(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均繊維径が0.1μm以上7μm以下、平均繊維長が20μm以上300μm以下、繊維長のCV値が40%以上100%以下、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上である薄膜形成用短繊維組成物であって、当該繊維が、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ乳酸、オキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン及びポリヒドロキシアルカン酸から選ばれる1種又は2種以上の水不溶性ポリマーの繊維である薄膜形成用短繊維組成物。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の短繊維は、平均繊維径が0.1μm以上7μm以下、平均繊維長が20μm以上300μm以下、繊維長のCV値が40%以上100%以下、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上であるという特徴を有する。
【0010】
本発明の短繊維の平均繊維径は0.1μm以上7μm以下である。繊維径は、原則として繊維の断面の直径である。ここで繊維の断面が円の場合は直径であるが、断面が楕円の場合は長径である。本発明の短繊維の平均繊維径は、得られる薄膜の密着性の観点から、0.1μm以上7μm以下である。
現実的な配合量を考慮すると好ましくは0.2μm以上であり、より好ましくは0.3μm以上である。
また繊維の毛管力が高まり密着性が良くなる観点から好ましくは5μm以下であり、より好ましくは4μm以下であり、さらに好ましくは3μm以下である。
繊維径は、走査型電子顕微鏡観察(SEM)によって、繊維を2000倍又は5000倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に直交する線を引き繊維径を直接読み取ることで測定することができる。平均繊維径は、これらの測定値の相加平均を求めて、これを平均繊維径とする。
繊維が薄膜中に分散している場合には、組成物を基板に薄く塗布してSEM観察によって計測する。この手段は、本明細書の他の測定においても共通である。
【0011】
繊維の長さは、得られる薄膜の密着性の観点から、平均繊維長として20μm以上300μm以下である。
得られる薄膜の強度の観点から好ましくは25μm以上であり、より好ましくは30μm以上であり、さらに好ましくは40μm以上である。
また、組成物塗布時に繊維同士での絡まりと縒れを抑制する観点から好ましくは250μm以下であり、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは150μm以下である。
繊維長は、SEM観察によって、繊維の長さに応じて、250倍ないし750倍に拡大して観察し、その二次元画像から欠陥(例えば、繊維の塊、繊維の交差部分)を除いた繊維を任意に100本選び出し、繊維の長手方向に線を引き繊維径を直接読み取ることで測定できる。平均繊維長は、これらの測定値の相加平均を求めて、平均繊維長とする。
【0012】
また、本発明の短繊維の繊維長のCV値(変動係数:Coefficient of Variation)は、薄膜中でネットワークを形成する観点から、40%以上100%以下である。当該CV値をこの下限以上とすることで、ネットワーク間の空隙が小さくなり、密着性が向上する。またこの上限以下とすることで極端に短いか長い繊維が少なくなり、絡み合いが強まり密着性が強まる。又は均一ネットワークが形成できる。
ネットワークが形成し易くなる観点から、好ましいCV値は42%以上であり、より好ましくは45%以上である。
また組成物の保存安定性が高まる観点から、好ましくは95%以下であり、より好ましくは90%以下であり、殊更に好ましくは85%以下である。
CV値は(測定した繊維の長さの標準偏差)/(平均繊維長)×100[%]で求まる値である。
【0013】
本発明の短繊維は、薄膜中で強固なネットワークを形成し、得られる薄膜の密着性を高める観点から、繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合が5%以上である分布を有することが好ましい。繊維長40μm以上の繊維の本数割合をこの下限以上とすることで、得られるネットワークの強度が強くなる。
40μm以上の繊維は8%以上含有するのが好ましく、さらに繊維の絡まりを増やし薄膜の強度を向上する観点から15%以上含有するのがより好ましい。
繊維長40μm以上の繊維の上限は500μm以下が好ましい。
またネットワークを形成し易くする観点から、繊維長40μm以上の繊維は100%以下含有するのが好ましい。
繊維全体における繊維長40μm以上の繊維の本数割合は、繊維長さに応じて、SEMの1つの撮像画面に20〜30本の繊維が入るようにSEMの倍率を200倍から750倍で調整する。その状態で画面内にある全ての繊維を測定することで恣意性を排除し、合計200本以上で測定する。
【0014】
本発明の短繊維のアスペクト比(平均繊維長/平均繊維径)は、得られる薄膜の密着性の観点から、8以上300以下が好ましい。
現実的な配合量を考慮すると、10以上がより好ましく、15以上がさらに好ましく、20以上がさらに好ましく、25以上が殊更好ましく、繊維の絡まりを増やし薄膜の強度を向上する観点から40以上が特に好ましくい。
また現実的な配合量を考慮すると、250以下がより好ましく、200以下がさらに好ましい。
本明細書で言うアスペクト比は、繊維一本についての値ではなく、前記繊維径の測定法に従って求めた平均繊維径と前記繊維長さの測定法に従って求めた平均繊維長とから算出した値である。
【0015】
本発明の短繊維は、前記のような平均繊維径、平均繊維長、CV値、及び分布を有することにより形成された薄膜中でネットワークを形成し、薄膜に密着性を付与する。なお、薄膜中で繊維がネットワークを形成しているか否かはSEMにより確認する。
