(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係る排水弁駆動装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
(全体構成)
図1は本発明を適用した排水弁駆動装置の斜視図である。
図2は本発明を適用した排水弁駆動装置の分解斜視図である。排水弁駆動装置1は、洗濯機に設けられた取り付け部2にボルト3を用いて固定され、洗濯機が備える排水弁を駆動する。
【0022】
図1に示すように、排水弁駆動装置1は、排水弁を駆動するための排水弁駆動部材であるスライダー10と、スライダー10を直動可能に保持するハウジング15とを備える。ハウジング15には開口部16が設けられており、スライダー10は、その一部分を開口部16からハウジング15の外側に露出させている。スライダー10は開口部16を経由する経路に沿って直動する。
【0023】
また、ハウジング15は、排水弁駆動装置1を取り付け部2に固定するための第1ボルト用貫通穴17、第2ボルト用貫通穴18および第3ボルト用貫通穴19を備える。第1ボルト用貫通穴17と第2ボルト用貫通穴18とは、スライダー10の直動方向と直交する方向で当該スライダー10を間に挟んだ両側に設けられている。第3ボルト用貫通穴19は、スライダー10の直動方向で開口部16とは反対側に位置する。ハウジング15は、ケース21と、ケース21に積層されたカバー22とから構成される。開口部16はカバー22に設けられている。
【0024】
本明細書では、スライダー10が移動する方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する2方向をY軸方向、Z軸方向とする。Y軸方向とZ軸方向は互いに直交する。+X方向は、スライダー10がハウジング15から突出する方向であり、−X方向はスライダー10がハウジング15内に引き込まれる方向である。Z軸方向は、ケース21とカバー22との積層方向である。カバー22が位置する側を+Z方向、ケース21が位置する側を−Z方向とする。また、Y軸方向の一方側を+Y方向、他方側を−Y方向とする。なお、本明細書において、CW方向、CCW方向はギア輪列32を+Z方向側から見た場合のCW方向、CCW方向である。
【0025】
図2に示すように、ハウジング15には、モータ40と、出力歯車31と、モータ40の駆動力を出力歯車31に伝達するギア輪列32と、出力歯車31の回転をスライダー10の直動に変換する回転直動変換機構33と、フレーム34と、が収容されている。モータ40はAC同期モータである。出力歯車31は、モータ40の駆動力が伝達される歯車部35と、歯車部35と同軸に延びる出力軸部36(セレーション部)を備える。出力歯車31の軸線C(回転中心線)は、Z軸方向に延びる。ケース21とカバー22とは出力歯車31の軸線C方向に積層されている。
【0026】
回転直動変換機構33は、スライダー10に設けられたラック11と、このラックに噛み合う出力ピニオン12とを備える。フレーム34は、ケース21とカバー22との積層方向でハウジング15内を部分的に仕切る板部37を備える。また、フレーム34は、板部37の+X方向の端部分に+X方向に突出する矩形の突出部38と、板部37から−Z方向に延びる一対の柱部39を備える。一方の柱部39はフレーム34の+X方向の側の端部分に位置し、他方の柱部39はフレーム34の−X方向の側の端部分に位置する。スライダー10は板部37に支持されている。スライダー10は、板部37の+Z方向の側の端面を摺動する。
【0027】
スライダー10および回転直動変換機構33は、板部37とカバー22との間に配置されている。モータ40、出力歯車31の歯車部35、ギア輪列32は、板部37とケース21との間に配置されている。出力歯車31の出力軸部36は、板部37に設けられた開口部37aを貫通して、突出部38とケース21との間に突出する。出力ピニオン12は、出力歯車31の出力軸部36に取り付けられる。ここで、モータ40、出力歯車31、ギア輪列32およびハウジング15は、ギアードモータ5を構成する。
【0028】
図1に示すように、スライダー10は、先端を除いてハウジング15内に引き込まれた引き込み位置10Aと、引き込み位置10Aから+X方向に移動してハウジング15から突出した突出位置10Bとの間を移動する。スライダー10には、図示しない連結部材を介して、排水弁が接続される。排水弁駆動装置1は、スライダー10を介して、排水弁を駆動する。
【0029】
スライダー10が突出位置10Bに位置するとき、排水弁によって排水口が閉鎖される。一方、スライダー10がハウジング15側に引き込まれると、排水弁が排水口から離れて排水が開始される。排水弁駆動装置1は、スライダー10が引き込み位置10Aまで引き込まれた状態で、モータ40への通電を継続して、スライダー10を引き込み位置10Aで保持する。また、排水弁駆動装置1は、モータ40への通電を停止してスライダー10の保持状態を解除する。これにより、外力によってスライダー10を突出位置10Bへ戻すことができるようになる。例えば、排水弁の弁体に連結されたばね力等の付勢力(外力)によってスライダー10が突出位置10Bに戻り、排水弁によって排水口が閉鎖される。
【0030】
(モータ)
図3はカバー22、フレーム34、スライダー10、および出力ピニオン12を取り外した排水弁駆動装置1の平面図である。
図4はモータ40、ギア輪列32および出力歯車31の斜視図である。
図5はモータ40およびギア輪列32を構成する各歯車の固定軸の斜視図である。
図6はギア輪列32の歯車の軸を繋ぐ断面を示した
図3のB−B線における輪列展開図である。
図4から
