特許第6893876号(P6893876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893876磁気共鳴によってガイドされた放射線療法のための計画及び制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893876
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】磁気共鳴によってガイドされた放射線療法のための計画及び制御
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20210614BHJP
【FI】
   A61N5/10 P
   A61N5/10 M
【請求項の数】5
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-542112(P2017-542112)
(86)(22)【出願日】2016年2月11日
(65)【公表番号】特表2018-508277(P2018-508277A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】US2016017618
(87)【国際公開番号】WO2016130850
(87)【国際公開日】20160818
【審査請求日】2019年2月8日
(31)【優先権主張番号】62/115,105
(32)【優先日】2015年2月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512129837
【氏名又は名称】ビューレイ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ViewRay Technologies, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・エフ・デンプシー
(72)【発明者】
【氏名】イワン・カブリコフ
【審査官】 細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−506519(JP,A)
【文献】 特開2002−336365(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/171631(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気共鳴画像生成システムと、
放射線源と、
命令を記憶する非一時的な機械可読の記憶媒体と
を備えるシステムであって、
少なくとも1つのプログラム可能なプロセッサが前記命令を実行すると、当該プロセッサは、
前記放射線源による放射線の照射中に前記磁気共鳴画像生成システムによって生成されたMRI画像を受信する処理と、
前記放射線に曝された1つ又は複数の解剖学的構造に対して、照射量の計算に係るフラグを立てる処理と、
前記フラグを立てた解剖学的構造に照射された照射量を計算する処理と
を含む動作を実行する、システム。
【請求項2】
前記動作はさらに、
前記放射線に曝されなかった1つ又は複数の解剖学的構造を決定する処理と、
前記放射線に曝されなかった1つ又は複数の解剖学的構造について照射量の計算を回避する処理と
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記放射線に曝されなかった1つ又は複数の解剖学的構造を決定する処理は、前記MRI画像と放射線ビームの形状又はフルエンスとの相関を計算する処理を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記動作はさらに、
前記MRI画像中の1つ又は複数の解剖学的構造における患者の動きの量を決定する処理と、
しきい値を超えて移動した前記MRI画像中の1つ又は複数の解剖学的構造に対して、照射量の計算に係るフラグを立てる処理と、
を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記動作はさらに、
照射量の計算のために1つ又は複数の解剖学的構造を識別する処理と、
前記放射線源からの制御データと前記MRI画像とを組み込んだ、時間依存するモンテカルロ法シミュレーションを少なくとも実行することによって、前記識別された1つ又は複数の解剖学的構造に照射された照射量を計算する処理と
を含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で説明した要旨は、放射線療法に関し、より詳しくは、磁気共鳴によってガイドされた放射線療法(MRgRT)に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本願は、「磁気共鳴によってガイドされた放射線療法の計画及び制御(PLANNING AND CONTROL FOR MAGNETIC RESONANCE GUIDED RADIATION THERAPY)」と題する、2015年2月11日に出願された米国仮特許出願第62/115105号の優先権を主張し、その開示内容の全体は参照によってここに組み込まれる。
【0003】
関連技術
放射線療法は、患者における悪性細胞を制御及び除去するためにしばしば使用される。例えば、癌の腫瘍は、1回又は複数回の治療セッションにわたって放射線(例えば、X線、ガンマ線、及び荷電粒子)に曝されてもよい。放射線療法の有効性は、適切な照射量の放射線を関心対象領域(region of interest:ROI)へ照射することに依存する。ROIは、癌の腫瘍を含むとともに、潜在的に病気が広がっている領域を含んでもよい。同時に、放射線は、リスク器官(organs at risk:OAR)を避けるように照射されるべきである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、放射線療法治療は、静的な医療画像生成走査法(例えば、コンピュータ断層撮影法(CT)、核磁気共鳴画像生成法(MRI))で定義されるようなROI及びOARの輪郭及び位置に基づいて計画及び実施される。したがって、従来の放射線療法は、治療中の患者の動きに対処しない。例えば、患者の器官の幾何学的形状は、随意及び/又は不随意の運動(例えば、呼吸、筋収縮)に起因して治療中に著しくシフトすることがある。従って、ROIに照射された実際の放射線照射量と、OARが放射線に曝された程度とは、意図された治療計画から逸脱するだろう。そのため、従来の放射線療法は、所望されるほどには有効にならない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
MRgRTのためのシステム及び方法が提供される。本要旨の実施例は、放射線の照射とMRIの実施とを同時に行うことを含むことにより、放射線療法の実施を改善する。放射線の照射は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像によって示された患者の動きに基づいて制御可能である。患者の動きに基づいて放射線の照射を終了するために放射線の照射中に1つ又は複数の機構が展開可能である。
【0006】
本要旨の実施例は、MRgRTのための方法を含む。本方法は放射線を照射する1つ又は複数の放射線療法ヘッドと、MRIを実行するMRIシステムとを同時に使用することと、プロセッサを用いて、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて、1つ又は複数のゲートがトリガされるか否かを決定することと、放射線の照射中に撮影された上記MRI画像の少なくとも一部に基づいて1つ又は複数のゲートがトリガされると決定されたことに応答して、放射線の照射を一時停止することとを含んでもよい。
【0007】
本要旨の実施例は、MRgRTのためのシステムを含む。本システムは、MRgRT装置と、そのMRgRT装置に接続されたプロセッサとを含んでもよい。
【0008】
MRgRT装置は、1つ又は複数の放射線療法ヘッド及びMRIシステムを含んでもよい。MRgRT装置は、放射線を照射する1つ又は複数の放射線療法ヘッドと、MRIを実行するMRIシステムとを同時に使用するように構成されてもよい。
【0009】
プロセッサは、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて、1つ又は複数のゲートがトリガされるか否かを決定し、放射線の照射中に撮影された上記MRI画像の少なくとも一部に基づいて1つ又は複数のゲートがトリガされると決定されたことに応答して、放射線の照射を一時停止するように構成されてもよい。
【0010】
本要旨の実施例は、MRgRTのための方法を含む。本方法は、1つ又は複数の放射線療法ヘッドによる放射線の照射中にMRIシステムによって撮影された複数のMRI画像を受信することと、上記MRI画像の少なくとも一部に基づいて、1つ又は複数のゲートがトリガされるか否かを決定することと、上記MRI画像の少なくとも一部に基づいて上記1つ又は複数のゲートがトリガされると決定されたことに応答して、上記1つ又は複数の放射線療法ヘッドによる放射線の照射を一時停止させることとを含んでもよい。
【0011】
