(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂調合ペイント等の酸化重合タイプの塗料は、安価で隠蔽性、作業性および仕上がり性に優れるため、鉄部や木部を中心に幅広く使用されている。酸化重合タイプの塗料としては、例えば、アルキド樹脂を主成分とする溶剤型塗料組成物が挙げられる。
【0003】
アルキド樹脂を主成分とする酸化重合タイプの溶剤型塗料組成物は、優れた塗装作業性、付着性を有し、常温乾燥型の塗料となる。しかしながら、建築外装等の屋外での使用においては、耐候性について、いまだ満足できない場合があった。
【0004】
また、塗装作業性については、1日に2回の塗装を実施する、所謂1Day2Coatが実施できれば効率のよい塗装作業となる。所謂1Day2Coatとは、例えば、対象物に塗装6時間後に、形成された塗膜上にさらに塗装を重ねる塗装方法である。したがって、1Day2Coatを実施するためには、常温で速乾性の塗料組成物が必要となる。
【0005】
これに対して、アルキド樹脂を主成分とする溶剤型塗料組成物の乾燥速度は、いまだ不十分な状況であり、6時間程度の間隔で塗り重ねた複層塗膜には、下塗り(1層目)の乾燥が不十分なままで上塗り(2層目)を塗装すると、塗膜面がチヂミ状態になる、リフティングの発生が問題となっていた。
【0006】
ここで、優れた耐候性を有する塗膜を形成できる塗料組成物としては、ポリエステル樹脂のエステル交換反応により解重合させて得られる樹脂組成物と、イソシアネート基を有する化合物とを反応させて得られる樹脂組成物の存在下において、ラジカル重合性二重結合基を有する化合物を重合させて得られる塗料用樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の塗料組成物の乾燥性については、塗装4時間後に手につかないレベルとなっており、その速乾性については、未だ満足できるものではなかった。
【0008】
また、複数回塗り重ねた時のチヂミの発生を抑制することを目的として、特定のアルキド変性アクリル樹脂および特定量のアミン化合物を含む常温硬化型の塗料組成物が提案されている(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、特許文献2に記載されたチヂミ性は、40℃7日間という乾燥条件で確認されたものであり、1Day2Coatが実施できるレベルの優れた速乾性については、いまだ満足できるものではなかった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<塗料組成物>
本発明は、基材上に塗膜を形成するための塗料組成物であって、フェノール変性アルキド樹脂(I)と、ウレタン変性アルキド樹脂(II)と、アルキド樹脂(III)とを、必須成分として含む。本発明においては、これら成分以外の成分が、塗料組成物に含まれていてもよい。
【0023】
本発明の塗料組成物は、上記の必須の3成分を特定の組成で含むことにより、優れた速乾性と耐チヂミ性により1Day2Coatが可能となり、同時に、耐候性を有し、さらには光沢を有する塗膜を形成することが可能となる。
【0024】
[アルキド樹脂(III)]
本発明の塗料組成物に含まれるアルキド樹脂(III)は、多塩基酸成分、多価アルコール成分、および不飽和脂肪酸成分を縮重合することにより得られる樹脂である。本発明においては、一般的な塗料組成物に適用できるアルキド樹脂であれば、特に限定されるものではない。
【0025】
本発明の塗料組成物において、アルキド樹脂(III)は、溶解性が高く、低粘度であるため作業性を良好とし、また、フロー性にも良好であるため得られる塗膜の光沢に寄与する。
【0026】
アルキド樹脂の原料となる多塩基酸成分としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、ピロメリット酸およびそれらの酸無水物等を挙げることができる。
【0027】
また、多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、デカンジオール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0028】
