(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記動的パラメータは、標準偏差や、ブラウン運動や、自己相関関数や、周波数解析や、スペックルや、ドップラーシフトや、レイノルズ数や、血流量や、血液量や、脈動幅を用いて分析した、血液の動きを計測する指標である請求項1から3のいずれかに記載の脂質計測装置。
生体外から生体内に向けて、生体の所定の部位に所定の光強度で光を照射する照射部と、前記照射部による光の照射位置から所定間隔をあけて、あるいは、連続的に配置されて、前記生体から放出される1以上の位置の光強度を検出する光強度検出部と、を有する脂質計測装置のコンピュータが、
前記光強度検出部により検出された前記光強度に基づき、生体内における静的パラメータを算出する処理と、
前記静的パラメータの時間変化に基づき、血液の動きの指標である動的パラメータを算出する処理と、
前記静的パラメータ及び前記動的パラメータから、脂質計測に適した生体の部位を判定する処理と、
を行う脂質計測方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態である脂質計測装置及びその方法について、図を参照して詳細に説明をする。
【0014】
図1は、実施形態の脂質計測装置の構成を示す図である。
【0015】
図1に示すように、実施形態の脂質計測装置1は、照射部2と、光強度検出部3と、制御部4と、通知部5を有する。
【0016】
照射部2は、生体の所定の部位の生体外から生体内に向けて、所定の照射位置21に光を照射するための光源22を有する。光源22は、照射する光の波長を調整することができる。光源22は、波長範囲を血漿の無機物によって光が吸収される波長範囲以外に調整できる。光源22は、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲以外に調整できる。ここで、血液の細胞成分とは、血中の赤血球、白血球及び血小板である。血漿の無機物とは、血中の水及び電解質である。
【0017】
光源22の波長範囲は、血漿の無機物により光を吸収する波長範囲を考慮して約1400nm以下、及び、約1500nm〜約1860nmとするのが好ましい。さらに、光源22の波長範囲は、血液の細胞成分によって光が吸収される波長範囲を考慮して約580nm〜約1400nm、及び、約1500nm〜約1860nmとするのがより好ましい。
【0018】
光源22に用いられる波長範囲を、上記範囲とすることにより、後述する光強度検出部3により検出される光において、血漿の無機物による光の吸収の影響、及び、血液の細胞成分により光の吸収の影響を抑制する。これにより、物質を特定するほどの吸収は存在せず、吸収による光エネルギー損失は無視できるほど小さくなる。そのため、血中の光は血中の脂質による散乱によって遠くまで伝搬し、体外へ放出される。
【0019】
実施形態の照射部2は、後述する制御部4による散乱係数μ
s’の算出方法に応じて、光の連続的な照射や光のパルス状の照射等の光を照射する時間長さを任意に調整することができる。照射部2は、照射する光の強度または光の位相を任意に変調することができる。
【0020】
照射部2は、波長が固定された光源22を用いてもよい。照射部2は、波長が異なる複数の光源あるいは複数の波長の光を混合したものであってもよい。照射部2は、例えば、蛍光灯、LED、レーザー、白熱灯、HID、ハロゲンランプ等である。照射部2の照度は、制御部4により制御されてもよいし、別途制御回路を設けてもよい。
【0021】
光強度検出部3は、生体から生体外に放出される光を受光して、その光強度を検出する。複数の光強度検出部3を用いる場合には、光強度検出部3は、照射位置21を略中心として各々異なる距離に設置される。
図1に示すように、実施形態では、照射位置21から所定の間隔で同一面上でかつ直線状に、第1の光強度検出部31及び第2の光強度検出部32が順に並べられる。光強度検出部3は、フォトダイオードやCCDやCMOSでよい。
【0022】
図1に示すように、実施形態では、照射位置21から第1の光強度検出部31による第1の検出位置331までの距離を第1の照射検出間距離ρ1とし、照射位置21から第2の光強度検出部32による第2の検出位置332までの距離を第2の照射検出間距離ρ2とする。
【0023】
図2に示すように、光を生体に照射する照射位置21と、生体中の血液(図中のE)から放出される光強度を検出する検出位置31との間に所定の距離ρを設ける。所定の距離ρを設けることにより、照射した光(図中のA)が生体表面及び表面近傍の散乱体により反射して直接的に生体から放出される光(図中のB)の影響を抑制する。照射した光が、リポ蛋白等の脂質が存在する深さに達したのち、血液中の脂質(図中のD)によって光が反射する。脂質による光の反射による散乱を経て、生体から放出される後方散乱光(図中のC)による光強度を検出する。また、照射位置21と検出位置31との距離ρを長くすることで、光路長は長くなる。このため、脂質との衝突回数が増え、検出される光は散乱の影響を多く受ける。距離ρを長くすることにより、これまでは弱く、検出しにくかった散乱の影響が捉えやすくなる。
