(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ユーザーが画面上の航跡を見ながら、航跡の特定の部分を消去したいと考えたときに、日時を指定する方法では、消去を望む部分に対応する日時が分かりにくく、消去を望む部分のみを正しく消去することは必ずしも容易ではない。さらに、この方法では、航跡の必要な部分まで誤って消去してしまうことにも起こり得る。
【0005】
また、多くの場合、航跡は、記憶されている過去の船舶の位置を連結した線を描画することにより、画面上に表示される。このとき、ユーザーが画面上の線状の航跡を見ながら、当該線に沿って消去したい部分を指定したとしても、指定したポイントと記憶されている船舶の位置とが一致するとは限らない。この場合、ユーザーが指定した部分と、記憶されている船舶の位置に基づいて決定される実際に消去される部分とにずれが生じ、ユーザーが望む部分のみを正しく消去することができず、必要な部分まで誤って消去してしまう事態にもなりかねない。
【0006】
本発明は、ユーザーがレーダー画面上に表示される航跡を見ながら、航跡の消去したい部分を正しく選択して消去することができるレーダー装置、航跡表示プログラム及び航跡表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1観点に係るレーダー装置は、記憶部と、画面作成部と、範囲指定部と、航跡消去部とを備える。前記記憶部は、経時的に変化する船舶の位置を記憶する。前記画面作成部は、前記記憶した船舶の位置を連結するように延びる線の態様で、前記船舶の航跡を表示するレーダー画面を作成する。前記範囲指定部は、前記レーダー画面上において前記記憶した船舶の複数の位置にそれぞれシンボルを表示させつつ、前記シンボルの位置を基準として決定される前記航跡の消去範囲の指定をユーザーから受け付ける。前記航跡消去部は、前記消去範囲の指定を受けて、前記消去範囲に含まれる前記航跡を前記レーダー画面から消去する。
【0008】
第2観点に係るレーダー装置は、第1観点に係るレーダー装置であって、前記記憶部には、前記船舶の位置として、自船の位置が記憶される。
【0009】
第3観点に係るレーダー装置は、第1観点又は第2観点に係るレーダー装置であって、レーダーアンテナを介して受信されるエコー信号に基づいて、他船の位置を特定する他船特定部をさらに備える。前記記憶部には、前記船舶の位置として、前記他船の位置が記憶される。
【0010】
第4観点に係るレーダー装置は、第1観点から第3観点のいずれかに係るレーダー装置であって、前記範囲指定部は、所定のユーザー操作を介して前記シンボルの複数選択を受け付け、前記複数選択に係る前記シンボルの位置を基準として前記消去範囲を決定する。
【0011】
第5観点に係るレーダー装置は、第4観点に係るレーダー装置であって、前記範囲指定部は、前記シンボルの選択を受け付ける度に、前記レーダー画面上での当該シンボルの表示態様を変化させる。
【0012】
第6観点に係るレーダー装置は、第1観点から第5観点のいずれかに係るレーダー装置であって、前記範囲指定部は、所定のユーザー操作を介して前記レーダー画面上で面積を有する領域の選択を受け付け、当該領域内に含まれる前記シンボルの位置を基準として前記消去範囲を決定する。
【0013】
第7観点に係るレーダー装置は、第4観点から第6観点のいずれかに係るレーダー装置であって、前記範囲指定部は、前記シンボルの位置を検出できないような前記所定のユーザー操作を拒否する。
【0014】
第8観点に係るレーダー装置は、第1観点から第7観点のいずれかに係るレーダー装置であって、航跡消去モードの選択をユーザーから受け付けるモード選択部をさらに備える。前記範囲指定部は、前記航跡消去モードが選択されると、前記レーダー画面上において前記記憶した船舶の位置に新たにシンボルを表示させる、或いは、前記レーダー画面上において前記船舶の位置に表示されていた前記シンボルの表示態様を変化させる。
【0015】
第9観点に係るレーダー装置は、第1観点から第8観点のいずれかに係るレーダー装置であって、周囲の物標からのエコー信号を受信するレーダーアンテナをさらに備える。
【0016】
第10観点に係る航跡表示プログラムは、以下のことをコンピュータに実行させる。
(1)経時的に変化する船舶の位置を記憶部に記憶すること。
(2)前記記憶した船舶の位置を連結するように延びる線の態様で、前記船舶の航跡を表示するレーダー画面を作成すること。
(3)前記レーダー画面上において前記記憶した船舶の複数の位置にそれぞれシンボルを表示させつつ、前記シンボルの位置を基準として決定される前記航跡の消去範囲の指定をユーザーから受け付けること。
(4)前記消去範囲の指定を受けて、前記消去範囲に含まれる前記航跡を前記レーダー画面から消去すること
【0017】
第11観点に係る航跡表示方法は、以下のことを含む。
(1)経時的に変化する船舶の位置を記憶部に記憶すること。
(2)前記記憶した船舶の位置を連結するように延びる線の態様で、前記船舶の航跡を表示するレーダー画面を作成すること。
(3)前記レーダー画面上において前記記憶した船舶の複数の位置にそれぞれシンボルを表示させつつ、前記シンボルの位置を基準として決定される前記航跡の消去範囲の指定をユーザーから受け付けること。
