(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態である脂質計測装置及びその作動方法について、図を参照して詳細に説明をする。
【0017】
図1は、実施形態の脂質計測装置の構成を示す図である。
【0018】
図1に示すように、実施形態の脂質計測装置100は、生体の外から生体内に向けて生体の所定の部位に光を照射する照射部101と、生体から放出される光を受光して、光強度に基づいて生体内の光到達範囲Fを検出する光強度検出部102と、光強度検出部102により検出された光到達範囲Fに基づき光到達範囲パラメータを算出するパラメータ算出し、光到達範囲パラメータに基づき脂質濃度を算出する制御部103とを有する。
【0019】
照射部101は、生体の所定の部位の生体外から生体内に向けて、所定の照射位置に光を照射するための光源を有する。実施形態の照射部101は、照射する光の波長を調整することができる。照射部101は、波長範囲を血漿の無機物によって光が吸収される波長範囲以外に調整できる。照射部101は、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲以外に調整できる。ここで、血液の細胞成分とは、血中の赤血球、白血球及び血小板である。血漿の無機物とは、血中の水及び電解質である。
【0020】
照射部101が照射する光の波長範囲は、血漿の無機物により光を吸収する波長範囲を考慮して約1400nm以下、及び、約1500nm〜約1860nmとするのが好ましい。さらに、照射部101が照射する光の波長範囲は、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲を考慮して約580nm〜約1400nm、及び、約1500nm〜約1860nmとするのがより好ましい。
【0021】
照射部101に用いられる波長範囲を上記範囲とすることにより、後述する光強度検出部102により検出される光において、血漿の無機物による光の吸収の影響、及び、血液の細胞成分により光の吸収の影響を抑制する。これにより、物質を特定するほどの吸収は存在せず、吸収による光エネルギー損失は無視できるほど小さくなる。そのため、血中の光は血中の脂質による散乱によって遠くまで伝搬し、体外へ放出される。
【0022】
実施形態の照射部101は、光の連続的な照射や光のパルス状の照射等の光を照射する時間長さを任意に調整することができる。照射部101は、照射する光の強度または光の位相を任意に変調することができる。
【0023】
照射部101は、波長が固定された光源を用いてもよい。照射部101は、波長が異なる複数の光源あるいは複数の波長の光を混合したものであってもよい。
【0024】
光強度検出部102は、生体から生体外に放出される光を受光して、その光強度を検出し、生体内の光到達範囲Fを検出する。
【0025】
図2は、血中脂質による光の散乱を示す図である。
図2に示すように、照射部101から、生体D表面の照射位置(図中のE)に照射された光(図中のB)は、リポ蛋白等の脂質が存在する深さに達したのち、生体D内の血液中の脂質(図中のA)によって反射する。さらに、照射された光は血中の脂質による光の散乱を経て、後方散乱光(図中のC)が生体から放出される。光強度検出部102は後方散乱光Cの光強度を検出する。
【0026】
なお、
図2では、照射部101の先端は生体Dに接触しているが、
図13に示すように照射部101の先端は生体Dから所定の距離、離れていてもよい。
【0027】
図2に示すように、照射部101の照射位置Eから、所定レベルの光強度が得られる範囲(以下、光到達範囲Fとする)の外周までの距離を光到達距離lとする。
【0028】
計測対象であるリポ蛋白は、アポ蛋白等に覆われた球状構造をしている。リポ蛋白は血中において固体のような状態で存在する。リポ蛋白は、光を反射する性質を有する。特に、粒子径や比重の大きいカイロミクロン(CM)やVLDL等は中性脂肪(TG)を多く含み、光をより散乱させ易い特性を有する。よって、光強度検出部102により検出される光強度には、リポ蛋白による光の散乱の影響が含まれる。
【0029】
光強度検出部102は、CCDやCMOS等の受光素子であってもよい。また、光強度検出部102は、受光素子をアレイ状に配置したものでもよく、同心円状に配置してもよい。受光素子数を少なくする場合には、受光素子を照射位置Eを中心に十字状、V字状に配置してもよく、直線上に配置し移動や回転をさせて計測してもよい。
【0030】
また、
図2では、光強度検出部102が、照射部101の真上に配置されるが、これに限られず、光到達範囲Fを検出できる位置であればよい。
【0031】
次に、脂質計測装置100の制御系の構成について説明する。
