特許第6893857号(P6893857)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893857
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】発進方法決定装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20210614BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20210614BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20210614BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20210614BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20210614BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20210614BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   B60W20/10ZHV
   B60W10/06 900
   B60W10/08 900
   B60W10/10 900
   B60K6/48
   B60L50/16
   B60L15/20 K
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-183945(P2017-183945)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2019-59280(P2019-59280A)
(43)【公開日】2019年4月18日
【審査請求日】2020年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】植村 智史
【審査官】 佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−094990(JP,A)
【文献】 特開2000−265870(JP,A)
【文献】 特開2016−137802(JP,A)
【文献】 特開2016−215924(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0105213(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00−20/50
B60K 6/20−6/547
B60L 1/00−58/40
B60D 1/30
B62D 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方車両と後方車両とが連節器により揺動可能に連節されてエンジン及びモータを駆動源とするハイブリッド連節バスの、発進時の駆動方法を決定する発進方法決定装置であって、
前記ハイブリッド連節バスが位置する路面の勾配を取得する勾配取得部と、
前記ハイブリッド連節バスの操舵角を取得する操舵角取得部と、
前記連節器の揺動角を取得する連節器揺動角取得部と、
前記勾配取得部が取得した前記勾配、前記操舵角取得部が取得した前記操舵角、及び前記連節器揺動角取得部が取得した前記揺動角に基づいて前記ハイブリッド連節バスの発進時の走行抵抗を推定する走行抵抗推定部と、
前記走行抵抗推定部が推定した走行抵抗に基づいて前記ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法を決定する発進方法決定部と、を備える、
発進方法決定装置。
【請求項2】
前記発進方法決定部は、前記ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法として、前記ハイブリッド連節バスの駆動源を決定する、
請求項1に記載の発進方法決定装置。
【請求項3】
前記発進方法決定部は、前記走行抵抗推定部が推定した走行抵抗が閾値を超えるまでは、前記モータを前記ハイブリッド連節バスの駆動源として決定し、前記走行抵抗推定部が推定した走行抵抗が前記閾値を超えると、前記モータ及び前記エンジンを前記ハイブリッド連節バスの駆動源として決定する、
請求項2に記載の発進方法決定装置。
【請求項4】
前記ハイブリッド連節バスは、互いに異なる変速比が設定された自動変速機を有し、
前記発進方法決定部は、前記ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法として、前記自動変速機の変速比を決定する、
請求項1〜3の何れか一項に記載の発進方法決定装置。
【請求項5】
前記ハイブリッド連節バスが発進する前に、前記ハイブリッド連節バスの駆動方法を、前記発進方法決定部が決定した駆動方法に切り換える発進方法切換部を更に備える、
請求項1〜4の何れか一項に記載の発進方法決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方車両と後方車両とが連節器により揺動可能に連節されてエンジン及びモータを駆動源とするハイブリッド連節バスの、発進時の駆動方法を決定する発進方法決定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の駆動源としてエンジンとモータとを備え、車両の停止時にエンジンを自動停止させ、発進をモータで行わせた後にエンジンを始動させるハイブリッド車両の制御装置が記載されている。この制御装置は、操舵角及び路面勾配に基づいて車両の発進時に関わる走行抵抗が通常よりも大きいと判断すると、車両の停止時におけるエンジンの自動停止を禁止して、モータによる発進後に速やかにエンジンによる駆動力を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−265870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前方車両と後方車両とが連節器により揺動可能に連節された連節バスに特許文献1に記載された技術を適用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、発進時の駆動源はモータのみであるため、前方車両と後方車両とが連節された連節バスでは、発進時に十分な駆動力が得られない場合がある。