(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1において、前記当接保持構造は、前記突出部と前記ロック部材との間の当接荷重の作用方向に直交する方向における前記突出部と前記ロック部材との相対的な変位を規制する規制面を備えているシフトレバーユニット。
請求項1又は2において、前記当接保持構造は、前記突出部と前記ロック部材との間の当接荷重の作用方向に直交する方向における前記突出部と前記ロック部材との相対的な位置ズレが生じたとき、当該位置ズレを抑制するように該突出部又は該ロック部材を付勢する付勢力を前記当接荷重に由来して生じさせるように構成されているシフトレバーユニット。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態につき、以下の実施例を用いて具体的に説明する。
(実施例1)
本例は、シフトロック機能を備える車両用のシフトレバーユニット1に関する例である。この内容について、
図1〜
図14を用いて説明する。
図1〜
図3に例示するシフトレバーユニット1は、操作部をなすシフトノブ11が先端に取り付けられた棒状のシフトレバー10を操作するユニットである。
図1は、ベースブラケット3の図示を省略したシフトレバー10の図であり、
図2及び
図3は、シフトレバーユニット1の両側の側面を示す図である。なお、
図1(a)、
図2及び
図3では、シフトノブ11の図示を省略している。
【0013】
シフトレバーユニット1は、シフト位置を切り換えるためのシフト操作を受け付けるシフトノブ(操作部)11が先端に取り付けられたシフトレバー10と、このシフトレバー10の側面に設けられた貫通溝155を介して径方向外周側に突出する突出部180を備えるグルーブドピン(規制部材)18と、を備えている。このシフトレバーユニット1では、シフトレバー10の回動に伴う突出部180の回動変位を規制することでシフト操作が規制される。グルーブドピン18は、シフトレバー10の軸方向に沿って変位可能なようにシフトレバー10に保持されており、この軸方向の変位によってシフト操作が許容される解除位置に位置できる。
【0014】
シフトレバー10は、車両に搭載された使用状態においてシフトレバー10の軸方向にグルーブドピン18が変位する可動範囲の全域に亘って、シフトレバー10の径方向におけるグルーブドピン18の位置を規制する第1の構造が設けられている。そして、シフトレバー10の軸方向におけるこの可動範囲の外側の位置に、シフトレバー10の径方向外周側からグルーブドピン18を組み付けるための第2の構造が設けられている。
【0015】
さらに、シフトレバーユニット1は、グルーブドピン18の両端の突出部180のうちの片側の突出部180Aに干渉し、これによりシフトレバー10の軸方向に沿うグルーブドピン18の変位を規制してシフト操作を出来なくするシフトロックリンク(ロック部材。以下S/Lリンク)21を備えている。このシフトレバーユニット1では、グルーブドピン18及び及びS/Lリンク21の少なくともいずれか一方に、突出部180AがS/Lリンク21に当接する状態(シフトロック状態という。)を保持する当接保持構造を設けてある。
【0016】
以下、このシフトレバーユニット1の内容を詳しく説明する。なお、以下の説明では、シフトレバー10の軸方向を単に軸方向といい、シフトレバー10の径方向を単に径方向という。ディテントロッド12などのシフトレバー10の構成部品の説明では、組み付け状態においてシフトレバー10の軸方向あるいは径方向に沿うことになる方向を単に軸方向あるいは径方向という。但し、例えばベースブラケット3が備える「ブラケット側軸孔300を中心とした径方向」といった説明における「径方向」については、上記のシフトレバー10の径方向とは異なっている。
【0017】
図1〜
図3に例示のシフトレバーユニット1は、図示しない車両の前後方向に当たるシフト方向にシフトレバー10を操作可能なストレート式の操作ユニットである。このシフトレバーユニット1は、運転者がシフトレバー10を操作しやすいよう、運転席と助手席との間のセンターコンソールや、運転者に対面するダッシュパネル等に設置される。シフトレバー10の先端には、運転者の持ち手をなすシフトノブ11が取り付けられている。
【0018】
図示は省略するが、このシフトレバーユニット1によれば、車両の進行方向前側からシフト方向に沿って配列されたパーキングレンジ(Pレンジ)、リバースレンジ(Rレンジ)、ニュートラルレンジ(Nレンジ)、ドライブレンジ(Dレンジ)、セカンドレンジおよびローレンジのうちの何れかをシフト位置として選択できる。