図3は実施形態の脂質計測装置100のブロック図である。システムバス109を介して、CPU(Central Processing Unit)104、ROM(Read Only Memory)105、RAM(Random Access Memory)106、記憶部107、外部I/F(Interface)108、照射部102、及び、光強度検出部102が接続される。CPU104とROM105とRAM106とで制御部(コントローラー)103を構成する。
【0032】
ROM105は、CPU104により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
【0033】
RAM106は、CPU104が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリア等を有する。
【0034】
記憶部107は、予め用意された、静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。記憶部107は、HDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)等の、不揮発性に記憶する内部メモリーでよい。
【0035】
外部I/F108は、例えばクライアント端末(PC)などの外部装置と通信するためのインターフェースである。外部I/F108は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良く、たとえば、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。
【0036】
制御部103は、光強度検出部102により検出された光到達範囲Fに基づき、光到達範囲パラメータを算出する。
【0037】
光到達範囲Fの検出は、2値化法を採用すればよい。光強度検出部102が検出した光強度を0〜255の256段階とし、光強度検出部102は、光強度のしきい値を254に設定し、255の場合の光到達範囲Fとする。
【0038】
また、照射部101から光強度検出部102が遠くなるほうが、散乱の影響をよく反映するため、上記のしきい値に限定されず、値を下げてもよい。この場合、実際の計測においては外乱光の影響を受けやすくなるため、装置形状、遮光の程度、受光素子の感度により適時設定を行うことが好ましい。
【0039】
また受光部にPDなどの素子を用いる場合、AD値や電圧値を用いてもよく、計測に用いる測定範囲は、照射強度、受光素子の感度、遮光の程度により適時設定を行うことが好ましい。
【0040】
本実施例では、暗室にて外乱光が無視できる状態で行った場合は、強度が10程度のノイズが入り込むことから、強度11以上の場合についても検討した。
【0041】
図4は、
図2のX方向から見た、生体表面の光到達範囲Fを示す図である。図に示すように、毛細管のみの場合には、照射光は照射位置Eを中心とし光到達距離lを半径とした円状に拡散し、光到達範囲Fは生体表面で円状となる。
【0042】
制御部103は、光到達範囲パラメータとして、光到達範囲Fにおける照射位置Eから光到達範囲の外周(外縁)までの距離(光到達距離lとする)を算出する。
【0043】
また、制御部103は、光到達範囲パラメータとして、光到達範囲Fの面積(光到達面積Sとする)を算出する。なお、光到達面積Sは光到達距離lから算出してもよい。光到達面積Sは、しきい値255の画素数から算出してもよい。計測誤差を平均化するため、光到達面積Sを光到達最大距離と光到達最小距離から楕円面積として算出してもよい。
【0044】
また、制御部103は、光到達範囲パラメータとして、光到達範囲Fの体積(光到達体積Vとする)を算出する。なお、光到達体積Vは、光到達体積V=(4/3π×a×b×c)/2と、計算することもできる。
【0045】
式中のa,b,cは、それぞれ球体の座標軸x,y,z方向のそれぞれが90°に交わる半径である。また、光到達範囲に歪みがない場合は、a=b=cとなるため、
図2では、l=rであり、光到達体積Vは(4/3π×l
3)/2)となる。
【0046】
したがって、光到達範囲パラメータは、光到達面積S、光到達距離l、最小光到達距離l2、光到達面積Sと最小光到達距離l2、最大光到達距離l1と最小光到達距離l2の比又は差、光到達体積V、光到達体積Vと最小光到達距離l2、もしくは、それらの組み合わせであってもよい。さらには、取得データ全体ではなく最適部位のみの光到達面積S、光到達距離l、最小光到達距離l2、光到達面積Sと最小光到達距離l2、最大光到達距離l1と最小光到達距離l2の比又は差、光到達体積V、光到達体積Vと最小光到達距離l2、もしくは、それらの組み合わせであってもよい。
【0047】
