(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、前記第1回路部材の前記第2回路部材同士の隙間から露出する導体と、を備えるとともに、前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に空間が形成された実装部材を準備する工程と、
絶縁層と導電層とを備え、前記絶縁層が、少なくとも一方の最外に配置されている積層シートを準備する工程と、
前記絶縁層が前記導体と対向するように、前記積層シートを前記実装部材に配置する配置工程と、
前記積層シートを前記第1回路部材に対して押圧するとともに、前記積層シートを加熱して、前記空間を維持しながら、前記第2回路部材を封止する封止工程と、を具備し、
前記絶縁層は、前記導体に対応する位置に開口を備え、
前記封止工程では、前記開口から前記導電層を露出させて、前記導体と前記導電層とを電気的に接続させ、
前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおいて、前記絶縁層の損失正接tanδ1が、1以下であり、
前記温度tにおいて、前記導電層の損失正接tanδ2が、1よりも大きく、かつ、貯蔵せん断弾性率が1.0×107Pa以下である、実装構造体の製造方法。
第1回路部材と、前記第1回路部材に搭載される複数の第2回路部材と、を備えるとともに、前記第1回路部材と前記第2回路部材との間に空間が形成された実装部材を封止するために用いられる積層シートであって、
絶縁層と導電層とを備え、
前記絶縁層が、少なくとも一方の最外に配置されるとともに、開口を備えており、
前記第2回路部材が封止されるときの温度tにおいて、前記絶縁層の損失正接tanδ1が、1以下であり、
前記温度tにおいて、前記導電層の損失正接tanδ2が、1よりも大きく、かつ、貯蔵せん断弾性率が1.0×107Pa以下である、積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る方法により製造される実装構造体の一例を、
図1に示す。
図1は、実装構造体10を模式的に示す断面図である。
実装構造体10は、第1回路部材1と、例えばバンプ3を介して第1回路部材1に搭載される複数の第2回路部材2と、第2回路部材2を封止する封止材4と、を備える。第1回路部材1と第2回路部材2との間には、空間(内部空間S)が形成されている。第1回路部材1の第2回路部材2同士の隙間からは、導体6が露出しており、封止材4の内部の層(後述する導電層42Pの硬化物層42)と当接している。封止材4は、内部空間Sを維持しながら第2回路部材2を封止して、第2回路部材2の短絡を防止するため、および、電磁波シールドのために設けられる。なお、本実施形態では、第2回路部材2を、バンプ3を介して第1回路部材1に搭載しているが、第1回路部材1への搭載方法は、これに限定されない。
【0011】
封止材4は、積層シート4Pの硬化物である。本発明は、この積層シート4Pを包含する。積層シート4Pは、
図2に示すように、少なくとも一方の最外に配置された絶縁層41Pと導電層42Pとを備える。よって、得られる封止材4は、少なくとも絶縁層41Pの硬化物層41と導電層42Pの硬化物層42とを備える。
図2は、積層シート4Pを模式的に示す断面図である。
【0012】
[積層シート]
積層シート4Pの絶縁層41Pは、開口Aを備える。封止工程において、積層シート4Pは、絶縁層41Pが第2回路部材2と対向するように配置されて、第1回路部材1に向かって押圧される。これにより、積層シート4Pは、第2回路部材2の表面に密着する。さらに、積層シート4Pは、第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面にまで到達するとともに、開口Aから導電層42Pが露出して、導電層42Pと導体6とが電気的に接続される。その結果、導電層42P(導電層の硬化物層42)による電磁波シールド性が発揮される。一方、絶縁層41Pにより、第2回路部材2の短絡は予防される。
【0013】
つまり、積層シート4Pは、内部空間Sを維持しながら、第2回路部材2の表面および第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面に密着でき、かつ、中空封止性を確保できる(内部空間Sへの積層シート4Pの侵入を抑制できる)程度の弾性を有する絶縁層41Pと、封止工程において開口Aから露出できる程度の粘性を有する導電層42Pと、を備える。少なくとも上記の2層を有する積層シート4Pを用いることにより、内部空間Sを維持しながら回路部材を封止する(中空封止)ことと、電磁波シールド性能の発揮とを、同じタイミングで達成することができる。よって、生産性が向上する。さらに、封止材4を第1回路部材1および第2回路部材2に密着させることができるため、低背化が可能である。