【0019】
シフトレバーユニット1は、
図2及び
図3のごとく、シフトレバー10を回動可能に軸支するベースブラケット3を備えている。シフトレバーユニット1は、図示しないシフトパネルを介してシフトレバー10が車室側に突き出すよう、ベースブラケット3を利用して車両側に取り付けられる。車両側の図示しないシフトパネルには、シフトロック機能を強制解除するための図示しない鍵穴が設けられる。
【0020】
シフトレバー10の回動動作のガイド面をなすベースブラケット3の両側の側壁30には、シフト軸100を固定するためのブラケット側軸孔300が穿設されていると共に、シフトレバー10の外周側に突き出すグルーブドピン18の突出部180を貫通させるディテント窓32及び経路溝321が穿設されている(
図4参照。)。さらに、
図2で示される側の側壁30には、シフト操作が可能になる解除位置への突出部180Aの変位を規制するS/Lリンク21、及びこのS/Lリンク21を回動駆動する電磁ソレノイド24が取り付けられている。なお、各側壁30のディテント窓32及び経路溝321は形状仕様が共通している。
【0021】
ディテント窓32は、S/Lリンク21が回動駆動された状態を示す
図4において全体形状を確認できる。ディテント窓32は、ブラケット側軸孔300回りの周方向に延在する貫通窓であり、Pレンジから他のレンジへのシフト操作が行われる際、突出部180が回動変位する空間である。経路溝321は、ブラケット側軸孔300を中心として径方向に延在する貫通溝であり、Pレンジに対応して形成されている。Pレンジのとき、突出部180が経路溝321に貫通配置された状態となる。
【0022】
経路溝321は、
図4のごとく、ブラケット側軸孔300側の端部においてディテント窓32に連通している。Pレンジから他のレンジへのシフト操作が規制される突出部180の規制位置、及びこのシフト操作が許容される突出部180の解除位置は、この経路溝321において溝方向に離間する2箇所に位置している。
【0023】
突出部180の解除位置は、経路溝321のうちのディテント窓32に連通する箇所、すなわちブラケット側軸孔300に近い端部側に位置している。突出部180の規制位置は、ブラケット側軸孔300側とは反対側の経路溝321の端部側に位置している(
図2〜
図4中の突出部180の位置)。解除位置に突出部180が位置する場合、ディテント窓32に進入する突出部180の回動変位が可能となり、シフト操作が許容される。一方、規制位置に突出部180が位置する場合には、ブラケット側軸孔300を中心として径方向に延在する経路溝321の内側壁により突出部180の回動変位が規制され、これによりシフト操作が規制される。車両に搭載されたシフトレバーユニット1の使用状態において、突出部180がこの規制位置から解除位置に至る範囲がグルーブドピン18の可動範囲(
図11参照。)となっている。
【0024】
S/Lリンク21は、
図2、
図4及び
図5のごとく、グルーブドピン18等との組み合わせによりシフトロック機構を構成する部品である。S/Lリンク21は、ベースブラケット3の側壁30に立設された支持軸35(
図6参照。)により側壁30に沿って回動可能に軸支されている。
【0025】
S/Lリンク21は、ブレーキペダル(図示略)の踏み込み操作に応じて通電状態に切り替わる電磁ソレノイド24により回動駆動されると共に、図示しないコイルスプリングにより逆向きに付勢されている。以下の説明では、電磁ソレノイド24によってS/Lリンク21が回動駆動される側を駆動側といい、コイルスプリングによりS/Lリンク21が付勢される側を復帰側という。
【0026】
S/Lリンク21は、
図5及び
図6のごとく、ベースブラケット3の側壁30に立設された支持軸35を回動可能に収容するための有底円筒状の軸収容部21Cを有している。軸収容部21Cの両側には、第1腕部21Aと第2腕部21Bとが延設されている(
図7(a)参照。)。第1腕部21Aでは、ドーナツ状のストッパゴム(図示略)を取り付けるための軸210が先端に立設されている。第2腕部21Bでは、グルーブドピン18(突出部180A)が当接する荷重受け面211が先端面に設けられている。
【0027】
第1腕部21Aに取り付けられるストッパゴムは、上記のコイルスプリングの付勢力によるS/Lリンク21の回動変位に応じてベースブラケット3側に押し当たり、S/Lリンク21を初期回動位置に規制する。弾性部材であるストッパゴムによれば、電磁ソレノイド24への通電終了に応じてS/Lリンク21が初期回動位置に復帰する際に発生するおそれがある打音を低減できる。
