(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894329
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】洗濯水収容部の内面をマグネシウムで形成した洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 37/12 20060101AFI20210621BHJP
D06F 37/04 20060101ALI20210621BHJP
D06F 39/12 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
D06F37/12 Z
D06F37/04
D06F39/12 C
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-176462(P2017-176462)
(22)【出願日】2017年9月14日
(65)【公開番号】特開2019-50990(P2019-50990A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2018年11月28日
【審判番号】不服2020-1329(P2020-1329/J1)
【審判請求日】2020年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508141689
【氏名又は名称】株式会社宮本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100181766
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 均
(74)【代理人】
【識別番号】100187193
【弁理士】
【氏名又は名称】林 司
(72)【発明者】
【氏名】宮本 隆
【合議体】
【審判長】
柿崎 拓
【審判官】
上田 真誠
【審判官】
長馬 望
(56)【参考文献】
【文献】
特表2014−526931(JP,A)
【文献】
特開2014−90895(JP,A)
【文献】
特開平10−24196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/12
D06F 39/12
D06F 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯槽と、洗濯槽の底部に回動自在に設けられた撹拌体を備える洗濯機であって、
前記撹拌体の少なくとも上面が、金属マグネシウム(Mg)単体または金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有する金属で形成されていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記洗濯機が、全自動洗濯機または二槽式洗濯機であることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記洗濯機が、縦型洗濯機であることを特徴とする、請求項1または2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯槽の内面、撹拌体の上面等の洗濯水収容部の内面を、金属マグネシウム(Mg)単体または金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有する金属で形成した洗濯機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、洗濯機の洗濯水として、洗濯水収容部の外部で生成した電解水、過酸化水素水等を供給し、被洗濯物を除菌・殺菌することが行われている。例えば、特許文献1には、従来の洗濯機に、別途、電解水を発生する装置を設けることが開示されており、また、特許文献2には、従来の洗濯機に、別途、過酸化水素水を発生する装置を設けることが開示されている。
【0003】
具体的に説明すると、特許文献1には、
図2に示すように、洗濯機10が電解水生成部11と洗濯槽12とを備えており、電解水生成部11で生成された電解水を洗濯槽12に供給することが開示されている。
【0004】
しかしながら、洗濯機に、別途、過酸化水素水、電解水等を生成する装置を設けることにより、洗濯機が大型化しコストを要するものとなり、また、構造が複雑化し故障を生じやすいものとなる。
【0005】
また、このような洗濯機に、別の装置を設けることなく、洗濯性を改善することも行われている。例えば、本件発明者が先に特許出願を行い、特許を取得した特許文献3には、洗濯用洗浄補助用品を、洗濯用洗剤と共に洗濯機の洗濯槽に投入し被洗濯物を洗濯することが開示されている。
【0006】
具体的に説明すると、特許文献3には、
図3に示すように、複数個の、マグネシウム粒子20を網袋21で封入した洗濯用洗浄補助用品22を、洗濯用洗剤と共に洗濯機の洗濯槽に投入し被洗濯物を洗濯することにより、部屋干しした場合でも、被洗濯物に生乾き臭が発生するのを防止できることが開示されている。
【0007】
しかしながら、洗濯のたびに、洗濯槽に洗濯用洗浄補助用品を投入・回収することは、手間暇を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2016−059695号公報
【特許文献2】特開2005−146344号公報
【特許文献3】特許第5312663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、洗濯機を大型化・複雑化することなく、また、洗濯のたびに手間暇を要することなく、生乾き臭の発生防止等の洗濯性を改善できる洗濯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、洗濯機の洗濯水収容部の内面を、金属マグネシウム(Mg)単体または金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有する金属(以下、「マグネシウム主成分金属」ともいう。)で形成することにより解決することができる。
【0011】
具体的な解決手段はつぎの通りである。
(1)洗濯槽と、洗濯槽の底部に回動自在に設けられた撹拌体を備える洗濯機であって、
前記撹拌体の少なくとも上面
が、金属マグネシウム(Mg)単体または金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有する金属
で形成されていることを特徴とする洗濯機。
(2)前記洗濯機が、全自動洗濯機または二槽式洗濯機であることを特徴とする、(1)に記載の洗濯機。
(3)前記洗濯機が、縦型洗濯機であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の洗濯機。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、洗濯機の洗濯水収容部の内面を、マグネシウム主成分金属で形成することにより、洗濯機を大型化・複雑化することなく、また、洗濯のたびに手間暇を要することなく、生乾き臭の発生防止等の洗濯性を改善できる洗濯機を提供することができる。