図6において、ギア輪列32の歯車の軸を符号D、E、F、G、Hで示す。モータ40の回転中心軸をOで示す。
【0031】
図4および
図5に示すように、モータ40はモータケース41を有する。モータケース41は、カップ状のモータケース本体41aと、モータケース本体41aの+Z方向側の端部に取り付けられるプレート41bとを備える。また、モータ40は、
図6に示すように、モータケース本体41aの内側に配置されるボビン43と、ボビン43に巻回されるステータコイル44と、ボビン43の内周側に配置されるロータ45を備える。ロータ45の回転中心軸線はO軸である。
図5に示すように、プレート41bには、ロータ45が配置される貫通穴41cが形成されている。また、プレート41bには、出力歯車31の軸受部41dが設けられている。さらに、プレート41bには、ギア輪列32を構成する歯車を回転可能に支持する固定軸の−Z方向の端部が圧入されている。固定軸の+Z方向
の端部は、フレーム34に圧入等によって固定される。各固定軸はZ軸方向に延びる。
【0032】
図6に示すように、ロータ45は、略円筒状のマグネット451と、マグネット451の内周側に配置される軸部452を備える。ロータ45は、フェライト磁石等からなるマグネット451を軸部452の−Z方向の端部にインサート成形して形成される。マグネット451と軸部452との間には誘導回転体46が配置される。誘導回転体46は、アルミニウムや銅等の非磁性金属からなる誘導リングを樹脂部材である軸部にインサート成形したものである。モータ40が駆動されてロータ45が回転すると、マグネット451と誘導回転体46の誘導リングとの間に渦電流が発生し、渦電流により磁束が生じてマグネット451に対する誘導回転体46の相対回転を妨げるブレーキ力が発生する。誘導回転体46とロータ45は、このブレーキ力(渦電流によるブレーキ力)によって共回りするように結合される。
【0033】
誘導回転体46の上端部はマグネット451の+Z方向側に突出しており、この突出部の外周面にロータギア47が形成されている。ロータギア47は、後述するように、ロータ45の回転を第2クラッチ機構80に伝達する歯車である。ロータ45の中央には、ロータ45を回転可能に支持する固定軸453が配置される。
【0034】
ここで、モータケース41を構成するモータケース本体41aとプレート41bとは磁性板からなる。プレート41bには、ロータ45が配置される貫通穴41cの縁から−Z方向に屈曲して延びる極歯が形成されている。また、モータケース本体41aには、モータケース本体41aの底部を切り起こして+Z方向に屈曲させた極歯が形成されている。プレート41bに設けられた極歯とモータケース本体41aから切り起こされた極歯は周方向に交互に配列され、マグネット451の外周面と径方向に対向する。すなわち、モータケース本体41aおよびプレート41bはステータコアを兼ねる。
【0035】
(ギア輪列)
ギア輪列32は、
図4に示すように、モータ40の回転を出力歯車31に伝達する伝達輪列50と、モータ40から伝達輪列50への回転トルクの伝達を継断する第1クラッチ機構60と、スライダー10に外部負荷が加わった場合に伝達輪列50の回転を規制してスライダー10を保持する回転規制機構70と、伝達輪列50が回転トルクを伝達する状態と伝達しない状態とを切り換える第2クラッチ機構80を備える。なお、ギア輪列32の詳細と、排水弁駆動装置1の動作の詳細は、後述する。
【0036】
(ケース)
図7(a)はケース21をカバー22が被せられる側から見た場合の斜視図であり、
図7(b)はケース21をカバー22が被せられる側とは反対側から見た場合の斜視図である。ケース21は樹脂製である。
図3および
図7に示すように、ケース21は、モータ40、ギア輪列32および出力歯車31を、出力歯車31の軸線Cと直交する径方向の外側から囲む外周側から囲むケース側枠部101を備える。また、
図7に示すように、ケース21は、ケース側枠部101の−Z方向の端縁から内側に延びる環状部102と、環状部102の内周側の端縁から−Z方向に延びる筒状部103と、筒状部103の−Z方向の端縁を塞ぐ円形板部104とを備える。筒状部103と円形板部104とは、モータ40を内周側に収容するモータ収容部を区画している。出力歯車31およびギア輪列32は、モータ収容部に収容されたモータ40の+Z方向の側に構成される。
【0037】
ケース側枠部101における+X方向の端部分には、スライダー支持部106が形成されている。スライダー支持部106は、Y軸方向およびZ軸方向に広がる板部107aと、板部107aの+Z方向の端縁に設けられた矩形の切欠き部107bを備える。切欠き部107bは板部107aにおけるY軸方向に中心に位置する。切欠き部107bには、
フレーム34の突出部38が+Z方向から挿入されている。また、フレーム34に支持されたスライダー10が+Z方向から挿入される。スライダー支持部106は、スライダー10をY軸方向の両側からスライド可能に支持する。
【0038】
ケース側枠部101におけるY軸方向の両端部分の内側には、環状部102から+Z軸方向の延びる筒部110と、筒部110の外周面からケース側枠部101に沿って+X方向の側に突出する突出部111とが設けられている。突出部111は環状部102から+Z軸方向に延びている。筒部110の+Z方向の端面である環状面部分110a(ケース側環状面部分)と突出部111の+Z方向の端面である突出面部分111a(ケース側突出面部分)とは、Z軸と直交する面であり、同一平面上に位置する。環状面部分110aおよび突出面部分111aはケース側枠部101のZ軸方向の途中位置から当該ケース側枠部101の内側に延びる。ここで、環状面部分110aと突出面部分111aとは、ケース21とカバー22とを積層させたときに、カバー22に−Z方向から当接するケース側当接面112を構成する。また、筒部110の中心穴は、それぞれハウジング15に設けられた第1ボルト用貫通穴17および第2ボルト用貫通穴18の一部分を構成するケース側貫通穴部分113である。突出部111の+Z方向の端面には、円形の凹部114が設けられている。凹部114は、―Z方向に長く延びており、その底は、突出部111の+Z方向の端面よりも環状部102に近い位置にある(