本要旨の実施例は、本明細書に提供した説明に沿った方法を含むとともに、説明した特徴の1つ又は複数を実装する動作を1つ又は複数の機械(例えばコンピュータなど)に実行させるように作用する、有形的に具体化された機械可読媒体を備える物品を含む可能性があるが、これらに限定されない。同様に、1つ又は複数のプロセッサと、この1つ又は複数のプロセッサに接続された1つ又は複数のメモリとを含む可能性があるコンピュータシステムも説明される。非一時的なコンピュータ可読か機械可読の記憶媒体を含んでもよいメモリは、本明細書で説明した動作の1つ又は複数を1つ又は複数のプロセッサに実行させる1つ又は複数のプログラムを含み、符号化し、格納し、又は同様のことを行ってもよい。本要旨の1つ又は複数の実施例に沿った、コンピュータで実装した方法は、単一の計算システム又は複数の計算システムに存在する1つ又は複数のデータプロセッサによって実施可能である。そのような複数の計算システムは、ネットワーク(例えば、インターネット、無線ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、有線ネットワークなど)上の接続を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の接続を介して、また、複数の計算システムのうちの1つ又は複数の間の直接接続を介して、又は他のものを介して接続可能であり、データ、コマンド、又は他の命令などを交換可能である。
【0012】
本明細書で説明した対象の1つ又は複数の変形例に係る詳細事項は、添付の図面及び以下の発明の詳細な説明において説明される。本明細書で説明した対象の他の特徴及び利点は、発明の詳細な説明及び図面、及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。ここに開示した要旨の所定の特徴が放射線療法に関して説明目的で記述されるが、そのような特徴が限定を意図していないことは容易に理解されるべきである。保護される要旨の範囲は、本開示に添付した特許請求の範囲によって定義されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本要旨の実施例に沿ったMRgRTシステムを示すネットワーク図である。
図2】本要旨の実施例に沿ったMRgRT装置を示す断面図である。
図3】本要旨の実施例に沿った一連のMRI画像を示す図である。
図4A】本要旨の実施例に沿った1つ又は複数の放射線ビームの照射を示す図である。
図4B】本要旨の実施例に沿った1つ又は複数の放射線ビームの照射を示す図である。
図5】本要旨の実施例に沿ったMRgRT処理を示すフローチャートである。
図6】本要旨の実施例に沿った治療計画の処理を示すフローチャートである。
図7】本要旨の実施例に沿った放射線療法を実施する処理を示すフローチャートである。
図8】本要旨の実施例に沿った照射量計算の処理を示すフローチャートである。
図9】本要旨の実施例に沿った放射線療法を実施する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付の図面は、ここに組み込まれ、本明細書の一部を構成する。添付の図面は、本明細書に開示した対象の所定の態様を示し、発明の詳細な説明とともに、開示した実施例に関連付けられた原理のうちの一部についての説明を支援する。
【0015】
放射線療法を実施するための従来のアプローチは、概して、放射線の照射中における患者の動きに対処しない。アイソセンター配置及びビーム構成は、概して、静止画像(例えば、MRI、CT)に対する治療計画を行うときに実行される。しかしながら、治療中に、患者の器官の幾何学的形状におけるシフトが生じる可能性がある。例えば、呼吸及び筋収縮は、解剖学的構造(例えばROI、OAR)の輪郭を変形し、さらに、それらの位置を変化させる可能性がある。その結果、ROIは、元の治療計画に示す放射線ビームの経路の外部に移動し、それによって、その領域に照射された実際の放射線照射量を減少させる可能性がある。同様に、OARは、放射線ビームの経路へ移動し、意図しない量の放射線に曝される可能性がある。
【0016】
本要旨の様々な実施例は、放射線の照射のための動的制御を提供する、MRgRTのためのシステム及び方法を含んでもよい。本要旨の実施例は、放射線の照射を制御するために1つ又は複数の空間的及び/又は時間的ゲートを適用するゲーティング機構を含んでもよい。本要旨のいくつかの実施例は、患者の全体的な移動を検出し、それに応じて放射線の照射を一時停止するインターロック機構をさらに含んでもよい。本開示に沿ったゲーティング機構及びインターロック機構は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像を含む、MRI画像(例えば、平面、立体)に基づいて動作してもよい。
【0017】
図1は、本要旨の実施例に沿ったMRgRTシステム100を示すシステム図である。図1を参照すると、MRgRTシステム100は、システムコントローラ112、ガントリー120、放射線療法ヘッド122、患者用寝台124、マルチリーフコリメータ126、及びMRIシステム128を含んでもよい。
【0018】
システムコントローラ112は、ガントリー120、放射線療法ヘッド122、患者用寝台124、マルチリーフコリメータ126、及びMRIシステム128の動作を制御するように構成される。システムコントローラ112は、制御コンソール114に接続可能である。制御コンソール114を介して、ユーザは、システムコントローラ112の動作を制御し、それによって、ガントリー120、放射線療法ヘッド122、患者用寝台124、マルチリーフコリメータ126、及びMRIシステム128のうちの1つ又は複数の動作を制御してもよい。
【0019】
放射線療法セッションの間に、放射線療法ヘッド122は、1つ又は複数の放射線ビームを照射してもよい。システムコントローラ112は、患者用寝台124における患者が放射線療法ヘッド122からの放射線ビームを(例えばROIに)受けるために適切な姿勢になるように、ガントリー120及び/又は患者用寝台124を回転させてもよい。
【0020】
放射線療法ヘッド122は、本開示の範囲から外れることなく、放射線源又は線形粒子加速器(linear particle accelerator:LINAC)であってもよい、任意の装置によって実装可能である。例えば、放射線療法ヘッド122は、例えば、コバルト(例えばコバルト60(60Co))及びイリジウム(例えばイリジウム−192(192Ir))を含むがこれらに限定されない同位体を用いた、放射性同位体源であってもよい。代替又は追加として、放射線療法ヘッド122は、LINACのような粒子療法を提供してもよい。さらに、MRgRTシステム100が単一の放射線療法ヘッドを含むように図示されるが、MRgRTシステム100は、本開示の範囲から外れることなく、追加の放射線療法ヘッドを含んでもよい。
【0021】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、強度変調放射線療法(intensity modulated radiation therapy:IMRT)又は原体照射療法(conformal radiation therapy:CRT)を実施してもよい。そのため、システムコントローラ112は、マルチリーフコリメータ126と協働してもよい。マルチリーフコリメータ126は、放射線ビームの少なくともいくつかの部分の阻止することにより放射線療法ヘッド122からの放射線ビームの形状を変化させる重金属材料(例えば、鉛(Pb)、タングステン(W))からなる複数の「リーフ」を含む。放射線ビームの形状は、マルチリーフコリメータ126におけるリーフの構成を変化させることにより(例えばシステムコントローラ112を介して)調整可能である。本開示の全体にわたって放射線療法に言及するとき、例えばIMRT及びCRTを含むがこれらに限定されない、さまざまな異なるタイプ及び形態の放射線療法を意図していることが理解されるべきである。
【0022】
いくつかの例示において、システムコントローラ112、制御コンソール114、ガントリー120、放射線療法ヘッド122、患者用寝台、マルチリーフコリメータ126、及びMRIシステム128は、放射線の照射とMRIの実施とを同時に行うことができるMRgRT装置110の一部になってもよい。MRgRT装置110は、共有された特許7907987号にさらに詳細に説明され、その開示内容の全体は参照によってここに組み込まれる。
【0023】
MRIシステム128は、平面(すなわち2次元(2D))及び/又は立体(すなわち3次元(3D))のMRI画像を撮影する。MRIシステム128は、放射線の照射中に患者のMRI画像を撮影するように構成されてもよい。MRIシステム128は、動きに基づいた治療計画の一部として、放射線療法治療の過程にわたって、MRI画像を撮影してもよい。例えば、MRIシステム128は、所定のレート(例えば毎秒4フレーム)で、平面及び/又は立体のMRI画像を撮影してもよい。優位点として、放射線の照射中にMRIシステム128によって撮影された一連の平面及び/又は立体のMRI画像は、放射線の照射中における患者の動き(例えば、患者の器官の幾何学的形状におけるシフト)の追跡を可能にする。MRIシステム128は、そのようなデータ(例えば4次元(4D)のMRI画像データ)を第1のデータ記憶装置142に格納してもよい。
【0024】