(4)前記消去範囲の指定を受けて、前記消去範囲に含まれる前記航跡を前記レーダー画面から消去すること。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、記憶部内に過去の船舶の位置が記憶され、これらの船舶の位置を連結するように延びる線の態様で、レーダー画面上に船舶の航跡が表示される。そして、レーダー画面上において記憶部内に記憶されている船舶の位置に、それぞれシンボルが表示される。航跡の消去範囲の指定は、レーダー画面上にこのようなシンボルが表示された状態で行われ、消去範囲が指定されると、消去範囲に含まれる航跡がレーダー画面から消去される。そのため、ユーザーは、シンボルの位置を目で捉えることにより、記憶部内に記憶されている船舶の位置を確認しながら、シンボルの位置を基準として決定される航跡の消去範囲を指定することができる。以上より、ユーザーは、レーダー画面上に表示される航跡を見ながら、航跡の消去したい部分を正しく選択して消去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るレーダー装置、航跡表示プログラム及び航跡表示方法について説明する。
【0021】
<1.レーダー装置の構成>
図1に、本実施形態に係るレーダー装置1の全体構成図を示す。レーダー装置1は、船舶の航行を支援するための装置であり、船舶に搭載される。レーダー装置1は、レーダーアンテナ10と、これに接続されるレーダー指示器20とを備える。
【0022】
レーダーアンテナ10は、指向性の強いパルス状の電波を放射するとともに、放射された電波の反射波であるエコー信号を受信する。レーダーアンテナ10は、水平面内を回転しながら、電波を送信してそのエコー信号を受信する動作を繰り返し行い、これにより自船の周囲を360°スキャンする。レーダーアンテナ10により受信されたエコー信号は、図示されないA/D変換器によりデジタルデータに逐次変換され、変換後のエコー信号は、レーダー指示器20に逐次出力される。
【0023】
図2にレーダー指示器20の外観図を示す。レーダー指示器20はユーザーが操作する機器であり、同図に示すとおり、筐体26を有する。レーダー指示器20は、ユーザーが立つ筐体26の正面側に表示部21及び入力部22を備えている。また、
図1に示すとおり、レーダー指示器20は、レーダーインターフェース部25、記憶部23及び制御部24をさらに備えている。レーダーインターフェース部25は、レーダーアンテナ10との通信ポートであり、レーダーアンテナ10から出力されるエコー信号を受信する。記憶部23及び制御部24は、筐体26内に収容されている。これらの部21〜25は、相互にバス線を介して通信可能に接続されている。
【0024】
表示部21は、ユーザーに対し各種情報を提示するための画面を表示するユーザーインターフェースであり、本実施形態では、液晶ディスプレイから構成される。入力部22は、ユーザーからのレーダー指示器20に対する各種操作を受け付けるユーザーインターフェースであり、本実施形態では、キーボード22a及びトラックボール22bから構成される。入力部22は、表示部21上に重ねられたタッチパネルを含むことができる。
【0025】
記憶部23は、ハードディスクやフラッシュメモリ等から構成される不揮発性の記憶装置である。記憶部23内には、自船位置管理テーブル41及び他船位置管理テーブル42が格納されている。テーブル41,42の詳細については、後述する。制御部24は、CPU30、ROM31及びRAM32等から構成される。ROM31内には、CPU30に各種動作を実行させるプログラム40が格納されている。CPU30は、ROM31内のプログラム40を読み出して実行することにより、仮想的に画面作成部31a、追尾部(他船特定部)31b、位置管理部31c、モード選択部31d、範囲指定部31e、及び航跡消去部31fとして動作する。これらの部31a〜31fの動作の詳細については、後述する。なお、プログラム40は、ROM31内ではなく記憶部23内に格納されていてもよいし、記憶部23及びROM31の両方に分散して記憶されていてもよい。
【0026】
<2.レーダー装置の動作>
次に、レーダー装置1により実行される各種処理について説明する。レーダー装置1に含まれるレーダー指示器20は、表示処理及び追尾処理を実行することができる。表示処理は、自船及び自船の周囲の1以上の他船の状況を表示するレーダー画面50(
図3参照)を作成し、これを表示部21上に表示する処理である。レーダー画面50には、自船及び他船の現在位置が表示される他、選択的に、自船及び他船の航跡(以下、自船の航跡を「オウントラック」と呼び、他船の航跡を「ターゲットトラック」と呼ぶことがある)を表示することができる。追尾処理は、他船の動向を追尾する処理である。また、ユーザーは、航跡消去モードにおいて、レーダー画面50上に表示される自船及び他船の航跡を部分的に消去することができる。以下、表示処理及び追尾処理の詳細について説明した後、航跡消去モードの詳細についてそれぞれ説明する。
【0027】
<2−1.表示処理>
表示処理は、主として画面作成部31aにより実行される。画面作成部31aは、レーダーインターフェース部25を介してエコー信号を逐次取得し、このエコー信号に基づいてレーダー画面50を作成する。より具体的には、このエコー信号を解析することにより、自船を基準とした他船を含む物標の距離及び方位等に関するレーダー情報が算出される。画面作成部31aは、このレーダー情報に基づいて、自船の周囲の物標からのエコー像を表示する映像(以下、レーダー映像という)51を作成する。レーダー映像51は、自船の周囲の領域内に存在する物標の位置を地図的に示すマップとなる。なお、1枚のレーダー映像51は、レーダーアンテナ10の1回転分のエコー信号(スキャンデータ)から作成される。
