特許第6894516号(P6894516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6894516血管遮断剤として有用なベンゾフェノンチアゾール誘導体およびトポイソメラーゼ抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的調合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894516
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】血管遮断剤として有用なベンゾフェノンチアゾール誘導体およびトポイソメラーゼ抑制剤を含む癌の予防または治療用薬学的調合物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/427 20060101AFI20210621BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20210621BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20210621BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20210621BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   A61K31/427
   A61K45/00
   A61P35/00
   A61P43/00 121
   A61K31/4745
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-536801(P2019-536801)
(86)(22)【出願日】2017年9月8日
(65)【公表番号】特表2019-529556(P2019-529556A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】KR2017009889
(87)【国際公開番号】WO2018056620
(87)【国際公開日】20180329
【審査請求日】2019年3月19日
(31)【優先権主張番号】62/400,054
(32)【優先日】2016年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】15/447,247
(32)【優先日】2017年3月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514052597
【氏名又は名称】チョン クン ダン ファーマシューティカル コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】514039912
【氏名又は名称】ナショナル キャンサー センター
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】キム,ス ジン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン サン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミンチェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン−ファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ユン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イン チュル
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−515461(JP,A)
【文献】 特表2005−522527(JP,A)
【文献】 荒川泰弘,I型トポイソメラーゼ阻害薬,日本臨床,2015年,73巻、増刊号2,p.174-177
【文献】 JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY,2010年,Vol.28, No.30,p.4658-4663
【文献】 PLOS ONE,2013年,Vol.8, Issue 7,p.1-6
【文献】 International Journal of Cancer,1992年,Vol.50, No.4,p.1-2
【文献】 Yasuhiko Kano et al.,In vitro schedule-dependent interaction between paclitaxel and SN-38(the active metabolite of irinotecan) in human carcinoma cell lines,Cancer Chemotherapy and Pharmacology,1998年,Vol.42,p.91-98
【文献】 Anticancer Research,2014年,Vol.34,,p.1715-1722