【0024】
また、
図3に示すように、照射部2と光強度検出部3とで生体(図中のE)を挟み込み、照射部2からの光を光強度検出部3が検出する配置でもよい。
【0025】
計測対象であるリポ蛋白は、アポ蛋白等に覆われた球状構造をしている。リポ蛋白は血中において固体のような状態で存在する。リポ蛋白は、光を反射する性質を有する。特に、粒子径や比重の大きいカイロミクロン(CM)やVLDL等は中性脂肪(TG)を多く含み、光をより散乱させ易い特性を有する。よって、光強度検出部3により検出される光強度には、リポ蛋白による光の散乱の影響が含まれる。
【0026】
なお、複数の検出位置31を設ける場合の配列は、照射位置21を略中心として各々異なる距離に配置されるのであれば直線状に限定されるものではなく、円状、波状、ジグザグ状など、適宜選択することができる。また、照射位置21から検出位置31までの第1の照射検出間距離ρ1や第2の照射検出間距離ρ2、検出位置331、332同士の間隔は、一定の間隔に限定されるものではなく、連続的でもよい。
【0027】
次に、脂質計測装置1の制御系の構成について説明する。
図4は実施形態の脂質計測装置1のブロック図である。システムバス42を介して、CPU(Central Processing Unit)41、ROM(Read Only Memory)43、RAM(Random Access Memory)44、記憶部45、外部I/F(Interface)46、照射部2、光強度検出部3、及び、通知部5が接続される。CPU41とROM43とRAM44とで制御部(コントローラー)4を構成する。
【0028】
ROM43は、CPU41により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
【0029】
RAM44は、CPU41が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリア等を有する。
【0030】
記憶部45は、予め用意された、静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。記憶部45は、HDD(Hard Disk Drive)や、フラッシュメモリや、SSD(Solid State Drive)等の、不揮発性に記憶する内部メモリーでよい。
【0031】
外部I/F46は、例えばクライアント端末(PC)などの外部装置と通信するためのインターフェースである。外部I/F46は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良く、たとえば、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。
【0032】
制御部4は、光強度検出部3により検出された光強度に基づき生体内における静的パラメータを算出する。上述のとおり、光強度検出部3により検出された光強度は、リポ蛋白による光の散乱の影響が含まれる。そのことから散乱係数μ
s’を算出する。なお、実施形態における静的パラメータは、一般的な散乱過程の効率を数値化したものに限定されるものではなく、散乱現象を考慮して散乱の影響を一定の条件下で数値化したものも含む。以下、詳細に説明する。
【0033】
図1に示すように、実施形態における制御部4は、光強度比又は光強度差を算出する。
【0034】
制御部4は、光強度検出部3により検出された複数位置の光強度の比から散乱係数μ
s’を算出する。制御部4は、照射した光が、検出位置33までの距離を遠くするにつれて散乱により減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μ
s’を算出する。
【0035】
照射部2により所定の光強度の連続光を照射し、制御部4は、第1の光強度検出部31により検出された第1の光強度R(ρ1)と、第2の光強度検出部32により検出された第2の光強度R(ρ2)との比から、散乱係数μ
s’を算出する(数式1)。
(数式1)
μ
s’=R(ρ1) / R(ρ2)
【0036】
制御部4は、光強度検出部3により検出された複数位置の光強度の差から散乱係数μ
s’を算出する。制御部4は、照射した光が、検出位置33までの距離を遠くするにつれて散乱により減衰していく散乱現象に基づき散乱係数μ
s’を算出する。
【0037】
制御部4は、第1の検出位置331及び第2の検出位置332における光強度R(ρ1)と光強度R(ρ2)との差から散乱係数μ
s’を算出する(数式2)。
(数式2)
μ
s’=R(ρ1) - R(ρ2)
【0038】
なお、制御部4による散乱係数μ
s’の算出方法は、上記の各算出法によるものに限定されない。
【0039】