制御部103は、算出された光到達範囲パラメータ(光到達距離l、及び、光到達面積S等)に基づいて、血中の脂質濃度を算出する。
【0048】
血中の脂質濃度の変化に伴い、照射光の拡散の面積が小さくなる。これは、血中の脂質粒子による光の散乱増加に伴い、光の拡散距離が低下するためであると判断できる。したがって、脂質濃度算出部104は、光到達距離l若しくは光到達面積Sから、血中の脂質濃度を算出する。この手法は、特に毛細血管などの情報のみでも計測可能であることから、計測部位に依存しない。
【0049】
図12Bに示すように、脂質濃度変化量と光到達面積Sの間には、相関係数0.875という、良好な関係が得られていることから、少なくとも個人内変動においては、あらかじめ定めた相関係数から算出することができる。
【0050】
また、制御部103は、光到達範囲パラメータから散乱係数を算出した後、脂質濃度を算出してもよい。臨床現場において、濃度と濁度とは同義で使われることがあり、本発明における濃度には濁度が含まれる。よって、制御部103は、その算出結果として、濃度のみならず単位量当たりの粒子数やホルマジン濁度あるいは散乱係数とすることができる。
【0051】
図5は、
図2のX方向から見た、生体表面の光到達範囲Fを示す図である。図に示すように、静脈を介した場合、照射部101からの光は同心円状に拡散せず、光到達範囲Fは、生体表面で、最大光到達距離l1と最小光到達距離l2を有する歪みを生じた形状になる。ここで、制御部103は、最小光到達距離l2から血中の脂質濃度を算出する。この手法は、静脈を介した場合に計測可能な手法である。
【0052】
また、制御部103は、光到達面積Sと最小光到達距離l2とから脂質濃度を算出してもよい。これにより、静脈を含む計測部位でも、静脈および毛細血管の情報を総合的に取得できる。
【0053】
また、制御部103は、最大光到達距離l1と最小光到達距離l2の比又は差を取ることで、より静脈情報としての精度を高めてもよい。さらに、制御部103は、最大光到達距離l1と最小光到達距離l2から、光到達範囲Fの楕円率を求め、または、光到達範囲Fの楕円面積を求めることにより、静脈情報としての精度を高めてもよい。
【0054】
以上のような構成を備える脂質計測装置100において、予め設定されているプログラムに基づいて、脂質計測装置100は脂質計測処理を実行する。
図6は、実施形態の脂質計測処理のフローチャートである。
【0055】
照射工程(S101)では、照射部101が、生体の照射位置に対して連続光を照射する。
【0056】
光強度検出工程(S102)では、光強度検出部102が、照射位置周辺における生体から放出される光強度を検出し、この光強度に基づいて生体内の光到達範囲Fを検出する。光強度検出工程で検出された光到達範囲Fは、パラメータ算出工程へと送られる。
【0057】
パラメータ算出工程(S103)では、制御部103が、光到達範囲Fに基づき、所定の光到達範囲パラメータを算出する。光到達範囲パラメータは、光到達範囲Fの面積S、もしくは、光到達範囲Fの体積V、あるいは、光到達範囲Fにおける照射位置Eから光到達範囲Fの外周(外縁)までの距離lでもよい。光到達範囲パラメータは、最小光到達距離l2のみ、光到達面積Sと最小光到達距離l2、光到達体積Vと最小光到達距離l2もしくは、最大光到達距離l1と最小光到達距離l2の比又は差、もしくは、それらの組み合わせであってもよい。算出した光到達範囲パラメータは、脂質濃度算出工程へと送られる。
【0058】
脂質濃度算出工程(S104)では、制御部103が、光到達範囲パラメータに基づいて、血中の脂質濃度を算出する。脂質濃度算出工程では、光到達範囲パラメータから散乱係数を算出した後、脂質濃度を算出してもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の脂質計測装置及び方法によれば、生体から放出される光強度の2次元情報を取得することで、静脈情報及び毛細血管情報を取得し、計測者の熟練がなくとも、容易に非侵襲脂質計測が可能となる。
【0060】
次に、他の実施形態の脂質計測装置について説明をする。なお、他の実施形態の脂質計測装置の構成は、上記実施形態の脂質計測装置の構成と共通する部分もあるため、相違する部分を主に説明する。
【0061】
上記実施形態では、照射部101と光強度検出部102と制御部103とを一体として構成した例を示したが、これに限られず、照射部101と光強度検出部102をユーザー装置として構成し、制御部103を、ユーザー装置に接続したサーバー装置に設けたシステムとしてもよい。
【0062】
図7は、実施形態の脂質計測システムの構成を示す図である。システムは、脂質計測装置200と、アクセスポイント300と、ユーザー装置400とを有する。
【0063】
