特許第6894328号(P6894328)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894328
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20210621BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20210621BHJP
   B01J 2/28 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H01M4/139
   H01M4/62 Z
   B01J2/28
【請求項の数】1
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-175106(P2017-175106)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-53832(P2019-53832A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000179328
【氏名又は名称】リックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸本 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】下園 雄二
(72)【発明者】
【氏名】後藤 英史
(72)【発明者】
【氏名】稲毛 義樹
【審査官】 佐宗 千春
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−108047(JP,A)
【文献】 特開2016−219212(JP,A)
【文献】 特表2017−515262(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/042217(WO,A1)
【文献】 特開2018−041619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質、バインダおよび溶媒を混合することにより、造粒体を作製する工程と、
前記造粒体を圧縮成形することにより、電極合材層を形成する工程と、
前記電極合材層を電極集電体上に配置する工程と、を備え、
前記バインダはプラズマ処理されたポリフッ化ビニリデンを含み、
前記プラズマ処理の印加電圧は20〜30kVであり、前記プラズマ処理の処理時間は15〜30分であり、前記プラズマ処理はドラム型プラズマ処理装置によって実施され、前記ドラム型プラズマ処理装置のドラムの回転数は30〜60rpmである、
電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電極合材を含む造粒体を作製し、該造粒体を成形して、電極集電体上に電極合材層を配置する方法(造粒体成形法)により、リチウムイオン二次電池等に用いられるシート状の電極を作製する電極の製造方法が知られている。
【0003】
造粒体(湿潤造粒体)を用いた電極の製造方法は、例えば、特許文献1(特開2016−131092号公報)に開示されている。特許文献1では、造粒体を微細化する工程を実施することにより、電極合材層のスジの発生が低減される旨記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−131092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、造粒体を微細化する工程を実施しても、溶媒に溶解しなかったバインダ(結着材)が残留すると、その残留バインダに起因して、電極にスジ、スケ等の電極合材層の欠損が発生する虞があった。
【0006】
したがって、本開示の目的は、電極合材層の欠損の発生が抑制された電極を造粒体を用いて製造することのできる、電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕電極の製造方法は、
電極活物質、バインダおよび溶媒を混合することにより、造粒体を作製する工程と、
造粒体を圧縮成形することにより、電極合材層を形成する工程と、
電極合材層を電極集電体上に配置する工程と、を備える。
バインダはプラズマ処理されたポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む。
プラズマ処理の印加電圧は20〜30kVであり、プラズマ処理の処理時間は15〜30分であり、プラズマ処理はドラム型プラズマ処理装置によって実施され、ドラム型プラズマ処理装置のドラムの回転数は30〜60rpmである。
【0008】
上記〔1〕の製造方法によれば、電極合材層の欠損の発生が抑制された電極を造粒体を用いて製造することができる。その理由は次のように考えられる。
【0009】
造粒体は、例えば、図6(a)に示されような撹拌造粒機6を用いて、電極活物質11、導電材12およびPVdF粒子13(バインダ)を撹拌槽60中で撹拌機61によって撹拌しながら、噴霧ノズル62から溶媒14を噴霧して、電極活物質11、PVdF粒子13および溶媒14を混合する造粒工程によって、作製される。
【0010】
