(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記イオン性化合物が、窒素原子含有イオン、リン原子含有イオン、金属イオン及び有機金属錯体イオンから選ばれる少なくとも1つに該当するカチオンを含む、請求項1に記載の電気化学発光セル。
前記イオン性化合物が、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、イミダゾリウムイオン及びピリジニウムイオンから選ばれる少なくとも1つのカチオンを含む、請求項9に記載の電気化学発光セル。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための好ましい形態を説明するが、以下の説明は本発明を特定の形態に限定する趣旨ではない。
【0012】
<電気化学発光セルの層構成>
図1に本発明の一形態に係る電気化学発光セル11の断面を示す。電気化学発光セル11は、発光層3と、発光層3に電圧を印加するための一対の電極を構成する第1電極1及び第2電極2とを備え、さらに基板5を備えている。基板5は、発光層3及び電極1、2を支持し、セル11に実用的な機械的強度を付与する役割を担う。第1電極1は陽極、第2電極2は陰極である。第1電極1及び第2電極2は、それぞれ発光層3の互いに逆方向を向く主面上に配置され、発光層3をその厚さ方向に挟持している。
【0013】
電気化学発光セル11では、第1電極1が陰極、第2電極2が陽極であってもよい。また、陽極となる電極と発光層3との間に正孔注入層を挿入してもよく、陰極となる電極と発光層3との間に電子注入層を挿入してもよい。ただし、電気化学発光セルでは正孔注入層及び電子注入層は必須の層ではない。これらの層はその一方のみ(例えば正孔注入層のみ)を配置することも可能である。電気化学発光セル11には、さらに別の層、例えば保護層その他を付加してもよい。
【0014】
<各層、基板の材料(イオン性化合物を除く)>
各層及び基板を構成するイオン性化合物以外の材料について、以下に概略を説明する。
【0015】
(基板)
基板5は、電気化学発光セルに適切な強度を与えることに適したものであれば、各種の無機、有機、金属材料を用いて構成することができる。また、透明材料により構成した透明基板を用いれば、発光層3から基板5を透過して外部へと光を導出することができる。この観点から好ましい材料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)に代表される透明樹脂、或いは各種のガラスである。勿論、基板5を配置しない側(
図1では図示上方)へと光を透過させる場合は、不透明材料により構成された基板5を用いてもよい。
【0016】
(電極)
第1電極1及び第2電極2は、各種の導電材料により構成することができる。代表的な導電材料としては、金、銀、銅、白金、パラジウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウム、セシウム、ニッケル、クロム、モリブデン、タングステン等の金属を例示できる。導電材料として上記に例示した少なくとも1つの金属を含む合金や積層膜を用いてもよい。また、ITO(錫ドープ酸化インジウム)、ATO(アンチモンドープ酸化錫)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、FTO(フッ素ドープ酸化錫)等の金属酸化物、ならびに単層および多層グラフェン等の透明導電性材料も電極1、2への使用に適している。透明基板の表面に形成する電極1、2は透明導電性材料により構成された透明電極とすることが好ましい。不透明電極材料を用いる場合の形状としてはグリッド状とすることが好ましい。第1電極1及び第2電極2の適切な膜厚は、用いる材料等や電極の形状によって相違するが、均一な薄膜電極の場合には10nm〜1μm、好ましくは20〜600nmである。グリッド状電極の場合には、10nm〜100μm、好ましくは1〜10μmである。
【0017】
(正孔注入層)
正孔注入層は、陽極から発光層への正孔の注入障壁の低下に適した材料により構成され、用いる陽極材料、発光材料等を考慮しながら必要に応じて形成される。正孔注入層を構成する代表的な材料としては、CuPc(銅フタロシアニン)、PEDOT:PSS(poly(3,4-ethylenedioxythiophene) polystyrene sulfonate)、m−MTDATA(4,4',4''-tris(N-3-methylphenyl-N-phenylamino)triphenylamine)、HAT−CN(1,4,5,8,9,11-Hexaazatriphenylenehexacarbonitrile)を挙げることができる。正孔注入層の膜厚は、例えば1〜300nm、好ましくは100nm以下である。
【0018】
(電子注入層)
電子注入層は、陰極から発光層への電子の注入障壁の低下に適した材料により構成され、用いる陰極材料、発光材料等を考慮しながら必要に応じて形成される。電子注入層を構成する代表的な材料としては、LiF、CsF、NaF、Li
2O、CaO、Liq、を挙げることができる。電子注入層の膜厚は、1〜300nm、好ましくは100nm以下である。
【0019】
(発光層/発光材料)
発光層3は、発光材料とイオン性化合物とを含んでいる。ここでは、発光材料について説明する。代表的な発光材料としては、有機高分子発光材料及び金属錯体が挙げられる。発光層の膜厚は、例えば10nm〜50μm、好ましくは50〜200nmである。
【0020】
有機高分子発光材料は、アニオン及びカチオンがドープされることにより電子及び正孔のキャリア体として作用し、電子及び正孔の結合により励起して発光する。有機高分子発光材料としては、π共役系ポリマー、具体的には、パラフェニレンビニレン、フルオレン、1,4−フェニレン、チオフェン、ピロール、パラフェニレンスルフィド、ベンゾチアジアゾール、ビオチオフィン、若しくはこれらの誘導体をモノマーとするポリマー又はコポリマーを挙げることができる。誘導体としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜18のアリール基、〔(−CH