不飽和脂肪酸成分としては、例えば、アマニ油、サフラワー油、大豆油、ごま油、ケシ油、エノ油、トウモロコシ油、トール油、ヒマワリ油、綿実油、キリ油、脱水ヒマシ油、米ぬか油等の乾性油および半乾性油の脂肪酸、ならびにハイジエン脂肪酸で代表される合成不飽和脂肪酸を例示することができる。
【0029】
本発明に適用できるアルキド樹脂(III)は、縮重合させる原料として、上記の多塩基酸成分、多価アルコール成分、および不飽和脂肪酸成分のほかに、他の成分を含むものであってもよい。他の成分としては、例えば、安息香酸やp−ヒドロキシ安息香酸等の一塩基酸が挙げられる。
【0030】
アルキド樹脂の製造は、公知の方法で行うことが可能である。例えば、上記の各原料成分を、不活性ガス雰囲気中、約200〜240℃で酸価10以下になるまで脱水縮合する方法が挙げられる。
【0031】
なお、本発明に適用できるアルキド樹脂(III)は、特に限定されるものではないが、例えば、数平均分子量が1000〜5000、油長が30〜80であるものが好ましい。
【0032】
[フェノール変性アルキド樹脂(I)]
本発明の塗料組成物に含まれるフェノール変性アルキド樹脂(I)は、上記したアルキド樹脂をフェノール樹脂によって変性して得られる樹脂である。本発明においては、一般的な塗料組成物に適用できるフェノール変性アルキド樹脂であれば、特に限定されるものではない。
【0033】
本発明の塗料組成物において、フェノール変性アルキド樹脂(I)は、ベンゼン環を有することに起因して、得られる塗膜の耐溶剤性を高めることが可能となる。さらに、弱溶剤への溶解度が低く、ガラス転移点(Tg)が高いことで、形成される塗膜に速乾性を与えるとともに、耐チヂミ性を付与する。
【0034】
アルキド樹脂を変性するためのフェノール樹脂としては、従来公知のフェノール樹脂を適宜選択して使用することができる。例えば、フェノール類とホルムアルデヒド類とを反応させて得られる樹脂を使用することができる。
【0035】
アルキド樹脂にフェノール樹脂を反応させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、アルキド樹脂とフェノール樹脂とを混合し、温度120〜180℃で1〜10時間程度加熱反応させる方法が挙げられる。
【0036】
本発明の塗料組成物に含まれるフェノール変性アルキド樹脂(I)は、市販品を適用することも可能であり、例えば、アルキディア1341(DIC社製)、アラキード7107(荒川化学社製)、HIRENOL PL−1000S(Kolon Industries,Inc社製)が挙げられる。
【0037】
(含有量)
本発明においては、塗料組成物における樹脂固形分100質量部に対するフェノール変性アルキド樹脂(I)の含有量は、ウレタン変性アルキド樹脂(II)の含有量が5〜45質量部となっている条件下で、5〜45質量部である。8〜40質量部であることが好ましく、15〜30質量部であることが特に好ましい。
【0038】
塗料組成物における樹脂固形分100質量部に対するフェノール変性アルキド樹脂(I)の含有量が、ウレタン変性アルキド樹脂(II)の含有量が5〜45質量部となっている条件下で、5〜45質量部であれば、塗り重ねた時の耐チヂミ性を有するとともに、優れた速乾性により1Day2Coatが可能となり、同時に、耐候性を有する塗膜が得られる塗料組成物となる。すなわち、耐チヂミ性、速乾性、耐候性、光沢を、バランスよく有する塗料組成物となる。
【0039】
[ウレタン変性アルキド樹脂(II)]
本発明の塗料組成物に含まれるウレタン変性アルキド樹脂(II)は、上記したアルキド樹脂の水酸基にイソシアネート基を有する化合物を反応させることによって得られる変性樹脂である。本発明においては、一般的な塗料組成物に適用できるウレタン変性アルキド樹脂であれば、特に限定されるものではない。
【0040】
本発明の塗料組成物において、ウレタン変性アルキド樹脂(II)は、ウレタン結合を有することに起因して、得られる塗膜の耐候性を高めることが可能となる。同時に、ウレタン結合は凝集力が高く、弱溶剤への溶解度が低いため、耐チヂミ性を付与する。
【0041】
