様に行い、セメント用添加剤(4)を調製した。
【0120】
〔実施例5〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、酒石酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(5)を調製した。
【0121】
〔実施例6〕
酒石酸の配合量を表1のように変えた以外は実施例5と同様に行い、セメント用添加剤(6)を調製した。
【0122】
〔実施例7〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、クエン酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(7)を調製した。
【0123】
〔実施例8〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、リンゴ酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(8)を調製した。
【0124】
〔実施例9〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコース(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(9)を調製した。
【0125】
〔実施例10〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、ソルビトール(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(10)を調製した。
【0126】
〔実施例11〕
EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(11)を調製した。
【0127】
〔実施例12〕
グルコン酸ナトリウムの配合量を表1のように変えた以外は実施例11と同様に行い、セメント用添加剤(12)を調製した。
【0128】
〔実施例13〕
EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)、酒石酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(13)を調製した。
【0129】
〔実施例14〕
酒石酸の配合量を表1のように変えた以外は実施例13と同様に行い、セメント用添加剤(14)を調製した。
【0130】
〔実施例15〕
EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)、クエン酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(15)を調製した。
【0131】
〔実施例16〕
EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)、リンゴ酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(16)を調製した。
【0132】
〔実施例17〕
THEDA(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、東京化成社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(17)を調製した。
【0133】
〔実施例18〕
グルコン酸ナトリウムの配合量を表1のように変えた以外は実施例17と同様に行い、セメント用添加剤(18)を調製した。
【0134】
〔実施例19〕
THEDA(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、東京化成社製)、酒石酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(19)を調製した。
【0135】
〔実施例20〕
酒石酸の配合量を表1のように変えた以外は実施例13と同様に行い、セメント用添加剤(20)を調製した。
【0136】
〔実施例21〕
THEDA(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、東京化成社製)、クエン酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(21)を調製した。
【0137】
〔実施例22〕
THEDA(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、東京化成社製)、リンゴ酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合して、セメント用添加剤(22)を調製した。
【0138】
〔実施例23〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合し、さらに、PEG50万(ポリエチレングリコール500,000、和光純薬工業社製、重量平均分子量=50万(http://www.wako−chem.co.jp/siyaku/qa/ccn/pdf/ccn52.pdfに記載の平均分子量値)、以下同様)を0.025質量%/セメントとなる量で添加し、セメント用添加剤(23)を調製した。
【0139】
〔実施例24〕
EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合し、さらに、ESP(重量平均分子量=23000、ポリエチレンイミン(重量平均分子量=600)のアミノ基の活性水素1モルに対してエチレンオキシドを20モル付加したもの)を0.025質量%/セメントとなる量で添加し、セメント用添加剤(24)を調製した。
【0140】
〔実施例25〕
THEDA(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、東京化成社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合し、製造例3で得られた共重合体(3)を0.025質量%/セメントとなる量で添加し、セメント用添加剤(25)を調製した。
【0141】
〔実施例26〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、ソルビトール(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合し、さらに、ESP(重量平均分子量=23000、ポリエチレンイミン(重量平均分子量=600)のアミノ基の活性水素1モルに対してエチレンオキシドを20モル付加したもの)を0.01質量%/セメントとなる量で添加し、セメント用添加剤(26)を調製した。
【0142】
〔実施例27〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、スクロース(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合し、さらに、PEG50万(ポリエチレングリコール500,000、和光純薬工業社製、重量平均分子量=50万(http://www.wako−chem.co.jp/siyaku/qa/ccn/pdf/ccn52.pdfに記載の平均分子量値)、以下同様)を0.01質量%/セメントとなる量で添加し、セメント用添加剤(27)を調製した。
【0143】
〔実施例28〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、グリコール酸(和光純薬工業社製)を表1の条件で配合し、製造例3で得られた共重合体(3)を0.01質量%/セメントとなる量で添加し、セメント用添加剤(28)を調製した。
【0144】
〔比較例1〕
表2のように、TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C1)とした。
【0145】
〔比較例2〕
表2のように、TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C2)とした。