2CH
2O−)
nCH
3〕で表される基(ただし、nが1〜10の整数である)である置換基を導入したものが挙げられる。具体的な有機高分子発光材料としては、SY(Super Yellow;poly(1,4-phenylene vinylene) derivative)、F8BT(poly(9,9′-dioctylfluorene-co-benzothiadiazole))、MEH−PPV(poly[2-methoxy-5-(2-ethylhexyloxy)-1,4-phenylenevinylene])、PDHF(poly(9,9-dihexylfluorene))を例示できる。これらの材料を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0021】
金属錯体としては、本発明において発光性を示すものであれば特に限定はないが、アルミニウム錯体、亜鉛錯体、イリジウム錯体、ルテニウム錯体、白金錯体、スカンジウム錯体、カドミウム錯体等を使用することができる。具体的には、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体、ビピリジル(bpy)若しくはその誘導体、フェナントロリン若しくはその誘導体を配位子とするルテニウム錯体、オクタエチル(ポルフィリン)白金錯体、を挙げることができる。これらの材料を適宜組み合わせて使用してもよい。ルテニウム錯体及びイリジウム錯体については、さらに、トリス(4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン)ルテニウム錯体、ビス(2,2’−ビピリジン)[4,4’−ビス(N−ヘキシルカルボキシアミド)−2,2’−ビピリジン]ルテニウム錯体、ビス(2−フェニルピリジン)(4,4’−ジ−tert−ブチル−2,2’−ビピリジン)イリジウム錯体、ビス(2−フェニルピリジン)(6−フェニル−2,2’−ビピリジン)イリジウム錯体、ビス(1−フェニルピラゾール)(5,6−ジメチル−1,10−フェナントロリン)イリジウム錯体を挙げることができる。以上の金属錯体(有機金属錯体)のカチオンと共に添加されるアニオンには特に制限はなく、ヘキサフルオロホスフェート等の公知のアニオンを使用することができる。
【0022】
発光材料として有機低分子発光材料を用いてもよい。有機低分子発光材料としては有機EL素子において発光材料として提案されている材料を適宜使用すればよい。
【0023】
発光材料として量子ドットを用いてもよい。量子ドットとしては、C、Si、Ge、Sn、P、Se、Te等の単体、2価の陽イオンになるZn、Cd、Hg、Pb等と2価の陰イオンになるO、S、Se、Te等との組み合わせ、3価の陽イオンとなるGa、In等と3価の陰イオンとなるN、P、As、Sb等との組み合わせ、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。組み合わせの具体例としては、GaN、GaP、CdS、CdSe、CdTe、InP、InN、ZnS、In
2S
3、ZnO、CdO又はこれらの複合物や混合物が挙げられる。複合的な組み合わせとしては、カルコパイライト型化合物等も好適に用いることができ、例えば、CuAlS
2、CuGaS
2、CuInS
2、CuAlSe
2、CuGaSe
2、AgAlS
2、AgGaS
2、AgInS
2、AgAlSe
2、AgGaSe
2、AgInSe
2、AgAlTe
2、AgGaTe
2、AgInTe
2、Cu(In, Al)Se
2、Cu(In, Ga)(S, Se)
2、Ag(In, Ga)Se
2、Ag(In, Ga)(S, Se)
2等を挙げることができる。ペロブスカイト型化合物も好適に用いることができ、例えばCsPbX
3(X=I,Br,Cl)あるいはCH
3NH
3PbX
3(X=I,Br,Cl)等を挙げることができる。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。
【0024】
発光層3は、発光材料及びイオン性化合物以外の材料を含んでいてもよい。発光材料及びイオン性化合物以外の材料としては、界面活性剤、導電性向上のためのポリマー成分(ポリエチレンオキシド等)、製膜性向上のためのポリマー成分(ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)等)を例示することができる。ただし、この材料は、質量基準において、発光層3全体を100部としたときに、90部以下、50部以下、特に30部以下とすることが好ましい。
【0025】
<イオン性化合物>
イオン性化合物は、反対電荷を有するイオン、すなわちアニオン及びカチオンから構成されている化合物、すなわち広義の塩である。イオン性化合物としては融点が低いイオン液体が適している。イオン液体は、一般に、融点が150℃以下、場合によっては100℃以下のイオン性化合物(広義の塩)を意味する用語である。イオン性化合物は、常温(25℃)において液体である常温イオン液体であってもよいが、常温において固体であってもよい。以下、発光層3に発光材料と共に添加されるイオン性化合物のアニオン及びカチオンを説明する。
【0026】
(アニオン)
上述したとおり、アニオンは、ケイ素原子を含有するものであればよく、例えばケイ素原子を有する基(ケイ素含有基)とアニオン基とを有する。このようなアニオンとしては、ケイ素含有基とアニオン基とが炭化水素基、好ましくはアルキレン基、で接続されているものを例示できる。ここで、アルキレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよいが、好ましくは直鎖状であり、その炭素数は、例えば2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6、特に好ましくは2〜4、とりわけ2又は3である。ケイ素含有基としては、ケイ素原子の3つの結合手がすべて炭化水素基に結合し、残り一つの結合手が上述した炭化水素基等の別の基を介してアニオン基と結合しているものを例示できる。ケイ素原子の上記3つの結合手に結合している炭化水素基は、芳香族であってもよいが脂肪族が好ましく、具体的にはアルキル基が好適である。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。アルキル基の炭素数は、例えば1〜20、好ましくは1〜8、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜4である。特に好ましいケイ素含有基は、例えば以下の式(1a)により示される。式(1a)において、ケイ素原子と結合している3つのアルキル基R
