(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のハイブリッド式作業機械の実施の形態を、ハイブリッド油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、
図7に示す流れ図の各ステップは、それぞれ「S」という表記を用いる(例えば、ステップ1=「S1」とする)。
【0015】
図1において、ハイブリッド式作業機械の代表例であるハイブリッド油圧ショベル1(以下、油圧ショベル1という)は、後述のエンジン11と、電動機としてのアシスト発電モータ15(
図2〜6参照)と、蓄電装置19(
図2〜6参照)とを備えている。即ち、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に設けられた旋回装置3と、下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、上部旋回体4の前側に設けられ掘削作業等を行う多関節構造の作業装置5とを含んで構成されている。この場合、下部走行体2と上部旋回体4は、油圧ショベル1の車体を構成している。
【0016】
下部走行体2は、例えば、履帯2Aと、該履帯2Aを周回駆動させることにより油圧ショベル1を走行させる左,右の走行用油圧モータ2B,2C(
図2参照)とを含んで構成されている。下部走行体2は、後述の油圧ポンプ12(
図2〜5参照)からの圧油の供給に基づいて、油圧モータ(油圧アクチュエータ)である走行用油圧モータ2B,2Cが回転することにより、上部旋回体4および作業装置5と共に走行する。
【0017】
作業機またはフロントとも呼ばれる作業装置5は、上部旋回体4の旋回フレーム6に取付けられている。作業装置5は、例えば、ブーム5A、アーム5B、作業具としてのバケット5Cと、これらを駆動する油圧アクチュエータ(液圧アクチュエータ)としてのブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ(作業具シリンダ)5Fとを含んで構成されている。作業装置5は、油圧ポンプ12からの圧油の供給に基づいて、油圧シリンダであるシリンダ5D,5E,5Fが伸長または縮小することにより、俯仰動(揺動)する。
【0018】
上部旋回体4は、旋回軸受、減速機構、旋回用油圧モータ3A(
図2〜5参照)、後述の旋回電動モータ20(
図2〜5参照)等を含んで構成される旋回装置3を介して、下部走行体2上に搭載されている。油圧モータ(油圧アクチュエータ)である旋回用油圧モータ3Aは、油圧ポンプ12からの圧油の供給に基づいて回転する。旋回電動モータ20は、蓄電装置19からの電力の供給に基づいて回転する。上部旋回体4は、旋回用油圧モータ3Aおよび/または旋回電動モータ20が回転することにより、作業装置5と共に下部走行体2上で旋回する。
【0019】
上部旋回体4は、上部旋回体4の支持構造体(ベースフレーム)となる旋回フレーム6と、旋回フレーム6上に搭載されたキャブ7、カウンタウエイト8等とを含んで構成されている。この場合、旋回フレーム6上には、
図2に示すエンジン11、油圧ポンプ12、作動油タンク13、制御弁装置(C/V)14、アシスト発電モータ15、蓄電装置19等が搭載されている。旋回フレーム6は、旋回装置3を介して下部走行体2に取付けられている。旋回フレーム6の前部左側には、内部が運転室となったキャブ7が設けられている。旋回フレーム6の後端側には、作業装置5との重量バランスをとるためのカウンタウエイト8が設けられている。
【0020】
そして、
図3ないし
図5に示すように、エンジン11、アシスト発電モータ15および油圧ポンプ12は、カウンタウエイト8よりも前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。また、後述のエンジン用ラジエータ25および蓄電装置用ラジエータ31は、エンジン11の左側(換言すれば、キャブ7の後側)に位置して旋回フレーム6上に設けられている。一方、後述の蓄電装置19は、上部旋回体4の右前側、即ち、作業装置5(のブーム5A)を挟んでキャブ7とは反対側に位置にして旋回フレーム6上に設けられている。また、後述の加温熱交換器32は、エンジン11よりも前側に位置して旋回フレーム6上に設けられている。
【0021】
キャブ7内には、オペレータが着席する運転席(図示せず)が設けられている。運転席の周囲には、油圧ショベル1を操作するための操作装置(具体的には、走行用レバー・ペダル操作装置および作業用レバー操作装置)が設けられている。操作装置は、オペレータの操作(レバー操作、ペダル操作)に応じたパイロット信号(パイロット圧)を、制御弁装置14に出力する。これにより、オペレータは、走行用油圧モータ2B,2C、作業装置5のシリンダ5D,5E,5F、旋回装置3の旋回用油圧モータ3Aを動作(駆動)させることができる。
【0022】
さらに、キャブ7内には、ヒータコア9(
図3ないし
図6参照)が設けられている。ヒータコア9は、エアコンと呼ばれる空調装置(図示せず)の熱源、即ち、空調装置(暖房装置)から吹き出す空気(送風空気)を暖めるための熱源となるものである。後述するように、ヒータコア9は、エンジン11を冷却するための冷媒(伝熱媒体)であるエンジン冷却水によって暖められる(加温される)。これにより、キャブ7内を暖めることができる。
【0023】
図2に示すように、油圧ショベル1は、アシスト発電モータ15等を制御する電動システムと、作業装置5等の動作を制御する油圧システムとを搭載している。そこで、油圧ショベル1のシステム構成について、
図1に加え
図2も参照しつつ説明する。
【0024】
