特許第6893887号(P6893887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6893887ポリマー組成物およびそれから得ることができる滅菌可能な物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6893887
(24)【登録日】2021年6月4日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】ポリマー組成物およびそれから得ることができる滅菌可能な物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 81/06 20060101AFI20210614BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
   C08L81/06
   C08K3/22
【請求項の数】16
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-564091(P2017-564091)
(86)(22)【出願日】2016年6月7日
(65)【公表番号】特表2018-517045(P2018-517045A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】EP2016062837
(87)【国際公開番号】WO2016198372
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2019年5月7日
(31)【優先権主張番号】62/173,632
(32)【優先日】2015年6月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512323929
【氏名又は名称】ソルベイ スペシャルティ ポリマーズ ユーエスエー, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】モンタツ, マリアム
(72)【発明者】
【氏名】ブッシェルマン, コリーヌ
【審査官】 三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0310804(US,A1)
【文献】 国際公開第2014/017274(WO,A1)
【文献】 特開2012−251039(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0308777(US,A1)
【文献】 特開2010−123389(JP,A)
【文献】 特表2008−516030(JP,A)
【文献】 特表2009−530461(JP,A)
【文献】 特表2016−522300(JP,A)
【文献】 特表2015−502441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00− 13/08
C08L 1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物[組成物(C)]であって、
(a)組成物(C)の重量に対し最大で99重量%及び少なくとも80重量%の量であり、ポリマー(P)の実質的にすべての繰り返し単位が、以下の式(B)〜(F):
およびそれらの混合物からなる群から選択される繰り返し単位(Ra)であるホモポリマーまたはコポリマーである、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー[ポリマー(P)];
(b)任意選択で他の金属酸化物と組み合わせた酸化カルシウム(CaO)および/または(MgO)
を含み、但し、
− 単独でまたはMgOおよび/もしくは他の金属酸化物と組み合わせて、CaOは、組成物(C)の重量に対して1重量%〜6重量%の範囲の量であり;
MgOは、組成物(C)の重量に対して0.5重量%〜6重量%の範囲の量であり;
− 組成物(C)がCaOを含まない場合、MgOの量は、組成物(C)の重量に対して少なくとも2重量%及び6重量%までである
ことを条件とする、組成物[組成物(C)]。
【請求項2】
ポリマー(P)の繰り返し単位が、すべて式(B)に従う、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリ(エチルビニルアセテート、ポリオレフィン、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ(エーテルケトン)、ポリ(エーテルエーテルケトン)、ポリ(エーテルケトンケトン)、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、シリコーンエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの混合物から選択されるポリマーをさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項4】
ポリエーテルイミドを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物(C)中のCaOおよび/またはMgOは、約5ミクロンまでの平均粒子サイズおよび1.5〜160m/gのBET表面積を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ポリマー(P)の量が、組成物(C)の重量に対して少なくとも90重量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
4重量%のCaOを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項8】
2重量%のCaOおよび2重量%のMgOを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
1重量%のCaOおよび1重量%のMgOを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項10】
