(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記拡散工程は、前記ウエハの表面に前記第二不純物を付着させるデポジション工程と、前記第二不純物を前記ウエハの内部に拡散させるドライブイン工程と、を含み、前記デポジション工程が複数回行われることを特徴とする請求項2記載の半導体ウエハの製造方法。
前記デポジション工程中において前記ウエハの前記表面に生成される化合物層を除去する除去工程を含み、前記デポジション工程及び前記除去工程を行った後に前記ドライブイン工程を行うことを特徴とする請求項3記載の半導体ウエハの製造方法。
前記デポジション工程を行った後に、前記デポジション工程で生成された化合物層が残ったまま前記ドライブイン工程を行うことを特徴とする請求項3記載の拡散ウエハの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る半導体ウエハAは、拡散ウエハやポリッシュドウエハ(PW)等として、半導体素子や半導体デバイスやその他の電子部品などの製造過程に用いられ、単結晶のインゴット1から切り出されたウエハ11に拡散処理を施すことで、不純物(ドーパント)dが拡散されるものである。
半導体素子や半導体デバイスやその他の電子部品などの製造工程では、
図1(a)(b)(c)に示す単結晶のインゴット1から半導体ウエハAを作成するウエハ作成過程と、半導体ウエハAの主面部に半導体素子を形成する素子形成過程と、に大別される。
ウエハ作成過程は、半導体材料sからなる単結晶のインゴット1を作成する単結晶作成工程と、インゴット1をスライスしてウエハ11を作成するスライス工程と、を含んでいる。
【0008】
単結晶作成工程では、チョクラルスキー法(CZ法)やフローティングゾーン法(FZ法)などにより、単結晶のインゴット1が作成される。CZ法とは、
図1(a)に示されるように、坩堝B1内で半導体材料sや不純物dなどを融解し、これらの溶液2を単結晶引き上げ装置機構B2で引き上げて成長させる結晶成長法である。FZ法とは、坩堝B1を使用せず誘導加熱で半導体材料sが溶融されてその融液を表面張力で保持する方法である。
半導体材料sとしては、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)などが用いられる。
不純物dとしては、リン(P),ヒ素(As),アンチモン(Sb)などのn型ドーパントや、ホウ素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In)などのp型ドーパントが用いられる。特にリンPとしては、主に赤リンや白リン(黄リン)などが用いられる。
また、ウエハ作成工程と素子形成工程は、一般的に異なる場所で行われることが多い。例えばウエハ作成工程が行われる第一の工場では、半導体素子などの種類に関係なく共通する半導体ウエハAを作成する。半導体ウエハAには、両面拡散が施されたウエハの片側表面を削り落として研磨加工することや、両面拡散が施されたウエハを拡散面と平行に二分割することで構成される拡散ウエハも含まれる。半導体ウエハAや拡散ウエハは、第二の工場に出荷され、第二の工場では各種の素子形成工程を行うことにより、多種類の半導体素子や半導体デバイスやその他の電子部品などが製造される。
【0009】
ところで、半導体材料sに対する不純物dの溶解度は、
図4の「Si中の不純物の溶解度[atoms/cm
3](出典:「半導体ハンドブック」,第2版,オーム社)」に示されるように、半導体材料sの温度上昇に伴って増加するが、半導体材料sの融点よりも低い温度がピークで、それ以上になると温度上昇に伴って急速に減少する。
例えばSiに対するPの溶解度は、Siの固体状態における所定の温度域(約1050℃〜1300℃)の方が、Siの融点(1412℃)における液体状態よりも高い。またそれ以外のAsやSbなどの不純物dもPと同様な傾向があり、図示しないが半導体材料sとしてGeなどに対する不純物dの溶解度も同様な傾向がある。