ここで、PVdF樹脂は、溶媒(N−メチル−2−ピロリドン(NMP)など)に対するの溶解性が低いため、図6(b)に示されるように、造粒工程に溶解されなかったPVdF13が残留する場合がある。これにより、作製された個々の造粒体の固形分率(NV)のばらつきが大きく(例えば、標準偏差σが1.0%以上)なると、電極合材層にスケ、スジなどの欠損(成膜不良)が発生し易くなる。
【0011】
これに対して、本開示の電極の製造方法においては、PVdF樹脂をプラズマ処理することにより、PVdF樹脂の表面にアミノ基を生成させることで、PVdFの溶媒への溶解性が向上する。このため、溶媒に溶解せずに残留するPVdF樹脂(バインダ)の量を減少させることができる。これにより、個々の造粒体の固形分率(NV)のばらつきを小さくすることができ、電極合材層のスケ、スジなどの欠損(成膜不良)を抑制することができる。
【0012】
そして、プラズマ処理の印加電圧が20〜30kVであり、プラズマ処理の処理時間が15〜30分であり、プラズマ処理がドラム型プラズマ処理装置によって実施され、ドラム型プラズマ処理装置のドラムの回転数が30〜60rpmであることにより、PVdF樹脂を劣化させない程度に適度なプラズマ処理が実施され、より確実に、電極合材層のスケ、スジなどの欠損(成膜不良)を抑制することができる。
【0013】
以上のことから、本開示の電極の製造方法によれば、電極合材層の欠損の発生が抑制された電極を造粒体を用いて製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態の電極の製造方法の概略を示すフローチャートである。
図2】実施形態において電極の製造に用いられる装置を示す概念図である。
図3】実施形態において電極の製造に用いられる装置を示す概略斜視図である。
図4】電極シートの一例を示す概略図である。
図5】PVdFのプラズマ処理に用いられるドラム型プラズマ処理装置の一例を示す模式図である。
図6】従来における造粒体の作製方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の一実施形態について説明する。ただし、本開示はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書では、「正極」および「負極」を総称して「電極」と記す。すなわち、「電極シート」は、「正極シート」および「負極シート」の少なくともいずれかを示し、「電極合材層」は、「正極合材層」および「負極合材層」の少なくともいずれかを示し、「電極活物質」は、「正極活物質」および「負極活物質」の少なくともいずれかを示し、「電極集電体」は、「正極集電体」および「負極集電体」の少なくともいずれかを示す。
【0016】
図1は、本実施形態の電極の製造方法の概略を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の電極の製造方法は、リチウムイオン二次電池用のシート状の電極の製造方法であり、少なくとも以下の造粒体作製工程(S10)と、電極合材層形成工程(S20)と、配置工程(S30)と、を備える。
【0017】
《造粒体作製工程(S10)》
造粒体作製工程では、電極活物質、バインダおよび溶媒を混合することにより、造粒体を作製する。なお、造粒体とは、電極活物質、バインダおよび溶媒を含む造粒粒子(複合粒子)が複数集まった集合体である。
【0018】
造粒体は、例えば、電極活物質、バインダ、溶媒等を混合(造粒)することにより、作製することができる。造粒体の作製に用いられる造粒操作としては、例えば、撹拌造粒などが挙げられる。造粒装置としては、例えば、撹拌造粒機などを用いることができる。
【0019】
(電極活物質)
電極活物質は、正極活物質でもよいし、負極活物質でもよい。
【0020】
正極活物質としては、例えば、リチウム含有金属酸化物、リチウム含有リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有金属酸化物としては、例えば、LiCoO2、LiNiO2、一般式LiNiaCob2(ただし式中、a+b=1、0<a<1、0<b<1である。)で表される化合物、LiMnO2、LiMn24、一般式LiNiaCobMnc2(ただし式中、a+b+c=1、0<a<1、0<b<1、0<c<1である。)で表される化合物、LiFePO4などが挙げられる。ここで、一般式LiNiaCobMnc2で表される化合物としては、例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/32などが挙げられる。リチウム含有リン酸塩としては、例えば、LiFePO等が挙げられる。正極活物質の平均粒径は、例えば1〜25μm程度でよい。なお、ここでの「平均粒径」は、レーザ回折・散乱法によって測定された体積基準の粒度分布において、積算値50%での粒径(D50)を意味する。
【0021】
負極活物質としては、例えば、黒鉛、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素等の炭素系負極活物質、および、珪素(Si)、錫(Sn)等を含有する合金系負極活物質が挙げられる。負極活物質の平均粒径(D50)は、例えば1〜25μm程度でよい。
【0022】
造粒体の固形分の総量に対する電極活物質の配合比率(すなわち、電極合材層中の電極活物質の含有率)は、例えば、97〜99.7質量%程度である。
【0023】
(バインダ)