しかも、連節バスは、前方車両と後方車両とが揺動可能に連節された構成を有するため、前方車両と後方車両との位置関係によっては、発進時に大きな走行抵抗が生じて、更に発進時に十分な駆動力が得られない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明は、ハイブリッド連節バスにおいて発進時に十分な駆動力を得ることができる発進方法決定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る発進方法決定装置は、前方車両と後方車両とが連節器により揺動可能に連節されてエンジン及びモータを駆動源とするハイブリッド連節バスの、発進時の駆動方法を決定する発進方法決定装置であって、ハイブリッド連節バスが位置する路面の勾配を取得する勾配取得部と、ハイブリッド連節バスの操舵角を取得する操舵角取得部と、連節器の揺動角を取得する連節器揺動角取得部と、勾配取得部が取得した勾配、操舵角取得部が取得した操舵角、及び連節器揺動角取得部が取得した揺動角に基づいてハイブリッド連節バスの発進時の走行抵抗を推定する走行抵抗推定部と、走行抵抗推定部が推定した走行抵抗に基づいてハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法を決定する発進方法決定部と、を備える。
【0007】
この発進方法決定装置では、路面の勾配、操舵角、及び連節器の揺動角に基づいてハイブリッド連節バスの発進時の走行抵抗を推定するため、ハイブリッド連節バスの発進時の走行抵抗を高精度に推定することができる。そして、この推定した走行抵抗に基づいてハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法を決定するため、この決定した駆動方法で発進することで、ハイブリッド連節バスにおいて発進時に十分な駆動力を得ることができる。
【0008】
発進方法決定部は、発進時の駆動方法として、ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法として、ハイブリッド連節バスの駆動源を決定してもよい。この発進方法決定装置では、ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法としてハイブリッド連節バスの駆動源を決定することで、発進時に適切な駆動力を得ることができる。
【0009】
発進方法決定部は、走行抵抗推定部が推定した走行抵抗が閾値を超えるまでは、モータをハイブリッド連節バスの駆動源として決定し、走行抵抗推定部が推定した走行抵抗が閾値を超えると、モータ及びエンジンをハイブリッド連節バスの駆動源として決定してもよい。この発進方法決定装置では、走行抵抗と閾値との対比に基づいてハイブリッド連節バスの駆動源を決定することで、駆動源を決定する処理を簡易化することができる。
【0010】
ハイブリッド連節バスは、互いに異なる変速比が設定された自動変速機を有し、発進方法決定部は、ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法として、自動変速機の変速比を決定してもよい。この発進方法決定装置では、ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法として自動変速機の変速比を決定することで、発進時に適切な駆動力を得ることができる。
【0011】
ハイブリッド連節バスが発進する前に、ハイブリッド連節バスの駆動方法を、発進方法決定部が決定した駆動方法に切り換える発進方法切換部を更に備えてもよい。この発進方法決定装置では、ハイブリッド連節バスが発進する前に、ハイブリッド連節バスの駆動方法を、発進方法決定部が決定した駆動方法に切り換えるため、発進時に十分な駆動力を得ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ハイブリッド連節バスにおいて発進時に十分な駆動力を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の発進方法決定装置が搭載されるハイブリッド連節バスの模式側面図である。
図2】実施形態の発進方法決定装置が搭載されるハイブリッド連節バスの模式平面図である。
図3】ハイブリッド連節バスの動力伝達経路を示す模式図である。
図4】発進方法決定装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】ハイブリッド連節バスが坂道で停車している状態を示す図である。
図6】ハイブリッド連節バスが旋回して停車している状態を示す図である。
図7】ハイブリッド連節バスの発進時の駆動方法の一例を示す図である。
図8】発進方法決定装置の処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係る発進方法決定装置について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の説明では、車両前後方向における前及び後を単に前及び後ともいう。
【0015】
[ハイブリッド連節バス]
まず、本実施形態の発進方法決定装置が搭載されるハイブリッド連節バスについて説明する。図1及び図2に示すように、ハイブリッド連節バス1は、前方車両2と、後方車両3と、連節部4と、を備える。
【0016】
前方車両2は、ハイブリッド連節バス1の車両前後方向前側に配置される。前方車両2は、ハイブリッド連節バス1を駆動する駆動源が搭載されない従動車両である。前方車両2は、ドライバが操舵を行うステアリング5と、車両前後方向前側に位置する前輪6と、前輪6よりも車両前後方向後方に位置する第一後輪7と、を備える。前輪6は、ステアリング5により操舵される操舵輪である。前輪6及び第一後輪7は、回転駆動されない従動輪である。
【0017】
