特許第6894772号(P6894772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894772
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】真空チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   H01L21/68 P
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-116826(P2017-116826)
(22)【出願日】2017年6月14日
(65)【公開番号】特開2019-4017(P2019-4017A)
(43)【公開日】2019年1月10日
【審査請求日】2020年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手島 貴志
(72)【発明者】
【氏名】菊地 真哉
【審査官】 中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2017/0053822(US,A1)
【文献】 特開2000−164647(JP,A)
【文献】 特開2016−111343(JP,A)
【文献】 国際公開第2017/086333(WO,A1)
【文献】 特開2010−197415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連通経路が形成されている基体と、前記基体の上面に開口する前記連通経路の開口部と、を備え、前記連通経路を通じて前記基体の上面と前記基体の上面側に配置される基板との間に負圧領域が形成されることにより前記基体の上面側に前記基板を吸着保持する真空チャックであって、
前記基体の上面における前記連通経路の開口部を囲う位置に環状に窪んだ環状凹部が形成され、環状の弾性素材からなるシール部材の少なくとも下部が前記環状凹部に配置される一方、前記シール部材の上部が前記基体の上面から突出しており、
前記シール部材の上部は、前記環状の内側方向に向いながら上方に向って延在する第1の部分と、前記環状の外側方向に向いながら上方に延在する第2の部分とを有し、
前記第1の部分と前記第2の部分とのうち少なくとも一方の部分に、貫通穴または切り欠きが形成されていることを特徴とする真空チャック。
【請求項2】
前記第1の部分と前記第2の部分とのうち上方に位置する部分は下方に位置する部分よりも厚みが薄い部分を有することを特徴とする請求項1に記載の真空チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ等の基板を基体の表面に吸着保持する真空チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ウエハ等の基板を、基体に取り付けたシール部材によって支持しながら、基体に形成されている連通経路を通じて形成される負圧によって吸着することにより、基体の表面に基板を保持する真空チャックが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1には、基体の外縁に、弾性材料(たとえばゴム)からなり、下から上にかけて徐々に外側に広がるように形成されているスカート状のシール部材が設けられた真空チャックが記載されている。特許文献2には、板状部材にシール部材が固定され、複数の当該板状部材が基体に対して取り外し可能に固定される構成の真空チャックが記載されている。
【0004】
これら特許文献1,2に記載の真空チャックによれば、ウエハに反り、うねりまたは段差が存在する場合でも、シール部材の上端部をその全周にわたって当該ウエハに当接させ、ウエハと吸着面との間隙に密閉領域が形成される。このため、ウエハの反り等によって基体との間に本来的に生じる間隙の影響を解消して、当該密閉領域を負圧として当該ウエハが確実に吸着保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−308856号公報
【特許文献2】特開2010−153419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、基板の厚さが薄くなってきており、基板に大きな反り、うねり、段差が存在する場合がある。このような基板を吸着するためには、シール部材が弾性変形して大きく倒れ込むように構成する必要がある。上記特許文献1,2に記載のシール部材をこのように構成した場合、シール部材が倒れ込む際、ウエハと接する上端部が大きく径方向外側に広がる。そのため、吸着過程において基板とシール部材との接点が大きく移動するので、安定的に支持しながら基板を吸着することができず、基板の平坦度を良好に確保することができないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、大きな反りなどが存在するウエハ等の基板を吸着保持する場合であっても、基板の平坦度を良好に確保することを図りうる真空チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連通経路が形成されている基体と、前記基体の上面に開口する前記連通経路の開口部と、を備え、前記連通経路を通じて前記基体の上面と前記基体の上面側に配置される基板との間に負圧領域が形成されることにより前記基体の上面側に前記基板を吸着保持する真空チャックに関する。
