(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
病院などで患者などに経口あるいは経腸により栄養剤や医薬品、流動食などを投与するとき、これらを胃や腸に挿入したチューブを通して投与することがある。また、輸液などを点滴するときにも、チューブを通して中空針から輸液などを患者の体内に送り込むことがある。
【0003】
このような患者に投与する栄養剤や医薬品などは容器に充填されていて、容器を吊り下げて、容器の下端よりチューブを通して栄養剤や医薬品などを流出させて投与されている。このような容器とチューブとを接続するために、容器にはスパウト部材等の部材が設けられていた。
【0004】
また、容器においても従来はガラス瓶やプラスチックボトルが用いられていたが、最近では軟包装袋が用いられる様になってきた。しかし、軟包装袋においても、スパウト部材等の部材が設けられていた。
【0005】
例えば、特許文献1の「経管投与剤用接続具」においては、フィルムにより製袋された経管投与剤容器に液密にスパウト部材が接合されていて、このスパウト部材に係脱可能に経管投与剤用接続具が接続され、経管投与剤をチューブに導入する様になっている。
【0006】
このように投与剤を収納する軟包装袋にスパウト部材等の部材を設けるには、軟包装袋の製造に当たって加工工程が増え、また、スパウト部材等の部材を用意しなければならないなどコストアップや製造時間が長くなるなどの問題がある。さらに、製造後の保管や輸送のためのスペースが必要となるなどコストアップの要因になる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、実施形態に係る包装袋セットの使用状態を示す図である。
図1に示すように、実施形態に係る包装袋セット1は、軟包材からなり、内部に液状またはゲル状の収納物を収納する包装袋100と、包装袋100とチューブ204とを接続し、包装袋100に収納された収納物をチューブ204へと排出する接続具200とを具備する。液状またはゲル状の収納物としては、例えば、栄養剤や医薬品、輸液、流動食などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
(包装体の構成)
まず、包装袋100について説明する。
図2は、実施形態に係る包装袋の平面図である。
図2に示すように、実施形態に係る包装袋100は、収納物を収納する収納部119と、収納部119に接続され、収納部119の内部に収納された収納物を収納部119の外部へと導く注出部120と、包装袋100の開封時に注出部120の一部を横断する切断位置で切断除去される切断除去部123とを備える。
【0018】
包装袋100は、互いに重ね合わせた2枚のシートの周囲をヒートシールしたパウチにより構成される。より具体的には、
図2に示すように、2枚のシートにおける、シール部111、112、113、114、115、116、117及び118がそれぞれヒートシールされている。尚、本実施形態では2枚のシートを用いてシートの周囲全体をヒートシールしているが、1枚のシートを折り曲げ、折り曲げた一辺以外の周縁部分をヒートシールしてもよい。
【0019】
収納部119は、上端に向かって幅が狭まる形状である。注出部120は、収納部119の上端の最も幅が狭まった部分に接続され、幅が一定の未シール部よりなる。
【0020】
注出部120の収納部119と反対側の先端部付近のシール部116、117には、切断除去部123を切断除去する際の切っ掛けとなる一対のノッチ部が形成されている。また、一対のノッチ部を結ぶ線に沿って注出部120を横断するように易切断線121が設けられている。これにより、切断除去部123をノッチ部を切っ掛けに易切断線121に沿って切断除去することができる。易切断線121は、シートの外側からハーフカット加工などの傷加工を施して設けることができるが、これに限定されない。また、シートの延伸方向と一対のノッチ部を結ぶ方向とを一致させてもよい。この場合、易切断線121は設けなくてもよい。また、切断除去部123を易切断線121に沿って切断除去し易いように、シール部118は摘み部として手指で摘まめる十分な大きさに形成されることが好ましい。切断除去部123を切断除去することで、注出部120に開口が形成される。
【0021】
また、シール部111には、吊下げ用孔122が設けられていて、フックなどの吊下げ具に掛けて包装袋100を吊下げられるようになっている。
