【文献】
Methods Find. Exp. Clin. Pharmacol.,2009年,31(6),Suppl.A,p.106,Abstract No.P-051
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、特に関節痛を患う患者において、軟骨再生を促進するための有効な手段及び方法を提供することである。また本発明の目的は、特に関節痛を患う患者において、2型コラーゲン合成を促進するための手段及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、ラクトバチルス属に属する乳酸菌、特にラクトバチルス・ガセリを投与することにより、対象において軟骨再生を促進し、関節痛を改善することを見出した。具体的には、乳酸菌の投与が、2型コラーゲンの分解よりも高い2型コラーゲン合成を促進し、関節痛の炎症、痛み及びこわばりを軽減するという知見を得た。
【0008】
本発明は、限定されるものではないが、以下を包含する:
[1] ラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物を有効成分として含有する軟骨再生促進用組成物。
[2] ラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物を有効成分として含有する2型コラーゲン合成促進用組成物。
[3] 軟骨再生促進又は2型コラーゲン合成促進が、コラーゲン分解/合成比(C2C/CPII)の低下により示される、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 乳酸菌がラクトバチルス・ガセリである、[1]〜[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 乳酸菌が、ラクトバチルス・ガセリCP2305株(受託番号FERM BP-11331)若しくはその変異株、又はラクトバチルス・ガセリCP2305s株(受託番号NITE BP-1405)若しくはその変異株である、[1]〜[4]のいずれかに記載の組成物。
[5-1] 乳酸菌が死菌体である、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[6] 関節痛改善に使用するための、[1]〜[5]のいずれかに記載の組成物。
[6-1] 投与対象が関節痛を患うヒト患者又は40歳以上のヒト対象である、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[7] 組成物が、飲食品、飼料、栄養補助剤及び医薬からなる群より選択される、[1]〜[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] 飲食品が、発酵乳飲料、ヨーグルト、粉ミルク、ベビーフード、味噌汁、レトルト食品及びタブレットを含む、[7]に記載の組成物。
【0009】
[9] ラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物を対象に投与するステップを含む、対象において軟骨再生を促進する方法。
[9-1] 上記乳酸菌及び/又はその処理物を投与していない対照と比較して、上記対象における軟骨再生を促進させる、[9]に記載の方法。
[10] ラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物を対象に投与するステップを含む、対象において2型コラーゲン合成を促進する方法。
[10-1] 上記乳酸菌及び/又はその処理物を投与していない対照と比較して、上記対象における2型コラーゲン合成を促進させる、[10]に記載の方法。
[11] ラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物を対象に投与し、対象において軟骨再生を促進するステップを含む、対象の軟骨再生を促進する方法。
[12] ラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物を対象に投与し、対象において2型コラーゲン合成を促進するステップを含む、対象の2型コラーゲン合成を促進する方法。
【0010】
[13] 軟骨再生の促進に使用するためのラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物。