このため、半導体材料sと不純物dを主に融解した後に固化させるCZ法や、半導体材料sの融液に不純物dを添加した後に固化させるFZ法などで、単結晶のインゴット1(固溶体)を作成しても、半導体材料sに対する不純物dの濃度は、固溶限(固溶限界)を越えることがない。これに伴い、単結晶のインゴット1から切り出したウエハ11も、不純物dの濃度が固溶限界を越えないので、所望の低抵抗率が得られないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明の実施形態に係る半導体ウエハAでは、固体状態の半導体材料s中に不純物dをドープする方法として、溶融した半導体材料s及び第一不純物d1からなるウエハ1の少なくとも一部に、第二不純物d2がドープされた拡散層11aを有する。
拡散層11aにおいて第一不純物と第二不純物d2との濃度の和は、後述する拡散法により、半導体材料sの融点時の第一不純物d1の溶解度よりも高濃度となるようにドープされている。
そして、本発明の実施形態に係る半導体ウエハAを生産するための製造方法では、溶融した半導体材料s及び第一不純物d1からなる単結晶のインゴット1を作成する単結晶作成工程と、インゴット1をスライスしてウエハ11が作成されるスライス工程と、ウエハ11の少なくとも一部に第二不純物d2がドープされた拡散層11aを形成する拡散工程と、を主要な工程として含んでいる。
ここで、ウエハ11の少なくとも一部とは、ウエハ11の両側又は片側の表面11bにおいて、その表面全体か或いはパターニングなどの一部分である。
第一不純物d1,第二不純物d2としては、前述した不純物dの中から同じ導電型のものを用いることが好ましい。
スライス工程では、
図1(b)に示されるように、バンドソーなどの切断装置(図示しない)を用いて、単結晶のインゴット1を胴体部1aとコーン部(ヘッド部)1bとテール部1cに切断し、ワイヤソーなどの切断装置(図示しない)で胴体部1aから複数枚のウエハ11を切り出す。
拡散工程では、
図1(c)に示されるように後述する拡散法により、ウエハ11の少なくとも一部に対して第二不純物d2を、単結晶作成工程において半導体材料sが溶融した時の第一不純物d1の溶解度よりも高濃度となるようにドープすることで、拡散層11aが形成される。
【0011】
拡散法とは、ウエハ11の表面11bに第二不純物d2が添加され、熱拡散によりウエハ11の内部11cに溶解させる気相拡散法や、第二不純物d2からなる固体薄膜がウエハ11の表面11bに堆積され、熱拡散によりウエハ11の内部11cに拡散させる固相拡散法などである。
つまり、単結晶作成工程によって第一不純物d1が添加された単結晶のインゴット1からなるウエハ11の少なくとも一部に対し、拡散工程により第二不純物d2が添加されて拡散層11aとなる。
このため、ウエハ1の拡散層11aでは、半導体材料sに対する第一不純物d1及び第二不純物d2の濃度の和が、半導体材料sの融点時(単結晶作成工程)における第一不純物d1の溶解度(固溶限界)を越えることになる。
特に拡散工程では、ウエハ11の表面11bに第二不純物d2を付着して浸透させるデポジション工程と、第二不純物d2をウエハ1の内部11cに拡散させるドライブイン工程と、を含み、デポジション工程を一回又は複数回行うことが好ましい。
さらに加えて、デポジション工程となる第二不純物d2の付着及び浸透(デポジション)中において、ウエハ11の表面11bに生成される化合物層11dをデポジション後に除去する除去工程が含まれ、除去工程を行った後にドライブイン工程となる第二不純物d2の拡散(ドライブイン)を行うことも可能である。
【0012】
デポジション工程からドライブイン工程に至る製法には、デポジション工程からドライブイン工程に至る過程において、デポジション工程中でウエハ11の表面11bに生成される化合物層11dを除去した後にドライブイン工程を行う第一の製法と、最後のデポジション工程中で生成される化合物層11dを残したままドライブイン工程を行う第二の製法と、がある。
第一の製法の場合には、デポジション工程との除去工程を一回ずつ又は複数回(2回以上)繰り返して行った後に、最終的に化合物層11dが除去された状態で、最後にドライブインを行う。
第二の製法の場合には、デポジション工程と除去工程を一回ずつ又は複数回(2回以上)繰り返して行った後に、最後のデポジション工程で生成された化合物層11dが最終的に残された状態で、ドライブインを行う。
それ以外の第二の製法としてはデポジション工程を一回又は複数回(2回以上)繰り返して行った後に、最終的に化合物層11dが残された状態で、ドライブインを行うことも可能である。