1〜R
3は、互いに独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。R
1〜R
3は、そのすべてを互いに異なるアルキル基としてもよいが、すべて同一のアルキル基とするとその合成がコスト上有利になる。ただし、R
1〜R
3から選ばれる任意の2つは、互いに結合してケイ素原子と共に環構造を構成する炭素数4又は5のアルキレン基を形成していてもよい。R
2及びR
3によりアルキレン基が形成される場合、式(1a)のケイ素含有基は、例えば式(1a−1)により示されることになる。
【0030】
アルキル基R
1〜R
3は、直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよい。R
1〜R
3は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、であり、より好ましくはメチル基(−Me)又はエチル基(−Et)であり、特に好ましくはメチル基である。合成のし易さを勘案すると、コスト面からR
1〜R
3は同一であることが好ましく、R
1〜R
3がすべてメチル基である場合、式(1a)のケイ素含有基は、式(1a−2)により示されることになる。
【0032】
ケイ素原子を有するアニオンは、従来使用されてきたイオン性化合物のアニオンと比較し、電気化学発光セルの発光効率の向上への寄与が大きいことが見出された。発光効率の向上には疎水性が高いアニオンの使用による発光材料との相溶性の向上も寄与している可能性がある。しかし、これのみが発光効率の改善の要因であるとすると、ケイ素原子を含有しない疎水性が特に高い基(例えばn−ドデシル基のような疎水性の高い長鎖アルキル基)を有するアニオンから最も高い発光効率が得られるはずである。後述する実験結果を参照すると、ケイ素原子を有するアニオンは、疎水性の程度のみでは説明できないケイ素原子の存在自体による発光効率向上への寄与を電気化学発光セルにもたらすと考えられる。
【0033】
ケイ素含有基を有するアニオンは、ケイ素含有基と共にアニオン基を含む。アニオン基としては、特に限定されないが、オキソアニオン基、特に1価のオキソアニオン基が好適である。アニオン基は、−SO
3-、−OSO
3-、又は−OP(OR
0)
O2-、特に−SO
3-又は−OSO
3-により示されることが好ましい。すなわち、アニオン基としては、スルホン酸イオン基(−SO
3-)、硫酸エステルイオン基(−OSO
3-)、リン酸エステルイオン基(OP(OR
0)O
2-)が適している。ここで、R
0は、炭素数1〜4のアルキル基であり、その具体例及び好適例は、R
1〜R
3について上述したとおりである。
【0034】
イオン性化合物のアニオンは、1価のアニオンであることが適切であり、具体的には下記式(1)により示されることが好ましい。
【0036】
ただし、nは2〜6の整数であり、A
-は1価のアニオン基である。nは、2〜4の整数、さらに2又は3、であることが好ましい。R
1〜R
3は上記と同様である。
【0037】
A
-により示されるアニオン基の具体例は上述したとおりである。A
-が上述した好ましい1価のオキソアニオン基である場合、式(1)により示されるアニオンは、それぞれ以下の式(1−1)〜(1−3)により示されることになる。R
0は上述したとおりである。
【0039】
式(1)により示されるアニオンにおいて、R
1〜R
3がすべてメチル基(−Me)であってnが3又は2であるアニオンを式(1−4)〜(1−5)に示す。
【0041】
式(1−1)〜(1−3)のいずれか1つと式(1−4)又は(1−5)とを満たすアニオンは、電気化学発光セルの発光層への添加に特に適している。
【0042】
式(1)により示されるアニオンを含むイオン性化合物は、1価又は2価以上のカチオンを含む。カチオンが1価のカチオンX
+である場合、このイオン性化合物は下記式により示されることになる。カチオンについては次項で説明する。
【0044】
(カチオン)
イオン性化合物に含まれるカチオンの種類に特に制限はなく、カチオンは無機イオンであっても有機イオンであってもよい。無機カチオンとしては、金属イオン、具体的にはLi等の1価のカチオン、Mg等の2価のカチオンを例示できる。有機イオンとしては、窒素原子(N)含有カチオン、例えば4級アンモニウムイオン等の置換アンモニウムイオン、及び、リン原子(P)含有カチオン、例えば4級ホスホニウムイオン等の置換ホスホニウムイオンを例示できる。有機イオンは、1つの分子内に2つのカチオン基を有するジカチオンであってもよい。このタイプのジカチオンの一例は、直鎖アルキレン基の両末端の炭素原子にそれぞれカチオン基が結合した化合物である。この直鎖アルキレン基の炭素数は、例えば2〜20である。また、このカチオン基は、例えば置換アンモニウム基及び/又は置換ホスホニウム基であり、好ましくは置換アンモニウム基である。なお、本明細書において、置換アンモニウムイオン(又は置換アンモニウム基)及び置換ホスホニウムイオン(又は置換ホスホニウム基)は、4級及び4級化されていないイオン(又は基)、言い換えると1〜3級アミン若しくは1〜3級ホスフィンにプロトンが付加した形のイオン(又は基)を含む意味で用いている。有機イオンの別の例は、有機金属錯体イオンである。本実施形態においてイオン性化合物に含まれるカチオンは、窒素原子含有イオン、リン原子含有イオン、金属イオン及び有機金属錯体イオンから選ばれる少なくとも1つに該当するものであってもよい。