制御部4は、標準偏差や、ブラウン運動や、自己相関関数や、周波数解析や、スペックルや、ドップラーシフトや、レイノルズ数や、血流量や、血液量や、脈動幅などを用いて分析し、血液の動きを計測する指標である動的パラメータを算出する。動的パラメータは、血液の動きの指標である。制御部4は、光強度の計測時間を20sec以下とし、この計測時間内における光強度の変化量から、動的パラメータを算出してもよい。
【0040】
従来は、計測対象部位を計測するにあたり、時間による計測値の変動量には着目せず、平均化させた値を採用していた。しかしながら、血液計測において静脈などの血液が豊富な部位や密集している部位を計測した方が、血液情報が多く含まれるため、ノイズ要因が少なくなる。非侵襲計測において、入射した光が静脈を透過したかどうかを判断するには血流により得られる情報を取得することが望ましい。
【0041】
しかしながら、脈など、心拍による周期性を計測する場合、動脈が望ましいとされる。そのため、静脈を計測対象とする場合の位置決めは、一定時間内における、血流による受光強度の時間変化のばらつきを計測することが望ましい。
【0042】
すなわち、拍動の周期(0.5〜2.0Hz程度)が観測される場合は、皮膚層は、
脈や心拍計測に適した生体の部位であるといえる。一方、拍動の周期が見られず、周期性のない動的パラメータが静脈の位置を示す(少なくとも静脈情報に依存している)情報となり、静脈は、脂質計測に適した生体の部位であるといえる。
【0043】
なお、上記情報を区別するためには、受光部のサンプリングレートは、10msec以下が望ましく、分解能は16bit以上が望ましい。
【0044】
動的パラメータの一つとして、散乱係数μs’の変動係数CVが含まれる。制御部4は、算出された散乱係数μ
s’の時間変化から、散乱係数μs’の変動係数CVを算出する
。
【0046】
変動係数CVを算出するために、散乱係数μs’を計測する時間としては、1msec以上30sec以下、好ましくは、5msec以上25sec以下、さらに好ましくは10msec以上20sec以下とするのがよい。(なお、「sec」は「秒」の略である)
【0047】
制御部4は、静的パラメータ及び動的パラメータを算出して、静的パラメータ及び動的パラメータから脂質計測に適した部位を判定する。
【0048】
計測対象となる血液は、皮膚組織などと異なり、血管内を流動している。実施形態では、分析に当たり一定時間計測することで、動的パラメータを算出し、さらに光路に含まれるすべての散乱を示す静的パラメータを算出し、これら2つのパラメータから、各個人における脂質計測の最適部位を判定する。
【0049】
また、静的パラメータ及び動的パラメータの取得は、通信回線を介したものに限定されるものではなく、手入力してもよい。
【0050】
実施形態の記憶部45は、予め用意された静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。制御部4は、当該記憶部45の記憶されたデータと、算出された静的パラメータ及び動的パラメータを比較して、脂質計測に適した部位であるか否かを判別する。
【0051】
ここで、制御部4は、散乱係数μs’が0.4以上0.53以下、かつ、変動係数CVが、0.1%以上5.0%以下、好ましくは、散乱係数μs’が0.41以上0.51以下、かつ、変動係数CVが、0.2%以上1.5%以下、さらに好ましくは、散乱係数μs’が0.42以上0.46以下、かつ、変動係数CVが、0.5%以上1.0%以下である場合に、脂質計測に適した部位であると判定する。この数値範囲の根拠については、実施例で説明する。変動係数CVを用いる方法は、装置構成が簡便となり、計算もシンプルであることから、簡易的な手法として優れている。
【0052】
上記では、静的パラメータを散乱係数とし、動的パラメータを散乱係数の変動係数としたが、静的パラメータを、一定時間における血流量の平均値(以下、「一定時間における血流量の平均値」を「血流量の平均値」ともいう)とし、動的パラメータを一定時間における血流量の平均値の変動係数(以下、「一定時間における血流量の平均値の変動係数」を「血流量の変動係数」ともいう)とすることもできる。
【0053】
制御部4は、光強度検出部3により検出された光強度に基づき生体内における静的パラメータ(血流量の平均値)を算出する。なお、血液量を検出する場合には、受光部が1個でも可であり、入射〜受光部間距離0でも可である。
【0054】
実施形態の制御部4は、光強度検出部3により検出された光強度に基づき、血流量の平均値を算出する。血流量は、ドップラーシフトやスペックルを用いて測定しても構わない。測定原理は、一般のレーザー血流計と同様であり、光照射下において散乱物質が移動することに生じる受光成分の位相差を計測するものである(測定原理の一例のURLは、次の通りである。http://www.omegawave.co.jp/products/flo/principle.shtml)。そして、この位相差などの時間変化が血流量となる。実施形態では、この血流量をある特定の時間範囲で平均した値(すなわち、血流量の平均値)を静的パラメータとしている。
【0055】