バインダは、少なくともプラズマ処理されたポリフッ化ビニリデン(PVdF)を含む。PVdFにプラズマ処理を施すことにより、溶媒への溶解性を向上させることができ、固形分率が比較的均一な造粒体を作製することが可能となる。なお、バインダとして、PVdFのみを用いてもよく、PVdFと他のバインダ成分とを併用してもよい。他のバインダ成分としては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンラバー(SBR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリル酸(PAA)等が挙げられる。
【0024】
造粒体の固形分の総量に対するバインダの配合比率(すなわち、電極合材層中のバインダの含有率)は、例えば、0.3〜3質量%程度である。また、バインダ中のPVdFの比率は、例えば、97.0〜100質量%程度である。
【0025】
例えば、電極合材の原料を撹拌混合して造粒体(湿潤造粒体)作製する工程の前に、PVdF原料(PVdF粒子など)に対してプラズマ処理が施される。プラズマ処理に用いられるプラズマ処理装置としては、例えば、ドラム型プラズマ処理装置が挙げられる。ドラム型プラズマ処理装置のドラム形状は、例えば、円筒状である。プラズマ処理装置がドラム型のプラズマ処理装置である場合、プラズマ処理工程におけるドラムの回転数は、例えば、30〜60rpm程度である。
【0026】
導入ガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素を用いることができる。窒素ガス雰囲気下でPVdF樹脂にプラズマ処理を行う場合、PVdF樹脂の表面にアミノ基を生成させ易いため、より確実にPVdFの溶媒への溶解性を向上させることができる。
【0027】
プラズマ処理の印加電圧は、20〜30kVである。印加電圧が低すぎると、十分にアミノ基を生成することができず、PVdFの溶解性が十分に向上しない場合がある。一方、印加電圧が高すぎると、PVdF樹脂が劣化してしまい、結果としてバインダ(結着材)としての機能が損なわれ、成膜不可となる場合がある。
【0028】
プラズマ処理の処理時間は、15〜30分である。処理時間が短すぎると、十分にアミノ基を生成することができず、PVdFの溶解性が十分に向上しない場合がある。一方、処理時間が長すぎると、PVdF樹脂が劣化してしまい、結果としてバインダ(結着材)としての機能が損なわれ、成膜不可となる場合がある。
【0029】
また、プラズマ処理に用いる装置は、ドラム型プラズマ処理装置である。図5に示されるドラム型プラズマ処理装置7において、ドラム70の内部にはPVdF粒子13が窒素ガスと共に充填されている。ドラム70を回転させてPVdF粒子13を撹拌しながら、端子71で電圧を印加することによりドラム70の内部にプラズマ(窒素プラズマ)を発生させる。これにより、PVdF粒子13の表面をプラズマ処理することができ、PVdF粒子13の表面にアミノ基を生成させることができるため、PVdFの溶解性を向上させることができる。
【0030】
ドラム型プラズマ処理装置のドラムの回転数は、30〜60rpmである。回転数が小さすぎると、アミノ基の生成が局所的になってしまい、結果として完成造粒体の固形分率のばらつきが大きくなり、成膜性が悪くなる場合がある。一方、回転数が大きすぎると、PVdF樹脂同士の凝集が生じてしまい、結果として造粒体の固形分率のばらつきが大きくなり、成膜性が悪くなる場合がある。
【0031】
(溶媒)
溶媒としては、例えば、水系溶媒が挙げられる。なお、水系溶媒とは、水、または、水と極性有機溶媒とを含む混合溶媒を意味する。取扱いの容易さからは、水が最も好ましい。混合溶媒に使用可能な極性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン等のエーテル類等が挙げられる。
【0032】
溶媒の使用量は、例えば造粒体の固形分率が70〜85質量%となるように調整すればよい。ここで「固形分率」とは、溶媒を含む全ての原材料の質量合計に対する溶媒以外の成分(不揮発成分)質量の比率を示す。なお、造粒体の固形分率が70質量%未満である場合、溶媒量が多いため、造粒体の作製が難しくなる場合がある。
【0033】
(他の成分)
造粒体の成分としては、上記以外の他の成分を含んでいてもよく、例えば導電材を含んでいてもよい。導電材としては、例えば、アセチレンブラック(AB)、サーマルブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックが挙げられる。導電材により、電子伝導性の向上が期待される。
【0034】
《電極合材層形成工程(S20)》
電極合材層形成工程では、造粒体を圧縮成形することにより、電極合材層を形成する。具体的には、例えば、間隔を隔てて互いに平行に配置され、それぞれ回転駆動される一対のロール間に、造粒体を供給し、造粒体を一対のロールで圧縮成形することにより、シート状の電極合材層が形成される。
【0035】
本工程では、図2および図3に示されるような電極製造装置90が用いられる。電極製造装置90は、フィーダ95と、3本のロール(Aロール91、Bロール92およびCロール93)とを備える。Aロール91およびBロール92(一対のロール)の各々の直径は、例えば、20〜25cm程度である。なお、Cロール93の直径も同程度である。