図9参照)。
【0039】
ケース側枠部101における−X方向の端部分の内側にも、環状部102から+Z軸方向の延びる筒部110が設けられている。筒部110の+Z方向の端面は、Z軸と直交する面であり、ケース側枠部101のZ軸方向の途中位置から当該ケース側枠部101の内側に延びている。筒部110の+Z方向の端面は、ケース21とカバー22とを積層させたときに、カバー22に−Z方向から当接するケース側当接面112である。また、筒部110の中心穴は、ハウジング15に設けられた第3ボルト用貫通穴19の一部分を構成するケース側貫通穴部分113である。
【0040】
なお、ケース側枠部101の内側において、筒部110および突出部111が形成されていない部分には、−Z方向の側が内側に突出する段部115が設けられている。段部115において−Z方向を向く端面115aは、Z軸方向で環状面部分110aおよび突出面部分111aと同一の高さに位置する。ケース21とカバー22とを積層させたときに、段部115の端面115aには、カバー22の−Z方向の端が僅かな隙間を開けて対向する。
【0041】
+Y軸方向の端部分に位置する筒部110とスライダー支持部106との間には環状部102から+Z軸方向の延びる支柱部116が設けられている。また、−Y軸方向の端部分に位置する筒部110とスライダー支持部106との間にも、環状部102から+Z軸方向の延びる支柱部116が設けられている。これらの支柱部116は、フレーム34の板部37を−Z方向から支持する。−Y方向の側の支柱部116とスライダー支持部106との間には、フレーム34の+X方向の側の柱部39の先端面が固定される固定部117が設けられている。環状部102における+X方向の端部分に位置する筒部110と−X方向の端部分に位置する筒部110との間には、フレーム34の−X方向の側の柱部39の先端面が固定される固定部117が設けられている。
【0042】
(カバー)
図8(a)はカバー22をケース21とは反対側から見た場合の斜視図であり、
図8(b)はカバー22をケース21の側から見た場合の斜視図である。カバー22は樹脂製である。
図8(a)に示すように、カバー22は、X軸方向およびY軸方向に広がる天井板部121と、天井板部121の外周縁から−Z方向に延びるカバー側枠部122とを備える。カバー側枠部122をZ軸方向から見た場合の輪郭形状は、ケース側枠部101の輪
郭形状に対応する。カバー側枠部122の+X方向の端部分には開口部16が設けられている。開口部16は、カバー側枠部122の−Z方向の端縁を切り欠いて形成されている。
【0043】
カバー側枠部122は、Y方向の両端部分の−Z方向(ケース21の側)の端部分に、筒部分123を備える。また、カバー側枠部122は、Y方向の両端部分の−Z方向(ケース21の側)の端部分に、筒部分123の外周面から+X方向に突出する突出部分124を備える。
図8(b)に示すように、筒部分123の−Z方向の端面である環状面部分123a(カバー側環状面部分)と、突出部分124の−Z方向の端面である突出面部分124a(カバー側突出面部分)とは、カバー側枠部122の先端面であり、同一平面上に位置する。筒部分123の環状面部分123aおよび突出部分124の突出面部分124aは、Z軸と直交する面であり、ケース21とカバー22とを積層させたときに、ケース側当接面112に+Z方向から当接するカバー側当接面125を構成する。また、筒部分123の中心穴は、ハウジング15に設けられた第1ボルト用貫通穴17および第2ボルト用貫通穴18の一部分を構成するカバー側貫通穴部分126である。突出面部分124aには、円柱形状の凸部127が設けられている。ケース21とカバー22とを積層させたときに、凸部127は、ケース側当接面112に設けられた凹部114に挿入されて嵌合する。なお、凸部127の形状は円柱形状に限られるものではない。例えば、凸部127を、円錐形状、半球形状、などとしてもよい。この場合には、凸部127をZ軸方向から見た場合の輪郭を凹部114の開口に嵌る大きさとすることが望ましい。
【0044】
また、カバー側枠部122は、
図8(b)に示すように、筒部分123および突出部分124の+Z方向(ケース21の側とは反対側)に、筒部分123および突出部分124から内側に広がる段部128を備える。段部128は−Z方向(ケース21の側)を向く第1面128aと、第1面128aの内周側の端からZ軸方向を+Z方向(ケース21とは反対側)に延びる第2面128bとを備える。ここで、カバー側枠部122の+Y方向の端部分に設けられた段部128には、第1面128aと第2面128bとの間の角部に、部分的に面取り部129が設けられている。
【0045】
さらに、カバー側枠部122は、−X方向の端部分のケース21の側の端部分に、筒部分123を備える。筒部分123の−Z方向の端面は、Z軸と直交する面であり、ケース21とカバー22とを積層させたときに、ケース側当接面112に+Z方向から当接するカバー側当接面125を構成する。筒部分123の中心穴は、ハウジング15に設けられた第3ボルト用貫通穴19の一部分を構成するカバー側貫通穴部分126である。また、カバー側枠部122は、筒部分123の+Z方向(ケース21の側とは反対側)に筒部分123から内側に広がる段部128を備える。段部128は−Z方向(ケース21の側)を向く第1面128aと、第1面128aの内周側の端からZ軸方向を+Z方向(ケース21とは反対側)に延びる第2面128bとを備える。