制御部4は、静的パラメーター(血流量の平均値)から、血液の動きを計測する指標である動的パラメータ(血液量の変動係数)を算出する。
【0056】
動的パラメータの一つとして、一定時間における血流量の変動係数が含まれる。制御部4は、算出された血液量の平均値の時間変化から、血流量の変動係数を算出する
。
【0058】
血流量の変動係数を算出するために、血流量を計測する時間としては、0.5sec以上10sec以下、好ましくは、1sec以上5sec以下とするのがよい。
【0059】
制御部4は、静的パラメータ及び動的パラメータを算出して、静的パラメータ及び動的パラメータから脂質計測に適した部位を判定する。
【0060】
実施形態の記憶部45は、予め用意された静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。制御部4は、当該記憶部45の記憶されたデータと、算出された静的パラメータ及び動的パラメータを比較して、脂質計測に適した部位であるか否かを判別する。
【0061】
ここで、制御部4は、血流量の平均値が3.1mL/min以上21.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、5%以上50%以下、好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上15.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、15%以上40%以下、さらに好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上13.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、10%以上30%以下である場合に、脂質計測に適した部位であると判定する。(なお、「min」は「分」の略である。)この数値範囲の根拠については、実施例で説明する。
【0062】
実施形態の通知部5は、ブザー、バイブレータ、ランプ等である。制御部4が脂質計測に適した部位であると判別した場合に、制御部4は、通知部5にブザーを鳴らす、振動させる、又は、ランプを点灯させる。これにより、脂質計測に適した部位であることをユーザに通知する。
【0063】
以上のような構成を備える脂質計測装置1において、予め設定されているプログラムに基づいて、脂質計測装置1は脂質計測処理を実行する。
図5は、実施形態の脂質計測処理のフローチャートである。
【0064】
照射部2が照射位置21に連続光を照射する(ステップ101)。
【0065】
第1の光強度検出部31が第1の検出位置331における光強度を検出するとともに、第2の光強度検出部32が第2の検出位置332の光強度を検出する(ステップ102)。
【0066】
制御部4は、第1の検出位置331における第1の光強度と、第2の検出位置332における第2の光強度との光強度差若しくは光強度比を算出し、当該光強度差若しくは光強度比に基づいて静的パラメータ(散乱係数μ
s’)を算出する。もしくは、制御部4は第1の検出位置331における光強度、もしくは、第2の検出位置332の光強度から静的パラメータ(血流量の平均値)を算出する。(ステップ103)。
【0067】
制御部4は、静的パラメータの時間変化から血液流動の指標となる動的パラメータを算出する(ステップ104)。制御部4は、光強度の計測時間を20sec以下とし、この計測時間内における光強度の変化量から、動的パラメータを算出してもよい。
【0068】
制御部4は、静的パラメータ及び動的パラメータに基づいて、光を照射した生体の所定の部位は脂質計測に適した部位と判定する(ステップ105)。例えば、制御部4は、記憶部45に記憶された予め用意された静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータと、算出された静的パラメータ及び動的パラメータを比較して、脂質計測に適した部位であるか否かを判定する。
【0069】
静的パラメータが散乱係数μs’であり、動的パラメータが変動係数CVの場合には、制御部4は、散乱係数μs’が0.4以上0.53以下、かつ、変動係数CVが、0.1%以上5.0%以下、好ましくは、散乱係数μs’が0.41以上0.51以下、かつ、変動係数CVが、0.2%以上1.5%以下、さらに好ましくは、散乱係数μs’が0.42以上0.46以下、かつ、変動係数CVが、0.5%以上1.0%以下である場合に、脂質計測に適した部位であると判定する。
【0070】
静的パラメータが血流量の平均値であり、動的パラメータが血流量の変動係数の場合には、制御部4は、血流量の平均値が3.1mL/min以上21.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、5%以上50%以下、好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上15.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、15%以上40%以下、さらに好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上13.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、10%以上30%以下である場合に、脂質計測に適した部位であると判定する。