アルキド樹脂を変性するためのイソシアネート基を有する化合物としては、従来公知の化合物を適宜選択して使用することができる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。
【0042】
アルキド樹脂にイソシアネート基を有する化合物を反応させる方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用することができる。例えば、アルキド樹脂の水酸基にイソシアネート基を有する化合物を、触媒の存在下で反応させる方法が挙げられる。使用できる触媒としては、通常のウレタン化反応において使用される触媒であれば特に限定されるものではないが、例えば、トリエチルアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンジアミン等のアミン系触媒や、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート等の錫系触媒等が挙げられる。これらの触媒は、単独または二種以上を混合して使用してもよい。
【0043】
(含有量)
本発明においては、塗料組成物における樹脂固形分100質量部に対するウレタン変性アルキド樹脂(II)の含有量は、フェノール変性アルキド樹脂(I)の含有量が5〜45質量部となっている条件下で、5〜45質量部である。7〜40質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることが特に好ましい。
【0044】
塗料組成物における樹脂固形分100質量部に対するウレタン変性アルキド樹脂(II)の含有量の含有量が、フェノール変性アルキド樹脂(I)が5〜45質量部となっている条件下で、5〜45質量部であれば、優れた速乾性と耐チヂミ性により、1Day2Coatが可能となり、同時に耐候性を有する塗膜が得られる塗料組成物となる。すなわち、耐チヂミ性、速乾性、耐候性、光沢を、バランスよく有する塗料組成物となる。
【0045】
(ウレタン変性率)
ウレタン変性アルキド樹脂(II)のウレタン変性率は、10〜15%であることが好ましい。ウレタン変性率が、10〜15%であれば、ウレタン結合による凝集力が高くなり、耐チヂミ性が向上する。
【0046】
ここで、ウレタン変性アルキド樹脂(II)のウレタン変性率とは、ウレタン変性アルキド樹脂(II)の原料となるアルキド樹脂の質量を100とした場合における、反応させるイソシアネート基を有する化合物のイソシアネート基のmol数を、トリレンジイソシアネートの質量に換算した数値である。トリレンジイソシアネートのイソシアネート当量は87であるため、以下の式により、ウレタン変性率を求めることができる。
ウレタン変性率(%)=アルキド樹脂100に対するイソシアネート化合物の仕込み量×87/イソシアネート化合物のイソシアネート当量
【0047】
[その他成分]
本発明の塗料組成物は、必須成分となる、フェノール変性アルキド樹脂(I)、ウレタン変性アルキド樹脂(II)、アルキド樹脂(III)以外の他の成分を任意に含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、顔料、併用樹脂、溶剤、タレ止め・沈降防止剤、色分れ防止剤、消泡・ワキ防止剤、レベリング剤、ホルムアルデヒドキャッチャー剤、ドライヤー等が挙げられる。
【0048】
本発明の塗料組成物が顔料を含む場合には、適用できる顔料としては、体質顔料、着色顔料、防錆顔料のうちの少なくとも1種であっても、2種以上を併用してもよい。
【0049】
(防錆顔料)
本発明の塗料組成物は、防錆顔料を含むことが好ましい。防錆顔料を含むことにより、防錆性が付与され、例えば、本発明の塗料組成物を下塗り剤として用いる場合には、防錆機能を有する下塗り塗膜を形成することができる。
【0050】
防錆顔料としては、塗料組成物に適用できる従来公知の化合物を適宜選択して使用することができる。例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム、リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛、亜鉛末(Zn)、アルミ粉(Al)等が挙げられる。
【0051】
(溶剤)