【0014】
(絶縁層)
絶縁層41Pは、第2回路部材2の短絡を防止するために設けられる。さらに、内部空間Sを維持しながら、第2回路部材2の表面および第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面に密着できる程度の弾性を有する。
【0015】
このような絶縁層41Pの封止工程での温度tにおける損失正接tanδ1は、1以下であることが好ましく、0.9以下であることがより好ましく、0.7以下であることが特に好ましい。損失正接tanδ1の下限は特に限定されないが、例えば、0.1である。このような損失正接tanδを有する絶縁層41Pは、単独で、内部空間Sを維持しながら、第2回路部材2を封止することができる。よって、絶縁層41Pの積層シート4Pが粘性の高い導電層42Pを備えていても、内部空間Sは維持される。
【0016】
第2回路部材2が封止されるときの温度tとは、内部空間Sが維持された状態で、第2回路部材2の表面が積層シート4Pによって覆われたときの積層シート4Pの温度である。積層シート4Pの温度は、封止工程における積層シート4Pに対する加熱手段の設定温度に代替できる。積層シート4Pの加熱手段がプレス機である場合、加熱手段の温度とは、プレス機の設定温度である。積層シート4Pの加熱手段が第1回路部材1を加熱する加熱機である場合、加熱手段の温度とは、第1回路部材1の加熱機の設定温度である。温度tは、積層シート4Pの材質等に応じて変更し得るが、例えば、室温+15℃(40℃)から、200℃までの間である。具体的には、温度tは、例えば50〜180℃である。第2回路部材2が封止されるとき、積層シート4Pは未硬化状態であってもよいし、半硬化状態であってもよいし、硬化状態であってもよい。
【0017】
損失正接tanδ1は、温度tにおける絶縁層41Pの貯蔵せん断弾性率(G1’)と損失せん断弾性率(G1”)の比:G1”/G1’である。貯蔵せん断弾性率G1’および損失せん断弾性率G1”は、JIS K 7244に準拠した粘弾性計測定装置により測定することができる。具体的には、貯蔵せん断弾性率G1’および損失せん断弾性率G1”は、直径8mm×1mmの試験片について、粘弾性計測定装置(例えば、TA Instruments社製、ARES−LS2)を用いて、周波数1Hz、昇温速度10℃/分の条件で測定される。導電層42Pおよび被覆層43Pの損失正接tanδについても同様である。
【0018】
温度tにおける貯蔵せん断弾性率G1’は、1.0×10
7Pa以下であることが好ましく、1.0×10
6Pa以下であることがより好ましい。貯蔵せん断弾性率G1’の下限は特に限定されないが、例えば、1.0×10
4Paである。温度tにおける貯蔵せん断弾性率G1’がこの範囲であれば、絶縁層41Pの封止工程における内部空間Sへの侵入が抑制されるとともに、第2回路部材2の表面および第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面に密着できる程度に流動することが容易になる。
【0019】
絶縁層41Pの厚みT1は、特に限定されない。厚みT1は10μm以上であってよく、30μm以上であってもよい。これにより、封止工程において、内部空間Sが維持され易くなるとともに、絶縁性が確保され易くなる。また、低背化の観点から、厚みT1は100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましい。絶縁層41Pの厚みT1は、絶縁層41Pの主面間の距離である。主面間の距離は、任意の10箇所における距離を平均化して求めることができる。導電層42Pおよび被覆層43Pの厚みも同様である。
【0020】
絶縁性の観点から、絶縁層41Pの体積抵抗率は1×10
8Ω・cm以上であることが好ましく、1×10
10Ω・cm以上であることがより好ましい。
【0021】
絶縁層41Pは、絶縁層41Pを貫通する開口Aを備える。開口Aは、第1回路部材1から露出する導体6に対応する位置に配置される。開口Aの形状は特に限定されず、例えば、円形、楕円形、三角形、矩形、その他の多角形が挙げられる。
【0022】
開口Aの大きさは特に限定されず、第1回路部材1に搭載された第2回路部材2同士の間に収まり、かつ、第1回路部材1と第2回路部材2との導通が確保できる程度の大きさであればよい。開口Aの最大径は、例えば、300μm以下であることが好ましい。導体層42Pの損失正接tanδ2が1よりも大きい場合、開口Aの最大径Rは過度に大きくなくてもよい。開口Aの最大径Rは、例えば、20μm以上、200μm以下であってもよい。最大径Rがこの範囲であっても、導電層42Pは、開口Aから露出することができる。ただし、導通を確実にするためには、開口Aの最大径Rは、50μm以上であることが好ましい。開口Aの最大径Rは、開口Aを絶縁層41Pの主面の法線方向から見たとき、開口Aの中心を通る直線の最大の長さである。複数の開口Aが設けられている場合、最大径Rは、これらを平均化して求められる。