【0009】
本発明の真空チャックは、前記基体の上面における前記連通経路の開口部を囲う位置に環状に窪んだ環状凹部が形成され、環状の弾性素材からなるシール部材の少なくとも下部が前記環状凹部に配置される一方、前記シール部材の上部が前記基体の上面から突出しており、前記シール部材の上部は、前記環状の内側方向に向いながら上方に向って延在する第1の部分と、前記環状の外側方向に向いながら上方に延在する第2の部分とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明の真空チャックによれば、基板が基体の表面側に載置された際、シール部材の一部が弾性変形して、基板に反りまたはうねりなどがあっても、当該一部を全周またはほぼ全周にわたり基板に対して当接させることができる。
【0011】
なお、基板の反り態様としては、当該基板が鞍形(もしくはポテトチップス型)またはドーム型に変形している態様があげられる。基板の中央部がその周辺部よりも上方にある中凸態様の変形の他、中央部がその周辺部よりも下方にある中凹態様の変形も含まれる。
【0012】
さらに、シール部材の上部要素が延在方向が相違する第1の部分と第2の部分とを有するので、上部要素が一方向に延在する部分のみを有する上記特許文献1,2に記載の真空チャックと比較して、上部要素が倒れて弾性変形する際、基板と接する上部要素の上端面は左程水平方向に移動しないので、基板の平坦度を安定的に確保することが可能になる。
【0013】
本発明の一態様の真空チャックにおいて、前記第1の部分と前記第2の部分とのうち上方に位置する部分は下方に位置する部分よりも厚みが薄い部分を有する。
【0014】
当該構成の真空チャックによれば、真空吸着初期時における真空吸引力が小さい期間において、厚さが薄い部分が先に倒れ込むので、基板の搖動を柔軟に吸収しながら基板を吸引することが可能になる。さらに、その後、真空吸引力が大きくなると、厚さが厚い部分も倒れ込むので、基板を強固に吸引固定することが可能となる。
【0015】
本発明の真空チャック、前記第1の部分と前記第2の部分とのうち少なくとも一方の部分に、貫通穴または切り欠きが形成されていることを特徴とする。
【0016】
当該構成の真空チャックによれば、真空吸着初期時の基板とシール部材とが十分に密着されていない段階において、真空排気によって生じる気体の流れが速くなり過ぎることを抑制して、基板の搖動を柔軟に吸収しながら基板を吸引することが可能になる。さらに、その後、真空吸引力が大きくなり、上部要素が倒れ込むと、貫通穴が閉塞されて貫通穴からの気体の流入が抑制されるので、基板を強固に吸引固定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としての真空チャックの上面図。
図2図1のII−II線断面図。
図3】本発明の一実施形態としての真空チャックの機能に関する説明図。
図4】シール部材の他の実施形態に関する説明図。
図5】シール部材の他の実施形態例に関する説明図。
図6】シール部材の他の実施形態例に関する説明図。
図7】シール部材の比較例に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(構成)
図1および図2に示されている本発明の一実施形態としての真空チャックは、略円板状のセラミックス焼結体からなる基体1を備えている。基体1は、炭化珪素、窒化アルミニウム、アルミナまたは窒化ケイ素などのセラミックス粉末を主原料とする原料粉末の成形体が焼成され、必要な加工が施されることにより作製される。
【0019】
基体1の表面(上面)側にウエハW(基板)が配置される。基体1には、表面に開口する連通経路102(貫通穴)の他、ウエハWを昇降させるためのリフトピン(図示略)が挿通されるリフトピン用貫通穴104が形成されている。
【0020】
基体1の表面に連通経路102の開口部102aを囲う環状に窪んでいる環状凹部10(たとえば深さ1〜10[mm]、幅1〜10[mm])が形成されている。環状凹部10に環状のシール部材2が配置されている。
【0021】
さらに、基体1の表面には、環状凹部10を囲う環状に突出している環状凸部12(たとえば高さ10〜500[μm])が形成されている。環状凸部12の上端部が基体1における「ウエハWとの当接箇所」を構成する。そのほか、基体1の表面には、当該表面から突出する略円柱状、略半球状または略円錐台状の複数のピン(図示略(たとえば高さ10〜500[μm]))が、三角格子状、正方格子状または同心円状など、規則的に配置されて形成されていてもよい。複数のピンの上端部が基体1における「ウエハWとの当接箇所」を構成し、かつ、吸着平面を定義する。吸着平面は、環状凸部12の上端面および各ピンの上端面により構成される離散的な面の集合である。