本発明の塗料組成物に適用できる溶剤は、特に限定されるものではないが、弱溶剤であることが好ましい。弱溶剤は、すでに塗装されている塗膜に対しての溶解力が低いため、塗り重ね性を向上させ、塗膜のチヂミを抑制することができる。また、臭気を低減することができる。
【0052】
弱溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤を挙げることができ、例えば、ミネラルスピリットやターペン等に代表されるような、高引火点、高沸点、低有害性であるものが好ましい。より具体的には、ミネラルスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペン、イソパラフィン、ソルベント灯油、芳香族ナフサ、VM&Pナフサ、ソルベントナフサ等が挙げられる。
【0053】
[顔料体積濃度(PVC)]
本発明の塗料組成物の顔料体積濃度(PVC:Pigment volume concentration)は、20〜35%の範囲であることが好ましく、25〜30%であることが特に好ましい。
【0054】
ここで、顔料体積濃度(PVC)とは、塗料組成物における全樹脂分と全顔料との合計固形分に占める顔料の体積百分率(%)を意味する。塗料組成物の顔料体積濃度(PVC)が20〜35%の範囲であれば、光沢を保持しつつ隠蔽性が良好となる。
【0055】
<塗料組成物の調製方法>
本発明の塗料組成物は、当業者において通常用いられる方法を適用して、調製することができる。例えば、各成分を、ディスパー、ボールミル、S.G.ミル、ロールミル、プラネタリーミキサー等で混合することにより調製することができる。
【0056】
[基材]
本発明の塗料組成物を適用する基材は、特に限定されるものではない。例えば、鉄鋼、アルミニウム、ステンレス等の金属基材や、木部材等が挙げられる。なお、基材は、その用途に応じて様々な形状が存在し、いずれの形状にも適用することができる。
【0057】
<塗料組成物の用途>
本発明の塗料組成物は、下塗り塗料としても、上塗り塗料としても、いずれの態様にも適用することができる。
【0058】
特に、本発明の塗料組成物は、優れた速乾性を有するとともに、複数回塗り重ねた時の耐チヂミ性を有しており、1Day2Coatが可能な組成物であるため、1日の間に、まず下塗りを実施し、その後に上塗り塗装を重ね塗りすることが可能となる。
【0059】
<塗膜>
(単層塗膜)
本発明の塗膜は、本発明の塗料組成物を硬化させることで得られる。本発明の塗料組成物を、下塗り塗料として用いた場合には、下地塗膜となり、また、上塗り塗料として用いた場合には、表層塗膜を形成することができる。
【0060】
本発明の塗料組成物を硬化して得られる塗膜は、塗料組成物が防錆顔料を含む場合にはより防錆性が向上する。
【0061】
また、上塗り塗料として用いた場合には、アルキド樹脂(III)に起因する光沢を有するとともに、ウレタン変性アルキド樹脂(II)に起因する耐候性を、同時に有する表層塗膜となる。
【0062】
(複層塗膜)
本発明の塗料組成物は、下塗り塗料としても、上塗り塗料としても、いずれの態様にも適用することができるため、本発明の塗料組成物を硬化させた塗膜の上に、さらに、本発明の塗料組成物を硬化させた塗膜を積層して、複層塗膜を形成することができる。
【0063】
本発明の塗料組成物にて複層塗膜を形成する場合には、下塗り塗料と、上塗り塗料として用いる本発明の塗料組成物は、同一の組成物であっても、異なる組成物であってもよい。目的に応じて、本発明の範囲内で、適宜組成を異ならせて用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例等によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0065】
<アルキド樹脂(III)の製造>
攪拌機、還流冷却器、水分離器、温度制御装置、窒素導入管を備えたフラスコに、亜麻仁油21.5部、大豆油32.1部、グリセリン7.1部、ペンタエリスリトール11.4部、水酸化リチウム0.04部を仕込み、30分かけて240℃まで昇温した後に、240℃にて30分間維持した。その後、150℃まで冷却し、無水フタル酸31.9部、還流キシロール5部を仕込み、220℃まで昇温し、樹脂酸価5になるまで220℃で反応させた後、ミネラルターペンを加えて不揮発分が50%になるよう調整し、アルキド樹脂のワニスを得た。
