特許第6894515号(P6894515)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6894515フェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894515
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】フェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20210621BHJP
   C22C 38/42 20060101ALI20210621BHJP
   C21D 9/46 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   C22C38/00 302Z
   C22C38/42
   C21D9/46 R
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-534678(P2019-534678)
(86)(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公表番号】特表2020-509217(P2020-509217A)
(43)【公表日】2020年3月26日
(86)【国際出願番号】KR2017014205
(87)【国際公開番号】WO2018117489
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年6月24日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0177454
(32)【優先日】2016年12月23日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコ
【氏名又は名称原語表記】POSCO
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ オン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミ ナム
【審査官】 鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−186764(JP,A)
【文献】 特開2011−001564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 − 38/60
C21D 8/00 − 8/04
C21D 9/46 − 9/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.5%、銅(Cu):0.3〜1.5%、を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなり、
100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50〜200ea/100μmであり、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス冷延鋼板
【請求項2】
引張強度が520MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板
【請求項3】
伸び率が20%以上であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板
【請求項4】
5%硫酸雰囲気で臨界電流密度(Icrit)が10mA以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板
【請求項5】
質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.5%、銅(Cu):0.3〜1.5%、を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼スラブを熱間圧延する段階および冷間圧延する段階を含み、
前記熱間圧延の時、式(1)の値が1,000以下を満足し、
前記冷間圧延した冷延板材は100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50〜200ea/100μmであり、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とするフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
15*RHT/R4+CT−−−−−−式(1)
ここで、RHT(℃)はスラブ再加熱温度を意味し、R4(%)は粗圧延のR4スタンドの圧下率を意味し、CT(℃)は巻き取り温度を意味する。
【請求項6】
前記式(1)の値は800〜1,000を満足することを特徴とする請求項5に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
【請求項7】
RHTは1,250℃未満であり、R4は40%以上であり、CTは650℃未満であることを特徴とする請求項5に記載のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、析出物および結晶粒の制御を通じて強度および耐酸性を向上させることができる強度および耐酸性が優秀なフェライト系ステンレス冷延鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステンレス鋼のうち特にフェライト系ステンレス鋼は、建築資材、食品容器、家電製品、自動車の排気系部品などに広く使われている。