後方車両3は、ハイブリッド連節バス1の車両前後方向後側であって、前方車両2の車両前後方向後方に配置される。後方車両3は、ハイブリッド連節バス1を駆動する駆動源が搭載された駆動車両である。後方車両3は、駆動源であるエンジン8及びモータジェネレータ9と、車両前後方向中央部に位置する第二後輪10と、を備える。エンジン8は、ガソリン、軽油等の燃料により駆動する内燃機関である。モータジェネレータ9は、電動機(モータ)及び発電機として機能する電動発電機である。つまり、モータジェネレータ9は、発電機として機能する場合、回転するエンジン8の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して、HVバッテリ(不図示)を充電する。一方、モータジェネレータ9は、電動機として機能する場合、HVバッテリに充電されている電気エネルギーにより回転して、第二後輪10を回転駆動する。第二後輪10は、エンジン8及びモータジェネレータ9の少なくとも一方により回転駆動されて、ハイブリッド連節バス1を駆動させる駆動輪である。
【0018】
図3に示すように、ハイブリッド連節バス1では、駆動源の駆動力を第二後輪10に伝達する動力伝達経路に、互いに異なる変速比が設定された自動変速機11が設けられている。そして、この動力伝達経路において、エンジン8と自動変速機11(AMT:オートマチック・マニュアル・トランスミッション)との間にクラッチ12が配置されており、自動変速機11とクラッチ12との間にモータジェネレータ9が配置されている。このため、クラッチ12を離してモータジェネレータ9を電動機として機能させると、第二後輪10は、モータジェネレータ9のみの駆動力により回転駆動する。また、クラッチ12を接続してモータジェネレータ9を電動機として機能させると、第二後輪10は、モータジェネレータ9及びエンジン8の駆動力により回転駆動する。また、クラッチ12を接続してモータジェネレータ9を発電機として機能させると、第二後輪10は、エンジン8のみの駆動力により回転駆動する。
【0019】
図2に示すように、連節部4は、前方車両2と後方車両3とを車両前後方向に揺動可能に連節する連節器14を備える。なお、連節部4は、連節器14以外にも、前方車両2と後方車両3とに架け渡される通路部、前方車両2及び後方車両3に取り付けられて連節器14及び通路部を覆う幌等を備える。
【0020】
連節器14は、前方車両2及び後方車両3に接続されて、前方車両2と後方車両3とを車両前後方向に揺動可能に連節する。連節器14は、前方車両2に接続される前側接続部14aと、後方車両3に接続される後側接続部14bと、を備える。前側接続部14aと後側接続部14bとは、前方車両2と後方車両3との間において、車両上下方向に延びる軸線を揺動中心として揺動可能に接続される。
【0021】
[発進方法決定装置]
次に、本実施形態に係る発進方法決定装置について説明する。
【0022】
図4に示すように、発進方法決定装置100は、勾配センサ101と、操舵角センサ102と、連節器揺動角センサ103と、ECU(Electronic Control Unit)110と、を備える。
【0023】
勾配センサ101は、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配(図5参照)を検出するためのセンサである。勾配センサ101としては、例えば、ハイブリッド連節バス1の加速度を検出する加速度センサが用いられる(図1参照)。勾配センサ101は、前方車両2及び後方車両3の双方に設けられている。但し、勾配センサ101は、前方車両2及び後方車両3の何れか一方にのみ設けられていてもよい。つまり、前方車両2と後方車両3とは、車両前後方向に連節されて互いに同じ路面を走行するため、前方車両2及び後方車両3の何れか一方にのみ勾配センサ101を設けておけば、この勾配センサ101の検出値から、勾配センサ101が設けられていない車両が位置する路面の勾配を推定することができる。勾配センサ101は、検出した路面の勾配をECU110に送信する。
【0024】
操舵角センサ102は、ハイブリッド連節バス1の操舵角(図6参照)を検出するためのセンサである。操舵角センサ102としては、例えば、ステアリングシャフトの回転角を検出するセンサが用いられる(図1及び図2参照)。操舵角センサ102は、検出した操舵角をECU110に送信する。
【0025】
連節器揺動角センサ103は、連節器14の揺動角(図6参照)を検出するためのセンサである。連節器14の揺動角とは、前側接続部14aに対する後方車両3の揺動角であって、前方車両2に対する後方車両3の傾斜(揺動)角度をいう。連節器揺動角センサ103としては、例えば、ロータリエンコーダが用いられる(図1及び図2参照)。連節器揺動角センサ103は、検出した揺動角をECU110に送信する。
【0026】
ECU110は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)、CAN(Controller Area Network)通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECU110では、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU110は、複数の電子制御ユニットから構成されていてもよい。ECU110には、CAN通信回路を介して、勾配センサ101、操舵角センサ102、及び連節器揺動角センサ103が接続されている。
【0027】
ECU110は、機能構成として、勾配取得部111と、操舵角取得部112と、連節器揺動角取得部113と、走行抵抗推定部114と、発進方法決定部115と、発進方法切換部116と、備える。
【0028】