【0023】
絶縁層41Pは、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物(以下、第1熱硬化性樹脂組成物と称す。)により構成される。第1熱硬化性樹脂組成物は、例えば、熱硬化性樹脂と硬化剤と熱可塑性樹脂と無機充填剤とを含む。
【0024】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでもエポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
封止前の熱硬化性樹脂は、未硬化状態でもよく、半硬化状態でもよい。半硬化状態とは、熱硬化性樹脂がモノマーおよび/またはオリゴマーを含む状態であり、熱硬化性樹脂の三次元架橋構造の発達が不十分な状態をいう。半硬化状態の熱硬化性樹脂は、室温(25℃)では溶剤に溶解しないが硬化は不完全な状態、いわゆるBステージにある。
【0026】
エポキシ樹脂は、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式脂肪族エポキシ樹脂、有機カルボン酸類のグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エポキシ樹脂は、プレポリマーであってもよく、ポリエーテル変性エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂のようなエポキシ樹脂と他のポリマーとの共重合体であってもよい。なかでも、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂および/またはビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。特に、耐熱性および耐水性に優れ、かつ安価である点で、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。
【0027】
エポキシ樹脂は、樹脂組成物の粘度調節のために、エポキシ基を分子中に1つ有する1官能エポキシ樹脂を、エポキシ樹脂全体に対して0.1〜30質量%程度含むことができる。このような1官能エポキシ樹脂としては、フェニルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、エチルジエチレングリコールグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエングリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルグリシジルエーテルなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の硬化剤を含む。硬化剤は、特に限定されないが、例えば、フェノール系硬化剤(フェノール樹脂等)、ジシアンジアミド系硬化剤(ジシアンジアミド等)、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤、酸無水物系硬化剤、イミダゾール系硬化剤などを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化剤の種類は、熱硬化性樹脂に応じて適宜選択される。なかでも、硬化時の低アウトガス性、耐湿性、耐ヒートサイクル性などの点から、フェノール系硬化剤を用いることが好ましい。
【0029】
硬化剤の量は、硬化剤の種類によって異なる。エポキシ樹脂を用いる場合、例えば、エポキシ基1当量あたり、硬化剤の官能基の当量数が0.001〜2当量、さらには0.005〜1.5当量となる量の硬化剤を用いることが好ましい。
【0030】
なお、ジシアンジアミド系硬化剤、尿素系硬化剤、有機酸ヒドラジド系硬化剤、ポリアミン塩系硬化剤、アミンアダクト系硬化剤は、潜在性硬化剤である。潜在性硬化剤の活性温度は、60℃以上、更には80℃以上であるのが好ましい。また、活性温度は、250℃以下、更には180℃以下であるのが好ましい。これにより、活性温度以上で迅速に硬化する熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0031】
熱可塑性樹脂は、シート化剤(例えば、プレゲル化剤)として配合され得る。熱硬化性樹脂組成物がシート化されることにより、封止工程における取り扱い性が向上するとともに、熱硬化性樹脂組成物のダレ等が抑制されて、内部空間Sが維持され易くなる。
【0032】