【文献】 Journal of Medicinal Chemistry,2010年,Vol.53,p.6337-6354
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/426
A61K 31/4745
A61K 45/00
A61P 35/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)第1有効成分として下記化学式1の化合物;および
2)第2有効成分としてトポイソメラーゼ抑制剤を含み、
前記トポイソメラーゼ抑制剤が、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン、ピリドベンゾインドールおよびこれらの薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される一つ以上である、
癌の予防または治療用薬学的調合物。
【化1】
【請求項2】
前記トポイソメラーゼ抑制剤が、下記化学式2のイリノテカンまたはその塩酸塩である、請求項1に記載の調合物。
【化2】
【請求項3】
前記第1有効成分が、前記化学式1の化合物の塩酸塩((S)−N−(4−(3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−4−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール−2−イル)−2−アミノ−3−メチルブタンアミドの塩酸塩)である、請求項1に記載の調合物。
【請求項4】
前記第1有効成分および第2有効成分が、それぞれ全体調合物100重量部に対して1.4〜16.7重量部および83.3〜98.6重量部で含まれる、請求項1に記載の調合物。
【請求項5】
前記癌は、肝癌、肺ガン、胃ガン、腎癌、大腸癌、すい臓癌、肝癌、腎癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣ガン、乳癌および甲状腺癌からなる群より選択される固形癌である、請求項1に記載の調合物。
【請求項6】
前記固形癌は、大腸癌または子宮癌である、請求項に記載の調合物。
【請求項7】
第1有効成分および第2有効成分が、それぞれ別途の製剤形態で含まれる、請求項1に記載の調合物。
【請求項8】
第1有効成分および第2有効成分が、組み合わせられて一つの製剤形態で含まれる、請求項1に記載の調合物。
【請求項9】
第1有効成分は経口投与形態の製剤として含まれ、第2有効成分は注射剤形態の製剤として含まれる、請求項に記載の調合物。
【請求項10】
前記調合物中、前記第1有効成分が含まれている製剤と第2有効成分が含まれている製剤は同時または順次に投与することができる製剤形態である、請求項7または9に記載の調合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新生物疾患の治療に有用な2種の活性成分を含む薬学的組成物に関するものであって、より詳しくは、活性成分として血管遮断剤(vascular disrupting agent、以下、‘VDA’とも言う)およびトポイソメラーゼ抑制剤系列の化学毒性剤を含む薬学的調合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
癌は、深刻な公衆保健上の威嚇である。悪性癌性成長はこれらの独特の特徴によって現代医学に対する深刻な挑戦になっている。このような癌の特徴は、悪性組織の調節されない成長を招く制御できない細胞増殖、局所および遠位組織にまで侵入する能力、細胞分化の調節の欠如、および時々効果的な治療および予防の不在が含まれる。癌は何れの器官の何れの組織でも何れの段階にも発生可能であるにもかかわらず、その病因論は完全に釈明されていない。現在、用いられる主な治療方法の中の一部は手術、放射線療法および化学療法である。手術は時々極端な手段になることがあり、深刻な結果を招くこともある。放射線療法は癌細胞を死滅させる利点を有するが、これはまた、同時に非−癌性組織を損傷させる。化学療法は患者に多様な坑癌薬物を投与することを含むが、時々有害な副作用を伴う。世界的に、千万人以上の人が毎年癌と診断され、この数字は2020年までは毎年1500万の新たな症例で増加すると予測される。
【0003】
このような化学療法の中で、現在幅広く使用される三つの細胞周期S期特異的抗ガン製剤である1−β−D−アラビノフラノシルシトシン(1−β−Darabinofuranosylcytosine、ara−C)、カンプトテシン(camptothecin、CPT)、そしてドキソルビシン(doxorubicin、DOX)は、この三つの異なる酵素(DNAポリメラーゼα、トポイソメラーゼIとII)をターゲットにしている(Abdel−Aziz W、et al.、Biochem.Pharmacol.、68、pp11−21、2004)。一部研究で、抗ガン剤中のトポテカン(topotecan)とイリノテカン(irinotecan)などのようなカンプトテシン類のターゲット分子としてトポイソメラーゼIが分離された(Hsiang YH、et al.、Cancer Res.、48、pp1722−1726、1988)。トポイソメラーゼはDNA鎖の切断方式によって2種類に分類され、タイプIトポイソメラーゼ(topoisomerase I)はDNA基質に瞬間的に単一鎖ニック(nick)が生成されるようにした後、DNAの位相を変化させ、タイプIIトポイソメラーゼ(topoisomerase II)はDNA二重鎖を全て切断した後、DNAの位相を変化させる。