エンジン11は、旋回フレーム6に搭載されており、例えばディーゼルエンジン等の内燃機関によって構成されている。エンジン11の出力側には、後述の油圧ポンプ12とアシスト発電モータ15とが機械的に直列接続して取付けられている。これら油圧ポンプ12とアシスト発電モータ15は、エンジン11によって回転駆動される。エンジン11は、ECUと呼ばれるエンジンコントロールユニット(図示せず)によって制御される。
【0025】
ここで、エンジン11は、例えば、燃料噴射装置(インジェクタ)等のエンジン11に組み込まれたエンジン補機11A(
図6参照)、過給機であるターボチャージャ11B(
図6参照)、排気ガスを浄化する排気ガス浄化装置11C(
図6参照)等を含んで構成されている。排気ガス浄化装置11Cは、例えば、排気ガス中に含まれる一酸化窒素(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する酸化触媒(DOC)と、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集して除去する粒子状物質除去フィルタ(DPF)とを備えている。また、排気ガス浄化装置11Cは、例えば、排気ガスに向けて尿素水溶液を噴射する尿素水噴射装置と、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を尿素水溶液から生成されたアンモニアによって選択的に還元反応させて窒素と水に分解する選択還元触媒とを備えている。後述するように、エンジン補機11A、ターボチャージャ11B、排気ガス浄化装置11Cは、エンジン11を冷却するための冷媒(伝熱媒体)であるエンジン冷却水によって冷却される。
【0026】
油圧ポンプ12は、エンジン11に機械的に(即ち、動力伝達可能に)接続されている。油圧ポンプ12は、エンジン11の単独のトルクによって駆動可能である。また、油圧ポンプ12は、エンジン11のトルクにアシスト発電モータ15のアシストトルクを加えた複合トルク(合計トルク)によっても駆動可能である。油圧ポンプ12は、例えば、可変容量型の油圧ポンプ、より具体的には、可変容量型の斜板式、斜軸式またはラジアルピストン式油圧ポンプによって構成されている。油圧ポンプ12は、作動油タンク13内に貯溜された作動油を加圧し、走行用油圧モータ2B,2C、旋回用油圧モータ3A、作業装置5のシリンダ5D〜5F等に圧油として吐出する。
【0027】
油圧ポンプ12は、制御弁装置14を介して走行用油圧モータ2B,2C、旋回用油圧モータ3A、作業装置5のシリンダ5D〜5Fに接続されている。これら走行用油圧モータ2B,2C、旋回用油圧モータ3A、作業装置5のシリンダ5D〜5Fは、油圧ポンプ12からの圧油によって駆動する。制御弁装置14は、複数の方向制御弁からなる制御弁群である。制御弁装置14は、油圧ポンプ12から吐出された圧油を、操作装置(走行用レバー・ペダル操作装置、作業用レバー操作装置)の操作に応じて、走行用油圧モータ2B,2C、旋回用油圧モータ3A、作業装置5のシリンダ5D〜5Fに供給または排出する。
【0028】
発電電動機(モータジェネレータ)であるアシスト発電モータ15は、エンジン11に機械的に接続されている。アシスト発電モータ15は、例えば同期電動機等によって構成されている。アシスト発電モータ15は、エンジン11によって回転駆動されることにより発電を行い、または、電力が供給されることによりエンジン11の駆動を補助する。即ち、アシスト発電モータ15は、エンジン11を動力源に発電機として働き蓄電装置19や旋回電動モータ20への電力供給を行う発電と、蓄電装置19や旋回電動モータ20からの電力を動力源にモータとして働きエンジン11の駆動をアシストする力行との2通りの役割を果たす。従って、エンジン11のトルクには、状況に応じてアシスト発電モータ15のアシストトルクが追加され、これらのトルクによって油圧ポンプ12は駆動する。
【0029】
アシスト発電モータ15は、第1のインバータ16を介して一対の直流母線17A,17Bに接続されている。第1のインバータ16は、後述の第2のインバータ21と共にインバータユニット18を構成している。
図3ないし
図5に示すように、インバータユニット18は、キャブ7よりも後側で、かつ、蓄電装置用ラジエータ31よりも前側に配置されている。
【0030】
第1のインバータ16は、例えばトランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)等からなる複数のスイッチング素子を用いて構成されている。第1のインバータ16は、MGCUと呼ばれるモータジェネレータコントロールユニット(図示せず)によって、各スイッチング素子のオン/オフが制御される。これにより、アシスト発電モータ15の発電時の発電電力(回生電力)、力行時の駆動電力が制御される。
【0031】
直流母線17A,17Bは、正極側と負極側とで対をなし、例えば数百V程度の直流電圧が印加されている。アシスト発電モータ15の発電時には、第1のインバータ16は、アシスト発電モータ15からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置19や旋回電動モータ20に供給する。アシスト発電モータ15の力行時には、第1のインバータ16は、直流母線17A,17Bの直流電力を交流電力に変換してアシスト発電モータ15に供給する。
【0032】
蓄電装置19は、直流母線17A,17Bに接続されている。即ち、蓄電装置19は、直流母線17A,17Bを介してアシスト発電モータ15、旋回電動モータ20に電気的に接続されている。蓄電装置19は、例えば、複数のリチウムイオン電池のセル(図示せず)を電気的に直列および/または並列に接続してなる組電池(リチウムイオン電池ユニット)によって構成されている。蓄電装置19は、アシスト発電モータ15による発電電力を蓄電し、または、蓄電された電力をアシスト発電モータ15に供給する。