【0066】
<ウレタン変性アルキド樹脂(II)の製造>
[ウレタン変性アルキド樹脂(II)Aの製造]
(アルキド樹脂の製造)
攪拌機、還流冷却器、水分離器、温度制御装置、窒素導入管を備えたフラスコに、大豆油55部、グリセリン13部、ペンタエリスリトール13部、水酸化リチウム0.04部を仕込み、30分かけて240℃まで昇温した後に、240℃にて30分間維持した。その後、150℃まで冷却し、無水フタル酸19部、還流キシロール5部を仕込み、220℃まで昇温し、樹脂酸価7になるまで220℃で反応させた後、ミネラルターペンを加えて不揮発分が50%になるよう調整し、アルキド樹脂のワニスを得た。
【0067】
(アルキド樹脂の変性)
得られたアルキド樹脂のワニス200部に、トリレンジイソシアネート12.5部を仕込み、100℃にて6時間反応させた後、ミネラルターペンを加え、揮発分が50%になるように調整し、ウレタン変性率12.5%のウレタン変性アルキド樹脂Aのワニスを得た。
【0068】
[ウレタン変性アルキド樹脂(II)Bの製造]
トリレンジイソシアネートの仕込み量を5部に変更した以外は、ウレタン変性アルキド樹脂Aのワニスと同様にして、ウレタン変性率5%のウレタン樹脂変性アルキド樹脂Bのワニスを得た。
【0069】
[ウレタン変性アルキド樹脂(II)Cの製造]
トリレンジイソシアネートの仕込み量を10部に変更した以外は、ウレタン変性アルキド樹脂Aのワニスと同様にして、ウレタン変性率10%のウレタン樹脂変性アルキド樹脂Cのワニスを得た。
【0070】
[ウレタン変性アルキド樹脂(II)Dの製造]
トリレンジイソシアネートの仕込みを15部に変更した以外は、ウレタン変性アルキド樹脂Aのワニスと同様にして、ウレタン変性率15%のウレタン樹脂変性アルキド樹脂Dのワニスを得た。
【0071】
<実施例1>
アルキド樹脂(III)を固形分換算で27.5部、フェノール変性アルキド樹脂(I)を固形分換算で2.0部、ウレタン変性アルキド樹脂(II)Aを固形分換算で5.0部、防錆顔料3.0部を配合処方し、高速ディスパーで30分間攪拌することによって、塗料組成物を調製した。なお、塗料組成物には、溶媒としてミネラルスピリット、上記以外の成分として、酸化チタン、体質顔料、タレ止め剤、消泡剤、ドライヤー等を配合した。
【0072】
<実施例2〜28、比較例1〜3>
表1〜7に示される配合処方に従って、実施例1の塗料組成物の調製方法と同様にして、実施例2〜28および比較例1〜3の塗料組成物を調製した。なお、実施例2〜28および比較例1〜3の表中において、防錆顔料「有り」とは、実施例1と同様に防錆顔料を3.0部配合処方したことを示す。
【0073】
表1〜7における樹脂成分において、括弧内で示された数値は、塗料組成物における樹脂固形分の合計を100質量%とした場合の、それぞれの成分の質量比率である。また、実施例21はウレタン変性アルキド樹脂(II)Bを5.0部配合した例であり、実施例22および23はウレタン変性アルキド樹脂(II)C、ウレタン変性アルキド樹脂(II)Dを各々5.0部配合した例である。表1〜7には、ウレタン変性アルキド樹脂(II)のウレタン変性率、および得られた塗料組成物の顔料体積濃度(PVC)を併記する。
【0074】
実施例および比較例で用いた各配合成分を、以下に示す。
アルキド樹脂(III):上記で得られたアルキド樹脂のワニス
ウレタン変性アルキド樹脂(II)A:上記で得られたウレタン変性アルキド樹脂(II)Aのワニス
ウレタン変性アルキド樹脂(II)B:上記で得られたウレタン変性アルキド樹脂(II)Bのワニス
ウレタン変性アルキド樹脂(II)C:上記で得られたウレタン変性アルキド樹脂(II)Cのワニス
ウレタン変性アルキド樹脂(II)D:上記で得られたウレタン変性アルキド樹脂(II)Dのワニス
フェノール変性アルキド樹脂(I):アルキディア1341(DIC社製)
防錆顔料:亜リン酸カルシウム
【0075】
[評価]
実施例1〜28および比較例1〜3で得られた塗料組成物について、以下の方法にて、耐チヂミ性、耐候性、光沢、隠蔽性、防錆性について、評価を行った。結果を表1〜7に示す。
【0076】
(耐チヂミ性)