【0022】
包装袋100に用いられるシートには、軟包材であって、ヒートシールが可能な樹脂製の単層フィルムまたは積層フィルムを利用することができるが、基材フィルムとシーラント層とからなる積層フィルムであることが好ましい。単層フィルムとしては、低密度ポリエチレンの無延伸フィルムが好適に用いられる。
【0023】
積層フィルムの基材フィルムとしては、2軸延伸樹脂フィルムが好ましく用いられ、樹脂としては、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステルなどが好ましく用いられる。また、バリア性を考慮して、積層フィルムに無機酸化物蒸着層を設けても良い。これらは組み合わせて多層の基材フィルムとしても良い。
【0024】
シーラント層には酸化防止剤の添加されていない低密度ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0025】
包装袋100の製袋は、通常のパウチなどを製袋する製袋機で行うことができる。通常のパウチの製袋と同様にヒートシール及び裁断を行うが、このとき、包装袋100に収納する収納物の充填口として、シール部111を未シール部として残しておく。尚、未シール部は、シール部111以外のシール部112、113などの内の一箇所であってもよい。また、吊下げ用孔122の形成は、シートの裁断と同時または別工程により行う。
【0026】
次に、製袋された包装袋100に、未シール部にして残した充填口より収納物を充填し、未シール部をシールする。収納物の充填は無菌充填包装で行うのが好ましい。また、収納物の充填後、レトルト殺菌やオートクレーブ滅菌などにより、殺菌、滅菌してもよい。これにより、収納物が収納された包装袋100を得ることができる。
【0027】
(接続具の構成)
次に、接続具200について
図3〜
図7を用いて説明する。
図3は、実施形態に係る接続具の斜視図であり、
図4は、
図3に示す接続具の側面図であり、
図5は、実施形態に係る接続具の外巻部材を開いた状態を示す正面図であり、
図6は、
図5に示す接続具の外巻部材を開いた状態を示す側面図であり、
図7は、
図3に示す切断線B−Bに沿う断面図である。
【0028】
接続具200は、
図3〜
図7に示すように、外巻部材201と、差込部材203とを備える。尚、後述のように、外巻部材201は、差込部材203の外周面を取り囲んだ状態で差込部材203に固定される。
【0029】
差込部材203は、
図3〜
図5に示すように、一方部210(
図3における上端部)側から他方部211(
図3における下端部)側に向かって径が小さくなる略円錐形状を有する。差込部材203の一方部210がチューブ204に接続され、他方部211が包装袋100の切断除去部123を除去した後の注出部120に差し込み可能である。差込部材203には、
図5及び
図7に示すように、外面の一部とチューブ204とを連通させる連通孔207が設けられ、包装袋100に収納された収納物をチューブ204に排出することができる。本実施形態において、連通孔207は、差込部材203の一方部210でチューブ204と接続し、他方部211に向かって径が大きくなり、差込部材203の中央部付近で2つに分岐している。分岐した連通孔207は、それぞれ差込部材203の外面に開口部を形成し、差込部材203の外面において他方部211側に向かう溝を形成している。差込部材203の外面に溝を形成することで、ゲル状の内容物であっても溝に沿って容易に開口部に流入させることができる。
【0030】
外巻部材201は、
図3〜
図6に示すように、円筒形状を半円筒形状に分割した形状である一対の分割体202と、一対の分割体202を接続するヒンジ205と、一対の分割体202が円筒状を構成した状態で固定するロック部206とを有する。
【0031】
一対の分割体202は、ヒンジ205を中心に開閉自在である。より詳細には、一対の分割体202が円筒形状を構成する閉状態(
図3、
図4)と、一対の分割体202が閉状態における円筒形の中心軸と平行な回転軸であるヒンジ205を中心に開いた開状態(
図5、
図6)との間で開閉可能である。つまり、一対の分割体202は、一対の分割体202の一方の分割線212(
図4における左端部分)の端縁に設けられたヒンジ205の回転軸を中心として、一対の分割体202の他方の分割線213(