【0028】
ここで、S/Lリンク21の初期回動位置は、上記のベースブラケット3に設けられた経路溝321に沿う位置である(
図2に示す位置。)。電磁ソレノイド24等により回動駆動されたS/Lリンク21は、経路溝321から外れる回動位置に変位し(
図4に示す位置。)、これにより、経路溝321に沿うグルーブドピン18(突出部180)の変位が可能となり、シフトロック機能が解除されてシフトアンロック状態となる。
【0029】
第2腕部21Bの先端には、
図5〜
図7のごとく、前記荷重受け面211のほか、上記のシフトロック機能の強制解除のための受け部212が設けられている。第2腕部21Bの中間的な位置には、電磁ソレノイド24に駆動される連結部材242が係止される駆動ピン213が立設されている。また、ベースブラケット3の側壁30に面する第2腕部21Bの側面には、断面矩形状のサポート部214が立設されている。
【0030】
荷重受け面211は、シフトロック状態においてグルーブドピン18の突出部180が押し当たる面である(
図13(b)参照。)。この荷重受け面211は、駆動側及び復帰側の両端が先端側に張り出しており、端に近づくほどこの張り出し量が大きくなっている。これにより、荷重受け面211全体では、S/Lリンク21の回動方向において、中低の中間部分を挟んで両側に傾斜面が配置された”すり鉢状”の面を形成している(
図5、
図7(a)参照。)。
【0031】
受け部212は、シフトロック機能を強制解除するための操作に連動する図示しないリンク部材の係合部である。このリンク部材を介して強制解除の操作が受け部212に伝達され、S/Lリンク21が
図4に示す回動位置に駆動される。
【0032】
受け部212は、荷重受け面211に対して上記の駆動側にオフセットして設けられている(
図5参照。)。受け部212の付け根は、荷重受け面211と面一をなすように形成されており、これにより、荷重受け面211を含む第2腕部21Bの先端面は略L字状の正面形状をなしている。この略L字状の正面形状の内側には、窪み215が形成されている。駆動側に位置する受け部212に対して、この窪み215は復帰側に位置している。
【0033】
駆動ピン213の立設方向において窪み215に面する第2腕部21Bの側面216Aは、
図8の断面図(
図7中のB−B断面)のごとく、上記の復帰側の端が張り出すように形成されている。窪み215の内部空間に対するこの張り出し量は端に近づくにつれて拡大しており、側面216Aの復帰側の端に傾斜面が形成されている。なお、同断面図のごとく、側面216Aの駆動側の端には、受け部212の付け根の側面216Bが直交して隣接している。
【0034】
第2腕部21Bに設けられた上記のサポート部214は、荷重受け面211に突出部180Aが当接する
図6のシフトロック状態において、ベースブラケット3側に設けられた棚面30Sとグルーブドピン18により挟持される状態となる。グルーブドピン18がS/Lリンク21に作用する荷重の一部は、サポート部214を介してベースブラケット3側に伝達され、これによりS/Lリンク21の先端の荷重受け面211に作用する当接荷重が低減される。
【0035】
シフトレバー10は、
図1及び
図9のごとく、先端にシフトノブ11が取り付けられるレバー本体15を中心として構成されている。
シフトノブ11は、車両の前後方向前側に当たる側面に、シフトノブ11を把持する手の人差し指などで操作されるシフトボタン110を有している。シフトボタン110を取り外したシフトノブ11の内部には、孔112が穿設された隔壁113が設けられている(
図10参照。)。組立状態のシフトレバー10では、後述するディテントロッド12の端部がこの孔112に貫通配置されてシフトボタン110に干渉する状態となる。
【0036】
レバー本体15は、
図9及び
図11のごとく、断面の外形状が略四角形を呈する角筒状の樹脂成形品である。レバー本体15は、先端側にシフトノブ11のノブ取付部153を有している。反対側の基部15Fには、シフト軸100を貫通配置するためのレバー側軸孔150が設けられている。レバー側軸孔150には、ブラケット側軸孔300に固定されたシフト軸100が貫通配置される。シフトレバー10は、ベースブラケット3側に固定されたシフト軸100により回動可能に軸支される(
図2及び
図3参照。)。
【0037】
