特許第6893860号(P6893860)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893860
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】揮散容器
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/12 20060101AFI20210614BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20210614BHJP
   B65D 85/00 20060101ALI20210614BHJP
   A41G 1/00 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   A61L9/12
   B65D83/00 F
   B65D85/00 A
   A41G1/00 P
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-210384(P2017-210384)
(22)【出願日】2017年10月31日
(65)【公開番号】特開2019-80787(P2019-80787A)
(43)【公開日】2019年5月30日
【審査請求日】2020年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100076598
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一豊
(74)【代理人】
【識別番号】100165607
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 一成
(74)【代理人】
【識別番号】100196690
【弁理士】
【氏名又は名称】森合 透
(72)【発明者】
【氏名】砂川 貴之
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓太
【審査官】 長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−035007(JP,U)
【文献】 特開2016−049994(JP,A)
【文献】 特開2005−132380(JP,A)
【文献】 特開2003−102825(JP,A)
【文献】 米国特許第05477640(US,A)
【文献】 韓国登録実用新案第20−0324148(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
A01M 1/20
A45D34/02
A41G 1/00−11/02
B65D83/00
B65D83/08−83/76
B65D85/00−85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性を有する内容液を収容した容器本体(1)と、前記容器本体(1)から内容液を吸い上げる吸上げ芯(5)と、吸い上げた内容液を空気中に揮散する揮散部材(6)と、を備えた揮散容器であって、
軸受部(15)を有して前記容器本体(1)の口筒部(2)に装着されると共に前記揮散部材(6)を揮散可能な状態で収容する揮散部本体(11)と、上端に係合部(31)を有して前記揮散部本体(11)の外側に一方向及び他方向に移動可能な状態で設けられた操作リング(30)と、揮散部本体(11)に開閉自在に支持されて開き状態と閉じ状態に設定可能な複数の装飾体(20)と、を有し、
前記装飾体(20)の基端部(22)には、前記係合部(31)に係合する被係止片(24)と、前記軸受部(15)に軸支される回転軸部(23)と、前記揮散部材(6)を持ち上げる支持腕部(25)とが設けられており、
前記操作リング(30)を容器軸(O)に沿って前記一方向に移動させることにより、前記装飾体(20)が前記開き状態に設定され、且つ前記他方向に移動させることにより、前記装飾体(20)が前記閉じ状態に設定されることを特徴とする揮散容器。
【請求項2】
操作リング(30)の移動に応じて露出する揮散部材(6)の表面積の割合が可変させられる請求項1記載の揮散容器。
【請求項3】
操作リング(30)は、正方向に回転させられることで一方向に移動し、逆方向に回転させられることで他方向に移動する請求項1又は2記載の揮散容器。
【請求項4】