【0045】
窒素原子含有イオン及びリン原子含有イオンは、環構造を有していてもよい。環構造を有する窒素原子含有カチオンとしては、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオンを例示できる。本明細書では、「イミダゾリウムイオン」から「ピペリジニウムイオン」までの用語は、広義の意味で使用しており、具体的には、対応する環構造(イミダゾリウムイオンであればイミダゾール環)を含むイオンを意味する。イオン性化合物は、カチオンとして、4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、イミダゾリウムイオン及びピリジニウムイオンから選ばれる少なくとも1つを含んでいることが好ましい。4級アンモニウムイオン、4級ホスホニウムイオン、イミダゾリウムイオン及びピリジニウムイオンの構造の例をそれぞれ式(2)〜(5)として以下に示す。
【0047】
式(2)において、R
4〜R
7は、それぞれ独立して、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜4、のアルキル基、又は−(CH
2)k−ORで表されるアルコキシアルキル基である。R
4〜R
7から選ばれる2つは互いに結合してこれらが結合する窒素原子(N
+)と共に環構造を形成していてもよい。kは、1又は2を示す。Rは、メチル基又はエチル基を示す。R
4〜R
7の具体例は、R
1〜R
3について上述したとおりである。アルコキシアルキル基は、具体的にはメトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基及びエトキシエチル基であり、好ましくはメトキシエチル基及びメトキシメチル基である。R
4〜R
7がすべてアルキル基の場合は、少なくとも1つがその他のものと異なる構造であるものはイオン液体を形成しやすく、この場合、炭素数の差が1以上あることが好ましく、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。
【0048】
R
4〜R
7から選ばれる2つが互いに結合して窒素原子と共に環構造を形成する場合、残りの2つも互いに結合して窒素原子をスピロ原子とするスピロ環構造が形成されていてもよい。環構造としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、アゼパン環、イミダゾリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環を例示できる。好ましい環構造は、ピロリジン環、ピペリジン環、イミダゾリジン環、ピリジン環、ピロール環、イミダゾール環であり、特に好ましい環構造は、ピロリジン環、イミダゾリジン環である。スピロ環としては、1,1'−スピロビピロリジン環が好ましい。
【0049】
式(2)で表されるカチオン(4級アンモニウムイオン)としては、下記式(2−1)〜(2−4)により示されるイオンを例示できる。
【0051】
式(2−1)〜(2−4)において、上記と同様、kは1又は2を、Rはメチル基又はエチル基をそれぞれ示す。R
21〜R
24は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を示す。R
25及びR
26は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基である。R
25及びR
26は、互いに結合してこれらが結合する窒素原子と共に環構造を形成していてもよい。
【0052】
式(2)で示されるカチオンの具体例を以下に示す。
【0054】
式(3)で示されるカチオン(4級ホスホニウムイオン)において、R
8は、炭素数1〜20のアルキル基を示す。このアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが直鎖状が好ましい。R
8は、上述した炭素数1〜4のアルキル基の具体例に加え、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−エイコシル基等であってもよい。
【0055】
R
9は、炭素数1〜20のアルキル基又は−(CH
2)
k−ORで表されるアルコキシアルキル基を示す。kは、1又は2を表す。Rは、メチル基又はエチル基を表す。炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが直鎖状が好ましい。R
9の具体例は、R
4〜R
7の具体例として上述したものが挙げられる。
【0056】
式(3)で表される4級ホスホニウムイオンのうち、R
9が−(CH
2)
k−ORで表されるアルコキシアルキル基であるものはイオン液体を形成しやすい。R
9がアルキル基の場合は、R
8とR
9とが異なる構造のものはイオン液体を形成しやすい。この場合、炭素数の差は、好ましくは1以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは5以上である。
【0057】
式(3)で示されるカチオンの具体例を以下に示す。
【化12】
【0058】
式(4)において、R
10及びR
11は、それぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基、又は−(CH
2)k−ORにより示されるアルコキシアルキル基を示す。炭素数1〜4のアルキル基の具体例及びR及びkは、上述したとおりである。
【0059】
式(5)において、R
12は、炭素数1〜8のアルキル基、又は−(CH
2)k−ORで表されるアルコキシアルキル基を示す。R及びkは上述したとおりである。炭素数1〜8のアルキル基としても上述した例示において当て嵌まるものを使用できる。
【0060】
(イオン性化合物の合成方法)
次に、上記に例示したイオン性化合物の合成方法を例示する。
【0061】
(スルホン酸イオン(SO
3-)基含有アニオンを含むイオン性化合物)