また、ネットワークとは、薄膜中に分散した繊維同士が互いに交点を2か所以上持つことによって、繊維間に間隙を持つようにした状態であり、この間隙に液剤、化粧料、皮膚外用剤等と繊維を含む薄膜形成組成物に含有される成分を保持し得る状態である。
【0016】
本発明の短繊維は、繊維形成性ポリマーを種々の公知の紡糸技術によって得られた繊維を短繊維化する工程を含むことによって、製造することができる。ここで、繊維形成性ポリマーは、通常、熱可塑性又は溶剤に可溶性の鎖状高分子である。好ましくは、熱可塑性樹脂であり、重量平均分子量1.0×10
4g/molから2.0×10
5g/molの熱可塑性樹脂がより好ましい。繊維形成性ポリマーのうち、水不溶性ポリマーを使用するのが薄膜形成組成物中で繊維の形状を維持する点で好ましい。
また、紡糸法としては、エレクトロスピニング法(電界紡糸法)が、繊維径の小さい繊維を得る点で好ましい。重量平均分子量は、例えばゲル浸透クロマトグラフィーを用いて、生分解性ポリエステルの重量平均分子量を測定する場合、ポリスチレン換算の重量平均分子量として、以下の条件に従って測定することができる。ポリスチレン標準試料としては、重量平均分子量が既知であり且つ重量平均分子量がそれぞれ異なるポリスチレン試料(例えば、東ソー株式会社製の単分散ポリスチレン(型番:F450、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000、A500及びA300)を用いて分子量較正曲線を予め作成し、該較正曲線と測定試料の結果とを比較することによって測定することができる。
【0017】
<ゲル浸透クロマトグラフィー条件>
・測定装置:HLC−8220GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:GMHHR−H+GMHHR−H(東ソー株式会社製)
・溶離液:1mmol ファーミンDM20(花王株式会社製)/CHCl3
・溶離液流量:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・検出器:RI
・サンプル濃度:0.1体積%(クロロホルム溶液)
・サンプル注入量:100mL
【0018】
水不溶性ポリマーの繊維とは、1気圧・23℃の環境下において、繊維1g秤量したのちに、10gの脱イオン水に浸漬し、24時間経過後、浸漬したポリマーの0.5g超が溶解しない性質を有するものをいう。
組成物中に短繊維がある場合、該組成物中に含まれる繊維のうち、上記の手段によって水不溶性ポリマーの短繊維と認められたものを得る。次いで、該短繊維を不溶な溶剤にて洗浄後、濾過することにより繊維形成性ポリマーからなる短繊維を抽出することができる。溶剤は、短繊維が含む樹脂がPLAなどのエステル系樹脂である場合はエタノールが、樹脂がアクリル系の場合は水が好ましい。水不溶性ポリマーの繊維を計測して質量を求めることができ、繊維の質量%は洗浄前組成物の質量との比、すなわち(洗浄後短繊維の質量)/(洗浄前組成物の質量)によって求めることができる。
【0019】
水不溶性ポリマーとしては、例えば薄膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで薄膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエイン(とうもろこし蛋白質の主要成分)、ポリエステル、ポリ乳酸(PLA)、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、各種のポリペプチド(コラーゲン、ゼラチン、フィブリン、カゼイン等)などが挙げられる。これらの水不溶性ポリマーは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの水不溶性ポリマーのうち、薄膜形成後に不溶化処理できる完全鹸化ポリビニルアルコール、架橋剤と併用することで薄膜形成後に架橋処理できる部分鹸化ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸樹脂等のアクリル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(N−プロパノイルエチレンイミン)グラフト−ジメチルシロキサン/γ−アミノプロピルメチルシロキサン共重合体等のオキサゾリン変性シリコーン、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、ツエインから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
このうち、得られる薄膜の密着性の観点から、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリ乳酸、及びポリウレタン樹脂から選ばれる1種又は2種以上がより好ましい。
アクリル樹脂としてはオクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーが好ましい。
また、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカン酸のような生分解性樹脂を用いることも環境負荷軽減の点から好ましい。本明細書において「生分解性」とは、JIS K6953−1に準じて測定されたポリエステルの生分解度が30%以上のものである。
【0020】
繊維の短繊維化の手段としては、切断、剪断、破砕、粉砕、解砕、又は解繊する方法が挙げられ、例えば、機械式渦流粉砕機、ハンマークラッシャー等の衝撃破砕機、ジェットミル等のジェット粉砕機、ボールミル・ロッドミル等の媒体式粉砕機、カッターミル粉砕機、ディスクミル粉砕機等の乾式粉砕、並びに液体媒体を用いたメディア粉砕機、メディアレス粉砕機を用いた湿式粉砕機、並びにこれらを組み合わせて使用することができる。