装飾体(20)は、下端に基端部(22)が連設された花弁部(21)を有し、被係止片(24)は前記基端部(22)から外方向に突出形成され、支持腕部(25)は前記被係止片(24)とは逆方向に延びて揮散部本体(11)内に設けられている請求項1乃至3のいずれか一項に記載の揮散容器。
【請求項5】
揮散部本体(11)は、外周壁に操作リング(30)が螺合する雄ネジ(14a)が形成された大径筒部(14)の上に小径筒部(12)が段差部(13)を介して連結された部材として形成され、前記段差部(13)に左右一組からなる複数の軸受部(15)が配置されている請求項1乃至4のいずれか一項に記載の揮散容器。
【請求項6】
小径筒部(12)の周壁に支持腕部(25)が挿入される開口部(12a)が形成されている請求項5記載の揮散容器。
【請求項7】
小径筒部(12)の上端に、揮散部材(6)が載置される皿部材(50)の移動を制限する規制リング(60)が設けられている請求項5又は6記載の揮散容器。
【請求項8】
左右一組からなる複数の軸受部(15)は、半円状の切欠部を有して構成される一対の外軸受(15a)と内軸受(15b)を径方向に対向配置すると共に、これらを周方向に隙間(15c)を介して配置することにより形成されている請求項5乃至7のいずれか一項に記載の揮散容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香剤や消臭剤等を揮散するための揮散容器に関わり、特に揮散量を調整できると共に容器の状態が揮散状態にあるか否かを容易に見分けることのできる揮散容器に関する。
【背景技術】
【0002】
揮散容器に関する先行技術として、例えば下記特許文献1には消臭・芳香剤容器が記載されている。同文献1の図5に示される第4実施例は、消臭・芳香剤1を収容する容器2の上部に開口部3を形成し、開口部3に上下移動可能に装飾体4を挿入すると共に、装飾体4の下端部に、液状の消臭・芳香剤1上に浮かせる浮力体6を付設されており、浮力体6が消臭・芳香剤1の減少に伴って装飾体4が容器2内部に引き込まれて花の形が徐々に萎み変形するため、この萎み行く花の形から消臭・芳香剤1の残量を容易に確認できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−6671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の消臭・芳香剤容器では、萎み行く花の形から消臭・芳香剤1の残量を確認できるものの、揮散量を調整することが難しいという問題がある。
また、消臭・芳香剤1の残量の違いによって花の形が異なるとしても、消臭・芳香剤容器として常に揮散状態にあることには変わりがないことから、揮散状態と非揮散状態との間で任意に切り替えて使用することができないという問題もある。
本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく、揮散量を調整できると共に容器の使用状態を容易に切り換えることができ、しかも揮散状態にあるか否かを容易に見分けることのできる揮散容器を創出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段のうち、本発明の主たる手段は、
揮散性を有する内容液を収容した容器本体と、容器本体から内容液を吸い上げる吸上げ芯と、吸い上げた内容液を空気中に揮散する揮散部材と、を備えた揮散容器であって、
軸受部を有して容器本体の口筒部に装着されると共に揮散部材を揮散可能な状態で収容する揮散部本体と、上端に係合部を有して揮散部本体の外側に一方向及び他方向に移動可能な状態で設けられた操作リングと、揮散部本体に開閉自在に支持されて開き状態と閉じ状態に設定可能な複数の装飾体と、を有し、
装飾体の基端部には、係合部に係合する被係止片と、軸受部に軸支される回転軸部と、揮散部材を持ち上げる支持腕部とが設けられており、
操作リングを容器軸に沿って一方向に移動させることにより、装飾体が開き状態に設定され、且つ他方向に移動させることにより、装飾体が閉じ状態に設定されることを特徴とする、と云うものである。
本発明の主たる手段では、操作リングを容器軸に沿って移動させるという簡単な操作により、揮散量を調整できると共に揮散容器の使用状態を容易に切り替えることができる。さらには装飾体の状態を観察することにより、揮散容器が揮散状態にあるか、非揮散状態にあるかを容易に見分けることができる。
また操作リングの移動に連動して装飾体が開閉するため、閉じ状態(非揮散状態)又は開き状態(揮散状態)に容易に設定することができる。これに加えて、支持腕部を有する装飾体では、揮散部材を持ち上げて上下に移動させることにより、揮散部材の揮散量を調整することが可能となる。