【0036】
Aロール91、Bロール92およびCロール93は、それぞれ回転駆動される。図2および図3において、各ロールに描かれた曲線矢印は、各ロールの回転方向を示している。
【0037】
なお、Aロール91およびBロール92はその間の距離(一対のロールの間隔)が一定に維持されるように、それらの軸が固定されている。また、Cロール93も、Bロール92との間の距離が一定に維持されるように、その軸が固定されている。Aロール91とBロール92との間隔は、例えば、50μm〜10mm程度である。なお、「一対のロールの間隔」とは、一対のロール間が最も近接する位置における、一対のロール間の直線距離である。
【0038】
フィーダ95は、一対のロール(Aロール91およびBロール92)間のギャップの直上に配置されている。本工程では、まず、造粒体がフィーダ95に供給される。フィーダ95は、造粒体1を、Aロール91とBロール92との間のギャップに供給する。
【0039】
電極製造装置90は、さらに、各ロールの軸方向に所定の間隔を隔てて、互いに平行に配置された一対の規制板94aを備える。この一対の規制板94aによって、一対のロールの間のギャップに供給された造粒体は、幅寸法を規制されつつ、一対のロールの(図中の矢印方向の)回転によって、該ギャップの下方に引き込まれ、該ギャップを通過する。これにより、造粒体が圧密(圧縮)され、シート状に成形されることで、造粒体1から電極合材層82(負極合材層)が形成される。なお、電極合材層82の目付量(単位面積当たりの質量)は、ギャップの幅(一対のロールの間隔)によって調整可能である。
【0040】
なお、Bロール92の回転速度は、Aロール91の回転速度より速いことが好ましい。例えば、Bロール92の回転速度は、Aロール91の回転速度の3倍〜5倍程度である。Bロール92の回転速度をAロール91の回転速度より速くすることで、図7に示されるように、造粒体が、Bロール92の表面でAロール91の表面より多く引き伸ばされ、造粒体の液架橋の部分がBロール92の表面に接する面積が、Aロール91の表面に接する面積よりも大きくなる。これにより、圧延後の造粒体1(電極合材層)は、Bロール92側に張り付き、Bロール92によって搬送される。
【0041】
《配置工程(S30)》
配置工程では、電極合材層82を電極集電体81上に配置する。
【0042】
具体的には、電極合材層形成工程(S20)で作製されたシート状の電極合材層82を電極集電体81(負極集電体)に転写することで、電極合材層82を電極集電体81上に配置する。
【0043】
具体的には、図2および図3を参照して、電極集電体81はCロール93上を搬送され、Bロール92とCロール93との間のギャップに供給される。電極合材層82は、Aロール91とBロール92との間のギャップを出た後、Bロール92上を搬送され、Bロール92とCロール93との間のギャップに供給される。
【0044】
Bロール92とCロール93との間のギャップでは、電極合材層82が電極集電体81に押しつけられ、電極合材層82はBロール92から離れて、電極集電体81に圧着される。すなわち、電極合材層82がBロール92から電極集電体81に転写される。こうしてシート状の電極合材層82が、電極集電体上の所定位置に配置される。
【0045】
なお、図2に示されるように、電極製造装置90は、一対の規制板94aを備えている。これにより、電極集電体81の幅方向の両端に、電極合材層82が配置されない露出部83(図4参照)を設けることができる。
【0046】
電極合材層を乾燥させた後に、電極集電体および電極合材層を、例えばスリッタ等を用いて所定のサイズに切断加工することにより、図4に示すようなシート状の電極80(電極シート)を製造することができる。
【0047】
本開示の製造方法によって得られる電極は、例えば、リチウムイオン二次電池(非水電解質二次電池)の電極として用いることができる。そのリチウムイオン二次電池は、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)等の電源として用いることができる。ただし、本開示の製造方法によって得られる電極は、このような車載用途に限られず、あらゆる用途に適用可能である。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を用いて本実施形態を説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0049】
〔実施例1〜4および比較例1〜6〕
実施例1〜4および比較例1〜6では、以下のようにして、電極(リチウムイオン二次電池用の正極)の製造に用いられる造粒体を作製した。
【0050】
《造粒体作製工程》
本工程では、まず、以下の材料を準備した。
正極活物質: LiNi1/3Co1/3Mn1/32〔平均粒径(D50):10μm〕
バインダ : PVdF
【0051】
なお、PVdFとしては、PVdF粒子〔製品名:KFポリマー、(株)クレハ〕に対して、図5に示されるようなドラム型プラズマ処理装置を用いて、表1に示される処理条件〔印加電圧、処理時間および(ドラム)回転数〕でプラズマ処理を施して得られたPVdFを用いた。
【0052】