MgOおよびAlの4重量%の混合物を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を含む成形物品。
【請求項12】
医療物品、食品取扱または食品調製物品、飲料取扱物品または飲料調製物品から選択される、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
物品を過酸化水素ガスプラズマ滅菌にかけることを含む、請求項11または12に記載の成形物品を滅菌するための方法。
【請求項14】
少なくとも1つの過酸化水素ガスプラズマ滅菌プロセスにかけられている、請求項11または12に記載の成形物品。
【請求項15】
ポリエーテルイミド(PEI)を含まない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物から作られ、かつそれぞれ47分である50回の過酸化水素ガスプラズマ滅菌にかけられた物品が、5.5未満の全色差(DE)および黄変度(Db)を示し、DEおよびDbが、ASTM E308−08に従って測定されたCIE 1976(L、a、b)色空間インデックスによって計算される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年6月10日出願の米国仮特許出願第62/173632号に対する優先権を主張するものであり、この出願の全内容は、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、芳香族ポリスルホン、すなわち、ポリ(ビフェニルエーテル)スルホンを含むポリマー組成物、および前記組成物から得ることができる滅菌可能な物品に関する。
【背景技術】
【0003】
種々の滅菌方法が真菌、細菌およびウイルスなどの伝染性物質の除去のために市場で利用可能である。それらは、通常、加熱滅菌、化学的滅菌または放射線滅菌方法の下で分類される。それらの中でも、高温蒸気滅菌および低温過酸化水素ガスプラズマ滅菌方法が今日、医療分野で広く使用されている。
【0004】
米国特許第4643876号明細書(SURGIKOS INC[米国])に開示された過酸化水素ガスプラズマ滅菌方法は、過酸化水素と低温ガスプラズマとの間の相乗作用を利用し、それにより、約50℃で有効な滅菌を可能にし、これは、高温オートクレーブ滅菌で達成されるものよりも相当に低い。したがって、過酸化水素ガスプラズマ滅菌は、高温または高湿気環境に耐えない部品またはデバイス(例えば、電子または光学の部品またはデバイス)を備える医療物品のオートクレーブ滅菌の貴重な代替案に相当する。
【0005】
過酸化水素ガスプラズマ滅菌方法では、滅菌される医療物品は、密閉プラズマチャンバ内に置かれ、ここで、真空がかけられ、過酸化水素の溶液が溶液と物品との接触を可能にするのに十分な圧力で注入される。その後、過酸化水素ガスプラズマを、完全な滅菌を可能にする時間にわたり発生させる。
【0006】
過酸化水素ガスプラズマ滅菌の利点は、滅菌が比較的短い時間で完了され、その結果、物品をより多くの滅菌サイクルにかけ得ることである。しかしながら、過酸化水素の過酷な酸化力およびイオン化酸性蒸気の形成のため、ある種の物品、特にプラスチック部品は、それらの特性および外観の劣化を受ける。例えば、ポリフェニルスルホン(PPSU)組成物から作られた市販の物品は、蒸気滅菌に対して卓越した耐性を有するが、過酸化水素ガスプラズマ滅菌に対して低い耐性を有し;それらの色は、橙色に変化し、(PPSU)の分子量のわずかな減少が高いサイクル数後に認められる。
【0007】
米国特許第8501291号明細書(SABIC INNOVATIVE PLASTICS IP B.V)には、過酸化水素プラズマまたは過酸化水素蒸気滅菌されたポリマー組成物を含む滅菌物品が開示され、このポリマー組成物は、
− 20〜80重量パーセントのポリフェニレンエーテルスルホン;および
− 20〜80重量パーセントのポリエーテルイミド
を含む。
【0008】
過酸化水素プラズマまたは過酸化水素蒸気で滅菌される場合、物品は、ポリフェニレンエーテルスルホンのみを含む組成物に対して、意外にも改善された色および透明性の変化に対する耐性と、機械的特性の喪失に対する耐性とを有すると言われる。
【0009】
ポリフェニレンエーテルスルホン/ポリエーテルイミド組成物は、いくつかの任意選択的な原料、とりわけ、充填剤または強化剤(第11欄、48〜49行)を含んでもよく;この明細書では、充填剤または強化剤の例として、二酸化チタン(TiO)、酸化アルミニウムおよび酸化マグネシウムが挙げられている(第11欄、55〜56行)。実施例の組成物中にはTiOのみが使用されている。
【0010】
他の特許文献、例えば、米国特許第5204400号明細書(AMOCO CORP)(以後、「US’400」)、米国特許出願公開第2008064801号明細書(SOLVAY ADVANCED POLYMERS LLC)(以後、「’US’801」)、米国特許出願公開第20080206536号明細書 (SOLVAY ADVANCED POLYMERS)、米国特許出願公開第2009048379号明細書(SOLVAY ADVANCED POLYMERS LLC)(以後、「US’379」)および国際公開第2014/170255号パンフレット(SOLVAY SPECIALTY POLYMERS USA)(以後、「WO’255」)には、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)および金属酸化物を含むポリマー組成物が開示されている。特に、US’801およびUS’379は、とりわけ、MgOに言及し、およびUS’801は、CaOにさらに言及している。それにもかかわらず、このような文献のいずれも、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)から作られた組成物の滅菌に対する耐性の増加の問題、特に変色を回避する問題を認識も対処もしておらず、かつこのような文献のいずれも、このような問題を解決するための特定の酸化物の選択に対して暗示または示唆を与えていない。