レバー本体15には、軸方向に沿うように貫通溝155が穿設されている。貫通溝155は、径方向に貫通し、レバー側軸孔150が位置する両側面に開口している。貫通溝155は、後述する差込部156を除き、グルーブドピン18の突出部180を貫通配置できる一方、グルーブドピン18の全体が挿通できない溝幅に設定されている。差込部156を除く貫通溝155は、シフトレバー10の径方向におけるグルーブドピン18の位置を規制する第1の構造の一例をなしている。
【0038】
レバー本体15の両側面に開口する貫通溝155の開口形状は、表側と裏側とで基部15F側の端部の形状が異なっている(
図11中のC−C断面図参照。)。S/Lリンク21が取り付けられる側壁30(ベースブラケット3)側の貫通溝155では、基部15F側の端部に、溝幅が他の部分よりも広い差込部156が設けられている。この差込部156は、グルーブドピン18の全体を挿通可能とするための第2の構造の一例をなしている。差込部156は、径方向外周側からグルーブドピン18を組み付けるために利用される(
図12参照。)。
【0039】
第1の構造の一例をなす貫通溝155は、
図11のごとく、上記の規制位置と解除位置との間でグルーブドピン18(突出部180)が進退する可動範囲を包含するように形成されている。そして、第2の構造の一例をなす差込部156は、軸方向においてこの可動範囲よりも外側に配設されている。したがって、シフトレバーユニット1の使用状態においては、グルーブドピン18が差込部156の位置に到達することがない。
【0040】
また、レバー本体15の両側面では、
図9及び
図11のごとく、貫通溝155とレバー側軸孔150との間隙に当たる位置に、貫通孔157が穿設されている。この貫通孔157は、鉄製の丸ピン131を貫通配置するための孔である。丸ピン131は、貫通孔157に圧入されて固定され、コイルスプリング130の座として機能する。
【0041】
次に、グルーブドピン18は、
図9、
図12及び
図13のごとく、ディテントロッド12に貫通配置される樹脂成形品である。グルーブドピン18は、略短冊板状をなし、中央に位置する胴部18Bの両側に突出部180が延設されている。突出部180は、胴部18Bの上側面と面一をなす一方、下側に切り欠きが設けられて胴部18Bよりも高さ方向の寸法が小さくなっている。また、胴部18Bの表裏の両側面には、外側に畝状に張り出す抜止め突起181が胴部18Bの下端に沿って設けられている。
【0042】
グルーブドピン18の両側の突出部180のうち、S/Lリンク21に干渉する側の突出部180Aの付け根には、高さ方向の寸法が急激に拡大する顎部189が形成されている。この顎部189は、突出部180AがS/Lリンク21の荷重受け面211に当接したとき、上記のごとくベースブラケット3側に荷重を伝達するサポート部214(
図6及び
図13参照。)に対して僅かな隙間を空けて対面するように形成されている。グルーブドピン18からS/Lリンク21に作用する荷重が過大になると、S/Lリンク21の僅かな弾性変位に応じて顎部189がサポート部214に当接し、過大な荷重の一部がベースブラケット3側に伝達される。
【0043】
突出部180Aの先端には、カギ状をなすように下方に折れ曲がるフック部185が設けられている。フック部185は、突出部180Aの先端において、向かって右側にオフセットして配設されている。組立状態のシフトレバーユニット1において、この右側はS/Lリンク21の復帰側に当たる側となっている(
図13参照。)。
【0044】
グルーブドピン18の上側面には、サメの背びれのように上方に張り出す略直角三角形状の支持部183が設けられている。支持部183は、グルーブドピン18がディテントロッド12に貫通配置されたときに、ディテントロッド12の外周面に対面するように形成されている(
図6参照。)。支持部183は、S/Lリンク21からの反力に由来してグルーブドピン18に生じる回転モーメントをディテントロッド12の外周面に作用する。支持部183によれば、グルーブドピン18の先端側が煽られるようなピッチング方向の回転変位を確実性高く規制できる。
【0045】
ディテントロッド12は、
図9及び
図12のごとく、角筒状のレバー本体15に内挿配置される軸状の樹脂成形品である。ディテントロッド12は、シフトノブ11が受け付けた運転者の操作(シフトボタン110の押込み操作)をグルーブドピン18に伝達し、シフトレバー10の軸方向にグルーブドピン18を変位させるように機能する。なお、ディテントロッド12は、剛性を確保しながら重量を低減可能な断面形状に成形されている。
【0046】
レバー本体15に組み付けたときに基部15F側に位置するディテントロッド12の端部には、グルーブドピン18を貫通配置するための収容孔121が穿設されている。その端面には、コイルスプリング130の座125が設けられている。ディテントロッド12の反対側の端部は、シフトノブ10の孔112(
