(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の照射部による光の照射位置から第3の距離をあけた第3の検出位置における、前記生体から放出された前記第2の波長の光の第3の受光強度を検出する第3の光強度検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記第2の受光強度及び第3の受光強度に基づき前記吸収係数を算出する、ことを特徴とする請求項1に記載の散乱体濃度計測装置。
前記第2の波長は、350nm以上750nm以下, 又は、1600nm以上2000nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の散乱体濃度計測装置。
前記制御部は、前記第2の波長における吸収係数と前記第1の波長における吸収係数の換算係数により、前記第2の波長における吸収係数を、前記第1の波長における吸収係数に換算する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の散乱体濃度計測装置。
生体外から生体内に向けて第1の照射強度で、第1の波長の光を照射する第1の照射部と、生体外から生体内に向けて第2の照射強度で、第2の波長の光を照射する第2の照射部と、前記第1の照射部による光の照射位置から第1の距離をあけた第1の検出位置における、前記生体から放出された前記第1の波長の光の第1の受光強度を検出する第1の光強度検出部と、前記第2の照射部による光の照射位置から第2の距離をあけた第2の検出位置における、前記生体から放出された前記第2の波長の光の第2の受光強度を検出する第2の光強度検出部と、を有するユーザー装置に、通信可能に接続される散乱体濃度計測装置であって、
前記第2の受光強度に基づき吸収係数を算出し、前記第1の受光強度と前記吸収係数に基づき生体内における光の散乱係数を算出し、当該算出された光の散乱係数に基づき生体内における散乱体濃度を算出する制御部を有する散乱体濃度計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の散乱体濃度計測装置及びその方法について、図を参照して詳細に説明をする。また、本実施形態では、散乱体の例として、血中脂質を検出する場合について主に説明するが、これに限られず、散乱体一般についても適用可能である。
【0013】
図1は、実施形態の散乱体濃度計測装置の構成を示す図である。
【0014】
図1に示すように、実施形態の散乱体濃度計測装置1は、生体Eの所定の照射位置Aから生体Eの内部に向けて光を照射する第1の照射部21及び第2の照射部22と、生体Eの所定の検出位置Bにおける光強度を検出する第1の光強度検出部31及び第2の光強度検出部と、所定の検出位置Cにおける光強度を検出する第3の光強度検出部33と、第1の光強度検出部31により検出された光強度を、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33により検出された光強度を用いて補正し、補正された光強度基づき生体内における光の散乱係数μ
sを算出し、算出された光の散乱係数μ
sに基づき生体内における散乱体(脂質)濃度を算出する制御部4とを有する。
【0015】
第1の照射部21及び第2の照射部22は、生体外から生体に向けて、所定の照射位置Aに光を照射する。第1の照射部21及び第2の照射部22は、相異なる波長の光を照射する。第1の照射部21及び第2の照射部22は、光を照射するための光源を有し、照射する光の波長を自在に調整することができる。実施形態では、第1の照射部21は散乱係数の計測を目的とし、第2の照射部22は吸収係数の計測を目的とする。
【0016】
実施形態では、第1の照射部21及び第2の照射部22と、2つの照射部としているが、例えば、照射部に白色光を用い、光強度検出部側で可視光フィルターなどにより分光をすれば照射部を1つとするができる。また、照射部が白色LEDのような複数波長の発光体の複合体の場合には、その中で複数波長を交互点灯させるなどにより、照射部を1つとすることができる。
【0017】
第1の照射部21及び第2の照射部22は、後述する制御部4による散乱係数μ
sの算出方法に応じて、光の連続的な照射や光のパルス状の照射等の光を照射する時間長さを任意に調整することができ、かつ照射する光の強度または光の位相を任意に変調することができる。
【0018】
第1の照射部21及び第2の照射部22は、波長が固定された光源を用いてもよく、複数の波長の光を混合したものであってもよい。第1の照射部21及び第2の照射部22は白色光などの広範囲のスぺクトルを有する光源でもよく、その場合、受光部で特定波長を検出するようにしても良い。
【0019】