また、最終的に化合物層11dを残した状態でドライブインする場合には、ドライブイン後もウエハ11の表面11bに化合物層11dが残る。しかし、ドライブイン後に残った化合物層11dは、洗浄などで容易に除去できる。その他に前記ウエハ作成工程などの後工程において、ウエハ11の片側表面が削り落とされる時に化合物層11dを含めて削り落とすことも可能である。
【0013】
拡散工程の具体例として
図1(c)に示される場合には、拡散炉Cによる気相拡散法を用いて、ウエハ11の両側表面11bに第二不純物d2を添加し、熱拡散によりウエハ11の内部11cに拡散させている。
図示例の拡散炉Cは、従来周知構造の横型拡散炉であり、石英管C1と、ボードC2と、石英管C1の周囲に配設されたヒーターなどの発熱体C3と、石英管C1の内部空間Csに所望の気体を供給する供給部C4と、を備えている。
デポジション工程やドライブイン工程では、複数枚のウエハ11が載置されたボードC2を石英管C1に挿入してから、供給部C4により所望の気体を石英管C1内に供給しつつ、発熱体C3で第二不純物d2の拡散開始温度以上に昇温して所定時間熱処理する。
図示例では、ボードC2上に複数枚のウエハ11を所定間隔毎に配置している。
供給部C4は、デポジション工程において第二不純物d2が含まれた気体を石英管C1内に供給する。第二不純物d2がPである場合には、Pが含まれた塩化ホスホリル(オキシ塩化リン)などと、窒素やアルゴンやヘリウム又はいずれかの混合ガスなど及び酸素と、を同時に流し込み、約1200℃以下で第二不純物d2の付着及び浸透(デポジション)が行われる。
また、その他の例として図示しないが、拡散炉Cとして図示例以外の構造の横型拡散炉を用いることや、縦型拡散炉を使用することや、気相拡散法と別の拡散法を用いることや、第二不純物d2としてPと別なものを用いることや、デポジション工程を繰り返す度にデポジション条件を変更することも可能である。
【0014】
さらに、デポジション工程において拡散炉C内の各ウエハ11は、その表面11bから第二不純物d2としてPなどを取り込み、表面11bから所定深さまで第二不純物d2が浸透する。これと同時に各ウエハ11の表面11bが酸素と熱の影響で酸化されるから、各ウエハ11の表面11bには、第二不純物d2がPである場合、リンガラスなどの酸化物からなる化合物層11dが生成される。
このため、化合物層11dの除去工程を含む場合には、デポジション工程とドライブイン工程の間に、拡散炉Cからウエハ11を取り出す必要がある。このため、デポジション工程専用の拡散炉Cと別にドライブイン工程の拡散炉Cを用いることも可能である。
除去工程では、デポジションされたウエハ11を拡散炉Cから取り出し、フッ化水素酸(フッ酸)などの洗浄剤で化合物層11dの除去を行ってから拡散炉Cに入れてドライブインするか、又はデポジションされたウエハ11を拡散炉Cから取り出さずに化合物層11dが残ったままでドライブインする。
ドライブイン工程では、供給部C4によりキャリアガスとして窒素やアルゴンやヘリウム又はいずれかの混合ガスなどを石英管C1内に流し込み、一般的にデポジション温度より高い温度、約1300℃以上でドライブインが行われる。
これにより、各ウエハ11の表面11bから内部11cに向かって、所定濃度で所定深さの拡散層11aが生成される。
また、大量のウエハ11をバッチ処理で一度にまとめて拡散処理するには、拡散炉Cの内部空間Csに複数枚のウエハ11を相互に密接させて並列状に起立配置することが好ましい。
ドライブイン工程の後工程として、作成された半導体ウエハAから拡散ウエハを製造する場合には、ドライブイン後の拡散処理されたウエハ11の中間部をスライシング加工により切断分離(二分割)して、拡散層11a以外の厚みが目標厚みになるように、それぞれの切断面を研磨加工すれば、片側の表面11bのみに拡散層11aを有する全体の厚みがほぼ等しい2つの拡散ウエハが作成される。またウエハ11の二分割に代えて、片側表面11bのみを削り研磨することで、拡散層11a以外の厚みが目標厚みとなった一つの拡散ウエハを作成することも可能である。
【0015】
このような本発明の実施形態に係る半導体ウエハA及びその製造方法によると、ウエハ1の拡散層11aでは、半導体材料sに対する第一不純物d1及び第二不純物d2の濃度の和が、半導体材料sの融点時(単結晶作成工程)における第一不純物d1の溶解度(固溶限界)を越える。