図10参照。)に挿入され、シフトボタン110の図示しない内部構造に干渉する端部である。ディテントロッド12は、シフトボタン110の押込み操作に応じて軸方向に押し出される。
【0047】
収容孔121は、貫通配置されるグルーブドピン18の胴部18Bに対応する断面形状を備えている。収容孔121の断面は略矩形状をなし、その長手方向がディテントロッド12の軸方向に沿っている。座125側の収容孔121の端部には、グルーブドピン18の抜止め突起181を収容できるように拡幅された突起収容部123が形成されている。なお、収容孔121は、グルーブドピン18に対して隙間嵌めに相当する嵌合いの寸法で穿孔されており、指の力程度の軽い力でグルーブドピン18を挿抜可能である。
【0048】
次に、シフトレバー10の組み立て手順について説明する。
図9に示すように、シフトレバー10を組み立てるに当たっては、まず、レバー本体15の貫通孔157に丸ピン131を圧入して固定し、予めコイルスプリング130の座を設けておく必要がある。そして、レバー本体15のノブ取付部153側の開口端から、コイルスプリング130、及びディテントロッド12をこの順番で挿入する。
【0049】
レバー本体15の開口端から突き出すディテントロッド12の端部を押し込めば、コイルスプリング130の圧縮変形を伴ってディテントロッド12を基部15F側に変位できる。このようにして、ディテントロッド12の収容孔121の突起収容部123を、レバー本体15の上記の差込部156に一致させるよう、ディテントロッド12を軸方向に押し込む。この状態であれば、レバー本体15の差込部156を介して抜止め突起181(胴部18B)がレバー本体15の外周側壁を通過でき、レバー本体15に内挿配置されたディテントロッド12の収容孔121に対して、例えば手作業によりグルーブドピン18を貫通配置できる。
【0050】
グルーブドピン18を貫通配置させた後、ディテントロッド12の端部を押し込む力を解放すると、弾性復帰するコイルスプリング130の付勢力によりディテントロッド12が軸方向に押し戻される。このとき、グルーブドピン18の両側に延設された突出部180は、レバー本体15の貫通溝155から径方向外周側に突出する状態を維持しながら軸方向に変位する。貫通溝155は、グルーブドピン18の胴部18Bが挿通できない溝幅に設定されているため、シフトレバー10に保持されたグルーブドピン18は、第1の構造の一例をなす貫通溝155により径方向の位置が規制される。
【0051】
ディテントロッド12を組み付けたレバー本体15に対してシフトノブ11を取り付けると、シフトノブ11の内部に突き出すディテントロッド12の端部がシフトボタン110側に干渉する。ディテントロッド12は、シフトボタン110により軸方向に若干、押し出された状態となる。
【0052】
以上のように組み立てたシフトレバー10をベースブラケット3に組み付け、さらに、S/Lリンク21や電磁ソレノイド24等をベースブラケット3に組み付ければ、シフトレバーユニット1の組み立て作業が完了する。Pレンジが選択されたときのシフトレバーユニット1では、グルーブドピン18の突出部180がベースブラケット3の経路溝321に位置する状態となる(
図2及び
図3参照。)。
【0053】
本例のシフトレバーユニット1では、Pレンジが選択され、シフトボタン110が操作されない場合の突出部180(グルーブドピン18)の軸方向の位置が規制位置となっている(
図2及び
図3に示す状態)。突出部180が規制位置にあるときにPレンジから他のレンジにシフトレバー10を操作しようとしても、ブラケット側軸孔300を中心とした径方向に延在する経路溝321の内側面により突出部180の回動変位が規制され、これによりシフト操作が規制される。
【0054】
シフトボタン110が押込み操作された場合には、ディテントロッド12が軸方向に押し出され、これにより、グルーブドピン18の突出部180が規制位置から解除位置に向かって軸方向に変位する。しかし、図示しないブレーキペダルが踏み込まれていない場合には、電磁ソレノイド24に通電されず、S/Lリンク21は経路溝321を封鎖する初期回動位置のままである(
図2に示す位置。)。それ故、突出部180Aは、S/Lリンク21によって規制され解除位置に到達できない。この場合には、上記のシフトボタン110が操作されない場合と同様、突出部180の回動変位が経路溝321の内側面により規制されシフト操作が規制される。
【0055】