第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32、及び第3の光強度検出部33は、光を受光してその受光強度を検出する。第1の光強度検出部31は、第1の照射部21が照射した光が血中脂質により散乱し、生体から生体外に放出される光を、検出位置Bで受光し、その受光強度を検出する。第2の光強度検出部32は、第2の照射部22が照射した光が血中脂質により散乱し、生体から生体外に放出される光を、検出位置Bで受光し、その受光強度を検出する。第3の光強度検出部33は、第2の照射部22が照射した光が血中脂質により散乱し、生体から生体外に放出される光を、検出位置Cで受光し、その受光強度を検出する。
【0020】
実施形態では、
図1に示すように、第1の照射部21から所定の間隔ρ
1で同一面上でかつ直線状に第1の光強度検出部31が並べられている。また、第2の照射部22から所定の間隔ρ
1、ρ
2で同一面上でかつ直線状に第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33が順に並べられている。
【0021】
図1に示すように、第1の照射部21の照射位置Aから第1の光強度検出部311の検出位置Bまでの距離を第1の照射検出間距離ρ
1とし、第2の照射部22の照射位置Aから第2の光強度検出部31までの距離を第2の照射検出間距離ρ
1とし、第2の照射部22の照射位置Aから第3の光強度検出部33までの距離を第3の照射検出間距離ρ
2とする。
【0022】
このように、光を生体に照射する第1の照射部21及び第2の照射部22と、生体から放出される受光強度を検出する第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33との間に所定の距離を設けることにより、
図2に示すように、照射した光が生体表面および表面近傍の散乱体Dにより反射して直接的に生体Eから放出される光の影響を抑制し、血液や脂質が存在する深さに達したのち、血中脂質によって光が反射することによる散乱を経て生体から放出される後方散乱光による受光強度を検出する。また、第1の照射部21及び第2の照射部22と第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33との距離を長くすることで、光路長は長くなるため、脂質との衝突回数が増え、検出される光は散乱の影響を多く受けることにより、これまでは弱く、検出しにくかった散乱の影響を捉えやすくしている。
【0023】
複数の光強度検出部を設ける場合の配列は、第1の照射部21及び第2の照射部22を中心として各々異なる距離に配置されるのであれば直線状に限定されるものではなく、円状、波状、ジグザグ状などでもよい。また、第1及び第2の照射検出間距離ρ
1や第3の照射検出間距離ρ
2は、一定の間隔でなくともよい。また、実施形態では、また、第1の照射検出間距離と第2の照射検出間距離をρ
1としたが、異なっていてもよい。第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33は、フォトダイオードやCCDやCMOS等の受光素子であってもよい。
【0024】
次に、散乱体濃度計測装置1の制御系の構成について説明する。
図3は実施形態の散乱体濃度計測装置1のブロック図である。システムバス109を介して、CPU(Central Processing Unit)104、ROM(Read Only Memory)105、RAM(Random Access Memory)106、記憶部107、外部I/F(Interface)108、第1の照射部21、第2の照射部22、第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32、及び、第3の光強度検出部33が接続される。CPU104とROM105とRAM106とで制御部(コントローラー)4を構成する。
【0025】
ROM105は、CPU104により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
【0026】
RAM106は、CPU104が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリア等を有する。
【0027】
記憶部107は、予め用意された散乱係数μsと散乱体血中脂質濃度との統計データを記憶する。記憶部107は、HDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)等の、不揮発性に記憶する内部メモリーでよい。
【0028】
外部I/F108は、例えばクライアント端末(PC)などの外部装置と通信するためのインターフェースである。外部I/F108は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良く、たとえば、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。
