(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894158
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月23日
(54)【発明の名称】障害物を越えるための搬送車
(51)【国際特許分類】
A61G 5/06 20060101AFI20210614BHJP
A61G 5/04 20130101ALI20210614BHJP
B62B 5/02 20060101ALI20210614BHJP
【FI】
A61G5/06
A61G5/04 701
B62B5/02 D
B62B5/02 Z
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-542403(P2020-542403)
(86)(22)【出願日】2018年9月28日
(65)【公表番号】特表2021-502200(P2021-502200A)
(43)【公表日】2021年1月28日
(86)【国際出願番号】AU2018051065
(87)【国際公開番号】WO2019090385
(87)【国際公開日】20190516
【審査請求日】2020年7月29日
(31)【優先権主張番号】2017904562
(32)【優先日】2017年11月10日
(33)【優先権主張国】AU
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520152249
【氏名又は名称】オービリフト ピーティーワイ エルティーディ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,ビクター
【審査官】
西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−523605(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/059658(WO,A1)
【文献】
特開2012−161456(JP,A)
【文献】
特開平02−001269(JP,A)
【文献】
特開2014−234137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 5/00− 5/14
B62B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
障害物を越えるための搬送車であって、
第1の地面係合装置と、
第2の地面係合装置と、を含み、
前記第1の地面係合装置及び前記第2の地面係合装置は、前記搬送車が障害物を越えることを可能にするために、交互の一連の移動で移動するように動作可能であり、
前記搬送車は、前記交互の一連の移動の全体にわたって、前記第1の地面係合装置及び前記第2の地面係合装置のうち一方が地面から離れて持ち上がる際に、前記第1の地面係合装置及び前記第2の地面係合装置のうち他方のみで、搬送車が支持され、
各地面係合装置は、相互から離間される前方配置部及び後方配置部を含み、
各地面係合装置は、さらに、使用中に越える障害物の一部を収容することができる前記前方配置部と前記後方配置部との間に位置する領域に適応する障害物を含み、
前記地面係合装置は車輪を含み、
前記車輪の少なくとも一部は被駆動車輪である、搬送車。
【請求項2】
前記地面係合装置の少なくとも1つの前記前方配置部及び前記後方配置部は、梁の反対端に搭載されることによって相互から離間される、請求項1に記載の搬送車。
【請求項3】
前記梁は曲げられている、請求項2に記載の搬送車。
【請求項4】
前記第1の地面係合装置及び前記第2の地面係合装置は、前記地面係合装置の前記交互の一連の移動を生じさせる回転リンケージに接合される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項5】
前記回転リンケージは少なくとも1つの遊星ギヤセットを含む、請求項4に記載の搬送車。
【請求項6】
前記回転リンケージは、前記搬送車のシャーシに関連付けられる少なくとも1つの遊星ギヤセットと、前記地面係合装置の少なくとも1つに関連付けられる別の遊星ギヤセットとを含む、請求項5に記載の搬送車。
【請求項7】
前記地面係合装置の姿勢は調節可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項8】
前記車輪の少なくとも一部は操縦可能車輪である、請求項1に記載の搬送車。
【請求項9】
人を搬送するシートをさらに含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項10】