【0046】
また、カバー側枠部122は、その外周面におけるZ軸方向の途中位置に、+Z方向の側(ケース21から離間する側)が外側に広がる段部130を備える。段部130はケース21の側を向く端面130aを備える。
【0047】
(ハウジングの組み立ておよびハウジングの取り付け部への固定)
図9は
図1のA−A線における弁体駆動装置の断面図である。
図10は
図1のI−I線における弁体駆動装置の部分断面図である。
図1、
図2、
図9、
図10を参照して、ハウジング15の組み立ておよびハウジング15の取り付け部2への固定を説明する。
【0048】
ハウジング15を組み立てる際には、
図2に示すように、まず、モータ40、ギア輪列32および出力歯車31をケース21の内側に収納する。また、フレーム34をケース2
1によって支持し、フレーム34の板部37に設けた開口部37aに出力歯車31の出力軸部36を貫通させる。その後、出力軸部36に出力ピニオン12を接続するとともに、板部37にスライダー10を載置する。また、スライダー10のラック11と出力ピニオン12とを噛合させて、回転直動変換機構33を構成する。
【0049】
次に、ケース21にカバー22を積層する。すなわち、カバー22を、開口部16が+X方向に向く姿勢とし、カバー側枠部122の−Z方向の端部分を、ケース側枠部101の内側に挿入する。そして、
図9に示すように、カバー側当接面125とケース側当接面112とを当接させる。ここで、カバー側当接面125とケース側当接面112とを当接させると、Y軸方向の両端部分に位置するカバー側当接面125に設けた凸部127が、ケース側当接面112の凹部114に挿入されて係合する。また、カバー側貫通穴部分126とケース側貫通穴部分113とがZ軸方向で同軸に連通して、第1ボルト用貫通穴17、第2ボルト用貫通穴18および第3ボルト用貫通穴19が構成される。また、カバー側枠部122の−Z方向の先端が、ケース側枠部101の内側に設けられた段部115の端面115aに僅かな隙間を開けて対向する。さらに、
図10に示すように、ケース側枠部101の+Z方向の先端面が、カバー側枠部122の外周面に設けられた段部130の端面130aに僅かな隙間を開けて対向する。
【0050】
その後、3本のボルト3を、カバー22におけるケース21とは反対側から第1ボルト用貫通穴17、第2ボルト用貫通穴18および第3ボルト用貫通穴19のそれぞれに挿入する。また、第1ボルト用貫通穴17、第2ボルト用貫通穴18および第3ボルト用貫通穴19を貫通してケース21から−Z方向に突出するボルト3のネジ部3aを、洗濯機の取り付け部2に設けられたネジ穴2aに捩じ込んで、締め付ける。
【0051】
これにより、ケース21とカバー22とはZ軸方向で一体に固定され、ハウジング15が構成される。また、ハウジング15は、ボルト3によって取り付け部2に固定される。従って、
図1に示すように、排水弁駆動装置1は取り付け部2に固定される。ここで、排水弁駆動装置1が取り付け部2に固定された後に、スライダー10は、図示しない連結部材を介して、排水弁が接続される。従って、排水弁駆動装置1は、スライダー10を介して排水弁を駆動可能となる。
【0052】
ここで、
図10に示すように、カバー22において第1ボルト用貫通穴17が形成されている部分では、カバー側枠部122における筒部分123および突出部分124の−Z方向の側の段部128の角部に、面取り部129が設けられている。これにより、第1ボルト用貫通穴17に最も近い位置に配置されている第2クラッチ機構80のロックギア84と、カバー22との間には、隙間Sが確保されている。よって、ハウジング15に外力が働いてカバー22が変形した場合でも、カバー側枠部122の内側に位置するロックギア84とカバー側枠部122とが接触することを防止あるいは抑制できる。
【0053】
(ギア輪列の詳細)
以下に、ギア輪列32の詳細および排水弁駆動装置1の動作を説明する。
図11はモータ40およびギア輪列32の説明図であり、
図11(a)は+Z方向側から見た分解斜視図であり、
図11(b)はクラッチ切換レバーを−Z方向側から見た斜視図である。ギア輪列32において、モータ40から出力歯車31に駆動力を伝達する伝達輪列50は、
図3、
図4、
図6に示すように、ロータピニオン51、遊星歯車機構52、減速ギア53を備える。ロータピニオン51の回転中心軸線はO軸であり、遊星歯車機構52の回転中心軸線はE軸であり、減速ギア53の回転中心軸線はD軸であり、出力歯車31の回転中心軸線はC軸である。伝達輪列50は、モータ40の駆動力をこの順で伝達する。
【0054】
ロータピニオン51は樹脂により形成される。
図6に示すように、ロータピニオン51
は、ロータ45の固定軸453によって回転可能かつ軸線O方向(すなわち、Z軸方向)に移動可能に支持される。
図11に示すように、ロータピニオン51とロータ45との間には第1クラッチ機構60が設けられている。第1クラッチ機構60の継断状態を切り換えることにより、ロータピニオン51がロータ45と一体に回転する状態(クラッチ接続状態)と、ロータピニオン51がロータ45と一体に回転しない状態(クラッチ切断状態)に切り換えられる。
【0055】
遊星歯車機構52は、