図4における右端部分)の端縁が離れる方向に回転することで開状態となり、ヒンジ205の回転軸を中心として、一対の分割体202の分割線213の端縁が近づく方向に回転して円筒形を構成することで閉状態となる。
【0032】
ロック部206は、係合片206aと係合片206bとからなり、一対の分割体202の分割線213の近傍にそれぞれ設けられている。本実施形態では、係合片206aは、一対の分割体202の一方に設けられた凸状の部材であり、係合片206bは、一対の分割体202の他方に設けられ、上記凸状の部材が嵌合可能な貫通孔を有する部材である。一対の分割体202は、係合片206bに設けられた貫通孔に係合片206aの凸部が内側から挿入されて、円筒状を構成した状態でロックされるようになっている。
【0033】
図3に示すように、一対の分割体202が閉状態となりロック部206によりロックされた状態においては、係合片206a、206bの下方から外巻部材201の下端部(
図3における下端部分)までスリット208が形成されている。また、
図3では図示されていないが、係合片206a、206bの下方と同様に、ヒンジ205の下方からヒンジ205の回転軸に沿って外巻部材201の下端部までスリット208が形成されている。
図5、
図6に示すように、この一対のスリット208は、一対の分割体202それぞれの係合片206a、206bの下方及びヒンジ205の下方に設けられた切欠きが、一対の分割体202が閉状態となることで形成されるものである。つまり、一対の分割体202の閉状態において、スリット208の一方は、一対の分割体202の回転軸に沿って、外巻部材201の下端部から所定範囲に設けられ、スリット208の他方は、一対の分割体202の閉状態における円筒形の中心軸に対してヒンジ205の回転軸と対称となる軸に沿って、外巻部材201の下端部から所定範囲に設けられる。このため、詳細は後述するが、包装袋100の注出部120に差込部材203を差し込んで、かつ、ロック部206が一対の分割体202を固定した閉状態において、包装袋100の周縁部が上記一対のスリット208に入るようにすることができるため、包装袋100の周縁部が邪魔にならない。
【0034】
また、外巻部材201には、外巻部材201の閉状態において差込部材203の外周面に対向する内周面に、滑り止め素材が用いられている。滑り止め素材としては、シリコーンゴムなどのゴム弾性物質が用いられる。
【0035】
図7に示すように、外巻部材201が差込部材203に固定された状態において、外巻部材201の内周面の一部は、当該一部に対向する差込部材203の外周面に沿う様に、一定のクリアランスを持って差込部材203の外周面に対応する形状に形成されている。外巻部材201の内周面と差込部材203の外周面とのクリアランスは、包装袋100のシート1枚の厚さ以下である。
【0036】
差込部材203には、一方部210の外周縁に外側に向かって突出するフランジ部209が設けられている。また、外巻部材201には、差込部材203のフランジ部209が嵌合可能な溝部が設けられ、外巻部材201の上端部分は差込部材203のフランジ部209の上端を越えて設けられる。また、外巻部材201の溝部より下方の部分の厚みは外巻部材201の下端部に向かって増加するように形成されている。外巻部材201の溝部に差込部材203のフランジ部209が嵌合することにより、外巻部材201は差込部材203のフランジ部209を取り囲んだ状態で差込部材203に固定される。
【0037】
本実施形態では、差込部材203は、熱可塑性樹脂を用いて一体で成型され、外巻部材201も、熱可塑性樹脂を用いて一体で成型されている。差込部材203と外巻部材201とは外巻部材201のヒンジ205の近傍で溶着等により接合されている。尚、差込部材203と外巻部材201とは、溶着等で接合されていなくてもよい。また、差込部材203と外巻部材201とが一体で成型されていてもよい。また、チューブ204は成型された差込部材203に熱融着などで取り付けられる。また、外巻部材201の内周面に設けられた滑り止め素材は、外巻部材201に用いられる熱可塑性樹脂と滑り止め素材に用いられるゴム弾性物質とを二色成形などにより一体に成型される。
【0038】
(包装袋セットの使用方法)
次に、本発明に係る包装袋セットの使用方法について、
図8及び
図9を用いて、
図1、
図2、
図5、
図6を併せて参照しながら説明する。
図8は、実施形態に係る包装袋に接続具を取り付ける過程を示す図であり、
