(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
周辺部において周方向にたどった際に反り又は湾曲があって変形している板状のワークを、真空吸着孔を有するワークステージに真空吸着させて保持するワーク吸着保持方法であって、
ワークステージは、
ワーク保持面にワーク用真空吸着孔を有するステージ本体と、
ワーク保持面に設定された保持位置でワークが当接した際にワーク用真空吸着孔を真空吸引してワークを吸着する排気系とを備えており、
ワーク保持面には収縮シートが設けられており、
収縮シートは、ワーク用真空吸着孔が設けられた領域の外側において当該領域を取り囲む形状であって、保持位置においてワーク保持面にワークが当接した際にワークとステージ本体のワーク保持面との間に挟み込まれた状態で当該ワークの周辺部に沿って延びる形状であり、
収縮シートは、ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮してワークと密着する弾性による柔軟性を有しており、当該柔軟性はワークの周辺部の変形に応じて異なる厚さに収縮してワークの変形をなぞった状態となる収縮性であり、当該変形及び異なる厚さへの収縮は、ワークの周辺部の周方向における変形及び異なる厚さへの収縮を含んでおり、
収縮シートは、ワークの厚さ方向の最大変形量を超える厚さを有しており、
収縮した収縮シートにより、ワークステージのワーク保持面と変形している状態のワークとの間の空間を埋めることでワーク用真空吸着孔を臨む空間を封止することを特徴とするワーク吸着保持方法。
前記収縮シートは、前記保持位置で前記ワーク保持面に当接した前記ワークの周辺部の全周において前記ワークと重なる形状を有していることを特徴とする請求項2記載のワークステージ。
前記収縮シートは、前記保持位置で前記ワーク保持面に当接した前記ワークの周辺部において一部に重ならない領域を有する形状であり、当該重ならない領域の周方向の長さは、10mm以下であることを特徴とする請求項2記載のワークステージ。
前記ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮した前記収縮シートの平均の厚さは、0.5mm以下であることを特徴とする請求項2、3又は4記載のワークステージ。
前記ステージ本体は、前記ワーク用真空吸着孔が設けられた領域の外側において平坦面を有しており、前記収縮シートは当該平坦面に設けられていることを特徴とする請求項2乃至5いずれかに記載のワークステージ。
前記ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮した前記収縮シートの平均の厚さは、前記光学系が前記像を投影する際の焦点深度の1/2以下であることを特徴とする請求項7記載の露光装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような真空吸着機構を備えたワークステージにおいて、ワークが変形しており、これが原因で真空吸着が十分にできないという課題が存在している。
例えば、基板に対して回路パターンの露光を行うプリント基板用露光装置では、基板を露光光学系に対して所定の位置に保持するため、ワークステージが使用される。このようなプリント基板用露光装置は、ポリイミドやポリエステル等で形成された薄いフレキシブルな基板に対して露光を行う場合がある。この種の基板は、前工程での熱処理の影響を受けやすく、横から見ると湾曲していたり、波打つように湾曲していたりする。また、ガラスエポキシのようなリジッドな基板の場合でも、基板が多層構造の場合は、素材間の熱膨張係数の違いなどから、積層のための処理を繰り返すにしたがって基板の周辺部に反りや湾曲が発生し易い。
【0005】
このように反りや湾曲などの変形が生じたワークについては、ワークステージ上に配置した際、真空吸着孔を十分に塞ぐことができず、真空がリークするために真空吸着ができなかったり、吸着が不十分になったりする。この結果、処理中にワークが変位し得る状態となる。露光装置の場合、露光中のワークの変位は、露光されるパターンの位置精度の低下に直結し、製品の性能に影響を与える。したがって、このように変形が生じたワークについても、十分に真空吸着できるようにすることが必要になっている。
【0006】