【0028】
図3に、レーダー画面50の一例を示す。同図に示すように、レーダー画面50は、全体としては矩形状であり、このレーダー画面50上に円形のレーダー映像51が配置される。なお、レーダーアンテナ10からの電波は、物標である他船だけでなく陸地等でも反射される。そのため、レーダー映像51上には、他船の像T1の他、陸地の像T2等も表示される。レーダー映像51は、エコー信号が取得される度に、新たなエコー信号に基づいて更新される。従って、ユーザーは、レーダー映像51を見ながら自船の周囲の状況をリアルタイムに把握することができる。
【0029】
画面作成部31aは、レーダー映像51上に船首輝線U1を表示する。船首輝線U1は、レーダー映像51上における自船の現在位置からレーダー映像51の外周まで、自船の船首方向に沿って延びる線の態様で表示される。すなわち、船首輝線U1の内側端は、自船の現在位置を表す。
【0030】
レーダー映像51は、自船の位置が常にレーダー映像51の中心に設定される相対運動モードで表示することもできるし、レーダー映像51内で陸地等の固定物標の位置を固定する真運動モードで表示することもできる。ユーザーは、入力部22を介して所定の操作を行うことにより、相対運動モードと真運動モードとを切り替えることができる。
図3のレーダー映像51は、相対運動モードでの表示例である。よって、
図3の例では、船首輝線U1の内側端は、常にレーダー映像51の中心に配置される。なお、真運動モードでは、船首輝線U1の内側端、すなわち自船の位置は、レーダー映像51上の様々な位置に配置され得る。
【0031】
また、レーダー映像51は、レーダー映像51の0時の位置が常に北を向くノースアップモードで表示することもできるし、レーダー映像51の0時の位置が常に自船の船首方向を表すヘッドアップモードで表示することもできる。ユーザーは、入力部22を介して所定の操作を行うことにより、ノースアップモードとヘッドアップモードとを切り替えることができる。
図3のレーダー映像51は、ヘッドアップモードでの表示例である。
【0032】
また、画面作成部31aは、レーダー映像51上に他船のエコートレイルの像T3を表示することができる。具体的には、過去のレーダー映像51に写る他船の像T1を、最新のレーダー映像51に重ね合わせることにより、他船のエコートレイルの像T3が形成される。ユーザーは、入力部22を介して所定の操作を行うことにより、エコートレイルの像T3の表示/非表示の設定を切り替えることができる。
【0033】
画面作成部31aは、レーダー画面50上にレーダー映像51に加えて、情報表示領域52を表示する。
図3の例では、情報表示領域52は、主としてレーダー画面50の右端に沿って配置されており、レーダー映像51に重ならないように配置されている。情報表示領域52には、航行を支援するための各種情報、例えば、自船情報及び自船の周囲の環境情報が表示される。自船情報には、例えば、自船の緯度及び経度情報、並びに船速及び船首方位の情報が含まれる。環境情報には、例えば、水温、水深、風向及び風速の情報が含まれる。なお、情報表示領域52に表示される情報の一部は、レーダー指示器20に接続されている図示されないGPS受信機や各種計測器等の機器から取得される情報に基づいて算出される。
【0034】
ところで、自船情報に含まれる自船の緯度及び経度情報は、所定の時間間隔で自船位置管理テーブル41内に記録される。より具体的には、位置管理部31cは、図示されないGPS受信機からの自船の緯度及び経度情報を所定の時間間隔で取得し、これを時刻情報に関連付けて自船位置管理テーブル41内に逐次保存する。時刻情報に関連付けられた自船の緯度及び経度情報は、自船位置管理テーブル41内において経時的に変化する自船の位置を表す位置情報として管理される。自船位置管理テーブル41内に自船の緯度及び経度情報を記録する時間間隔は、1分間隔、5分間隔、10分間隔等、ユーザーが任意に設定することができる。
【0035】
画面作成部31aは、自船位置管理テーブル41内の自船の緯度及び経度情報を参照して、レーダー映像51上にオウントラックU2(
図3参照)を表示する。なお、ユーザーは、入力部22を介して所定の操作を行うことにより、オウントラックU2の表示/非表示の設定を切り替えることができる。オウントラックU2は、自船位置管理テーブル41内に記録されている緯度及び経度情報により特定される、自船の位置を連結するように延びる線の態様で表示される。また、オウントラックU2は、レーダー映像51上において自船の現在位置を表す点、すなわち船首輝線U1の内側端に連結されることになる。レーダー映像51上に表示されるオウントラックU2の長さに対応する時間は、30分、1時間、5時間等、ユーザーが任意に設定することができる。以上により、ユーザーは、時々刻々変化するレーダー映像51を見ながら、船首輝線U1の位置に加え、オウントラックU2を参考にして、自船の動向を容易に理解することができる。
【0036】
詳細は後述するが、他船位置管理テーブル42内には、自船位置管理テーブル41と同様に、所定の時間間隔で取得される他船の緯度及び経度情報が、時刻情報に関連付けて記録される。また、他船位置管理テーブル42内には、他船の緯度及び経度情報並びに時刻情報に関連付けて、当該他船の識別情報も格納される。他船の識別情報及び時刻情報に関連付けられた他船の緯度及び経度情報は、他船位置管理テーブル42内において経時的に変化する当該他船の位置を表す位置情報として管理される。また、他船位置管理テーブル42内に他船の緯度及び経度情報を記録する時間間隔も、1分間隔、5分間隔、10分間隔等、ユーザーが任意に設定することができる。