MRgRTシステム100は、ユーザインターフェースシステム130を含む。ユーザインターフェースシステム130は、例えば、ディスプレイ132、スキャナ134、プリンタ136、及びセキュリティリーダー138を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の入力/出力(I/O)機構を提供してもよい。ユーザ(例えば放射線療法士)は、1つ又は複数のI/O機構を介してMRgRTシステム100と対話してもよい。例えば、ユーザは、例えば、生体認証及び無線周波識別(RFID)タグを含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の機構を用いて、セキュリティリーダー138を介してMRgRTシステム100にアクセスするように認証されてもよい。ユーザは、例えば、治療の計画、実行、及び最適化を含むがこれらに限定されない、放射線療法の実施に関連付けられた1つ又は複数の動作を実行するように、ユーザインターフェースシステム130を介してMRgRTシステム100を構成してもよい。
【0025】
MRgRTシステム100は、プロセッサ150をさらに含んでもよい。プロセッサは、放射線の照射中にMRIシステム128によって撮影されたMRI画像(例えば4D)に基づいて、いつゲートがトリガされるのか、及び/又は、いつインターロックしきい値が超過されるのかをモニタリングしてもよい。プロセッサ150は、1つ又は複数の治療計画を生成及び/又は修正するように構成されてもよい。さらに、プロセッサ150は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像に基づいて、放射線療法治療セッション中の患者に照射された実際の放射線照射量を計算してもよい。患者に照射された実際の放射線照射量は、放射線の照射中における患者の動き(例えば、患者の器官の幾何学的形状における変化)と、ゲーティング機構及び/又はインターロック機構によって生じた放射線照射の中断とによって影響を受ける可能性がある。
【0026】
MRgRTシステム100は、患者に照射された放射線の累積照射量を追跡するように構成されてもよい。そのため、プロセッサ150は、個々の放射線療法治療セッションの間に患者に照射された実際の放射線照射量を集めてもよい。
【0027】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、患者モニタリング及び通信システム162を提供してもよい。例えば、患者モニタリング及び通信システム162は、カメラ及び/又はマイクロホンを含んでもよい。MRgRTシステム100は、患者のオーディオ/ビデオ(A/V)エンターテインメントシステム164を含んでもよい。例えば、患者のA/Vエンターテインメントシステム164は、タブレットパーソナルコンピュータ(PC)のような携帯用電子機器であってもよい。
【0028】
MRgRTシステム100は、例えば、第1の遠隔のユーザ192、第2の遠隔のユーザ194、及び第3の遠隔のユーザ196を含むがこれらに限定されない、複数の遠隔のユーザによるアクセスをサポートする。遠隔のユーザは、例えば、放射線療法治療の計画、承認、及びスケジューリングを含むがこれらに限定されないタスクを実行するために、有線及び/又は無線ネットワーク170を介してMRgRTシステム100にアクセスしてもよい。遠隔のユーザによるMRgRTシステム100へのアクセスは、ファイアウォール180によってモニタリング及び規制されてもよい。MRgRTシステム100は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものに対して追加の及び/又は異なる構成要素を含んでもよい。
【0029】
図2は、本要旨の実施例に沿ったMRgRT装置100を示す断面図である。図1及び図2を参照すると、MRgRT装置110は、ガントリー120、マルチリーフコリメータ126、患者用寝台124、及びMRIシステム128を含む。本要旨の実施例に沿って、患者200は患者用寝台124の上に配置されてもよい。患者200は放射線療法ヘッド122から放射線を受けてもよく、その一方で同時に、MRIシステム128は患者200の1つ又は複数のMRI画像を同時に撮影する。MRgRT装置110は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものに対して追加の及び/又は異なる構成要素を含んでもよい。
【0030】
図3は、本要旨の実施例に沿った一連のMRI画像300を示す図である。図1図2、及び図3を参照すると、一連のMRI画像300は、例えば放射線の照射中の、患者の動きを示す。MRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)は、動きに基づいた治療計画の一部として、患者が放射線療法を受ける間に、及び/又は、放射線療法治療の過程にわたって、一連のMRI画像300を撮影してもよい。図示するように、一連の画像300は、第1のMRI画像310、第2のMRI画像320、第3のMRI画像330、及び第4のMRI画像340を含む。
【0031】
筋収縮に起因する患者の器官の幾何学的形状における変化は、第1のMRI画像310及び第2のMRI画像320に示される。例えば、第1のMRI画像310及び第2のMRI画像320に示すように、患者の臀筋の収縮は、膀胱352の位置におけるシフトをもたらす。
【0032】
呼吸に起因する患者の器官の幾何学的形状における変化は、第3のMRI画像330及び第4のMRI画像340に示される。例えば、第3のMRI画像330及び第4のMRI画像340に示すように、呼吸すると、膀胱352、前立腺354、及び直腸356の位置におけるシフトを引き起こす。
【0033】
図4Aは、本要旨の実施例に沿った1つ又は複数の放射線ビームの照射を示す図である。図4Aを参照すると、患者の放射線療法治療は、例えば第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム424を含む複数の放射線ビームをROI410へ照射することを含んでもよい。患者の放射線療法治療は、ROI410が第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム424への最も大きく曝されるように、第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム424を配置することで計画してもよい。さらに、患者の放射線療法治療は、第1のOAR432及び第2のOAR434が第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム424への最も小さく曝されるように、第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム424を配置することで計画してもよい。
【0034】
図4Bは、本要旨の実施例に沿った1つ又は複数の放射線ビームの照射を示す図である。図4A図4Bを参照すると、放射線療法の間の患者の動きは、患者の器官の幾何学的形状を変化させ、放射線ビームの照射を治療計画から逸脱させる可能性がある。
【0035】
例えば、図4Bに示すように、放射線療法の間の患者の動きは、治療計画に従って配置される第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム424の経路の外部にROI410をシフトさせる可能性がある。代替又は追加として、放射線療法の間の患者の動きは、治療計画に従って配置される第1の放射線ビーム422及び第2の放射線ビーム434の経路上にOAR434をシフトさせる可能性がある。その結果、ROI410に照射された実際の放射線照射量は、計画された量よりも小さくなり、その一方、第2のOAR434は、計画された量より大きい放射線照射量に曝される。
【0036】
図5は、本要旨の実施例に沿ったMRgRT処理500を示すフローチャートである。図1図2、及び図5を参照すると、MRgRT処理500は、図1に関して説明したMRgRTシステム100によって実行可能である。
【0037】
MRgRTシステム100は、システム較正を実行する(502)。例えば、MRgRTシステム100を設置し、動作させ、再構成し、及び/又は更新するとき、MRgRTシステム100には、放射線療法ヘッド122の較正された出力と、測定された放射線療法較正データとが入力されてもよい。さらに、MRIシステム128を較正するためのデータを取得及び/又は計算してもよい。MRIシステム128を含むMRgRTシステム100を較正するためのデータは、例えば、較正プロトコルにより必要とされる基準幾何学的形状におけるコバルト源(例えば放射性同位体源を用いて放射線療法が行われる場合)の照射量測定の出力、様々なフィールドサイズに係る相対照射量出力、定義されたビーム幾何学的形状の1〜3次元の照射量分布データ、及びMRIファントムデータを含んでもよいが、これらに限定されない。ユーザインターフェース130は、較正データの少なくとも一部を、重ねあわせて、パーセント差で、及び絶対差で表示するように構成されてもよい。さらに、MRgRTシステム100は、較正データを(例えば、第1のデータ記憶装置142及び/又は第2のデータ記憶装置144に)格納し、及び/又は、較正データを(例えばプリンタ136を介して)出力してもよい。較正データの完全性は、較正データの余分のコピーを格納することによって、及び/又は、巡回冗長検査アルゴリズムを適用することによって保証されてもよい。
【0038】