変形が生じているワークについても十分に真空吸着ができるようにするための従来の構成として、ワークの周辺部を上側から押さえつけるクランプ機構がしばしば採用される。しかしながら、この種の機構は、ワークに対して損傷を与え易いという欠点がある。また、ワークの周辺部を上側から覆うことになるため、周辺部についても処理(例えば露光)を行う必要がある場合、処理中はクランプを退避させる必要があり、退避させた際にワークが元の変形した姿勢に戻ってしまい真空がリークするという問題も生じ得る。さらに、この種の機構は複雑になり易く、装置が大がかりとなり、コスト高となり易い。
【0007】
また、多品種少量生産の要請の下、一台の装置で異なるサイズのワークを処理する必要もしばしば生じる。この場合、上記クランプ機構の場合、異なるサイズのワークへの対応が難しく、これを可能にするためにさらに機構的に複雑になってしまったりコスト高となってしまったりする問題がある。
本願の発明は、上記各課題を解決するために為されたものであり、変形が生じたワークについても十分に吸着、保持することができるようにするとともに、この際、ワークを損傷させる問題がなく、且つ異なるサイズのワークに対しても対応が容易で、さらに安価なコストで実現できるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この出願の請求項1記載の発明は、周辺部において周方向にたどった際に反り又は湾曲があって変形している板状のワークを、真空吸着孔を有するワークステージに真空吸着させて保持するワーク吸着保持方法であって、
ワークステージは、
ワーク保持面にワーク用真空吸着孔を有するステージ本体と、
ワーク保持面に設定された保持位置でワークが当接した際にワーク用真空吸着孔を真空吸引してワークを吸着する排気系とを備えており、
ワーク保持面には収縮シートが設けられており、
収縮シートは、ワーク用真空吸着孔が設けられた領域の外側において当該領域を取り囲む形状であって、保持位置においてワーク保持面にワークが当接した際にワークとステージ本体のワーク保持面との間に挟み込まれた状態で当該ワークの周辺部に沿って延びる形状であり、
収縮シートは、ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮してワークと密着する弾性による柔軟性を有しており、当該柔軟性はワークの周辺部の変形に応じて異なる厚さに収縮してワークの変形をなぞった状態となる収縮性であり、当該変形及び異なる厚さへの収縮は、ワークの周辺部の周方向における変形及び異なる厚さへの収縮を含んでおり、
収縮シートは、ワークの厚さ方向の最大変形量を超える厚さを有しており、
収縮した収縮シートにより、ワークステージのワーク保持面と変形している状態のワークとの間の空間を埋めることでワーク用真空吸着孔を臨む空間を封止するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、板状のワークを保持するワークステージであって、
ワーク保持面にワーク用真空吸着孔を有するステージ本体と、
ワーク保持面に設定された保持位置でワークが当接した際にワーク用真空吸着孔を真空吸引してワークを吸着する排気系とを備えたワークステージであって、
ワーク保持面には収縮シートが設けられており、
収縮シートは、ワーク用真空吸着孔が設けられた領域の外側において当該領域を取り囲む形状であって、保持位置においてワーク保持面にワークが当接した際にワークとステージ本体のワーク保持面との間に挟み込まれた状態で当該ワークの周辺部に沿って延びる形状であり、
収縮シートは、ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮してワークと密着する弾性による柔軟性を有しており、当該柔軟性はワークの周辺部の変形に応じて異なる厚さに収縮してワークの変形をなぞった状態となる収縮性であり、当該変形及び異なる厚さへの収縮は、ワークの周辺部の周方向における変形及び異なる厚さへの収縮を含んでおり、
収縮シートは、ワークの厚さ方向の最大変形量を超える厚さを有しており、
収縮シートは、着脱可能にワーク保持面に取り付けられており、