手動推進車輪の対をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項11】
前記手動推進車輪は取り外し可能である、請求項10に記載の搬送車。
【請求項12】
異なる動作高さの範囲を選定するために制御可能である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項13】
異なるサイズの設置面積の範囲を選定するために制御可能である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項14】
傾斜地面上の進行を補償するために傾くように調節可能である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の搬送車。
【請求項15】
前記搬送車の進行方向に平行な中心線に関して実質的に対称である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は障害物を越えるための搬送車に関する。本発明の実施形態は、階段を上がる及び下りる人を搬送車する特定の用途を発見している。しかしながら、本発明は本出願に限定されない。
【背景技術】
【0002】
車椅子の形態の搬送車は、運動制限がある人を搬送するために知られている。従来の車椅子は周知の装置であり、乗員がその手で回ることができる2つの大型の後輪と、回転することが可能である2つの小型の前輪とを含む。また、従来の車椅子が階段を上がるまたは下りるのに不適切であることが周知されている。
【0003】
車椅子のユーザによるアクセスを可能にする階段と一緒に、入り口ランプまたはその階段の代わりに提供することが、建物または好適空間を設計するとき、一般的なことになっている。それにもかかわらず、従来の車椅子を使用する人が、例えば、エレベータがない建物の階段、玄関の上がり段または縁石がある建物の階段を含む、車椅子が通り抜けできない階段または他の障害物に直面するシナリオが残っている。
【0004】
運動制限がある人が、階段をうまく通り抜けることを可能にするために、代替の種類の搬送車を提供することが試みられている。前述の試みは、トラックベース駆動システムを利用する搬送車を含む。1つ以上のトラックは外側歯が設けられる。トラックが駆動され、歯は段の角に押圧され、搬送車を階段の上方に持ち上げ、または階段の下への下降を制御する。しかしながら、係るシステムは、階段の角にかなりの損傷を生じさせる可能性がある。
【0005】
また、共通の中心の周りで同じ平面内に均一に分配される複数の車輪を含む車輪クラスタを伴う搬送車を提供することを試みている。クラスタは、階段を上げるまたは下げるために回転するように駆動される。しかしながら、車輪クラスタだけが階段上で進行するとき安定性を欠く。倒れることを防止する付属品を必要とする。また、車輪クラスタシステムは、特定の幾何学的範囲内に階段に最適に適合し、その範囲外で階段を損傷させる傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
障害物を越えるために搬送車の改善を提供する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様では、本発明は、第1の地面係合装置と、第2の地面係合装置とを含む障害物を越えるための搬送車を提供し、第1の地面係合装置及び第2の地面係合装置は、搬送車が障害物を越えることを可能にするために、交互の一連の移動で移動するように動作可能であり、搬送車は、一連の移動全体にわたって、地面係合装置の一方、次に、他方に、交互に静的に釣り合い、各地面係合装置は、相互から離間される前方配置部及び後方配置部を含み、各地面係合装置は、さらに、使用中に越える障害物の一部を収容することができる前方配置部と後方配置部との間に位置する領域に適応する障害物を含む。
【0008】
地面係合装置の少なくとも1つの前方配置部及び後方配置部は、梁の反対端に搭載されることによって相互から離間され得る。
【0009】
梁は曲がり得る。
【0010】
第1の地面係合装置及び第2の地面係合装置は、地面係合装置の交互の移動を生じさせる回転リンケージに接合され得る。
【0011】
回転リンケージは、少なくとも1つの遊星ギヤセットを含み得る。
【0012】
回転リンケージは、搬送車のシャーシに関連付けられる少なくとも1つの遊星ギヤセットと、地面係合装置の少なくとも1つに関連付けられる別の遊星ギヤセットとを含み得る。
【0013】
地面係合装置の姿勢は調節可能であり得る。