【0004】
さらに、血管遮断剤(vascular disrupting agent、VDA)は、腫瘍血管内皮細胞に作用して、腫瘍血管の血流速度を遅らせる薬物である。現在まで多くのVDAが開発されているが、癌腫の中でも大腸癌または胃ガンを治療する目的として開発されるか、これら癌で効力が優れた薬物はないのが実情である。
【0005】
また、併用投与の面でVDAの効能がVDAと異なる作用機序を有する、坑癌治療で治療的に有用な一つ以上の物質と組み合わせて投与された時に非常に改善され得るという点が提案されているが、現在まで成功した事例はなくて、VDAおよびこれと異なる作用機序を有して相対的に低い毒性を有しながらも卓越した癌、特に大腸癌または子宮癌のような癌腫の予防または治療に効果を示す併用療法および製剤に関する開発に対する要求が増加してきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景下で、本発明者らは血管遮断剤(VDA)と他機序の抗ガン剤を組み合わせて改善された癌に対する予防または治療効果を有する併用療法および製剤に関して鋭意研究を重ねた結果、血管遮断剤として化学式1の化合物とトポイソメラーゼを組み合わせる場合、癌に対する予防または治療効果が卓越した坑癌用調合物を得ることができ、多様な癌腫、特に従来血管遮断剤を適用できなかった大腸癌または子宮癌などでも上昇的な坑癌効果を確保することができるという点を確認して本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、血管遮断剤(VDA)として下記化学式1の化合物およびトポイソメラーゼを含む癌の予防または治療用調合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記のような目的を達成するための一つの態様として、本発明は、(1)下記化学式1で表されるベンゾフェノンチアゾール誘導体である(S)−N−(4−(3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−4−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール−2−イル)−2−アミノ−3−メチルブタンアミド((S)−N−(4−(3−(1H−1,2,4−triazol−1−yl)−4−(3,4,5−trimethoxybenzoyl)phenyl)thiazol−2−yl)−2−amino−3−methylbutanamide)またはその薬学的に許容可能な塩の第1有効成分および(2)トポイソメラーゼの第2有効成分を含む癌の予防または治療用薬学的調合物に関するものである。
【0009】
【化1】
【発明の効果】
【0010】
本発明の調合物は、血管遮断剤(VDA)である第1有効成分およびトポイソメラーゼである第2有効成分を特別に組み合せることによって、癌、特に大腸癌または子宮癌のような固形癌でも卓越した上昇的な癌の予防または治療効果を示して抗ガン剤として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1a】Colo205異種移植マウスモデルでの対照群および各実験群の癌成長グラフである。この実験で、化学式1の化合物は経口投与した。
図1b】Colo205異種移植マウスモデルでの実験78日目の各実験群の個体別腫瘍大きさグラフである。Vehicle群は癌が過度に大きくて43日目に安楽死させたので、このグラフには含まれていない。
図2a】HCT116異種移植マウスモデルでの対照群および各実験群の癌成長グラフである。この実験で、化学式1の化合物は腹腔投与した。
図2b】HCT116異種移植マウスモデルでの実験29日目の各実験群の個体別腫瘍大きさグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明による薬学的調合物の第1有効成分は前記化学式1の化合物であって、この化合物は血管遮断剤(VDA)としての活性を有する。前記化学式1の化合物に関する説明および製法は国際特許公報WO2009−119980号に詳細に記述されており、これは本発明に関する参考文献として含まれる。本発明で、前記化学式1の化合物は前記文献に開示された製法によって製造することができる。一般に、人間に投与される前記化学式1の化合物は患者の個人に特異な因子をはじめとする多様な投与因子によって使用量が変わるが、静脈内に投与される場合には1〜12mg/m、経口投与される場合には2.5〜20mgで投与されると知られている。
【0013】