【0022】
シール部材2は、ウレタン、シリコーン樹脂、ニトリルゴム、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、HNBR(水素化ニトリルゴム)、ブタジエンゴムまたはフッ素ゴムなどの弾性素材により構成されている。
【0023】
シール部材2は、環状凹部10に配置され、少なくとも下部を構成する環状の下部要素21と、少なくとも一部が環状凹部10から基体1の表面におけるウエハWとの当接箇所より上方に突出する環状の上部要素22と、を備えている(図2参照)。このようにして、シール部材2は、上部要素22と下部要素21の2つの要素を備えており、上部要素22が上方に位置する要素であり、下部要素21が下方に位置する要素である。
【0024】
上部要素22が下部要素21との間に存在する間隙を狭めるように基体1の表面におけるウエハWとの当接箇所(吸着平面)と同じ高さまで弾性的に傾倒可能に構成されている(図3参照)。
【0025】
上部要素22は、環状の内側方向に向いながら上方に向って延在する第1の部分22aと、環状の外側方向に向いながら上方に延在する第2の部分22bとを有し、シール部材2の上部を構成している。
【0026】
ここでは、第1の部分22aは、下部要素21の環状の外側上面から内側方向(中心方向)に向って斜め上方に直線状に延在している。第2の部分22bは、第1の部分22aの環状の上面から外側方向に向って斜め上方に直線状に延在している。これにより、上部要素22は、その側部断面がくの字状(傾いたL字状)になっている。
【0027】
そして、第1の部分22aと第2の部分22bとの接続部分は、下部要素21の外周端部よりも内側上方に位置している。第2の部分22bの上端部は、下部要素21の上端面の上方に位置している。
【0028】
上部要素22が、荷重がある状態から当該荷重から解放された状態に遷移した際に、元の姿勢に戻るような弾性がシール部材2に必要とされる。この点が勘案されて、シール部材2を構成する素材の弾性率および上部要素22の撓み箇所または基端の厚みが設計される。ここでは、第1の部分22aと第2の部分22bとの厚みは同じであるが、これらの厚みは相違していてもよい。
【0029】
(機能)
前記構成の真空チャックによれば、ウエハWが基体1の表面側に載置された際、シール部材2の一部である上部要素22を、ウエハWに反り、うねり、段差などがあっても全周または略全周にわたりウエハWに対して当接させることができる。そして、連通経路102を通じてウエハWと、基体1と、シール部材2とにより囲まれている空間(内側空間)が真空吸引される。
【0030】
これにより、当該内側空間に負圧領域が形成され、シール部材2が、その上部要素22が弾性的にくの字がつぶれるように弾性変形して基体1の吸着平面と同じ高さとなる(図3参照)。その結果、ウエハWを全体的に基体1の吸着平面に当接させることができ、さらには当該ウエハWにおいて平坦度が担保される領域の拡張が図られる。
【0031】
さらに、上部要素22が下部要素21の上面から上方に向って一方向に延在する部分を有するものの場合、この部分が倒れて弾性変形する際、ウエハWと接する前記部分の上端面が大きく移動するので、ウエハWを良好に支持できないことがある。特に、ウエハWの厚さが薄く、反り、うねり、段差が大きい場合には、前記部分の倒れ込み量を十分に確保する必要があり、ウエハWを高い平面度で支持することが困難である。
【0032】
一方、上部要素22が第1の部分22aと第2の部分22bとを有する場合、これらの部分22a,22bが倒れて弾性変形する際、ウエハWと接する第2の部分22bの上端面は左程水平方向に移動しないので、ウエハWの平坦度を良好に確保することが可能になる。ウエハWの厚さが薄く、反りなどが大きい場合であっても、上部要素22の倒れ込み量を十分に確保することができ、ウエハWを高い平面度で支持することが困難である。
【0033】
(本発明の他の実施形態)
シール部材2および環状凹部10のそれぞれの形状がさまざまに変更されてもよい。
【0034】
たとえば、図4に示されているシール部材2Aのように、上部要素22Aは、第1の部分22Aaと第2の部分22Abとを有し、第2の部分22Abが、下部要素21Aの環状の内側上面から外側方向に向って斜め上方に直線状に延在し、第1の部分22Aaが、第2の部分22Abの環状の上面から内側方向に向って斜め上方に直線状に延在していてもよい。
【0035】
この場合、第1の部分22Aaと第2の部分22Abとの接続部分は、下部要素21の内周端部よりも外側上方に位置している。第1の部分22Aaの上端部は、下部要素21の上端面の上方に位置している。
【0036】
上部要素22Aが、荷重がある状態から当該荷重から解放された状態に遷移した際に、元の姿勢に戻るような弾性がシール部材2Aに必要とされる。この点が勘案されて、シール部材2Aを構成する素材の弾性率および上部要素22Aの撓み箇所または基端の厚みが設計される。ここでは、第1の部分22Aaと第2の部分22Abとの厚みは同じであるが、これらの厚みは相違していてもよい。