【0029】
制御部4は、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33により検出された受光強度から、傾きを求め吸収係数を算出する。吸収係数の算出法は、以下の通りである。ここでは、例えば、下記式1を用いる場合について示す。
【0030】
下記式1は、y = -ax + bと同義である。そこで、yはR(ρ)、ρ、及び、S
0が分かれば算出でき、得られたyをρに対しプロットすれば、
図10に示すプロットとなる。なお、R(ρ)は受光強度(光強度)であり、ρは入射?受光部間距離であり、S
0は、入射光強度である。プロットの傾きが有効減衰係数μ
effなので、有効減衰係数μ
effを右の項に代入すると吸収係数μ
aが求まる。実施形態では、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33で得られた光強度を
図10に示すようにプロットして一次関数に近似させ、当該一次関数の傾きからμeffを求め、これを式(1)に代入して吸収係数μaを求める。
【0031】
なお、実施形態では、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33により検出された受光強度から、吸収係数を算出しているが、例えば、吸収係数を事前に測定することにより
図10に示す検量線等の吸収係数の統計データを取得し、当該吸収係数の統計データをROM105や記憶部107に等に格納しておき、当該検量線データと第2の光強度検出部32の受光強度から、吸収係数を算出することもできる。この場合には、光強度検出部を第2の光強度検出部32の1つとすることもできる。
【0032】
制御部4は、第1の光強度検出部31により検出された受光強度と、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33により検出された受光強度から算出された吸収係数とに基づき生体内における光の散乱係数μ
sを算出する。なお、実施形態における散乱係数μ
sは、一般的な散乱過程の効率を数値化したものに限定されるものではなく、散乱現象を考慮して散乱の影響を一定の条件下で数値化したものも含むものである。
【0033】
実施形態の制御部4は、第1の照射部21により連続光を照射するとともに、第1の光強度検出手段31により検出された受光強度R(ρ)と照射検出間距離ρとを、下記式(1)「数1」および式(2)「数2」に代入することで散乱係数μ
sを算出する。
【0036】
ここで、μ
aは吸収係数、μ
effは有効減衰係数(Effective Attenuation Coefficient)、S
0は照射部により照射された光の光強度である。
【0037】
なお、上記式(1)および式(2)は以下のように導き出される。
【0038】
まず、
図1に示すように、生体外から生体内に向けて所定の光強度S
0を有する光を連続光として照射するとともに、第1の照射部21の照射位置Aから第1の光強度検出部31の検出位置Bまでの距離を照射検出間距離ρとすると、その後方散乱光によって生体外に放射される光の分布は、以下の式(3)で表される。
【0040】
ここで、z
0は光源の深さ、つまり散乱が開始する深さであって、下記式(4)で表される。
【0042】
ここで、μ
sは散乱係数を表している。
【0043】
また、μ
effは有効減衰係数であり、下記式(5)で表される。
【0045】
ここで、Dは拡散係数、μ
aは吸収係数をそれぞれ表している。
【0046】
また、皮膚表面や表面近傍の血管での散乱を想定すると、照射検出間距離ρと光源の深さz
0との関係は下記式(6)のように近似する事ができる。
【0048】
さらに、本実施形態における計測対象は、上述のとおり血中の脂質であり、血中脂質による散乱は吸収よりも大きいと考えられる。そのため、有効減衰係数μ
effは下記式(7)のように近似する事ができる。
【0050】
以上の式(6)および式(7)を式(3)に代入すると、下記式(8)の近似式となる。
【0052】
ここで、照射検出間距離ρと有効減衰係数μ
effとに関して、下記式(9)のような関係を有する場合、式(8)は下記式(10)のように表される。ここでμ
eff=5.77mm(μ
s=1/mm、μ
a=0.01/mm)とする。
【0055】
そして、上記式(10)を対数表示させると、上記式(1)が導き出される。
【0056】
また、照射検出間距離ρと有効減衰係数μ
effとに関して、下記式(11)のような関係を有する場合、式(8)は下記式(12)のように表される。
【0059】
そして、上記式(12)を対数表示させると、上記式(2)が導き出される。
【0060】
なお、制御部4における散乱係数算出は、本実施形態のように上記式(1)および式(2)によるものに限定されるものではなく、適宜選択されるものであり、例えば、検出された受光強度R(ρ)と散乱係数μ