図示しないブレーキペダルが踏み込まれた場合には、電磁ソレノイド24への通電に応じてS/Lリンク21が回動駆動されて経路溝321を開放する回動位置に変位する(
図4に示す位置。)。これにより経路溝321が開放され、解除位置への突出部180の変位が可能になる。経路溝321がディテント窓32に連通する箇所である解除位置に突出部180が変位すれば、この突出部180の回動変位を伴うシフトレバー10の回動操作が可能となり、これによりDレンジ等に切り替えるシフト操作が可能になる。
【0056】
ここで、Pレンジから他のレンジへのシフト操作を規制するシフトロック状態におけるS/Lリンク21に対してグルーブドピン18が当接する構造について詳しく説明する。本例のシフトレバーユニット1では、この当接する構造について、S/Lリンク21に対してグルーブドピン18が当接する状態を確実性高く保持するための以下の当接保持構造が設けられている。
【0057】
(第1の当接保持構造)
グルーブドピン18では、上記のごとく、S/Lリンク21に当接する突出部180Aに略カギ状のフック部185が設けられている。このフック部185は、S/Lリンク21に当接したとき、S/Lリンク21の窪み215に引っ掛かるように機能する(
図13(b)参照。)。グルーブドピン18のフック部185がS/Lリンク21の窪み215に引っ掛かっていれば、当接保持構造をなすフック部185の内側面185Sが規制面として機能し(
図8参照。)、突出部180Aの先端方向にS/Lリンク21が倒れ込む変形等を規制できる。すなわち、規制面として機能するフック部185の内側面185Sによれば、S/Lリンク21とグルーブドピン18との間の当接荷重の作用方向に直交する方向をなす突出部180Aの先端方向に向かうS/Lリンク21の変位を規制できる。そして、S/Lリンク21のこのような変位に起因し、グルーブドピン18の規制が外れてしまう状況を未然に回避できる。
【0058】
(第2の当接保持構造)
S/Lリンク21では、上記の通り、荷重受け面211を含む第2腕部21Bの先端面が略L字状の正面形状をなすように形成され、この略L字状の内側に窪み215が形成されている(
図13(a)参照。)。この窪み215は、S/Lリンク21の回動方向の両方向に当たる駆動側及び復帰側のうちの復帰側に位置している。一方、S/Lリンク21の先端面に当接する側のグルーブドピン18では、突出部180Aの先端において、フック部185が復帰側にオフセットして設けられている。
【0059】
このように、S/Lリンク21の先端面において窪み215が位置する側、及びグルーブドピン18においてフック部185が設けられた側は、いずれもS/Lリンク21の回動方向における復帰側であり一致している。したがって、S/Lリンク21に対してグルーブドピン18(突出部180)が当接する
図13(b)のシフトロック状態では、S/Lリンク21の窪み215に対してグルーブドピン18のフック部185が食い込んでS/Lリンク21とグルーブドピン18とが噛み合う状態となる。
【0060】
S/Lリンク21とグルーブドピン18とが噛み合う状態では、
図8の断面図に示されるように、S/Lリンク21の窪み215にグルーブドピン18のフック部185(点線で図示。)が配置される。このような配置では、受け部212の付け根の側面216Bがフック部185を支持する規制面として機能する。規制面としての側面216Bは、フック部185の駆動側への相対変位を生じさせるS/Lリンク21の復帰側への回動変位を確実に規制する。したがって、シフトレバーユニット1では、グルーブドピン18の当接荷重が過大となった場合でも、S/Lリンク21とグルーブドピン18との間の当接荷重の作用方向に直交する方向の一つである復帰側(
図13参照。)にS/Lリンク21が過度に変位することがなく、このような変位に起因してグルーブドピン18の規制が外れることがない。
【0061】
(第3の当接保持構造)
S/Lリンク21の荷重受け面211は、上記のごとく、S/Lリンク21の回動方向の両側の端が張り出すと共に中央に近づくほど凹む”すり鉢状”を呈するという当接保持構造をなしている。この”すり鉢状”の荷重受け面211を構成する両側の傾斜面は、グルーブドピン18が作用する当接荷重を元にして、S/Lリンク21を回動方向に付勢する力を発生させる。このように”すり鉢状”の中低の荷重受け面211であれば、荷重受け面211に当接するグルーブドピン18の相対位置が中低の中央付近からずれて位置ズレが生じたとき、グルーブドピン18が中央付近に戻るようにS/Lリンク21を付勢する力を発生できる。
【0062】