【0037】
画面作成部31aは、他船位置管理テーブル42内の他船の緯度及び経度情報を参照して、レーダー映像51上にターゲットトラックU3(
図3参照)を表示する。なお、ユーザーは、入力部22を介して所定の操作を行うことにより、ターゲットトラックU3の表示/非表示の設定を切り替えることができる。ターゲットトラックU3は、他船位置管理テーブル42内に記録されている緯度及び経度情報により特定される、他船の位置を連結するように延びる線の態様で表示される。また、ターゲットトラックU3は、レーダー映像51上において他船の現在位置を表す他船の像T1に連結されることになる。レーダー映像51上に表示されるターゲットトラックU3の長さに対応する時間は、30分、1時間、5時間等、ユーザーが任意に設定することができる。
【0038】
レーダー画面50上には、メインメニューボタン55が表示される。メインメニューボタン55は、レーダー映像51に重ならないように配置されることが好ましい。また、レーダー画面50上には、カーソル56も表示される。カーソル56は、ユーザーが入力部22を操作することにより、レーダー画面50上で自由に移動させることができる。本実施形態では、ユーザーがカーソル56をメインメニューボタン55上に位置合わせした状態で入力部22に所定の操作を行うと、メインメニューボタン55が階層的に開き、様々なサブメニューボタンが現れる。サブメニューボタンは、レーダー映像51に重ならないように配置されることが好ましい。ユーザーは、入力部22を操作して、これらのサブメニューボタンの中から適当なボタンを選択することにより、レーダー指示器20に実装されている所望の機能を実行することができる。
【0039】
<2−2.追尾処理>
追尾処理は、主として追尾部31bにより実行される。本実施形態では、追尾処理は、1以上の他船の中から追尾対象が捕捉されたときに開始する。追尾対象の捕捉の方法には、手動捕捉と自動捕捉とがある。以下、順に説明する。
【0040】
手動捕捉は、ユーザーが手動で追尾対象を指定することをいう。追尾部31bは、レーダー映像51に写る1以上の他船の像T1の中から特定の像T1の選択をユーザーから受け付ける。具体的には、ユーザーがカーソル56を特定の他船の像T1上に位置合わせした状態で入力部22に所定の操作を行うと、追尾部31bがこの操作を検出する。追尾部31bは、このときのカーソル56の位置の近傍に存在するエコー像(すなわち、他船の像)T1を検出する。追尾部31bは、このようなエコー像T1が占める領域の代表点の位置を追尾対象となる他船の位置として特定し、この他船を追尾対象として捕捉する。
【0041】
一方、自動捕捉は、ユーザーから追尾対象の指定を受けることなく、追尾対象を自動的に捕捉することをいう。具体的には、追尾部31bは、エコー信号に基づいて、自船の周囲において所定の条件を満たすエコー像が存在しているか否かを監視しており、所定の条件を満たすエコー像(すなわち、他船の像)T1を検出する。自動捕捉のための所定の条件とは、例えば、エコー像が所定のサイズを有することである。追尾部31bは、このようなエコー像T1が占める領域の代表点の位置を追尾対象となる他船の位置として特定し、この他船を追尾対象として捕捉する。
【0042】
追尾対象として捕捉された物標(以下、捕捉物標という)には、1,2,3,・・・のような数値で表されるTT番号と呼ばれる識別番号が自動的に割り振られる。位置管理部31cは、捕捉物標が検出される度に、当該捕捉物標の像T1が占める領域の代表点の緯度及び経度情報を、現在の時刻情報及び割り振られたTT番号に関連付けて、他船位置管理テーブル42内に格納する。捕捉物標の緯度及び経度情報は、自船の緯度及び経度情報と、捕捉物標の代表点の位置における自船からの距離及び方位の情報とに基づいて導出される。
【0043】
その後、追尾部31bは、追尾対象としての設定が解除されるまで、捕捉物標を追尾し続ける。まず、追尾部31bは、次のタイミングのレーダー映像51上において捕捉物標の像T1を検索する。具体的には、過去のレーダー映像51に写る捕捉物標の航跡の像T3に基づいて、捕捉物標の現在位置を予測する。そして、追尾部31bは、最新のレーダー映像51上において、その予測位置の近傍に存在するエコー像を検出する。追尾部31bは、検出されたエコー像を現在の捕捉物標の像T1と判断し、このエコー像T1が占める領域の代表点の位置を当該捕捉物標の現在位置として特定する。
【0044】
一方で、最新のレーダー映像51上において、現在の捕捉物標の像T1と判断可能なエコー像が検出されない場合もある。追尾部31bは、そのような状態が一定時間続いた場合には、捕捉物標を「ロスト」させる。ロストしたと判断された捕捉物標は、追尾対象としての設定から解除される。また、追尾対象としての設定の解除は、ユーザーが入力部22を介して所定の操作を行うことによっても設定することができる。
【0045】
位置管理部31cは、ユーザーにより設定されている所定の時間間隔で、追尾中の捕捉物標の像T1の代表点の緯度及び経度情報を取得する。そして、この情報を、当該捕捉物標のTT番号と現在の時刻情報とに関連付けて、他船位置管理テーブル42内に格納する。なお、ここでの捕捉物標の緯度及び経度情報も、自船の緯度及び経度情報と、捕捉物標の代表点の位置における自船からの距離及び方位の情報とに基づいて導出される。