したがって、低抵抗率な半導体ウエハAを提供することができる。
その結果、赤リンの濃度が1.1×10
20atoms/cm
3で抵抗率が0.7mΩ・cmが限界である従来のものに比べ、電力損失の少ない半導体素子や半導体デバイスやその他の電子部品などを作製でき、省エネ効果に優れて環境に優しい。
【0016】
特に拡散工程は、ウエハ11の表面11bに第二不純物d2を付着させるデポジション工程と、第二不純物d2をウエハ1の内部11cに拡散させるドライブイン工程と、を含み、デポジション工程を複数回行うことが好ましい。
この場合には、デポジション工程の繰り返し回数が増えることに伴って、ウエハ11の表面11bに対する第二不純物d2の付着量が増加する。
このため、デポジション工程が繰り返し行われた後にドライブイン工程を行うことにより、多量に付着した第二不純物d2がウエハ1の内部11cに拡散する。
したがって、ウエハ1に対する第二不純物d2の濃度を確実に増大させることができる。
その結果、低抵抗率な半導体ウエハAを確実に作製できる。
【0017】
さらに、デポジション工程中においてウエハ11の表面11bに生成される化合物層11dを除去する除去工程を含み、デポジション工程及び除去工程を行った後にドライブイン工程を行うことが好ましい。
この場合には、前回のデポジションで生成された化合物層11dが除去された状態で、次回のデポジションを行うため、不純物が短時間でより深く浸透する。最後のデポジション後に化合物層11dを除去せず連続してドライブインすることが可能になる。
したがって、所望の不純物濃度分布を短時間の熱処理で且つより確実に得ることができる。
その結果、デポジション回数を減らすことや除去回数を減らしても高濃度で深い拡散を実現できる。これにより簡素化とコストダウンが同時に図れる。
デポジション工程及び除去工程の繰り返し回数と、それぞれのデポジション温度やデポジション時間や拡散源の供給量などのデポジション条件、又はドライブイン温度やドライブイン時間などのドライブイン条件のいずれか一方又は両方を調節することによって、拡散層11aを拡散面から任意の深度に設定することが可能となる。
【0018】
また、デポジション工程を行った後に、デポジション工程で生成された化合物層11dが残ったままドライブイン工程を行うことが好ましい。
この場合には、デポジション後に化合物層11dを除去せず連続してドライブインすることが可能になる。
したがって、所望の不純物濃度分布を最小工程数でより簡単に得ることができる。
その結果、デポジション回数を減らすことや除去工程を省略しても高濃度で深い拡散を実現できる。これにより大幅な簡素化とコストダウンが同時に図れる。
デポジション温度やデポジション時間や拡散源の供給量などのデポジション条件、又はドライブイン温度やドライブイン時間などのドライブイン条件のいずれか一方又は両方を調節することによって、拡散層11aを拡散面から任意の深度に設定することが可能となる。
【0019】
またさらに、
図1(c)に示されるように、ドライブイン工程では、複数枚のウエハ11をそれぞれ所定間隔が空くように配置することが好ましい。
この場合には、デポジション後に化合物層11dを除去せずにドライブインしても、化合物層11d中の第二不純物d2の一部がウエハ11の面内から外部へ均一に飛散するため、面内均一状態でウエハ11の内部11cに拡散する。
したがって、化合物層11dの有無に関係なくウエハ11の少なくとも一部に第二不純物d2を面内均一状態で拡散させることができる。
その結果、各ウエハ11の間にシリコンなどの耐熱性に優れた粉体を挟んでスタックしドライブインする製法に比べて、ウエハ11面内の拡散深さのバラツキ(面内分布が不均一)を防止することができる。
また、ウエハ11の表面11bに汚れが発生することがある製法に比べて、ウエハ11の表面11bが粉体と接触しないため、汚れの発生を防止することができる。
また、ウエハ11の間にシリコンなどの粉体を挟んでドライブインした場合、ウエハ11の表面11bに汚れが発生することがある製法に比べて、ウエハ11の表面11bが粉体と接触しないため、汚れの発生を防止することができる。
【実施例】
【0020】
次に、本発明の実施形態に係る半導体ウエハAの実施例について説明する。