一方、本発明による薬学的調合物の第2有効成分はトポイソメラーゼ抑制剤であって、DNAトポイソメラーゼは、複製、転写、および修復を含む幾多の重要な過程の間のDNA弛緩において必須の酵素である。トポイソメラーゼ抑制剤は、正常的な細胞サイクル中にDNAストランドのホスホジエステル骨格構造の破壊および再結合を触媒化することによってDNA構造の変化を調節する酵素であるトポイソメラーゼ酵素(トポイソメラーゼIおよびII)の作用によって阻害するようにデザインされた薬物である。トポイソメラーゼ抑制剤は、細胞サイクルの接合段階(ligation step)を遮断してゲノムの完全性を害する 単鎖および二重鎖切断を発生させると思われる。具体的に、本発明の薬学的組成物に含まれるトポイソメラーゼ抑制剤は、トポテカン、イリノテカン、ルルトテカン、エキサテカン、ピリドベンゾインドールまたはこれらの薬学的に許容可能な塩であってもよく、好ましくは、下記化学式2で表されるイリノテカンまたはその薬学的に許容可能な塩である。
【0014】
【化2】
【0015】
イリノテカンはトポイソメラーゼI抑制剤であり、化学的には天然アルカロイドであるカンプトテシンの半合成類似体であって、加水分解によってSN−38という活性代謝産物に変化する。
【0016】
本発明において、薬学的に許容可能な塩は医薬業界で通常使用される塩を意味し、例えばカルシウム、カリウム、ナトリウムおよびマグネシウムなどから製造された無機イオン塩、塩酸、硝酸、リン酸、臭素酸、ヨウ素酸、過塩素酸、酒石酸および硫酸などから製造された無機酸塩、酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、琥珀酸、シュウ酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、プロピオン酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、グルコン酸、ガラクツロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、グルクロン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、カーボン酸、バニリン酸、ヨウ化水素酸などから製造された有機酸塩、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などから製造されたスルホン酸塩、グリシン、アルギニン、リシンなどから製造されたアミノ酸塩、およびトリメチルアミン、トリエチルアミン、アンモニア、ピリジン、ピコリンなどから製造されたアミン塩などがあるが、列挙されたこれら塩によって本発明で意味する塩の種類が限定されるのではない。
【0017】
本発明の一実施態様によれば、前記第1有効成分は(S)−N−(4−(3−(1H−1,2,4−トリアゾール−1−イル)−4−(3,4,5−トリメトキシベンゾイル)フェニル)チアゾール−2−イル)−2−アミノ−3−メチルブタンアミド(化学式1の化合物)の塩酸塩であってもよく、前記第2有効成分はイリノテカン塩酸塩であってもよい。
【0018】
具体的な一態様で、第1有効成分および第2有効成分は、全体薬学的調合物100重量部に対してそれぞれ1.4〜16.7重量部(第1有効成分)および83.3〜98.6重量部(第2有効成分)で含まれてもよい。また、第1有効成分と第2有効成分の含量比は1:5〜1:70である。
【0019】
本発明の薬学的調合物は、第1有効成分および第2有効成分を別途に2種の単位投与形態で含むものであってもよく、前記1つの組み合わせられた単位投与形態で構成されてもよい。
【0020】
本発明の薬学的調合物は、目的とする方法によって多様な投与経路を通じて、具体的に、経口投与するか非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)することができる。本発明において、薬学的調合物が2種の別個の製剤を含む場合、各有効成分が含まれている製剤は互いに同一であるかまたは異なる経路を通じて、例えば前記第1有効成分は非経口または経口投与されてもよく、好ましくは経口投与されてもよい。また、前記第2有効成分は非経口投与されてもよい。
【0021】
本発明の薬学的調合物において、前記第1有効成分および第2有効成分の適合した投与量は患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。具体的な一例として、本発明の第1有効成分の1日投与量は約1〜20mg/kgであり、好ましくは2〜10mg/kgであってもよい。また、本発明の第2有効成分の1日投与量は約5〜50mg/kgであり、好ましくは10〜30mg/kgであってもよい。しかし、本発明による薬学的組成物の対象疾患である癌の特性上、各成分の投与量は前記のような条件によって非常に変わることが可能であり、前記のような例示によって制限されない。
【0022】
本発明の薬学的調合物において、前記第1有効成分および第2有効成分の適合した投与周期は前記投与量によって決定することができる。例えば、本発明による癌の予防、治療または癌の転移防止のために同時に、順次に(任意の順序で)、合わせて投与することができる。例えば、本発明の第1有効成分は1日1回〜1週間に1回投与されるものであってもよく、好ましくは1日1回投与することができる。また、本発明の第2有効成分は1日1回〜1週間に1回投与されるものであってもよく、好ましくは1週間に2回投与されるものであってもよい。
