(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893844
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】トリムカバー及び乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20210614BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
B60N2/90
B60R16/02 620A
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-141322(P2017-141322)
(22)【出願日】2017年7月20日
(65)【公開番号】特開2019-18811(P2019-18811A)
(43)【公開日】2019年2月7日
【審査請求日】2019年12月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】特許業務法人航栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 弘登
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克彦
【審査官】
望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−276628(JP,A)
【文献】
特開2012−095416(JP,A)
【文献】
実開平03−122946(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/90
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電装品を備える乗物用シートのトリムカバーであって、
前記電装品から延びるハーネスを保持するガイド部と、
前記ハーネスの端末部に設けられているコネクタが固定される固定部と、
を備え、
前記ガイド部と前記固定部は、前記トリムカバーの外面に配置され、
前記トリムカバーが前記乗物用シートを覆っている状態で、前記ガイド部は、前記固定部よりも鉛直方向下側に配置されるトリムカバー。
【請求項2】
請求項1記載のトリムカバーであって、
前記ハーネスを少なくともシート外方から覆う被覆部をさらに備えるトリムカバー。
【請求項3】
請求項2記載のトリムカバーであって、
前記被覆部は、筒状のハーネス挿通部を有し、
前記ガイド部は、前記ハーネス挿通部の出口側開口部によって構成されているトリムカバー。
【請求項4】
請求項2又は3記載のトリムカバーであって、
前記被覆部は、前記コネクタをシート外方から覆うコネクタ被覆部を有するトリムカバー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載のトリムカバーと、
電装品と、
を備え、
前記電装品から延びるハーネスが、前記トリムカバーの前記ガイド部に保持されており、且つ前記ハーネスの端末部に設けられているコネクタが、前記トリムカバーの前記固定部に固定されており、
前記ハーネスは、前記ガイド部から前記固定部に向けて、少なくとも鉛直上向きに延在している乗物用シート。
【請求項6】
請求項5記載の乗物用シートであって、
前記固定部が、前記トリムカバーに替えて、当該乗物用シートのフレームに設けられている乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリムカバー及び乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるシートには、例えばシートベルトの装着を検知するバックルセンサ、シートクッションの座面などを加温するヒータ、電動リクライニングなどに用いられるモータ等の電装品が搭載されている。電装品から延びるハーネス(以下、シートハーネスという)は、例えばシートクッションの底面又は側面に固定され、固定箇所から車両フロアに向けて垂下されており、シートハーネスの端末部に設けられているコネクタが、車両フロアに配線されるハーネス(以下、フロアハーネスという)のコネクタに接続される(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−122946公報
【特許文献2】実開平4−67555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シートハーネスが乗員の濡れた靴、濡れた傘等と接触し、シートハーネスに水滴が付着する場合がある。シートハーネスが、シートクッションの底面又は側面における固定箇所から車両フロアに向けて垂下されていると、シートハーネスに付着した水滴がハーネスを伝って端末部のコネクタに浸入し、水がコネクタに浸入することによって短絡が発生する虞がある。防水コネクタを用いて水の浸入を抑制することも可能であるが、防水コネクタの使用はコストの増加を招く。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたものであり、コストをかけずに、電装品から延びるハーネスのコネクタに対する水の浸入を抑制できるトリムカバー及び乗物用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様のトリムカバーは、電装品を備える乗物用シートのトリムカバーであって、前記電装品から延びるハーネスを保持するガイド部と、前記ハーネスの端末部に設けられているコネクタが固定される固定部と、を備え、
前記ガイド部と前記固定部は、前記トリムカバーの外面に配置され、前記トリムカバーが前記乗物用シートを覆っている状態で、前記ガイド部は、前記固定部よりも鉛直方向下側に配置される。
【0007】
また、本発明の一態様の乗物用シートは、前記トリムカバーと、電装品と、を備え、前記電装品から延びるハーネスが、前記トリムカバーの前記ガイド部に保持されており、且つ前記ハーネスの端末部に設けられているコネクタが、前記トリムカバーの前記固定部に固定されており、前記ハーネスは、前記ガイド部から前記固定部に向けて、少なくとも鉛直上向きに延在している。