【0014】
地面係合装置は車輪を含み得る。
【0015】
車輪の少なくとも一部は被駆動車輪であり得る。
【0016】
車輪の少なくとも一部は操縦可能車輪であり得る。
【0017】
搬送車は、さらに、人を搬送するシートを含み得る。
【0018】
搬送車は、さらに、手動推進車輪の対を含み得る。
【0019】
手動推進車輪は取り外し可能であり得る。
【0020】
搬送車は、異なる動作高さの範囲を選定するために制御可能であり得る。
【0021】
搬送車は、異なるサイズの設置面積の範囲を選定するために制御可能であり得る。
【0022】
搬送車は、傾斜地面上の進行を補償するために傾くように調節可能であり得る。
【0023】
搬送車は、搬送車の進行方向に平行な中心線に関して実質的に対称であり得る。
【0024】
ここで、本発明の実施形態は、添付図を参照して、例だけとして詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図5】
図1の車椅子の駆動ユニットの1つの詳細図である。
【
図6A】
図5の駆動ユニットの遊星ギヤ装置の斜視断面図である。
【
図7】遊星ギヤセットの断面図による、
図1の車椅子のシャーシの概略図である。
【
図8a】異なる作用高さで調節された
図1の車椅子を示す。
【
図8b】異なる作用高さで調節された
図1の車椅子を示す。
【
図8c】異なる作用高さで調節された
図1の車椅子を示す。
【
図9】階段を下りる
図1の車椅子の一連の移動を示す。
【
図10】ホブバリアをまたぐ
図1の車椅子の一連の移動を示す。
【
図11】
図1の車椅子の傾き調節機能を例証する一連の構成を示す。
【
図12】手動推進車輪の対を
図1の車椅子に取り付けることを示す一連の図である。
【
図13】回転シートを伴う、車椅子の代替実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜
図3を参照すると、障害物を越えるための搬送車は、モータ付き車椅子10の形態で示される。車椅子10は、外側ボギー20、22の形態の第1の地面係合装置と、内側ボギー30の形態の第2の地面係合装置とを含む。第1の地面係合装置及び第2の地面係合装置は、以下に説明するように、搬送車が階段等の障害物を越えることを可能にするために、交互の一連の移動で移動するように動作可能である。
【0027】
車椅子10は、さらに、シート50及びユーザ制御パネル52を含む。制御パネルは、ジョイスティックと、車椅子の乗員が車椅子の移動を制御することを可能にする他の制御部とを含む。シート50は、駆動ユニット40、42に取り付けることによってシャーシ上に搭載される。シートは調節可能機構によってシャーシに取り付け、調節可能機構は、位置シート50をシャーシに対して前方または後方に調節することを可能にし、車椅子及び乗員の組み合わせの重心の制御を可能にする。
【0028】
図3に最良に見られるように、外側ボギー22は、操縦可能被駆動車輪26の形態の前方配置部と、受動車輪28の形態の後方配置部とを含む。車輪26、28は、湾曲梁24の反対端に搭載されることによって相互から離間される。明らかになるように、梁24の曲がりは、階段等の越えられる障害物の一部を収容する車輪26、28の間に位置する梁の下方の領域に適応する障害物を画定する。
【0029】
同様に、内側ボギー30は、受動車輪38の対の形態の前方配置部と、操縦可能被駆動車輪36の対の形態の後方配置部とを含む。車輪36、38は、湾曲梁34の反対端に取り付けられた横材に搭載されることによって相互から離間される。梁34の曲がりは、越えられる障害物の一部を収容する車輪36、38の間に位置する梁の下方の領域に適応する障害物を画定する。
【0030】
ここで、
図4を参照すると、梁24は、遊星ギヤセット60によって、駆動ユニット42の運搬アームに搭載される。同様に、梁21は、遊星ギヤセット62によって、駆動ユニット40の運搬アームに搭載される。駆動ユニット40、42の両方は、ダブルピニオン遊星ギヤセットを含有する。遊星ギヤセットのそれぞれは、説明されるようなギヤセットの動作を制御するために2つのクラッチに関連付けられる。適切なクラッチは、製造業者Ogura Industrial Corp(www.ogura−clutch.com)から取得され得るように、ロボット使用のための電磁型クラッチを含む。
【0031】
ここで、
図5、
図6、及び
図6Aを参照すると、駆動ユニット40は、モータA及びモータBを含む。各モータは、出力ギヤ43を駆動する内部ウォーム駆動減速ギヤボックスを含む。モータBの出力ギヤ43は