より好ましい短繊維化の手段は、ナノファイバーが交絡した繊維集合体、例えば不織布を製造した後、該繊維集合体を適切な大きさに切断した後、機械式渦流粉砕機、カッターミル粉砕機、ディスクミル粉砕、湿式の高速せん断型メディアレス粉砕機、又は湿式の高圧せん断型メディアレス粉砕機を用いる。
前記繊維集合体としては、不織布以外に、綿状体などの所定の厚みをもったものも含む。
【0021】
本発明の短繊維を用いて薄膜を形成するには、前記短繊維を媒体に分散させ、当該分散液を基材(皮膚も含む)上に塗布すればよい。ここで媒体としては、揮発性成分及び/又は油剤が用いられる。
【0022】
揮発性成分としては、水、アルコール、アミド類、ケトン、揮発性シリコーン、揮発性炭化水素等が挙げられるが、水、アルコール、及び揮発性シリコーン、揮発性炭化水素から選ばれる1種以上が好ましい。
水を用いることが典型的である。
【0023】
アルコールとしては例えば一価の鎖式脂肪族アルコール、一価の環式脂肪族アルコール、一価の芳香族アルコールが好適に用いられる。一価の鎖式脂肪族アルコールとしてはC
1−C
6アルコール、一価の環式アルコールとしてはC
4−C
6環式アルコール、一価の芳香族アルコールとしてはベンジルアルコール、フェニルエチルアルコール等がそれぞれ挙げられる。それらの具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、フェニルエチルアルコール、n−プロパノール、n−ペンタノールなどが挙げられる。これらのアルコールは、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
アルコールの中ではフェノキシエタノールを用いることがより好ましい。
揮発性シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、環状シリコーンが挙げられる。
揮発性炭化水素としてはイソドデカン、水添ポリイソブテン等が挙げられる。
【0024】
油剤としては、エステル油、前述の揮発性成分以外の炭化水素油、エーテル油、及び高級アルコール、前述の揮発性成分以外のシリコーン油、フッ素油が挙げられ、このうちエステル油、炭化水素油、エーテル油、及び高級アルコールが好ましい。
【0025】
前記エステル油としては、直鎖又は分岐鎖の脂肪酸と、直鎖又は分岐鎖のアルコール又は多価アルコールとからなるエステル、トリグリセリン脂肪酸エステル(トリグリセライド)が挙げられる。具体的には、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2−エチルヘキサン酸グリセリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2−エチルヘキサノエート、2−エチルヘキシルパルミテート、ナフタレンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリラウリン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリベヘン酸グリセリル、トリヤシ油脂肪酸グリセリル、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2−ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2−エチルヘキシル、クエン酸トリエチル、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0026】
これらの中では、形成された薄膜の密着性の観点から、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、セテアリルイソノナノエート、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジ2−エチルヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種が好ましく、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリンから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、安息香酸(炭素数12〜15)アルキル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、ミリスチン酸イソプロピルから選ばれる1種又は2種以上を含むことが更に好ましい。
中でもジカプリン酸ネオペンチルグリコールを用いることが好ましい。
なお、本発明における油剤は、HLB値が10以下のものであり、好ましくは8以下のものである。HLB値は、親水性−親油性のバランス(Hydrophile ipophile Balance)を示す指標であり、本発明においては、小田及び寺村らによる次式により算出した値を用いている。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性値)×10
【0027】
前記炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、n−オクタン、n−ヘプタン、シクロヘキサン、軽質イソパラフィン、及び流動イソパラフィン等の20℃で液状の炭化水素油、ワセリン、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、オゾケライト、水添ポリイソブテン、ポリエチレンワックス、及びポリオレフィンワックス等の20℃で固体あるいは半固体の炭化水素油が挙げられ、形成された薄膜の密着性の観点から流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、及びワセリンから選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0028】