【0023】
本発明の一実施態様によれば、本発明の調合物は投与周期が1週間であり、1日目から7日目まで第1有効成分を経口で1日1回投与するか、注射で1週間に1回投与し、1日目から7日目まで第2有効成分を1週間に2回投与するものであってもよい。
【0024】
本発明による薬学的調合物は、血管遮断剤(VDA)である第1有効成分と新生血管抑制剤である第2有効成分の上昇補完効果が確認され、その結果、優れた坑癌活性を示す。
【0025】
したがって、本発明の癌予防または治療用調合物は坑癌治療戦略として有用に使用でき、特に固形癌(solid cancer)の治療用であるのが好ましい。前記固形癌は、肝癌、肺ガン、胃ガン、腎癌、大腸癌、すい臓癌、肝癌、腎癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌、卵巣ガン、乳癌および甲状腺癌からなる群より選択されたものであり得、好ましくは大腸癌または子宮癌であり得る。
【0026】
本発明の実施態様によれば、前記大腸癌は、原発性(primary)大腸癌であり得る。
【0027】
本発明において、本発明の薬学的調合物に含まれる第1有効成分および第2有効成分はそれぞれ別途の薬学的組成物内に含まれてもよく、前記薬学的組成物は当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できる方法によって、薬剤学的に許容される担体を用いて製剤化することによって単位容量形態に製造されるかまたは多容量容器内に入れて製造することができる。
【0028】
前記薬剤学的に許容される担体は製剤時に通常用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。本発明の薬剤学的組成物は前記成分以外に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加的に含むことができる。適した薬剤学的に許容される担体および製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.、1995)に詳しく記載されている。
【0029】
本発明は、本発明による薬学的調合物をこれを必要とする個体に投与することを含む癌予防または治療方法を提供する。本発明において、前記用語“個体”とは哺乳動物、特に人間を含み、投与計画、投与間隔、投与量などは前記で言及された要素によって当業者によって容易に設定、変更、調節可能である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を通じて本発明の構成および効果をさらに詳しく説明する。これら実施例はひたすら本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるのではない。
【0031】
<実施例1:Colo205異種移植モデルでの本発明による調合物の坑癌効果確認>
1−1)実験方法
a.動物腫瘍モデル準備
人の大腸癌細胞株であるColo205をATCC(米国)で購入した。Colo205細胞株は10% fetal bovine serum(FBS;Gibco、Grand Island、NY、USA)と1% antibiotics(Gibco、USA)を含むRPMI1640(Gibco、USA)で維持された。
【0032】
BALB/c−nu/nu雄マウスに人間大腸癌細胞(human colorectal carcinoma)であるColo205細胞を皮下投与(5×10cell/head)して腫瘍平均大きさが165〜167mmになるように群を構成した後、実験に使用した。
【0033】
b.有効成分の準備
化学式1の化合物は、国際公開特許公報WO2009−119980号に開示された製造方法によって製造し、精製水で溶かして0.4mg/ml濃度で準備した。
イリノテカン(保寧、韓国)は、5%ブドウ糖生理食塩水で希釈して2mg/ml濃度で準備した。使用溶液は使用当日準備し、残った溶液は廃棄した。
【0034】
c.抗腫瘍活性確認
化学式1の化合物およびイリノテカンの坑癌効果はColo205異種移植モデルで評価された。実験群は下記の投与群に分けた。
−対照群:vehicle
−化学式1の化合物単独投与群:化学式1の化合物(4mg/kg、毎日、経口)
−イリノテカン単独投与群:イリノテカン(20mg/kg、4日に1回、注射)
−併用投与群:化学式(I)の化合物(4mg/kg、毎日、経口)、イリノテカン(20mg/kg、4日に1回、注射)
【0035】
全ての実験群は10週間経口および腹腔投薬された。毒性はマウスの体重測定で観察し、腫瘍成長は実験期間の間にキャリパーを用いて測定された。腫瘍体積は下記の計算式によって計算された。
tumor volume=(length×width)/2
【0036】
d.定量分析(Statistical analysis)