得られた塗料組成物を、10%に希釈した。ブリキ板を準備し、10%希釈塗料組成物を4−22MILサジングテスターにて塗布し、水平に置いて23℃湿度50%で、6時間養生して下塗り塗膜を形成した。形成した下塗り塗膜の上に、10%希釈塗料組成物を、乾燥後の膜厚が35μmとなるように刷毛で塗布して、上塗塗膜を形成した。形成した上塗塗膜を目視で観察し、以下の評価基準でチヂミが発生した下塗り塗膜の厚みを確認することで、耐チヂミ性について評価した。
◎: 下塗り塗膜が12MIL以上でチヂミ発生
○: 下塗り塗膜が9MILでチヂミ発生
△: 下塗り塗膜が8MILでチヂミ発生
×: 下塗り塗膜が7MIL以下でチヂミ発生
【0077】
(光沢)
JIS K 5516 7.11に従って、鏡面光沢度を評価した。具体的には、ガラス板に、無希釈の塗料組成物を4MILアプリケータで塗装し、水平に置いて、23℃で48時間乾燥後に、デジタル変角光沢計(スガ試験機株式会社製「UGV−5K」)を用いて60度グロスを測定した。評価基準を以下に示す。
◎: 85以上
○: 80以上85未満
△: 75以上80未満
×: 75未満
【0078】
(隠蔽性)
JIS K 5516 7.9に従って、隠蔽率を評価した。すなわち、JIS K 5600−4−1 4.1.2 方法Bの隠蔽率試験に従って評価した。具体的には、塗料の一般的な試験方法に用いる隠蔽率試験紙(日本テストパネル株式会社製)に、無希釈の塗料組成物を4MILアプリケータによって塗装し、23℃で48時間乾燥後に、色彩色差計(コニカミノルタ社製、CR―400)を用いて、白色部(YW)と黒色部(YB)における三刺激値Yを測定し、隠ぺい率YB/YWを百分率で算出した。評価基準を以下に示す。
◎: 95以上
○: 90以上95未満
△: 85以上90未満
×: 80以上85未満
【0079】
(耐候性、防錆性評価用試験板の作製)
耐候性評価、および防錆性評価用の試験板を作製するにあたり、基材として、みがき鋼板(150×70×0.8mm)を準備した。まず、みがき鋼板表面の防錆油を溶剤(キシレン)で洗浄し、溶剤をウエスでふき取った。そして、溶剤をふき取ったみがき鋼板の裏面に、錆止め塗料組成物(ハイポンファインプライマーII、日本ペイント株式会社製)を塗装し、裏面をバックシールした。みがき鋼板の裏面の錆止め塗料が乾燥した後、みがき鋼板の表面に、実施例1〜28、および比較例1〜3で得られた塗料組成物を、塗布量が100〜120g/m
2なるように、刷毛を用いて塗装した。室温にて24時間放置後、試験板の側面(端面)を上述の錆止め塗料組成物にて塗装し、側面をサイドシールした。さらに、室温にて6日間放置乾燥することで、耐候性評価、および防錆性評価用の試験板を得た。
【0080】
(耐候性)
上記で作成した試験板をJIS K 5516 7.17に従って、屋外暴露により耐候性を白亜化テープで評価した。なお、暴露期間は1年とした。評価基準を以下に示す。
◎: 膨れ、はがれ、および割れがなく、色とつやの変化の程度が大きくない。白亜化等級3以下。
○: 膨れ、はがれ、および割れがなく、色とつやの変化の程度が大きくない。白亜化等級4。
△: 膨れ、はがれ、および割れがなく、色とつやの変化の程度が大きくない。白亜化等級5。
×: 膨れ、はがれ、および割れがなく、色とつやの変化の程度が大きい。白亜化等級5。
【0081】
(防錆性)
上記で作成した試験板をJIS K 5674 7.12に記載の試験方法に従って、JIS K 5600 7.9の附属書1(サイクルD)に示す条件の試験を36サイクル行ない、サイクル腐食性を評価した。評価基準を以下に示す。
◎: 一般面に錆が無く、カット部の片側最大フクレ幅またはサビ幅が1.7mm未満
○: 一般面に錆が無く、カット部の片側最大フクレ幅またはサビ幅が1.7mm以上2.0mm未満
△: 一般面に錆が無く、カット部の片側最大フクレ幅またはサビ幅が2.0mm以上
×: 一般面に錆が認められ、カット部の片側最大フクレ幅またはサビ幅が2.0mm以上
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【0084】
【表3】
【0085】
【表4】
【0086】
【表5】
【0087】
【表6】
【0088】
【表7】