[14] 2型コラーゲン合成の促進に使用するためのラクトバチルス属に属する乳酸菌及び/又はその処理物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、軟骨再生促進用組成物及び2型コラーゲン合成促進用組成物が提供される。本発明の組成物は、特に中高齢者や関節痛を患う対象において関節痛を改善するために有効である。また、有効成分である乳酸菌は安全かつ安価であり、飲食品や栄養補助剤として容易に摂取することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、乳酸菌の投与によって、軟骨再生を促進し、又は2型コラーゲン合成を促進し、また関節痛の炎症、痛み及びこわばりを軽減することができ、関節痛を改善することができるという知見に基づいている。具体的には、中高齢者(40〜90歳代)を対象として、乳酸菌(ラクトバチルス・ガセリCP2305株)を投与した結果、プラセボと比較して2型コラーゲンの合成促進効果及び関節痛改善効果が認められ、乳酸菌の軟骨再生促進効果及び関節痛改善効果を確認したことに基づいている。
【0014】
したがって、本発明は、乳酸菌及び/又はその処理物を有効成分として含有する軟骨再生促進用組成物及び2型コラーゲン合成促進用組成物に関する。また本発明は、乳酸菌及び/又はその処理物を対象に投与するステップを含む、対象において軟骨再生を促進する方法、並びに対象において2型コラーゲン合成を促進する方法に関する。
【0015】
本発明において使用する乳酸菌とは、発酵によって糖類から乳酸を産生する細菌であり、特にラクトバチルス(Lactobacillus)属に属する細菌が含まれる。本発明においては、乳酸菌の菌体又はその処理物が以下に具体的に記載する目的の機能又は活性を示すものであれば、当技術分野で公知の乳酸菌株を使用することができる。なお、動物への投与・摂取を考慮して、動物において安全性が確認されている菌株であることが好ましい。
【0016】
乳酸菌のより具体的な種としては、ラクトバチルス属に属する細菌として、ラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・アミロボラス、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・パラカゼイ、ラクトバチルス・ゼアエ、ラクトバチルス・ラムノーサス、ラクトバチルス・ロイテリ、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・ガリナーラム、ラクトバチルス・ブレビス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・デルブルッキ サブスピーシーズ ブルガリカス、及びラクトバチルス・ジョンソニーなどがある。
【0017】
一実施形態において、本発明に関して目的の機能又は活性とは、対象において軟骨再生を促進する作用を意味する。また別の実施形態において、目的の機能又は活性とは、2型コラーゲン合成を促進する作用を意味する。軟骨再生の促進には、2型コラーゲン合成の促進、2型コラーゲン分解の抑制、及びその両者が含まれる。また2型コラーゲン合成及び2型コラーゲン分解は、当技術分野で公知の方法により測定することができる。
【0018】
本発明の特定の実施形態において、目的の機能又は活性とは、関節痛の改善作用を意味する。関節痛の改善とは、関節痛の炎症の軽減、関節痛の痛みやこわばりの軽減、(軟骨再生による)関節痛の原因の除去を意味し、関節痛が完全になくなることだけではなく、処理前と比べて軽減していることを包含する。炎症の軽減は、例えば炎症の指標である血液の単球やγグロブリンの低下により判定することができる。関節痛の痛み及びこわばりは、例えば変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM:Japanese Knee Osteoarthritis Measure)により評価することができる。関節痛の原因の除去は、上述したような軟骨再生の促進、2型コラーゲン合成の促進、2型コラーゲン分解の抑制を測定することによって判定することができる。
【0019】
乳酸菌の菌体又はその処理物が目的の機能又は活性を有するか否かは、ラクトバチルス属に属する乳酸菌の菌体又はその処理物を、実験動物又は被験ボランティアなどに投与し、投与前後の軟骨再生状態、2型コラーゲン合成、2型コラーゲン分解、関節痛の改善などを確認することによって評価することができる。
【0020】