【0146】
〔比較例3〕
表2のように、TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C3)とした。
【0147】
〔比較例4〕
表2のように、EDIPA(ヒドロキシエチルジイソプロパノールアミン、アルドリッチ社製)をセメント用添加剤(C4)とした。
【0148】
〔比較例5〕
表2のように、THEDA(N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、東京化成社製)をセメント用添加剤(C5)とした。
【0149】
〔比較例6〕
表2のように、TEA(トリエタノールアミン、東京化成社製)をセメント用添加剤(C6)とした。
【0150】
〔比較例7〕
表2のように、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C7)とした。
【0151】
〔比較例8〕
表2のように、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C8)とした。
【0152】
〔比較例9〕
表2のように、酒石酸(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C9)とした。
【0153】
〔比較例10〕
表2のように、酒石酸(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C10)とした。
【0154】
〔比較例11〕
表2のように、クエン酸(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C11)とした。
【0155】
〔比較例12〕
表2のように、クエン酸(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C12)とした。
【0156】
〔比較例13〕
表2のように、リンゴ酸(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C13)とした。
【0157】
〔比較例14〕
表2のように、リンゴ酸(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C14)とした。
【0158】
〔比較例15〕
表2のように、グルコース(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C15)とした。
【0159】
〔比較例16〕
表2のように、ソルビトール(和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C16)とした。
【0160】
〔比較例17〕
TEA(トリエタノールアミン、東京化成社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表2の条件で配合して、セメント用添加剤(C17)を調製した。
【0161】
【表1】
【0162】
【表2】
【0163】
〔実施例29〜56〕
表3に示す条件にて、減水剤として製造例1で得られた共重合体(1)とA成分およびB成分(実施例51〜56においては、実施例23〜28で用いた、A成分およびB成分以外のその他成分も)を用いて28日圧縮強度を測定した。すなわち、セメント組成物を調製して28日圧縮強度を測定した。なお、その他成分のセメントに対する配合割合は、実施例23〜28と同様とした。
なお、セメント組成物を調製するにあたって、A成分およびB成分(実施例51〜56においては、実施例23〜28で用いた、A成分およびB成分以外のその他成分も)として、実施例1〜28で得られたセメント用添加剤(1)〜(28)を用いた場合であっても、A成分およびB成分(実施例51〜56においては、実施例23〜28で用いた、A成分およびB成分以外のその他成分も)をそれぞれ独立に添加して用いた場合であっても、同様の結果が得られた。
結果を表3に示した。
【0164】
〔比較例18〜36〕
表4に示す条件にて、減水剤として製造例1〜2で得られた共重合体(1)または共重合体(2)と比較例1〜17で得られたセメント用添加剤(C1)〜(C17)を用いて28日圧縮強度を測定した。すなわち、セメント組成物を調製して28日圧縮強度を測定した。
結果を表4に示した。
【表3】
【0165】
【表4】
【0166】
表3、4に示すように、A成分とB成分を併用した実施例29〜56における28日圧縮強度の強度比は、「各実施例において用いたA成分のみを用いた対応する比較例における強度(%)−100(%)」と「各実施例において用いたB成分のみを用いた対応する比較例における強度(%)−100(%)」との単純和に比べて、「実施例における強度(%)−100(%)」(表3における「強度(%)対比較例18or比較例19
*」)が有意に増加しており、顕著な相乗効果が見られた。
【0167】
〔実施例57〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(57)を調製した。
【0168】
〔実施例58〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、MgSiF
6(ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム、和光純薬工業社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(58)を調製した。
【0169】
〔実施例59〕
TIPA(トリイソプロパノールアミン、和光純薬工業社製)、グルコン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)、KF(フッ化カリウム、和光純薬工業社製)を表5の条件で配合して、セメント用添加剤(59)を調製した。
【0170】
〔比較例37〕
表5のように、MgSiF
6(ヘキサフルオロケイ酸マグネシウム、和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C37)とした。
【0171】
〔比較例38〕
表5のように、KF(フッ化カリウム、和光純薬工業社製)をセメント用添加剤(C38)とした。
【0172】
【表5】
【0173】
〔実施例60〜62〕
表6に示す条件にて、減水剤として製造例1で得られた共重合体(1)とA成分、B成分、フッ素含有化合物(実施例61、62)を用いて28日圧縮強度を測定した。すなわち、セメント組成物を調製して28日圧縮強度を測定した。
なお、セメント組成物を調製するにあたって、A成分、B成分、フッ素含有化合物(実施例61、62)として、実施例57〜59で得られたセメント用添加剤(57)〜(59)を用いた場合であっても、A成分、B成分、フッ素含有化合物(実施例61、62)をそれぞれ独立に添加して用いた場合であっても、A成分とB成分を同時に添加し、フッ素含有化合物(実施例61、62)を独立に添加して用いた場合であっても、同様の結果が得られた。
結果を表6に示した。
【0174】
〔比較例39〜41〕
表6に示す条件にて、減水剤として製造例1で得られた共重合体(1)と比較例37〜38で得られたセメント用添加剤(C37)〜(C38)を用いて28日圧縮強度を測定した。すなわち、セメント組成物を調製して28日圧縮強度を測定した。
結果を表6に示した。
【0175】
【表6】
【0176】
表6に示すように、A成分とB成分とフッ素含有化合物を併用した実施例61、62における28日圧縮強度は、A成分とB成分を併用した(フッ素含有化合物を併用しない)実施例60に比べて、さらに高くなることが判る。また、表6に示すように、A成分とB成分とフッ素含有化合物を併用した実施例61、62における28日圧縮強度の強度比は、「各実施例において用いたA成分とB成分を用いてフッ素含有化合物を用いない場合の対応する実施例における強度(%)−100(%)」と「各実施例において用いたフッ素含有化合物のみを用いた対応する比較例における強度(%)−100(%)」との単純和に比べて、「実施例における強度(%)−100(%)」(表6における「強度(%)対比較例39」)が増加しており、相乗効果が見られた。