図6に示すように、太陽歯車521が形成された第1回転体522と、内歯歯車523が形成された第2回転体524と、太陽歯車521および内歯歯車523と噛み合う複数の遊星歯車525と、複数の遊星歯車525を回転可能に保持する第3回転体526を備える。第1回転体522は、ロータピニオン51と噛み合う大径歯車部527を備える。すなわち、大径歯車部527は、ロータピニオン51の回転が入力される入力歯車となっている。また、第2回転体524の外周面には、第2クラッチ機構80の増速ギア85と噛み合う大径歯車部528が形成されている。後述するように、第2クラッチ機構80は、増速ギア85の回転が規制されたロック状態と増速ギア85が空回りする空転状態とに切り換えられる。排水弁駆動装置1の起動時には、第2クラッチ機構80がロック状態となり第2回転体524の回転が増速ギア85によって規制される。
【0056】
第2回転体524の回転が規制されると、太陽歯車521の回転に基づき、遊星キャリアである第3回転体526が回転する。第3回転体526の−Z方向の端部には、減速ギア53の大径歯車部531と噛み合う小径歯車部529が形成されている。つまり、遊星歯車機構52は、第2クラッチ機構80の増速ギア85を介して第2回転体524の回転が規制されるとき、減速ギア53に回転トルクを伝達するように構成されている。一方、第2クラッチ機構80の増速ギア85が空回りする状態に切り換えられると、遊星歯車525が公転しようとしても、内歯歯車523が形成された第2回転体524が空回りするため、遊星キャリアである第3回転体526が回転することはない。従って、減速ギア53に回転トルクが伝達されない状態となる。
【0057】
減速ギア53は、第3回転体526の小径歯車部529と噛み合う大径歯車部531、および、出力歯車31と噛み合う小径歯車部532を備えており、固定軸533によって回転可能に支持される。減速ギア53は、遊星歯車機構52から出力された回転を減速して出力歯車31に伝達する。
【0058】
(第1クラッチ機構)
第1クラッチ機構60は、
図6に示すように、ロータピニオン51の−Z方向の端面に形成された第1クラッチ爪61と、ロータ45の軸部452に形成された第2クラッチ爪62と、軸部452から離間する方向(本形態では、+Z方向)にロータピニオン51を付勢するコイルばね63(
図5参照)と、ロータピニオン51をロータ45の側(−Z方向)に押し下げて第1クラッチ機構60の継断を切り換える扇型のクラッチ切換レバー64を備える(
図4および
図11参照)。クラッチ切換レバー64は、減速ギア53の+Z方向側に配置され、固定軸533によって回転可能に支持される。ロータピニオン51は、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62とが係合する連結位置と、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62とがZ軸方向に離間して、これらの係合が解除される離間位置に移動する。
【0059】
図11(b)に示すように、クラッチ切換レバー64には、−Z方向に突出するカムピン65および傾斜カム67が形成されている。カムピン65はクラッチ切換レバー64の出力歯車31の側の縁に形成され、出力歯車31の+Z方向の端面に形成されたカム溝66に挿入される。傾斜カム67はロータピニオン51を−Z方向に移動させるカム部であり、周方向に延在する傾斜面671と、傾斜面671の反出力側CCWにおいて周方向に
延在するカム面672とを備える。カム面672は、クラッチ切換レバー64の回転軸線方向(Z方向)に対して垂直な水平面である。
【0060】
クラッチ切換レバー64が出力歯車31の側(CCW方向)に回転すると、傾斜カム67の傾斜面671により、ロータピニオン51が軸部452の側(−Z方向側)に押し下げられる。これにより、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62とが係合し、第1クラッチ機構60は、ロータピニオン51が軸部452と一体回転するクラッチ接続状態に切り換わる。クラッチ接続状態では、ロータピニオン51は、傾斜カム67のカム面672によって−Z方向に押し下げられた連結位置に保持される。一方、クラッチ切換レバー64が遊星歯車機構52の側(CW方向)に回転し、
図3に示すクラッチ切断位置64Aまで移動した状態では、傾斜カム67がロータピニオン51と重なる位置から退避しているので、コイルばね63の付勢力によってロータピニオン51が+Z方向に押し上げられた状態となっている。これにより、第1クラッチ爪61と第2クラッチ爪62との係合が解除され、第1クラッチ機構60はクラッチ切断状態に切り換わる。
【0061】
クラッチ切換レバー64は、出力歯車31の回転に連動して回転する。すなわち、クラッチ切換レバー64は、出力歯車31に設けられたカム溝66をカムピン65が移動することにより、減速ギア53の回転中心軸線であるD軸の周りを所定の角度範囲内で往復移動する。より、詳細には、出力歯車31のCW方向の回転に連動して、出力歯車31の側に回転する。これにより、クラッチ接続動作が行われる。また、出力歯車31がCCW方向に回転する際には、出力歯車31のCW方向の回転に連動して、遊星歯車機構52の側に回転させる。ここで、出力歯車31がCCW方向に回転する際には、出力歯車31から+Z方向に突出する突起55がクラッチ切換レバー64を押圧して遊星歯車機構52の側に回転させる。これにより、クラッチ切断動作が開始される。
【0062】
排水弁駆動装置1は、スライダー10をハウジング15側に引き込む際の回転方向(すなわち、CCW方向)に出力歯車31を回転させて排水を開始させるが、出力歯車31の突起55の位置は、出力歯車31が所定の回転位置に到達するとクラッチ切換レバー64を押圧して遊星歯車機構52の側(CW方向)に回転させるように設定されている。このため、スライダー10が引き込み位置10Aの近傍まで引き込まれると、上述したクラッチ切断動作が行われる。これにより、モータ40の駆動力がロータピニオン51に伝達されない状態となり、伝達輪列50の動作が停止する。従って、スライダー10を所定の引き込み位置10A以上に引き込まないようにすることができ、スライダー10の過度な引き込みを防止できる。