熱可塑性樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリオレフィン、ポリウレタン、ブロックイソシアネート、ポリエーテル、ポリエステル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ブチラール樹脂、ポリアミド、塩化ビニル、セルロース、熱可塑性エポキシ樹脂、熱可塑性フェノール樹脂などが挙げられる。なかでも、シート化剤としての機能に優れる点で、アクリル樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂の量は、熱硬化性樹脂100質量部あたり、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部が特に好ましい。
【0033】
熱硬化性樹脂組成物に添加する際の熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されない。熱可塑性樹脂は、例えば、重量平均粒子径0.01〜200μm、好ましくは0.01〜100μmの粒子であってもよい。上記粒子は、コアシェル構造を有していてもよい。この場合、コアは、例えば、n−、i−およびt−ブチル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1つのモノマー由来のユニットを含む重合体であってもよいし、その他の(メタ)アクリレート由来のユニットを含む重合体であってもよい。シェル層は、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−、i−またはt−ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等の単官能モノマーと1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等の多官能モノマーとの共重合体であってもよい。また、溶剤に分散あるいは溶解させた高純度熱可塑性樹脂を、熱硬化性樹脂組成物に添加してもよい。
【0034】
熱硬化性樹脂組成物は、無機充填剤を含む。無機充填剤としては、例えば、溶融シリカなどのシリカ、タルク、炭酸カルシウム、チタンホワイト、ベンガラ、炭化珪素、窒化ホウ素(BN)などを挙げることができる。なかでも、安価である点で、溶融シリカが好ましい。無機充填剤の平均粒径は、例えば0.01〜100μmである。無機充填剤の量は、熱硬化性樹脂100質量部あたり、1〜5000質量部が好ましく、10〜3000質量部がより好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂組成物は、上記以外の第三成分を含んでもよい。第三成分としては、硬化促進剤、重合開始剤、難燃剤、顔料、シランカップリング剤、チキソ性付与剤などを挙げることができる。
【0036】
硬化促進剤は、特に限定されないが、変性イミダゾール系硬化促進剤、変性脂肪族ポリアミン系促進剤、変性ポリアミン系促進剤などが挙げられる。硬化促進剤は、エポキシ樹脂などの樹脂との反応生成物(アダクト)として使用することが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。硬化促進剤の活性温度は、保存安定性の点から、60℃以上、更には80℃以上が好ましい。また、活性温度は、250℃以下、更には180℃以下であるのが好ましい。ここで、活性温度とは、潜在性硬化剤および/または硬化促進剤の作用により、熱硬化性樹脂の硬化が急速に早められる温度である。
【0037】
硬化促進剤の量は、硬化促進剤の種類によって異なる。通常、エポキシ樹脂100質量部あたり、0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。なお、硬化促進剤をアダクトとして使用する場合、硬化促進剤の量は、硬化促進剤以外の成分(エポキシ樹脂など)を除いた硬化促進剤の正味の量を意味する。
【0038】
重合開始剤は、光照射および/または加熱により、硬化性を発現する。重合開始剤としては、ラジカル発生剤、酸発生剤、塩基発生剤などを用いることができる。具体的には、ベンゾフェノン系化合物、ヒドロキシケトン系化合物、アゾ化合物、有機過酸化物、芳香族スルホニウム塩、脂肪族スルホニウム塩などのスルホニウム塩などを用いることができる。重合開始剤の量は、エポキシ樹脂100質量部あたり、0.1〜20質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
【0039】
(導電層)
導電層42Pは、電磁波シールドとして機能し得る層であり、導電性を有する。導電層42Pにより、周囲から第2回路部材2への電磁波の影響が低減される、あるいは第2回路部材2から周囲への影響が低減される。