収縮シートは枠状の形状を有しており、ワークを保持した際に当該ワークが占める領域である保持領域の内側に収縮シートの内側の縁が位置しており、保持領域の外側に収縮シートの外側の縁が位置しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記収縮シートは、前記保持位置で前記ワーク保持面に当接した前記ワークの周辺部の全周において前記ワークと重なる形状を有しているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項2の構成において、前記収縮シートは、前記保持位置で前記ワーク保持面に当接した前記ワークの周辺部において一部に重ならない領域を有する形状であり、当該重ならない領域の周方向の長さは、10mm以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項2、3又は4の構成において、前記ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮した前記収縮シートの平均の厚さは、0.5mm以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、請求項2乃至5いずれかの構成において、前記ステージ本体は、前記ワーク用真空吸着孔が設けられた領域の外側において平坦面を有しており、前記収縮シートは当該平坦面に設けられているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項7記載の発明は、露光装置の発明であって、
光源と、
光源からの光を所定のパターンの像として投影する光学系と、
請求項2乃至6いずれかに記載のワークステージと
を備えており、前記保持位置は、光学系による所定のパターンの像の投影位置であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項8記載の発明は、前記請求項7の構成において、
前記ワーク保持面に当接したワークが真空吸着される際に厚さ方向に収縮した前記収縮シートの平均の厚さは、前記光学系が前記像を投影する際の焦点深度の1/2以下であるという構成を有する。
【発明の効果】
【0009】
以下に説明する通り、この出願の請求項1又は2記載の発明によれば、ワークがワークステージに真空吸着される際、ワークの周辺部によって収縮シートが厚さ方向に圧縮されて収縮するので、変形が生じているワークについても収縮シートとワークとが密着し、真空吸着のエラーが防止される。この際、クランプ機構のようにワークを反対側から押さえ付ける必要はないので、ワークが損傷することはなく、シンプルな構造であって、コストも安価なものとなる。
また、請求項5記載の発明によれば、上記効果に加え、収縮した収縮シートの平均の厚さが0.5mm以下であるので、真空吸着されたワークの湾曲が小さくなる。
また、請求項6記載の発明によれば、上記効果に加え、収縮シートがステージ本体の平坦面に設けられているので、異なる形状及び又はサイズのワークへの対応が容易であるという効果が得られる。
また、請求項7記載の発明によれば、ワークを露光する露光装置において上記効果を得ることができる。
また、請求項8記載の発明によれば、上記効果に加え、収縮した収縮シートの平均の厚さが光学系の焦点深度の1/2以下であるので、像のボケを防止しつつ上記効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。以下の説明は、ワーク吸着保持方法の発明の実施形態の説明、ワークステージの発明の実施形態の説明を含む。
図1は実施形態のワークステージの正面断面概略図、
図2は
図1に示すワークステージの斜視概略図、
図3は
図1に示すワークステージの主要部の斜視概略図である。
図1〜
図3に示す実施形態のワークステージは、板状のワークWを保持するステージであり、ステージ本体1を備えている。ステージ本体1は、平面視が方形の台状の部材である。この実施形態では、ステージ本体1は水平な姿勢でワークWを保持するものとなっており、水平な平坦面である上面がワーク保持面となっている。
【0012】
図1〜
図3に示すように、ステージ本体1は、複数のワーク用真空吸着孔21を有している。ステージ本体1の上面には、ワークWの保持位置が設定されており、ワーク用真空吸着孔21は保持位置に設けられている。
図1に示すように、ステージ本体1内には、各ワーク用真空吸着孔21に連通したワーク用排気路22が形成されている。ワークステージは、不図示の真空ポンプを含む排気系2を備えており、排気系2のワーク用排気管23は、ワーク用排気路22に接続されている。