【0011】
したがって、現在、高温蒸気滅菌と低温過酸化水素ガスプラズマ滅菌方法との両方の過酷な環境に耐えるポリマー組成物を見出す大きい必要性が市場にある。
【発明の概要】
【0012】
本出願人は、今や、驚くべきことに、ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)を含む組成物の滅菌に対する耐性、特に過酸化水素ガスプラズマによる滅菌に対する耐性が1種以上の特定の金属酸化物を添加することによって増加され得ることを見出した。特に、本出願人は、驚くべきことに、ポリエーテルイミドの非存在下でさえも、本発明の組成物が過酸化水素ガスプラズマ滅菌の繰り返しサイクル後に変色しないことを見出した。
【0013】
したがって、本発明は、
(a)ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)ポリマー[ポリマー(P)];
(b)任意選択で他の金属酸化物と組み合わせた酸化カルシウム(CaO)および/または(MgO)
を含み、但し、
− 単独でまたはMgOおよび/もしくは他の金属酸化物と組み合わせて、Caoは、組成物の重量に対して少なくとも1重量%であり;
− 組成物(C)がCaOを含まない場合、MgOの量は、組成物の重量に対して少なくとも2重量%である
ことを条件とする、組成物[組成物(C)]に関する。
【0014】
例示的な実施形態において、組成物(C)は、ポリエーテルイミドポリマー[ポリマー(PEI)]をさらに含む。一部の実施形態において、組成物(C)は、ポリエーテルイミドポリマー[ポリマー(PEI)]を含まない。
【0015】
本発明は、組成物(C)を含む成形物品[物品(A)]と、組成物(C)および成形物品(A)の製造のための方法とにさらに関する。
【0016】
一般的定義
明確さのために、本出願を通して、
− ポリマー(P)およびポリマー(PEI)の一般的定義へのいずれの言及も、特に断りのない限り、それぞれの一般的定義の範囲内に入るそれぞれの特定の定義を含むことが意図され;
− 「ポリマー(P)」、「ポリマー(PEI)」、「金属酸化物」などのような表現における不定冠詞「1つの(a)」は、特に断りのない限り、「1つ以上」または「少なくとも1つ」を意味することが意図され;
− 式または式の部分を特定する名称、記号または数字の前後での括弧「( )」、例えば、「ポリマー(P)」、「ポリマー(PEI)」などの使用は、本文の残りからその名称、記号または数字をよりよく区別する単なる目的を有し、したがって、前記括弧は省略することもでき;
− 数値範囲が示される場合、範囲限界が含まれ;
− 用語「ハロゲン」は、特に断りのない限り、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素を含み;
− 形容詞「芳香族」または「アリール」は、4n+2(ここで、nは、0または任意の正の整数である)に等しい数のπ電子を有する任意の単核または多核環式基(または部分)を意味し;
− 用語「方法(method)」は、方法(process)の同意語として使用され、逆もまた同様であり;
− 1つまたは複数の「組成物(C)から得ることができる成形物品(A)」は、組成物(C)を含む成形物品である。
【0017】
ポリ(ビフェニルエーテルスルホン)[ポリマーP]
本発明において、用語「ポリ(ビフェニル)エーテルスルホン)[ポリマー(P)]は、繰り返し単位の50重量%超が、
− 好ましくは、以下の式(R−1)〜(R−3):
(式中:
Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第4級アンモニウムからなる群から選択され、およびj、kおよびlは、互いに等しいかまたは互いに異なり、独立して、0、1、2、3または4である)
からなる群から選択される少なくとも1個のビフェニレン基を含む1つ以上の部分;
− 少なくとも1個のエーテル基(−O−)、および
− 少なくとも1個のスルホン基(−SO−)
を含む繰り返し単位(Ra)である、重縮合ポリマーを意味することが意図される。
【0018】
繰り返し単位(Ra)は、有利には、以下の式(A):
− Ar−(T−Ar−O−Ar−SO−[Ar―(T−Ar−SO−Ar−O− (式A)
(式中:
Ar、Ar、Ar、Ar、およびArは、互いにおよび出現ごとに等しいかまたは異なり、独立して、芳香族単核または多核環式基であり;
但し、少なくとも1つのAr〜Arは、上で定義されたとおりの式(R−1)〜(R−3)から選択される少なくとも1個のビフェニレン基を含む芳香族部分であることを条件とし;
− Tのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、結合または1個もしくは2個以上のヘテロ原子を任意選択で含む二価基であり;
− nおよびmは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、ゼロまたは1〜5の整数である)
の繰り返し単位である。
【0019】
好ましくは、Ar、Ar、Ar、Ar、Arは、互いに等しいかまたは異なり、式(R−1)〜(R−6):
(式中:
− Rは、上で定義したとおりであり;
− j、kおよびlは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、0、1、2、3、または4である)
からなる群から選択される芳香族部分であり、
但し、少なくとも1つのAr〜Arは、上で定義されたとおりの式(R−1)〜(R−3)に従うものから選択される少なくとも1個のビフェニレン基を含む芳香族部分であることを条件とする。
【0020】
好ましくは、Tのそれぞれは、互いに等しいかまたは異なり、結合、−CH−;−O−;−SO−;−S−;−C(O)−;−C(CH−;−C(CF−;−C(=CCl)−;−C(CH)(CHCHCOOH)−;−N=N−;−RC=CR−(ここで、それぞれのRおよびRは、互いに独立して、水素またはC〜C12−アルキル、C〜C12−アルコキシ、もしくはC〜C18−アリール基である);−(CH−および−(CF−(ここで、n=1〜6の整数である)、または6個までの炭素原子の脂肪族直鎖もしくは分岐の二価基からなる群から選択される。