図5で可視である。各出力ギヤは、ダブルピニオン遊星ギヤセットの中心軸上で自由に回転するメインギヤ45を駆動させる。ダブルピニオン遊星ギヤセットの車軸は、太陽ギヤ48を形成する歯が設けられる。リングギヤ49は、駆動ユニット40のケースの内側に付けられる。プラネット47、47aは、クラッチによって、メインギヤ45と選択的に係合可能である運搬部上に搭載される。アーム46は、太陽ギヤ48と一体的に形成される。アーム46は、また、ボギーギヤ63を支え、ボギーギヤ63は、アーム46に回転可能に搭載され、メインギヤ45と噛合する。
【0032】
ギヤセットのダブルピニオンの性質に起因して、リングギヤ49及び太陽ギヤ48は反対方向に回転する。また、ダブルピニオンギヤセットは、リングギヤ48及び太陽ギヤ48が等しく反対方向に回転するように構成される。すなわち、1対−1の減速比である。本実施形態では、ダブルピニオン遊星ギヤセットのギヤは以下のように構成される。
【0033】
メインギヤ45は130個の歯を有する。
【0034】
プラネットギヤ47は、共通軸上に一緒に接合される12個の歯及び48個の歯のギヤを含む複合ギヤである。
【0035】
プラネットギヤ47aは26個の歯を有する。
【0037】
メインギヤ49は132個の歯を有する。
【0038】
メインギヤ63は130個の歯を有する。
【0039】
ここで、
図7を参照すると、ボギーギヤ63は、遊星ギヤセット60の太陽ギヤ68を形成する歯が設けられる遊星ギヤセット60の車軸に一体的に形成される。リングギヤ69は駆動ユニット24に付けられる。プラネット67は運搬部上に搭載される。運搬部は、クラッチによって、梁24に対して回転可能に固定されることができる。これは、車椅子が地面と係合するとき、車椅子がボギー上で静的に釣り合うことを可能にする。運搬部は、クラッチbによって、アーム46に対して回転可能に固定されることができる。これは、適切な出力トルクにおいて、ボギーのピッチの調節を可能にする。本実施形態では、遊星ギヤセットは、リングギヤ69と太陽ギヤ68との2対1の有効減速比を提供するために寸法決定される。当該比は、出力トルクを2倍にするために、回転速度を半分にすることを目標にする。本実施形態では、遊星ギヤセット60のギヤは以下のように構成される。
太陽ギヤ67は20個の歯を有する。
太陽ギヤ68は40個の歯を有する。
メインギヤ69は80個の歯を有する。
【0040】
梁21に関連付けられる遊星ギヤセット62は、遊星ギヤセット60の構成と同様のものである。クラッチk及びmの動作によって制御される。駆動ユニット40は駆動ユニット42の同一構成のものである。駆動ユニット40は、モータC及びDと、クラッチi及びjとを含む。中央ボギーの梁34は、遊星ギヤセット60、62と同様の構成である2つの遊星ギヤセットに関連付けられる。それらは、クラッチe、f、g、及びhの動作に関連付けられる。いくつかの実施形態では、梁34に関連付けられる遊星ギヤセットの1つは、省略され得る。
【0041】
車椅子10は、使用中の障害物の存在、形状、及び場所を検出するライダーシステムを含み、車椅子の移動を制御するために使用される。車椅子10は、さらに、車椅子の電子構成要素及び電気構成要素を動作させるための充電式電池の形態の搭載電力供給装置を含む。電子構成要素は、ユーザ入力に応答して、車椅子の一連の移動を行うためにプログラムされたコンピュータベース制御システムを含む。電気構成要素は、モータ、クラッチ、及びステアリングデバイスを含む。
【0042】
ここで、
図8を参照して、車椅子の高さ及び設置面積の調節を説明する。
図8aにおいて、車椅子10は、初期設定のサイズの設置面積を伴うその初期設定の中間の高さ構成で示される(設置面積は、地面に接触する車輪によって画定される領域のエリアである)。この構成は、歩道に沿った通常進行のために使用される。車椅子の高さ及び設置面積を調節するために、クラッチb、e、h、及びkは係合し、全ての他のクラッチは係脱する。モータB、Dは一方向に一緒に動作し、モータA、Cは反対方向に一緒に回るように動作する。これは、モータの組の回転方向に応じて、機構に上向きにまたは下向きにハサミのように動かせる。モータ内部のウォーム駆動は滑動を防止する。
【0043】
ハサミのような移動は、車椅子が、
図8に示される構成から、
図8bに示されるより小さい設置面積を伴う高い高さの構成まで移動することを可能にする。この構成は、バーまたは小売店のカウンタに良好であり、狭い通路の角を曲がる等、狭い空間をうまく通り抜けるのに良好である。代替として、