勾配取得部111は、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配(図5参照)を取得する。具体的には、勾配取得部111は、勾配センサ101から送信された勾配を受信することで、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配を取得する。このとき、勾配取得部111は、勾配センサ101が検出した勾配を、そのままハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配としてもよいが、前方車両2が位置する路面の勾配の度合いと後方車両3の位置する路面の勾配の度合いとが異なる場合は、より大きい勾配を、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配としてもよく、また、前方車両2が位置する路面の勾配と後方車両3の位置する路面の勾配とが逆向きである場合は、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配はない(ハイブリッド連節バス1が平坦路に位置する)ものとしてもよい。なお、勾配取得部111においてハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配を取得する方法は特に限定されない。例えば、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配は、他のセンサから取得してもよく、他のセンサから取得した情報から計算により求めてもよい。
【0029】
操舵角取得部112は、ハイブリッド連節バス1の操舵角(図6参照)を取得する。具体的には、操舵角取得部112は、操舵角センサ102から送信された操舵角を受信することで、ハイブリッド連節バス1の操舵角を取得する。なお、操舵角取得部112においてハイブリッド連節バス1の操舵角を取得する方法は特に限定されない。例えば、ハイブリッド連節バス1の操舵角は、他のセンサから取得してもよく、他のセンサから取得した情報から計算により求めてもよい。
【0030】
連節器揺動角取得部113は、連節器14の揺動角(図6参照)を取得する。具体的には、連節器揺動角取得部113は、連節器揺動角センサ103から送信された揺動角を受信することにより連節器14の揺動角を取得する。なお、連節器揺動角取得部113において連節器14の揺動角を取得する方法は特に限定されない。例えば、連節器14の揺動角は、他のセンサから取得してもよく、他のセンサから取得した情報から計算により求めてもよい。
【0031】
走行抵抗推定部114は、勾配取得部111が取得した勾配、操舵角取得部112が取得した操舵角、及び連節器揺動角取得部113が取得した揺動角に基づいて、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定する。
【0032】
具体的に説明すると、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配とハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗とは相関があり、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配が大きくなるほどハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗が大きくなる。そこで、事前の実験又はシミュレーション等により、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配とハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗との関係を示す勾配−走行抵抗マップ(不図示)を作成しておく。
【0033】
また、ハイブリッド連節バス1の操舵角とハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗とは相関があり、ハイブリッド連節バス1の操舵角が大きくなるほどハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗が大きくなる。そこで、事前の実験又はシミュレーション等により、ハイブリッド連節バス1の操舵角とハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗との関係を示す操舵角−走行抵抗マップ(不図示)を作成しておく。
【0034】
また、連節器14の揺動角とハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗とは相関があり、連節器14の揺動角が大きくなるほどハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗が大きくなる。そこで、事前の実験又はシミュレーション等により、ハイブリッド連節バス1の操舵角とハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗との関係を示す揺動角−走行抵抗マップ(不図示)を作成しておく。
【0035】
走行抵抗推定部114は、勾配−走行抵抗マップから勾配取得部111が取得した勾配に対応する走行抵抗を求め、操舵角−走行抵抗マップから操舵角取得部112が取得した操舵角に対応する走行抵抗を求め、操舵角−走行抵抗マップから連節器揺動角取得部113が取得した揺動角に対応する走行抵抗を求める。そして、走行抵抗推定部114は、これらの求めた走行抵抗を足し合わせることで、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定する。
【0036】
発進方法決定部115は、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗に基づいてハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法を決定する。ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法の種類としては、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動源及び変速比がある。このため、発進方法決定部115は、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法として、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動源及び変速比を決定する。つまり、発進方法決定部115は、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗に対応する発進駆動力(発進時の駆動力)が得られるように、ハイブリッド連節バス1の駆動源及び変速比を決定(選択)する。但し、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法は、変速比を固定して、駆動源のみを選択することにより決定してもよく、駆動源を固定して、変速比のみを選択することにより決定してもよい。