【0021】
より好ましくは、繰り返し単位(Ra)は、以下に例示される式(B)〜(F)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
最も好ましくは、繰り返し単位(R)は、式(B):
に従う。
【0023】
ポリマー(P)は、特に、ホモポリマー、ランダム、交互またはブロックコポリマーであってもよい。ポリマー(P)がコポリマーである場合、その繰り返し単位は、特に、
(i)式(B)〜(F)から選択される少なくとも2つの異なる式の繰り返し単位(R)、または
(ii)1つ以上の式(B)〜(F)の繰り返し単位(R)、および繰り返し単位(R)と異なる繰り返し単位(R)、例えば、
から構成されてもよい。
【0024】
好ましくは、ポリマー(P)の繰り返し単位の75重量%超、好ましくは85重量%超、好ましくは95重量%超、好ましくは99重量%超が繰り返し単位(R)である。
【0025】
さらに、ポリマー(P)の実質的にすべての繰り返し単位は、上に詳述されたとおりの繰り返し単位(R)であることが一般に好ましく;鎖欠陥または非常に少量の他の単位が存在してもよく、これらの後者は、(R)の特性を実質的に変性しないと理解される。
【0026】
その場合、ポリマー(P)は、好ましくはポリフェニルスルホン(PPSU)である。
【0027】
本発明において、用語「ポリフェニルスルホン」[(PPSU)ポリマー]は、その繰り返し単位の50重量%超が式(B)の繰り返し単位(Ra)である、任意のポリマーを意味する。
【0028】
好ましい実施形態において、ポリマー(P)の繰り返し単位の75重量%超、より好ましくは90重量%超、より好ましくは99重量%超、さらにより好ましくはすべての繰り返し単位は、式(B)である。
【0029】
Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.製のRADEL(登録商標)PPSUは、市販の(PPSU)ホモポリマーの例である。
【0030】
ポリマー(P)は、任意の方法によって調製することができる。ポリマー(P)の分子量は、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、N−メチルピロリドンなどの適切な溶剤中で還元粘度として決定される場合、0.3dl/g以上、またはより特に0.4dl/g以上であり得、典型的には1.5dl/gを超えない。
【0031】
ポリマー(P)の重量平均分子量は、ポリスチレン校正曲線を使用して、ASTM D5296規格に従ってゲル浸透クロマトグラフィーにより決定して1モル当たり10,000〜100,000グラム(g/モル)であり得る。一部の実施形態において、ポリマー(P)の重量平均分子量は、1モル当たり20,000〜70,000グラム(g/モル)であり得る。
【0032】
ポリマー(P)は、ASTM D 3418に従って決定される場合、180〜250℃のガラス転移温度を有してもよい。
【0033】
酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび他の金属酸化物
組成物(C)の製造のために適当なCaOおよびMgOは、約5ミクロンまでの平均粒子サイズおよび1.5〜160m/gのBET表面積を有する。このようなCaOおよびMgOは、市場で入手可能である。
【0034】
優れた結果は、Atlantic Equipment Engineers,a division of Micron Metals,Inc.製の酸化カルシウムのグレード、CA602で得られた。
【0035】
優れた結果は、協和化学工業株式会社製のMgOのグレード、Kyowamag(登録商標)MF−150でも得られた。
【0036】
本発明において、表現「他の金属酸化物」は、酸化アルミニウム(Al)、酸化亜鉛(ZnO)、およびそれらの混合物から選択される化合物を意味することが意図される。
【0037】
組成物(C)は、このような他の金属酸化物を組成物(C)の重量に対して0.1重量%〜5重量%の範囲の量で含んでもよい。有利には、組成物(C)中の他の金属酸化物の量は、0.15重量%〜3重量%の範囲であり;より好ましくは、他の金属酸化物の量は、0.2重量%〜2重量%の範囲である。
【0038】
ポリエーテルイミド(PEI)
本発明において、用語「ポリエーテルイミド(PEI)」は、その繰り返し単位[単位(R)]の50重量%超が、少なくとも1つの芳香環、少なくとも1個のイミド基(そのままおよび/またはそのアミド酸形態で)、および少なくとも1個のエーテル基を含む[繰り返し単位(R−1)]、任意のポリマーを意味することが意図される。
【0039】
繰り返し単位(R−1)は、イミド基のアミド酸形態に含まれない少なくとも1個のアミド基を任意選択でさらに含んでもよい。
【0040】
繰り返し単位(R)は、有利には、以下の式(I)、(II)、(III)、(IV)および(V):
(式中:
・Arは、四価の芳香族部分であり、5〜50個の炭素原子を有する置換または非置換の飽和、不飽和または芳香族の単環式および多環式基からなる群から選択され;
・Ar’’’は、三価の芳香族部分であり、5〜50個の炭素原子を有する置換または非置換の、飽和、不飽和または芳香族の単環式および多環式基からなる群から選択され、
・Rは、置換または非置換の二価有機基からなる、より特に(a)6〜20個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基およびそのハロゲン化誘導体;(b)2〜20個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレン基;(c)3〜20個の炭素原子を有するシクロアルキレン基、および(d)一般式
(VI):