【0006】
また本発明の他の手段は、上記本発明の主たる手段に、操作リングの移動に応じて露出する揮散部材の表面積の割合が可変させられる、との手段を加えたものである。
上記手段では、揮散部材の表面積の割合を変えることで揮散量の調整を達成し得る。
【0007】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、操作リングは、正方向に回転させられることで一方向に移動し、逆方向に回転させられることで他方向に移動する、との手段を加えたものである。
上記手段では、操作リングを回転させるという簡単な操作を行うことにより、操作リングが容器軸に沿って移動し、揮散部材の揮散量の調整を行うことが可能となる。
【0008】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、装飾体は、下端に基端部が連設された花弁部を有し、被係止片は基端部から外方向に突出形成され、支持腕部は被係止片とは逆方向に延びて揮散部本体内に設けられている、との手段を加えたものである
【0009】
また本発明の他の手段は、上記手段に、揮散部本体は、外周壁に操作リングが螺合する雄ネジが形成された大径筒部の上に小径筒部が段差部を介して連結された部材として形成され、段差部に左右一組からなる複数の軸受部が配置されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、一つの操作リングの回転に連動して、複数の装飾体を同時に閉じ状態又は開き状態に切り替えることができる。
【0010】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、小径筒部の周壁に支持腕部が挿入される開口部が形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、小径筒部内に収容されている揮散部材を、操作リングの回転に連動して動作する装飾体の動きに合わせて昇降移動させることができる、
【0011】
また本発明の他の手段は、上記いずれかの手段に、小径筒部の上端に、揮散部材が載置される皿部材の移動を制限する規制リングが設けられている、との手段を加えたものである。
上記手段では、操作リングの回転に連動して上昇移動した皿部材が、小径筒部から抜け出すことを防止することで、皿部材に載置されている揮散部材の落下を防止することができる。
【0012】
また本発明の他の手段は、上記手段に、左右一組からなる複数の軸受部は、半円状の切欠部を有して構成される一対の外軸受と内軸受を径方向に対向配置すると共に、これらを周方向に隙間を介して配置することにより形成されている、との手段を加えたものである。
上記手段では、段差部上に配置された装飾体の確実な開閉動作を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
本発明では、操作リングを回転させて、揮散部材が露出する表面積の割合と装飾体の状態を可変することにより、揮散量の調整することができると共に使用状態を容易に切り替えることができる。
また装飾体の状態が、開き状態であるか又は閉じ状態であるかを確認することにより、揮散容器の使用状態が揮散状態にあるか又は揮散量の少ない非揮散状態にあるかを容易に見分けることができる。
さらには揮散量や揮散容器の使用状態が装飾体の動きで表現され、楽しみながら使用することができるため、揮散容器としての存在感や商品価値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例を示す揮散容器の分解斜視図である。
図2】閉じ状態(非揮散状態)を示す揮散容器の部分断面図である。
図3】開き状態(揮散状態)を示す揮散容器の部分断面図である。
図4】軸受に軸支された装飾体を示す部分平面図である。
図5】閉じ状態(非揮散状態)を示す揮散容器の斜視図である。
図6】開き状態(揮散状態)を示す揮散容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施例を示す揮散容器の分解斜視図、図2は閉じ状態(非揮散状態)を示す揮散容器の部分断面図、図3は開き状態(揮散状態)を示す揮散容器の部分断面図、図4は軸受に軸支された装飾体を示す部分平面図である。尚、図2及び図3では吸上げ芯を省略している。
【0016】
先ずは揮散容器の構成について説明する