本発明においては、上述したような方法により菌体又は処理物が目的の機能又は活性を有すると評価された乳酸菌であれば、任意の乳酸菌を用いることができる。そのような機能又は活性を有する好ましい乳酸菌としては、ラクトバチルス・ガセリCP2305株及びラクトバチルス・ガセリCP2305s株が挙げられる。なお、ラクトバチルス・ガセリCP2305株は、本出願人により、特許微生物の寄託のためのブダペスト条約の規定に基づく国際寄託当局である独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、2007年9月11日付で受託番号FERM BP-11331として国際寄託されている。なお、この株は、現在、国際寄託当局である独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 120号室)に移されて保管されている。またラクトバチルス・ガセリCP2305s株は、本出願人により、特許微生物の寄託のためのブダペスト条約の規定に基づく国際寄託当局である独立行政法人 製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、2012年8月14日付で受託番号NITE BP-1405として国際寄託されている。
【0021】
本発明においては、上述した具体的な菌株の変異株も、目的の機能又は活性を有する限り使用することができる。例えば、ラクトバチルス・ガセリCP2305s株はラクトバチルス・ガセリCP2305株から得られた変異株であり、CP2305株及びCP2305s株の変異株は同様に目的の機能又は活性を有している蓋然性が高く、そのような変異株も本発明において使用することができる。
【0022】
本発明において、「変異株」とは、親株から得られた任意の株を意味する。具体的には、親株から自然突然変異や化学的若しくは物理的変異原による誘発変異によって人工的に突然変異の頻度を高める方法、又は特異的な突然変異誘発技術(例えば、遺伝子組換え)により得られる株を意味する。こうした方法により生じた微生物個体を、選別、分離を繰り返し、有用な微生物個体を育種することにより、目的の機能又は活性を有する変異株を得ることができる。
【0023】
例えば、ラクトバチルス・ガセリCP2305株又はCP2305s株に由来する変異株は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法による乳酸菌のゲノムDNAの増幅断片の分子量分布により、他の乳酸菌株と容易に識別することができる。簡単に説明すると、目的とする乳酸菌について、DNA試料を調製し、特徴的な配列(例えば16S rDNA塩基配列)を有するプライマーを用いたPCR法により遺伝子増幅を行い、得られた断片の電気泳動パターンを分析することにより、CP2305株又はCP2305s株に由来する変異株であるか否かを判定することができる。ただし、変異株であるか否かを確認する方法はこの方法に限定されるものではなく、菌学的性質などの当技術分野で公知の手法により変異株であるかどうかを確認することができる。
【0024】
乳酸菌は、乳酸菌の培養に通常用いられる培地を使用して、適当な条件下で培養することにより調製することができる。培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、乳酸菌の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよく、当業者であれば使用する菌株に適切な公知の培地を適宜選ぶことができる。炭素源としてはラクトース、グルコース、スクロース、フラクトース、ガラクトース、廃糖蜜などを使用することができ、窒素源としてはカゼインの加水分解物、ホエータンパク質加水分解物、大豆タンパク質加水分解物等の有機窒素含有物を使用することができる。また無機塩類としては、リン酸塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどを用いることができる。乳酸菌の培養に適した培地としては、例えばMRS液体培地、GAM培地、BL培地、Briggs Liver Broth、獣乳、脱脂乳、乳性ホエーなどが挙げられる。好ましくは、滅菌されたMRS培地を使用することができる。
【0025】
また乳酸菌の培養は、20℃から50℃、好ましくは25℃から42℃、より好ましくは約37℃において、嫌気条件下で行う。温度条件は、恒温槽、マントルヒーター、ジャケットなどにより調整することができる。また、嫌気条件下とは、乳酸菌が増殖可能な程度の低酸素環境下のことであり、例えば嫌気チャンバー、嫌気ボックス又は脱酸素剤を入れた密閉容器若しくは袋などを使用することにより、あるいは単に培養容器を密閉することにより、嫌気条件とすることができる。培養の形式は、静置培養、振とう培養、タンク培養などである。また、培養時間は3時間から96時間とすることができる。培養開始時の培地のpHは4.0〜8.0に維持することが好ましい。