【0037】
上述したように、ハイブリッド連節バス1は、エンジン8及びモータジェネレータ9を駆動源とするため、発進時の駆動源としては、(1)モータジェネレータ9のみ、(2)モータジェネレータ9及びエンジン8の双方、(3)エンジン8のみ、の3パターンがある。このため、発進方法決定部115は、発進時の駆動源として、この3パターンの何れかを選択する。なお、本実施形態では、処理を簡易化する観点から、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動源として、(1)モータジェネレータ9のみ、(2)モータジェネレータ9及びエンジン8の双方、の何れかを選択するものとして説明する。但し、(3)エンジン8のみも、駆動源の選択肢に入れてもよい。
【0038】
また、ハイブリッド連節バス1は、自動変速機11において互いに異なる変速比が設定されている。このため、発進方法決定部115は、発進時の変速比として、自動変速機11の何れかのギア段(変速比)を選択する。なお、本実施形態では、変速比として、(1)1速のギア段、(2)2速のギア段、の何れかを選択するものとして説明する。但し、他のギア段も、変速比の選択肢に入れてもよい。
【0039】
具体的に説明すると、図7に示すように、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法として、方法1〜方法4を用意する。方法1は、駆動源をモータジェネレータ9のみとし、変速比を2速のギア段とする方法である。方法2は、駆動源をモータジェネレータ9のみとし、変速比を1速のギア段とする方法である。方法3は、駆動源をモータジェネレータ9及びエンジン8の双方とし、変速比を2速のギア段とする方法である。方法4は、駆動源をモータジェネレータ9及びエンジン8の双方とし、変速比を1速のギア段とする方法である。ハイブリッド連節バス1の発進駆動力は、方法1から方法4に向かうほど大きくなる。
【0040】
そして、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗に対応する発進駆動力が得られるように、方法1〜方法4の何れかを選択する。走行抵抗と必要な発進駆動力とは相関があり、走行抵抗が大きくなるほど必要な発進駆動力が大きくなる。そこで、事前の実験又はシミュレーション等により、各方法を選択するための走行抵抗の閾値を設定しておく。そして、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗と設定した閾値とを対比することにより、方法1〜方法4の中から、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗に対応する発進駆動力が得られる方法を選択する。
【0041】
ここで、方法3を選択するための走行抵抗の閾値を、閾値Aとする。この場合、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗が閾値Aを超えるまでは、モータジェネレータ9を駆動源として選択する。つまり、方法2を選択する。一方、走行抵抗推定部114が推定した走行抵抗が閾値Aを超えると、モータジェネレータ9及びエンジン8を駆動源として選択する。つまり、方法3を選択する。
【0042】
発進方法切換部116は、ハイブリッド連節バス1が発進する前に、ハイブリッド連節バス1の駆動方法を、発進方法決定部115が決定した駆動方法に切り換える。駆動方法(駆動源及び変速比)の切り換えは、周知の方法により行うことができる。
【0043】
[発進方法決定装置の処理動作]
次に、発進方法決定装置100の処理動作について説明する。発進方法決定装置100の処理動作は、ハイブリッド連節バス1が停車してから発進するまでの間に、ECU110により行われる。
【0044】
図8に示すように、まず、発進方法決定装置100は、ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配を取得する勾配取得ステップを行う(S1)。勾配取得ステップS1は、勾配取得部111により行われる。ハイブリッド連節バス1が位置する路面の勾配の取得は、例えば、勾配センサ101から送信された勾配を受信することにより行う。
【0045】
次に、発進方法決定装置100は、ハイブリッド連節バス1の操舵角を取得する操舵角取得ステップを行う(S2)。操舵角取得ステップS2は、操舵角取得部112により行われる。ハイブリッド連節バス1の操舵角の取得は、例えば、操舵角センサ102から送信された操舵角を受信することにより行う。
【0046】
次に、発進方法決定装置100は、連節器14の揺動角を取得する連節器揺動角取得ステップを行う(S3)。連節器揺動角取得ステップS3は、連節器揺動角取得部113により行われる。連節器14の揺動角の取得は、例えば、連節器揺動角センサ103から送信された揺動角を受信することにより行う。
【0047】
なお、勾配取得ステップS1、操舵角取得ステップS2、及び連節器揺動角取得ステップS3の順序は、特に限定されず、適宜変更することができる。
【0048】
次に、発進方法決定装置100は、勾配取得ステップS1で取得した勾配、操舵角取得ステップS2で取得した操舵角、及び連節器揺動角取得ステップS3で取得した揺動角に基づいて、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定する走行抵抗推定ステップを行う(S4)。走行抵抗推定ステップS4は、走行抵抗推定部114により行われる。ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗の推定は、勾配取得ステップS1で取得した勾配に対応する走行抵抗と、操舵角取得ステップS2で取得した操舵角に対応する走行抵抗と、連節器揺動角取得ステップS3で取得した揺動角に対応する走行抵抗とを求め、これらの走行抵抗を足し合わせることにより行う。