腫瘍の大きさ、腫瘍の退縮(Regression)および体重変化データはバートレット検定(Bartlett’s test)を用いて有意水準α=0.05で検定し、検定の結果、有意性がないデータは一元配置分散分析(one−way analysis of variance)を用いて有意水準α=0.05で検定し、有意性があるデータはクラスカル−ワリス検定(Kruskal−Wallis test)を用いて有意水準α=0.05で検定した。
【0037】
各群間の統計処理は、GraphPad PRISM(登録商標) Version 5.0(GraphPad Software、USA)を用いて実施した。
【0038】
1−2)実験結果−Colo205異種移植モデルで化学式1の化合物の坑癌活性
化学式1の化合物の経口投与およびイリノテカン注射剤の併用投与による抗腫瘍効果を評価するために、異種移植マウスは各物質の投与を受け、85日間体重と腫瘍成長が観察された。Vehicle投与群は、癌が過度に大きくなって、43日目に安楽死させた。
【0039】
化学式1の化合物およびイリノテカン併合投与群では6日目および44日目にそれぞれ1匹でやせることなどが観察された後、死亡した。化学式1の化合物単独投与群では8匹が死亡し、死亡発見個体の中の3匹では個体間の争い(fighting)痕跡が観察され、残りの5匹ではやせることなどの症状が観察された。Vehicle投与群およびイリノテカン単独投与群では死亡個体がなかった。
【0040】
腫瘍成長抑制効果面で、化学式1の化合物投与群およびイリノテカン投与群の腫瘍大きさは、投与期間の間に賦形剤投与群と比較して大幅に減少した。特に、化学式1の化合物とイリノテカンの併用投与群で腫瘍大きさの減少幅が最も大きく、投与後78日目には10匹のうちの2匹で完全寛解が観察され、6匹で部分寛解が観察された。
このような結果は化学式1の化合物とイリノテカンの併用療法の坑癌効果が非常に大きいのを示唆する。
【0041】
<実施例2:HCT116異種移植モデルでの本発明による調合物の坑癌効果確認>
2−1)実験方法
a.動物腫瘍モデル準備
人の大腸癌細胞株であるHCT116をATCC(米国)で購入した。HCT116細胞株は10% fetal bovine serum(FBS;Gibco、USA)を含むRPMI1640(Gibco、USA)で維持された。
【0042】
Athymic nude mouse(Hsd:Athymic Nude−Foxn1nu)雄マウスに人間大腸癌細胞(human colorectal carcinoma)であるHCT116細胞を皮下投与(5×10cell/head)して腫瘍大きさが150〜200mmになった時、実験に使用した。
【0043】
b.有効成分の準備
化学式1の化合物は、国際公開特許公報WO2009−119980号に開示された製造方法によって製造し、0.9%食塩水で溶かして0.5mg/ml濃度で準備した。
イリノテカン(第一薬品、韓国)は、5%デキストロース(dextrose)溶液で希釈して2mg/ml濃度で準備した。
使用溶液は使用当日準備し、残った溶液は廃棄した。
【0044】
c.抗腫瘍活性確認
化学式1の化合物およびイリノテカンの坑癌効果は、HCT116異種移植モデルで評価された。実験群は下記の投与群に分けた。
−対照群:vehicle
−化学式1の化合物単独投与群:化学式1の化合物(5mg/kg、週1回、注射)
−イリノテカン単独投与群:イリノテカン(20mg/kg、4日に1回、注射)
−併用投与群:化学式(I)の化合物(5mg/kg、週1回、注射)、イリノテカン(20mg/kg、4日に1回、注射)
【0045】
全ての実験群は4週間腹腔投薬された。毒性はマウスの体重測定で観察し、腫瘍成長は実験期間の間にキャリパーを用いて測定された。腫瘍体積は下記の計算式によって計算された。
tumor volume=(length×width)/2
【0046】
d.定量分析(Statistical analysis)
腫瘍の大きさ、腫瘍の退縮(Regression)および体重変化データは一元配置分散分析(One−way ANOVA test)を用いて有意水準α=0.05で検定し、有意性があるデータはダネット多重比較検定(Dunnett’s multiple comparison test)を用いて有意水準α=0.05で検定した。
各群間の統計処理は、PRISM(登録商標) Version 5.03(GraphPad Software、USA)を用いて実施した。
【0047】
2−2)実験結果−HCT116異種移植モデルで化学式1の化合物の坑癌活性
化学式1の化合物およびイリノテカン注射剤の併用投与による抗腫瘍効果を評価するために、異種移植マウスは各物質の投与を受け、4週間の体重と腫瘍成長が観察された。
全ての群で死亡や瀕死、体重減少は観察されなかった。
【0048】
腫瘍成長抑制効果面で、化学式1の化合物投与群およびイリノテカン投与群の腫瘍大きさは、投与期間の間に賦形剤投与群と比較して大幅に減少した。特に、化学式1の化合物とイリノテカンの併用投与群で腫瘍の大きさの減少幅が最も大きく、3匹で部分寛解が観察された。
【0049】
このような結果は、化学式1の化合物とイリノテカンの併用療法の坑癌効果が非常に大きいのを示唆する。
図1a
図1b
図2a
図2b