図9は、
図1に示す破線で囲まれたA部分の拡大図である。
【0039】
まず、
図2に示す切断除去部123が切断除去されていない未開封状態の包装袋100に対して、切断除去部123をノッチ部を切っ掛けに易切断線121に沿って切断除去することで包装袋100の注出部120に開口を形成する。次に、
図5、
図6のように外巻部材201の一対の分割体202を開いた状態で、差込部材203の他方部211を、包装袋100の注出部120に形成された開口部に
図8のように差し込む。尚、本実施形態と異なり差込部材203と外巻部材201とが接合されていない場合には、差込部材203及び外巻部材201を
図5及び
図6に示すように配置した後に差込部材203の他方部211を注出部120に形成された開口部に差し込んでもよいし、差込部材203の他方部211を注出部120に形成された開口部に差し込んだ後に外巻部材201を
図8に示すように配置してもよい。
【0040】
次に、係合片206aと係合片206bとを係合させてロックして、接続具200に包装袋100を固定する。このとき、上述した様に、係合片206a、206bの下方、および、ヒンジ205の下方にはスリット208が形成されるため、外巻部材201の一対の分割体202を閉じても、包装袋100のシール部114、115、116、117が、このスリットに入り込み、外巻部材201の外部に出るため邪魔にならない。次に、
図1に示すように、軟包装袋100の吊下げ用孔122を上にして(図示しない)吊下げ具に引っ掛ける。
【0041】
このようにしても、
図9に示すように、外巻部材201の内周面の一部が略円錐形状の差込部材203の外周面に対応する形状に形成され、かつ、外巻部材201の内周面と差込部材203の外周面とのクリアランスが包装袋100のシート1枚の厚さ以下であることにより、差込部材203の外周面と包装袋100の注出部120の内面との間の摩擦力により差込部材203は包装袋100から抜け難くなり、かつ、外巻部材201の内周面に設けられた滑り止め素材により包装袋100の注出部部分は外巻部材201の内周面との間でズレ難くなる。そのため、差込部材203の外周面と外巻部材201の内周面との間に包装袋100の注出部120が挟まれ固定され、その結果、差込部材203が包装袋100の注出部120から抜けたり外れたりすることがほとんどない。
【0042】
吊下げ用孔122を上にして吊下げ具に引っ掛けることで、包装袋100に収納されていた収納物が、自重によって、注出部120から接続具200の連通孔207を通ってチューブ204の中空部に流れ込む。そして、チューブ204を通して内容物が排出される。
【0043】
以上のように、本発明の包装袋セットの構成によれば、収納物を収納した包装袋にスパウト部材等の特段の部材を設けることなく容易に接続可能で、包装袋の収納物をチューブに流出させすることが可能である。また、包装袋の注出部を接続具に固定する際に、包装袋の注出部への差込部材の差し込み及び外巻部材のロックを一連の動作で容易に行うことができるため、片手で接続具を取り扱うことができる。また、包装袋に直接接続具を取り付けることができるので誤接続の恐れもなく、接続具の接続後は接続具が包装袋から誤って外れる恐れもほとんどない。
【0044】
尚、本実施の形態では、外巻部材201は、半円筒形の一対の分割体であって、閉状態では一対の分割体が円筒形を構成するものとして説明したが、一対の分割体の形状はこれに限定されず、例えば、半角筒状の一対の分割体であって、閉状態では一対の分割体が角筒形を構成してもよい。
【0045】
また、本実施の形態では、外巻部材203に設けられたロック部206は、凸状の部材と当該凸状の部材が嵌合可能な貫通孔を有する部材とから構成されるものとして説明したが、ロック部の構成はこれに限定されず、一対の分割体がロックされて固定されるものであればよい。
【0046】
また、本実施の形態では、差込部材203の連通孔207が2つに分岐する構成として説明したが、連通孔は、分岐せずに差込部材の外面に開口部を1つ形成するものでもよいし、3つ以上の任意の数に分岐するものでもよい。
【0047】
また、本実施の形態では、差込部材203のフランジ部209が外巻部材201の溝部に嵌合することで外巻部材201が差込部材203に固定されるものとして説明したが、外巻部材が差込部材に固定される方法はこれに限定されず、外巻部材が差込部材の一方部に固定される構成であればよい。