(式中、Yは、1〜6個の炭素原子のアルキレン、特に−C(CHおよび−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキレン、特に−C(CFおよび−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);4〜8個の炭素原子のシクロアルキレン;1〜6個の炭素原子のアルキリデン;4〜8個の炭素原子のシクロアルキリデン;−O−;−S−;−C(O)−;−SO−;−SO−からなる群から選択され、R’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、iおよびjは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、0、1、2、3または4である)の二価基からなる群から選択され、
但し、Ar、Ar’’’およびRの少なくとも1つは、少なくとも1個のエーテル基を含むことを条件とする)
およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
好ましくは、Arは、以下の式:
(式中、Xは、3,3’、3,4’、4,3’’もしくは4,4’位に二価の結合を有する二価の部分であり、1〜6個の炭素原子のアルキレン、特に−C(CH−および−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキレン、特に−C(CF−および−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);4〜8個の炭素原子のシクロアルキレン;1〜6個の炭素原子のアルキリデン;4〜8個の炭素原子のシクロアルキリデン;−O−;−S−;−C(O)−;−SO−;−SO−からなる群から選択されるか、またはXは、式O−Ar’’−Oの基であり;ここで、Ar’’は、式(VII)〜(XIII):
(式中、RおよびR’は、互いに等しいかまたは異なり、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から独立して選択され、j、k、l、nおよびmは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、0、1、2、3または4であり、Wは、1〜6個の炭素原子のアルキレン、特に−C(CH−および−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキレン、特に−C(CF−および−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);4〜8個の炭素原子のシクロアルキレン;1〜6個の炭素原子のアルキリデン;4〜8個の炭素原子のシクロアルキリデン;−O−;−S−;−C(O)−;−SO−;および−SO−からなる群から選択される)
およびそれらの混合物から選択される)
からなる群から選択される。
【0042】
好ましくは、Ar’’’は、以下の式:
(式中、Xは、上記と同じ意味を有する)
からなる群から選択される。
【0043】
好ましい実施形態では、繰り返し単位(R−1)は、イミド形態の式(XIV)の単位、対応するアミド酸形態の式(XV)および(XVI)の対応するアミド酸形態の単位:
(式中:
− →は、任意の繰り返し単位において、矢印が指し示す基が示されるとおりにまたは入れ替わった位置に存在してもよいような異性を意味し、
− Ar’’は、式(VII)〜(XIII)
(式中、RおよびR’は、互いに等しいかまたは異なり、独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、j、k、l、nおよびmは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、0、1、2、3または4であり、Wは、1〜6個の炭素原子のアルキレン、特に−C(CH−および−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);1〜6個の炭素原子のペルフルオロアルキレン、特に−C(CF−および−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である);4〜8個の炭素原子のシクロアルキレン;1〜6個の炭素原子のアルキリデン;4〜8個の炭素原子のシクロアルキリデン;−O−;−S−;−C(O)−;−SO−;および−SO−からなる群から選択される)
からなる群から選択され;
− Eは、−C2n−(ここで、nは、1〜6の整数である)、上で定義されたとおりの一般式(VI)の2価の基、および式(XVII)〜(XXII):
(式中、R’は、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、エーテル、チオエーテル、カルボン酸、エステル、アミド、イミド、アルカリ金属またはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミンおよび第四級アンモニウムからなる群から選択され、o、p、およびqは、互いに等しいかまたは異なり、独立して、0、1、2、3または4である)
からなる群から選択される)
およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
好ましくは、Eは、上で定義されたとおりの式(XVII)〜(XIX)からなる群から選択され;より好ましくは、Eは、非置換m−フェニレンおよび非置換p−フェニレンならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0045】
好ましくは、Ar’’は、上に詳述されたとおりに、一般式(XIII)に従い、より好ましくは、Ar’’は、
である。
【0046】
繰り返し単位(R−1)が、上で定義されたとおりの、イミド形態のそのようなものとしての式(XIV)、および/またはアミド酸形態の式(XIV)[式(XV)および(XVI)]の繰り返し単位である、ポリマー(PEI)は、式:
(式中、Eは、上で定義されたとおりである)
の芳香族ビス(エーテル無水物)と
式:
N−Ar”−NH (XXIV)
(式中、Ar”は、上で定義されたとおりである)