MRgRTシステム100は、ユーザを登録してもよい(504)。ユーザ(例えば放射線療法士)は、MRgRTシステム100を動作させる前に登録するように要求されてもよい。ユーザ登録は、例えば、ユーザ名、パスワード、写真、及び生体認証を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の形態の識別情報を記録することを含んでもよい。少なくとも一部のユーザは、MRgRTシステム100に関して、特権を設定する能力と、他のユーザのためのタスクとを有する管理ユーザとして定義されてもよい。MRgRTシステム100へのアクセスは、ユーザ登録及び認証に成功することを必要としてもよい。しかしながら、いくつかの例示の実施例において、ユーザは、例えば、写真及び生体認証を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の形態の識別情報を提供することにより、ユーザ登録及び/又は認証を迂回してもよい。
【0039】
MRgRTシステム100は、患者を登録してもよい(506)。患者は、MRgRTシステム100によって実施される医療画像生成及び/又は放射線療法治療を受けるために登録することを要求されてもよい。患者の登録は、例えば、患者の名前、パスワード、写真、及び生体認証を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の形態の識別情報を記録することを含んでもよい。さらに、患者の登録は、例えば、年齢、生年月日、性別、体重、人種、住所、医療データ、治療指導、連絡先情報、及びA/Vエンターテインメントの選好を含むがこれらに限定されない、個人データを収集することを含んでもよい。
【0040】
医療画像生成及び/又は放射線療法治療を受ける前に、MRgRTシステム100は、例えば、患者の名前、生年月日、社会保障番号、写真識別、及び生体認証を含むがこれらに限定されない、識別情報に基づく患者の認証を必要としてもよい。いくつかの例示の実施例において、緊急事態(例えば緊急の脊髄圧迫)では、患者の登録及び/又は認証を迂回してもよい。
【0041】
MRgRTシステム100は、患者のための第1の治療計画を生成する(508)。本要旨の実施例に沿って、治療計画は、例えば、MRI画像取得、(例えばROI及び/又はOARの)。輪郭生成、処方、及び照射構成を含むがこれらに限定されない、複数の動作を含む。本要旨のいくつかの実施例において、計画された治療はIMRTを含んでもよい。そのため、治療計画は、IMRT構成をさらに含んでもよい。
【0042】
いくつかの例示の実施例において、ゲーティング機構は、放射線の照射中に展開されてもよい。ゲーティング機構は、放射線の照射中にMRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)によって撮影されたMRI画像を用いて解剖学的構造(例えばROI及び/又はOAR)の位置をモニタリングし、空間的及び/又は時間的な「ゲート」に基づいて放射線の照射を一時停止する。例えば、ゲーティング機構は、時間的ゲート(例えば3秒)を超える時間長にわたってROI又はOARがシフトしながら1つ又は複数の空間的ゲート(例えば3ミリメートル(mm))にわたる範囲内に留まる場合、放射線の照射を一時停止するように構成されてもよい。そのため、第1の治療計画は、1つ又は複数の空間的及び/又は時間的なゲートの定義を含んでもよい。
【0043】
1つ又は複数の空間的ゲートは、患者の解剖学的構造(例えばROI及び/又はOAR)のデフォルト位置又は静止位置を示すMRI画像のベースライン集合に基づいて定義されてもよい。MRgRTシステム100は、MRI画像のベースライン集合に対する1つ又は複数の空間的ゲートの位置をユーザ(例えば放射線技師)が示すために、ユーザインターフェース130を介してグラフィックユーザインターフェース(GUI)を提供してもよい。
【0044】
本要旨のいくつかの実施例において、大きな放射線照射量を受けると予想される領域を示す患者の治療計画(例えば第1の治療計画)に基づいて、1つ又は複数の空間的のゲートを設定してもよい。代替又は追加として、ユーザは、MRI画像に示された患者の解剖学的構造(例えばROI及びOAR)と、大きな放射線照射量を受けると予想される領域と間のオーバーラップに基づいて、1つ又は複数の空間的ゲートを設定してもよい。MRgRTシステム100は、(例えば、MRI画像に基づいて生成された)ROIの平面又は立体表現、及び/又は、大きな放射線照射量を受けると予想される領域に基づいて、ユーザが1つ又は複数の空間的ゲートを視覚的に設定することを可能にするツールを提供してもよい。さらに、2D又は3Dの領域における重複を示す分数又は百分率に基づいて空間的ゲートがトリガされるように、空間的ゲートには分数ゲーティングパラメータが設定されてもよい。優位点として、空間的ゲートは、ROIが大きな放射線照射量に曝されるゲート制御された領域内にある場合に限り、ROIが放射線に曝されることを保証する。代替又は追加として、ゲートは、OARが大きな放射線照射量に曝されるゲート制御された領域に入る場合にOARが大きな放射線照射量に曝されないようにすることを保証してもよい。
【0045】
本要旨のいくつかの移植において、ユーザは、時間的ゲートを1つ又は複数の空間的ゲートに設定し、割り当ててもよい。しきい値時間期間(例えば3秒)にわたって保持される患者の動き(例えば患者の器官の幾何学的形状における変化)によって空間的ゲートがトリガされるように、時間的ゲートは数値的な時間遅延を課す。
【0046】
代替又は追加として、本要旨のいくつかの実施例において、放射線の照射中にインターロック機構が展開されてもよい。インターロック機構は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像(例えば平面)において有意及び/又は過大な患者の動き(例えば、患者の器官の幾何学的形状における変化)を検出したことに応じて、放射線照射を一時停止するように構成される。そのため、第1の治療計画は、インターロック機構をトリガする1つ又は複数のしきい値を含んでもよい。
【0047】
本要旨の実施例に沿って、インターロック機構は、(例えばMRI画像の)画像強度を含むがそれに限定されない、画像特性の高速数値評価に基づいて動作してもよい。例えば、インターロック機構は、画像強度の喪失(例えばブランクの画像)、連続する複数の画像又は画像集合の間の画素強度における合計の変化、及び/又は、連続する複数の画像又は画像集合の間の変動における大きな変化に基づいて動作してもよい。画像強度における変化は、MRIシステム128が正しく動作していないこと、及び/又は、高速かつ過大な患者の動きを示す可能性がある。従って、高速かつ過大な患者の動きが終了したときなど、条件が解消されるまで、放射線の照射は終了されてもよい。
【0048】
MRgRTシステム100は、第1の治療計画に少なくとも部分的に基づいて、患者への放射線療法治療を実施する(510)。本要旨の実施例に沿って、例えば、治療の実施は、(例えば患者用寝台124における)患者の位置の初期調整及び/又は継続的調整、MRI、及び放射線の照射を含むがこれらに限定されない、複数の動作を含んでもよい。
【0049】
本要旨のある実施例において、
MRgRTシステム100は、(例えば放射線療法ヘッド122を介する)放射線の照射と、(例えばMRIシステム128を用いた)MRIの実施とを同時に行う。優位点として、放射線の照射中に撮影されたMRI画像は、患者の動きを検出するために使用可能である。MRgRTシステム100は、放射線の照射中に検出された患者の動きに基づいて、患者への放射線の照射を制御してもよい。
【0050】
放射線の照射中にゲーティング機構が展開される本要旨のいくつかの実施例において、治療の実施は、ゲーティング機構によって一時停止された放射線の照射を再開する動作をさらに含んでもよい。代替又は追加として、放射線の照射中にインターロック機構が展開される場合、治療の実施は、インターロック機構によって一時停止された放射線の照射を再開する動作を含んでもよい。例えば、MRgRTシステム100は、放射線の照射の一時停止を引き起こした1つ又は複数の条件が解消されたとき(例えば、患者の動きが停止し、解剖学的構造が空間的ゲート内へ戻ったとき)、放射線の照射を再開してもよい。
【0051】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、放射線の照射中に収集されたデータ(例えば、MRIシステム128によって撮影されたMRI画像)の少なくとも一部を(例えば、第1のデータ記憶装置142及び/又は第2のデータ記憶装置144に)格納するように構成される。例えば、ある患者の以前の放射線療法治療セッションから収集されたデータは、その患者に係る後の治療計画を生成するために使用可能である。
【0052】
MRgRTシステム100は、放射線療法の間に撮影されたMRI画像に基づいて、患者に照射された実際の放射線照射量を計算する(512)。患者に照射された実際の放射線照射量は、放射線の照射中における患者の動き(例えば、患者の器官の幾何学的形状におけるシフト)と、ゲーティング機構及び/又はインターロック機構によって生じた放射線照射の中断とによって影響を受ける可能性がある。
【0053】
MRgRTシステム100は、変形可能な画像登録を実行し、放射線の照射中に1つ又は複数のしきい値を越える動きを示した解剖学的構造(例えば、ROI、OAR)を識別することで、実際の照射量を計算してもよい。さらに、本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、放射線に曝された解剖学的構造を識別することで実際の照射量を計算してもよい。MRgRTシステム100は、患者に照射された実際の照射量を反映する1つ又は複数の照射量体積ヒストグラム(dose volume histogram:DVH)を生成してもよい。