【0013】
このような実施形態のワークステージには、ワークWの変形の問題を考慮し、収縮シート3が設けられている。収縮シート3は、
図2及び
図3に示すように、方形の枠状の形状を有する。尚、
図3では、収縮シート3の全体の形状を解り易くするため、一部の部材の図示が省略されている。
収縮シート3は、ステージ本体1の上面に載置された状態で設けられている。載置位置は、ワークWの保持位置との関係で所定の位置となっている。
この実施形態では、ワークWは方形の板状である。保持位置は、例えば、保持されたワークWがステージ本体1の中心と同心の方形の領域を占める位置として設定される。保持位置を、
図2及び
図3において方形の想像線Rで示す。ワークWは、想像線Rにその輪郭が一致するように精度良く載置される。想像線Rで囲まれた領域を以下、保持領域という。
【0014】
収縮シート3は、保持位置にワークWが載置された際、ワークWの周辺部が重なる位置に設けられており、したがってワークWとステージ本体1のワーク保持面との間に挟み込まれた状態となる。より具体的には、収縮シート3の内側の縁は、保持領域Rの内側に位置し、外側の縁は、保持領域Rの外側に位置する。このため、ワークWが保持領域Rに輪郭が一致するように配置された際、収縮シート3は、ワークWとステージ本体1のワーク保持面との間に挟み込まれ、ワークWの周縁の全周においてワークWと重なる状態となる。したがって、収縮シート3は、内側の縁と外側の縁とが各辺において平行である方形の枠状(以下、本明細書においてこのような形状を額縁状という。)である。
このような収縮シート3としては、この実施形態では、シリコーン製のものが使用されている。厚さは、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.5〜2mm程度である。
【0015】
収縮シート3は、ワーク保持面に当接したワークWが真空吸着される際に厚さ方向に収縮してワークWと密着する柔軟性を有しており、この収縮によって真空のリークが防止されるようになっている。以下、この点について
図4及び
図5を使用して説明する。
図4及び
図5は、収縮シート3が有する柔軟性について示した断面概略図である。
図4は、
図2のX−Xでの断面概略図、
図5は、Y−Yでの断面概略図である。
図4(1)、
図5(1)は、ワークWがワークステージに保持される前の状態を示し、
図4(2)、
図5(2)は、ワークがワークステージに保持されて真空吸着された状態を示す。
【0016】
ワークWは、ステージ本体1の保持位置に載置されて保持される。この際、保持位置においてワークWはステージ本体1に接触し、ワーク用真空吸着孔21を塞いだ状態となる。そして、排気系2に設けられた不図示の真空ポンプによりワーク用真空吸着孔21が真空引きされることで、
図4(2)に示すようにワークWはステージ本体1に真空吸着される。
この際、
図5(2)に示すように、ワークWの周辺部と重なっている収縮シート3は、変形しているワークWの形状に応じて厚さ方向に収縮する。収縮後の収縮シート3の断面形状は、変形しているワークWの断面形状をなぞったような形状となり、ワークWと収縮シート3とは互いに密着する。この結果、収縮シート3の内側の空間は、ワークWと収縮シート3との密着により閉じた空間(封止された空間)となり、真空のリークが防止される。
【0017】
上記のように、収縮シート3の柔軟性は、真空吸引された際にワークWが収縮シート3を圧縮して密着できる程度の柔軟性である。実施形態の収縮シート3はシリコーン製であるが、いわゆるシリコーンゴムシートとして販売されているものは、ワークWが真空吸着される際の吸引力によって収縮することが可能であり、実施形態における収縮シート3として使用可能である。例えば、タイガースポリマー社製のSRシートが実施形態における収縮シート3として使用可能である。尚、真空吸着の際にワークWに加えられる吸引力は、一般的には、−50kPa〜−80kPa程度であり、この程度の力で収縮する柔軟性ということもできる。
【0018】
収縮シート3の厚さは、ワークWの厚さ方向の変形量に応じて選択される。収縮シート3の厚さは、ワークWの厚さ方向の最大変形量を超えていることが必要である。例えば、ワークWの厚さが0.3mmで、最大変形量が0.7mmの場合、収縮シート3の厚さは1mm程度とされる。