【0026】
乳酸菌の具体的な調製例を簡単に説明する。例えば乳酸菌としてラクトバチルス・ガセリCP2305株又はCP2305s株を用いる場合には、乳酸菌用培地(例えばMRS液体培地)、好ましくは食品グレードの乳酸菌用培地に乳酸菌を植菌し、約37℃で一晩(約18時間)かけて培養を行う。
【0027】
培養後、得られる乳酸菌培養物をそのまま使用してもよいし、さらに必要に応じて遠心分離などによる粗精製及び/又は濾過等による固液分離や滅菌操作を行ってもよい。なお、本発明において使用する乳酸菌は、生菌体であっても又は死菌体であってもよいし、湿潤菌体であっても又は乾燥菌体であってもよい。好ましくは、乳酸菌の死菌体を使用する。
【0028】
また、目的の機能又は活性を有する限り、乳酸菌の菌体に処理を行って得られる乳酸菌の処理物を用いてもよいし、また乳酸菌の処理物にさらなる処理を行ってもよい。そのような処理の例を以下に記載する。
【0029】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を適当な溶媒に懸濁又は希釈することによって、懸濁物又は希釈物として調製することができる。使用することができる溶媒としては、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)などが挙げられる。
【0030】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を用いて生乳、脱脂粉乳又は豆乳を発酵することにより、発酵産物を調製することができる。例えば、乳酸菌又は他の処理を行った乳酸菌を、生乳、脱脂粉乳又は豆乳などに接種し、当技術分野で公知の乳酸菌発酵条件(上述した乳酸菌培養の条件とほぼ同じである)にて発酵を行う。得られる発酵産物は、そのまま使用してもよいし、又は濾過、滅菌、希釈、濃縮などの他の処理を行ってもよい。
【0031】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を滅菌処理によって、滅菌処理物として調製することができる。乳酸菌の菌体及び/又は処理物を滅菌処理するには、例えば、濾過滅菌、放射性殺菌、加熱式殺菌、加圧式殺菌などの公知の滅菌処理を行うことができる。
【0032】
また、乳酸菌の菌体及び/又は処理物を加熱処理することにより、加熱処理物として調製することができる。加熱処理物を調製するには、乳酸菌の菌体及び/又は処理物を、一定時間、例えば約10分〜1時間(例えば約10〜20分)にわたり、高温処理(例えば80〜150℃)する。
【0033】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を破砕、細砕又は磨砕することによって、破砕物、無細胞抽出物を調製することができる。例えばそのような破砕は、物理的破砕(撹拌、フィルター濾過など)、酵素溶解処理、薬品処理、あるいは自己溶解処理などによって行うことができる。
【0034】
乳酸菌の菌体及び/又は処理物を、適当な水性溶媒又は有機溶媒を用いて抽出することによって、抽出物を得ることができる。抽出方法としては、水性溶媒又は有機溶媒を抽出溶媒として用いる抽出方法であれば特に制限されないが、上記の乳酸菌又は乳酸菌に他の処理を行った処理物を、水性又は有機溶媒(例えば水、メタノール、エタノールなど)中に浸漬、攪拌又は還流する方法など公知の方法を挙げることができる。
【0035】
また、乳酸菌の菌体及び/又は処理物を乾燥して粉状物(粉末)又は粒状物とすることができる。具体的な乾燥方法としては、特に制限されないが、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、真空乾燥、凍結乾燥などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて採用できる。その際、必要に応じて通常用いられる賦形剤を添加してもよい。
【0036】