【0054】
MRgRTシステム100は、照射された実際の放射線照射量に基づいて、患者のための第2の治療計画を生成する(514)。本要旨の実施例に沿って、MRgRTシステム100は、1つ又は複数の以前の放射線療法治療の間に患者に照射された実際の放射線照射量に基づいて、後の放射線療法治療のための第2の治療計画を生成してもよい。
【0055】
第2の治療計画は、例えば、以前の放射線療法治療の間に受けた放射線照射量が不十分であるROIに対する放射線照射量を増大させること、過大な放射線照射量に曝されたOARに対する放射線照射量を減少させること、ビーム配置を変化させること、及びIMRT構成を変化させることを含むがこれらに限定されない、第1の治療計画によって示された処方及び/又は照射構成に対する変化を含んでもよい。
【0056】
本要旨のいくつかの実施例において、第2の治療計画を生成することは、追加のMRI画像(例えば、放射線の照射中に収集される4DのMRI画像)を取得することをさらに含んでもよい。MRgRTシステム100は、MRI画像に基づいて、第1の治療計画によって示された処方に対する追加の調整を含む第2の治療計画を生成してもよい。第2の治療計画は、インターロック機構のために第1の治療計画において定義された、1つ又は複数のゲート(例えば、時間的、空間的)及び/又は1つ又は複数のインターロックしきい値に対する変化を含んでもよい。
【0057】
MRgRTシステム100は、第1の治療計画及び第2の治療計画の比較結果を生成する(516)。本要旨の実施例に沿って、MRgRTシステム100は、複数の治療計画の互いに並べた比較結果を生成してもよい。複数の治療計画は、例えば、DVHと、照射量分布におけるホットスポット及びコールドスポットと、放射線ビームパラメータ(例えば、継続時間、セグメント量、角度、アイソセンターの放射線学的深さ)とを含むがこれらに限定されない、計画パラメータに関して比較されてもよい。
【0058】
2つの治療計画の間の相違が1つ又は複数のしきい値を越える場合、MRgRTシステム100は警告(アラート)を提供してもよい。例えば、MRgRTシステム100は、患者のMRI画像集合からの照射量分布を、(例えば、ユーザインターフェース130に接続されたディスプレイ132上に)直交して表示してもよい。MRgRTシステム100は、様々な治療計画に関連付けられたDVHの重複を示すことによって、複数の治療計画の間の照射量分布における差を示してもよい。
【0059】
処理500の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものとは異なる順序で実行されてもよい。さらに、処理500の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、反復及び/又は省略されてもよい。
【0060】
図6は、本要旨の実施例に沿った治療計画の処理600を示すフローチャートである。図1図5、及び図6を参照すると、処理600は、MRgRTシステム100によって実行可能であり、図5に関して説明した処理500の動作508及び/又は動作516を実施可能である。
【0061】
MRgRTシステム100は、少なくとも1つのMRI画像集合を受信する(602)。MRgRTシステム100は、治療計画を生成するために、少なくとも1つのMRI画像集合を必要とする可能性がある。本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、様々な異なるタイプの医療画像生成(例えば、MRI、CT、陽電子放射断層撮影(positron emission tomography:PET)、超音波)を統合する、多様式のMRI画像集合を受信してもよい。
【0062】
MRgRTシステム100は、MRI画像集合に少なくとも部分的に基づいて、1つ又は複数の解剖学的構造を定義する(604)。本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、患者のROI及びOARのうちの1つ又は複数の輪郭を自動的に決定してもよい。例えば、MRgRTシステム100は、匿名の既存のデータセット及び/又は患者からの以前のデータセットに基づいて、自動輪郭生成を実行する。MRgRTシステム100は、自動的に生成された輪郭が手動で検証されることを必要としてもよい。
【0063】
自動輪郭は、変形する輪郭であってもよく、又は変形しない輪郭であってもよい。変形する輪郭は、MRI画像の上に配置されたとき、解剖学的構造(例えば、ROI、OAR)と一致するその形状及び/又は体積を調整する。逆に、変形しない輪郭は、MRI画像の上に重ねられたとき、その形状及び体積を保持する。変形しない輪郭は、領域が後退しているとき又は領域が消滅した場合であっても、同等以上の照射量を必要とする悪性細胞(例えば臨床上の標的)の領域を追跡するように適合される。
【0064】
代替又は追加として、MRgRTシステム100は、例えば、アウトラインツール及びボクセル描画ツールを含むがこれらに限定されない、患者の解剖学的構造を手動でセグメント化して輪郭を生成するための1つ又は複数の機構を、ユーザインターフェース130を介して提供してもよい。MRgRTシステム100は、定義されたROI及び/又はOARをラベル付けるために、1つ又は複数のユーザによって追加されたカスタム名を含む、解剖学的構造名のライブラリを提供してもよい。
【0065】
本要旨のいくつかの実施例において、解剖学的構造は、照射中(intra-fraction)のMRI画像の標的体積(ITV)として定義されてもよい。MRgRTシステム100は、MRI画像集合の全体にわたって示された解剖学的構造の和としてITVを生成してもよい。代替として、MRgRTシステム100は、MRI画像集合の全体にわたって示された解剖学的構造の時間加重平均としてITVを生成してもよい。新たに生成されたITVは、元のMRI画像集合に関する直交図において既存のITVと比較されてもよく、これにより、対応するセグメント化された輪郭からなる集合を生成してもよい。
【0066】
本要旨のいくつかの実施例において、(例えば、自動及び/又は手動の)輪郭からなる複数の集合が利用可能であってもよく、及び/又は、そのような複数の集合が単一の解剖学的構造について生成されてもよい。例えば、MRgRTシステム100は、放射線療法治療の過程にわたって複数のMRI画像集合を受信してもよい。そのため、MRgRTシステム100は、ユーザが異なる複数の輪郭を比較できるように、複数の輪郭のうちの少なくともいくつかを(例えばユーザインターフェース130を介して)提供してもよい。例えば、MRgRTシステム100は、軸方向、矢状方向、及び/又は冠状方向の直交図と重複する輪郭のうちの少なくとも一部を提供してもよい。代替又は追加として、複数の異なる輪郭が、水性塗料ディスプレイにおいてボクセルとして示されてもよい。
【0067】
MRgRTシステム100は、処方を生成する(606)。本要旨の実施例に沿って、処方は、患者のROI及び拡張用のマージンに照射される放射線照射量(例えば、照射量対体積、点への照射量)を含んでもよい。処方は、例えば、OARに係る照射量対体積の制約を含むがこれらに限定されない、様々な許容量をさらに含んでもよい。様々な許容量は、放射線療法治療の実施中に照射量予測値及びオンテーブル治療計画の再最適化に用いられる限界を設定してもよい。
【0068】
本要旨のいくつかの実施例において、処方は、放射線療法治療の実施中にゲーティング機構が展開される場合に適用される1つ又は複数の空間的及び時間的ゲートを含んでもよい。1つ又は複数の空間的ゲートは、放射線の照射中にMRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)によって撮影されたMRI画像に基づいて決定されてもよい。
【0069】
処方は、例えば、平面の画像生成、立体の画像生成、照射量予測、オンテーブルの再最適化、4DのMRI画像データの取得、MRI画像標的体積(ITV)の標的生成、平面のゲーティング、及び照射された照射量評価のための要件又は禁止事項を含むがこれらに限定されない、追加の治療パラメータを含んでもよい。
【0070】
本要旨の実施例に沿って、処方で指定された放射線の照射量及び許容量は、MRgRTシステム100(例えば照射量再構成物クラスタ150)によって決定されるような、患者(例えばROI及びOAR)に照射された累積的な実際の放射線照射量に基づいて決定されてもよい。患者に照射された実際の放射線照射量は、放射線療法の実施前、実施中、及び/又は実施後に、MRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)によって撮影されたMRI画像(例えば、4DのMRI画像)を用いて決定されてもよい。
【0071】
MRgRTシステム100は、1つ又は複数の放射線の照射構成を生成する(608)。本要旨の実施例に沿って、照射構成は、例えば、アイソセンター配置、及びビーム及び/又はIMRT又はCRT構成を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0072】
MRgRTシステム100は、放射線ビームが通過するべきROIにおける点を示す1つ又は複数のアイソセンターをユーザ(例えば放射線療法士)が手動で配置できるようにするために、ユーザインターフェース130を介してGUIを提供してもよい。
