(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
(1)本発明のパイプ用コネクタにおいては、ばね部における係止部との対向面には、リテーナの押し込みの際に係止部に当接する突起部が突出形成される構成としても良い。
このような構成によれば、係止部によるばね部の撓み変形を容易かつ円滑に行わせることができる。
【0015】
(2)上記(1)の構成に代えて、突起部を、係止部におけるばね部との対向面に突出形成するようにしても良い。
このような構成によっても、ばね部の撓み変形を容易かつ円滑に行わせることができる。
【0016】
(3)また、前記突起部がばね部に設けられる場合において、パイプがコネクタ本体に対して未挿入の状態及び挿入前半時には、少なくともばね部の一部が、リテーナが押し込み操作されるときの係止部の進入経路に対して係止部と干渉可能に位置することで、リテーナの押し込み操作が規制されるようになっており、またパイプの挿入後半時であってパイプがコネクタ本体に対して正規深さに至っていないときには、ばね部は、前記進入経路に対し係止部との干渉を回避可能に位置されているが、バルジ部が進入経路に対し係止部と干渉可能となっていることで、リテーナの押し込み操作が規制されるようになっており、パイプがコネクタ本体に正規深さまで挿入されている状態のときには、バルジ部が進入経路の外側位置まで変位していることで、リテーナの押し込み操作が許容される構成としても良い。
突起部がばね部に設けられる上記の構成において、パイプが未挿入の状態およびパイプの挿入前半時には、ばね部がパイプのバルジ部によって全く当接していないか、当接していてもばね部の撓みが少なくばね部の一部が係止部の進入経路内に位置しているため、ばね部と係止部との干渉によってリテーナの押し込み操作が規制される。
また、パイプの正規挿入には至っていないものの、パイプの挿入後半時には、ばね部の突起部がパイプのバルジ部との当接によってばね部自体は大きく撓み進入経路から略退避して位置しているが、代わってパイプのバルジ部が進入経路内に位置するようになるため、係止部とバルジ部との干渉によってリテーナの押し込み操作が規制される。
つまり、パイプがコネクタ本体に対して正規挿入されていないにも拘わらず不用意にリテーナを押し込み操作しようとしても、係止部がばね部あるいはパイプのバルジ部と干渉してリテーナの押し込み操作が規制される。
【0017】
(4)さらに、前記突起部が係止部に設けられる場合において、パイプが前記コネクタ本体に対して未挿入及び半挿入の状態にあるときには、少なくともばね部の一部が、リテーナが押し込み操作されるときの係止部の進入経路に対し係止部と干渉可能に位置することで、リテーナの押し込み操作が規制されるようになっており、パイプがコネクタ本体に正規深さまで挿入されている状態にあるときには、ばね部は進入経路に対し係止部との干渉を回避可能に位置していることで、リテーナの押し込み操作が許容される構成としても良い。
突起部が係止部に設けられる上記の構成では、(3)の場合とは異なり、突起部がばね部に設けられていない分、バルジ部と当接してもばね部が押しやられる変位量は(3)の構成に比較して小さい。したがって、パイプの未挿入状態は勿論、半挿入状態においてもばね部は進入経路内に位置しているため、この状態でリテーナを押し込もうとしても、係止部とばね部との干渉によって押し込み操作を行い得ない。
【0018】
(5)また、本発明のパイプ用コネクタにおいては、コネクタ本体に、常にはコネクタ本体に対して抜き取り不能に係止しているが、リテーナが前記コネクタ本体に対し正規位置まで押し込まれたときには係止が解除されて抜き取り可能となるチェッカーが装着される構成としてもよい。
上記の構成によれば、リテーナが正規位置まで押し込まれたことがチェッカーの抜き取りをもって検知することができるから、チェッカーを抜き取ることができることをもってばね部がパイプから離間したことを保証することができる。
【0019】
<実施例1>
次に、本発明のパイプ用コネクタを具体化した実施例1について、図面を参照しつつ説明する。
本実施例1のコネクタは自動車の燃料配管の一部を構成し、エンジンルーム内に設置されている。以下、説明の便宜上、
図1における左方を「前」、右方を「後」、上方を「上」、下方を「下」と呼び、
図2における左方を「左」、右方を「右」と呼ぶことにする。
【0020】
(コネクタ本体1とジョイント部材2)
コネクタCは合成樹脂製のコネクタ本体1を有している。