さらに、乳酸菌の菌体及び/又は処理物から、公知の分離・精製法を用いて、目的の機能又は活性を有する成分又は画分を精製してもよい。そのような分離・精製法としては、塩沈殿及び有機溶媒沈殿などの溶解性を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーのような電荷の差を利用する方法、アフィニティクロマトグラフィーのような特異的結合を利用する方法、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなどの疎水性を利用する方法などが挙げられ、これらの方法の1種を、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
上述した処理は、単一の処理を行ってもよいし、あるいは複数を適宜組み合わせて行ってもよい。本発明においては、このような処理物も本発明の組成物に用いることができる。
【0038】
上記で得られた乳酸菌の菌体及び/又は処理物は、単独で又は他の成分と共に、本発明の組成物として又は飲食品、飼料、栄養補助剤若しくは医薬組成物に配合して継続的に摂取すると、軟骨再生促進効果及び/又は2型コラーゲン合成促進効果と、それによる関節痛改善の効果が期待される。
【0039】
本発明の組成物は、有効成分として上述した乳酸菌の菌体及び/又は処理物を含むものであるが、1種の乳酸菌の菌体及び/又は処理物を含んでもよいし、複数の異なる乳酸菌の菌体及び/又は処理物、さらには異なる処理を行った複数の乳酸菌処理物を組み合わせて含んでもよい。
【0040】
また本発明の組成物には、有効成分である乳酸菌の菌体及び/又は処理物に加えて、目的とする機能又は作用を阻害しない限り、後述する添加剤、他の公知の薬剤、栄養補助剤などを単独又は複数組み合わせて添加してもよい。
【0041】
本発明の組成物の形態は特に制限されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、粉剤、シロップ剤、ドライシロップ剤、液剤、懸濁剤、吸入剤などの経口剤、坐剤などの経腸製剤、点滴剤、注射剤などの剤型としてもよい。これらのうちでは、経口剤とするのが好ましい。なお、液剤、懸濁剤などの液体製剤は、服用直前に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁する形であってもよく、また錠剤、顆粒剤の場合には周知の方法でその表面をコーティングしてもよい。さらに、本発明の組成物は、当技術分野で公知の技術を使用して、徐放性製剤、遅延放出製剤又は即時放出製剤などの放出が制御された製剤としてもよい。
【0042】
このような剤型の組成物は、上述した成分に、通常用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、湿潤剤、安定剤、緩衝剤、滑沢剤、保存剤、界面活性剤、甘味料、矯味剤、芳香剤、酸味料、着色剤などの添加剤を剤型に応じて配合し、常法に従って製造することができる。例えば、本発明の組成物を医薬組成物とする場合には、薬学的に許容される担体又は添加剤を配合することができる。そのような薬学的に許容される担体及び添加物の例として、水、薬学的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、水溶性デキストリン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などの他、リポゾームなどの人工細胞構造物などが挙げられる。
【0043】
本発明の組成物が、上記添加剤や他の薬剤などを含む場合、有効成分である乳酸菌の菌体及び/又は処理物の含有量は、その剤型により異なるが、乳酸菌の量として、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%の範囲であり、有効成分の望ましい摂取量を摂取できるように、1日当たりの投与量が管理できる形にするのが望ましい。また、本発明の組成物に含まれる乳酸菌又は処理物は、約10
7個/g〜約10
12個/gである(処理物の場合には処理前の乳酸菌数)。
【0044】
本発明の組成物に添加又は配合することができる他の薬剤としては、限定されるものではないが、コンドロイチン、ビタミンB1、グルコサミン、ヒアルロン酸などが挙げられる。
【0045】