【0033】
即ち、蓄電装置19は、アシスト発電モータ15の発電時にはアシスト発電モータ15から供給される電力を充電し、アシスト発電モータ15の力行時(アシスト駆動時)にはアシスト発電モータ15に向けて駆動電力を供給する。また、蓄電装置19は、旋回電動モータ20の回生時には旋回電動モータ20から供給される回生電力を充電し、旋回電動モータ20の力行時には旋回電動モータ20に向けて駆動電力を供給する。
【0034】
このように、蓄電装置19は、アシスト発電モータ15によって発電された電力と、油圧ショベル1の旋回制動時に旋回電動モータ20が発生した回生電力を蓄電する。この場合、蓄電装置19は、BCUとよばれるバッテリコントロールユニット(図示せず)によって制御される。また、蓄電装置19には、蓄電装置19の温度を検出する温度測定装置、即ち、温度センサ19A(
図6参照)が設けられている。温度センサ19Aは、後述の制御装置34に接続されている。温度センサ19Aは、検出した蓄電装置19の温度に対応する信号を制御装置34に出力する。
【0035】
旋回電動モータ20(旋回電動機)は、アシスト発電モータ15または蓄電装置19からの電力によって駆動される。旋回電動モータ20は、例えば三相誘導電動機によって構成され、旋回用油圧モータ3Aと共に旋回フレーム6に設けられている。旋回電動モータ20は、旋回用油圧モータ3Aと協働して旋回装置3を駆動する。即ち、旋回装置3は、旋回用油圧モータ3Aと旋回電動モータ20の複合トルクによって駆動し、上部旋回体4を旋回駆動する。
【0036】
旋回電動モータ20は、第2のインバータ21を介して直流母線17A,17Bに接続されている。旋回電動モータ20は、蓄電装置19やアシスト発電モータ15からの電力を受けて回転駆動する力行と、旋回制動時の余分なトルクで発電して蓄電装置19を蓄電する回生との2通りの役割を果たす。このため、力行時の旋回電動モータ20には、アシスト発電モータ15等からの電力が直流母線17A,17Bを介して供給される。これにより、旋回電動モータ20は、オペレータによる操作装置の操作に応じて回転トルクを発生させて、旋回用油圧モータ3Aの駆動をアシストすることにより、上部旋回体4を旋回動作させる。
【0037】
第2のインバータ21は、第1のインバータ16と同様に、複数のスイッチング素子を用いて構成されている。第2のインバータ21は、RMCUと呼ばれる旋回電動モータコントロールユニット(図示せず)によって各スイッチング素子のオン/オフが制御される。旋回電動モータ20の力行時には、第2のインバータ21は、直流母線17A,17Bの直流電力を交流電力に変換して旋回電動モータ20に供給する。旋回電動モータ20の回生時には、第2のインバータ21は、旋回電動モータ20からの交流電力を直流電力に変換して蓄電装置19等に供給する。
【0038】
次に、エンジン11の冷却システムおよび蓄電装置19の冷却システムについて、
図1および
図2に加え
図3ないし
図7も参照しつつ説明する。この場合、
図4は、エンジン冷却システム22(エンジン冷却管路23)のレイアウトを示している。
図5は、蓄電装置冷却システム27(蓄電装置冷却管路28)のレイアウトを示している。油圧ショベル1の上部旋回体4には、
図6に示すようなエンジン冷却システム22と蓄電装置冷却システム27とが一まとめに搭載されている。
【0039】
即ち、上部旋回体4は、第1の伝熱媒体循環システムとしてのエンジン冷却システム22と、エンジン冷却システム22とは別に設けられた第2の伝熱媒体循環システムとしての蓄電装置冷却システム27とを備えている。エンジン冷却システム22は、エンジン用伝熱媒体(第1の伝熱媒体)としてのエンジン冷却水(冷媒)が循環する冷却システムである。蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置用伝熱媒体(第2の伝熱媒体)としての蓄電装置冷却水(冷媒)が循環する冷却システムである。実施の形態では、エンジン冷却システム22と蓄電装置冷却システム27とは、それぞれ別々の伝熱媒体(エンジン冷却水、蓄電装置冷却水)が流通する異なる冷却システムとして構成されている。
【0040】
なお、エンジン冷却水は、エンジン11等を冷却するだけでなく、ヒータコア9を加温するもの(熱媒)でもある。しかし、エンジン冷却水は、エンジン11を冷却する冷媒としての役割を有しているため、以下の説明では、単に「エンジン冷却水」という。また、蓄電装置冷却水は、蓄電装置19の温度が上限温度を超えないように冷却するだけでなく、蓄電装置19の温度が下限温度を下回らないように加温するもの(熱媒)でもある。しかし、蓄電装置冷却水は、蓄電装置19を冷却する冷媒としての機能を備えているため、以下の説明では、単に「蓄電装置冷却水」という。換言すれば、本明細書では、「冷却」と「加温」との両方の意味を含んで「冷却」の言葉を用いる場合がある。
【0041】
図6に示すように、エンジン冷却システム22は、エンジン冷却水を循環させることにより、エンジン補機11A、ターボチャージャ11B、排気ガス浄化装置11C等を含むエンジン11に加えて、アシスト発電モータ15、ヒータコア9の冷却(または加温)を行う温度調整装置である。エンジン冷却システム22は、エンジン11、アシスト発電モータ15、エンジン冷却管路23、エンジン冷却用ポンプ(第1のポンプ)としてのエンジン用ウォータポンプ24、第1のラジエータとなるエンジン用ラジエータ25、制御弁(第1の弁)としてのサーモスタット26を含んで構成されている。
【0042】