図1に示すように、コネクタCは、コネクタ本体1の前部に金属製のジョイント部材2が抜け止めされた状態で組み付けられている。このジョイント部材2の前部はパイプ状の配管接続部2Aが形成され、図示しないインジェクタに繋がっている。
【0021】
コネクタ本体1は前後方向に短い略角筒状に形成され、本体部3の前後両端には方形の板状部3A,3Bがフランジ状に張り出し形成されている。
図3に示すように、コネクタ本体1の内部は中空状に形成され、前後に開口して形成されている。
図3に示すように、コネクタ本体1の後端部には前方へ向けて小径の差し込み筒部4が同軸で形成され、その後端はパイプ挿入口5となっている。このパイプ挿入口5からは燃料タンクへと通じるパイプPの一端側が軸心方向に沿って挿入される。パイプPは金属製であり、端部寄りの位置には大径のバルジ部6が全周に亘って張り出し形成されている。一方、前側の板状部3Aにはジョイント部材2の後部を挿入させるためのジョイント部材挿入口15が開口している。
【0022】
図3に示すように、ジョイント部材2においてコネクタ本体1寄りの部位はシール収容部7となっている。このシール収容部7の内部にはスペーサ8とOリング9からなるシール部10が設けられている。シール部10(Oリング)はパイプPがコネクタに対して正規深さまで挿入された状態(
図13、
図15等に示す状態)で、パイプPの先端部の外周面に密着してシールがとられるようにしている。
【0023】
図3に示すように、シール部10の後側にはシール部10を抜け止めするためのブッシュ11が配されている。ブッシュ11は合成樹脂製であり、パイプPを挿通可能な略円筒形状に形成されている。ブッシュ11は、後部寄りの部位において当て止め部12がフランジ状に張り出し形成されている。ブッシュ11において当て止め部12より前側の筒状部分はシール収容部7内に密着状態で挿入され、当て止め部12の後側の筒状部分は後述するゲート部材29に対する装着基部14となっている。
図2、3に示すように、装着基部14の後端縁には、左右一対の位置決め凹所13が凹設されている。両位置決め凹所13はブッシュ11の後端縁から当て止め部12に至るまでの深さをもって切欠き形成され、後述するゲート部材29の位置決め爪31が差し込まれてゲート部材29がブッシュ11に対して周方向に位置決めされた状態で装着されるようにしている(
図21参照)。
【0024】
図3に示すように、ジョイント部材2におけるシール収容部7の後側はテーパ状に拡開し、拡張筒部16へと連続している。拡張筒部16の後端縁は全周に沿って内向きに屈曲して屈曲縁17が形成されている。
ジョイント部材2はコネクタ本体1に対して拡張筒部16側を向けてジョイント部材挿入口15から挿入され、拡張筒部16の外周面がコネクタ本体1内の壁面に密着した状態で取り付けがされている。このとき、屈曲縁17を含め拡張筒部16の後端部はコネクタ本体1の差し込み筒部4内に突き当て状態で嵌め入れられている。
【0025】
図2に示すように、拡張筒部16の周面には上下に2箇所ずつ通し溝19が貫通して形成され、それぞれ左右方向に間隔をおいて配されている。各通し溝19は前後方向に長いスリット状に形成され、コネクタ本体1の上面に対応して配された左右一対の挿通溝20と整合可能であり、リテーナ37の両係止脚45を挿通可能としている。
【0026】
また、
図1に示すように、コネクタ本体1の左右両側面において、両板状部3A,3Bで前後に挟まれた部分は相対的に凹部となっており、リテーナ37の押し込み操作を案内するための案内溝21,22を形成している。案内溝21,22は中央の仕切り壁23によって前側案内溝21と後側案内溝22とに仕切られている。両案内溝21,22は、それぞれ上下方向に沿って形成されており、このうち、前側案内溝21の溝底は全長に亘って凹みのない平滑な面に形成されている。一方、後側案内溝22の上部にはリテーナ37を押し込み操作する前にリテーナ37を仮係止位置(
図2、
図11に示す位置)に仮保持しておくための仮保持部24が凹み形成されている。
【0027】
後に改めて説明するが、リテーナ37は後側案内脚41の下端部が仮保持面25に当接することで仮係止位置に仮保持されている。リテーナ37が仮係止位置にあるときには、リテーナ37の両係止脚45の下端部がパイプPの挿入経路の前方において同経路上に位置しているため、パイプPがコネクタ本体1に対し正規深さまで挿入されるときには、パイプPは両係止脚45との干渉を避けつつ、ここを通過しなければならない。このために、本実施例においては、リテーナ37が、