【0063】
(第2クラッチ機構)
第2クラッチ機構80は、
図6に示すように、ロータ45の回転時にロータ45と共回りする誘導回転体46に形成されたロータギア47と、ロータギア47と噛み合う扇ギア82およびロックレバー83が形成された回転部材81と、ロックギア84と、増速ギア85と、ねじりコイルばね86を備える。第2クラッチ機構80は、モータ40の回転に基づいてロックレバー83を駆動して、ロックギア84および増速ギア85の回転を規制する状態と規制しない状態を切り換える。これにより、増速ギア85と噛み合う遊星歯車機構52から減速ギア53へ回転トルクが伝達される状態と伝達されない状態を切り換える。従って、伝達輪列50が駆動力を伝達する状態と伝達しない状態とを切り換えることができる。
【0064】
図4、
図6に示すように、回転部材81の回転中心軸線はH軸であり、ロックギア84の回転中心軸線はG軸であり、増速ギア85の回転中心軸線はF軸である。ロータ45が正転方向(CW方向)に回転すると、ロータギア47と噛み合う扇ギア82にロータ45の回転が入力される。扇ギア82は、ロータ45の回転方向と逆方向(CCW方向)に回
転する。
図11に示すように、扇ギア82は、付勢部材であるねじりコイルばね86によってロータ45の回転方向と同一方向(CW方向)に付勢されている。従って、扇ギア82は、ねじりコイルばね86の付勢力に逆らってCCW方向に回転する。
【0065】
ロックレバー83は、扇ギア82と同一方向(CCW方向)に回転する。
図11に示すように、ロックギア84は、外周面に複数の突起部841が等角度間隔で形成された大径部842と、大径部842よりも小径の小径歯車部843を備える。扇ギア82がCCW方向に回転すると、ロックレバー83はCCW方向に回転してロックギア84の大径部842の外周面に接触する。その結果、ロックレバー83と突起部841とが係合してロックギア84の回転が規制される。回転規制時には、ロックレバー83の先端と突起部841とがロックギア84の外周面の接線方向に当接する(
図3参照)。
【0066】
第2クラッチ機構80は、ロックレバー83がロックギア84の回転を規制することにより、増速ギア85の回転を規制する。増速ギア85は、大径歯車部851および小径歯車部852を備えており、大径歯車部851は、ロックギア84の小径歯車部843と噛み合う。一方、増速ギア85の小径歯車部852は、
図6に示すように、遊星歯車機構52の第2回転体524に形成された大径歯車部528と噛み合う。上述したように、増速ギア85を介して第2回転体524の回転を規制したとき、伝達輪列50は、遊星歯車機構52から減速ギア53へ回転トルクが伝達される状態となる。つまり、ロックギア84をロック状態にすることで、伝達輪列50は駆動力を伝達する状態に切り換わる。
【0067】
また、第2クラッチ機構80は、ロックレバー83がロックギア84の突起部841と係合すると、ロックレバー83および扇ギア82の回転が規制され、扇ギア82と噛み合っているロータギア47を備える誘導回転体46の回転が規制される。その結果、ロータ45と誘導回転体46の相対回転速度は増大する。第2クラッチ機構80は、誘導回転体46とマグネット451との間に生じる渦電流によるブレーキ力により、力などによって増速ギア85の側からロックギア84に回転力が加わった場合に、その回転力によってロックギア84とロックレバー83との係合が外れないように保持する。従って、ロックレバー83の回転を規制するロック状態を保持できる。
【0068】
第2クラッチ機構80は、ロックギア84をロックレバー83でロックしている状態でモータ40への通電が停止されると、ロックギア84のロック状態が解除されて空転可能な状態に切り換わる。すなわち、ロータ45の回転が停止すると、誘導回転体46とマグネット451との間に作用していたブレーキ力が消滅する。従って、ロータギア47は、扇ギア82をねじりコイルばね86の付勢力に逆らって保持できなくなり、扇ギア82がねじりコイルばね86による付勢方向に回転する。扇ギア82の回転により、ロックレバー83がロックギア84から離れるため、ロックギア84のロック状態が解除される。これにより、第2クラッチ機構80は、ロックギア84および増速ギア85が空回りする状態に切り換わる。
【0069】
第2クラッチ機構80の増速ギア85が空回りする状態に切り換わると、伝達輪列50においては、遊星歯車機構52の第2回転体524が空回りする状態に切り換わる。この状態で、スライダー10に加わった外部負荷が出力歯車31の側から伝達輪列50に伝達されると、減速ギア53と噛み合う第3回転体526の回転に伴って第2回転体524が空回りする。従って、スライダー10の負荷保持状態が解除され、スライダー10を外部負荷によって引き出すことができる。
【0070】
(回転規制機構)
回転規制機構70は、
図11に示すように、クラッチ切換レバー64に設けられた係止片673(
図11(b)参照)と、ロータピニオン51に設けられた被係止片511(図
11(a)参照)とを備える。係止片673は、クラッチ切換レバー64から−Z方向に突出する凸部である。被係止片511は、ロータピニオン51の+Z方向の端面に設けられている。被係止片511は、ロータピニオン51の回転中心軸線であるO軸から径方向を外側に向かって延びる。被係止片511は、O軸を間に挟んで対称に二つ設けられている。クラッチレバー500の係止片673がロータピニオン51の被係止片511に周方向から係合すると、ロータピニオン51の回転が停止する。これにより、ロータピニオン51に噛合する遊星歯車機構52の第1回転体522の回転が規制される。