sとが単純に比例しているものとしてもよい。
【0061】
また、制御部4における散乱係数算出は、第1の光強度検出部31の検出位置Aが一点のものに限定されるものではない。実際の計測に置いては、多くの計測ノイズが発生することが想定される。そのような場合は、検出位置を多数設置し、照射検出間距離ρに応じた連続的な受光強度から散乱係数を導くこともできる。つまり、制御部4における散乱係数算出において、計測点が少数である各計測データのノイズが相対的に大きくなる場合、検出位置を増やすことで、実測で想定されるノイズの影響を軽減させることが可能である。
【0062】
上記式(1)においては、計測した光の減衰度を線形近似し、切片から吸収係数、傾きから散乱係数を導き出す計算式として、生体の散乱計測などに応用が期待されている。
【0063】
しかしながら、上記式(1)の導出においては、拡散方程式の展開の過程で、散乱係数μs’>>吸収係数μaという仮定を設定しているが、具体的な計算条件とはいいがたい。(なお、「>>」は、非常に大であることを示す記号である。)
【0064】
例えば、モンテカルロシミュレーションの結果では、
図4に示した通り、吸収係数の増加に伴い式(1)で導かれた散乱係数は、増加するという傾向が得られた。また、式(1)で散乱係数を算出する工程で、理論値の吸収係数を代入した場合は、目標値である散乱係数1.5を導き出すことが分かった。
【0065】
すなわち、上記式(1)においては、切片から吸収係数を算出する工程に改良の余地があると考えられる。
【0066】
図5では、上記式(1)で求めた吸収係数と理論上の吸収係数の相関であるが、相関係数はr
2=0.99以上であり、申し分のない相関であるが、傾きを持っていることがわかる。
【0067】
一見すると、この傾きを代入することで補正が可能に見えるが、異なる散乱係数で同様の分析を行うと、傾きに違いがみられる。
【0068】
すなわち、散乱係数が既知でなければ、一定水準以上の吸収を持つ吸収散乱複合体の散乱係数を導出することは困難である。
【0069】
これらの課題は、上記式(1)の導出における、散乱係数μs’>>吸収係数μaという条件において、この関係の具体性が不明瞭であるため生じたものである。
【0070】
ここで吸収係数μa>>散乱係数μs’という仮定を置くと、式(1)で計測される傾きの有効減衰係数μeffは、吸収係数μaに相当することとなる。すなわち以下の式である。
【0072】
つまり未知物質であっても、波長により散乱係数μs’>>吸収係数μaと、吸収係数μa>>散乱係数μs’が混在する吸収散乱複合体は、それぞれに特徴的な波長域を用いることができれば、1回の計測で、計算により2つの未知数すなわち、散乱係数と吸収係数の絶対値を精度良く導き出すことができる。
【0073】
なお、生体における吸収散乱同時分析を行うためには、散乱係数μs’>>吸収係数μaの領域の照射光の波長は750nm以上1600nm以下が望ましく、吸収係数μa>>散乱係数μs’の領域の照射光の波長は、350nm以上750nm以下, 又は、1600nm以上2000nm以下が望ましい。
【0074】
波長350nm以上750nm以下は、ヘモグロビンやタンパクなどの成分依存が多く、波長1600nm以上2000nm以下は水の吸収を対象としている。水の吸収を活用する場合は、900nm以上の波長でもよい。これは、水の吸収が広範囲に分布しているため、測定対象により計測精度向上のための散乱係数と吸収係数の強度バランスが異なるためである。
【0075】
精度向上のために、吸収係数は短波長領域と長波長領域の2種を用いてもよい。
【0076】
方法としては、まず吸収係数μa>>散乱係数μs’の領域の照射光の波長範囲にて吸収係数μaを求め、散乱係数μs’>>吸収係数μaの領域の照射光の波長範囲で、式(1)に実測の吸収係数μaを代入する。
【0077】
しかしながら、吸収係数μa>>散乱係数μs’の領域と、散乱係数μs’>>吸収係数μaの領域では波長が異なるため、実測の吸収係数μaをそのまま用いることはできない。
【0078】
そこで、例えば、吸収係数μ
a800と吸収係数μ
a650の換算係数を用いることで、吸収係数μa>>散乱係数μs’の領域の吸収係数μaから、散乱係数μs’>>吸収係数μaの領域における吸収係数μaを求め、式(1)から散乱係数μs’を求めることが可能となる。また、有効減衰係数μ
eff650=2μ
a650となる。有効減衰係数μ
eff650の値から、散乱係数を計測するための吸収係数μ
aを以下のように計算式を選択することで、散乱係数の絶対値を算出することが可能となる。
【0079】
μ
a650>0.5のとき (計算式a) μ
a800=A・μ
a650
0.5≧μ
a650≧0.1のとき (計算式b) μ
a800=B・μ
a650
μ
a650<0.1のとき (計算式c) μ