さらに、本発明の組成物には、医薬、飲食品、飼料の製造に用いられる種々の添加剤やその他種々の物質を共存させてもよい。このような物質や添加剤としては、各種油脂(例えば、大豆油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油などの植物油、牛脂、イワシ油などの動物油脂)、生薬(例えばロイヤルゼリー、人参など)、アミノ酸(例えばグルタミン、システイン、ロイシン、アルギニンなど)、多価アルコール(例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、糖アルコール、例としてソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトールなど)、天然高分子(例えばアラビアガム、寒天、水溶性コーンファイバー、ゼラチン、キサンタンガム、カゼイン、グルテン又はグルテン加水分解物、レシチン、澱粉、デキストリンなど)、ビタミン(例えばビタミンC、ビタミンB群など)、ミネラル(例えばカルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など)、食物繊維(例えばマンナン、ペクチン、ヘミセルロースなど)、界面活性剤(例えばグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなど)、精製水、賦形剤(例えばブドウ糖、コーンスターチ、乳糖、デキストリンなど)、安定剤、pH調製剤、酸化防止剤、甘味料、呈味成分、酸味料、着色料及び香料などが挙げられる。
【0046】
これら添加剤の配合量は、添加剤の種類と所望すべき摂取量に応じて適宜決められるが、有効成分である乳酸菌の菌体及び/又は処理物の含有量は、その剤型により異なるが、処理物の場合には処理前の乳酸菌の量として、通常は、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%の範囲となるよう配合することが望ましい。
【0047】
本発明の組成物を投与又は摂取する対象は、脊椎動物、具体的には、哺乳動物、例えばヒト、霊長類(サル、チンパンジーなど)、家畜動物(ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ニワトリなど)、ペット用動物(イヌ、ネコなど)、実験動物(マウス、ラットなど)、さらには爬虫類及び鳥類(ニワトリなど)である。特に、関節痛の改善が望まれる対象、例えば関節炎を患うヒト患者、老化による軟骨摩耗を有する中高齢者(40歳以上のヒト対象)が好ましい。
【0048】
本発明の組成物の投与又は摂取量は、対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数、投与目的(軟骨再生促進、2型コラーゲン合成促進、関節痛改善等)などにより異なり、目的とする作用を達成できるように当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。例えば、経口的に投与又は摂取する場合には、組成物に含まれる乳酸菌の菌体及び/又は処理物を、乳酸菌の量として、体重1kgあたり、通常約10
6個〜約10
12個、好ましくは約10
7個〜約10
11個投与することが望ましい。乳酸菌の菌体及び/又は処理物の含有割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すればよい。本発明の組成物は安全性の高いものであるため、摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、目的とする効果(軟骨再生促進、2型コラーゲン合成促進、関節炎の改善等)の種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。
【0049】
本発明の組成物の投与・摂取経路は特に限定されず、経口投与若しくは摂取、又は非経口投与(例えば直腸内、皮下、筋肉内、静脈内投与)などが挙げられる。本発明の組成物は、特に経口的に投与又は摂取することが好ましい。
【0050】
本発明の組成物は、軟骨再生を改善し、2型コラーゲン合成を促進し、特に関節痛に対して効果的に対処することができる。具体的には、本発明の組成物(乳酸菌及び/又はその処理物)を投与していない対照と比較して、対象における2型コラーゲン合成を促進し、炎症を抑制し、また関節痛を改善する。そのため、本発明の組成物は、対象、特に関節炎を患うヒト患者、老化による軟骨摩耗を有する中高齢者(40歳以上のヒト対象)において、関節痛を改善する効果がある。
【0051】
本発明の組成物は、他の医薬、治療又は予防法等と併用してもよい。このような他の医薬は、本発明の組成物と共に一製剤を成していてもよいし、また、別々の製剤であって同時に又は間隔を空けて投与してもよい。
【0052】
上述したように、本発明の組成物は、医薬組成物として、軟骨再生の促進、2型コラーゲン合成の促進、関節痛の改善などに使用することができる。
【0053】