【0040】
導電層42Pの温度tにおける損失正接tanδ2は、1よりも大きいことが好ましい。これにより、封止工程において、導電層42Pが開口Aから露出し易くなる。損失正接tanδ2の上限は特に限定されないが、例えば、10であり、好ましくは8である。このような導電層42Pを単独で用いる場合、内部空間Sを維持しながら封止することは困難である。
【0041】
温度tにおける導電層42Pの貯蔵せん断弾性率G2’は、1.0×10
7Pa以下であることが好ましく、1.0×10
6Pa以下であることがより好ましい。温度tにおける貯蔵せん断弾性率G2’がこの範囲であれば、封止工程において、導電層42Pが開口Aから露出し易くなる。貯蔵せん断弾性率G2’の下限は特に限定されないが、例えば、1.0×10
3Paである。
【0042】
導電層42Pは、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物(以下、第2熱硬化性樹脂組成物と称す。)および導電性粉末により構成される。第2熱硬化性樹脂組成物の構成は、特に限定されないが、第1熱硬化性樹脂組成物と同様の構成であってもよい。導電性粉末としては、銀、銅、ニッケルなどの金属粉末や炭素粉末を用いることができる。なかでも、銀粉末が好ましい。導電性粉末の平均粒径は、例えば0.01〜100μmである。導電性粉末の量は、熱硬化性樹脂100質量部あたり、1〜5000質量部が好ましく、10〜3000質量部がより好ましい。
【0043】
粘弾性(つまり、損失正接tanδ)は、例えば、絶縁層41Pおよび/または導電層42Pの原料によって調整することができる。例えば、シート化剤である熱可塑性樹脂の量や種類を変更することにより、損失正接tanδを変化させることができる。なかでも、フェノキシ樹脂を用いると、容易に貯蔵せん断弾性率G2’を小さくして、tanδを大きくすることができる。第2熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂の量は、熱硬化性樹脂100質量部あたり、5〜200質量部が好ましく、10〜100質量部がより好ましい。
【0044】
導電層42Pの厚さT2は、1〜400μmであることが好ましく、20〜250μmであることがより好ましい。これにより、封止工程において、内部空間Sを維持し易くなるとともに、十分な電磁波シールド性能を発揮することが容易となる。なかでも、内部空間Sの維持の観点から、導電層42Pは絶縁層41Pよりも薄いことが好ましい。
【0045】
電磁波シールド性能の観点から、導電層42Pの体積抵抗率は5×10
−3Ω・cm以下であることが好ましく、1×10
−4Ω・cm以下であることが好ましい。
【0046】
(被覆層)
積層シート4Pは、被覆層43Pを備えていてもよい。この場合、封止材4は、さらに、被覆層43Pの硬化物層43を備える。被覆層43Pは、絶縁層41Pとは反対側の他方の最外に配置される。被覆層43Pは、例えば、実装構造体10の封止面をフラットにするために用いられる。これにより、実装構造体10のダイシングが容易になる。
【0047】
被覆層43Pの温度tにおける損失正接tanδ3は、1より大きいことが好ましい。これにより、被覆層43Pが流動し易くなって、良好な中空封止性が実現されるとともに、実装構造体10の封止面をフラットにすることが容易になる。よって、実装構造体10のピックアップ性が向上し、また個片化する場合、ダイシングが容易になる。損失正接tanδ3の上限は特に限定されないが、例えば、10であることが好ましく、8であることがより好ましい。
【0048】
温度tにおける被覆層43Pの貯蔵せん断弾性率G3’は、1.0×10
3Pa以上であることが好ましい。貯蔵せん断弾性率G3’の上限は特に限定されないが、例えば、1.0×10
7Paであり、より好ましくは1.0×10
6Paである。温度tにおける貯蔵せん断弾性率G3’がこの範囲であれば、被覆層43Pは流動し易くなって、封止面がフラットになり易い。
【0049】
被覆層43Pの厚さT3は、10〜1150μmであることが好ましい。これにより、実装構造体10の封止面をフラットにすることが容易になる。被覆層43Pの体積抵抗率は特に限定されないが、例えば、絶縁層41Pと同程度であってもよい。
【0050】
被覆層43Pは、熱硬化性樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物(以下、第3熱硬化性樹脂組成物と称す。)により構成される。第3熱硬化性樹脂組成物の構成は、特に限定されないが、第1熱硬化性樹脂組成物と同様の構成であってもよい。
【0051】