尚、収縮シート3がワークWの変形に応じた圧縮は、塑性変形ではなく弾性変形であることが必要である。但し、収縮シート3は、次のワークWを真空吸着するまでに元の状態に復元していれば良いので、いわゆる低反発弾性を示すものであっても良い。
【0019】
このような収縮シート3は、ステージ本体1に対して変位しない状態(位置が固定された状態)で取り付けられている。この実施形態では、収縮シート3はステージ本体1に真空吸着されている。
図1に示すように、ステージ本体1には、シート用真空吸着孔24が設けられている。シート用真空吸着孔24は、ワーク用真空吸着孔21とは別系統の排気路25に連通しており、独立して排気、大気開放が制御されるようになっている。即ち、シート用真空吸着孔に連通して形成されたシート用排気路25には、ワーク用排気管23とは別系統のシート用排気管26が接続されている。シート用排気管26上には、ワーク用排気管23上のものとは別に、開閉バルブや大気開放バルブが設けられている。
【0020】
また、この実施形態では、
図1及び
図2に示すように、収縮シート3は、枠体31に張られた状態で設けられている。収縮シート3が枠体31を備えることは必ずしも必要ないが、取り扱いを容易にするため、及び位置合わせのために枠体31が設けられている。
枠体31は、アルミ、ステンレスといった金属製の板状の部材である。この実施形態では、額縁状の収縮シート3に合わせて枠体31も額縁状となっている。枠体31は、内側の縁に沿って厚さが薄くなっていて段差が形成されており、この部分において収縮シート3の外側の縁が固定されている。固定は、例えば接着材による接着で行われる。
【0021】
枠体31の外側の縁の形状及びサイズは、ステージ本体1の輪郭形状及びサイズと同じになっている。したがって、収縮シート3が張られた枠体31の外側の縁をステージ本体1の縁に合わせてステージ本体1に載置することで、収縮シート3の位置合わせが完了するようになっている。尚、位置合わせをさらに容易にするため、ステージ本体1の縁には、位置決め板32が複数箇所設けられている。
【0022】
上述した収縮シート3の位置固定のための真空吸着は、直接的には枠体31に対して行われるようになっている。即ち、シート用真空吸着孔24は、上記のように位置合わせして載置された枠体31を臨む位置に形成されており、直接的には枠体31が真空吸着されるようになっている。収縮シート3を直接的に真空吸着するようにしても良いが、柔らかい収縮シート3に対して真空吸着を繰り返すと、摩耗する場合があり、耐久性の点で問題が生じ得る。
【0023】
上記実施形態のワークステージによれば、ワークWがワークステージに真空吸着される際、上述したようにワークWの周辺部によって収縮シート3が厚さ方向に圧縮され、収縮させられる。この収縮は、厚さ方向のワークWの形状に応じたものになるため、ワークWが厚さ方向で変形していても収縮シート3とワークWは密着する。このため、変形したワークWであっても真空吸着のエラーが防止され、ワークステージにおいて変位することなく適宜の処理が行われる。
この際、クランプ機構のようにワークWを反対側から押さえ付ける必要はないので、ワークWが損傷することはない。また、収縮シート3をワークWの周縁においてワークWとステージ本体1との間に介在させるというシンプルな構造で上記効果を達成しているので、大がかりにならず、コスト的にも安価なものとなっている。
【0024】
また、収縮シート3は着脱可能であるので、ワークWの寸法形状が異なる場合の対応が容易である。即ち、ワークWの形状及び又はサイズが異なる場合、収縮シート3は交換される。シート用真空吸着孔24による真空吸着を停止した後、枠体31を持って収縮シート3をステージ本体1から引き離す。そして、異なる形状及び又はサイズの収縮シート3を同様に枠体31によって位置決めしながらステージ本体1に設置し、シート用真空吸着孔24での真空吸着により位置を固定する。
尚、枠体31をネジ止めでステージ本体1に着脱可能に固定する構造であっても実施は可能であるが、真空吸着により位置を固定する構造の方が交換の作業は簡便である。
【0025】