また、本発明の組成物は、安全性が高く長期間の継続的摂取が容易である。そのため、本発明の組成物は、飲食品、栄養補助剤及び飼料にも使用できる。本発明の組成物は、上述したような機能又は活性を有するうえ、食経験のある乳酸菌を含むものであり、安全性が高い。さらに、様々な飲食品に添加しても飲食品自体の風味を阻害しないため、種々の飲食品に添加して継続的に摂取することができ、目的の機能又は作用の発揮が期待される。
【0054】
本発明の飲食品は、上述した本発明の組成物を含有する。本発明において、飲食品には飲料も包含される。本発明の組成物を含有する飲食品には、軟骨再生促進、2型コラーゲン合成促進、関節痛改善などの機能・活性により健康増進を図る機能性飲食品(栄養補助剤、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等)などの他、本発明の組成物を配合できる、全ての飲食品が含まれる。
【0055】
本発明の組成物を含有する飲食品として、機能性飲食品はとりわけ好ましい。本発明の「機能性飲食品」は、生体に対して一定の機能性を有する飲食品を意味し、例えば、特定保健用食品及び栄養機能食品を含む保健機能飲食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助剤、健康補助飲食品、サプリメント(例えば、錠剤、被覆錠、糖衣錠、カプセル及び液剤などの各種剤形のもの)及び美容飲食品(例えばダイエット飲食品)などのいわゆる健康飲食品全般を包含する。本発明の機能性飲食品はまた、コーデックス(FAO/WHO合同食品規格委員会)の食品規格に基づく健康強調表示(Health claim)が適用される健康飲食品を包含する。
【0056】
飲食品の具体例としては、経管経腸栄養剤などの流動食、錠菓、錠剤、チュアブル錠、錠剤、粉剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤及びドリンク剤などの製剤形態の健康飲食品及び栄養補助飲食品;緑茶、ウーロン茶及び紅茶などの茶飲料、清涼飲料、ゼリー飲料、スポーツ飲料、乳飲料、炭酸飲料、野菜飲料、果汁飲料、醗酵野菜飲料、醗酵果汁飲料、発酵乳飲料(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、乳飲料(コーヒー牛乳、フルーツ牛乳など)、粉末飲料(粉ミルクなど)、ココア飲料、牛乳並びに精製水などの飲料;バター、ジャム、ふりかけ及びマーガリンなどのスプレッド類;マヨネーズ、ショートニング、カスタードクリーム、ドレッシング類、パン類、米飯類、麺類、パスタ、味噌汁、豆腐、ヨーグルト、ベビーフード、スープ又はソース類、菓子(例えば、ビスケットやクッキー類、チョコレート、キャンディ、ケーキ、アイスクリーム、チューインガム、タブレット)などが挙げられる。
【0057】
本発明の飲食品は、上記の有効成分のほかに、その飲食品の製造に用いられる他の食品素材、各種栄養素、各種ビタミン、ミネラル、食物繊維、種々の添加剤(例えば呈味成分、甘味料、有機酸などの酸味料、安定剤、フレーバー)などを配合して、常法に従って製造することができる。
【0058】
本発明の飲食品において、有効成分である乳酸菌及び/又はその処理物の配合量は、飲食品の形態や求められる食味又は食感を考慮して、当業者が適宜定めることができる。通常は、添加される組成物中の乳酸菌の菌体及び/又は処理物の総量が、乳酸菌の量として、0.0001〜99質量%、好ましくは0.001〜80質量%、より好ましくは0.001〜75質量%となるような配合量が適当である。本発明の組成物は安全性の高いものであるため、飲食品におけるその配合量をさらに増やすこともできる。望ましい摂取量を飲食できるよう、1日当たりの摂取量が管理できる形にするのが好ましい。このように本発明の飲食品を、本発明の組成物の望ましい摂取量を管理できる形態で飲食することにより、該飲食品を用いた軟骨再生促進、2型コラーゲン合成促進、関節痛改善の方法が提供される。
【0059】
本発明の組成物は、当業者が利用可能である任意の適切な方法によって、飲食品に含有させればよい。例えば、本発明の組成物を、液体状、ゲル状、固体状、粉末状又は顆粒状に調製した後、それを飲食品に配合することができる。あるいは本発明の組成物を、飲食品の原料中に直接混合又は溶解してもよい。本発明の組成物は、飲食品に塗布、被覆、浸透又は吹き付けてもよい。本発明の組成物は、飲食品中に均一に分散させてもよいし、偏在させてもよい。本発明の組成物を入れたカプセルなどを調剤してもよい。本発明の組成物を、可食フィルムや食用コーティング剤などで包み込んでもよい。また本発明の組成物に適切な賦形剤等を加えた後、錠剤などの形状に成形してもよい。本発明の組成物を含有させた飲食品はさらに加工してもよく、そのような加工品も本発明の範囲に包含される。