図8cに示されるように、車椅子は、より大きい設置面積を伴う低い高さ構成に移動することができる。この構成は、標準的な高さのデスクとともに使用されるのに良好である。また、それは、車椅子が階段登り動作の開始において選定する位置である。
【0044】
図9を参照すると、車椅子10は、階段登り動作を実行するために使用される一連のステップに示される。説明し易くするために、車椅子の乗員を示さない。ステップ01において、車椅子10は階段の最上部の近くに達し、車椅子の乗員は階段を下りることを所望する。車椅子の乗員は、ユーザ制御パネルからの関連動作を選択する。これは、搭載制御システムに一連の移動を行わせる。
【0045】
車椅子は、最初に、
図8cの低い構成に移動する。次に、ライダーシステムが、前輪26がステップ02に示される最上段の縁から離れた既定の距離であることを示すまで、車椅子は前方に移動する。
【0046】
次に、外側ボギー20、22は、地面から離れてわずかに上昇する。これは、クラッチb、d、f、g、i、及びkに係合し、モータA及びCを駆動することによって達成する。外側ボギーが地面から離れると、ボギーの姿勢は、モータB及びDを駆動させることによって、そのピッチを調節することによって調節されることができる。モータB、Dの駆動方向に応じて、外側ボギーのピッチは、時計回りまたは反時計回り方向のいずれかで調節されることができる。外側ボギーが地面から持ち上がると、内側ボギーの電動車輪36は、ライダーシステムが内側ボギーの車輪38がステップ03に示される最上段の縁から離れた既定の距離にあることを示すまで、車椅子を前方に移動させるために駆動される。
【0047】
次に、ステップ04に示されるように、車輪26が第2の階段と接触し、車輪28が最上段と接触することが検出されるまで、外側ボギー20、22はモータA、Cを駆動させることによって降下し、モータB、Dを駆動させることによって、そのピッチを調節する。最上段が、梁24の下の領域内に、外側ボギーの車輪26、28の間に収容される。
【0048】
常に、外側ボギー20、22が地面から離れて持ち上がるとき、車椅子は内側ボギー30によって静的に釣り合う。車椅子及び乗員の組み合わせの重心は、内側ボギーの車輪36、38の組によって画定される設置面積の境界内にある。
【0049】
持ち上げ順序中にクラッチd及びiに係合する目的は、アームを逆回転して駆動ユニット40及び42を回すダブルピニオン遊星ギヤセットを動作させることである。これは、回転を「なくし」、駆動ユニット及び乗客シートのレベルを維持する。
【0050】
ここで、クラッチは、内側ボギー30を持ち上げるための準備で作動する。クラッチa、c、e、h、j、及びmは係合し、残りのクラッチは開放される。ここで、モータB、Dは内側ボギー30の上昇または下降を制御する一方、モータA、Cは内側ボギー30のピッチを制御する。ライダーシステムが、車輪26が第2の段の縁から離れて既定の距離にあることを示すまで、内側ボギー30が持ち上がり、外側ボギーの被駆動車輪26は前方に駆動される。
【0051】
ステップ05に示されるように、モータB、Dの連続回転は、車輪38が3階目に接触し、車輪36が最上段に接触するように、内側ボギー30に、外側ボギー20,22を「またがせ」、内側ボギー30を降下させる。最上段及び2段目は、梁34の下の及び内側ボギーの車輪36、38の間の領域内に収容される。
【0052】
同様に、常に、内側ボギー30が地面から離れて持ち上がるとき、車椅子は外側ボギー20、22によって静的に釣り合う。車椅子及び乗員の組み合わせの重心は、外側ボギーの車輪26、28の組によって画定される設置面積の境界内にある。
【0053】
同様に、ダブルピニオン遊星ギヤセットは、アームの回転と逆に駆動ユニット40及び42を回し、駆動ユニット及び乗客シートのレベルを維持する。
【0054】
ここで、車椅子は、ボギーが階段を下りるために他方を越えて一方を交互にまたいで動作する一連の移動の繰り返しを継続する。各歩進動作の一部として、地面に接触するボギーは、そのボギーが載っている段の縁に対して前方に駆動する。ステップ09〜13の間、車椅子が平坦な地面上に徐々に歩進するとき、ボギーのピッチに対する調節は行われる。
【0055】
ステップ14において、車椅子は階段を下りることを終了し、
図8cのより低い構成で平坦な地面上にある。次に、車椅子は
図8aの通常の高さ構成に上昇し、乗員は、通常様式で、平坦な地面上で進行することを継続することができる。
【0056】
階段を下りる動作中、シートの前方及び後方の移動は、車椅子及び乗員の組み合わせの重心の場所に影響を与えるために、乗員を前方にまたは後方に移動するために制御される。
【0057】