のジアミノ化合物との反応を含めて、当業者に周知の任意の方法によって調製することができる。一般に、この反応は、有利には周知の溶媒、例えば、o−ジクロロベンゼン、m−クレゾール/トルエン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの中で行うことができ、ここで、二無水物とジアミンとの相互作用は、約20℃〜約250℃の温度で起こり得る。
【0047】
代わりに、これらのポリマー(PEI)は、式(XXIII)の二無水物を式(XXIV)のジアミノ化合物と、これらの原料の混合物を高温で加熱すると同時に混合しながら溶融重合させることによって調製することができる。
【0048】
式(XXIII)の芳香族ビス(エーテル無水物)には、例えば、
2,2−ビス[4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
1,3ビス−(2,3ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4,4’−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物;
2,2−ビス[4(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物;
4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物;
4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物;
1,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物;
4,4’ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゾフェノン二無水物;
4−(2,3−ジカルボキシフェノキシ)−4’−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニル−2,2−プロパン二無水物、
およびそれらの混合物が含まれる。
【0049】
式(XXIV)の有機ジアミンには、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,2−ビス(p−アミノフェニル)プロパン、4,4’−ジアミノジフェニル−メタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、およびそれらの混合物が含まれる。
【0050】
好ましい実施形態において、式(XXIV)の有機ジアミンは、m−フェニレンジアミンおよびp−フェニレンジアミン、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
最も好ましい実施形態において、繰り返し単位(R−1)は、イミド形態の式(XXV)、その対応するアミド酸形態の式(XXVI)および(XXVII):
(式中、式(XXVI)および(XXVII)において、→は、任意の繰り返し単位において、矢印が指す基が、図示されたとおりにまたは交換された位置で存在してもよいような異性を意味する)
ならびにそれらの混合物から選択される繰り返し単位である。
【0052】
別の最も好ましい実施形態において、繰り返し単位(R−1)は、イミド形態の式(XXVIII)、その対応するアミド酸形態の式(XXIX)および(XXX):
(式中、式(XXIX)および(XXX)において、→は、任意の繰り返し単位において、矢印が指す基が、示されるとおりにまたは交換された位置で存在してもよいような異性を意味する)
ならびにこれらの混合物から選択される繰り返し単位である。
【0053】
好ましくは、ポリマー(PEI)の繰り返し単位の75重量%超、より好ましくは90重量%超が繰り返し単位(R)である。さらにより好ましくは、ポリマーPEIの繰り返し単位の、すべてではないとしても本質的にすべては、繰り返し単位(R)である。
【0054】
本発明の好ましい実施形態において、ポリマー(PEI)の繰り返し単位の75重量%超、より好ましくは90重量%超、より好ましくは99重量%超、さらにより好ましくはすべてが、式(XXV)のイミド形態、その対応する式(XXVI)および(XXVII)のアミド酸形態のもの、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される繰り返し単位である。
【0055】
本発明の別の好ましい実施形態においては、ポリマー(PEI)の繰り返し単位の75重量%超、より好ましくは90重量%超、より好ましくは99重量%超、さらにより好ましくはすべてが、式(XXVIII)のイミド形態、その対応する式(XXIX)および(XXX)のアミド酸形態のもの、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される繰り返し単位である。このようなポリマー(PEI)は、特にSabic Innovative PlasticsからULTEM(商標)ポリエーテルイミドとして市販されている。
【0056】
一般に、本発明に有用なポリマー(PEI)は、6.6キログラム(kg)の重りを使用して、295℃でASTM D1238に従って測定して、1分当たり0.1〜10グラム(g/分)のメルトインデックスを有する。
【0057】
特定の実施形態においては、ポリマー(PEI)は、ポリスチレン標準を使用して、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定して、1モル当たり10,000〜150,000グラム(g/モル)の重量平均分子量(Mw)を有する。このようなポリマー(PEI)は、典型的には、m−クレゾール中25℃で測定された1グラム当たり0.2デシリットル(dl/g)超の、有利には0.35〜0.7dl/gの固有粘度を有する。
【0058】
組成物(C)中の任意選択的な原料