【0060】
本発明の飲食品の製造においては、飲食品に慣用的に使用されるような各種添加物を使用してもよい。
【0061】
本発明の飲食品は、上述したとおり、有用な効果を奏する上に、安全性が高く副作用の心配がない。また、本発明の組成物は風味がよく、様々な飲食品に添加してもその飲食品の風味を阻害しないため、得られる飲食品は長期間の継続的摂取が容易であり、長期にわたってその有用な効果の発揮が期待される。
【0062】
さらに本発明の組成物は、ヒト用の飲食品のみならず、家畜(ウシ、ブタ、ニワトリなど)、競走馬、ペット(イヌ、ネコなど)の動物の飼料にも配合することができる。飼料は、対象がヒト以外であることを除き飲食品とほぼ等しいことから、上記の飲食品に関する記載は、飼料についても同様に当てはめることができる。
【0063】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
[試験例]
(1)乳酸菌の準備
乳酸菌として、ラクトバチルス・ガセリCP2305株(受託番号FERM BP-11331)及びラクトバチルス・ガセリCP2305s株(受託番号NITE BP-1405)を準備した。
【0065】
(2)単球及びγグロブリンの測定
対象から血液を採取し、フローサイトメトリー法にて単球数を測定した。血清を用いて免疫比濁法にてγグロブリン(免疫グロブリンIg-G、Ig-A、Ig-M)を測定した。
【0066】
(3)2型コラーゲンの分解/合成比(C2C/CPII)の測定
対象からの血清を用いて、C2C測定に関してはIBEX社の「Collagen Type II Cleavage Assay」を使用し、CPII測定に関してはUSCN社の「II型コラーゲンC末端プロペプチド(PIICP)酵素結合免疫吸着測定キット」を使用して、ELISAにて測定した。測定値の比をとりC2C/CPIIを算出した。
【0067】
(4)変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)の測定
対象が変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)質問紙に記入した結果を集計し測定した。
【0068】
[実施例1]
<試験飲料の調製>
ラクトバチルス・ガセリCP2305株及びラクトバチルス・ヘルベティカスを用いて、脱脂粉乳及び酵母エキスを、32〜37℃にて12〜22時間発酵した後、得られた発酵乳に液糖、甘味料、酸味料、安定剤、香料で調合・殺菌した。
また、プラセボは、CP2305株を使用せずにラクトバチルス・ヘルベティカスを用いて同条件にて発酵した乳を用いて、上記と同様に調合・殺菌した。
殺菌液を紙容器に200ml充填し、試験飲料及びプラセボ飲料とした。
【0069】
[実施例2]
<ヒト飲用試験>
中高齢者(40〜90歳代)34名を対象として2群に分け、ラクトバチルス・ガセリCP2305株を含有した試験飲料(菌体量として10
10個)、又はCP2305株を含まないプラセボ飲料を、1日1本で12週間にわたり投与した。
【0070】
その結果、CP2305株飲用群で、炎症の血液指標である単球、及びγグロブリンの減少が確認された(
図1及び2)。2型コラーゲンの分解/合成比(C2C/CPII)の減少も確認され(
図3)、これは2型コラーゲン合成が2型コラーゲン分解よりも促進されたことを示している。
図1は、単球の初期数に対する変化をプロットし、回帰線を最小二乗法により求めた。
図2は、飲用時間(週)に対するγグロブリンの変化を示している。
図3は、2型コラーゲンの分解/合成比(C2C/CPII)指標の初期値に対する変化をプロットし、回帰線を最小二乗法により求めた。変形性膝関節症患者機能評価尺度(JKOM)を使用したスコア値もCP2305株飲用群で減少が確認された(
図4)。
図4は、JKOMの初期値に対する変化をプロットし、回帰線を最小二乗法により求めた。これらの結果から、対象、特に中高齢者の膝の関節痛に関して改善効果があることが示された。
【0071】
[実施例3]
<ヒト飲用試験>(コラーゲン合成促進)
高齢者(70歳〜90歳)18名に対して実施例2と同様の方法で試験を実施し、コラーゲン合成指標CPIIの飲用前後の変化を確認した。
【0072】
その結果を
図5に示す。CP2305株飲用群で、コラーゲン合成指標であるCPIIの減少抑制が確認された(
図5)。よって、CP2305群は、プラセボ群と比較して、有意にコラーゲン合成を促進・維持する。