階段を登る動作は降下動作の逆である。車椅子の乗員は、シートの後部が階段に対面するように、階段の基部まで車椅子を持っていくように、車椅子を制御する。次に、階段登り動作は開始することができ、車椅子は後方に階段を登り、乗員が外向きに対面する。
【0058】
図10を参照すると、車椅子10は、ホブバリアの形態の障害物を越える一連の移動において示される。行われる移動は、階段登り動作に関して同様である。ライダーシステムは、ホブバリアの形状及び場所を検出し、ボギーは、障害物をまたぐように順に制御される。
【0059】
図11を参照すると、車椅子10は、傾斜地面上で進行するとき、傾き調節機能を例証する一連の構成で示される。クラッチa、b、e、f、g、h、k、mが係合され、クラッチc、d、i、jが解放され、次に、モータA、B、C、Dの全てが同じ方向に動作する場合、これは、車輪に対して車椅子のシートの傾きを調節する効果をもたらす。モータが駆動される方向に応じて、シートは前方または後方に傾く。この調節モードは、傾斜地面上での進行を補償し、車椅子の乗員が、上方または下方のいずれか一方に進行するとき、背筋を伸ばして座ったままになることを可能にする。
【0060】
図12を参照すると、随意に、大型の手動車輪70の対は、車椅子をハイブリット式手動車椅子に変換するために、車椅子に取り付けられ得る。最初に、車椅子は、
図8bに示される高い構成に移動する。次に、車輪70は、外側ボギー20、22に取り付けられ得る。次に、車輪70が地面に接触するように車椅子10は降下する。手動で動作可能な車輪は、乗員が、電池寿命を節約するために、手によって車椅子を推進させることを可能にする。
【0061】
図13を参照すると、車椅子100の代替実施形態が示される。本実施形態は、シートがシャーシに旋回可能に搭載する点で上記に説明した実施形態と異なる。ユーザは、階段を上がりながらもしくは下がりながら、または他の種類の障害物を越えながら、ユーザ及びシートが横道に対面することを可能にするようにシートを回転することができる。
【0062】
本発明が車椅子を参照して説明されているが、本発明は、他の種類の搬送車の用途をもたらす。例えば、搬送車は、乗員よりもむしろ負荷を運搬するために設計され得る。搬送車は、品物もしくは他のアイテムを届けるためにまたはアイテムを周囲に運搬するために、自律的に制御され得る。搬送車は、荒れた地形にわたる探査で使用され得る。搬送車は、ロボットアーム等の他の機器を搭載するために使用され得る。搬送車の実施形態は、ミニチュア形態の玩具であり得る。
【0063】
上記に説明した実施形態では、ダブルピニオン遊星ギヤセットは搬送車のシャーシに関連付けられたものであり、シングルピニオン遊星ギヤセットは地面係合装置の少なくとも1つに関連付けられたものである。他の実施形態では、シングルピニオン遊星ギヤセットは、搬送車のシャーシに関連付けられ得る。係る実施形態では、遊び歯車は、メインギヤとボギー台車ギヤとの間に提供され得る。
【0064】
本発明の実施形態が以下の少なくとも1つの利点をもたらすことを理解することができる。
−障害物を越えながら、搬送車は、常に、少なくとも1つの地面係合装置によって静的に釣り合ったままになる。これは、階段等への損傷を回避するために、かなり軽度の移動の制御を可能にする。それは、また安定した及び直立した状態のままで、随時、搬送車が停止することも可能にする。
−搬送車は、シャーシの配向を制御することによって、搬送車上で運搬される負荷の安定性を維持することが可能である。
−搬送車は、搬送車の進行方向に平行な中心線に関して実質的に対称である。これは、平衡性及び安定性に寄与し、また、ねじり応力を減らし得る。
−ホイールベースは、障害物を越えるために展開されないとき、コンパクトな4つの車輪形態を折り畳むことができる。これは、機敏性、具体的には、閉じ込められた室内空間を改善し、従って、搬送車は、家具等に衝突することを回避することができる。
−高さは様々な使用の範囲に適合するように調節可能である。
−傾きは、傾斜地面上の進行を補償するために調節可能である。
−美学的に目立たない。コンパクトであり、平凡な通常の家具に視覚的刺激をもたらす。親しみの感情は、ユーザに対する社会的包摂を改善する。
−2つの椅子の必要性及び異なる椅子の間で移動する不便性をなくすハイブリット式手動車椅子に変換され得る。
【0065】
本明細書に含有される先行技術へのいずれかの参照は、別様に示されない限り、情報が共通の一般的な知識と認められると解釈されない。
【0066】
最終的に、様々な改変または追加は、本発明の主旨または境界から逸脱することなく、事前に説明した部分になされ得ることを認識されたい。