アニオンが式(1−1)により示され、カチオンが式(2)によりそれぞれ示されるイオン性化合物は、例えば特開2014−80388号公報に開示されている方法により合成することができる。特開2014−80388号公報の実施例1、2には、下記に示すイオン性化合物の合成例が開示されている。
【0063】
特開2014−82315号公報の実施例1−7にも、下記に示すイオン性化合物の合成例が開示されている。なお、下記には、特開2014−80388号公報に具体的な開示がない化合物のみを示す。
【0065】
アニオンが式(1−1)により、カチオンが式(3)によりそれぞれ示されるイオン性化合物は、例えば特開2013−14536号公報に開示されている方法により合成することができる。この公報の実施例には、下記に示すイオン性化合物の合成例が実施例1、2として開示されている。実施例1、2では、得られたイオン性化合物が液体であったことが確認されている。
【0067】
「Bu」はブチル基を示す。以降、上記2つの常温イオン液体を、「BDDP・TMSC3SO3」、「BHDP・TMSC3SO3」と表記することがある。
【0068】
特開2013−14536号公報に開示されている方法を、3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸ナトリウムに代えて2−(トリメチルシリル)−1−エタンスルホン酸ナトリウムを用いた以外は同様に実施すれば、下記に示すイオン性化合物を製造できる。
【0070】
以降、上記2つの常温イオン液体を、「BDDP・TMSC2SO3」、「BHDP・TMSC2SO3」と表記することがある。
【0071】
アニオンが式(1−1)により、カチオンが式(4)によりそれぞれ示されるイオン性化合物の合成方法を以下に例示する。この合成例では、下記に示すイオン性化合物を合成した。
【0073】
イオン交換水で洗浄済みの陰イオン交換樹脂(DS−2、オルガノ(株)製40mL(イオン交換水を加えた状態での容量、以下同様))に、エチルメチルイミダゾリウムクロライド(東京化成工業(株)製)3.0gの15mL水溶液を加え、数時間放置した。DS−2をろ別後、ろ液を新たに用意した洗浄済みのDS−2 40mLに加えた。数時間放置後、DS−2をろ別した。次に、ろ液をDS−2 150mL(溶離液:イオン交換水)を充填したカラムに通し、アルカリ性を示す範囲のろ液を集め、完全にクロライドが水酸化物に置換したエチルメチルイミダゾリウムヒドロキシド水溶液を得た。
【0074】
イオン交換水で洗浄済みの陽イオン交換樹脂(アンバーリスト15JS−HG・DRY、オルガノ(株)製)25mL(イオン交換水を加えた状態での容量、以下同様)に3ー(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム(東京化成工業(株)製、DSSNa)4.0gの65mL水溶液を加え、数時間放置した。15JS−HG・DRYをろ別後、ろ液を新たに用意した洗浄済みの15JS−HG・DRY 25mLに加えた。数時間放置後、15JS−HG・DRYをろ別した。次にろ液を15JS−HG・DRY 100mL(溶離液:イオン交換水)を充填したカラムに通し、酸性を示す範囲のろ液を集め、完全にナトリウムが水素に置換した3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸水溶液を得た。
【0075】
得られたエチルメチルイミダゾリウムハイロドキサイド水溶液と3−(トリメチルシリル)−1−プロパンスルホン酸水溶液とを混合し、pHを6〜8に調整し、この混合溶液から水を、初期はエバポレータ、その後は真空ポンプを用いて除去し、上記のイオン性化合物を白色固体として得た(収量5.3g、収率92%、DSSNa基準)。上記の製造例を参照すれば、アニオンがケイ素含有スルホン酸イオンであってカチオンがイミダゾリウムイオンである各種のイオン性化合物を得ることができる。
【0076】
アニオンが式(1−1)により、カチオンが式(5)によりそれぞれ示されるイオン性化合物の合成方法は、公知の方法、例えばピリジンとハロゲン化アルキルとの反応で所望のピリジニウム塩を合成後、上述のイミダゾリウム塩に準じた方法で得ることができる。
【0077】
(硫酸エステルイオン(OSO
3-)基含有アニオンを含むイオン性化合物)
アニオンが式(1−2)により示されるイオン性化合物は、例えば以下の方法により合成することができる。この方法は、下記のイオン性化合物を得るための合成例である。
【0079】
上記イオン性化合物のカチオンに含まれるアルキル基はすべて直鎖である。以下、上記の常温イオン液体を「BDDP・TMSC3SO4」と表記することがある。
【0080】
トリメチルシリルプロパノール(シグマアルリドリッチ製)1.0当量、アミド硫酸(和光純薬工業(株)製)1.1当量及び尿素(和光純薬工業(株)製)0.2当量を、窒素雰囲気下で混合し、撹拌しながら150℃まで加熱した。150℃到達後、6時間撹拌加熱を継続し、その後室温まで放冷した。酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)を得られた固体が完全に浸る程度にまで加え、薬さじ等で固体を崩した。撹拌を1時間実施した後、減圧ろ過により固体分をろ別し、乾燥した。若干尿素を含む状態で、下記化合物Aを得た(収率79%)。
【0082】
得られた上記化合物A1.0当量に対し、ドデシルトリブチルホスホニウムクロライドが1.0当量となるようにヒシコーリンPX−412C(日本化学工業(株)製、ドデシルトリブチルホスホニウムクロライドの50%水溶液)を加え、30分間撹拌した。2層分離した反応液に、酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)をヒシコーリンPX−412Cと同容量加え、さらに3時間撹拌した。静置後、下層の水層を分離し、有機層にイオン交換水(ヒシコーリンPX−412Cの半分の容量)と上記化合物A0.15当量とを加えた。3時間撹拌後、再び分液し、有機層を水で4回洗浄した。有機層からエバポレータ、続いて真空ポンプを用い、溶媒及び水分を除去し、無色透明液体であるイオン性化合物を得た(収率92%)。
【0083】