実施例1〜3は、CZ法で半導体材料sのSiと第一不純物d1のPが融解固化された単結晶のインゴット1を作成し、この単結晶のインゴット1から切り出したウエハ11の両側表面11bに、第二不純物d2としてPを気相拡散法で溶解させた半導体ウエハAである。実施例1〜3の拡散工程では、複数回のデポジション、フッ酸によるリンガラスの除去、ドライブインを順次行っている。
実施例1と実施例3では、第一不純物d1のPとして赤リンを添加している。実施例2では、第一不純物d1のPとして白リン(黄リン)を添加している。さらに実施例1〜3では共に、第二不純物のPとしてオキシ塩化リンを用いている。
このように作成された実施例1〜3において、それぞれPの濃度が、半導体材料sの融点時(単結晶作成工程)におけるPの溶解度(固溶限界)を越えるか否かを検証した。
さらに実施例1〜3において、それぞれの抵抗率が、半導体材料sの融点時(単結晶作成工程)における抵抗率よりも低くなるか否かを検証した。
【0021】
このため、実施例1〜3として下記のウエハ11をそれぞれ用意した。
・実施例1のウエハ11:直径が150mm,厚みが640μm、
第一不純物d1のPが赤リン
・実施例2のウエハ11:直径が150mm,厚みが640μm、
第一不純物d1のPが白リン(黄リン)
・実施例3のウエハ11:直径が150mm,厚みが1000μm
第一不純物d1のPが赤リン
実施例1,3のウエハ11は、単結晶作成工程における融点時のSiに対するP(赤リン)の濃度が1.1×10
20atoms/cm
3、抵抗率が0.7mΩ・cmとなるように設定した。
実施例2のウエハ11は、単結晶作成工程における融点時のSiに対するP(白リン)の濃度が4.3×10
13atoms/cm
3、抵抗率が100Ω・cmとなるように設定した。
実施例1〜3のウエハ11は、拡散工程(デポジション工程)及び除去工程において、Siに対するP(赤リン,白リン)の濃度が略同じになるように、下記に示す条件でデポジションと化合物層11dの除去をそれぞれ行った。
・デポジション温度:1200℃以下
・デポジション時間:2.5時間
・デポジション回数:2回
・フッ酸によるリンガラスの除去:2回
実施例1〜3のウエハ11は、拡散工程(ドライブイン工程)において、下記に示す条件でドライブインをそれぞれ行った。
・実施例1,3の赤リンがドープされたウエハ11に対する
ドライブイン温度及び時間:1300℃以上×360時間
・実施例2の白リンがドープされたウエハ11に対する
ドライブイン温度及び時間:1300℃以上×360時間超
実施例1〜3におけるPの濃度[atoms/cm
3]は、2探針法によるSR(広がり抵抗)測定で求めた。
実施例1〜3における抵抗率[mΩ・cm]は、それぞれの換算値(ASTM′74)で求めた。
【0022】
検証結果を
図2及び
図3に示す。
図2及び
図3において左縦軸は、実施例1〜3の不純物濃度(atoms/cm
3)を示し、右縦軸は、実施例1〜3の抵抗率(Ω・cm)を示し、横軸は、実施例1〜3の厚み方向(x/μm)を示している。実施例1,2の場合には、320μmが厚み方向の中央である。実施例3の場合には、厚み方向の片側となる500μmのみを示している。
図2及び
図3では、Siの融点時(単結晶作成工程)におけるPの溶解度(固溶限界)を一点鎖線で示している。Siの融点時(単結晶作成工程)における抵抗率を二点鎖線で示している。
実施例1,2は、ドライブインが前述した条件で実行されることにより、
図2に示されるようにPの濃度が、ウエハ11の厚さ方向全域に亘って(両側表面11bを貫通して)、Siの融点時(単結晶作成工程)におけるPの溶解度(固溶限界)である1.1×10
20atoms/cm
3を越えた。
詳しくは、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約200μmまでが1.6×10
20atoms/cm
3となり、ウエハ11の厚み方向中央部(内部11cの中央を中心とした約100μmの部位)が1.3×10
20atoms/cm
3となった。
このため実施例1,2の抵抗率は、ウエハ11の厚さ方向全域に亘って、Siの融点時(単結晶作成工程)における抵抗率である0.7mΩ・cmよりも低くなった。