脂質計測装置200は、ユーザー装置400から送信された光強度に基づいて所定の処理を行い、脂質濃度を算出するための装置であり、具体的には、パーソナルコンピュータや、装置の台数や送受信するデータ量によってはサーバー装置が適宜用いられる。
【0064】
ユーザー装置400は、ユーザーが所持する装置であり、単独の装置である場合もあり、スマートフォン、携帯電話、腕時計等に搭載される場合もある。また、照射部401、光強度検出部402、通信部404として、スマートフォンや携帯電話に備わるカメラや照明、通信機能等、を使用してもよい。
【0065】
ユーザー装置400は、光を照射する照射部401と光強度検出部402と通信部404とを有する。通信部404は、光強度検出部402で検出された光強度を送信する。照射部401と光強度検出部402の機能・動作については上述した。
【0066】
脂質計測装置200は、通信部204aと制御部203とを有する。通信部204は、通信部404から送信された光強度をアクセスポイント300を介して受信し、制御部203へ送信する。
【0067】
次に、脂質計測装置200の制御系の構成について説明する。
図8は実施形態の脂質計測装置200のブロック図である。システムバス209を介して、CPU(Central Processing Unit)204、ROM(Read Only Memory)205、RAM(Random Access Memory)206、記憶部207、及び、通信部(外部I/F(Interface))208が接続される。CPU204とROM205とRAM206とで制御部(コントローラー)203を構成する。
【0068】
ROM205は、CPU204により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
【0069】
RAM206は、CPU204が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリア等を有する。
【0070】
記憶部207は、予め用意された、静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。記憶部207は、HDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)等の、不揮発性に記憶する内部メモリーでよい。
【0071】
通信部(外部I/F)208は、例えばクライアント端末(PC)などの外部装置と通信するためのインターフェースである。外部I/F208は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良く、たとえば、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。制御部203の機能・動作については上述した。
【0072】
なお、実施形態では、ユーザー装置400から脂質計測装置200へ、アクセスポイント300を介して光強度を送信したが、これに限られず、ユーザー装置400と脂質計測装置200とが、アクセスポイントを介さずに直接接続し、有線通信や無線通信等の手段により光強度を送信してもよい。
【実施例】
【0073】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0074】
本実施例の脂質計測装置は、照射光が生体内の血中脂質に反射し、散乱して、生体から放出される光強度の2次元情報を取得することで、静脈情報及び毛細血管情報を取得し、計測者の熟練がなくとも、容易に非侵襲脂質計測を可能とする。
【0075】
図9は、LED(照射部101)を生体の皮膚に直接当て、赤外線カメラ(光強度検出部102)を使用し撮影した結果を示す図である。
図9に示すように、LED(照射部101)からの照射光は、生体内で同心円状に光は拡散することが確認される。
【0076】
図10は、生体の皮膚の同一部位で脂肪負荷後(血液濁度上昇後)に計測した結果を示す図である。
【0077】
図10では、
図9と同様に、LED(照射部101)からの照射光は、生体内で同心円状に拡散するが、
図9と比較して、光の周辺への広がりが小さくなっていることが確認できる。ここで計測したデータは、目視で静脈が見えない部分を計測している。
【0078】
図11は、前腕部の静脈近傍にて計測した結果を示す図である。静脈では血液による光の減衰と思われ現象が確認され、同心円ではなく歪みを生じた拡散をしていることが確認できる。
【0079】
これらの得られる情報から、以下の手法により脂質濃度の算出が可能となる。
(1)光の拡散の光到達面積Sから脂質濃度を算出する手法(手法1)
(2)静脈による光の拡散の光到達範囲Fの歪みから脂質濃度を算出する手法(手法2)(3)光の拡散の光到達面積Sから脂質濃度を算出する手法(手法3)