ポリマー(PEI)に加えてまたはその代わりに、組成物(C)は、1種以上の他のポリマー、例えば、ポリアセタール、エチルビニルアセテート(EVA)、ポリオレフィン、液晶ポリマー(LCP)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ(エーテルケトン)(PEK)、ポリ(エーテルエーテルケトン)(PEEK)、ポリ(エーテルケトンケトン)(PEKK)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル(PVC)、シリコーンエラストマー、ポリテトラフルオロエチレン、およびそれらの混合物を含むことができる。
【0059】
組成物(C)はまた、さらなる原料、例えば、充填剤(または強化剤)、酸化防止剤、離型剤、安定剤、および殺生物性化合物を含んでもよい。
【0060】
充填剤の非限定的な例には、シリケートおよびシリカ粉末、ホウ素粉末、硫酸カルシウムおよび炭酸カルシウム、タルク、カオリン、およびガラス繊維が含まれる。ガラス繊維の非限定的な例は、A、C、D、E、M、S、R、Tガラス繊維(Additives for Plastics Handbook,2nd ed,John Murphyの43〜48頁、5.2.3章に記載されたとおりの)、およびそれらの混合物である。
【0061】
酸化防止剤の非限定的な例には、フェノール類、ホスファイト類およびホスホナイト類が含まれる。
【0062】
離型剤の非限定的な例には、ワックス、天然および合成パラフィン、フルオロカーボン、脂肪酸のアミド、特にステアリン酸アミドが含まれる。
【0063】
安定剤の非限定的な例には、リンを含む安定剤、例えば、アリールホスファイトおよびアリールホスホネートが含まれる。
【0064】
殺生物剤の非限定的な例には、1種以上の金属、有利には銀、亜鉛および銅、ならびにそれらの混合物、ならびに抗微生物、抗生、抗細菌、殺菌、抗ウイルス、抗真菌、抗寄生虫、抗酵母、抗藻、および抗原虫活性、またはこのような活性の組み合わせを有する、当技術分野で公知の他の無機または無機化合物が含まれる。
【0065】
組成物(C)は、染料および顔料から選択される着色剤をさらに含んでもよい。顔料の非限定的な例には、二酸化チタン(TiO)、カーボンブラック、および硫化亜鉛が含まれる。非常に良好な結果が、好ましくは組成物(C)に対して1〜6重量%の量でTiOを使用して得られた。
【0066】
組成物(C)、物品(A)、およびそれらの製造のための方法
組成物(C)は、ポリマー(P)を組成物(C)の重量に対して最大で99重量%の量で含み;有利には、組成物(C)は、組成物(C)の重量に対して最大で98重量%、最大で97重量%、最大で96重量%、最大で95重量%、最大で94重量%含む。ポリマー(P)の量は、組成物(C)の重量に対して少なくとも20重量%である。有利には、ポリマー(P)の量は、組成物(C)の重量に対して少なくとも30重量%、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%である。
【0067】
組成物(C)は、CaOを典型的には組成物(C)の重量に対して1重量%〜6重量%の範囲の量で含み;有利には、CaOの量は、組成物(C)の重量に対して2重量%〜5重量%、2重量%〜4重量%、2重量%〜3重量%の範囲であり、但し、CaOがMgOおよび/または別の金属酸化物と組み合わせて存在する場合、CaOの量は、組成物(C)の重量に対して少なくとも1重量%であることを条件とする。
【0068】
組成物(C)は、MgOを典型的には組成物(C)の重量に対して0.5重量%〜6重量%の範囲の量で含み;有利には、MgOの量は、組成物(C)の重量に対して1重量%〜5重量%、1重量%〜4重量%、1重量%〜3重量%、1重量%〜2重量%の範囲であり、但し、組成物(C)がCaOを含まない場合、MgOの量は、組成物(C)の重量に対して少なくとも2重量%であることを条件とする。
【0069】
一実施形態において、組成物(C)は、有利には4%のCaOを含む。
【0070】
別の実施形態において、組成物(C)は、有利には2重量%のCaOおよび2重量%のMgOを含む。
【0071】
別の実施形態において、組成物(C)は、有利には1重量%のCaOおよび1重量%のMgOを含む。
【0072】
別の実施形態において、組成物(C)は、有利にはMgOおよびAlの4重量%の混合物を含む。
【0073】
典型的には、組成物(C)が、ポリマー(P)と、ポリマー(PEI)および/または別のポリマー、例えば、上で定義されたものの1つとの両方を含む場合、ポリマー(PEI)またはそのような他のポリマーの量は、典型的には組成物(C)の重量に対して20重量%〜79重量%、好ましくは20重量%〜74重量%、より好ましくは50重量%〜70重量%、さらにより好ましくは約60重量%の範囲である。
【0074】
上で示されたとおりのいずれの他の任意選択的な原料も、組成物(C)中に典型的には組成物(C)の重量に対して1重量%〜50重量%の範囲の量で存在し得る。
【0075】
いずれの場合も、非常に良好な結果が、いかなる追加の原料も含まない組成物(C)、すなわち、CaOおよびMgOの重量に関する上記条件で、
(a)上で定義されたとおりのポリマー(P);ならびに
(b)任意選択で他の金属酸化物と組み合わせたCaOおよび/またはMgO
からなるか、またはそれらから本質的になる組成物(C)
ならびにそれから得ることができる物品(A)で得られた。
【0076】
優れた結果は、
(a)上で定義されたとおりのポリマー(P)、好ましくは繰り返し単位がすべて上で定義されたとおりの式(B)である、ポリマー(P);
(b)好ましくは、組成物(C)の重量に対して4重量%の量、好ましくは組成物(C)の重量に対して2%の量のCaO
からなるか、またはそれらから本質的になる組成物(C)およびそれから得ることができる物品(A)で得られた。
【0077】
優れた結果はまた、
(a)上で定義されたとおりのポリマー(P)、好ましくは繰り返し単位がすべて上で定義されたとおりの式(B)である、ポリマー(P);
(b)好ましくはそれぞれ2重量%の量、より好ましくはそれぞれ1重量%の量のCaOおよびMgO
からなる、またはそれから本質的になる組成物(C)ならびにそれから得ることができる物品(A)によって得られた。
【0078】
優れた結果がまた、