【0073】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、ビーム構成においてユーザを支援するために、IMRT及び/又はCRTとともに使用するためのデフォルトビーム構成又はテンプレートを提供してもよい。例えば、デフォルトビーム構成又はテンプレートは、例えば、胸部への接線照射、胸部への接線照射及びリンパ節照射、頭部及び頸部並びに下部頸部の領域、中枢神経系、頭蓋脊髄、肺、前立腺、骨盤の全体、骨盤の右半分及び左半分、大動脈傍体あり又はなしの骨盤の全体、脳の全体、椎体、マントル照射野、及び身体全体の照射野を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の共通ROIについて提供されてもよい。
【0074】
代替又は追加として、ユーザは、新たなテンプレートとしてカスタムビーム構成を作成して保存してもよい。例えば、ユーザは、MRgRTシステム100によって提供されるビームアイビューディスプレイを用いて、1つ又は複数の放射線ビームを手動で配置してもよい。ユーザは、例えば、3ビーム配置及び単一ビーム配置を含むがこれらに限定されない、複数の配置モードで、放射線ビームを配置してもよい。本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、個々の放射線ビームの配置に対応するビーム通過時間を提供してもよい。
【0075】
本要旨のいくつかの実施例において、配置された放射線ビームのうちの1つ又は複数がIMRTのために選択されてもよい。IMRTのためにある放射線ビームが選択される場合、MRgRTシステム100は、例えば、ROIのための処方照射量、OARのための許容照射量、及びROI及びOARの相対重要度を含むがこれらに限定されないIMRT構成パラメータをユーザが示すためのGUIを提供してもよい。本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、IMRTを実施するための最適化されたモデルを含む、IMRTテンプレートを提供してもよい。テンプレートは、以前の場合には理想的な結果をもたらすことが実証された、予め定義された値を含む。代替として、ユーザは、IMRTテンプレートとしてカスタムIMRT構成を作成して保存してもよい。
【0076】
本要旨の実施例に沿って、MRgRTシステム100は、例えば、フルエンスマップ最適化(例えば、ビームレット照射量計算を用いて行われる)、リーフ配列、及びセグメントの順序の最適化を含むがこれらに限定されない、1つ又は複数の動作を実行することでIMRT構成を最適化してもよい。MRgRTシステム100は、モンテカルロ法シミュレーションを実行することで、IMRT構成をさらに最適化してもよい。
【0077】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、元のIMRT構成とIMRT構成パラメータの元の集合とに基づく「ウォームスタート」の最適化を実行する。優位点として、「ウォームスタート」の最適化は、最適化されたIMRT構成が、患者のために作られた元のIMRT構成に類似していることを保証する。しかしながら、1つ又は複数のIMRT構成パラメータを調整することは、最適化されたIMRT構成を、分岐するとしても、より望ましい解決方法に向かって方向付けることができる。
【0078】
MRgRTシステム100は、処方及び照射構成に少なくとも部分的に基づいて、1つ又は複数の照射量予測を生成する(610)。本要旨の実施例に沿って、MRgRTシステム100は、照射量照射に対するいかなる相互作用及び/又はエイリアシングの影響も検出するために、MRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)によって撮影されたMRI画像に対して処方及び照射構成を適用することで、照射量予測を生成してもよい。
【0079】
MRgRTシステム100は、照射量述語が1つ又は複数の臨床目的を満たすか否かを決定する(611)。照射量予測が1つ又は複数の臨床目的を満たす(611がY)とMRgRTシステム100が決定する場合、MRgRTシステム100は、処方及び照射構成を含む治療計画を生成する(612)。臨床の目的は、例えば、患者の解剖学的構造(例えばROI及びOAR)に係る照射量対体積の制約、患者の解剖学的構造に係る最小許容照射量、患者の解剖学的構造に係る最大照射量、生物学的有効照射又は照射量対体積の制約、腫瘍制御確率、及び正常組織(例えばOAR)の合併症確率を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0080】
代替として、照射量予測が1つ又は複数の臨床目的を満たさない(611がN)とMRgRTシステム100が決定する場合、MRgRTシステム100は、処方及び照射構成のうちの少なくとも一方を修正する(614)。MRgRTシステム100は、処方及び照射構成に基づいて照射量予測を生成し(610)、照射量予測が1つ又は複数の臨床目的を満たすか否かを決定する(611)。
【0081】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、処理600を先験的に(すなわち患者の到着前に)実行するように構成されてもよい。代替又は追加として、MRgRTシステム100は、処理600を「オンテーブル」で(例えば、患者が患者用寝台124にいる間に)を実行するように構成されてもよい。優位点として、MRgRTシステム100は、オンテーブルの治療計画のために、処理600を実行し、治療計画を効率的及び適時の方法で(例えば2分未満で)生成することができる。
【0082】
処理600の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものとは異なる順序で実行されてもよい。さらに、処理600の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、反復及び/又は省略されてもよい。
【0083】
図7は、本要旨の実施例に沿った放射線療法を実施する処理700を示すフローチャートである。図1図5、及び図7を参照すると、処理700は、MRgRTシステム100によって実行可能であり、図5に関して説明した処理500の動作510を実施可能である。
【0084】
MRgRTシステム100は、患者の位置を調整する(702)。例えば、MRgRTシステム100は、患者用寝台124の位置を調整することによって、患者の位置を調整してもよい。本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、患者の皮膚にマークされた3つの直交する「着地点」をレーザーシステムを用いて識別することで、患者の位置を調整してもよい。MRgRTシステム100は、以前の放射線療法セッションに行われた調整値を格納し、後の放射線療法セッションの間に同じ調整値を自動的に適用してもよい。
【0085】
さらに、MRgRTシステム100は、手動の患者調整を実行する際にユーザ(例えば放射線療法士)を支援してもよい。例えば、寝台の動きにおける横方向及び/又は縦方向の限界を超過する場合、又は、患者(もしくは患者用寝台124)がガントリー120及び/又は放射線療法ヘッド122に過度に接近する場合、MRgRTシステム100は警告を提供してもよい。MRgRTシステム100は、アイソセンターの位置を(例えばユーザインターフェース130に接続されたディスプレイ132を介して)表示してもよく、さらに、治療計画に従って配置された放射線ビームを投影してもよい。さらに、MRgRTシステム100は、直交するパイロット走査及び現在の主な計画容積のうちの1つ又は複数を取得することによって、患者が適切に位置決めされていることを検証してもよい。
【0086】
MRgRTシステム100は、放射線の照射とMRIの実施とを同時に行う(704)。本要旨の実施例に沿って、MRgRTシステム100は、(例えばMRIシステム128を用いて)MRI画像を取得しながら、(例えば患者用寝台124の上の)患者に(例えば放射線療法ヘッド122を介して)放射線を照射する。
【0087】
本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像を選択的に保存してもよい。例えば、MRgRTシステム100は、(例えば、ゲーティング及び/又はインターロック機構によって)放射線照射が一時停止されるときに撮影されたMRI画像を除去し、及び/又は、しきい値(例えば2mm)を超える患者の動きを示していないMRI画像を統合してもよい。
【0088】
MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて、1つ又は複数のゲートがトリガされるか否かを決定する(705)。本要旨の実施例に沿って、ゲーティング機構は、放射線の照射中に展開されてもよい。ゲーティング機構は、1つ又は複数の空間的ゲートに関して放射線の照射中に1つ又は複数の解剖学的構造(例えばROI及び/又はOAR)の位置をモニタリングする。解剖学的構造の位置は、当該解剖学的構造が空間的ゲートの外部(例えば3mm)にシフトする場合、空間的ゲートをトリガしてもよい。さらに、解剖学的構造が時間的ゲート(例えば3秒)を超える時間長にわたって空間的ゲートの外部に留まる場合、時間的ゲートをトリガしてもよい。
【0089】
MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて1つ又は複数のゲートがトリガされないと決定してもよい(705がN)。例えば、解剖学的構造の位置は、1つ又は複数の空間的ゲートの内部に留まってもよい。代替として、解剖学的構造の位置は、時間的ゲートを超える時間期間ではない時間期間にわたって1つ又は複数の空間的ゲートの外部にシフトしてもよい。そのため、MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて、患者の動きが1つ又は複数のインターロックしきい値を超過するか否かを決定する(707)。本要旨のいくつかの実施例において、インターロック機構は、放射線の照射中に展開されてもよい。インターロック機構は、平面のMRI画像に基づいて患者の動きを検出し、1つ又は複数のしきい値を越える患者の動きを検出したことに応じて放射線の照射を一時停止する。
【0090】
患者の動きが1つ又は複数のインターロックしきい値を越えるとMRgRTシステム100が決定する場合(707がY)、MRgRTシステム100は、放射線の照射を一時停止する(708)。代替として、患者の動きが1つ又は複数のインターロックしきい値を越えないとMRgRTシステム100が決定する場合(707がN)、MRgRTシステム100は、放射線の照射とMRIの実施とを同時に行い続ける(704)。
【0091】
代替として、MRgRTシステム100が、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて1つ又は複数のゲートがトリガされたと決定する場合(705がY)、MRgRTシステム100は、放射線の照射を一時停止する(708)。例えば、解剖学的構造の位置は、1つ又は複数の空間的ゲートの外部にシフトしてもよい。さらに、解剖学的構造の位置は、時間的ゲートを超過する時間期間にわたって1つ又は複数の空間的ゲートの外部にシフトしてもよい。従って、MRgRTシステム100は、1つ又は複数のゲートがトリガされたと決定し、放射線の照射を一時停止してもよい。
【0092】
MRgRTシステム100は、放射線の照射の一時停止を引き起こした1つ又は複数の条件が解消されたか否かを決定する(709)。例えば、MRgRTシステム100は、解剖学的構造が空間的ゲートの内部の位置に戻ったか否かを決定してもよい。MRgRTシステム100は、1つ又は複数のしきい値を超える患者の動きが終了したか否かを決定してもよい。
【0093】
放射線の照射の一時停止を引き起こした1つ又は複数の条件が解消されたとMRgRTシステム100が決定する場合(709がY)、MRgRTシステム100は、放射線の照射を再開する(710)。MRgRTシステム100は、放射線の照射と医療画像生成の実施とを同時に行い続ける(704)。代替として、1つ又は複数のゲートをトリガする1つ又は複数の条件が解消されていないとMRgRTシステム100が決定する場合(709がN)、MRgRTシステム100は、放射線の照射を一時停止し続ける(706)。
【0094】
処理700の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものとは異なる順序で実行されてもよい。さらに、処理700の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、反復及び/又は省略されてもよい。
【0095】
図8は、本要旨の実施例に沿った照射量計算の処理800を示すフローチャートである。図1図7、及び図8を参照すると、処理800は、MRgRTシステム100(例えば照射量再構成クラスタ180)によって実行可能であり、図5に関して説明した処理500の動作512を実施可能である。
【0096】
MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像に対して変形可能な画像登録を実行する(802)。例えば、MRgRTシステム100は、放射線療法の実施前、実施中、及び/又は実施後にMRIシステム128によって撮影された一連のMRI画像に対して変形可能な画像登録を実行してもよい。本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、放射線の照射中の全体にわたって、初期位置からの1つ又は複数の解剖学的構造(例えばROI及びOAR)の絶対的な変位を追跡してもよい。
【0097】
MRgRTシステム100は、照射量計算のための1つ又は複数の解剖学的構造を識別する(804)。照射された実際の放射線照射量は、放射線の照射中に患者の動き(例えば、患者の器官の幾何学的形状におけるシフト)によって影響を受ける。したがって、本要旨のいくつかの実施例において、MRgRTシステム100は、しきい値を超えて移動した解剖学的構造に対して、照射量の計算に係るフラグを立ててもよく、一方、しきい値を越える動きを示さなかった解剖学的構造は、照射量の計算において迂回される。代替又は追加として、MRgRTシステム100は、放射線に曝されなかった1つ又は複数の解剖学的構造を決定するために、MRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)によって撮影されたMRI画像と、放射線ビーム形状及び患者を通過するフルエンスとの相関を計算してもよい。MRgRTシステム100は、放射線に曝された解剖学的構造に対して、照射量の計算に係るフラグを立ててもよく、放射線に曝されなかった解剖学的構造は、照射量の計算において迂回されてもよい。
【0098】
MRgRTシステム100は、照射量の計算のために識別された1つ又は複数の解剖学的構造に照射された実際の放射線照射量の初期計算値を生成する(806)。本要旨の実施例に沿って、MRgRTシステム100は、スケーリングされた濃度及び有限サイズを有するペンシルビームアルゴリズムを実行することで、照射された実際の放射線照射量の初期計算値を生成してもよい。代替又は追加として、MRgRTシステム100は、制御データと、放射線の照射中にMRgRTシステム100(例えばMRIシステム128)によって撮影されたMRI画像とを組み込んだ、時間依存するモンテカルロ法シミュレーションを実行してもよい。
【0099】
患者の動きに加えて、患者に照射された実際の放射線照射量もまた、ゲーティング機構及び/又はインターロック機構によって引き起こされた放射線の照射の中断によって影響を受ける可能性がある。例えば、ゲーティング機構及び/又はインターロック機構は、放射線の照射における一連の一時停止を引き起こし、それによって、例えば、放射線照射量を安全に照射可能なしきい値より小さくするためのシャッタ照射量効果及び裁断誤差を含むがこれらに限定されない、患者に照射される実際の放射線照射量を変化させてもよい。従って、MRgRTシステム100は、ゲーティング機構及び/又はインターロック機構によって引き起こされた放射線の照射の中断の影響を説明する初期計算値を生成するように構成される。例えば、MRgRTシステム100は、放射線の照射中に照射量の変動を記録及び考慮し、患者に照射された実際の放射線照射量を計算するときにそのような変動に対処してもよい。
【0100】
MRgRTシステム100は、初期計算に関連付けられた不確実性を計算する(808)。MRgRTシステム100は、初期計算と、初期計算に関連付けられた不確実性とに少なくとも部分的に基づいて、1つ又は複数の実際の放射線照射量を計算する(810)。放射線照射量の初期計算に関連付けられた不確実性は、モンテカルロ法シミュレーションのランダム性に起因して発生する可能性がある。さらに、初期計算に関連付けられた不確実性は、変形可能な画像登録の過程で発生する可能性がある。例えば、変形可能な画像登録は、変形の絶対的な大きさと、隣接ボクセルとの接続性の変化とに基づいて、確率的結果を提供する。そのため、MRgRTシステム100は、初期計算と、初期計算に関連付けられた不確実性との分布を補間することで、実際の放射線照射量を計算してもよい。
【0101】
MRgRTシステム100は、照射された実際の照射量を反映する1つ又は複数のDVHを生成する(812)。MRgRTシステム100は、照射された実際の照射量によって関連付けられたDVHを、対応する治療計画に関連付けられたDVHと比較する(814)。照射された実際の照射量に関連付けられたDVHを、対応する治療計画に関連付けられたDVHと比較した結果が、1つ又は複数のしきい値を超える差を示す場合、MRgRTシステム100は警告を提供する(814)。例えば、患者に照射された実際の放射線照射量と、治療計画で処方された放射線照射量の間の相違が、例えば、カバレッジの体積、及び照射量分布におけるホットスポット及びコールドスポットを含むがこれらに限定されない、1つ又は複数のしきい値を越える場合、MRgRTシステム100は、(例えば臨床医へ)警告を発行してもよい。
【0102】
処理800の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものとは異なる順序で実行されてもよい。さらに、処理800の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、反復及び/又は省略されてもよい。
【0103】
図9は、本要旨の実施例に沿った放射線療法を実施する処理900を示すフローチャートである。図1図5、及び図9を参照すると、処理900は、MRgRTシステム100によって実行可能であり、図5に関して説明した処理500の動作510を実施可能である。
【0104】