円筒状のドラム(容量:10L、円筒の直径:20cm、円筒の高さ:30cm)を有するドラム型混合機のドラム(混合槽)中に、正極活物質(300g)、バインダ(2.5g)および溶媒(水)を投入し、混合することにより、造粒体を作製した。溶媒の使用量は、造粒体の固形分率が78質量%となるように調整した。
【0053】
《電極合材層形成工程》
本工程では、造粒体作製工程で得た造粒体を圧縮することでシート状の電極合材層を形成した。
【0054】
本工程では、上述の実施形態と同様にして、図2および図3に示す電極製造装置90を用いて、造粒体からシート状の電極合材層を形成した。なお、電極製造装置90において、Aロール91とBロール92との間(一対のロール間)の距離は、0.2mmであった。また、Aロール91、Bロール92およびCロール93の各々の直径は、全て25cmであった。Bロールの回転速度(周速度)は46m/分であり、Cロールの回転速度は60m/分であった。
【0055】
《配置工程》
本工程では、上記のようにして形成された電極合材層を、電極集電体上に配置した。電極集電体81(正極集電体)は、アルミニウム箔である。
【0056】
本工程では、上述の実施形態と同様にして、図2および図3に示す電極製造装置90を用いて、電極合材層を電極集電体上に配置し、電極合材層を乾燥させた。以上のようにして、実施例1〜4および比較例1〜6の電極(正極)を製造した。
【0057】
<NVばらつき評価>
実施例1〜4および比較例1〜6の電極の製造において作製された造粒体について、造粒体の一部から所定量の造粒体を採取し、個々の造粒体の固形分率(NV)を測定し、その測定結果から、当該所定量の造粒体における個々の造粒体の固形分率のばらつき(標準偏差)を求めた。なお、各実施例および比較例について、造粒体の5か所から所定量の造粒体を採取して、5か所の造粒体の固形分率の標準偏差を求め、5か所のうちで最大の標準偏差が、1%以下であった場合を「○」、1%以上であった場合を「×」で示した(表1の「NVばらつき」欄)。
【0058】
<成膜性評価>
実施例1〜4および比較例1〜6の電極の製造において作製された造粒体について、成膜性の評価結果を表1の「成膜性」の欄に示す。なお、上述の図2、3に示されるような3本ロール成膜機を用いて、造粒体による成膜(電極合材層の形成)を行い、成膜可能であった場合に「○」と記載し、塗膜に欠損(スジ)等が生じたりして正常な成膜が不可能であった場合に「×」と記載している。
【0059】
<電池特性評価>
実施例1〜4および比較例1〜6の電極について、電池特性の測定を行った。「電池特性」の欄には、液系従来電極(プラズマ処理を行っていないPVdFを用いたこと以外は、実施例1〜4と同様にして製造された電極)より、電池特性が良好であったものを「○」で示した。ここで、電池特性とは、電池の初期容量である。なお、「−」は電池特性が測定不可であったことを示す。
【0060】
【表1】
【0061】
表1に示される実施例1〜4の結果から、プラズマ処理されていないPVdFを用いた従来の電極の製造方法よりも、プラズマ処理されたPVdFを用いた本開示の電極の製造方法の方が、電池特性に優れた電池を製造できることが分かる。これは、本開示の電極の製造方法によって、固形分率(NV)のばらつきが少ない造粒体が得られ、その造粒体を用いた成膜性が向上したためであると考えられる。なお、実施例においては、十分なロバスト性があり、電極合材層の配置工程やその後の工程への影響もなかった。
【0062】
これに対して、比較例1、3では、PVdFのプラズマ処理が不足し、PVdFに十分にアミノ基を生成することができず、PVdFの溶解性向上が十分ではなかったため、造粒体の固形分率のばらつきにより、成膜不可になったと考えられる。比較例2、4では、PVdFのプラズマ処理が過多となり、PVdF樹脂が劣化してしまい、バインダ(結着材)としての機能が損なわれたため、成膜不可になったと考えられる。比較例5では、プラズマ処理に用いたドラム型プラズマ処理装置のドラムの回転が遅すぎたため、PVdFのプラズマ処理が局所的になり、アミノ基の生成が局所的になってしまい、完成造粒体の固形分率がばらついてしまったことにより、成膜不可になったと考えられる。比較例6では、プラズマ処理に用いたドラム型プラズマ処理装置のドラムの回転が速すぎたため、PVdF樹脂同士の凝集が生じてしまい、造粒体の固形分率がばらついてしまったことにより、成膜不可になったと考えられる。
【0063】
ただし、これらの比較例は、上記の特定の成膜機や成膜条件で成膜不可となっただけであり、成膜機や成膜条件を変えれば、上記の比較例と同じプラズマ処理条件(印加電極、処理時間、ドラム回転数)でも成膜可能な場合がある。
【0064】
今回開示された実施形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなくて、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
1 造粒体、11 電極活物質、12 導電材、13 PVdF粒子、14 溶媒、6 撹拌造粒機、60 撹拌槽、61 撹拌機、62 噴霧ノズル、7 プラズマ処理装置、70 ドラム、71 端子、80 電極、81 電極集電体、82 電極合材層、83 露出部、90 電極製造装置、91 Aロール、92 Bロール、93 Cロール、94a 規制板、95 フィーダ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6