【0080】
以下に、上記各手法により脂質濃度を算出する方法について説明する。
【0081】
(1)光の拡散の光到達面積Sから脂質濃度を算出する手法(手法1)
この手法は、静脈上以外の部分を分析することで毛細血管などの情報のみでも計測可能であることから、計測部位に依存しない。また、簡易的に光到達範囲あるいは光到達面積を光到達距離として分析してもよい。
【0082】
図12は、脂肪負荷試験による脂質濃度の変動と光到達面積Sを比較した図である。
図12Aは、脂肪負荷時におけるTG変化量の時間変化と光到達面積の時間変化をプロットしたものである。
図12Bは、
図12AのTG変化量と光到達面積の相関を示したものである。
図12Aに見られるように、脂質濃度の増加に伴い、光到達面積Sが減少することが確認できる。これは、脂質粒子による散乱増加に伴い、光の拡散距離が低下したためと判断できる。
図12Bから、TG変化量と光到達面積との間には相関度0.875の相関があることがわかる。
【0083】
(2)静脈による光の拡散の光到達範囲Fの歪みから脂質濃度を算出する手法(手法2)
静脈を介した場合、光は同心円状に拡散せず、光到達範囲Fは歪みを生じた形状になる。ここで、光入射地点から光到達点の最大光到達距離l1と最小光到達距離l2を比較した。
【0084】
図13は、最小光到達距離l2と脂質濃度との間の関連性を示す図である。
図13Aは、脂肪負荷時におけるTG変化量の時間変化と最小光到達距離l2の時間変化をプロットしたものである。
図13Bは、
図13AのTG変化量と最小光到達距離l2の相関を示したものである。
図13Aに見られるように、脂質濃度の増加に伴い、最小光到達距離l2が減少することが確認できる。これは、脂質粒子による散乱増加に伴い、光の拡散距離が低下したためと判断できる。
図13Bから、TG変化量と最初光到達距離l2との間には相関度0.877の相関があることがわかる。
【0085】
(3)光の拡散の光到達体積Vから脂質濃度を算出する手法(手法3)
この手法は、特に毛細血管などの情報のみでも計測可能であることから、計測部位に依存しない。
【0086】
図14は、脂肪負荷試験による脂質濃度の変動と光到達体積Vを比較した図である。
図14Aは、脂肪負荷時におけるTG変化量の時間変化と光到達面積の時間変化をプロットしたものである。
図14Bは、
図14AのTG変化量と光到達面積の相関を示したものである。
図14Aに見られるように、脂質濃度の増加に伴い、光到達体積Vが減少することが確認できる。これは、脂質粒子による散乱増加に伴い、光の拡散距離が低下したためと判断できる。
図14Bから、TG変化量と光到達体積Vとの間には相関度0.851の相関があることがわかる。
【0087】
また、手法1と手法2を合わせ、静脈を含む計測部位でも、光到達面積Sを算出し、静脈および毛細血管の情報を総合的に取得することも可能である。
【0088】
また、手法2においては最大光到達距離l1と最小光到達距離l2の比又は差を取ることで、より静脈情報としての精度を高めることが可能である。さらに、手法2においては最大光到達距離l1と最小光到達距離l2から楕円率を求め、または楕円面積より静脈情報としての精度を高めることが可能である。
【0089】
また、静脈情報の正確性を高める場合は、照射部101による照射光の入射点を増やし、複数点からの情報により静脈位置を特定することも可能である。
【0090】
図15は、
図2と異なる照射部101と光強度検出部102の配置を示す図であり、
図16は、
図15に示す方法により撮影した例を示す図である。
【0091】
図16は、照射部101にレーザー使用し、レーザーを広範囲に照射し、レーザーのスペックルを計測することで、毛細血管(光到達深度1mm程度)の血流を計測したものである。
【0092】
光の到達深度は、光源の光量を調節するなどでも良い。
【0093】
図17は、体温、脈などの影響を考慮し、計測時は同一姿勢で、安静状態で計測した結果を示す図である。
【0094】
図17Aは、脂肪負荷時におけるTG変化量の時間変化と流量の時間変化をプロットしたものである。
図17Bは、
図17AのTG変化量と流量の相関を示したものである。
図17Aに見られるように、脂質濃度の増加変化に伴い、流量が減少することが確認できる。
図17Bから、TG変化量と流量との間には相関度0.757の相関があることがわかる。この結果からも、静脈以外の血液情報から、脂質濃度を算出することが可能であることがわかった。
【0095】
参考文献に記載の方法などを使用した静脈情報と比較し、代謝情報をより正確に得ることができる。また、光源を接触した場合と、非接触の場合を比較することで、静脈のみの情報を得ることも可能となる。