また、ヒシコーリンPX−412CをヒシコーリンPX−416C(日本化学工業(株)製、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライドの50%水溶液)に代えた以外は、上記と同様に実施する合成例からは、無色透明液体として下記のイオン性化合物を得ることができる。
【0085】
以下、上記の常温イオン液体を「BHDP・TMSC3SO4」と表記することがある。
【0086】
硫酸エステルイオン含有アニオンを含むその他のイオン性化合物は、スルホン酸イオン含有アニオンを含むイオン性化合物について上述した合成例、或いは後述する合成例を適宜参照して合成することができるため、ここでは説明を省略する。
【0087】
(リン酸エステルイオン(OP(OR
0)O
2-)基含有アニオンを含むイオン性化合物)
アニオンが式(1−3)により示されるイオン性化合物は、例えば、下記スキームAに従って合成することができる。
【0089】
R
0、R
1〜R
3、R
21〜R
24及びnは、上述したとおりである。上記では式(2−1)についてのスキームを示したが、別のカチオンについても同様のスキームを適用できる。例えば式(2−2)、(2−4)のカチオンについては、これらのカチオンからR
21を除いた化合物をNR
22R
23R
24に代えて使用すればよい。R
0とR
21が同一の場合にこの合成法が特に好ましいが、それ以外の場合でも混合物が得られた場合はカラムクロマトグラフィー等公知の精製法を適宜もちいて分離し目的物を得ることが出来る。また、式(3)、(4)、(5)により示されるカチオンを含むイオン性化合物を得たい場合には、3級ホスフィン、1−アルキルイミダゾール、ピリジンをそれぞれ使用すればよい。
【0090】
スキームAは、無溶媒でも溶媒を使用しても進行させることができる。反応温度は、通常60〜120℃、好ましくは80〜100℃である。反応時間は、反応の進行具合に合わせ適宜定めればよいが、通常数時間〜十数時間である。
【0091】
スキームAに用いるリン酸エステルは、公知の別の方法で合成することもできるが、下記スキームBに従って合成することができる。
【0093】
ここでもR
0、R
1〜R
3、R
21及びnは、上述したとおりである。Lは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子である。
【0094】
スキームBは、市販の原料と、リン酸エステル合成法に使用される酸捕捉剤とを用いて実施することができる。スキームBも、無溶媒でも溶媒を使用しても進行させることができる。
【0095】
アニオンが式(1−3)により示されるイオン性化合物は、イオン交換樹脂を用いた中和法を利用することによって製造してもよい。この方法により式(3)により示されるカチオンを含むイオン性化合物を得る場合には、例えば、以下に示す2つの化合物、上述の合成法で合成したケイ素含有リン酸エステル塩及び入手容易な4級ホスホニウム塩を使用することができる。ここで、Zは任意のアニオンである。Zは、ハロゲン原子イオン、特に塩化物イオン、臭化物イオンが好ましい。
【0097】
中和法は、上記の2つの化合物(塩)を、それぞれ陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂を用いて、ケイ素含有リン酸エステル塩(P−O
-)をケイ素含有リン酸基含有エステル(P−OH)に、4級ホスホニウム塩(Z
-)を4級ホスホニウム水酸化物(OH
-)に変更し、その後、両者を混合すればよい。
【0098】
以下にアニオンが式(1−3)により示されるイオン性化合物の合成例を示す。まず下記に示すケイ素含有リン酸エステルを合成した。
【0100】
3−トリメチルシリル−1−プロパノール(関東化学(株)製)1.00質量部及びジメチルクロロホスフェート(シグマアルドリッチ社)1.21質量部を反応容器に投入し、氷冷攪拌下、ピリジン(和光純薬工業(株)製)0.66質量部を徐々に滴下し加えた。滴下終了後そのまま終夜攪拌し、反応液に水を投入し反応停止した。酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)を加え2回抽出を行い、集めた有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製)を用い脱水した。これを減圧ろ過後、ろ液をエバポレータで濃縮し、残留分を容器を移し替えて減圧蒸留にかけた。沸点105〜6℃/3mmHgの留分をとり、目的物である上記ケイ素含有リン酸エステルを1.06質量部得た(収率59%)。
【0101】
以下は、下記のイオン性化合物の合成例である。
【0103】
ピロリジン(和光純薬工業(株)製)1.51質量部と塩化2−メトキシエチル(関東化学(株)製)1.00質量部とを混合し、還流しながら5時間反応させた。反応後、反応液は2層に分離したが、しばらく放冷すると下層は固化した。デカンテーションにより上層のみ回収し、減圧蒸留により精製を行った。この蒸留にて目的物であるN−2−メトキシエチルピロリジン(沸点76℃/蒸気圧45mmHg)を0.96質量部得た(収率70%)。得られたN−2−メトキシエチルピロリジン1.00質量部に、上記で得たケイ素含有リン酸エステルを1.65質量部加え、攪拌下、100℃で5時間反応させた。反応液を室温に戻した後、少量の酢酸エチルを加え粘度を低下させ、分液ロートに移した。これにヘキサンを加えると2層分離した。下層を取り、少量の酢酸エチルを加え粘度を低下させ、分液ロートに移す作業を更に2回繰り返し、下層を洗浄した。下層を真空乾燥し、ほぼ定量的(1.53質量部、収率99%)に目的物である上記イオン性化合物を得た。このイオン性化合物は常温で液体であった。
【0104】
N−2−メトキシエチルピロリジンをトリエチルアミン(和光純薬工業(株)製)に変えた以外は上記と同様の合成法により下記に示すイオン性化合物をほぼ定量的に得ることもできた。
【0106】
以下は、下記に示すイオン性化合物の合成例である。下記イオン性化合物のカチオンに含まれるアルキル基はすべて直鎖である。
【化28】
【0107】