尚、以下の説明において、「正方向の回転」とは右回転と左回転のいずれか一方を意味し、「逆方向の回転」とは「正方向の回転」が右回転を意味するときには左回転を意味し、「正方向の回転」が左回転を意味するときには右回転を意味する。また「一方向」とは容器軸Oに沿う上方と下方のいずれか一方を意味し、「他方向」とは「一方向」が上方を意味するときには下方を意味し、「一方向」が下方を意味するときには上方を意味する。
図1に示す揮散容器は、揮散性を有する内容液、例えば消臭剤や芳香剤として使用される内容液を収容する容器本体1と、容器本体1の口筒部2に装着されるヘッド部10と、内容液を容器本体1内から毛細管現象を利用して吸い上げる吸上げ芯5と、吸い上げた内容液を含浸すると共に空気中に自然揮散させる揮散部材6とを有して構成されている。
吸上げ芯5は、例えばポリエステル繊維等の吸水性素材を結束又は編組した細長状の芯材により構成されている。また揮散部材6は、例えば濾紙などで形成された円柱状の部材であり、その中心には吸上げ芯5の上端部が圧入される挿入孔6aが形成されている。
【0017】
容器本体1は胴部3の上に口筒部2が立設された有底筒状の容器であり、口筒部2の下端にフランジ状のネックリング4が形成されており、このネックリング4の周方向の複数(本実施例では3ケ)の位置には、所定の間隔(本実施例では120度毎)を有して配置された係止凹部4aが形成されている。
【0018】
ヘッド部10は、容器本体1側の口筒部2に装着される揮散部本体11と、複数(本実施例では6枚)の装飾体20と、揮散部本体11の外側に回転可能に配置された操作リング30と、操作リング30の下端に設けられた受けリング40と、揮散部材6を載置する皿部材50と、皿部材50の上昇を規制する規制リング60等を有して構成され、これらの各部材は合成樹脂材料で形成されている。
【0019】
図1乃至図3に示すように、揮散部本体11は、下部側に設けられた円筒状の大径筒部14と、上部側に設けられた円筒状の小径筒部12が、これらの中間高さ位置に設けられた段差部13を介して一体に連結された部材である。小径筒部12には縦帯状に開口する開口部12aが周方向に所定の間隔(本実施例では120度毎)で形成されている。また図2に示すように大径筒部14の外周壁には雄ネジ14aとその下端の位置に周設された周凹部14bが形成されている。図2に破線で示すように、大径筒部14の内周壁の複数(本実施例では3ケ)の位置には、縦帯凸状に突設された係止凸部14cが形成されている。そして、揮散部本体11を容器本体1の口筒部2に装着すると、各係止凸部14cが容器本体1のネックリング4に形成された係止凹部4aに夫々係合可能となっている。
【0020】
図1に示すように、段差部13上には、周方向に複数(本実施例では6組)並べて配置することにより形成された複数の軸受部15が形成されている。図4に示すように、軸受部15は、半円状の切欠部を有して突設された一対の外軸受15aと内軸受15bを、径方向に対向配置させて軸受部15としたものである。そして、周方向に配置された一方の軸受部15と他方の軸受部15との間には、後述する装飾体20の基端部22を配置するための隙間15cが設けられており、この隙間15cを介して周方向に対応配置された左右一組から成る軸受部15が周方向に一定の間隔を有して段差部13上に合計6組設けられている。
【0021】
装飾体20は、花びら状に形成された花弁部21と、花弁部21の下端に連設された基端部22と、この基端部22から左右に突出する円柱状の回転軸部23及び基端部22から外方向に突出する被係止片24(図2図3参照)とを有して構成されている。また6枚の装飾体20のうち、周方向に1つ置きに並ぶ3枚の装飾体20の基端部22には被係合片24とは逆方向である内方(小径筒部12の内部方向)に向かって延びる支持腕部25が設けられている。被係止片24は後述する操作リング30に係合可能に構成され、支持腕部25は小径筒部12の壁面に形成された開口部12aを介して小径筒部12内に挿入され、揮散部材6を下から持ち上げることが可能となっている。
装飾体20は、回転軸部23を揮散部本体11の段差部13上に形成された左右一組の軸受部15を構成する左側一対の外軸受15aと内軸受15bとの間及び右側一対の外軸受15aと内軸受15bとの間に嵌合的に装着することにより回転自在に軸支されている。そして、このような構成からなる複数の装飾体20が段差部13上に周方向に沿って並設されることにより、図2及び図3(又は図5及び図6)に示されるように、装飾体20の全体が開閉自在に構成されている。
【0022】