グルーブドピン18が荷重受け面211の中央に位置するようにS/Lリンク21を付勢すれば、S/Lリンク21とグルーブドピン18との間の当接荷重の作用方向に直交する方向である駆動側及び復帰側(
図13参照。)において、S/Lリンク21とグルーブドピン18との相対変位を抑制できる。この相対変位を抑制すれば、突出部180が荷重受け面211に当接するシフトロック状態を確実性高く保持できる。
【0063】
(第4の当接保持構造)
図13(b)に示すS/Lリンク21とグルーブドピン18とが噛み合う状態(シフトロック状態)のとき、S/Lリンク21の窪み215にグルーブドピン18のフック部185(
図8の断面図中に点線で図示。)が配置される。フック部185が対面する側面216Aは、上記のごとく受け部212とは反対側に当たる復帰側の端が窪み215に張り出すように形成されている。この側面216Aの復帰側の端の張り出しは、フック部185の復帰側への相対変位を生じさせるS/Lリンク21の駆動側への回動変位を規制するための土手として機能する。したがって、シフトレバーユニット1では、グルーブドピン18の当接荷重が過大となった場合でもS/Lリンク21が駆動側に倒れ込むように回動変位するおそれが少なく、これに起因してグルーブドピン18の規制が外れることがない。
【0064】
(第5の当接保持構造)
グルーブドピン18の当接荷重が過大となった場合、突出部180Aの先端方向にS/Lリンク21が倒れ込むような変形が生じるおそれがある。シフトレバーユニット1では、グルーブドピン18の先端に設けたフック部185がS/Lリンク21に引っ掛かる上記の第1の当接保持構造により、このような変形が微小に制限されている。
【0065】
第1の当接保持構造が有効に作用する場合、グルーブドピン18のフック部185がS/Lリンク21の側面216Aに押し当たる状態となる(
図8参照。)。この側面216Aでは、上記のように、受け部212とは反対側(復帰側)の端部が窪み215に張り出す土手が形成され、この土手は、端になるほど張り出し量が大きくなる傾斜面を形成している。
【0066】
駆動側に向かって下がる滑り台のような傾斜面は、フック部185に押し当たったとき、駆動側に位置する側面216Bに向けてフック部185を付勢する力を生じさせる。ここで、上記の通り、窪み215において、駆動側へのフック部185の変位は前記第2の当接保持構造をなす側面216Bによって確実に規制されている。したがって、駆動側にフック部185を付勢すれば、フック部185が窪み215から抜け落ちるおそれを効果的に抑制できる。これにより、
図13(b)のようにS/Lリンク21にグルーブドピン18が噛み合う状態を確実性高く保持できる。
【0067】
(第6の当接保持構造)
シフトレバーユニット1が備えるシフトロック機構は、グルーブドピン18がS/Lリンク21に作用する荷重の一部が、グルーブドピン18の顎部189からS/Lリンク21のサポート部214に作用し、ベースブラケット3の棚面30Sに伝達されるように構成されている。
【0068】
グルーブドピン18からS/Lリンク21に作用する荷重の一部がベースブラケット3の棚面30Sに伝達される構造を採用すれば、S/Lリンク21の荷重受け面211に作用する当接荷重や、グルーブドピン18に作用する反力の荷重を低減できる。荷重受け面211に作用する当接荷重や、グルーブドピン18に作用する反力の荷重などを低減すれば、S/Lリンク21やグルーブドピン18の弾性変形等を抑制でき、S/Lリンク21等の弾性変形に起因してシフトロック状態が外れるおそれを抑制できる。
【0069】
以上のようにシフトレバーユニット1では、シフトレバー10を組み立てる際、圧入作業に依らずにグルーブドピン18を組み付け可能である。このため、シフトレバーユニット1の組立作業では、圧入プレス等の機械装置が必要なく、それ故、製造コストの抑制による製品コストの低減が比較的容易である。
【0070】
シフトレバーユニット1では、樹脂製のグルーブドピン18をディテントロッド12の収容孔121に挿入するだけで良い。ディテントロッド12の突起収容部123がレバー本体15の差込部156に一致する状態であれば、レバー本体15の径方向外周側から、例えば手作業でディテントロッド12の収容孔121にグルーブドピン18を挿入して組み付けできる。さらに、組立作業時に加えて、シフトレバーユニット1の分解を要するメンテナンス作業時などの非使用状態であれば、差込部156に対して収容孔121が一致するようにディテントロッド12を軸方向に変位させることで、グルーブドピン18を抜き取ったり、グルーブドピン18を再挿入する等の作業を手作業で簡単に実施できる。