エンジン冷却管路23は、エンジン11を冷却する冷媒となるエンジン冷却水が流通する。エンジン冷却管路23は、エンジン用ウォータポンプ24の吐出口側に接続され、エンジン11を通過するエンジン通過管路23Aを有している。エンジン通過管路23Aは、例えば、エンジン11のウォータジャケット、ホース等により構成されている。エンジン通過管路23Aは、エンジン11内で補機用管路23Bと分岐している。補機用管路23Bは、エンジン補機11Aを経由してエンジン通過管路23Aの下流側(エンジン11よりも下流側)に接続されている。補機用管路23Bは、エンジン11内で電動機管路23Cと分岐している。電動機管路23Cは、アシスト発電モータ15を経由してエンジン通過管路23Aの下流側(エンジン11よりも下流側)に接続されている。エンジン通過管路23Aの下流側は、2つの管路、即ち、ラジエータ管路23Dおよび熱交換器管路23Eに分岐している。
【0043】
ラジエータ管路23Dは、エンジン用ラジエータ25およびサーモスタット26を介してエンジン用ウォータポンプ24の吸込み口側に接続されている。熱交換器管路23Eは、後述の加温熱交換器32を介してエンジン用ウォータポンプ24の吸込み口側に接続されている。この場合、熱交換器管路23Eは、加温熱交換器32よりも上流側で3つの分岐管路、即ち、上流側から順に過給機分岐管路23F、DPF分岐管路23G、ヒータコア分岐管路23Hに分岐している。
【0044】
過給機分岐管路23Fは、ターボチャージャ11Bを経由して、熱交換器管路23Eの下流側(加温熱交換器32よりも下流側)に接続されている。DPF分岐管路23Gは、排気ガス浄化装置11C(のDPF)を経由して、熱交換器管路23Eの下流側(加温熱交換器32よりも下流側)に接続されている。ヒータコア分岐管路23Hは、ヒータコア9を経由して、熱交換器管路23Eの下流側(加温熱交換器32よりも下流側)に接続されている。
【0045】
エンジン用ウォータポンプ24は、エンジン冷却水をエンジン冷却管路23に供給(吐出)する。即ち、エンジン用ウォータポンプ24は、エンジン11とエンジン用ラジエータ25および/または加温熱交換器32との間でエンジン冷却水を循環させる。エンジン用ウォータポンプ24は、例えば、エンジン11のクランクシャフトの回転に基づいて回転することにより、ラジエータ管路23Dおよび/または熱交換器管路23Eのエンジン冷却水を吸込む。そして、エンジン用ウォータポンプ24は、吸込んだエンジン冷却水をエンジン通過管路23Aに向けて吐出する。
【0046】
エンジン用ウォータポンプ24から吐出したエンジン冷却水は、エンジン11、エンジン補機11A、アシスト発電モータ15、ターボチャージャ11B、排気ガス浄化装置11C(のDPF)、ヒータコア9、加温熱交換器32を通過してから、エンジン用ウォータポンプ24の吸込み口側に戻る。また、サーモスタット26が開のときは、エンジン用ウォータポンプ24から吐出したエンジン冷却水は、エンジン用ラジエータ25を通過してから、エンジン用ウォータポンプ24の吸込み口側に戻る。
【0047】
エンジン用ラジエータ25は、エンジン冷却管路23(より具体的には、ラジエータ管路23D)を介してエンジン11(のエンジン通過管路23A)と接続されている。エンジン用ラジエータ25は、エンジン冷却水の放熱を行う。即ち、エンジン用ラジエータ25は、エンジン室内の冷却ファンによって吸込まれた外気(冷却風)を受けることにより、エンジン用ラジエータ25を通過するエンジン冷却水の冷却を行う。エンジン用ラジエータ25で冷却されたエンジン冷却水は、サーモスタット26を介してエンジン用ウォータポンプ24の吸込み口側に流れる。
【0048】
サーモスタット26は、エンジン用ウォータポンプ24の吸込み口とエンジン用ラジエータ25との間に設けられている。サーモスタット26は、エンジン用ラジエータ25に対するエンジン冷却水の流量を制御する制御弁となるものである。即ち、サーモスタット26は、エンジン冷却水の温度に応じて開閉する開閉弁であり、エンジン冷却水の温度が低いときに閉弁し、エンジン冷却水の温度が高いときに開弁する。より具体的には、サーモスタット26は、所定の温度(例えば、80℃〜85℃程度)になると開弁することにより、エンジン冷却水がエンジン用ラジエータ25側に流れるようにする。これにより、エンジン冷却水の温度を適温(例えば、80℃程度)に維持することができる。
【0049】
なお、加温熱交換器32にエンジン冷却水を流通させるための熱交換器管路23Eは、エンジン用ラジエータ25の上流側から分岐し、加温熱交換器32を介してエンジン用ウォータポンプ24の吸込み口に接続されている。このため、加温熱交換器32には、サーモスタット26の状態(開弁状態)に拘わらず、即ち、サーモスタット26が開弁していても閉弁していても、エンジン11等を通過して暖められたエンジン冷却水が供給される。
【0050】
エンジン冷却システム22は、エンジン用ウォータポンプ24によってエンジン冷却水が循環することにより、エンジン11、アシスト発電モータ15等を冷却することができる。エンジン11、アシスト発電モータ15等からの熱によってエンジン冷却水が高温になると、サーモスタット26が開状態となる。これにより、高温となったエンジン冷却水は、エンジン用ラジエータ25で冷却される。
【0051】
ここで、エンジン用ウォータポンプ24から吐出したエンジン冷却水は、エンジン用ウォータポンプ24の下流側で分岐し、エンジン補機11Aまたはアシスト発電モータ15を冷却してから、エンジン11の下流側で合流する。さらに、合流したエンジン冷却水は、エンジン用ラジエータ25の上流側で分岐し、ターボチャージャ11B、排気ガス浄化装置11Cを冷却してから、または、ヒータコア9、加温熱交換器32を加温してから、サーモスタット26の下流側で合流する。