a800=C・μ
a650
A,B,Cは、それぞれの補正係数である。また、それぞれの係数は、計算式であってもよく、対数やべき乗を含んでもよく、三角関数やπ、粒子の体積補正などを含んでもよく、さらには任意の波長の吸収、散乱、減衰などでもよい。また、波長は測定対象や装置構成などにより適時組み合わせを変えてもよい。換算係数は、ROM105や記憶部107に格納されればよい。
【0080】
図6に、ファントム計測における吸収係数の補正の結果を示す。950nmにおける水の吸収による補正係数を乗じた結果、吸収係数を正確に算出できることが確認できた。
【0081】
制御部4は、散乱係数μ
aに基づいて血中脂質の濃度を算出する。散乱係数μ
sと脂質濃度とは相関があり、散乱係数μ
sの値に基づいて脂質濃度を算出することができる。実施形態では、散乱係数μ
sと散乱体濃度との関係についてあらかじめ統計データを取り、ROM105や記憶部107に等に格納して、算出された散乱係数μ
sと、格納された統計データとを比較することにより、実際の散乱体濃度を算出する。
【0082】
例えば、特定の生体A氏の血中脂質濃度を計測対象とする場合は、A氏の血中脂質濃度を採血などの他の血中脂質濃度計測方法等により事前に計測した計測結果をROM105や記憶部107に格納して、この計測結果と算出された散乱係数μ
sとを比較して、A氏個人の統計データを作成して、濃度を算出できるようにすることができる。
【0083】
若しくは、A氏の血中脂質の濃度を他の血中脂質の濃度の測定方法等により事前に測定した測定結果をROM105や記憶部107等に格納して、この測定結果と検出された光強度より得られた濃度の測定結果とを比較して、その比較により得られた濃度と、一般的な生体の場合の上記統計データにおける濃度との誤差を算出し、その誤差を修正するキャリブレーションすることで、A氏個人の統計データを作成してもよい。
【0084】
なお、統計データの形式は特に限定されるものではなく、例えば、性別、身長、体重、BMI等で分類されていてもよく、表やグラフ、関数式等を用いて算出できるようにしてもよい。
【0085】
また、臨床現場において、濃度と濁度とは同義で使われることがあり、本発明における濃度には濁度の概念も含まれる。よって、脂質濃度算出手段は、その算出結果として、濃度のみならず単位量当たりの粒子数やホルマジン濁度とすることができる。
【0086】
次に、本実施形態の散乱体濃度計測方法について説明する。
図7は、実施形態の散乱体濃度計測のフローチャートである。
【0087】
照射工程(S101)では、第1の照射部21及び第2の照射部22が、生体の照射位置に対して第1の波長の第1の照射光及び第2の波長の第2の照射光を照射する。
【0088】
第1の波長は、750nm以上1600nm以下であってよく、第2の波長は、350nm以上750nm以下, 又は、1600nm以上2000nm以下であってよい。
【0089】
光強度検出工程(S102)では、第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33が、生体から放出される相異なる波長の第1の照射光及び第2の照射光を各々受光して、各々光強度を検出する。光強度検出工程で検出された光強度は、吸収係数算出工程へと送られる。
【0090】
吸収係数算出工程(S103)では、制御部4は、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33により検出された受光強度から、傾きを求め、吸収係数を算出する。なお、光強度検出部を第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33の2つとした場合の吸収係数の算出法、及び、光強度検出部を第2の光強度検出部32の1つとした場合の吸収係数の算出法については上述した。
【0091】
散乱係数算出工程(S104)では、制御部4は、制御部4は、第1の光強度検出部31により検出された第1の照射光の光強度と、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33により検出された受光強度から算出された吸収係数と、に基づき生体内における光の散乱係数μsを算出する。散乱係数μ
sの算出法については上述した。
【0092】
散乱体濃度算出工程(S105)では、制御部4は、散乱係数μ
sに基づいて、血中の散乱体濃度を算出する。なお、血中の散乱体濃度の算出法については、上述した。散乱体濃度算出工程では、散乱係数を算出した後、脂質濃度(散乱体濃度)を算出してもよい。
【0093】
以上説明したように、本実施形態の散乱体濃度計測装置及び方法によれば、生体から放出される光強度分布を取得することで、散乱体濃度の算出が可能となる。
【0094】