【0046】
ところで、画面作成部31aは、レーダー映像51上において捕捉物標の像T1に重ねて又はその近傍に、シンボルS1を表示させる(
図3参照)。
図3の例では、シンボルS1は、捕捉物標の像T1を囲むように配置される四角形のマークである。シンボルS1は、シンボルS1が付された他船の像T1が捕捉物標であることを示すことができる。シンボルS1の近傍には、TT番号が文字列として表示される。ただし、TT番号を表示するか否かは、ユーザーが入力部22を介して適宜設定することができる。
【0047】
以上により、ユーザーは、時々刻々変化するレーダー映像51を見ながら、シンボルS1が付された他船の像T1に加え、他船のターゲットトラックU3を参考にして、追尾対象の動向を容易に理解することができる。なお、
図3に示すように、追尾対象は、同時に複数捕捉することができる。
【0048】
レーダー画面50上の情報表示領域52内には、捕捉物標の状況に関する各種情報(以下、追尾情報という)を表示する領域521が設けられている。追尾情報には、例えば、捕捉物標の位置情報(自船からの距離及び方位、緯度及び経度情報)、並びに捕捉物標の船速及び船首方位の情報等が含まれる。この領域521内には追尾情報が表示される他、TT番号も表示される。領域521内では、捕捉物標毎に捕捉物標に関する各種情報がまとめて表示される。なお、捕捉物標の数が多い場合には、領域521内に全ての捕捉物標に関する追尾情報を同時に表示することが困難な場合がある。そのような場合には、例えば、より最近に捕捉された捕捉物標に関する情報を優先的に表示させることもできるし、領域521をスクロール表示することもできる。領域521内の追尾情報は、時々刻々更新される。ユーザーは、レーダー映像51に加え、この追尾情報により、捕捉物標がどのような状況にあるのかをさらに容易に理解することができる。
【0049】
<2−3.航跡消去モード>
次に、航跡消去モードについて説明する。航跡消去モードは、
図3に示されるようなオウントラックU2及びターゲットトラックU3の部分的な消去を可能にするモードである。ユーザーは、入力部22を介して所定の操作を行い、メインメニューボタン55を階層的に開くことにより、航跡消去モードを選択することができる。メインメニューボタン55を操作することにより新たに表示されるサブメニューボタン又はポップアップウィンドウは、レーダー映像51と重ならないように、例えば、情報表示領域52上に重ねて表示されることが好ましい。モード選択部31dは、航跡消去モードを選択する上記操作をユーザーから受け付けており、ユーザーにより航跡消去モードが選択されると、航跡消去モードに切り替える。
【0050】
航跡消去モードには、オウントラックU2を部分的に消去するためのオウントラック消去モードと、ターゲットトラックU3を部分的に消去するためのターゲットトラック消去モードとがある。また、オウントラック消去モード及びターゲットトラック消去モードでは、それぞれ2種類の方法で航跡の消去範囲を選択することができ、一方が2点選択方式であり、他方が領域選択方式である。2点選択方式は、ユーザーにより指定される2点の位置を基準として航跡の消去範囲を決定する方式である。領域選択方式は、ユーザーにより指定される領域を基準として航跡の消去範囲を決定する方式である。モード選択部31dは、2点選択方式又は領域選択方式の選択をユーザーから受け付ける。より具体的には、ユーザーは、航跡消去モードを開始させるときに、メインメニューボタン55を操作することにより、オウントラック消去モード(2点選択方式)、オウントラック消去モード(領域選択方式)、ターゲットトラック消去モード(2点選択方式)、又はターゲットトラック消去モード(領域選択方式)の4種類の中から1つを選択することができる。
【0051】
以下に、ターゲットトラック消去モードを例として、2点選択方式及び領域選択方式について詳細に説明する。なお、簡単のため説明を省略するが、オウントラックU2も、オウントラック消去モードにおいて同様の方法で部分的に消去することができる。
【0052】
<2−3−1.2点選択方式>
図4Aは、ターゲットトラック消去モードが選択される前であって、ターゲットトラックU3が表示されている状態のレーダー映像51の部分拡大図である。
図4Bは、ターゲットトラック消去モードが選択された直後のレーダー映像51の部分拡大図である。すなわち、ターゲットトラック消去モードが選択されると、範囲指定部31eは、レーダー映像51上において他船位置管理テーブル42内に記録されている過去の他船の各位置に、新たにシンボルS2を表示させる。本実施形態では、シンボルS2の形状は中実の円形であるが、勿論、中空の円形であってもよいし、全体の形状も四角や星形等、任意に設定することができる。シンボルS2は、線状のターゲットトラックU3に重なるように、これに沿って間隔を空けながら配列される。また、ターゲットトラック消去モードに入ると、範囲指定部31eは、レーダー画面50上に表示されるカーソル56の色や形状等の表示態様を変化させる(
図4B参照)。これにより、ユーザーは、ターゲットトラック消去モードに入ったことを容易に理解することができる。
【0053】