【0049】
次に、走行抵抗推定ステップS4で推定した走行抵抗に基づいて、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法を決定する発進方法決定ステップを行う(S5)。発進方法決定ステップS5は、発進方法決定部115により行われる。ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法の決定は、走行抵抗推定ステップS4で推定した走行抵抗に対応する発進駆動力が得られるように、ハイブリッド連節バス1の駆動源及び変速比を決定(選択)することにより行う。つまり、方法1〜方法4のうち、走行抵抗推定ステップS4で推定した走行抵抗に対応する発進駆動力が得られる方法を選択することにより行う。
【0050】
次に、ハイブリッド連節バス1が発進する前に、ハイブリッド連節バス1の駆動方法を、発進方法決定ステップS5で決定した駆動方法に切り換える発進方法切換ステップを行う(S6)。発進方法切換ステップS6は、発進方法切換部116により行われる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態に係る発進方法決定装置では、路面の勾配、操舵角、及び連節器14の揺動角に基づいてハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定するため、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を高精度に推定することができる。そして、この推定した走行抵抗に基づいてハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法を決定するため、この決定した駆動方法で発進することで、ハイブリッド連節バス1において発進時に十分な駆動力を得ることができる。
【0052】
また、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法として、ハイブリッド連節バス1の駆動源を決定することで、発進時に適切な駆動力を得ることができる。この場合、走行抵抗と閾値との対比に基づいてハイブリッド連節バス1の駆動源を決定することで、駆動源を決定する処理を簡易化することができる。
【0053】
また、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法として自動変速機11の変速比(ギア段)を決定することで、発進時に適切な駆動力を得ることができる。
【0054】
また、ハイブリッド連節バス1が発進する前に、ハイブリッド連節バス1の発進時の駆動方法を、発進方法決定部115が決定した駆動方法に切り換えるため、発進時に十分な駆動力を得ることができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用してもよい。
【0056】
例えば、上記実施形態では、駆動源(エンジン8及びモータジェネレータ9)は、後方車両3に搭載されるものとして説明したが、前方車両2に搭載されるものであってもよい。また、上記実施形態は、ハイブリッド連節バス1が前進する場合に適用することが好ましいが、ハイブリッド連節バス1が後退する場合に適用してもよい。
【0057】
上記実施形態では、走行抵抗推定部114は、勾配取得部111が取得した勾配に対応する走行抵抗と、操舵角取得部112が取得した操舵角に対応する走行抵抗と、連節器揺動角取得部113が取得した揺動角に対応する走行抵抗とを、単純に足し合わせることで、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定するものとした。しかしながら、走行抵抗推定部114は、前方車両2及び後方車両3のうち駆動輪を備える車両の乗員よりも駆動輪を備えない車両の乗員が多い場合は、連節器揺動角取得部113が取得した揺動角に対応する走行抵抗の重みづけを大きくして、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定してもよい。車両の乗員の数は、例えば、人感センサ、ハイブリッド連節バス1の乗降口に設置した検札機などにより検出することができる。
【0058】
また、走行抵抗推定部114は、操舵角取得部112が取得した操舵角と連節器揺動角取得部113が取得した揺動角とが逆方向である場合は、操舵角取得部112が取得した操舵角に対応する走行抵抗及び連節器揺動角取得部113が取得した揺動角に対応する走行抵抗の重みづけを大きくして、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定してもよい。
【0059】
また、連節器揺動角取得部113が取得した揺動角が連節器14の上限又は略上限の揺動角であり、かつ、操舵角取得部112が取得した操舵角と連節器揺動角取得部113が取得した揺動角とが同方向である場合は、操舵角取得部112が取得した操舵角に対応する走行抵抗及び連節器揺動角取得部113が取得した揺動角に対応する走行抵抗の重みづけを大きくして、ハイブリッド連節バス1の発進時の走行抵抗を推定してもよい。なお、連節器14の揺動角の略上限の範囲は、例えば、操舵角取得部112が取得した操舵角と連節器揺動角取得部113が取得した揺動角とが同方向である場合に、ハイブリッド連節バス1が発進した直後に連節器14の揺動角が上限に達する範囲をいう。
【符号の説明】
【0060】
1…ハイブリッド連節バス、2…前方車両、3…後方車両、4…連節部、5…ステアリング、6…前輪、7…第一後輪、8…エンジン、9…モータジェネレータ(モータ)、10…第二後輪、11…自動変速機、12…クラッチ、14…連節器、14a…前側接続部、14b…後側接続部、100…発進方法決定装置、101…勾配センサ、102…操舵角センサ、103…連節器揺動角センサ、110…ECU、111…勾配取得部、112…操舵角取得部、113…連節器揺動角取得部、114…走行抵抗推定部、115…発進方法決定部、116…発進方法切換部。
図1
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図8