【0013】
すなわち、洗濯機の洗濯水収容部の内面に形成された、マグネシウム主成分金属が洗濯水と反応して生じる水素および水酸化マグネシウムの作用により、生乾き臭の発生防止等の洗濯性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態である洗濯機の一例を示す断面図である。
【
図3】特許文献3の洗濯用洗浄補助用品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、洗濯機を大型化・複雑化することなく、また、洗濯のたびに手間暇を要することなく、生乾き臭の発生防止等の洗濯性を改善できる洗濯機であって、具体的には、洗濯機の洗濯水収容部の内面を、マグネシウム主成分金属で形成した洗濯機に関するものである。
【0016】
本件発明者は、洗濯液中の水素が界面活性剤の汚れを落とす作用を促進すること等を見出し、先の特許文献3の洗濯用洗浄補助用品について特許出願を行い、特許を取得した。
【0017】
本件発明者は、洗濯機の洗濯水収容部の内面を、マグネシウム主成分金属で形成することにより、洗濯のたびに、洗濯槽に洗濯用洗浄補助用品を投入・回収するなどの手間暇を要することなく、また、洗濯機を大型化・複雑化することなく、生乾き臭の発生防止等の洗濯性を改善できることを見出し、本件発明をなしたものである。
【0018】
金属マグネシウム(Mg)が洗濯水と反応して、生乾き臭の発生防止等の洗濯性を改善できると考えられる作用機構は、特許文献3で説明・確認・実証されている次の通りのものである。
【0019】
マグネシウムが水と反応して水素を発生する反応は、次の反応式で表される。
Mg+2H
2O→H
2+Mg(OH)
2
【0020】
この反応は、マグネシウムのイオン化傾向によって水との酸化還元反応が起こるために生じる反応であるが、マグネシウムはカルシウム、ナトリウムに比べてイオン化傾向が小さいので、マグネシウムは室温の水と比較的ゆっくりと反応して水素を発生する。
【0021】
このようにして、洗濯の際に洗濯液中で発生した水素は、次のような働きにより、界面活性剤の汚れを落とす作用を促進するものと考えられる。
【0022】
第一に、水素は原子径が非常に小さいため、洗濯液中に存在すると、衣類等の繊維製品の織り目深くまで界面活性剤を浸透させるように働くため、界面活性剤によって汚れが落とされる範囲が拡大できる。特に、繊維製品が極細の糸で編成されたものである場合には、この作用が顕著に発揮される。
【0023】
第二に、水素は汚れを乳化させる働きがあるため、界面活性剤によって汚れが落とされる度合を大きくすることができる。
【0024】
第三に、汚れは基本的に酸性のものが多いため、マグネシウム粒子を洗濯液に投入して洗濯液を弱アルカリ性とすると、特開2004−238602号公報にも記載されているように、界面活性剤の汚れを落とす作用を促進することにもなる。
【0025】
本発明の「金属マグネシウム(Mg)を主成分として含有する金属」とは、金属マグネシウム(Mg)を比較的高い割合で含有する金属を意味している。金属の組成としては、上記のように、マグネシウムは室温の水と比較的ゆっくりと反応して水素および水酸化マグネシウムを生成することから、水素および水酸化マグネシウムの生成量を多くするためには、金属マグネシウム(Mg)単体の含有率を高くするのが好ましい。具体的には、金属マグネシウム(Mg)を50重量%以上含有する金属が好ましく、80重量%以上含有する金属がより好ましく、実質的に100重量%含有する金属が最も好ましい。(なお、この「実質的に」とは、「現在一般に知られており、現場の生産ベースで採用される精製手段によっては、除去しきれない不純物を、マグネシウム粒子の成分からは除外して考えた場合」を意味する。)
【0026】
本発明のマグネシウム主成分金属が含有することのできる、主成分の金属マグネシウム(Mg)以外の成分としては、
1)マグネシウム鉱石が含有していたり、マグネシウムの精錬、加工等の工程で随伴してくる、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、亜鉛(Zn)等の不純物
2)上記の洗濯水を弱アルカリ性にする作用を阻害しない物質
が挙げられる。
【0027】
本発明において、マグネシウム主成分金属が形成される箇所は、洗濯中に金属マグネシウム(Mg)が洗濯水と接触できる「洗濯機の洗濯水収容部の内面」であればどこでも良いが、洗濯水との接触面積が比較的簡単に大きくできる「洗濯槽の内面」、「撹拌体の上面」が好ましく、「洗濯槽の内面」がより好ましい。
【0028】
また、「洗濯槽の内面」および/または「撹拌体の上面」にマグネシウム主成分金属を形成する手法としては、「洗濯槽の内面」および/または「撹拌体の上面」の部分をマグネシウム主成分金属からなる金属層で形成しても良いし、また、「洗濯槽」および/または「撹拌体」の全体をマグネシウム主成分金属で形成しても良い。これらの選択は、マグネシウム主成分金属の価格、マグネシウム主成分金属を金属層として形成することの手間・コスト等の要素を考慮して、適宜行うことができる。
【0029】
本発明の洗濯機の洗濯水収容部の内面を、マグネシウム主成分金属で形成する手法が適用できる洗濯機としては、要するに、洗濯機の洗濯水収容部の内面に形成されたマグネシウム主成分金属が洗濯水と接触できれば良いことから、全自動洗濯機、二槽式洗濯機、ドラム式洗濯機、縦型洗濯機等のあらゆるタイプの洗濯機に適用可能である。
【0030】
<実施形態>
以下に、図面を用いて本発明の実施形態である洗濯機の一例について説明する。なお、本発明は、以下で説明する具体的な実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づきさまざまな実施形態を採用することが可能である。
【0031】
図1に示す本発明の実施形態の一例である洗濯機1は、次のような構造を有するものである。
【0032】
外枠2内に水槽3が設けられており、この水槽3は外枠2に設けた4本の吊り棒4に防振手段5を介して吊持されている。脱水槽を兼ねた洗濯槽6は水槽3内に回動自在に置かれている。この洗濯槽6の内底部に撹拌体7が回動自在に置かれている。
【0033】
このような洗濯機において、「洗濯槽6の内面」および/または「撹拌体7の上面」の部分をマグネシウム主成分金属からなる金属層で形成しても良いし、また、「洗濯槽6」および/または「撹拌体7」の全体をマグネシウム主成分金属で形成しても良い。
【0034】
さらに、この実施形態の洗濯機1のような、水槽3と、脱水槽を兼ねた洗濯槽6を備えた全自動洗濯機では、「水槽3の内面」の部分をマグネシウム主成分金属からなる金属層で形成することもできるし、「水槽3」の全体をマグネシウム主成分金属で形成することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 洗濯機
2 外枠
3 水槽
4 吊り棒
5 防振手段
6 洗濯槽
7 撹拌体
10 洗濯機
11 電解水生成部
12 洗濯槽
20 マグネシウム粒子
21 網袋
22 洗濯用洗浄補助用品