範囲指定部31eは、レーダー映像51上にシンボルS2を表示しつつ、ターゲットトラックU3の消去範囲の指定をユーザーから受け付ける。2点選択方式では、ターゲットトラックU3の消去範囲は、ユーザーにより選択される2つのシンボルS2の位置を基準として決定される。より具体的には、まず、ユーザーは、カーソル56を任意のシンボルS2上又はその近傍に位置合わせした状態で、入力部22に所定の操作(例えば、入力部22に含まれる特定のボタンを押す操作)を行う。これを受けて、範囲指定部31eは、当該操作により選択されたシンボルS2の位置を、消去範囲の始点を定める基準点(以下、始点基準点という)P1として決定する。範囲指定部31eは、このとき、始点基準点P1に対応するシンボルS2の表示態様を変化させる。
図4Cの例では、シンボルS2に囲み枠S3が付されるが、例えば、シンボルS2の色や形状等を変化させることもできる。
【0054】
続けて、ユーザーは、始点基準点P1を選択するときと同様の操作により、同じ船舶のターゲットトラックU3上の別の任意のシンボルS2を選択する。これを受けて、範囲指定部31eは、当該操作により選択されたシンボルS2の位置を、消去範囲の終点を定める基準点(以下、終点基準点という)P2として決定する。範囲指定部31eは、このとき、始点基準点P1の場合と同様に、終点基準点P2に対応するシンボルS2の表示態様を変化させる。
図4Dの例では、シンボルS2に囲み枠S3が付されるが、例えば、シンボルS2の色や形状等を変化させることもできる。以上のとおり、シンボルS2の選択を受け付ける度に、レーダー映像51上での当該シンボルS2の表示態様が変化するため、ユーザーは始点基準点P1及び終点基準点P2を正しく選択できたことを知ることができる。
【0055】
なお、範囲指定部31eは、始点基準点P1及び終点基準点P2の選択時において、カーソル56がいずれのシンボルS2に対しても位置合わせされていない状態でユーザーが入力部22に所定の操作を行った場合には、シンボルS2の位置を検出できないため、当該操作を拒否する。具体的には、範囲指定部31eは、レーダー指示器20に含まれる図示されないスピーカーを介して拒否音を鳴動させる。また、これに代えて又は加えて、表示部21上にユーザーの操作を拒否した旨を示す情報を表示してもよい。なお、このとき、表示部21上にユーザーの操作を拒否したことを表す何らのサインを表示しなかったとしても、ユーザーは、シンボルS2の表示態様が変化しないことで、始点基準点P1又は終点基準点P2を選択できなかったことを知ることができる。
【0056】
始点基準点P1及び終点基準点P2が選択されると、範囲指定部31eは、始点基準点P1及び終点基準点P2に対応する2つのシンボルS2を特定し、これらのシンボルS2の位置を基準として、ターゲットトラックU3の消去範囲を決定する。本実施形態では、(1)始点基準点P1から終点基準点P2までを連結する範囲と、(2)終点基準点P2と反対の方向に始点基準点P1に隣接するシンボルS2の位置と、始点基準点P1とを連結する範囲と、(3)始点基準点P1と反対の方向に終点基準点P2に隣接するシンボルS2の位置と、終点基準点P2とを連結する範囲とが、航跡の消去範囲となる。なお、このとき、
図4Eに示すように、ターゲットトラックU3のうち消去範囲に含まれる部分をハイライト表示させる等、当該部分の表示態様を変化させてもよい。また、これに代えて又は加えて、ターゲットトラックU3の消去範囲に含まれるシンボルS2も、ハイライト表示してもよい。これにより、ユーザーは、自身が指定した消去範囲を容易に確認することができる。
【0057】
以上のとおりの消去範囲の指定を受けると、レーダー画面50上には、消去範囲に含まれるターゲットトラックU3を本当に消去するかの確認メッセージが表示される。これに対して、ユーザーが入力部22を操作することにより、消去の続行を意味する所定の操作を行うと、航跡消去部31fは、当該消去範囲に含まれるターゲットトラックU3をレーダー映像51から消去する(
図4F参照)。なお、確認メッセージの表示のプロセスは、省略することもできる。また、航跡消去部31fは、消去範囲に含まれるターゲットトラックU3の削除と同時に、他船位置管理テーブル42内から、消去範囲に対応する位置情報を削除する。すなわち、始点基準点P1から終点基準点P2までを連結する線上の全てのシンボルS2に対応する時刻情報、位置情報及び識別情報が削除される。よって、本実施形態では、一度消去されたターゲットトラックU3は、復元することができないように構成されている。
【0058】
以上の操作により、ターゲットトラックU3を部分的に消去することができる。また、同様の操作を繰り返すことにより、同じ船舶のターゲットトラックU3の別の部分を消去することもできるし、異なる船舶のターゲットトラックU3を部分的に消去することもできる。モード選択部31dは、航跡消去モードの終了を指示する操作をユーザーから受け付けている。そして、航跡消去モードの終了が選択されると、範囲指定部31eは、レーダー映像51からシンボルS2を消去し、レーダー映像51を
図4Aのような画面(ただし、航跡消去モードで消去された航跡は表示されない)に復帰させる。
【0059】
<2−3−2.領域選択方式>
次に、ターゲットトラック消去モードにおける領域選択方式について説明する。領域選択方式でも、2点選択方式と同様に、ターゲットトラック消去モードに入ると、
図4Bと同様のレーダー映像51が表示される。その後も2点選択方式と同様に、範囲指定部31eは、レーダー映像51上において、ターゲットトラックU3の消去範囲の指定をユーザーから受け付ける。
【0060】