【0008】
また、本発明の一態様の乗物用シートは、前記固定部が、前記トリムカバーに替えて、当該乗物用シートのフレームに設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コストをかけずに、電装品から延びるシートハーネスのコネクタに対する水の浸入を抑制できるトリムカバー及び乗物用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの一例の斜視図である。
【
図3】
図1のシートの背面図であって、電装品から延びるハーネスがフロアハーネスと接続されている状態を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの他の例の斜視図である。
【
図6】
図4のシートの背面図であって、電装品から延びるハーネスがフロアハーネスと接続されている状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1から
図3は、本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの一例を示す。
【0012】
図1から
図3に示す乗物用シート1は、自動車等の車両に搭載される乗物用シートであって、シートに着座した乗員の臀部及び大腿部を支持するシートクッション2と、乗員の腰部及び背部を支持するシートバック3と、シートバック3の上端部に設けられており、乗員の頸部及び頭部を支持するヘッドレスト4とを備える。
【0013】
シートクッション2は、シート幅方向に間隔をあけて配置されている一対のサイドフレーム11を含むフレーム10と、フレーム10を覆うクッションパッド12とを有し、クッションパッド12はトリムカバー13によって覆われている。シートバック3及びヘッドレスト4もまた、フレームと、フレームを覆うクッションパッドとを含み、クッションパッドはトリムカバーによって覆われている。
【0014】
シートクッション2の一対のサイドフレーム11それぞれのシート後方側の端部11aは、クッションパッド12及びトリムカバー13から露出されており、シートバック3のリクライニング軸14を保持している。そして、一方のサイドフレーム11の端部11aには、シートベルトのバックル15が取り付けられている。
【0015】
バックル15は、シートベルトのアンカーがバックル15に装着されたことを検出するバックルセンサ16と、バックルセンサ16から延びるハーネス17とを有し、ハーネス17の端末部には、コネクタ18が設けられている。ハーネス17は、コネクタ18を介して、車両フロアに配線されるフロアハーネスと接続される。
【0016】
図2に示すように、ハーネス17は、サイドフレーム11の端部11aの外面に沿ってサイドフレーム11のシート後方側の縁11eを回り、シートクッション2のシート後方側の側面(以下、後面という)2aに配線される。後面2aを覆っているトリムカバー13には、ハーネス17を保持するガイド部20と、ハーネス17のコネクタ18を固定する固定部21とが設けられている。
【0017】
ガイド部20は、例えばトリムカバー13に用いられる皮革、織布、不織布等の表皮材からなる短冊片によって構成されており、短冊片の両端部がトリムカバー13に縫い付けられることによって環状に形成されている。ハーネス17は、環状に形成されたガイド部20に挿通されている。
【0018】
固定部21は、トリムカバー13に形成された係止孔によって構成されている。なお、樹脂等の補強材によって係止孔の周囲が補強されていてもよい。コネクタ18には、係止爪22が設けられており、係止爪22が固定部21に挿し込まれ、且つ固定部21の縁部に係合することによって、コネクタ18は固定部21に固定される。
図3に示すように、ハーネス17は、固定部21に固定されたコネクタ18を介して、フロアハーネス19と接続される。
【0019】
ガイド部20は、コネクタ18が固定されている固定部21よりも鉛直方向下側に配置されている。ハーネス17は、ガイド部20に挿通されている部分の鉛直方向位置がガイド部20の位置に保持されており、ガイド部20から固定部21に向けて、少なくとも鉛直上向きに延在している。
【0020】
ガイド部20から固定部21の区間でハーネス17に付着した水滴は、鉛直方向下側に配置されているガイド部20に向けて流れ落ちる。ガイド部20よりもバックル15側の区間でハーネス17に付着した水滴も、ガイド部20にとどまり、ガイド部20を越えて固定部21側に伝わることはない。これにより、ハーネス17に付着した水滴がハーネス17を伝って端末部のコネクタ18に浸入することを抑制でき、短絡及び短絡に起因するバックルセンサ16の故障を防止できる。
【0021】
なお、ガイド部20の構成は、ハーネス17を保持可能である限りにおいて、適宜変更でき、固定部21の構成は、コネクタ18を固定可能である限りにおいて、適宜変更できる。
【0022】
図4から
図6は、本発明の実施形態を説明するための、乗物用シートの他の例を示す。なお、
図1に示した乗物用シート1と共通する要素には共通の符号を付し、説明を簡略又は省略する。
【0023】
図4から
図6に示す乗物用シート101では、シートクッション2のトリムカバー13が、被覆部30をさらに備える。被覆部30は、例えばトリムカバー13に用いられる皮革、織布、不織布等の表皮材からなり、バックル15が取り付けられている側のトリムカバー13の側面に縫い付けられている。
【0024】
被覆部30は、サイドフレーム11の端部11aの外面に沿ってサイドフレーム11のシート後方側の縁11eを回り、例えば面ファスナ、スナップボタン等の接合部材31を用いてシートクッション2の後面2aに添え着けられている。同じくサイドフレーム11の端部11aの外面に沿ってサイドフレーム11のシート後方側の縁11eを回り、シートクッション2の後面2aに配線されているハーネス17は、被覆部30によってシート外方から覆われている。