イオン交換水で洗浄、その後メタノール(和光純薬工業(株))で溶媒置換済みの陰イオン交換樹脂(DS−2、オルガノ(株))16mL(メタノールを加えた状態での容量、以下同様)に、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株))4.0gの12mLメタノール溶液を加え、一晩放置した。DS−2をろ別後、ろ液を新たに用意した洗浄及びメタノール置換済みのDS−2 16mLに加えた。一晩放置後、DS−2をろ別した。次にろ液をDS−2 32mL(溶離液:メタノール)を充填したカラムに通し、アルカリ性を示す範囲のろ液を集め、完全にブロマイドが水酸化物に置換したトリブチルドデシルホスホニウムヒドロキシドのメタノール溶液を得た。
【0108】
イオン交換水で洗浄済みの陽イオン交換樹脂(アンバーリスト15JS-HG・DRY、オルガノ(株)製)17mL(イオン交換水を加えた状態での容量、以下同様)にケイ素含有リン酸塩(化26)14.5gを18mLの水に溶解した水溶液を加え、6時間攪拌した。15JS-HG・DRYをろ別後、ろ液を新たに用意した洗浄済みの15JS-HG・DRY17mLに加えた。終夜攪拌後、15JS-HG・DRYをろ別、白濁したろ液を得た。ろ液を分液ロートに移し、酢酸エチルで抽出を行った。分液した水層は再度酢酸エチル抽出を行い、各抽出液(有機層)を集め3回水洗浄を行い、完全にカチオン部が水素イオン(プロトン)に置換した上記イオン性化合物に相当する酸の酢酸エチル溶液を得た。
【0109】
以下、(化28)に示した常温イオン液体を「BDDP・TMSC3PO4」と表記することがある。
【0110】
トリブチルドデシルホスホニウムヒドロキシドのメタノール溶液と、上記で得た酸の酢酸エチル溶液とをpHを6〜8の範囲に入るよう混合した。この混合溶液を、初期はエバポレータ、その後、真空ポンプを用いて溶媒除去し、目的物である上記イオン性化合物を粘性液体として得た(収量4.3g、トリブチルドデシルホスホニウムブロミド基準で収率81%)。
【0111】
トリブチルドデシルホスホニウムブロミドをトリブチルヘキサデシルホスホニウムブロミド(東京化成工業(株))に変更した以外は上記と同様の合成法により、下記に示すイオン性化合物を得ることもできた(収率93%)。このイオン性化合物は常温で液体であった。ここでも下記イオン性化合物のカチオンに含まれるアルキル基はすべて直鎖である。
【0113】
リン酸エステルイオン基含有アニオンを含むその他のイオン性化合物は、上述のスキームと上述した合成例を適宜参照して合成することができるため、ここでは説明を省略する。
【0114】
<発光材料とイオン性化合物との混合比率>
発光層3における発光材料とイオン性化合物との比の最適値は用いる発光材料とイオン性化合物の組合せごとに変化する。発光材料とイオン性化合物との比は、一般に、発光材料の単位質量(1g)当たりのイオン性化合物のモル数(mol/g)により表示して、好ましくは1.0×10
-5〜1.0×10
-2であり、より好ましくは5.0×10
-5〜5.0×10
-3、さらに好ましくは7.0×10
-5〜3.0×10
-3、特に好ましくは1.0×10
-4〜1.0×10
-3、とりわけ好ましくは1.2×10
-4〜5.0×10
-4、場合によっては1.5×10
-4〜4.0×10
-4である。
【0116】
本形態の電気化学発光セル11は、例えば以下の製造方法により製造できる。まず、第1電極1が設けられた基板5を準備し、第1電極1を必要に応じて所定の形状にパターニングする。パターニングされた第1電極1は、例えばITOのフォトリソグラフィー法又はフォトリソグラフィー法とリフトオフ法との組み合わせにより得ることができる。
【0117】
次に、第1電極1上に発光層3を形成する。発光層は発光層形成溶液を用いたいわゆる湿式成膜により成膜するとよい。発光層形成溶液は、例えば有機溶媒にイオン性化合物と発光材料とを溶解させて調製することができる。有機溶媒は、溶解させるべき材料の種類に応じて適宜選択すればよいが、特に有機高分子発光材料を用いる場合には、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメチルクロライド、クロロベンゼン、クロロホルム等を用いるとよい。発光層形成溶液の塗布方法は、特に制限はないが、例えばスピンコーティング法、ロールコーティング等を適用すればよい。溶液を塗布した後、必要に応じて加熱して有機溶媒を蒸発させることにより、発光層3が形成される。なお、発光層形成溶液の調製及び塗布は、低湿度雰囲気、特に水分率100ppm以下の雰囲気、例えば湿度を制限した不活性ガス雰囲気下において実施することが好ましい。不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウム等のいわゆる希ガスに加え、窒素を用いてもよい。
【0118】
次に、発光層3上に第2電極2を形成する。第2電極2は、例えばマスクを用いた真空蒸着法による金属膜、代表的にはアルミニウム(Al)膜、の堆積により形成できる。こうして、
図1に示した電気化学発光セル11が得られる。電気化学発光セル11は、必要に応じ、発光層3の膜質改善のために真空乾燥してもよい。真空乾燥は、常温下、或いは加熱下において実施することができる。
【実施例】
【0119】
以下の実施例及び比較例では、基板側から順に、ガラス(基板)/ITO(第1電極)/PEDOT:PSS(正孔注入層)/SY及びイオン性化合物(発光層)/Al(第2電極)の構造の電気化学発光セルを作製した。
【0120】
(実施例1)
市販のITO膜付きガラス基板(ジオマテック(株)社製、ITO膜厚150nm)の上に、正孔注入層(PEDOT:PSS/Heraeus(株)社製)をスピンコート法により成膜した(膜厚は50nm)。SY(Super Yellow/Merck(株)社製)をジクロロベンゼンで溶解させて0.46重量%の溶液を調製した。SYのジクロロベンゼン溶液とBDDP・TMSC3SO3のジクロロベンゼン溶液(濃度約18mmol/kg)とが質量比で15:1となるように混合して、発光層形成溶液とした。この混合溶液において、SY1g当たりに添加されたBDDP・TMSC3SO3のモル数は2.6×10