上記実施形態では、収縮シート3はシリコーン製であったが、弾性変形してワークWと密着する柔軟性を有するものであれば、他の材料で形成されたシートも使用し得る。尚、収縮シート3の材料は、導電性であることが好ましい。ワークWの吸着、保持と処理後のワークWのピックアップが繰り返される際、収縮シート3が帯電(剥離帯電等)する場合がある。帯電により周囲の塵埃を引き寄せたり、放電が生じてワークWが損傷したりする場合がある。収縮シート3が導電性である場合、ステージ本体1は通常アースされているので、帯電しても電荷が抜けやすく、問題が生じにくい。シリコーンゴムシートは、導電性のものが各種市販されているので、その中から適宜選択して使用することができる。
【0026】
尚、ワークWの真空吸着の際に圧縮された状態の収縮シート3の平均の厚さは薄いことが望ましい。圧縮時の厚さが厚いと、ワークWが中央部ではステージ本体に密着した状態となるため、ワークWの湾曲が大きくなる(曲率が小さくなる)からである。具体的には、圧縮時の圧縮シート3の平均の厚さは0.5mm以下であることが好ましい。
【0027】
収縮シート3は、ワークWの周辺部の全周においてワークWと重なることが望ましい。但し、一部において重ならない場所があったとしても、本願発明は実施可能である。例えば、収縮シート3が、ほぼ額縁状であるものの、少なくとも1カ所途切れている箇所のある形状であるとする。収縮シート3が厚さ方向に収縮する際、周方向の伸びを許容した方が好ましい場合があり、意図的に途切れた箇所を作る場合がある。このような場合でも、そのような途切れが短い距離であれば、コンダクタンスの低下により収縮シート3の内側の空間は大気に比べて低い圧力となるので、ワークWの真空吸着は可能であり、変形したワークWについても真空吸着は可能である。短い距離とは、例えば10mm以下とすることができる。
【0028】
また、ワークWにおいて周方向の特定の箇所にのみ変形が生じる場合には、その場所でのみ収縮シートがワークWと重なるようにすれば良く、この場合も収縮シートが無終端の周状である必要はない。
尚、収縮シート3とワークWとの重なる領域は、ワークWの周縁を含むことが望ましいが、周縁よりも少し内側の周辺部で重なっていても実施可能である。但し、収縮シート3がワーク用真空吸着孔21に重なってしまうとワークWの真空吸着を阻害することになるので、ワーク用真空吸着孔21には重ならないようにすることが必要である。
【0029】
また、上記のように収縮シート3はステージ本体1の平坦面に設けられることが望ましい。ステージ本体1に凹部を設け、そこに収縮シート3を落とし込んだ状態で配置し、収縮シート3の厚さを凹部の深さよりも大きくした構造でも本願発明は実施可能であるが、異なる形状及び又はサイズのワークWへの対応が難しくなる。
【0030】
次に、実施形態のワークステージの使用例として、ワークステージを搭載した露光装置の発明の実施形態について説明する。
図6は、実施形態の露光装置の正面断面概略図である。
図6に示す露光装置は、一例としてプリント基板用露光装置となっている。
図6に示す露光装置は、ワークWを所定位置で保持するワークステージ4と、ワークステージ4に保持されたワークWに所定のパターンの光を照射して露光する露光系5と、搬送系6とを備えている。露光系は、光源と、光源からの光を所定のパターンの像として投影する光学系とを含む。
【0031】
実施形態の露光装置は、特に露光の方式を選ばないものであり、投影露光、コンタクト又はプロキシミティ露光、さらにはDI(ダイレクトイメージング)露光のいずれの方式を採用し得る。例えば投影露光の場合、露光系5は、光源と、光源からの光が照射されるマスクと、マスクの像をワークステージ4上の投影する光学系等から構成される。DI露光の場合には、レーザー光源と、レーザー光源からの光を空間変調してパターンを形成するDMD(Digital Mirror Device)のような空間変調素子とを備えた露光ユニットが複数設けられた構成が採用される。
【0032】
搬送系6としては、この実施形態では、コンベアと搬送ハンドとを組み合わせたものが採用されている。ワークステージ4の両側には、搬送コンベア61,62が設けられている。搬送コンベア61,62は、ワークステージ4に対するワークWの搬入、搬出用であり、説明の都合上、右側の搬送コンベア61を第一搬送コンベアとし、左側の搬送コンベア62を第二搬送コンベアとする。
各搬送コンベア61,62に協働して動作するものとして、ワークステージ4の両側には搬送ハンド63,64が設けられている。搬送ハンド63,64についても、説明の都合上、右側の搬送ハンド63を第一搬送ハンドとし、左側の搬送ハンド64を第二搬送ハンドとする。