図10に示すように、上方へ退避するようにしている。この場合、両係止脚45はパイプPのバルジ部6との当接によって持ち上げ力を受け、両係止脚45自体を拡開させることなく、リテーナ37全体を真っ直ぐ上方へ退避させる。かくして、パイプPのバルジ部6が両係止脚45を通過して正規深さまで挿入可能となる。通過後には、例えば重力の作用によってリテーナ37は再び仮係止位置へと復帰し、両係止脚45の下端部がバルジ部6と係止し、これによってパイプPは仮の抜け止め状態となる(
図12に示す状態)。
【0028】
なお、本実施例ではリテーナ37が上下方向となるようにパイプ用コネクタが装着される場合について図示し、説明している。このため、仮係止位置から一旦持ち上がったリテーナ37が再び、仮係止位置へと復帰する際の動作説明の一例として、「重力の作用によって仮係止位置へ復帰する」、との説明を行った。しかし、設置条件等によっては、リテーナ37が横向きとなるようにパイプ用コネクタが装着される場合もあり得る。そのような場合に、リテーナ37を仮係止位置へと復帰させる他の手段としては、次のようなことが考えられる。
【0029】
まず、リテーナ37の操作板38を押圧操作する手段が考えられる。この手段によれば、コネクタの設置向きとは無関係にリテーナ37の復帰が可能となる。また、本実施例におけるコネクタ本体1の起立面26の形態に代え、仮保持面25と逆向きの勾配をもつ傾斜面とし、リテーナ37が仮係止位置から持ち上がったときに、後側案内脚41が弾性的に開脚変形するようにし、パイプPが正規に挿入された後に発生する後側案内脚41の弾性復元力を利用して仮係止位置へと復帰する、等の措置も考えられる。
【0030】
なお、後側案内脚41は、リテーナ37が仮係止位置にあるときには、ほぼ自然状態にあるが、リテーナ37の係止爪44が仮保持面25の下縁に連続する鉛直面28を通過するときには、左右方向外方(開脚方向)への弾性変形をするようになっている。
【0031】
(ゲート部材29)
図3等に示すように、コネクタ本体1の内部、より具体的にはジョイント部材2における拡張筒部16の内部であって、ブッシュ11の後方にはゲート部材29が組み込まれている。ゲート部材29は金属製であり、その具体的構成については、
図4から
図6に示されている。
【0032】
ゲート部材29は平板材によって全体が形成され、リング状の取付け基部30を有している。ゲート部材29は、取付け基部30がブッシュ11の装着基部14に圧入状態で嵌め入れられることによって全体の装着がなされている。
図5に示すように、取付け基部30の内周縁には左右一対の位置決め爪31が径方向内方へ向けて突出している。前述したように、両位置決め爪31をブッシュ11において対応する位置決め凹所13へ適合させつつ取付け基部30をブッシュ11の装着基部14に嵌め入れることで、ゲート部材29がブッシュ11に対して周方向に位置決めされた状態で取り付けられる。
【0033】
図4に示すように、取付け基部30の外周縁であって両位置決め爪31と対応する部位からは左右一対のゲート片32(ゲート部)が後方へ向けて延出している。ゲート片32は全体としてパイプP側へ向けて斜めに折り返して形成されている。折り返された後の部分はばね部33となって径方向(左右方向であり、リテーナ37の係止脚45の進入方向と直交する方向)に撓み可能である。両ゲート片32における折り返される前の部分は、全長に亘って均一幅に形成され、かつ
図4に示すように、取付け基部30から後方へ向けて斜めにかつ互いに離れる方向に延出している。
図3に示すように、ゲート部材29の取付け状態では、ゲート片32における折り返し部の近傍が拡張筒部16内の屈曲縁17寄りの壁面に当接した状態となっている。
【0034】
図5、6に示すように、両ゲート片32のばね部33の先端側は折り返された後、直ちに折り返し前の部分よりも広幅に形成されている。広幅となった始端部分には上下方向へ張り出して突部34が突出形成されている。ばね部33の側縁のうち突部34より先端側に隣接した部位は、突部34の後縁から前方へ略水平に連続し、ここを谷とした後、先端に向けて上りあるいは下り勾配となる傾斜面となっている。このことにより、上記した谷の部分がずれ止め凹部35を形成している。
【0035】
なお、
図23で端的に示すように、ずれ止め凹部35はパイプPの半挿入の状態でリテーナ37を押し込み操作したときにリテーナ37の係止脚45の下端をずれ止めしつつ干渉する部位となる。
【0036】
図4、6等に示すように、両ばね部33における上下方向のほぼ中央部には突起部36が左右に対をなして突出形成されている。突起部36は径方向内方(パイプPに向かう方向)に向けて膨出し、全体は滑らかな曲面によって形成されている。