前記エーテル油としては、セチルジメチルブチルエーテル等のアルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、エチレングリコールジオクチルエーテル、グリセロールモノオレイルエーテル、ジカプリリルエーテル等が挙げられ、これらから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0029】
高級アルコールとしては、炭素数12〜20の高級アルコールが挙げられ、具体的にはセチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられ、これらから選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
また、上記エステル油、炭化水素油を含む動植物油を用いることができる。動植物油としては、例えばオリーブ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマシ油、紅花油、ヒマワリ油、アボカド油、キャノーラ油、キョウニン油、米胚芽油、米糠油などが挙げられる。
【0031】
形成された薄膜中において繊維がネットワークを形成し、薄膜の均一性、密着性を良好にするため、(平均繊維径)
2/繊維含有量(μm
2/質量%)が0.005以上7以下の範囲であることが好ましい。
この値は、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上である。
また、好ましくは6以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下である。
この値、即ち(平均繊維径)
2/繊維含有量(μm
2/質量%)は、組成物に含まれる繊維の累積長さの指標であり、この数値が大きくなるほど累積長さが短くなることを意味する。
【0032】
本発明の短繊維を用いる薄膜は、優れた密着性を有することから、薄膜形成用短繊維として有用である。この薄膜としては、特に皮膚表面上に形成されるのが好ましい。ここで、薄膜の厚さは、塗布量にもよるが通常の使用の範囲(塗布坪量1〜3mg/cm
2)において、好ましくは0.3μm以上30μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上20μm以下である。
厚さは、基板に塗布した後に、基板上の接触式の膜厚計(株式会社ミツトヨ製ライトマチック VL−50Aで測定することができる。なお、ここで基板はPET製を用いる。
【実施例】
【0033】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0034】
〔短繊維の製造例〕
短繊維の製造例として実施例1を示す。
(1)表1のアクリル樹脂、具体的には(オクチルアクリルアミド/アクリル酸ヒドロキシプロピル/メタクリル酸ブチルアミノエチル)コポリマーをエタノールに溶解して、18質量%の溶液を得た。この溶液を用い、
図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、コレクタの表面にナノファイバーシートを形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm・水溶液吐出量:12mL/hour・環境:25℃、30%RH
(2)得られたナノファイバーシートを攪拌システム(プライミクス株式会社製、ラボリューション(登録商標))にディスパー翼を取り付け、回転数5000rpm、25分間剪断し、繊維を得た。
実施例2、3、5〜8は表1にある、ポリマー濃度、回転数、剪断時間以外は実施例1と同様にして繊維を製造した。
また短繊維の製造例として実施例4を示す。
(1)表1のエステル樹脂(PLA)をクロロホルムとジメチルホルムアミド(80:20重量比)に溶解して、20%の溶液を得た。この溶液を用い、
図1に示すエレクトロスピニング法の装置によって、コレクタの表面にナノファイバーシートを形成した。ナノファイバーの製造条件は次のとおりである。
・印加電圧:30kV・キャピラリ−コレクタ間距離:150mm・水溶液吐出量:12mL/H・環境:25℃、30%RH
(2)得られたナノファイバーシートを、分散装置(太平洋機工株式会社製、マイルダー)を用いて、13500rpmで循環ラインに循環数8回で剪断し、繊維を得た。
実施例9、10は表1にある、ポリマー濃度、循環数以外は実施例4と同様にして繊維を製造した。
【0035】
〔組成物の製造例〕
得られた短繊維を表2の処方で配合し、薄膜形成組成物とした。
得られた繊維の特性、処方を表1及び表2に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
*3:レオドール TW-S120V(花王株式会社)
*4:SIMULGEL EG(SEPPIC)
*5:エステモールN-01(日清オイリオグループ株式会社)
*6:レオドール TW-S320V(花王株式会社)
*7:PEMULEN TR-1(Lubrizol Advanced Materials)
【0039】
実施例1〜7
表2の薄膜形成組成物を製造し、当該組成物を人工皮革に均一に塗布して薄膜を形成させた。形成された薄膜の特性を評価した。
(評価方法)
(1)密着性
処方A、B及びCの薄膜形成組成物を、2種類の基材;人工皮革及びPETフィルムに2mg/cm
2、指で塗布し、薄膜を形成した人工皮革及びPETフィルムの屈曲試験により密着性を評価した。薄膜を内側にし、180度の屈曲を10回繰り返し、薄膜と基材の付着状態から、以下の基準で判断した。
4:変化なし。
3:7回目で薄膜の剥がれや縒れを確認。
2:3回目で薄膜の剥がれや縒れを確認。
1:1回目で薄膜の剥がれや縒れを確認。
【0040】
(2)ネットワークの形成
SEMにより、ネットワーク形成の有無を評価した。
ネットワーク形成の評価は、繊維が他の繊維と2か所以上の交点を有し、繊維に囲まれた間隙の存在を全体に確認できる場合をネットワークが形成されているとし、表中に「〇」と記載した。ネットワーク形成有りのSEM参考画像を
図2に、ネットワーク無しのSEM参考画像を
図3に示す。