【0071】
レバー本体15に設けられた差込部156は、グルーブドピン18の可動範囲の外側に配置されている(
図11参照。)。グルーブドピン18の可動範囲の貫通溝155は、グルーブドピン18の突出部180を貫通配置できる一方、その胴部18Bが通過できないように形成されている。したがって、可動範囲の貫通溝155は、グルーブドピン18の径方向位置を確実に規制できる。それ故、シフトレバーユニット1では、ディテントロッド12に対してグルーブドピン18を例えば接着接合等により固定する必要がない。
【0072】
なお、S/Lリンク21から突出部180Aに反力の荷重が作用すれば、ピッチング方向にグルーブドピン18を回転させるモーメントが発生する。グルーブドピン18は、ディテントロッド12の収容孔121に貫通配置されているだけであるため、収容孔121に多少の隙間があれば、この隙間を利用してグルーブドピン18のピッチング方向の回転が生じ得る。特に、先端側の突出部180Aでは、ピッチング方向のグルーブドピン18の回転に起因する変位量が増幅される。このような突出部180Aの変位を低減するための工夫として、シフトレバーユニット1では、グルーブドピン18の上側面にサメの背びれのような支持部183が設けられている。この支持部183によれば、上記のモーメントによる力をディテントロッド12に作用して低減でき、グルーブドピン18のピッチング方向の回転を抑制できる。
【0073】
また、シフトレバーユニット1は、S/Lリンク21に対してグルーブドピン18(突出部180)が当接し、グルーブドピン18の軸方向の変位が規制されるシフトロック状態を確実に保持するための当接保持構造を備えている。このような当接保持構造を備えるシフトレバーユニット1であれば、S/Lリンク21からグルーブドピン18が外れるおそれが少ないため、S/Lリンク21やグルーブドピン18などについて高剛性設計等の対処が不要になっている。したがって、シフトレバーユニット1では、シフトロック機構を構成する部品の強度を高めるためのコストアップや重量増や大型化を回避できる。
【0074】
なお、
図14のように抜止め突起181が高さ方向に延設されたグルーブドピン18を採用しても良い。グルーブドピン18の高さ方向に延在する抜止め突起181を採用すれば、貫通溝155によって径方向の位置が規制される箇所を高さ方向に広く形成できる。径方向の位置が規制される箇所が高さ方向に延在していれば、S/Lリンク21から作用する反力によりピッチング方向のグルーブドピン18の回転を規制できる。
【0075】
抜止め突起181が高さ方向に延設されており、突出部180Aが上方に煽られる回転を規制可能な
図14のグルーブドピン18であれば、ディテントロッド12に貫通配置することは必須の要件ではない。例えば、グルーブドピン18の上側面にディテントロッド12の端面が押し当たると共に、グルーブドピン18の下側面がコイルスプリング(
図9中の符号130)の座として機能するように構成しても良い。
【0076】
グルーブドピン18がディテントロッド12の収容孔121に貫通配置される構造を採用すれば、貫通構造によりグルーブドピン18のピッチング方向の回転を規制可能である。この貫通構造では、収容孔121の内周面に対してグルーブドピン18の上側面及び下側面が隙間少なく対面しているため、グルーブドピン18のピッチング方向の回転が規制される。一方、上記のようにディテントロッド12の端面がグルーブドピン18の上側面に押し当たる構造の場合、グルーブドピン18のピッチング方向の回転を規制できないおそれがある。
【0077】
そこで、下端に沿って抜止め突起181が延設された
図12中のグルーブドピン18を元にして、上端に沿って延在する抜止め突起を追加的に設けることも良い。この場合には、径方向の位置が規制される箇所がグルーブドピン18の高さ方向に複数形成され、少なくとも、グルーブドピン18の上端と下端の2箇所に形成される。径方向の位置が規制される箇所を高さ方向の異なる位置に少なくとも2箇所設ければ、上記のように突出部180Aが上方に煽られるようなピッチング方向のグルーブドピン18の回転を規制できる。
【0078】
以上、実施例のごとく本発明の具体例を詳細に説明したが、これらの具体例は、特許請求の範囲に包含される技術の一例を開示しているにすぎない。言うまでもなく、具体例の構成や数値等によって、特許請求の範囲が限定的に解釈されるべきではない。特許請求の範囲は、公知技術や当業者の知識等を利用して前記具体例を多様に変形、変更あるいは適宜組み合わせた技術を包含している。