領域選択方式でも、ターゲットトラックU3の消去範囲は、ユーザーにより選択されるシンボルS2の位置を基準として決定される。ただし、2点選択方式では、消去範囲を決定するシンボルS2が、当該シンボルS2を直接指定することにより選択されるのに対し、領域選択方式では、レーダー映像51上で面積を有する領域の選択を行うことにより選択される。より具体的には、ユーザーにより選択された領域内に含まれる1以上のシンボルS2を基準として、ターゲットトラックU3の消去範囲が決定される。
【0061】
範囲指定部31eは、シンボルS2の表示された
図4Bのようなレーダー映像51上において、面積を有する領域の選択を受け付ける。より具体的には、まず、ユーザーは、カーソル56をレーダー映像51上の任意の点に位置合わせした状態で、入力部22に所定の操作(例えば、入力部22に含まれる特定のボタンを押す操作)を行う。これを受けて、範囲指定部31eは、当該操作により選択された点の位置を、消去範囲を定める矩形領域(以下、基準領域という)の1つの頂点(以下、第1頂点という)P3として決定する。
【0062】
第1頂点P3の選択後、ユーザーが所定の操作を行い、レーダー映像51上で別の任意の点を選択すると、範囲指定部31eは、当該操作により選択された点の位置を、基準領域の第1頂点P3と対角の頂点(以下、第2頂点という)P4として決定する。第2頂点P4を選択する操作は、例えば、カーソル56を第1頂点P3から所望の位置に移動させた後、入力部22に含まれる特定のボタンを押す操作とすることができる。或いは、第1頂点P3を選択する際に押した特定のボタンを押し続けながら、カーソル56を移動させてレーダー映像51上の別の任意の点に位置合わせし(すなわち、ドラッグ操作)、この状態で特定のボタンをリリースする操作とすることもできる。
【0063】
第1頂点P3及び第2頂点P4が選択されると、範囲指定部31eは、レーダー映像51上において選択された基準領域の位置を明示するような表示を行う。
図5Aの例では、基準領域の輪郭を囲む枠S4が表示されるが、例えば、基準領域の色を他の領域と異なる色で表示することもできる。
【0064】
続けて、範囲指定部31eは、第1頂点P3及び第2頂点P4を対角の頂点とする基準領域を特定し、さらに基準領域に含まれる全てのシンボルS2を特定し、これらのシンボルS2の位置を基準として、ターゲットトラックU3の消去範囲を決定する。本実施形態では、基準領域に含まれる各シンボルS2と、これに隣接するシンボルS2とを連結する範囲が、航跡の消去範囲となる。なお、このとき、
図5Bに示すように、ターゲットトラックU3のうち消去範囲に含まれる部分をハイライト表示させる等、当該部分の表示態様を変化させてもよい。これにより、ユーザーは、自身が指定した消去範囲を容易に確認することができる。
【0065】
なお、範囲指定部31eは、シンボルS2を含まないような基準領域を選択する操作が行われた場合には、シンボルS2の位置を検出できないため、当該操作を拒否する。具体的には、範囲指定部31eは、レーダー指示器20に含まれる図示されないスピーカーを介して拒否音を鳴動させる。また、これに代えて又は加えて、表示部21上にユーザーの操作を拒否した旨を示す情報を表示してもよい。なお、このとき、表示部21上にユーザーの操作を拒否したことを表す何らのサインを表示しなかったとしても、ユーザーは、基準領域を明示する表示が行われないことで、基準領域を選択できなかったことを知ることができる。
【0066】
以上のとおりの消去範囲の指定を受けると、レーダー画面50上には、消去範囲に含まれるターゲットトラックU3を本当に消去するかの確認メッセージが表示される。これに対して、ユーザーが入力部22を操作することにより、消去の続行を意味する所定の操作を行うと、航跡消去部31fは、当該消去範囲に含まれるターゲットトラックU3をレーダー映像51から消去する(
図5C参照)。なお、確認メッセージの表示のプロセスは、省略することもできる。また、航跡消去部31fは、消去範囲に含まれるターゲットトラックU3の削除と同時に、他船位置管理テーブル42内から、消去範囲に対応する位置情報を削除する。すなわち、基準領域に含まれる全てのシンボルS2に対応する時刻情報、位置情報及び識別情報が削除される。よって、本実施形態では、一度消去されたターゲットトラックU3は、復元することができないように構成されている。また、
図5Cの例からも分かるとおり、領域選択方式では、複数の船舶のターゲットトラックU3の一部を同時に消去することができる。
【0067】
以上の操作により、ターゲットトラックU3を部分的に消去することができる。また、同様の操作を繰り返すことにより、同じ船舶のターゲットトラックU3の別の部分を消去することもできるし、異なる船舶のターゲットトラックU3を部分的に消去することもできる。モード選択部31dは、航跡消去モードの終了を指示する操作をユーザーから受け付けている。そして、航跡消去モードの終了が選択されると、範囲指定部31eは、レーダー映像51からシンボルS2を消去し、レーダー映像51を
図4Aのような画面(ただし、航跡消去モードで消去された航跡は表示されない)に復帰させる。
【0068】
<3.特徴>