【0071】
回転規制機構70は、スライダー10の引き込み動作が行われ、クラッチ切換レバー64が遊星歯車機構52の側(CW方向)に回転してロータピニオン51をクラッチ切断方向(+Z方向)に移動させるとき、係止片673と被係止片511とが係合して、第1回転体522の回転を規制する。
【0072】
ここで、遊星歯車機構52は、上述したように排水弁駆動装置1の起動時に第2回転体524の回転が増速ギア85によって規制されるため、回転規制機構70によって第1回転体522の回転が規制されると、減速ギア53と噛み合う第3回転体526の回転も規制され、ロック状態となる。従って、スライダー10に外力が加わり、出力ピニオン12側から伝達輪列50に回転トルクが加えられても回転トルクが伝達されない状態となり、スライダー10を引き込み位置10Aで保持する負荷保持状態が形成される。具体的には、スライダー10が引き込み位置10Aに引き込まれた状態で、スライダー10を+X方向に引き出す外力が加えられると、第1回転体522には、CW方向の回転トルクが加わる。このとき、回転規制機構70は、第1回転体522のCW方向の回転を規制する。
【0073】
また、回転規制機構70は、外力によりスライダー10を引き出し可能な負荷開放状態に切り換わってスライダー10が引き出されるとき、出力歯車31の回転に伴ってクラッチ切換レバー64が出力歯車31の側(CCW方向)に回転すると、係止片673と被係止片511との係合を解除して、第1回転体522の回転規制を解除する。このとき、クラッチ切換レバー64の回転により、第1クラッチ機構60のクラッチ接続動作が行われる。
【0074】
(起動時の動作)
排水弁駆動装置1の起動時の動作について説明する。起動時には、スライダー10が排水弁を閉じる位置まで引き出されているものとする。この状態でモータ40への通電を開始すると、ロータ45が回転を開始する。この際、図示しない逆転防止機構により、ロータ45の逆転方向への回転が規制されるので、ロータ45は正転方向へ回転する。
【0075】
ロータ45の正転方向の回転により、第2クラッチ機構80がロックギア84をロックする状態に切り換わる。すなわち、ロータギア47の出力回転によって扇ギア82がねじりコイルばね86の付勢力に逆らって回転し、ロックレバー83がロックギア84と当接して突起部841と係合し、ロックギア84をロックする。これにより、伝達輪列50は回転トルクを出力歯車31に伝達する状態に切り換わる。従って、伝達輪列50においては、遊星歯車機構52の第2回転体524の回転が第2クラッチ機構80の増速ギア85によって規制され、ロータピニオン51の回転が遊星歯車機構52から減速ギア53へ伝達される状態に切り換わる。よって、ロータ45の正転方向の回転により、スライダー10の巻き取り動作が行われる。
【0076】
(スライダー引き終わり時の動作)
排水弁駆動装置1は、スライダー10の引き終わり時になると、第1クラッチ機構60のクラッチ切換レバー64が回転してクラッチ切断動作が行われ、伝達輪列50にロータ45の回転が入力されなくなる。従って、スライダー10は所定の引き込み位置10A以
上に引き込まれない。また、このクラッチ切換レバー64の回転により、クラッチ切換レバー64の係止片673とロータピニオン51の被係止片511とが係合してロータピニオン51の回転を規制する。これにより、遊星歯車機構52の第1回転体522の回転が規制される。すなわち、クラッチ切換レバー64の回転により、回転規制機構70が遊星歯車機構52の第1回転体522の回転を規制するので、遊星歯車機構52がロック状態となり、伝達輪列50は回転トルクを伝達できなくなる。従って、スライダー10を+X方向に引き出す力が加えられてもスライダー10が移動しない負荷保持状態となる。これにより、排水弁が開状態で保持される。
【0077】
(負荷開放時の動作)
排水弁駆動装置1は、負荷保持状態でモータ40への通電を切ると、スライダー10を力で引き出し可能な負荷開放状態に移行する。モータ40への通電を切ると、ロータ45の回転が停止する。第2クラッチ機構80は、ロータ45の回転停止によって扇ギア82がねじりコイルばね86の付勢方向に戻るため、ロックレバー83とロックギア84との当接が解除され、ロックギア84の回転規制が解除される。これにより、伝達輪列50は出力歯車31に回転トルクを伝達しない状態に切り換わる。すなわち、伝達輪列50の遊星歯車機構52において第2回転体524の回転規制が解除されるので、遊星歯車機構52のロックが解除される。これにより、伝達輪列50が空転可能な負荷開放状態となる。この状態で、スライダー10を引き出す方向の力が加わると、伝達輪列50および出力歯車31が空転してスライダー10が引き出される。ロックギア84にはブレーキゴム87が組み込まれている。ブレーキゴム87は、力によりスライダー10が引き出されるときに遠心力により拡がってロックギア84との間に摩擦力を発生させる。これにより、スライダー10が引き出される際の引き出し速度が低下する。よって、スライダー10が急激に引き出されることによる破損のおそれを少なくすることができる。
【0078】
スライダー10が最大引き出し位置に到達する手前の所定位置まで引き出されると、出力歯車31のCW方向に回転に基づいてクラッチ接続動作が始まる。すなわち、出力歯車31に形成されたカム溝66とクラッチ切換レバー64に設けられたカムピン65により、クラッチ切換レバー64が出力歯車31の側に回転してクラッチ接続動作が行われる。これにより、伝達輪列50にロータ45の回転が入力される状態に戻る。また、このクラッチ切換レバー64の回転により、クラッチ切換レバー64の係止片673とロータピニオン51の被係止片511との係合が解除されるので、回転規制機構70による遊星歯車機構52の第1回転体522のロックが解除される。従って、伝達輪列50は回転トルクを出力歯車31に伝達可能な状態に戻る。