【0071】
制御部4は、脂質計測に適した部位であると判別された場合に、通知部5に、ブザーを鳴らす、振動させる、又は、ランプを点灯させる制御を行う(ステップ106)。
【0072】
以上説明したように、本実施形態の脂質計測装置及び作動方法によれば、静的パラメータ及び動的パラメータに基づいて、脂質計測に適切な部位か否かを判定することが可能となる。
【0073】
次に、他の実施形態の脂質計測装置について説明をする。なお、他の実施形態の脂質計測装置の構成は、上記実施形態の脂質計測装置の構成と共通する部分もあるため、相違する部分を主に説明する。
【0074】
上記実施形態では、照射部2と光強度検出部3と制御部4と通知部5を一体として構成した例を示したが、これに限られず、光を照射する照射部2と光強度検出部3と通知部5をユーザ装置として構成し、制御部4を、ユーザ装置に接続したサーバ装置に設けたシステムとしてもよい。
【0075】
実施形態のシステム構成図を
図6に示す。システムは、脂質計測装置200と、アクセスポイント300と、ユーザ装置400を有する。
【0076】
ユーザ装置400は、照射部42と光強度検出部43と制御部44と通知部45と通信部(外部I/F)46を有する。なお、照射部42と光強度検出部43と通知部45の構成と機能は上記実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
実施形態の脂質計測装置200は、ユーザ装置400に、アクセスポイント300等を介して通信可能に接続する。脂質計測装置200の制御部24は、ユーザ装置400から送信された、光強度から静的パラメータ及び動的パラメータを算出し、脂質計測に適した部位を判別する。なお、制御部24の具体的な処理の内容については、実施形態の脂質計測装置100と同様であるため説明を省略する。
【0078】
実施形態の脂質計測装置200は、例えば、サーバ装置である。実施形態の脂質計測装置200の制御系の構成について説明する。
図7は実施形態の脂質計測装置200のブロック図である。システムバス208を介して、CPU202、ROM(Read Only Memory)203、RAM(Random Access Memory)204、通信部(外部I/F(Interface))205、及び、記憶部23が接続される。CPU202とROM203とRAM204とで制御部24を構成する。
【0079】
ROM203には、CPU202により実行されるプログラムや閾値を予め記憶する。
【0080】
RAM204には、CPU202が実行するプログラムを展開するエリアと、プログラムによるデータ処理の作業領域となるワークエリアなどの様々なメモリエリアを動的に形成する。
【0081】
記憶部23は、予め用意された静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータを記憶する。記憶部23は、不揮発性に記憶する装置であればよく、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disc Drive)等の内部ストレージである。
【0082】
なお、実施形態では、データを記憶部23に記憶することとしたが、RAM204に記憶することでもよい。
【0083】
制御部24は、複数の光強度検出部43により検出された光強度から静的パラメータと動的パラメータを算出する。制御部24は、静的パラメータと動的パラメータから脂質計測に適切な部位か否かを判定する。
【0084】
通信部(外部I/F)205は、外部装置と通信するためのインターフェースである。通信部(外部I/F)205は、外部装置とデータ通信を行うインターフェースであれば良い。例えば、通信部(外部I/F)205は、外部装置にローカルに接続する機器(USBメモリ等)であっても良いし、ネットワークを介して通信するためのネットワークインターフェイスであっても良い。さらに、データ通信方式は、Wi−Fi(登録商標)通信やUSB通信でもよい。
【0085】
以上のような構成を備える脂質計測装置200において、予め設定されているプログラムに基づいて、脂質計測装置200は脂質計測処理を実行する。
【0086】
図8は、脂質計測処理のフローチャートである。
【0087】
ユーザ装置400の照射部4が照射位置に連続光を照射する(ステップ201)。
【0088】
ユーザ装置400の第1の光強度検出部41が第1の検出位置における光強度を検出するとともに、第2の光強度検出部42が第2の検出位置の光強度を検出する(ステップ202)。
【0089】