【0052】
蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置冷却水を循環させることにより、蓄電装置19の冷却(または加温)を行う温度調整装置である。蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置19、蓄電装置冷却管路28、蓄電装置冷却用ポンプ(第2のポンプ)としての蓄電装置用ウォータポンプ29、第2のラジエータとなる蓄電装置用ラジエータ31を含んで構成されている。さらに、蓄電装置冷却システム27は、伝熱媒体熱交換器としての加温熱交換器32と、第2の弁となる切換弁33と、制御装置34とを備えている。
【0053】
蓄電装置冷却管路28は、蓄電装置19(のリチウムイオン電池)を冷却する冷媒となる蓄電装置冷却水が流通する。蓄電装置冷却管路28は、蓄電装置用ウォータポンプ29の吐出口側に接続され、蓄電装置19を通過する蓄電装置通過管路28Aを有している。蓄電装置通過管路28Aの下流側は、切換弁33に接続されている。即ち、蓄電装置通過管路28Aは、切換弁33を介して、2つの管路、即ち、ラジエータ管路28Bと熱交換器管路28Cとに分岐している。
【0054】
ラジエータ管路28Bは、切換弁33、蓄電装置用ラジエータ31を介して蓄電装置用ウォータポンプ29の吸込み口側に接続されている。熱交換器管路28Cは、切換弁33、加温熱交換器32を介して蓄電装置用ウォータポンプ29の吸込み口側に接続されている。このように、蓄電装置冷却管路28は、蓄電装置用ウォータポンプ29、蓄電装置19および蓄電装置用ラジエータ31を接続するラジエータ管路28Bと、蓄電装置用ウォータポンプ29、蓄電装置19および加温熱交換器32を接続する熱交換器管路28Cとを有している。
【0055】
蓄電装置用ウォータポンプ29は、蓄電装置冷却水を蓄電装置冷却管路28に供給(吐出)する。即ち、蓄電装置用ウォータポンプ29は、蓄電装置19と蓄電装置用ラジエータ31および/または加温熱交換器32との間で蓄電装置冷却水を循環させる。蓄電装置用ウォータポンプ29は、例えば、制御装置34からの指令(電力供給)に基づいて回転、停止が制御されるポンプ用電動モータ30によって回転駆動される。即ち、蓄電装置用ウォータポンプ29は、電動ポンプとして構成されている。
【0056】
蓄電装置用ウォータポンプ29は、ポンプ用電動モータ30によって回転することにより、ラジエータ管路28Bまたは熱交換器管路28Cの蓄電装置冷却水を吸込む。そして、蓄電装置用ウォータポンプ29は、吸込んだ蓄電装置冷却水を蓄電装置通過管路28Aに向けて吐出する。蓄電装置用ウォータポンプ29から吐出した蓄電装置冷却水は、切換弁33の切換位置に応じて、蓄電装置19と蓄電装置用ラジエータ31とを通過してから、または、蓄電装置19と加温熱交換器32とを通過してから、蓄電装置用ウォータポンプ29の吸込み口側に戻る。
【0057】
蓄電装置用ラジエータ31は、蓄電装置冷却管路28(より具体的には、ラジエータ管路28B)を介して蓄電装置19(の蓄電装置通過管路28Aを)と接続されている。蓄電装置用ラジエータ31は、蓄電装置冷却水の放熱を行う。即ち、蓄電装置用ラジエータ31は、エンジン室内の冷却ファンによって吸込まれた外気(冷却風)を受けることにより、蓄電装置用ラジエータ31を通過する蓄電装置冷却水の冷却を行う。蓄電装置用ラジエータ31で冷却された蓄電装置冷却水は、蓄電装置用ウォータポンプ29の吸込み口側に流れる。
【0058】
さらに、実施の形態では、エンジン冷却水と蓄電装置冷却水との間で熱交換を行う加温熱交換器32を備えている。この場合、加温熱交換器32は、エンジン冷却システム22のエンジン冷却管路23の途中(より具体的には、熱交換器管路23Eの途中)で、かつ、蓄電装置冷却システム27の蓄電装置冷却管路28の途中(より具体的には、熱交換器管路28Cの途中)に設けられている。これにより、加温熱交換器32は、エンジン冷却システム22を構成し、かつ、蓄電装置冷却システム27を構成している。
【0059】
加温熱交換器32は、例えば、プレート式熱交換器、二重管式熱交換器等の熱交換器、即ち、液体と液体との間で熱交換を行う熱交換器により構成することができる。加温熱交換器32は、熱交換器管路23Eを流れるエンジン冷却水の熱を用いて熱交換器管路28Eを流れる蓄電装置冷却水を暖める。この場合、例えば、蓄電装置19がリチウムイオン電池により構成されている場合、蓄電装置冷却水の温度は20℃〜30℃程度であることが望ましい。これに対して、エンジン冷却水の温度は、80℃〜99℃程度になる。そこで、加温熱交換器32は、エンジン冷却水によって蓄電装置冷却水の温度が20℃〜30℃となるように、その選定および熱設計を行う。このように加温熱交換器32を設定することにより、蓄電装置19の加温に使用する蓄電装置冷却水の温度上昇率を所望(適正)にできる。
【0060】
切換弁33は、蓄電装置19よりも下流側、即ち、蓄電装置通過管路28Aの下流側に設けられている。換言すれば、切換弁33は、蓄電装置19と蓄電装置用ラジエータ31との間で、かつ、蓄電装置19と加温熱交換器32との間に設けられている。切換弁33は、蓄電装置19の温度に基づいて、蓄電装置冷却水をラジエータ管路28Bと熱交換器管路28Cとのうちのいずれに流通させるかを切換えるものである。
【0061】