【0033】
各搬送ハンド63,64は、フレーム631,641と、フレーム631,641に取り付けられたワーク用吸着パッド632,642とを備えている。各フレーム631,641には、搬送駆動機構633,643が設けられている。搬送駆動機構633,643の詳細は図示を省略するが、フレーム631,641を搬送方向(
図1の紙面上左右方向)に直線移動させて所定位置に位置させるとともに上下方向に移動させることができる機構となっている。装置は不図示の制御部を備えており、各搬送駆動機構633,643は、不図示の制御部によって制御される。
【0034】
ワーク用吸着パッド632,642は、ワークWを周辺部において吸着するよう等間隔で複数設けられている。各ワーク用吸着パッド632,642には、不図示のワーク用吸引源が接続されている。ワーク用吸引源のオンオフも、同様に不図示の制御部によって制御される。
尚、ワークステージ4には、昇降機構40が設けられている。昇降機構40は、ワークWの受け渡しの際に駆動される他、露光系5に対するワークWの距離の調節の目的でも使用される。昇降機構40は、サーボモータを含む直動機構で構成されており、制御部によって制御される。
【0035】
次に、このような実施形態の露光装置の動作について説明する。
まず、第一搬送コンベア61がワークWを第一搬送ハンド63の下方位置まで搬送する。そして、第一搬送ハンド63が下降し、ワークWを吸着、保持する。第一搬送ハンド63は、所定距離上昇した後、水平方向に移動してワークステージ4の上方位置に達する。その後、第一搬送ハンド63は所定距離下降し、ワークWをワークステージ4上に載置する。
【0036】
第一搬送ハンド63は、ワークWをステージ本体1の上面に多少押し付けた状態とし、この状態で、ワーク用排気管23上の開閉バルブを開いてワーク用真空吸着孔21を真空引きし、ワークWを真空吸着する。このタイミングから少し遅れて、第一搬送ハンド63は、ワークWの吸着を解除し、ワークWをリリースして上昇する。
第一搬送ハンド63は、当初の待機位置に戻る。並行して、露光系5が動作し、ワークWに対して所定のパターンの光が照射されて露光が行われる。所定時間の露光の後、第二搬送ハンド64がワークステージ4の上方に位置した後、所定距離下降し、ワークWを吸着する。ワークWの吸着から少しタイミングを遅らせて、ワーク用排気管23上の開閉バルブが閉じられ、大気開放バルブが開けられてワーク用排気路22が大気開放される。これにより、ワークWの真空吸着が解除される。
【0037】
その後、第二搬送ハンド64は、所定距離上昇した後、第二搬送コンベア62の上方まで移動する。そして、第二搬送ハンド64は、所定距離下降し、ワークWを第二搬送コンベア62に載置した後、ワークWの吸着を解除する。第二搬送コンベア62は、ワークWを次の処理又は操作のための位置までワークWを搬出する。このような動作が繰り返され、ワークWは一枚ずつ露光処理される。
【0038】
実施形態の露光装置においては、上記のように収縮シート3によってワークWの真空吸着時の真空リークが防止されているので、真空吸着がエラーとなることはなく、常に正確な位置にパターンの投影を行うことができる。このため、製品の品質が高く維持される。
上記実施形態は、プリント基板用露光装置であったが、この他、液晶ディスプレイ用の露光装置等、板状のワークWを対象物とするものであれば、他の露光装置についても同様に実施できる。また、露光装置以外のワークステージ4の使用例としては、基板検査装置、シルク印刷装置、穴あけ装置等が挙げられる。
【0039】
尚、露光装置において実施形態のワークステージ4を採用する場合、ワークWの真空吸着の際に収縮した収縮シート3の平均の厚さは、光学系により像が投影される際の焦点深度の1/2以下とすることが好ましい。
実施形態のワークステージは、ステージ本体1とワークWとの間に収縮シート3が挟み込まれた状態になるので、その部分では、収縮シート3の厚み分だけ、光学系に近づいた状態となる。したがって、収縮した収縮シート3の厚さが焦点深度の1/2より厚いと、像のボケが生じ易くなる。収縮シート3が間に介在するワークWの周辺部は、非使用領域(ワークWにおいてパターンを投影すべき領域の外側)である場合が多いが、使用領域である場合、露光パターンがボケることになり、製品不良の原因となり得る。したがって、焦点深度の1/2以下とすることが好ましい。