脂質計測装置200の制御部24は、第1の検出位置における第1の光強度と、第2の検出位置における第2の光強度との光強度差若しくは光強度比を算出し、当該光強度差若しくは光強度比に基づいて静的パラメータ(散乱係数μs’)を算出する。もしくは、制御部24は第1の検出位置における光強度、もしくは、第2の検出位置の光強度から静的パラメータ(血流量の平均値)を算出する。(ステップ203)。
【0090】
脂質計測装置200の制御部24は、静的パラメータの時間変化から血液流動の指標となる動的パラメータを算出する(ステップ204)。制御部4は、光強度の計測時間を20sec以下とし、この計測時間内における光強度の変化量から、動的パラメータを算出してもよい。
【0091】
脂質計測装置200の制御部24は、静的パラメータ(及び動的パラメータに基づいて、光を照射した生体の所定の部位は脂質計測に適した部位と判定する(ステップ205)。例えば、制御部24は、予め用意された静的パラメータ及び動的パラメータの適切な数値範囲のデータと、算出された静的パラメータ及び動的パラメータを比較して、脂質計測に適した部位であるか否かを判定する。
【0092】
静的パラメータが散乱係数μs’であり、動的パラメータが変動係数CVの場合には、制御部24は、散乱係数μs’が0.4以上0.53以下、かつ、変動係数CVが、0.1%以上5.0%以下、好ましくは、散乱係数μs’が0.41以上0.51以下、かつ、変動係数CVが、0.2%以上1.5%以下、さらに好ましくは、散乱係数μs’が0.42以上0.46以下、かつ、変動係数CVが、0.5%以上1.0%以下である場合に、脂質計測に適した部位であると判定する。
【0093】
静的パラメータが血流量の平均値であり、動的パラメータが血流量の変動係数の場合には、制御部24は、血流量の平均値が3.1mL/min以上21.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、5%以上50%以下、好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上15.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、15%以上40%以下、さらに好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上13.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、10%以上30%以下である場合に、脂質計測に適した部位であると判定する。
【0094】
脂質計測装置200の制御部24は、脂質計測に適した部位であると判別された場合に、ユーザ装置400の通知部45に、ブザーを鳴らす、振動させる、又は、ランプを点灯させる制御を行う(ステップ206)。
【実施例】
【0095】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0096】
非侵襲脂質計測において、同一の個人を計測しても、脂質濃度変化量を計測できる部位と計測できない部位がある。
【0097】
例えば、脂肪負荷試験の結果であるが、個人レベルでも前腕尺側静脈では計測できるが手首では、脂質濃度の変動を計測することができない。(
図9)
【0098】
また、毛細血管が比較的多い、上腕三頭筋を計測した結果においても、脂質濃度変化を確認できる被験者と、脂質濃度変化を計測できない被験者が存在する。つまり、個人内でも部位による差があり、さらに個人差が存在する。
【0099】
これらの差が存在する原因として、光計測では光路の皮膚層、血液層、及び、筋肉層に含まれる皮膚の色、皮膚や筋肉などの情報をすべて含むためである。そのため、血液層の深さや、血管の太さによる血液量の影響などを受けてしまう。(
図10)
【0100】
非侵襲脂質計測においては、脂質が含まれている血液を計測対象としているため、本発明者らは、血液の情報を効率よく取り出す方法を検討した。血液の情報を得るためには、血液の吸収を計測することも考えられる。しかしながら、その場合、ヘモグロビンの吸収波長などを用いることで、脂質計測と異なる波長を用いる点や、それに伴う装置の大型化を懸念し、本実施例では異なる手法を用いることとした。
【0101】
本発明者らが着目したのは、血液の動きである。皮膚や筋肉の散乱は、10〜20sec程度の短時間では大きく変化しないという結果が得られている。少なくとも、安静時計測においては、その前提が成り立つことは容易に想像できる。
【0102】
この10〜20sec程度の間に動きがあるのは、血流である。例えば手首と上腕尺側静脈の、空腹時における散乱係数μs’は同じくらいの値であるが、上腕尺側静脈では脂質変動を計測できるが、手首では脂質変動を計測することはできない。(
図9)
【0103】
本実施例では、
図10のように光路に含まれる皮膚層、血液層、及び、筋肉層の光減衰の要因となる物質すべての影響を含んだ静的パラメータと血液の情報を示す動的パラメータを組み合わせることで、最適計測部位の検出を試みた。なお、静的パラメータとは瞬間的な計測データであり、時間軸を考慮していない。