上記実施形態では、記憶部23内に船舶(自船及び他船を含む)の過去の位置(緯度及び経度情報)が記憶され、これらの船舶の位置を連結するように延びる線の態様で、レーダー映像51上に船舶の航跡U2,U3が表示される。そして、航跡消去モードが選択されると、レーダー映像51上において記憶部23内に記憶されている船舶の位置に、それぞれシンボルS2が表示される。航跡U2,U3の消去範囲の指定は、レーダー映像51上にシンボルS2が表示された状態で行われ、消去範囲が指定されると、消去範囲に含まれる航跡U2,U3がレーダー映像51から消去される。以上より、ユーザーは、シンボルS2の位置を目で捉えることにより、記憶部23内に記憶されている船舶の位置を確認しながら、シンボルS2の位置を基準として決定される航跡U2,U3の消去範囲を指定することができる。その結果、ユーザーは、レーダー映像51上に表示される航跡U2,U3を見ながら、航跡U2,U3の消去したい部分を正しく選択して消去することができる。
【0069】
また、航跡U2,U3を部分的に消去する方法として、2点選択方式と、領域選択方式とがある。2点選択方式では、航跡U2,U3を細かく消去することができ、消去したい部分をより正しく消去することが可能となる。一方、領域選択方式では、領域毎にまとめて一度の作業で航跡U2,U3の多くの部分を消去することができる。
【0070】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0071】
<4−1>
上記実施形態では、航跡消去モードが選択される前においては、レーダー映像51上において自船位置管理テーブル41及び他船位置管理テーブル42内に記録されている船舶の位置を表すシンボルS2は表示されなかった。しかしながら、航跡消去モードが選択される前からシンボルS2を表示しておくこともできる。また、航跡消去モードが選択される前からシンボルS2を表示しておく場合、航跡消去モードが選択された後において、シンボルS2の存在を強調表示するようにシンボルS2の表示態様を変化させてもよい。シンボルS2の強調表示の方法には、例えば、シンボルS2を拡大する、より目立つ色に変更する等の方法が考えられる。
【0072】
<4−2>
ターゲットトラックU3を描画するための基準となる他船の位置情報は、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)を搭載する他船から送信されてくる位置情報を使用することもできる。この場合、レーダー装置1は、例えば、
図6に示すように構成することができる。
【0073】
図6の例では、レーダー指示器20は、AIS送受信機70に接続される。AIS送受信機70は、他船から送られてくるAIS信号を受信し、場合によっては自船からもAIS信号を送信するための機器である。AIS信号には、送信元の船舶の識別情報並びに位置情報(緯度及び経度情報)をはじめとして、送信元の船舶に関する各種情報が含まれている。レーダー指示器20は、AIS送受信機70との通信ポートであるAISインターフェース部27をさらに有し、AISインターフェース部27は、AIS送受信機70からAIS信号を取得する。
【0074】
位置管理部31cは、AIS送受信機70からのAIS信号に含まれる船舶の識別情報並びに緯度及び経度情報を所定の時間間隔で取得し、これらの情報を時刻情報に関連付けて他船位置管理テーブル42内に記録する。これにより、AIS信号に基づいてターゲットトラックU3を表示することができ、さらに航跡消去モードにおいては、AIS信号に基づくターゲットトラックU3を部分的に消去することができる。
【0075】
<4−3>
上記実施形態では、2点選択方式又は領域選択方式のどちらを選択するかは、ユーザーが指定可能に構成されていた。しかしながら、航跡消去モードに入った後のユーザーの操作に応じて自動的に、2点選択方式又は領域選択方式のいずれかが選択されるようにしてもよい。例えば、ユーザーにより選択された基準領域にシンボルS2が1点しか含まれない場合、自動的に2点選択方式が選択され、当該シンボルS2の位置を始点基準点とし、その後、終点基準点を定めるシンボルS2の入力を受け付けるように構成することができる。一方で、ユーザーにより選択された基準領域に複数のシンボルS2が含まれる場合には、自動的に領域選択方式が選択されるように構成することができる。
【0076】
<4−4>
上記実施形態で説明された航跡の消去範囲を指定するためのユーザー操作は、例示である。その他にも、例えば、以下の2つの例を挙げることができる。
【0077】
1つ目は、ユーザーに航跡U2,U3に含まれる点を選択させる方式である。まず、ユーザーは、航跡消去モードにおいて、カーソル56を航跡上の任意の点に位置合わせした状態で、入力部22に所定の操作(例えば、入力部22に含まれる特定のボタンを押す操作)を行う。これを受けて、範囲指定部31eは、当該操作により選択された点(以下、基準点という)と同じ航跡上において、基準点に2方向に隣接する2つのシンボルS2を特定する。そして、これら2つのシンボルS2の位置を基準として、航跡の消去範囲を決定する。例えば、これらの2つのシンボルS2の間の区間を、航跡の消去範囲として決定することができる。
【0078】
2つ目は、ユーザーに航跡U2,U3に含まれる線分を選択させる方式である。まず、ユーザーは、航跡消去モードにおいて、上述の領域指定方式と同様の方法で、基準領域を選択する。これを受けて、範囲指定部31eは、基準領域内に航跡が少なくとも部分的に含まれるか否かを判断する。そして、航跡が少なくとも部分的に含まれると判断される場合には、基準領域に含まれる航跡上の線分(以下、基準線分という)を特定し、同じ航跡上において、基準線分に2方向に隣接する2つのシンボルS2を特定する。そして、これら2つのシンボルS2の位置を基準として、航跡の消去範囲を決定する。例えば、これらの2つのシンボルS2の間の区間を、航跡の消去範囲として決定することができる。