切換弁33は、電動式の切換弁、例えば、ソレノイド等を有する電磁弁(電磁切換弁)により構成され、制御装置34によって切換位置が切換えられる。切換弁33は、蓄電装置通過管路28Aを蓄電装置用ラジエータ31側に接続させる切換位置(A)と、蓄電装置通過管路28Aを加温熱交換器32側に接続させる切換位置(B)とのいずれかに切換えられる。この場合、切換弁33は、蓄電装置冷却水の温度が高いとき(例えば、蓄電装置19の温度が30℃よりも高いとき)に切換位置(A)に切換えられる。一方、切換弁33は、蓄電装置冷却水の温度が低いとき(例えば、蓄電装置19の温度が20℃よりも低いとき)に切換位置(B)に切換えられる。
【0062】
制御装置34は、切換弁33を切換位置(A)と切換位置(B)とのいずれかに切換えるコントロールユニットであり、かつ、蓄電装置用ウォータポンプ29(ポンプ用電動モータ30)の駆動、停止を行うコントロールユニットである。制御装置34は、例えばマイクロコンピュータ、駆動回路、電源回路を含んで構成されている。マイクロコンピュータは、例えば、演算装置(CPU)に加え、フラッシュメモリ、ROM、RAM、EEPROM等からなるメモリ(いずれも図示せず)を有している。メモリには、例えば、後述の
図7に示す処理フローを実行するための処理プログラム(即ち、切換弁33およびポンプ用電動モータ30の制御処理に用いる処理プログラム)が格納されている。
【0063】
制御装置34の入力側は、蓄電装置19の温度センサ19Aに接続されている。制御装置34の出力側は、切換弁33とポンプ用電動モータ30に接続されている。制御装置34は、温度センサ19Aにより検出される蓄電装置19の温度(リチウムイオン電池の温度)に基づいて、切換弁33の切換位置の切換えと、ポンプ用電動モータ30の駆動、停止を行う。なお、制御装置34で行われる
図7の制御処理については、後で詳述する。
【0064】
蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置用ウォータポンプ29によって蓄電装置冷却水が循環することにより、蓄電装置19を冷却することができる。このとき、切換弁33は、切換位置(A)に切換えられている。このため、蓄電装置19の熱によって温度上昇した蓄電装置冷却水は、蓄電装置用ラジエータ31で冷却される。また、蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置用ウォータポンプ29によって蓄電装置冷却水が循環することにより、蓄電装置19を加温することもできる。このとき、切換弁33は、切換位置(B)に切換えられている。このため、蓄電装置冷却水は、加温熱交換器32でエンジン冷却システム22のエンジン冷却水と熱交換することにより暖められる。
【0065】
そして、加温熱交換器32で暖められた蓄電装置冷却水が、蓄電装置用ウォータポンプ29を介して蓄電装置19に流れることにより、蓄電装置19を暖めることができる。このように、切換弁33を切換位置(A)に切換えることで蓄電装置19を冷却し、切換位置(B)に切換えることで蓄電装置19を加温することにより、蓄電装置19の温度制御を行うことができる。これにより、蓄電装置冷却水の温度を適温(例えば、20℃〜30℃程度)に維持することができる。
【0066】
即ち、実施の形態では、低温環境下において性能が低下する蓄電装置19をエンジン11の排熱を利用して暖めることができる。この場合、実施の形態では、エンジン冷却システム22と蓄電装置冷却システム27とが別々に設けられており、かつ、エンジン冷却システム22のエンジン冷却水と蓄電装置冷却システム27の蓄電装置冷却水との間で熱交換を行う加温熱交換器32を備えている。換言すれば、エンジン冷却システム22(エンジン冷却管路23)は、蓄電装置19から離れて設けられており、エンジン冷却システム22のエンジン冷却水は、蓄電装置19を通過しない。即ち、蓄電装置19は、エンジン冷却システム22のエンジン冷却水によって直接的に暖められるものではない。蓄電装置19は、加温熱交換器32でエンジン冷却水によって暖められた蓄電装置冷却水によって暖められる。
【0067】
なお、図示は省略するが、上部旋回体4は、エンジン冷却システム22と蓄電装置冷却システム27とは別に、第3の伝熱媒体循環システムとなるインバータ冷却システムも備えている。インバータ冷却システムは、第1のインバータ16、第2のインバータ21、必要に応じて旋回電動モータ20の冷却を行う温度調整装置である。インバータ冷却システムは、例えば、インバータ16,21と、インバータ冷却水(インバータ用冷媒伝熱媒体)が流通するインバータ冷却管路と、インバータ冷却水をインバータ冷却管路に供給するインバータ冷却用ポンプと、インバータ冷却水の放熱を行うインバータ用ラジエータとを含んで構成される。インバータ冷却システムは、インバータ冷却用ポンプによってインバータ冷却水を循環させることにより、第1のインバータ16、第2のインバータ21、必要に応じて旋回電動モータ20を冷却することができる。
【0068】
実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0069】
キャブ7に搭乗したオペレータがエンジン11を起動させると、エンジン11によって油圧ポンプ12とアシスト発電モータ15が駆動される。これにより、油圧ポンプ12から吐出した圧油は、キャブ7内に設けられた操作装置(走行用レバー・ペダル操作装置、作業用レバー操作装置)のレバー操作、ペダル操作に応じて、走行用油圧モータ2B,2C、旋回用油圧モータ3A、作業装置5のブームシリンダ5D、アームシリンダ5E、バケットシリンダ5Fに向けて吐出する。これにより、油圧ショベル1は、下部走行体2による走行動作、上部旋回体4の旋回動作、作業装置5による掘削作業等を行うことができる。
【0070】