(a)上で定義されたとおりのポリマー(P)、好ましくは繰り返した単位がすべて上で定義されたとおりの式(B)である、ポリマー(P);
(b)MgOおよびAlの4重量%の混合物
からなるか、またはそれらから本質的になる組成物(C)ならびにそれから得ることができる物品(A)で得られた。
【0079】
本発明の組成物(C)およびそれから得ることができる物品(A)は、上で定義されたとおりのポリマー(P)、CaOおよび/またはMgO、ならびに/または上で定義されたとおりのいずれかの他の金属酸化物およびいずれかの任意選択的な追加の原料を選択された量でブレンドし、続いて、当技術分野で公知の方法、例えば、溶融加工(射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形および回転成形を含む)および溶液加工によって加工することによって製造することができる。
【0080】
物品(A)の非限定的な例は、成形部品、シート、スラブ、プロファイル、フィルム、および繊維である。物品(A)は、好ましくは医療物品、例えば、歯科物品、手術物品、食品取扱または食品調製物品、飲料取扱または飲料調製物品から選択される。
【0081】
このような物品は、特に、医療デバイス、歯科デバイス、手術デバイス、滅菌デバイス、汚染除去デバイス、食品取扱デバイス、食品調製デバイス、飲料取扱デバイス、および飲料調製からなる群から選択されるデバイスの製造のための構成要素として使用することができる。
【0082】
このような物品の非限定的な例は、放射線治療装置、内視鏡、眼用レンズおよびプローブのような、電子または光学部品を含む医療物品を含めて、容器、箱、動物ケージ、トレイ、ラッチ、蓋、バンパ、整形外科トライアル、機器ハンドル、クランプ、ケーブル、はさみ、鉗子、カテーテル、チューブ、補綴、膜である。
【0083】
組成物(C)および物品(A)は、滅菌プロセス中、特にHガスプラズマ滅菌プロセス中に生じる苛酷な条件に耐えることができ、特に、物品(A)は、それらの形状および機械的特性を保持し、変色を受けない。本発明において、組成物(C)または物品(A)は、全色差(DE)および黄変度(Db)が5.5未満である場合、変色を受けない。有利には、DEおよびDbは、4.5未満、2.7未満、1.9未満、1.3未満、1.0未満、0.7未満である。DEおよびDbは、ASTM E308−08に従って測定されたCIE 1976(L、a、b)色空間インデックスから公知の方法によって計算することができる。特に、(DE)は、CIE94式に従って(L、a、b)インデックスから計算することができる。
【0084】
したがって、さらなる実施形態において、本発明は、組成物(C)から得られる滅菌成形物品を製造するための方法であって、成形物品(A)を高温または低温殺菌、特にHガスプラズマ滅菌にかけることを含む方法を含む。優れた結果は、物品(A)を、それぞれ47分である50サイクルのHガスプラズマ滅菌にかけることによって得られた。
【0085】
本発明は、以降において非限定的な実施例によって以下の項でより詳細に例証される。
【0086】
参照により本明細書に援用される特許、特許出願および刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0087】
実験の項
出発材料
ポリマー−1:Radel(登録商標)R−5100 NT、これは、Solvay Specialty Polymers USA,L.L.C.製のポリフェニルスルホン(PPSU)ホモポリマーである。
【0088】
TiO−1:Dupont Titanium technologies製の二酸化チタンルチル型R105。
【0089】
TiO−2:Kronos Inc.製KRONOS(登録商標)2233。
【0090】
MgO:Kyowamag(登録商標)MF−150は、協和化学工業株式会社製の酸化マグネシウムのグレードである。
【0091】
KW−2200は、協和化学工業株式会社製の金属酸化物の混合物(約35% Alおよび約60% MgO)である。
【0092】
CaO:CA602は、Atlantic Equipment Engineers,a division of Micron Metals,Inc.製の酸化カルシウムのグレードである。
【0093】
組成物の調製のための一般手順
原料のすべてを、幾つかのウェイトアンドロス(weight and loss)フィーダによって12のゾーンを備えるZSK−26二軸スクリュー押出機の第1バレルに供給した。スクリュー速度は、200rpmであった。バレル設定は、340〜360℃の範囲にあった。押出物を、慣用装置を使用して冷却し、ペレット化した。
【0094】
様々な構成要素の性質および品質を、各原料の量を重量%で示す表1aおよび表1bにまとめる。
【0095】
【0096】
【0097】
試料の滅菌のための一般手順
表1aおよび表1bに報告した組成物を、カラーチップに射出成形した。カラーチップを、STERRAD(登録商標)100NX低温過酸化水素滅菌チャンバ(Advanced Sterilization Products,Division of Ethicon Inc.により製造された)に装填し、サイクルにかけて、試料がそれらの白色を保持する能力を評価した。それぞれの試料を、それぞれ47分である50サイクルの滅菌について実験した。
【0098】
色測定
L、aおよびb値を、白色蛍光(F2)光源、10°オブザーバ、10nm波長間隔、360〜700nmのスペクトル範囲、およびASTM E 308−08の表5.27(22頁)を使用するバンドパス補正付きのD/8光学的形状構成を使用する、CE7000 Gretag MacBeth分光光度計を使用してカラーチップで測定した。報告値は、5つの異なるカラーチップで行われた5つの測定値の平均である。
【0099】
それぞれ47分である50サイクルのSTERRAD滅菌サイクルに曝露された試験片と対照試験片との間の全色差(ΔE)および黄変度(Δb)を、CIE94ΔEにより、かつ上に記載された色測定方法に従って特徴付けした。それらを表2aおよび表2bに提示する。
【0100】
【0101】