積層シート4P全体の厚さTは特に限定されないが、第2回路部材2の表面に密着させ易い点で、40〜1500μmであることが好ましく、40〜1000μmであることがより好ましく、40〜500μmであることが特に好ましい。
【0052】
積層シート4Pは、さらに他の第3の層を備えていてもよい。ただし、一方の最外に絶縁層41Pを配置し、絶縁層41Pに隣接して導電層42Pを配置するとともに、必要に応じて、他方の最外に被覆層43Pを配置する。つまり、第3の層は、導電層42Pと他方の最外層(例えば、被覆層43P)との間に配置される。
【0053】
[実装構造体の製造方法]
本実施形態にかかる製造方法を、
図3を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態にかかる製造方法を、実装部材あるいは実装構造体10の断面により模式的に示す説明図である。
【0054】
実装構造体10は、第1回路部材1と、例えばバンプ3を介して、第1回路部材1に搭載される複数の第2回路部材2と、第1回路部材1の第2回路部材2同士の隙間から露出する導体6と、を備えるとともに、第1回路部材1と第2回路部材2との間に内部空間Sが形成された実装部材を準備する第1準備工程と、積層シート4Pを準備する第2準備工程と、積層シート4Pの絶縁層41Pが導体6と対向するように、積層シート4Pを実装部材に配置する配置工程と、積層シート4Pを第1回路部材1に対して押圧するとともに、積層シート4Pを加熱して、内部空間Sを維持しながら、第2回路部材2を封止する封止工程と、を具備する方法により製造される。封止工程において、開口Aから導電層42P(あるいはその硬化物層42)が露出して、導電層42Pと導体6とが電気的に接続する。さらに、得られた実装構造体10を、第2回路部材2ごとにダイシングする個片化工程を行ってもよい。
【0055】
(第1準備工程)
第1回路部材1と、第1回路部材1に搭載される複数の第2回路部材2と、第1回路部材1の第2回路部材2同士の隙間から露出する導体6と、を備える実装部材を準備する(
図3(a))。第2回路部材2は、例えばバンプ3を介して第1回路部材1に搭載されている。そのため、第1回路部材1と第2回路部材2との間には、内部空間Sが形成されている。
【0056】
第1回路部材1は、例えば、半導体素子、半導体パッケージ、ガラス基板、樹脂基板、セラミック基板およびシリコン基板よりなる群から選択される少なくとも1種である。これら第1回路部材は、その表面に、ACF(異方性導電フィルム)やACP(異方性導電ペースト)のような導電材料層を形成したものであってもよい。樹脂基板は、リジッド樹脂基板でもフレキシブル樹脂基板でもよく、例えば、エポキシ樹脂基板(例えば、ガラスエポキシ基板)、ビスマレイミドトリアジン基板、ポリイミド樹脂基板、フッ素樹脂基板などが挙げられる。第1回路部材1は、内部に半導体チップ等を備える部品内蔵基板であってもよい。
【0057】
第2回路部材2は、第1回路部材1にバンプ3を介して搭載されている。これにより、第1回路部材1と第2回路部材2との間には内部空間Sが形成される。第2回路部材2は、この内部空間Sを維持した状態で封止(中空封止)されることを要する電子部品である。第2回路部材2としては、例えば、RFIC、SAW、センサーチップ(加速度センサー等)、圧電振動子チップ、水晶振動子チップ、MEMSデバイスなどが挙げられる。
【0058】
バンプ3は導電性を有しており、第1回路部材1と第2回路部材2とは、バンプ3を介して電気的に接続されている。バンプ3の高さは特に限定されないが、例えば、40〜70μmであってもよい。バンプ3の材料も導電性を有する限り特に限定されず、例えば、半田ボールなどが挙げられる。
【0059】
すなわち、実装部材は、各種第1回路部材1上に第2回路部材2が搭載されたチップ・オン・ボード(CoB)構造(チップ・オン・ウエハ(CoW)、チップ・オン・フィルム(CoF)、チップ・オン・グラス(CoG)を含む)、チップ・オン・チップ(CoC)構造、チップ・オン・パッケージ(CoP)構造およびパッケージ・オン・パッケージ(PoP)構造を有することができる。実装部材は、第2回路部材2が搭載された第1回路部材1に、さらに第1回路部材1および/または第2回路部材2を積層したような多層実装部材であってもよい。
【0060】
導体6は、第1回路部材1の内部に配置されており、例えば図示しないグランド電極と導通している。導体6は、例えば、導電性ペーストや金属粒子などで形成することができる。
【0061】
(第2準備工程)
絶縁層41P、導電層42P、さらには被覆層43Pを備えるとともに、絶縁層41Pに開口Aが形成された積層シート4Pを準備する(
図3(a))。
積層シート4Pの製造方法は、特に限定されない。積層シート4Pは、各層を別途作成した後、積層する(ラミネート法)ことにより形成されてもよいし、各層の材料を順次、コーティングする(コーティング法)ことにより形成されてもよい。