MRgRTシステム100は、放射線の照射とMRIの実施とを同時に行う(902)。MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて、1つ又は複数のゲートがトリガされるか否かを決定する(903)。例えば、MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像を用いて、1つ又は複数の空間的及び/又は時間的ゲートがトリガされるか否かを決定してもよい。
【0105】
MRgRTシステム100は、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて1つ又は複数のゲートがトリガされないと決定してもよい(903がN)。例えば、解剖学的構造の位置は、1つ又は複数の空間的ゲートの内部に留まってもよい。代替として、解剖学的構造の位置は、時間的ゲートを超える時間期間ではない時間期間にわたって1つ又は複数の空間的ゲートの外部にシフトしてもよい。そのため、MRgRTシステムは、放射線の照射とMRIの実施とを行い続ける(902)。
【0106】
代替として、MRgRTシステムが、放射線の照射中に撮影されたMRI画像の少なくとも一部に基づいて1つ又は複数のゲートがトリガされたと決定する場合(903がY)、MRgRTシステム100は、放射線の照射を一時停止する(904)。
【0107】
処理900の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、図示したものとは異なる順序で実行されてもよい。さらに、処理900の1つ又は複数の動作は、本開示の範囲から外れることなく、反復及び/又は省略されてもよい。
【0108】
本開示の実施例は、上述の説明に沿った方法を含むとともに、説明した特徴の1つ又は複数を実装する動作を1つ又は複数の機械(例えばコンピュータなど)に実行させるように作用する、有形的に具体化された機械可読媒体を備える物品を含む可能性があるが、これらに限定されない。同様に、1つ又は複数のプロセッサと、この1つ又は複数のプロセッサに接続された1つ又は複数のメモリとを含む可能性があるコンピュータシステムも説明される。機械可読の記憶媒体を含んでもよいメモリは、本明細書で説明した動作の1つ又は複数を1つ又は複数のプロセッサに実行させる1つ又は複数のプログラムを含み、符号化し、格納し、又は同様のことを行ってもよい。本要旨の1つ又は複数の実施例に沿った、コンピュータで実装した方法は、単一の計算システム又は複数の計算システムに存在する1つ又は複数のデータプロセッサによって実施可能である。そのような複数の計算システムは、ネットワーク(例えば、インターネット、無線ワイドエリアネットワーク、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、有線ネットワークなど)上の接続を含むがこれらに限定されない1つ又は複数の接続を介して、また、複数の計算システムのうちの1つ又は複数の間の直接接続を介して、又は他のものを介して接続可能であり、データ、コマンド、又は他の命令などを交換可能である。
【0109】
ここで説明した内容の1つ又は複数の態様又は特徴は、ディジタル電子回路、集積回路、特別に設計された特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。これらの様々な態様又は特徴は、ストレージシステム、少なくとも1つの入力装置、及び少なくとも1つの出力装置からデータ及び命令を受信するように、及びそれらにデータ及び命令を送信するように接続された、特定用途又は汎用であってもよい少なくとも1つのプログラミング可能なプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行可能及び/又は解釈可能である、1つ又は複数のコンピュータプログラムの実装を含んでもよい。プログラマブルシステム又は計算システムは、クライアント及びサーバを含んでもよい。クライアント及びサーバは、概して、互いから遠隔して設けられ、典型的には通信ネットワークを介して相互に対話する。クライアント及びサーバの関係は、各コンピュータにおいて実行され、互いにクライアント・サーバの関係を有するコンピュータプログラムによって発生する。
【0110】
これらのコンピュータプログラムは、プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、アプリケーション、構成要素、あるいはコードと呼ばれてもよく、これらのコンピュータプログラムは、プログラミング可能なプロセッサのための機械命令を含み、高水準の手続き型言語、オブジェクト指向型のプログラミング言語、関数型のプログラミング言語、論理プログラミング言語、及び/又はアセンブリ/機械語で実装可能である。ここで使用されるように、用語「機械可読媒体」は、機械命令及び/又はデータをプログラミング可能なプロセッサへ提供するために使用される、例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラム可能論理回路(PLD)のような任意のコンピュータプログラム製品、装置、及び/又は機器を示し、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含む。用語「機械可読信号」は、機械命令及び/又はデータをプログラミング可能なプロセッサへ提供するために使用される任意の信号を示す。機械可読媒体は、例えば、非一時的なソリッドステートメモリ又は磁気ハードドライブ又は任意の等価な記憶媒体のように、そのような機械命令を非一時的に格納してもよい。機械可読媒体は、代替として又は追加として、例えば、1つ又は複数の物理的プロセッサコアに関連付けられたプロセッサキャッシュ又は他のランダムアクセスメモリーのように、そのような機械命令を一時的に格納してもよい。
【0111】
ユーザとの対話を行うために、ここで説明した内容の1つ又は複数の態様又は特徴は、ユーザへ情報を表示するためのディスプレイ装置、例えば陰極線管(CRT)又は液晶ディスプレイ(LCD)又は発光ダイオード(LED)モニタなどを有し、また、ユーザがコンピュータへ入力するために使用してもよいキーボードとマウス又はトラックボールのようなポインティングデバイスとを有するコンピュータ上で実装可能である。同様にユーザとの対話を行うために、他の種類の装置も使用可能である。例えば、ユーザに提供されるフィードバックは、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、又は触覚フィードバックのような、任意の形式の知覚フィードバックであってもよい。ユーザからの入力は、音声、スピーチ、又は触覚の入力を含むが、これらに限定されない任意の形式で受信されてもよい。他の可能な入力装置は、一点又は多点の抵抗性又は容量性トラックパッドのようなタッチスクリーン又は他の接触感応装置、音声認識ハードウェア及びソフトウェア、光学スキャナ、光学ポインタ、ディジタルMRI画像取り込み装置及び関連付けられた解釈ソフトウェア、など含むが、これらに限定されない。
【0112】
上述の発明の詳細な説明及び請求項において、「少なくとも1つの」又は「1つ又は複数の」のような語句が、構成要素又は特徴の接続詞によるリストの後に現れることがある。用語「及び/又は」が、2つ以上の構成要素又は特徴のリストに現れることがある。これらの語句は、それを使用した文脈で暗黙的に又は明示的に否定されていない限り、列挙された構成要素又は特徴のうちの任意のものを個別に意味すること、又は、記載した構成要素又は特徴のうちの任意のものを他の記載した構成要素又は特徴のうちの任意のものと組み合わせたものを意味することを意図している。例えば、語句「A及びBの少なくとも1つ」、「A及びBの1つ又は複数」、「A及び/又はB」は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両方」をそれぞれ意味する。3つ以上の物を含むリストについて同様の解釈が意図される。例えば、語句「A、B、及びCの少なくとも1つ」、「A、B、及びCの1つ又は複数」、及び「A、B、及び/又はC」は、「Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びBの両方、A及びCの両方、B及びCの両方、又はA及びB及びCのすべて」をそれぞれ意味することを意図する。上記及び請求項における用語「基づいて」の使用は、記載していない特徴又は構成要素があってもよいように、「少なくとも部分的に基づいて」を意味することを意図する。
【0113】
ここで説明した内容は、所望の構成に依存して、システム、装置、方法、及び/又は物として具体化されてもよい。以上の説明で示した実施例は、本明細書で説明した対処に該当するすべての実施例を表すわけではない。代わりに、それらは、説明した対処に関連する態様に該当するいくつかの例示にすぎない。少数の変形例について詳細に上述したが、他の変更又は追加も可能である。特に、ここに説明されたものに加えて、別の特徴及び/又は変形例も提供することができる。例えば、上述した実施例は、開示された特徴の様々な組み合わせ及び部分的な組み合わせに関してもよく、上に開示されたいくつかの別の特徴の組み合わせ及び部分的な組み合わせに関してもよい。さらに、添付の図面に示され、及び/又はここで説明した、複数の論理フローは、望ましい結果を達成するために、図示した特定の順序又は逐次的順序を必ずしも必要としない。他の実施例が、添付の請求項の範囲内にあってもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9