-4molである。次に発光層形成溶液をPEDOT:PSS層の上にスピンコートして発光層を成膜した。発光層の塗布後に70℃に熱したホットプレート上で30分加熱し、ジクロロベンゼンを除去し、SY:BDDP・TMSC3SO3からなる膜厚100nmの発光層を形成した。この発光層上に厚み100nmのAl電極を真空蒸着法により形成し、電気化学発光セルを作製した。なお、発光層に使用したBDDP・TMSC3SO3は、上記で引用した特開2013−14536号公報に開示されている方法により合成した。
【0121】
(実施例2〜7)
BDDP・TMSC3SO3に代えて表1に示したイオン性化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、電気化学発光セルを作製し、発光特性を評価した。ただし、SY1g当たりのイオン性化合物のモル数は実施例1と同一とした。なお、各イオン性化合物は、上記で引用又は説明した方法により合成した。
【0122】
(比較例1〜7)
BDDP・TMSC3SO3に代えて表1に示したイオン性化合物を用いた以外は実施例1と同様にして、電気化学発光セルを作製し、発光特性を評価した。ただし、SY1g当たりのイオン性化合物のモル数は実施例1と同一とした。
【0123】
表1において、「BDDP」はトリブチルドデシルホスホニウムを、「BHDP」はトリブチルヘキサデシルホスホニウムを、「DDS」はドデシルスルフェートを、「PTS」はp−トルエンスルホネートを、「TF」はトリフルオロメタンスルホネートを、「PF6」はヘキサフルオロホスフェートを、「TFSI」はビス(トリフルオロ
メタンスルホニル)イミドを、「BS」はブタンスルホネート(ブタンスルホン酸)を、それぞれ意味する。なお、DDSが含むアルキル基はn−ドデシル基である。
【0124】
なお、比較例記載の各ホスホニウム塩は以下の様な既知の合成法で各々合成した。疎水性であるBDDP・PF6(比較例4)、BDDP・TFSI(比較例5)、BHDP・PF6(比較例6)については対応するホスホニウムハライド水溶液に各塩に対応するアニオンのリチウム塩をモル比で若干過剰混合し反応させた。一晩撹拌した後、2層分離した有機層を分液、水層を酢酸エチルで抽出し、合せた有機層を蒸留水で5回程度洗浄後、溶媒留去、100℃程度に加熱下真空ポンプを用いて水分を除去して得た。BDDP・TFSIは常温で液体、BDDP・PF6、BHDP・PF6は固体であった。なお、対応するアニオンのリチウム塩、リチウムヘキサフルオロホスフェート(LiPF6)もしくはリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)はいずれも工業的に市販されており、一般に入手可能なものである。
【0125】
その他のBDDP・DDS(比較例1)、BDDP・PTS(比較例2)、BDDP・TF(比較例3)、BHDP・BS(比較例7)は前述のアニオンが式(1−1)のイオン性化合物の合成法に準じて中和法にて合成した。BDDP・DDS、BDDP・PTS、BDDP・TFは常温液体、BHDP・BSは固体であった。
【0126】
なお、アニオン原料は各々対応するアニオンのナトリウム塩を用いた。すなわち、DDSはドデシル硫酸ナトリウム、PTSはp−トルエンスルホン酸ナトリウム、TFはトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム、BSはブタンスルホン酸ナトリウムを使用して合成した。これらのアニオンは試薬として販売されており、一般に入手可能なものである。
【0127】
各実施例及び比較例で作製した電気化学発光セルの発光特性(輝度−電流−電圧特性)を評価した。直流電圧は0.1Vごとに10Vまで印加した。ガラス基板を透過してくる光の輝度を測定し、1000cd/m
2発光時の発光効率を算出した。結果を表1、
図2及び
図3に示す。なお、いずれの数値も測定5回目のデータである。
【0128】
【表1】
【0129】
表1及び
図2,3より、ケイ素含有基を有するアニオンを用いた素子(実施例1〜7)はケイ素を含有しないアニオンを用いた素子(比較例1〜7)に比べ電力効率並びに電流効率が向上していることが理解できる。ケイ素含有基を有するアニオンを用いた各実施例では、アニオンに含まれるアルキル基又はアルキレン基の炭素数が個々には3以下で合計でも6以下であるのに、炭素数がその2倍程度のアルキル基を有するアニオンを用いた比較例1よりも高い発光効率が達成された。実施例1〜7の電気化学発光セルにおいて相対的に高い発光効率が達成された要因には、アニオンに含まれるケイ素元素の存在が関与していると考えられる。また、カチオンが同一で、アニオンもオキソアニオン基のみが異なる実施例1、3、7を比較すると、発光効率の改善に特に適したオキソアニオン基が−SO
3-及び−OSO
3-であることが理解できる。
【0130】
(実施例8)
SY1gに対するBDDP・TMSC3SO3及びBDDP・TMSC3SO4の添加モル数(mol/g)を1.2×10
-4、1.5×10
-4、2.0×10
-4、2.6×10
-4、2.9×10
-4とした以外は実施例1及び3とそれぞれ同様にして、電気化学発光セルを作製し、発光特性を評価した。ここで、測定中に得られた最高発光効率の結果を
図4及び
図5に示す。
【0131】
図4、5より、発光材料に対するイオン性化合物の添加量は、発光材料であるSYの単位重量あたり添加イオン性化合物のモル数(mol/g)で、概ね1×10
-4〜4.5×10
-4程度が適切であり、BDDP・TMSC3SO4については1.5×10
-4〜3.5×10
-4程度、BDDP・TMSC3SO3については2.0×10
-4〜4.0×10
-4程度が最適と考えられる。なお、精密な測定は未実施であるが、BDDP・TMSC3SO3及びBDDP・TMSC3SO4の双方について、3.7×10
-4mol/g程度を超えてイオン性化合物を添加すると、添加量を3.0×10
-4mol/gとしたときよりも、電力効率及び電流効率が大きく低下することが確認されている。