【0062】
ラミネート法において、各層は、例えば、上記熱硬化性樹脂組成物を含む溶剤ペーストあるいは無溶剤ペースト(以下、単にペーストと総称する。)をそれぞれ調製する工程と、上記ペーストから各層を形成する工程(形成工程)と、を含む方法により形成される。この方法により、絶縁層41P、導電層42P、被覆層43Pをそれぞれ形成した後、この順に積層する。このとき、パンチ加工、レーザ加工等により、絶縁層41Pに開口Aを形成した後、積層されることが好ましい。ペーストがプレゲル化剤を含む場合、形成工程の際にゲル化が行われる。ゲル化は、ペーストを薄膜化した後、薄膜を熱硬化性樹脂の硬化温度未満(例えば、70〜150℃)で、1〜10分間加熱することにより行われる。
【0063】
一方、コーティング法では、上記方法により、例えば絶縁層41Pを形成した後、この絶縁層41Pの表面に、第2熱硬化性樹脂組成物を含むペーストをコーティングして、導電層42Pを形成する。同様にして、導電層42Pの表面に被覆層43Pを形成する。この場合、積層シート4Pを形成した後、レーザ加工等により、絶縁層41Pに開口Aを形成する。この場合も、形成工程の際にゲル化が行われ得る。ゲル化は、各ペーストからそれぞれの薄膜を形成した後、逐次実施されてもよく、薄膜の積層体を形成した後に実施されてもよい。
【0064】
各層(薄膜)は、例えば、ダイ、ロールコーター、ドクターブレードなどにより形成される。この場合、ペーストの粘度を、10〜10000mPa・sとなるように調整することが好ましい。溶剤ペーストを用いた場合、その後、70〜150℃、1〜10分間乾燥して、溶剤を除去してもよい。上記ゲル化と溶剤の除去とは、同時に実施され得る。
【0065】
(配置工程)
絶縁層41Pが第2回路部材2に対向するように、積層シート4Pを実装部材に配置する(
図3(a))。
このとき、複数の第2回路部材2を、一枚の積層シート4Pで覆ってもよい。これにより、積層シート4Pを一括して、複数の第2回路部材2の表面および第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面に対向するように配置することができる。
【0066】
(封止工程)
積層シート4Pを第1回路部材1に対して押圧するとともに(
図3(b))、積層シート4Pを加熱して硬化させる(
図3(c))。これにより、内部空間Sを維持しながら、第2回路部材2が封止される。さらに、開口Aから導電層42Pが露出する。導電層42Pの露出は、押圧の際、あるいは硬化のために加熱された際に起こる。
【0067】
積層シート4Pの第1回路部材1に対する押圧は、例えば、積層シート4Pを、積層シート4Pに含まれる熱硬化性樹脂の硬化温度未満で加熱しながら行われる(熱プレス)。これにより、積層シート4Pは、第2回路部材2の表面に密着するとともに、第2回路部材2同士の間の第1回路部材1の表面に達するまで伸展することが容易となり、第2回路部材2の封止の信頼性を高めることができる。熱プレスは、大気圧下で行ってもよいし、減圧雰囲気(例えば0.001〜0.05MPa)で行ってもよい。押圧時の加熱の条件は、特に限定されず、押圧方法や熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。上記加熱は、例えば、40〜200℃(好ましくは50〜180℃)で、1秒〜300分間(好ましくは3秒〜300分間)行われる。
【0068】
続いて、積層シート4Pを上記硬化温度で加熱して、積層シート4P中の熱硬化性樹脂を硬化させて、封止材4を形成する。これにより、第2回路部材2が封止される。積層シート4Pの加熱(熱硬化性樹脂の硬化)の条件は、熱硬化性樹脂の種類に応じて適宜設定すればよい。熱硬化性樹脂の硬化は、例えば、50〜200℃(好ましくは120〜180℃)で、1秒〜300分間(好ましくは60分〜300分間)行われる。
【0069】
熱プレスと熱硬化性樹脂の硬化とは、別々に実施してもよく、同時に実施してもよい。例えば、減圧雰囲気下、積層シート4Pに含まれる熱硬化性樹脂の硬化温度未満で熱プレスした後、減圧を解除して、大気圧下でさらに高温で加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させてもよい。あるいは、大気圧下で、積層シート4Pに含まれる熱硬化性樹脂の硬化温度未満で熱プレスした後、さらに高温で加熱して、熱硬化性樹脂を硬化させてもよい。また、減圧雰囲気下、硬化温度で熱プレスすることにより、減圧中に熱硬化性樹脂を硬化させてもよい。
【0070】
(個片化工程)
得られた実装構造体10を、第2回路部材2ごとにダイシングする個片化工程を行ってもよい(
図3(d))。これにより、チップレベルの実装構造体(実装チップ20)が得られる。