【0003】
フェライト系ステンレス鋼は最近自動車のバッテリーセル用として一部適用されており、自動車メーカーでは長期間のバッテリー性能を保証するために、既存のフェライト系ステンレス鋼より高い強度と耐食性を要求しており、バッテリーの価格を下げるためにさらに低い価格の素材も要求している。
【0004】
このような自動車メーカーの要求を満足するためのフェライト系ステンレス鋼の高強度化方法は、加工硬化、固溶強化、析出硬化などの方法があるが、相変態のないフェライト系ステンレス鋼の特性上加工硬化時に加工性が急激に落ちる問題があり、固溶強化効果が優秀なMo、Nbなどは高価な元素であるため活用するのが難しい。
【0005】
従来は、Cはフェライト系ステンレス鋼の加工性を害する元素であって、特別な用途でなければ殆ど0.02wt%以下に低く管理した。しかし、その反対に多量のCを添加すると、炭化物(carbide)の析出によってフェライト系ステンレス鋼の強度を向上させることができ、最近は加工技術の発達によりある程度の軟性さえ確保できれば強度と加工性を同時に確保可能である。
【0006】
しかし、Cを多量入れるとしても高温で熱延したり圧下率が低く巻き取り温度が高くなると、炭化物が変形組織内に微細に析出できずに粗大となるため、結晶粒の微細化が難しく、また所望する強度を確保し難い問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−183081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が目的とするところは、フェライト系ステンレス鋼の合金成分を制御して、フェライト系ステンレス鋼の析出物および結晶粒の制御を通じて強度および耐酸性を向上させることができる優秀なフェライト系ステンレス冷延鋼板を提供することである。
また、熱間圧延時にスラブ再加熱温度、圧下率および巻き取り温度を制御して、析出物および結晶粒の制御を通じて強度および耐酸性を向上させることができるフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板は、質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.5%、銅(Cu):0.3〜1.5%、を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなり、100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50〜200ea/100μmであることを特徴とする。
【0010】
前記フェライト系ステンレス冷延鋼板の平均結晶粒径は10μm以下であり、引張強度が520MPa以上であり、伸び率が20%以上であることを特徴とする。
【0011】
前記フェライト系ステンレス冷延鋼板の実施例によると、5%硫酸雰囲気で臨界電流密度(Icrit)が10mA以下であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板の製造方法は、質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.5%、銅(Cu):0.3〜1.5%、を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼スラブを熱間圧延する段階および冷間圧延する段階を含み、熱間圧延時の式(1)の値が1,000以下を満足することを特徴とする。
15*RHT/R4+CT −−−−−−式(1)
ここで、RHT(℃)はスラブ再加熱温度を意味し、R4(%)は粗圧延のR4スタンドの圧下率を意味し、CT(℃)は巻き取り温度を意味する。
【0013】
前記フェライト系ステンレス冷延鋼板の式(1)の値は800〜1,000を満足することを特徴とする。
【0014】
前記フェライト系ステンレス冷延鋼板のRHTは1,250℃未満であり、R4は40%以上であり、CTは650℃未満であることを特徴とする。
【0015】
前記フェライト系ステンレス冷延鋼板は100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50〜200ea/100μmであり、平均結晶粒径が10μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フェライト系ステンレス鋼の合金成分および熱間圧延条件を制御して、析出物および結晶粒の制御を通じてフェライト系ステンレス冷延鋼板の強度および耐酸性を向上させることができる。


【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延条件および冷延鋼板の炭化物個数の相関関係を説明するためのグラフである。
図2】本発明の一実施例に係るフェライト系ステンレス冷延鋼板の析出物分布状態を透過電子顕微鏡(TEM)を通じて撮影した写真である。
図3】本発明の比較例に係るフェライト系ステンレス冷延鋼板の析出物分布状態を透過電子顕微鏡(TEM)を通じて撮影した写真である。
図4】フェライト系ステンレス鋼の冷延鋼板の炭化物個数および引張強度の相関関係を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の強度および耐酸性が優秀なフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.5%、銅(Cu):0.3〜1.5%、を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなり、100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50〜200ea/100μmである。