図23に示すように、突起部36は、ばね部33において折り返し基部側から先端側に向けて長い、略滴形状をもって形成されている。また、突起部はばね部33の先端寄りの部位が頂点部となるように形成されている。突起部36の頂点部は、ずれ止め凹部35の途中部位のほぼ下方位置あるいは上方位置に設定されている。
【0037】
本実施例1においては、パイプPが未挿入状態を含めコネクタ本体1に対して正規深さに挿入されるまでの間は、仮係止位置にあるリテーナ37を本係止位置へ押し込み操作できないようにしている。つまり、パイプPが正規挿入されるまでは、リテーナ37を押し込み操作しても、リテーナ37の係止脚45がばね部33あるいはパイプPのバルジ部6と干渉するようになっている。
【0038】
図3に示すように、パイプPがコネクタ本体1内に挿入されてはいるものの、ばね部33にはまだ当接するに至っていない状態のときには、ばね部33の突起部36およびその周辺部分(ずれ止め凹部35を含む部分)は通し溝19及び挿通溝20を平面上に投影した領域内に位置している。換言すれば、ずれ止め凹部35はリテーナ37の係止脚45のコネクタ本体1への進入経路上に位置していることになる。
【0039】
図11は
図3の状態からパイプPの挿入が進行し、バルジ部6がばね部33における突起部36の頂点部分に当接した状態を示している。このときにばね部33の撓み量は最大となっている。同図に示すように、バルジ部がばね部33の頂点部分に当接したときには、ずれ止め凹部35を含むばね部33の全体がほぼ係止脚45の進入経路の外方に位置しているが、ばね部33に代わってバルジ部6が係止脚45の進入経路内に位置するようになる。したがって、パイプPが
図11に示す位置に至る挿入深さになるまでの間の半挿入状態では、係止脚45の干渉相手はばね部33のずれ止め凹部35であるが、
図11に示す位置までパイプPが挿入されると係止脚45の干渉相手はばね部33のずれ止め凹部35からパイプPのバルジ部6へと切り替わることになる。
【0040】
図13はコネクタ本体1に対してパイプPが正規深さまで挿入された状態を示している。同図に示すように、パイプPの正規挿入状態では、パイプPのバルジ部6はばね部33の頂点部を通過し、進入経路に対し前方に外れて位置している。また、このときには、ばね部33は
図11に示す最大撓み状態から若干、弾性復帰しているが、ずれ止め凹部35は進入経路外に位置しほぼ突起部36のみが進入経路内に位置している。
【0041】
(リテーナ37)
リテーナ37の具体的構成は、
図7から
図9によって示されている。リテーナ37は合成樹脂製であり、パイプPの半挿入検知とパイプPの抜け止めの役割を果たす。
【0042】
リテーナ37の上面には、作業者が押し込み操作をするための操作板38が設けられている。操作板38は、リテーナ3
7がコネクタ本体1(拡張筒部16)内に押し込まれたときに、コネクタ本体1の上面に当接可能である。
図8に示すように、リテーナ37の左右両側面にはスリット39を前後に挟んで各一対ずつ、案内脚40,41が下向きに延出しており、これらの構成によってリテーナ37はコネクタ本体1を左右方向から跨いだ状態で装着がなされる。
【0043】
リテーナ37が仮係止位置にあるときには、両前側案内脚40はコネクタ本体1の前側案内溝21の上部に嵌め入れられていて、リテーナ37の押し込み操作時には前側案内溝21に沿って押し下げられることで押し込み操作の案内をする。前側案内脚40における下端部の左右両側面にはチェッカー42を強制的に開脚させるための傾斜面となった押圧面43が形成されている。
【0044】
図8に示すように、後側案内脚41は前側案内脚40よりも長めに形成されるとともに、左右方向への良好な撓み変形(開脚変形)が許容されている。なお、後側案内脚41は前側案内脚40との間が付け根部を除きスリット39によって切り離されているため、前側案内脚40とは独立して開脚変形がなされるようになっている。
【0045】
後側案内脚41の下端部には内向きに係止爪44が張り出し形成されている。リテーナ37が仮係止位置にあるときには、係止爪44の先端面44Aが後側案内溝22の仮保持面25に適合しほぼ当接状態にある。
なお、リテーナ37は、係止脚45の下端部がゲート部材29のずれ止め凹部35に当接することによって、仮係止位置に保持されている。
【0046】