ここで、例えば、油圧ショベル1の作動時にエンジン11の出力トルクが油圧ポンプ12の駆動トルクよりも大きいときには、余剰トルクによってアシスト発電モータ15が発電機として駆動される。これにより、アシスト発電モータ15は交流電力を発生し、この交流電力は、第1のインバータ16により直流電力に変換され、蓄電装置19に蓄えられる。一方、エンジン11の出力トルクが油圧ポンプ12の駆動トルクよりも小さいときには、アシスト発電モータ15は、蓄電装置19からの電力によって電動機として駆動され、エンジン11の駆動を補助(アシスト)する。
【0071】
このとき、エンジン冷却システム22は、エンジン用ウォータポンプ24によってエンジン冷却水がエンジン冷却システム22内を循環することにより、エンジン11、エンジン補機11A,ターボチャージャ11B、排気ガス浄化装置11C、アシスト発電モータ15を冷却する。エンジン冷却水の温度が低いときは、サーモスタット26は閉弁状態となるため、エンジン冷却水はエンジン用ラジエータ25側に流れない。エンジン冷却水の温度が所定の温度を超えると、サーモスタット26が閉弁し始め、エンジン冷却水がエンジン用ラジエータ25側に流れることにより、エンジン冷却水が冷却される。
【0072】
これにより、エンジン冷却水の温度は、例えば80℃〜99℃に維持される。また、エンジン冷却水は、ヒータコア9に供給される。キャブ7内の空調装置は、ヒータコア9を流れるエンジン冷却水を熱源としてキャブ7内を暖めることができる。さらに、エンジン冷却水は、サーモスタット26の状態に拘わらず、加温熱交換器32に供給される。加温熱交換器32では、エンジン冷却水によって蓄電装置冷却水が暖められる。
【0073】
一方、蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置用ウォータポンプ29によって蓄電装置冷却水が蓄電装置冷却システム27内を循環する。例えば、制御装置34によって切換弁33が切換位置(A)に切換えられており、かつ、ポンプ用電動モータ30が駆動しているときは、蓄電装置冷却水は、蓄電装置19から蓄電装置用ラジエータ31側に流れる。これにより、蓄電装置用ラジエータ31で冷却された蓄電装置冷却水が蓄電装置19に供給され、蓄電装置19を冷却することができる。一方、制御装置34によって切換弁33が切換位置(B)に切換えられており、かつ、ポンプ用電動モータ30が駆動しているときは、蓄電装置冷却水は、蓄電装置19から加温熱交換器32側に流れる。これにより、加温熱交換器32で暖められた蓄電装置冷却水が蓄電装置19に供給され、蓄電装置19を加温することができる。
【0074】
次に、制御装置34により行われる切換弁33の切換え制御と蓄電装置用ウォータポンプ29(ポンプ用電動モータ30)の駆動、停止制御の処理について、
図7の流れ図を用いて説明する。なお、
図7の処理は、例えば、制御装置34に通電している間、所定の制御時間毎に(所定のサンプリング周波数で)繰り返し実行される。
【0075】
アクセサリON、または、エンジン11の始動(イグニッションON)により、制御装置34に通電が開始され、
図7の処理動作がスタートすると、S1では、蓄電装置19の温度センサ19Aによって検出された温度(検出温度)が予め設定した第1の閾値T1よりも高いか否かを判定する。即ち、S1では、蓄電装置19の冷却が必要か否かを判定する。第1の閾値T1は、例えば、蓄電装置19の冷却を開始すべき温度として設定することができる。第1の閾値T1は、蓄電装置19の仕様、蓄電装置19の上限温度、下限温度等に応じて設定される値である。例えば、蓄電装置19がリチウムイオン電池により構成されている場合、その特性上蓄電装置19は常温(例えば、20℃〜30℃)で使用することが望ましい。この場合、第1の閾値T1は、例えば、30℃として設定することができる。
【0076】
S1で「YES」、即ち、検出温度が第1の閾値T1よりも高い場合は、S2に進む。この場合は、蓄電装置19の冷却が必要と考えられる。そこで、S2では、切換弁33を蓄電装置用ラジエータ31側に切換える。即ち、S2では、切換弁33を切換位置(A)に切換える。そして、続くS3に進み、蓄電装置用ウォータポンプ29を駆動する。即ち、S3では、ポンプ用電動モータ30を駆動する。S3で蓄電装置用ウォータポンプ29を駆動したら、リターンする。即ち、リターンを介してスタートに戻り、S1以降の処理を繰り返す。
【0077】
一方、S1「NO」、即ち、検出温度が第1の閾値T1以下の場合は、S4に進む。S4では、検出温度が予め設定した第2の閾値T2よりも低いか否かを判定する。即ち、S4では、蓄電装置19の加温(暖機)が必要か否かを判定する。第2の閾値T2は、例えば、蓄電装置19の加温を開始すべき温度として設定することができる。第2の閾値T2も、第1の閾値T1と同様に、蓄電装置19の仕様、蓄電装置19の上限温度、下限温度等に応じて設定される値である。例えば、蓄電装置19がリチウムイオン電池により構成されている場合、第2の閾値T2は、例えば、20℃として設定することができる。
【0078】
S4で「YES」、即ち、検出温度が第2の閾値T2よりも低い場合は、S5に進む。この場合は、蓄電装置19の加温が必要と考えられる。そこで、S5では、切換弁33を加温熱交換器32側に切換える。即ち、S5では、切換弁33を切換位置(B)に切換える。そして、続くS3に進み、蓄電装置用ウォータポンプ29(ポンプ用電動モータ30)を駆動し、リターンする。これに対して、S4で「NO」、即ち、検出温度が第2の閾値T2以上の場合は、S6に進む。この場合は、蓄電装置19の冷却も加温も必要ないと考えられる。そこで、S6では、蓄電装置用ウォータポンプ29(ポンプ用電動モータ30)を停止し、リターンする。
【0079】
