(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6894547
(24)【登録日】2021年6月7日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】架線交差方法および架線交差具
(51)【国際特許分類】
H02G 1/02 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
H02G1/02
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-38985(P2020-38985)
(22)【出願日】2020年3月6日
【審査請求日】2020年3月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】399040405
【氏名又は名称】東日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】算用子 徹
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−117715(JP,A)
【文献】
特開2018−074820(JP,A)
【文献】
特開2018−129979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
H02G 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆U字形状を有する当接部と、電線を取り付ける取付部を備える架線交差具を用いて、架線の上方で前記電線を交差させる架線交差方法であって、
前記当接部の前記逆U字形状の一方の先端の前記取付部に、前記電線を取り付けるステップと、
前記取付部および前記取付部から接続された前記電線が前記架線の手前側から、前記当接部の前記逆U字形状の湾曲部の内周面が前記架線に当接するように、前記架線に前記架線交差具を置くステップと、
前記架線に置かれた前記架線交差具を、前記架線の奥側に引き上げるステップ
を備える架線交差方法。
【請求項2】
前記架線交差具は、さらに、棒状ツールで係止可能な係止部を備え、
前記置くステップにおいて、前記棒状ツールで前記係止部をひっかけて、前記架線に前記架線交差具を置き、
前記引き上げるステップにおいて、前記棒状ツールで前記係止部をひっかけて、前記架線に置かれた前記架線交差具を引き上げる
請求項1に記載の架線交差方法。
【請求項3】
架線の上方で電線を交差させるための架線交差具であって、
逆U字形状を有し、前記逆U字形状の湾曲部の内周面で前記架線に当接する当接部と、
前記当接部の前記逆U字形状の一方の先端に、前記電線を取り付ける取付部
を備える架線交差具。
【請求項4】
前記架線交差具が前記架線に置かれ、前記内周面が前記架線に当接する際、前記当接部の前記内周面は、前記架線上で滑りにくい部材で形成される
請求項3に記載の架線交差具。
【請求項5】
棒状ツールで係止可能な係止部
をさらに有する請求項3または4に記載の架線交差具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線交差方法および架線交差具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば道路を横断するように、空中に複数の架線が設けられ、その架線の上に、新たにかける電線を交差させる場合がある。一人の作業員が、新たな電線を架線の上に乗せながら移動する方法がとられる。
【0003】
一般的に、高所作業車を使用せずに地上から一人で容易に、ドロップケーブルの回収を行う装置がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−136827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、架線に電線を乗せる際、電線の自重により滑ったり、風にあおられて落ちたりする場合がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、架線の上方で電線を容易に交差させる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の架線交差方法は、逆U字形状を有する当接部と、電線を取り付ける取付部を備える架線交差具を用いて、架線の上方で電線を交差させる架線交差方法であって、当接部の逆U字形状の一方の先端の取付部に、電線を取り付けるステップと、取付部および取付部から接続された電線が架線の手前側から、当接部の逆U字形状の湾曲部の内周面が架線に当接するように、架線に架線交差具を置くステップと、架線に置かれた架線交差具を、架線の奥側に引き上げるステップを備える。
【0008】
本発明の一態様の架線交差具は、架線の上方で電線を交差させるための架線交差具であって、逆U字形状を有し、逆U字形状の湾曲部の内周面で架線に当接する当接部と、当接部の逆U字形状の一方の先端に、電線を取り付ける取付部を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、架線の上方で電線を容易に交差させる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る架線交差具の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る架線交差具の斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る架線方法を説明する図である(その1)。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る架線方法を説明する図である(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0012】
(架線交差具)
本発明の実施の形態に係る架線交差具1は、架線の上方で電線19を交差させる。電線19は、少なくとも一端が電柱等に設置されておらず、新たに架設される電線である。電線19の設置されていない一端を架線交差具1に取り付けて、架線の上方で、架線交差具1とともに電線19を交差させる。架線交差具1は、例えば一人の作業員が、電線19を架線の上に乗せながら電線19を移動する際に、用いられる。本発明の実施の形態において架線は、空間においてかけわたされた電線であって、例えば、電柱間を渡す電線からの引き込み線である。なお本発明の実施の形態において、電線19の用途は問わない。
【0013】
図1に示すように、本発明の実施の形態にかかる架線交差具1は、当接部11、取付部12、および係止部13を備える。
【0014】
当接部11は、逆U字形状を有し、逆U字形状の湾曲部の内周面で架線に当接する。架線交差具1は、
図3および