【0104】
そこで、血流の指標として、10秒間計測した際の散乱係数μs’の変動係数CVを比較すると、手首では変動係数CVは1.5%以上で時には30%程度のこともあった。一方、上腕尺骨側静脈では、変動係数CVは、1.5%以下であった。
【0105】
また、前腕で静脈以外の部位で計測した場合では、変動係数CVは1.5%以下であったが散乱係数が低く、脂質変動の検出は困難であった。
【0106】
上記の結果から、光路に含まれる血液の量が重要であるが、最適量が存在する。変動係数CVが1.5%を超える場合、脂質計測においては血液量が過剰であり、血流による動的散乱の影響により、相対的に脂質濃度による散乱が検出しづらくなっていると考えられる。
【0107】
一方、変動係数CVが低すぎると血流が検出できていないので、計測は難しくなる。
【0108】
空腹時における散乱係数μs’も同様で、散乱係数μs’の値が低すぎると血液計測に必要な血液を含んでおらず、また大きすぎると、血球や皮膚の色の影響で脂質を効率よく計測できない。これは、式3で示したように、光の減衰はμs’とμaの2パラメータに依存しているため、μa>>μs’では、散乱係数の影響に支障をきたすことが想定される。そのため、別手法などによりμaを計測してもよい。
【0109】
そこで、被験者3名で試験を行い、散乱係数μs’および変動係数CVの範囲を検証した。(
図11)
【0110】
その結果、以下の条件を同時に満たす計測部位であれば、脂質濃度変化を計測できることを見出した。脂質濃度変化を計測できる散乱係数μs’および変動係数CVの範囲は、散乱係数μs’が0.4以上0.53以下、かつ、変動係数CVが、0.1%以上5.0%以下の範囲(
図11中の「△」で示す領域)であり、好ましくは、散乱係数μs’が0.41以上0.51以下、かつ、変動係数CVが、0.2%以上1.5%以下の範囲(
図11中の「○」で示す領域)であり、さらに好ましくは、散乱係数μs’が0.42以上0.46以下、かつ、変動係数CVが、0.5%以上1.0%以下の範囲(
図11中の「◎」で示す領域)である。
【0111】
上記条件では、約95%が含まれる範囲であり、一般用途ではこの範囲を広げたり、あるいは医療用途では狭めるなどし、より精度を高めることも可能である。
【0112】
また、右手と左手で任意で上記条件に合致する部位を計測した結果が
図12である。
図12に示したように、散乱係数μs’と変動係数CVが近似する部位を計測することで、脂質計測に適した部位を見つけ出すことができる。なお、CV計測は検出感度、サンプリングレート、bit深さなど、装置の性能に依存することも想定されるため、装置のスペックごとに最適なCV値を求めることが望ましい。
【0113】
同様に、レーザー血流計を用いた例を、
図13に示す。脂質濃度変化を計測できる血流量の平均値及び血流量の変動係数の範囲は、血流量の平均値が3.1mL/min以上21.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、5%以上50%以下の範囲(
図13中の「△」で示す領域)であり、好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上15.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、15%以上40%以下の範囲(
図13中の「○」で示す領域)であり、さらに好ましくは、血流量の平均値が5.1mL/min以上13.0mL/min以下、かつ、血流量の変動係数が、10%以上30%以下の範囲(
図13中の「◎」で示す領域)である。
【0114】
ただし、原理の異なる手法や精度の異なる装置を用いた場合は、異なる数値設定が必要となる。
【0115】
これらの計測条件は、10sec程度計測することで判断可能であり、装置側でブザーを鳴らす、振動させる、ランプを点灯させるなどのシグナルで知らせることができる。
【0116】
また、計測条件を求めるために10secが必要というものではなく、ヒトが認知するまでの時間を考慮したものであって、装置側では、0.1〜1.0sec程度で装置側で判定させ、被計測者が3〜10sec程度、値が安定するのを確認してもよい。
【0117】
上記技術は、静脈や動脈の位置を探索することにも利用可能である。
【0118】
また受光部を、受光素子をアレイ状やCCDカメラ、CMOSカメラなどにすることで、二次元情報を取得し、上記条件1,2に記載の最適位置をプログラムで自動検出することも可能である。
【0119】
本技術では、光照射強度の受光部位の相対的な光減衰から計測可能であることから、装置構成として、光源はLEDやLDのみならず、太陽光や室内光であってもよい。この場合、計測部位を遮光し、光ファイバー等での照射や、遮光部にピンホールをあけるなどしてもよい。この場合も、光の減衰から静脈や動脈の位置を推定できる。
【0120】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。