【0019】
以下、図面を参照して本発明について詳細に説明する。以下の実施例は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に本発明の思想を十分に伝達するために提示するものである。本発明はここで提示した実施例にのみ限定されず、他の形態で具体化されてもよい。図面は本発明を明確にするために説明と関係のない部分の図示を省略し、理解を助けるために構成要素の大きさを多少誇張して表現することができる。
【0020】
本発明の一実施例に係る強度および耐酸性が優秀なフェライト系ステンレス鋼は、質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.50%、銅(Cu):0.3〜1.5%、を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなる。
【0021】
炭素(C):0.1〜0.2%
炭素(C)の量は0.1〜0.2%である。炭素(C)の量が0.1%未満であると、熱延中に生成されるオーステナイトの量が減少してフェライトバンド組織が破壊されずに残存することとなって結晶粒の大きさが大きくなる問題があり、これに伴い、最終冷延製品の引張強度が500MPa未満と強度が低下する問題点がある。また、炭素(C)の量が0.2%を超過すると、素材の炭化物が過度に増加して最終製品の伸び率が落ち、炭化物の脱落で表面品質および耐食性が低下する問題点がある。
【0022】
窒素(N):0.005〜0.05%
窒素(N)の量は0.005〜0.05%である。窒素(N)の量が0.005%未満であると、精錬時間の増加および耐火物の寿命の短縮により製造原価が上昇し、また、鋳造時の過冷度が低いためスラブの等軸晶率が低くなり、窒素(N)の量が0.05%を超過すると、スラブ鋳造中に窒素によるピンホールが発生する可能性が高く、最終冷延製品でCrN析出物の単位面積当たりの個数が増加してCrN析出物周辺に形成されたクロム枯渇領域(Cr depleted zone)によって最終冷延製品の表面に多数のピット(pit)を形成して表面品質が低下することになる。
【0023】
マンガン(Mn):0.01〜0.5%
マンガン(Mn)の量は0.01〜0.5%である。マンガン(Mn)の量が0.01%未満であると、精錬価格が高くなる問題があり、マンガン(Mn)の量が0.5%を超過すると、伸び率と耐食性が低下する問題がある。
クロム(Cr):12.0〜19.0%
クロム(Cr)の量は12.0〜19.0%である。クロム(Cr)の量が12.0%未満であると、耐食性が悪くなる問題があり、クロム(Cr)の量が19.0%を超過すると、伸び率が低下して熱延スチッキング(sticking)欠陥が発生する問題がある。
ニッケル(Ni):0.01〜0.50%
ニッケル(Ni)の量は0.01〜0.50%である。ニッケル(Ni)の量が0.01%未満であると、精錬価格が高くなる問題があり、ニッケル(Ni)の量が0.5%を超過すると、素材の不純物が増加して伸び率が低下する問題がある。
【0024】
銅(Cu):0.3〜1.5%
銅(Cu)の量は0.3〜1.5%である。銅(Cu)の量が0.3%未満であると、5%硫酸雰囲気で臨界電流密度(Icrit)が10mAを超過して十分な耐酸性を確保することができず、銅(Cu)の量が1.5%を超過すると原料価格が過度に高くなるだけでなく、熱間加工性の低下と最終製品の伸び率低下を招く。
【0025】
フェライト系ステンレス鋼の最終冷延製品で所望の引張強度を得るためには、微細な炭化物を多数確保することが必要であり、結晶粒の微細化が要求される。
本発明の強度および耐酸性が優秀なフェライト系ステンレス鋼は、100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50ea/100μm以上である。
例えば、前記炭化物はM23C6型炭化物系金属析出物である。
前記炭化物の単位面積当たりの個数を増加させるためには、熱延工程中に熱延素材に十分な変形組織を形成しなければならない。変形組織が十分に形成されない場合、炭化物析出サイト(site)が充分でないため炭化物の量を増加させ難い。
【0026】
熱延素材に十分な変形組織を形成するためには、熱延工程中にスラブ再加熱温度、粗圧延圧下率、熱延コイル巻き取り温度を制御しなければならず、詳細については後述する。
すなわち、熱延工程条件の制御を通じて100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50ea/100μm以上を達成することができ、したがって、微細な炭化物を多数確保することによって520MPa以上の引張強度を確保することができる。前記工程条件を外れる場合、炭化物が粗大になって炭化物の量を十分に得ることができない。
例えば、100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50ea/100μm未満の場合、炭化物の量が少ないため結晶粒の粗大化が発生して引張強度が低下する。
【0027】
例えば、前記フェライト系ステンレス鋼は平均結晶粒径が10μm以下であり、
引張強度が520MPa以上であり、
伸び率が20%以上であり、
5%硫酸雰囲気で臨界電流密度(Icrit)が10mA以下である。
【0028】
本発明のフェライト系ステンレス鋼の製造方法によると、質量%で、炭素(C):0.1〜0.2%、窒素(N):0.005〜0.05%、マンガン(Mn):0.01〜0.5%、クロム(Cr):12.0〜19.0%、ニッケル(Ni):0.01〜0.5%、銅(Cu):0.3〜1.5%を含み、残りが鉄(Fe)およびその他不可避不純物からなるフェライト系ステンレス鋼スラブを熱間圧延する段階および冷間圧延する段階を含み、熱間圧延時の式(1)の値が1,000以下を満足する。