【0025】
ハーネス17を被覆部30によってシート外方から覆うことにより、ハーネス17を保護でき、また、シート1の外観品質を高めることができる。さらに、本例では、被覆部30はコネクタ被覆部32を有しており、固定部21に固定されているハーネス17のコネクタ18をコネクタ被覆部32によってシート外方から覆うことにより、コネクタ18を保護でき、また、シート1の外観品質を高めることができる。また、露出したサイドフレーム11の端部11aも被覆部30によって覆われ、サイドフレーム11の端部11aが露出していることに対して乗員が抱く危害感を除去ないし軽減できる。
【0026】
図5及び
図6に示すように、被覆部30は、外皮33と内皮34とを有する。外皮33と内皮34とは、筒状に縫い合わされており、筒状に縫い合わされた外皮33と内皮34とによってハーネス挿通部35が形成されている。ハーネス17は、ハーネス挿通部35に挿通された状態で、サイドフレーム11の端部11aの外面に沿って端部11aのシート後方側の縁11eを回り、シートクッション2の後面2aに配線されている。
【0027】
このハーネス挿通部35は、サイドフレーム11のシート後方側の縁11eに重なって配置されている。ハーネス17とサイドフレーム11の縁11eとの間に内皮34が介在することから、ハーネス17とサイドフレーム11の縁11eとが接触することによるハーネス17の損傷を防止でき、ハーネス17を保護できる。
【0028】
そして、本例では、ハーネス17を保持するガイド部が、ハーネス挿通部35の出口側開口部36によって構成されている。出口側開口部36を形成する内皮34の縁部34eの上側部分が外皮33に縫い付けられることによって、出口側開口部36は窄められており、出口側開口部36は、コネクタ18が固定されている固定部21よりも鉛直方向下側に配置されている。ハーネス17は、出口側開口部36に挿通されている部分の鉛直方向位置が出口側開口部36の位置に保持されており、出口側開口部36から固定部21に向けて、少なくとも鉛直上向きに延在している。
【0029】
出口側開口部36から固定部21の区間でハーネス17に付着した水滴は、鉛直方向下側に配置されている出口側開口部36に向けて流れ落ちる。出口側開口部36よりもバックル15側の区間でハーネス17に付着した水滴も、出口側開口部36にとどまり、出口側開口部36を越えて固定部21側に伝わることはない。そもそも、ハーネス17が被覆部30によってシート外方から覆われており、ハーネス17に水滴が付着する可能性は低減されているが、万一、ハーネス17に水滴が付着したとしても、付着した水滴がハーネス17を伝って端末部のコネクタ18に浸入することを抑制でき、短絡及び短絡に起因するバックルセンサ16の故障を防止できる。
【0030】
ここまで、ハーネス17のコネクタ18が固定される固定部は、トリムカバー13に設けられているものとして説明したが、
図7に示すとおり、固定部は、シートクッション2のフレーム10に設けられてもよい。
図7に示す例では、一対のサイドフレーム11の間に架け渡されているクロスメンバ40の一部が、クッションパッド12及びトリムカバー13に形成されている孔41を通して露出されており、露出されたクロスメンバ40の一部に、係止孔によって構成される固定部42が設けられている。
【0031】
また、電装品はバックルセンサ16に限定されず、シートクッション2の座面を加温するヒータ、シートバック3のリクライニングに用いられるモータ等であってもよく、これらの電装品から延びるハーネスもまた、バックルセンサ16から延びるハーネス17と同様にシートクッション2の後面2aに配線され、上述したガイド部20と固定部21の構成、又はガイド部として被覆部30の出口側開口部36と固定部21の構成を適用可能である。また、本発明は、自動車等の車両に搭載されるシートに限らず、航空機、船舶等の車両以外の乗物用のシートにも応用できる。
【0032】
以上、説明したとおり、本明細書に開示されたトリムカバーは、電装品を備える乗物用シートのトリムカバーであって、前記電装品から延びるハーネスを保持するガイド部と、前記ハーネスの端末部に設けられているコネクタが固定される固定部と、を備え、前記トリムカバーが前記乗物用シートを覆っている状態で、前記ガイド部は、前記固定部よりも鉛直方向下側に配置される。
【0033】
また、本明細書に開示されたトリムカバーは、前記ハーネスを少なくともシート外方から覆う被覆部をさらに備える。
【0034】
また、本明細書に開示されたトリムカバーは、前記被覆部が、筒状のハーネス挿通部を有し、前記ガイド部は、前記ハーネス挿通部の出口側開口部によって構成されている。
【0035】
また、本明細書に開示されたトリムカバーは、前記被覆部が、前記コネクタをシート外方から覆うコネクタ被覆部を有する。
【0036】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記トリムカバーと、電装品と、を備え、前記電装品から延びるハーネスが、前記トリムカバーの前記ガイド部に保持されており、且つ前記ハーネスの端末部に設けられているコネクタが、前記トリムカバーの前記固定部に固定されており、前記ハーネスは、前記ガイド部から前記固定部に向けて、少なくとも鉛直上向きに延在している。
【0037】
また、本明細書に開示された乗物用シートは、前記固定部が、前記トリムカバーに替えて、当該乗物用シートのフレームに設けられている。
【符号の説明】
【0038】
1,101 乗物用シート
2 シートクッション
3 シートバック
4 ヘッドレスト
10 フレーム
11 サイドフレーム
12 クッションパッド
13 トリムカバー
14 支軸
15 バックル
16 バックルセンサ
17 ハーネス
18 コネクタ
19 フロアハーネス
20 ガイド部
21 固定部
22 係止爪
30 被覆部
31 接合部材
32 コネクタ被覆部
33 外皮
34 内皮
35 ハーネス挿通部
36 出口側開口部
40 クロスメンバ
41 孔
42 固定部