図2又は図3に示すように、操作リング30は上端が拡径状に形成された略円筒状の部材であり、その内周面の上端には凹状に形成されて装飾体20側の被係合片24に係合可能な係合部31が形成され、その下には揮散部本体11側の大径筒部14に形成された雄ネジ14aに螺合可能な雌ネジ32が形成されている。
そして、揮散部本体11側の大径筒部14の外側に螺設させた操作リング30を正方向に回転させることにより、操作リング30を容器軸Oに沿って上方(一方向)にネジ送りすることができ、また操作リング30を逆方向に回転させることにより、操作リング30を容器軸Oに沿って下方(他方向)にネジ送りすることが可能となっている。
尚、揮散部本体11側の大径筒部14の内周壁に形成された係止凸部14cと容器本体1側のネックリング4に形成された係止凹部4aとが係合することにより、操作リング30を回転させたときに揮散部本体11が一緒に回転することが防止されており、操作リング30の回転操作を円滑に行うことが可能となっている。
【0023】
受けリング40は上端側に設けられた小径状の内輪部41と、下端側に設けられた大径状の外輪部42とを有する短円筒状の部位材であり、受けリング40の内壁には揮散部本体11側の周凹部14bに係合して受けリング40の離脱を防止する周凸部43が周設され、外輪部42の内側底部には大径筒部14の下端を載置する載置部44が形成されている
【0024】
図1乃至図3に示すように、皿部材50は、円盤状の底壁51の周縁部に側壁52を備えた有底短円筒状の部材であり、底壁51の中央には貫通孔53が穿設されており、この貫通孔53には吸上げ芯5が挿通される。皿部材50は、底壁51の上に揮散部材6を載置すると共に、底壁51の下面が装飾体20から延びる複数(本実施例では3ケ)の支持腕部25の先端によって揮散部本体11を構成する小径筒部12内において水平に支持されている。皿部材50上に載置された揮散部材6は、支持腕部25の回転に連動してその内部を上下方向に沿って昇降移動可能とされており、また小径筒部12の上端から揮散部材6を外部に露出させることが可能となっている。尚、揮散部材6は小径筒部12内に揮散可能な状態で収容されている。
【0025】
規制リング60は揮散部本体11の小径筒部12の上端に固定されており、その内周側には、上昇した皿部材50の側壁52の上端に当接してこれ以上の上昇を制限するためのストッパ片61が設けられている。
【0026】
次に、上記構成からなる揮散容器の動作について説明する。
図5は閉じ状態(非揮散状態)を示す揮散容器の斜視図、図6は開き状態(揮散状態)を示す揮散容器の斜視図である。
図2に示すように、操作リング30を正方向に回転させて操作リング30を上方(一方向)に移動させると、この回転に連動して操作リング30の上部に設けられた係合部31が被係止片24を押し上げる。これにより、各装飾体20は回転軸部23を中心に、互いに接近する方向に回転するため、各花弁部21を閉じ状態に設定することができる。そして、図5の閉じ状態を見れば、揮散容器の使用状態が揮散量の少ない状態(便宜上、非揮散状態という)にあると容易に見分けることができる。
同時に、支持腕部25は回転して下方に移動するため、支持腕部25の先端に支持されていた皿部材50が自重により下降する。これにより、揮散部材6が小径筒部12内に収納され、露出する揮散部材6の表面積の割合が減少することから揮散量を抑制することができる。
尚、操作リング30を上方に移動させると、上昇した皿部材50の側壁52の上端が規制リング60のストッパ片61に当接するため、これ以上の操作リング30の正方向への回転及び上方への移動を制限することができる。
【0027】
他方、図3に示すように、操作リング30を逆方向に回転させて操作リング30を下方(他方向)に移動させると、この回転に連動して操作リング30の係合部31が被係止片24を押し下げる。これにより、各装飾体20は回転軸部23を中心に、互いに離間する方向に回転するため、各花弁部21を開き状態に設定することができる。そして、図6の開き状態を見れば、揮散容器の使用状態が揮散を積極的に行うことが可能な揮散状態にあると容易に見分けることができる。
同時に、支持腕部25が回転して上方に移動し、支持腕部25の先端に支持されている皿部材50を持ち上げて上昇移動させる。これにより、小径筒部12の外部に露出する揮散部材6の表面積の割合が増大することから揮散量を増加させることができる。
尚、操作リング30を最大量下方に移動させると、操作リング30の下端が受けリング40の外輪部42に当接するため、これ以上の操作リング30の逆方向への回転及び下方への移動を制限することができる。