このように、実施の形態では、蓄電装置19の温度が第1の閾値T1より高い場合は、冷却が必要と判断し、切換弁33を切換位置(A)に切換えると共に蓄電装置用ウォータポンプ29を駆動する。この場合、蓄電装置用ウォータポンプ29から吐出した蓄電装置冷却水は、蓄電装置19、切換弁33、蓄電装置用ラジエータ31を通過し、蓄電装置用ウォータポンプ29に戻る。これにより、蓄電装置19の冷却を行うことができる。
【0080】
一方、蓄電装置19の温度が第2の閾値T2より低い場合は、暖機が必要と判断し、切換弁33を切換位置(B)に切換えると共に蓄電装置用ウォータポンプ29を駆動する。この場合、蓄電装置用ウォータポンプ29から吐出した蓄電装置冷却水は、蓄電装置19、切換弁33、加温熱交換器32を通過し、蓄電装置用ウォータポンプ29に戻る。加温熱交換器32には、常時エンジン冷却水が供給されており、エンジン冷却システム22のエンジン冷却水により、蓄電装置冷却システム27の蓄電装置冷却水が暖められる。これにより、蓄電装置19を暖めることができる。
【0081】
蓄電装置19の温度が第1の閾値T1以下で、かつ、第2の閾値T2以上の場合は、冷却も暖機も不要な状態と判断し、蓄電装置用ウォータポンプ29を停止する。この場合は、蓄電装置冷却水が蓄電装置冷却システム27内を循環しない。
【0082】
以上のように、実施の形態によれば、エンジン冷却システム22と蓄電装置冷却システム27とをそれぞれ別々の伝熱媒体(エンジン冷却水、蓄電装置冷却水)が流通する異なる冷却システムとして構成している。即ち、エンジン冷却システム22と蓄電装置冷却システム27とを、それぞれ別々の循環システムとして切離している。このため、それぞれの冷却システムをシンプルに構成することができる。例えば、
図4および
図5に管路レイアウトを示すように、それぞれの冷却システムの経路(管路の長さ)を短くできるため、それぞれの伝熱媒体(エンジン冷却水、蓄電装置冷却水)の漏れのリスクを低くできる。
【0083】
この場合、例えば、蓄電装置冷却システム27で伝熱媒体(蓄電装置冷却水)の漏れが発生したとしても、エンジン冷却システム22が連鎖的に冷却できなくなることを防止できる。これにより、エンジン冷却システム22で冷却される各種機器(エンジン11、エンジン補機11A、ターボチャージャ11B、排気ガス浄化装置11C等)の故障の可能性を低減することができる。
【0084】
さらに、エンジン用伝熱媒体(エンジン冷却水)と蓄電装置用伝熱媒体(蓄電装置冷却水)との間で熱交換を行う伝熱媒体熱交換器(加温熱交換器32)が備えられているため、蓄電装置19を暖機するための伝熱媒体(蓄電装置冷却水)の温度の調整を容易に行うことができる。即ち、伝熱媒体熱交換器(加温熱交換器32)を用いることで、蓄電装置19の暖機に使用する伝熱媒体(蓄電装置冷却水)の温度上昇率が高すぎる状態になることを抑制できる。
【0085】
実施の形態によれば、蓄電装置冷却システム27は、蓄電装置19の温度に基づいて、蓄電装置用伝熱媒体(蓄電装置冷却水)をラジエータ管路28Bと熱交換器管路28Cとのうちのいずれに流通させるかを切換える切換弁33を有している。このため、蓄電装置19の温度に基づいて切換弁33を切換位置(A)または切換位置(B)に切換えることにより、蓄電装置19の冷却と加温(暖機)とを切換えることができる。
【0086】
実施の形態によれば、伝熱媒体熱交換器(加温熱交換器32)には、エンジン冷却システム22のエンジン用伝熱媒体(エンジン冷却水)の流量を制御する制御弁(サーモスタット26)の状態に拘わらず、エンジン用伝熱媒体(エンジン冷却水)が供給される。このため、伝熱媒体熱交換器(加温熱交換器32)には、エンジン11によって暖められたエンジン用伝熱媒体(エンジン冷却水)を常時供給することができる。これにより、エンジン冷却システム22の制御弁(サーモスタット26)の状態(開閉状態)に拘わらず、伝熱媒体熱交換器(加温熱交換器32)で蓄電装置用伝熱媒体(蓄電装置冷却水)の加温を行うことができる。
【0087】
なお、実施の形態では、蓄電装置19の温度を温度センサ19Aにより検出する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、蓄電装置の温度を検出するためのセンサとして、蓄電装置冷却水の温度を検出する冷却水温度センサを設ける構成としてもよい。即ち、蓄電装置の温度は、蓄電装置の温度を直接検出(測定)してもよいし、蓄電装置の温度と相関関係を有する状態量(例えば、蓄電装置冷却水の温度、蓄電装置の抵抗)等を検出ないし推定してもよい。この場合、蓄電装置の温度と相関関係を有する状態量を、蓄電装置の温度(に対応する状態量)としてそのまま用いてもよい。
【0088】
実施の形態では、蓄電装置19をリチウムイオン電池により構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等、必要な電力を供給可能な各種の二次電池により蓄電装置を構成することができる。また、蓄電装置と直流母線との間にDC−DCコンバータ等の昇降圧装置を設けてもよい。
【0089】
実施の形態では、上部旋回体4を旋回させる旋回装置として旋回用油圧モータ3Aと旋回電動モータ20とを備えた構成を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、旋回装置の駆動源を油圧モータのみ、または、電動モータのみにより構成してもよい。
【0090】
実施の形態では、ハイブリッド式作業機械としてクローラ式のハイブリッド油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、ホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械、ホイールローダ、フォークリフト、ダンプトラック等の作業車両等、各種の作業機械に広く適用することができる。