図4に示すように、当接部11の逆U字形状部分の内周面を、架線に当接するように、架線上に配置される。
【0015】
取付部12は、当接部11の逆U字形状の一方の先端に、電線19を取り付ける。取付部12は、電線19を着脱可能に取り付けられるように形成されるのが好ましい。
図1および
図2に示す例において、テープで巻き付ける。より具体的には、電線の中心にある鋼芯を取付部12に巻き付け、その上をさらにテープで巻き付ける。
【0016】
取付部12で、電線19を取り付ける方法は問わない。例えば、電線19を当接部11の逆U字形状の一方の先端に沿わせて、その上からテープで巻き付けても良い。また、電線を当接部11の逆U字形状の一方の先端に結びつけても良い。取付部12が、電線19を着脱可能なクリップであって、クリップで新たな電線を挟み込んでも良い。また当接部11の逆U字形状の一方の先端に、所定長さのロープ状部材を取り付け、そのロープの先端に、電線19を接続しても良い。
【0017】
当接部11の内周面は、架線上で滑りにくい部材で形成される。架線交差具1が架線に置かれ、当接部11の内周面が架線に当接する際、架線交差具1の自重と、架線に掛かる電線19の自重等により、当接部11の内周面が架線を押さえつける。この際、当接部11の内周面は、架線交差具1が架線上をずれ動かない摩擦力を有するように形成される。当接部11の内周面に必要な摩擦力は、架線の素材、架線の傾斜角度、架線交差具1および架線にかかる電線19の重さ、風などの自然環境等によって決まる。
【0018】
係止部13は、棒状ツールで係止可能に形成される。係止部13は、架線交差具1を持ち上げる棒状ツールが、係止する部分である。
図1および
図2に示す架線交差具1において係止部13は、針金等で形成され、凸形状を有する。係止部13の下端を、テープ等により当接部11の外周面に接続することで、係止部13と当接部11の外周面により輪が形成される。この輪に、棒状ツールの先端を差し込むことにより、架線交差具1を持ち上げ、移動することができる。
【0019】
架線交差具1を持ち上げる棒状ツールは、作業員が持ち上げることにより、架線に置かれた架線交差具1の係止部13に、棒状ツールの先端が届く長さを有する。また棒状ツールの先端は、係止部13を係止するように形成される。例えば、棒状ツールの先端に、作業員の手元で操作することにより、開閉可能な環状部材が形成される。環状部材を開いた状態で、係止部13が形成する輪に棒状ツールの先端を通した後、環状部材を閉じることで、棒状ツールで架線交差具1を持ち上げることができる。また係止部13を係止するための棒状ツールの先端の形状は、単なる「V」の字形状等であって、架線交差具1を持ち上げて移動させることが可能であれば、どのような形状であっても良い。
【0020】
なお、本発明の実施の形態において架線交差具1は、逆U字形状を有するが、これに限らない。例えば、逆U字形状の一端に取付部12が形成され、別の一端が、より長く形成されても良い。一端が長く形成された部分が重りとなり、取付部12に取り付けられた電線19の重みとのバランスをとりやすくなる。
【0021】
図3および
図4を参照して、架線交差具1を用いて、架線に、電線19を交差させる場合を説明する。
図3および
図4に示す例において、架線交差具1が交差させる架線は、電柱20間を渡される電線21から、各家屋等に引き込まれる引き込み線22、23および24である。
図3および
図4に示す進行方向、具体的には、引き込み線22、23および24の順に、これらの引き込み線の上方で電線19を交差させ、電線を引き込み線22の手前から、引き込み線24の奥までにわたす場合を説明する。この電線19は、例えば、まだいずれにも架設されておらず、引き込み線の上方で交差された後に新たに架設される。
【0022】
まず、当接部11の逆U字形状の一方の先端の取付部12に、電線19を取り付ける。例えば作業員は、引き込み線22の手間側の地上に位置する。作業員は、進行方向に対して手前側に、取付部12が位置するように持ち、その取付部12に電線19を取り付ける。
【0023】
次に作業員は、
図3に示すように、取付部12および取付部12から接続された電線19が引き込み線22(架線)の手前側から、当接部11の逆U字形状の湾曲部の内周面が引き込み線22に当接するように、引き込み線22に架線交差具1を置く。このとき作業員は、棒状ツールで係止部13をひっかけて、引き込み線22に架線交差具1を置く。
【0024】
次に作業員は、引き込み線22に置かれた架線交差具1を、引き込み線22の奥側に引き上げる。このとき作業員は、棒状ツールで係止部13をひっかけて、引き込み線22に置かれた架線交差具1を引き上げる。その後作業員は、
図4に示すように、架線交差具1の当接部11の逆U字形状の湾曲部の内周面が引き込み線23に当接するように、引き込み線23に架線交差具1を置く。このとき作業員は、引き込み線22と引き込み線23の間の地上に位置すると、引き込み線22に置かれた架線交差具1を、引き込み線23に置きやすい。
【0025】
同様の処理を繰り返して、引き込み線23に置かれた架線交差具1を、引き込み線24に置く。引き込み線24の奥側から引き込み線24を引き上げることにより、電線19を引き込み線22、23および24の上方で交差させることができる。
【0026】
本発明の実施の形態において架線交差具1において当接部11が、逆U字形状を有し、逆U字形状の湾曲部の内周面で架線に当接し、当接部11の逆U字形状の一方の先端に、電線19が取り付けられる。これにより、一人の作業員が、当接部11が架線に当接するように架線交差具1を架線に乗せながら、一人の作業員が、複数の架線の上方で電線19を交差させることができる。
【0027】
また当接部11が逆U字形状を有することから、架線交差具1が、架線上で周方向(
図1の左右方向)に動いても、架線から架線交差具1が落ちにくく、安定しておくことができる。
【0028】
また架線交差具1が架線に置かれ、内周面が架線に当接する状況において、当接部11の内周面は、架線上で滑りにくい部材で形成される。これにより、架線交差具1を架線に置いた状況で滑りにくく、架線交差具1が架線上を滑りだし、予期せぬ方向に移動する状況を回避することができる。
【0029】
さらに架線交差具1は、棒状ツールで係止可能な係止部13を備える。これにより、架線と接する当接部11を持ち上げることなく、安全に架線交差具1を移動することができる。
【0030】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 架線交差具
11 当接部
12 取付部
13 係止部
19、21 電線
20 電柱
22、23、24 引き込み線
【要約】
【課題】架線の上方で電線を容易に交差させる。
【解決手段】架線交差具1は、逆U字形状を有し、逆U字形状の湾曲部の内周面で架線に当接する当接部11と、当接部11の逆U字形状の一方の先端に、電線19を取り付ける取付部12を備える。架線交差具1は、架線の上方で電線19を交差させる。
【選択図】
図1