【0079】
(作用効果)
本例によれば、ハウジング15を構成するケース21とカバー22とは、ケース側当接面112とカバー側当接面125とが出力歯車31のZ軸方向で当接した状態で積層される。また、ケース側当接面112とカバー側当接面125とが当接したときに、これらの一方に設けられた凸部127が他方に設けられた凹部114に挿入される。従って、ハウジング15に対して出力歯車31の軸線Cと交差する方向の力が加わった場合には、凸部127と凹部114との係合によって、その力を、ケース21およびカバー22の双方に分散させて逃がすことができる。よって、ケース21およびカバー22が変形することを防止あるいは抑制できる。
【0080】
また、本例では、ハウジング15には、ボルト3を用いて当該ハウジング15を外部の取り付け部2に固定するための第1ボルト用貫通穴17、第2ボルト用貫通穴18、および、第3ボルト用貫通穴19が設けられている。従って、ボルト3を用いてハウジング15を取り付け部2に固定することが容易である。また、各ボルト用貫通穴17、18、19は、ケース21をZ軸方向に貫通してケース側当接面112に開口するケース側貫通穴
部分113と、ケース側貫通穴部分113と同軸でカバー22を貫通してカバー側当接面125に開口するカバー側貫通穴部分126とから構成される。従って、ハウジング15を取り付け部2に固定するためのボルト3を用いて積層したケース21とカバー22とを固定できる。
【0081】
さらに、本例では、カバー側当接面125に設けた凸部127とケース側当接面112に設けた凹部114とが、第1ボルト用貫通穴17および第2ボルト用貫通穴18を貫通するボルト3に対して、比較的、近い位置にある。従って、ボルト3を締め付ける際に、ボルト3のラジアル方向の力がハウジング15に加わるような場合に、凸部127と凹部114との係合によって、その力を、ケース21およびカバー22の双方に逃しやすい。
【0082】
また、凸部127および凹部114は、第1ボルト用貫通穴17および第2ボルト用貫通穴18の中心よりもギア輪列32に近い位置に設けられている。従って、ハウジング15に対してボルト3のラジアル方向の力が加わる場合でも、ケース21やカバー22が、ギア輪列32に接触するまで、変形することを防止あるいは抑制できる。
【0083】
さらに、本例では、ケース21とカバー22を積層する際にケース側当接面112とカバー側当接面125とを当接させれば、ケース側枠部101とカバー側枠部122とを、Z軸と直交する方向から見た場合に重ね合わせることができる。すなわち、ケース側枠部101とカバー側枠部122とを、所謂、インローの状態に嵌合させることができる。従って、ハウジング15に対してボルト3のラジアル方向の力が加わる場合でも、インローの状態の嵌合と、凸部127および凹部114の係合によって、その力を、ケース21およびカバー22の双方に分散させて逃すことができる。
【0084】
また、本例では、ケース側当接面112は、ケース側貫通穴部分113と同心の環状面部分110aと、環状面部分110aの周方向一部分から外側に突出する突出面部分111aと、を備え、カバー側当接面125は、カバー側貫通穴部分126と同心の環状面部分123aと、環状面部分123aの周方向一部分から外側に突出する突出面部分124aと、を備える。また、凹部114は、突出面部分111aに設けられており、凸部127は突出面部分124aに設けられている。従って、環状面部分110aと環状面部分123aとの当接によって、ボルト3を締め付けた時のZ軸方向の力を確実に受けることができる。また、環状面部分123aと突出面部分124aとに互いに係合する凸部127と凹部114とが設けられているので、環状面部分110aと環状面部分123aの外周側でハウジング15に対して加わるボルト3のラジアル方向の力を受けることができる。
【0085】
さらに、ケース21の突出部111に設けられた凹部114の深さ寸法は、カバー22の突出部分124の凸部127の突出寸法よりも長い。これにより、凹部114の形成により、突出部111が過剰に肉厚になることを防止できるので、樹脂製のケース21を成型しやすい。
【0086】
ここで、本例の排水弁駆動装置1によれば、弁体駆動部材を駆動するギアードモータ5のハウジング15に変形が発生することを防止あるいは抑制できる。従って、ハウジング15の変形によって、排水弁駆動部材とハウジング15とが干渉して、排水弁駆動部材の動作が妨げられることを防止或いは抑制できる。
【0087】
なお、カバー側当接面125に凹部を設け、ケース側当接面112に凸部を設け、ケース21とカバー22とを積層したときに、これらが係合するものとすることもできる。
【0088】
また、インローの状態で嵌合するケース側枠部101とカバー側枠部122の嵌合状態を逆にしてもよい。この場合、ケース21においては、ケース側枠部101の+Z方向(
カバー22の側)の先端にケース側当接面112を設けるとともに、ケース側枠部101の外周面のZ軸方向の途中位置にカバー22から離間する側が外側に広がる段部を設ける。一方、カバー22においては、モータ40、ギア輪列32および出力歯車31の径方向の外側に位置するカバー側枠部122におけるZ軸方向の途中位置から内側に延びるようにカバー側当接面125を設ける。そして、ケース側枠部101の+Z方向(カバー22の側)の先端部分を、カバー側枠部122の内側に挿入するものとする。