【0037】
このように構成された真空チャックは、上記図3に示した真空チャックと同様の効果を奏する。
【0038】
また、たとえば、図5に示されているシール部材2Bのように、上部要素22Bは、第1の部分22Baと第2の部分22Bbとを有し、第2の部分22Bbが、下部要素21Bの環状の内側上面から外側方向に向って斜め上方に直線状に延在し、第1の部分22Baが、第2の部分22Bbの環状の上面から内側方向に向って斜め上方に直線状に延在していてもよい。
【0039】
この場合、第1の部分22Baと第2の部分22Bbとの接続部分は、下部要素21Bの上端面の上方に位置している。第1の部分22Baの上端部は、下部要素21Bの外周端部よりも内側上方に位置している。
【0040】
そして、第1の部分22Baの厚みは第2の部分22Bbの厚みよりも薄くなっている。
【0041】
このように構成された真空チャックは、上記図3に示した真空チャックと同様の効果を奏する。さらに、このように構成された真空チャックにおいては、真空吸着初期時における真空吸引力が小さい期間において、厚さが薄い第1の部分22Baのみが倒れ込むので、ウエハWの搖動を柔軟に吸収しながらウエハWを吸引することが可能になる。さらに、その後、真空吸引力が大きくなると、厚さが厚い第2の部分22Bbも倒れ込むので、ウエハWを強固に吸引固定することが可能となる。
【0042】
さらに、たとえば、図6に示されているシール部材2Cのように、図5に示された第1の部分22Baに相当する第1の部分22Caに貫通穴23が形成されていてもよい。なお、貫通穴の代わりに、第1の部分22CaのうちウエハWとの当接箇所となる先端面に切り欠きが形成されていてもよい。貫通穴23または切り欠きは、複数、周上に分散して形成されていることが好ましい。貫通穴23または切り欠きの形状は、たとえば、円状、楕円状、三角形状、矩形状などであるが、これらに限定されない。
【0043】
このように構成された真空チャックは、上記図5に示した真空チャックと同様の効果を奏する。さらに、このように構成された真空チャックにおいては、真空吸着初期時のウエハWとシール部材2Cとが十分に密着されていない段階において、真空排気によって生じる気体の流れが速くなり過ぎすることを抑制して、ウエハWの搖動を柔軟に吸収しながらウエハWを吸引することが可能になる。さらに、その後、真空吸引力が大きくなり、上部要素22Cが倒れ込むと、貫通穴からの気体の流入が抑制されるので、ウエハWを強固に吸引固定することが可能となる。
【0044】
なお、本発明の真空チャックは、上述した実施形態のものに限定されず、たとえば、環状凸部12を省略したものであってもおい。
【0045】
たとえば、上記の実施形態では、上部要素22Aが第1の部分22Aaと第2の部分22Abとの2つの部分からなるものについて説明した。しかし、上部要素は、環状の内側方向に向いながら上方に向って延在する第1の部分と、環状の外側方向に向いながら上方に延在する第2の部分とを有していればよく、たとえば、上方に向って鉛直に延在する部分、または、さらに別の環状の内側または外側方向に向いながら上方に向って延在する部分を1または複数備えるものであってもよい。
【0046】
また、第1の部分22Aaと第2の部分22Abは直線状に延在していなくてもよく、曲線状または直線と曲線を組み合わせた形状で延在していてもよく、第1の部分22Aaと第2の部分22Abの延在方向に沿った長さは、第2の部分22Abよりも第1の部分22Aaの方が長くてもよく、第1の部分22Aaと第2の部分22Abとが同じであってもよい。
【0047】
さらに、第1の部分22Aaと第2の部分22Abのうちウエハとの当接箇所を構成する部分に、その内周面と外周面の少なくとも一方に周方向に延在する溝を形成してもよい。溝部の深さ、幅、密度を変更することによってもシール部材2の倒れ込み易さを調節することができる。
【実施例】
【0048】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)からなり、外径300mm、厚さ7mmの基体1を用意した。そして、この基体1に、幅5mm、深さ3.5mmの環状凹部10、直径2mmの連通経路102を形成した。
【0049】
フッ素ゴムからなり、図2に示すシール部材2を用意した。シール部材2は、下部要素21は内径274mm、外径284mm、厚さ2.5mmであり、上部要素22の厚さは0.5mmであった。上部要素22の第1の部分22aは、下部要素21の上端面から内側に30度の角度で傾斜し、高さが12mmであった。上部要素22の第2の部分22bは、第1の部分22aの上端面から外側に30度の角度で傾斜し、高さが6mmであった。
【0050】
そして、シール部材2の下部要素21を基体1の環状凹部10に挿入した。
【0051】
ウエハWとして、シリコンウエハからなり、外径300mm、厚さが0.7mmおよび0.3mmのものを用意した。ここで、厚さが0.7mmのウエハWの反りは3mmであり、厚さが0.3mmのウエハWの反りは7mmであった。