詳しくは、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約200μmまでが0.5mΩ・cmとなり、ウエハ11の厚み方向中央部(内部11cの中央を中心とした約100μmの部位)が0.6mΩ・cmとなった。
【0023】
実施例3は、ドライブインが前述した条件で実行されることにより、
図3に示されるようにPの濃度が、ウエハ11の厚さ方向の一部で、Siの融点時(単結晶作成工程)におけるPの溶解度(固溶限界)である1.1×10
20atoms/cm
3を越えた。
詳しくは、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約160μmまでが1.6×10
20atoms/cm
3となり、そこから徐々に低下して拡散面から約300μmでは、1.1×10
20atoms/cm
3となった。
このため実施例3の抵抗率は、ウエハ11の拡散面から約300μmまでが、Siの融点時(単結晶作成工程)における抵抗率である0.7mΩ・cmよりも低くなった。
詳しくは、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約160μmまでが0.5mΩ・cmとなり、そこから徐々に低下して拡散面から約300μmでは、0.7mΩ・cmとなった。
つまり、実施例3のウエハ11は、実施例1のウエハ11に比べて360μmだけ厚くなったので、ウエハ11の厚み方向中央部(内部11cの中央を中心とした約500μmの部位)におけるPの濃度は、1.1×10
20atoms/cm
3を越えず、その抵抗率も0.7mΩ・cmよりも低くならなかった。
これに加え、実施例1〜3においてデポジション時間を2.5時間よりも長くすることや、デポジション回数を3回以上に代えることや、ドライブイン温度及び時間を前述した条件以上に代えることで、実施例1〜3の前述した検証結果よりも向上することが推測できる。
【0024】
また、その他の実施例として図示しないが、デポジション回数が2回であっても、デポジション温度又は時間やドライブイン温度又は時間のうち一つでも前述した条件に至らない場合には、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約300μm以下においても、Pの濃度が1.1×10
20atoms/cm
3を越え、その抵抗率が0.7mΩ・cmよりも低くなる。しかし、ウエハ11の厚み方向中央部(内部11cの中央部位)では、Pの濃度が1.1×10
20atoms/cm
3を越えず、その抵抗率が0.7mΩ・cmよりも高かった。
これに対し、デポジション回数を1回に減らしても、Pの濃度がウエハ11の厚さ方向の一部で、Siの融点時(単結晶作成工程)におけるPの溶解度(固溶限界)である1.1×10
20atoms/cm
3を越えた。
詳しくは、実施例3の赤リンがドープされたウエハ11(直径:150mm,厚み:1000μm)に対するドライブインを、1300℃以上×10時間で1回のみ実行することにより、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約40μmまで、比較的に浅いが1.1×10
20atoms/cm
3を越える拡散層11aが形成された。
これに伴い、デポジション回数が1回であっても、ウエハ11の拡散面(両側表面11b)から約40μmまでの抵抗率は、0.7mΩ・cmよりも低くなった。
なお、実施例1〜3で用いたウエハ11のサイズは、前述した直径や厚みに限らず、サイズが異なるものであっても、デポジションとドライブインを前述した条件で実行したところ、前述した実施例1〜3の検証結果と同様であった。
【0025】
これらの検証結果からウエハ1の拡散層11aは、Siに対する第一不純物d1及び第二不純物d2となるPの濃度が、Siの融点時(単結晶作成工程)におけるPの溶解度(固溶限界)を越え、その抵抗率がSiの融点時(単結晶作成工程)における抵抗率よりも低くなることが実証できた。
なお、不純物dとしてPの種類と関係なく、赤リン,白リン以外の紫リンや黒リンであっても、前述した試料1,2の同様な検証結果が得られることを推測できる。
これに加えてP以外にAs,Sbなどの不純物dを用いることや、Si以外にGeなどの半導体材料sを用いても、前述した試料1,2の同様な検証結果が得られることを推測できる。