【0028】
ここで、本実施例における「閉じ状態」とは、複数の花弁部21が完全に閉塞することで全く揮散しないというものではなく、図2に示すように複数の花弁部21が垂直に起立して鉛直線(図示せず)に対する開き角度が最小となることで「開き状態」に比較して揮散量を最も抑制できる状態を意味する。また「開き状態」とは、図3に示すように、複数の花弁部21が傾斜し、鉛直線(図示せず)に対する開き角度が最大となることで「閉じ状態」に比較して揮散量を最も増大させることができる状態を意味する。
【0029】
正方向への操作リング30の回転量を最大にすると、露出する揮散部材6の表面積が最小になると共に花弁部21も閉じ状態となるので揮散量を最小とすることができ、また逆方向への操作リング30の回転量を最大にすると、露出する揮散部材6の表面積が最大になると共に花弁部21も開き状態となるので揮散量も最大とすることができる。
そして、操作リング30の回転方向及び回転量をコントロールすると、これに応じて露出する揮散部材6の表面積の割合及び花弁部21の開き角度を可変させることができるため、揮散量を任意に調整することが可能となる。
このように本発明では、操作リング30を回転させる方向を変えると、装飾体20の状態が開き状態又は閉じ状態に切り替わるため、揮散容器の使用状態を揮散状態又は非揮散状態に容易に切り替えることができる。
【0030】
以上、実施例に沿って本発明の構成とその作用効果について説明したが、本発明の実施の形態は上記実施例に限定されるものではない。
例えば、上記実施例では、操作リング30を回転させることで操作リング30が上方(一方向)又は下方(他方向)に移動させられる構成を示して説明したが、操作リング30をスライドさせることで直接上方(一方向)又は下方(他方向)に移動する構成としても良い。
【0031】
また上記実施例では、操作リング30を上方(一方向)に移動させると、装飾体20の状態が開き状態に設定され、操作リング30を下方(他方向)に移動させると、装飾体20の状態が閉じ状態に設定される場合を示して説明したが、これとは逆に操作リング30を下方(他方向)に移動させると、装飾体20の状態が開き状態に設定され、操作リング30を上方(一方向)に移動させると、装飾体20の状態が閉じ状態に設定される構成であっても良い。
【0032】
また上記実施例では、操作リング30を上方(一方向)又は下方(他方向)への移動に応じて揮散部材6も移動し、小径筒部12の上端から外部に露出する揮散部材6の表面積の割合が増減することで揮散量が調整される場合を示して説明したが、操作リング30が移動しても揮散部材6は移動せず、したがって外部に露出する揮散部材6の表面積の割合も変化せず、装飾体20の開閉のみで揮散量が調整される構成としても良い。
【0033】
さらに上記実施例では、6枚の花弁部21を有する構成を示して説明したが、花弁部21の枚数は上記実施例に限定されるものではない。
また上記実施例では、操作リング30が無段階で回転する場合を示して説明したが、所定の回転角度ごとにカチカチと軽く係止されることで段階的に回転し、操作体20の開き角度を任意に設定可能な構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、消臭剤や芳香剤を収容して揮散する揮散容器の分野における用途展開をさらに広い領域で図ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 : 容器本体
2 : 口筒部
3 : 胴部
4 : ネックリング
4a : 係止凹部
5 : 吸上げ芯
6 : 揮散部材
6a : 挿入孔
10 : ヘッド部
11 : 揮散部本体
12 : 小径筒部
12a: 開口部
13 : 段差部
14 : 大径筒部
14a: 雄ネジ
14b: 周凹部
14c: 係止凸部
15 : 軸受部
15a: 外軸受
15b: 内軸受
15c: 隙間
20 : 装飾体
21 : 花弁部
22 : 基端部
23 : 回転軸部
24 : 被係止片
25 : 支持腕部
30 : 操作リング
31 : 係合部
32 : 雌ネジ
40 : 受けリング
41 : 内輪部
42 : 外輪部
43 : 周凸部
44 : 載置部
50 : 皿部材
51 : 底壁
52 : 側壁
53 : 貫通孔
60 : 規制リング
61 : ストッパ片
O : 容器軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6