【0052】
厚さ0.7mmのウエハWをシール部材2の上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は0.8μmであり、良好であった。また、吸引時にウエハWの搖動は目視で確認されなかった。
【0053】
厚さ0.3mmのウエハWをシール部材2の上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は1.0μmであり、良好であった。ただし、吸引時にウエハWの搖動が目視で確認された。
【0054】
(実施例2)
ウレタンからなり、図4に示すシール部材2Aを用意した。シール部材2Aの下部要素21は、実施例1のシール部材2Aの下部要素21と同じ形状であった。そして、上部要素22Aの厚さは0.5mmであった。上部要素22Aの第2の部分22Abは、下部要素21の上端面から外側に30度の角度で傾斜し、高さが12mmであった。上部要素22Aの第1の部分22Aaは、第2の部分22Abの上端面から内側に30度の角度で傾斜し、高さが6mmであった。
【0055】
厚さ0.7mmのウエハWをシール部材2Aの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は0.8μmであり、良好であった。また、吸引時にウエハWの搖動は目視で確認されなかった。
【0056】
厚さ0.3mmのウエハWをシール部材2Aの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は1.0μmであり、良好であった。ただし、吸引時にウエハWの搖動が目視で確認された。
【0057】
(実施例3)
ウレタンからなり、図5に示すシール部材2Bを用意した。シール部材2Bの下部要素21は、実施例1のシール部材2Aの下部要素21と同じ形状であった。そして、上部要素22Bの第2の部分22Bbは、下部要素21の上端面から外側に30度の角度で傾斜し、高さが6mm、厚さが0.8mmであった。上部要素22Bの第1の部分22Baは、第2の部分22Bbの上端面から内側に30度の角度で傾斜し、高さが12mm、厚さが0.5mmであった。
【0058】
厚さ0.7mmのウエハWをシール部材2Bの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は0.7μmであり、良好であった。また、吸引時にウエハWの搖動は目視で確認されなかった。
【0059】
厚さ0.3mmのウエハWをシール部材2Bの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は0.9μmであり、良好であった。ただし、吸引時にウエハWの搖動が目視で確認された。
【0060】
(実施例4)
図6に示すシール部材2Cを用意した。シール部材2Cは、実施例3のシール部材2Bに対して穴径2mmの貫通穴23を周方向に沿って等間隔で60個形成したものであった。
【0061】
厚さ0.7mmのウエハWをシール部材2Cの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は0.8μmであり、良好であった。また、吸引時にウエハWの搖動は目視で確認されなかった。
【0062】
厚さ0.3mmのウエハWをシール部材2Cの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は1.0μmであり、良好であった。また、吸引時にウエハWの搖動は目視で確認されなかった。
【0063】
(比較例)
ウレタンからなり、図7に示すシール部材2Dを用意した。シール部材2Dの下部要素21Dは、実施例1のシール部材2Aの下部要素21と同じ形状であった。そして、上部要素22Dの厚さは0.5mmであった。上部要素22Dは、下部要素21の上端面から外側に60度の角度で傾斜し、高さが12mmであった。
【0064】
厚さ0.7mmのウエハWをシール部材2Dの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は1.0μmであり、良好であった。ただし、吸引時にウエハWの搖動が目視で確認された。
【0065】
厚さ0.3mmのウエハWをシール部材2Dの上端に載置して吸引した。吸着保持されたウエハWの平坦度は2.0μmであり、良好ではなかった。また、吸引時にウエハWの搖動および吸着保持されたウエハWの位置ずれが目視で確認された。
【符号の説明】
【0066】
1…基体、 2,2A,2B,2C…シール部材、 10…環状凹部、 12…環状凸部、 22a,22Aa,22Ba…第1の部分、 22b,22Ab,22Bb…第2の部分、 21…下部要素、 22…上部要素、 23…貫通穴、 102…連通経路、 102a…開口部、 104…リフトピン用貫通穴、 W…ウエハ(基板)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7