15*RHT/R4+CT −−−−−−式(1)
ここで、RHT(℃)はスラブ再加熱温度を意味し、R4(%)は粗圧延のR4スタンドの圧下率を意味し、CT(℃)は巻き取り温度を意味する。
【0029】
前記成分を含む溶鋼を連続鋳造を通じてフェライト系ステンレス鋼スラブを製造する。その後、前記スラブを熱間圧延し、熱間圧延を通じて2〜10mm厚さの熱延コイルを製造する。
例えば、スラブ再加熱温度(RHT)は1,250℃未満であり、粗圧延のR4スタンドの圧下率(R4)は40%以上であり、巻き取り温度(CT)は650℃未満で遂行するが、このとき、熱間圧延条件は式(1)の値が1,000以下を満足するように遂行される。
【0030】
図1は、フェライト系ステンレス鋼の熱間圧延条件および冷延鋼板の炭化物個数の相関関係を説明するためのグラフである。
図1に示す通り、式(1)による値が1,000以下である場合、100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50ea/100μm以上であることが分かる。
炭素含量が充分でも式(1)の熱間圧延条件を外れる場合には熱延素材に十分な変形組織が形成されないため、炭化物析出サイトが十分に形成されない。
特に、巻き取り温度が650℃以上と高い場合、析出物の粗大化が発生して所望の炭化物個数を得ることができず、これに伴い結晶粒が粗大になって最終製品で所望の引張強度を得ることができなくなる。
例えば、式(1)の値は800〜1,000を満足することができる。
式(1)の値が800未満の場合、熱間圧延時温度が過度に低いため板形状の不良を引き起こす。
【0031】
熱延板材は焼鈍工程を経るが、前記焼鈍工程で700〜900℃の温度での焼鈍熱処理を通じて炭化物を十分に析出させる。例えば、前記焼鈍熱処理はBAF焼鈍工程で遂行される。前記焼鈍熱処理後に、冷間圧延を通じて2mm厚さ未満の冷延板材を製造して800〜900℃の温度の熱処理を通じて最終熱処理を遂行できる。
例えば、前記冷延板材は100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数が50ea/100μm以上であり、平均結晶粒径が10μm以下である。
【0032】
以下、実施例を通じて本発明についてより詳細に説明する。
実施例
連続鋳造を通じて表1の成分を満足する発明鋼1〜4そして比較鋼1〜9のスラブを製造して表2の熱間圧延条件により再加熱した後、熱間圧延を通じて5mmtの熱延コイルを製造した。そして、BAF焼鈍工程で900℃の焼鈍熱処理を遂行した。その後、冷間圧延を通じて1mmtの冷延版を製造し900℃の熱処理を遂行し、表面ショットボール処理および硫酸および過酸化水素を含む酸洗液で酸洗して最終製品を製造した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
これに伴い、最終生産された冷延鋼板の100nm以上の直径を有する炭化物の単位面積当たりの個数、平均結晶粒径、引張強度、伸び率、5%硫酸雰囲気で臨界電流密度を測定して表3に示した。
最終生産された冷延板材に対しTEM Replicaを作って単位面積当たり(100μm)炭化物析出物の個数を測定した。
【0036】
【表3】
【0037】
図2は、本発明のフェライト系ステンレス冷延鋼板の析出物分布状態を透過電子顕微鏡(TEM)を通じて撮影した写真である。図3は、本発明の比較例に係るフェライト系ステンレス冷延鋼板の析出物分布状態を透過電子顕微鏡(TEM)を通じて撮影した写真である。
図2は前記実施例2による冷延鋼板を撮影した写真であり、図3は前記比較例2による冷延鋼板を撮影した写真である。
図2および図3に示す通り、比較例1〜4のように、熱間圧延時のスラブ再加熱温度、R4圧下率、巻き取り温度に関する関係式による、15*RHT/R4+CTの値が1,000を超過して炭素含量が充分であるとしても、熱延素材に十分な変形組織が形成されないため、炭化物析出サイトが充分でない。
それだけでなく、比較例2でのように、巻き取り温度が高いと析出物の粗大化が発生して所望の炭化物個数を得ることができないことが分かる。
【0038】
比較例5のように、銅の含量が多すぎる場合、最終製品の伸び率が18.8%を有して伸び率が低下することが分かり、比較例6のように銅の含量が少ない場合、5%硫酸雰囲気で臨界電流密度(Icrit)が14.5mAを示して十分な耐酸性を確保することができない。
比較例7および8のように、炭素の含量が多すぎる場合、炭化物の個数が増加して伸び率が低下することを確認することができる。比較例9〜13のように、炭素の含量が少ない場合、結晶粒の大きさが大きくなり、引張強度が500MPa未満と強度が低下することを確認することができる。
【0039】
図4は、フェライト系ステンレス鋼の冷延鋼板の炭化物個数および引張強度の相関関係を説明するためのグラフである。
図4に示す通り、前記実施例および比較例による冷延鋼板の炭化物数と引張強度をグラフで示したものであって、炭化物の数が増加するほど引張強度も増加する傾向があることが分かる。
前述において、本発明の例示的な実施例を説明したが、本発明はこれに限定されず、該当技術分野で通常の知識を有する者であれば次に記載する特許請求の範囲の概念と範囲を逸脱しない範囲内で多様な変更および変形が可能であることが理解できるはずである。
本発明の実施例に係る強度および耐酸性が優秀なフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法は、建築資材、食品容器、家電製品、自動車の排気系部品、自動車のバッテリーなどに適用可能である。
図1
図2
図3
図4