次に、本発明の他の実施形態の散乱体濃度計測装置について説明をする。なお、本発明の他の実施形態の散乱体濃度計測装置の構成は、上記実施形態の散乱体濃度計測装置の構成と共通する部分もあるため、相違する部分を主に説明する。
【0095】
上記実施形態では、第1の照射部21及び第2の照射部22と、第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33と、制御部4とを一体として構成した例を示したが、これに限られず、第1の照射部21及び第2の照射部22と、第1の光強度検出部31、第2の光強度検出部32及び第3の光強度検出部33をユーザー装置として構成し、制御部4を、ユーザー装置に接続したサーバー装置に設けたシステムとしてもよい。
【0096】
図8は、実施形態の散乱体濃度計測システムの構成を示す図である。システムは、散乱体濃度計測装置200と、アクセスポイント300と、ユーザー装置400とを有する。
【0097】
散乱体濃度計測装置200は、ユーザー装置400から送信された光強度に基づいて所定の処理を行い、散乱体濃度を算出するための装置であり、具体的には、パーソナルコンピュータや、装置の台数や送受信するデータ量によってはサーバー装置が適宜用いられる。
【0098】
ユーザー装置400は、ユーザーが所持する装置であり、単独の装置である場合もあり、スマートフォン、携帯電話、腕時計等に搭載される場合もある。また、第1の照射部421と、第2の照射部422と、第1の光強度検出部431と、第2の光強度検出部432と、第3の光強度検出部433と、通信部404として、スマートフォンや携帯電話に備わるカメラや照明、通信機能等を使用してもよい。
【0099】
ユーザー装置400は、光を照射する第1の照射部421と、第2の照射部422と、第1の光強度検出部431と、第2の光強度検出部432と、第3の光強度検出部433と、通信部404とを有する。通信部404は、第1の光強度検出部431、第2の光強度検出部432、及び、第3の光検出部433とで各々検出された光強度を送信する。第1の照射部421と、第2の照射部422と、第1の光強度検出部431と、第2の光強度検出部432と、第3の光強度検出部433の構成や機能・動作は、上述した第1の照射部21と、第2の照射部22と、第1の光強度検出部31と、第2の光強度検出部32と、第3の光強度検出部33と各々同様である。
【0100】
散乱体濃度計測装置200は、通信部204と制御部203とを有する。通信部204は、通信部404から送信された光強度をアクセスポイント300を介して受信し、制御部203へ送信する。
【0101】
散乱体濃度計測装置200は、通信部204と制御部203とを有する。通信部204は、通信部404から送信された光強度をアクセスポイント300を介して受信し、制御部203へ送信する。制御部203の機能・動作は、上述した制御部103と同様である。
【0102】
次に、散乱体濃度計測装置200の制御系の構成について説明する。
図9は、実施形態の散乱体濃度計測装置200のブロック図である。システムバス209を介して、CPU(Central Processing Unit)204、ROM(Read Only Memory)205、RAM(Random Access Memory)206、記憶部207、及び、通信部(外部I/F(Interface))208が接続される。CPU204とROM205とRAM206とで制御部(コントローラー)203を構成する。
【0103】
ROM205は、CPU204により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
【0104】
RAM206は、CPU204が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリア等を有する。
【0105】
記憶部207は、予め用意された、静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。記憶部207は、HDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)等の、不揮発性に記憶する内部メモリーでよい。
【0106】
通信部(外部I/F)208は、例えばクライアント端末(PC)などの外部装置と通信するためのインターフェースである。外部I/F208は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良く、たとえば、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。
【0107】
なお、本実施形態では、ユーザー装置400から散乱体計測装置200へ、アクセスポイント300を介して光強度を送信したが、これに限られず、ユーザー装置400と散乱体計測装置200とが、ネットワークNを介さずに直接接続し、有線通信や無線通信等の手段により光強度を送信してもよい。