図2に示すように、リテーナ37が仮係止位置にあるときには、係止爪44の先端の上面とコネクタ本体1における仮保持部24内の天井面27との間には上下方向に隙間が保有されていて、この隙間の高さ分だけリテーナ37全体が上方へ移動することが許容されている。すなわち、この隙間の存在によって次述する係止脚45とパイプPのバルジ部6との干渉を回避して、パイプPを正規深さまで挿入することができる。そして、パイプPの通過後にはリテーナ37全体が本実施例においては、重力の作用によって下方へ復帰移動して係止脚45がバルジ部6と再び干渉可能な位置(仮係止位置)に復帰する。このことにより、リテーナ37が押し込み操作されるまでの間にパイプPが抜け出る方向へ不用意に変位しないようにすることができる。
【0047】
後側案内脚41はコネクタ本体1の後側案内溝22に沿って嵌め入れられ、リテーナ37の押し込み操作を前側案内脚40との協働によって正規方向に案内する。そして、
図14に示すように、リテーナ37の押し込み操作が完了したときには、両係止爪44は後側案内溝22の下端部に形成された係止段部46に係止するようになっている。
図14に示すリテーナ37の位置が本係止位置となる。
【0048】
図9に示すように、操作板38の後縁における左右方向の中央部には切欠き部47が凹み形成されている。操作板38の下面であって上記した切欠き部47を左右に挟んだ部位には既述した係止脚45が下向きに左右一対、延出している。両係止脚45は操作板38の後縁からやや前方に引っ込んだ位置から操作板38の前後方向の中央部に至るまでの前後幅をもって形成されている。
【0049】
図7,8に示すように、両係止脚45の下端は後側案内脚41の下端よりさらに下方へ突出する長さをもって延出し、突出した部分には爪縁48が形成されている。
図8に示すように、爪縁48の後面には傾斜面となった誘導面49が形成されている。誘導面49はパイプPがコネクタ本体1に対し正規深さまで挿入される過程でバルジ部6と摺接し、リテーナ37を上方へ退避案内させてパイプPの通過を許容する役割を果たす。一方、爪縁48において誘導面49と反対側の面は鉛直面となり、さらに前方に向けて水平面となって連続し、干渉縁50を段状に形成している。この干渉縁50は、
図23に示すように、パイプPが未挿入及び半挿入の状態でリテーナ37を押し込み操作したときに、ばね部33のずれ止め凹部35と干渉してリテーナ37の押し込み操作を規制する役割を果たす。
【0050】
なお、前述したように、パイプPが正規深さまで挿入されている状態(
図13状態)では、係止脚45の進入経路に対し、ばね部33については突起部36のみが位置し、バルジ部6についても外方に退避していることから、これらとリテーナ37の係止脚45との干渉は回避可能な状態にある。したがって、パイプPが正規の深さまで挿入されている状態では、リテーナ37は本係止位置へ向けての押し込みが可能となっている。
図24に示すように、リテーナ37の押し込み操作に伴い、係止脚45における左右方向の外側面はばね部33の突起部36に対しその裾野上部から摺接を開始し頂点部を通過する過程でばね部33をさらに外方へ撓み変形させることができ、その結果、
図15に示すように、ばね部33はバルジ部6に対する接触状況を脱して離間状態となる。
【0051】
本実施例1では、両係止脚45には金属製の補強板51がインサート成形されており、両係止脚45は、この補強板51によって左右方向への開脚変形および前後方向への撓み等がされないよう、補強がなされている。補強板51自体は下向き略U字状に形成されており、切欠き部47および長さ方向の中央部の所定範囲で露出するものの、他の部分は樹脂部内に埋め込まれている。このようにする理由は、インサート成形時における金型へのセットの関係で補強板の一部を露出させる必要があること、および極力、補強板51の露出を避けてパイプPとの金属同士の接触を回避する必要のためである。
【0052】
(チェッカー42)
本実施例におけるパイプ用コネクタには、リテーナ37の押し込みが正しくなされたか否かを検知するためのチェッカー42を備えている。チェッカー42自体の具体的構成については、
図18から
図20に示されている。
【0053】
チェッカー42は合成樹脂製であり、上下両方向へ開口する矩形の枠状に形成された本体枠52を有している。本体枠52は、コネクタ本体1にリテーナ37が装着されている状態で、コネクタ本体1の上方から嵌め込まれ、コネクタ本体1を外側から取り囲んだ状態で装着がなされる(
図17参照)。
【0054】
本体枠52の前面にはジョイント部材2の配管接続部2Aとの干渉回避のためにアーチ部61が切り欠き形成されている(
図18参照)。同図に示すように、チェッカー42の後面にもパイプPの挿入時の干渉回避のために、前面側と同様、アーチ状切欠き部53が切り欠き形成されている。また、本体枠52における後面の上縁であって左右方向の中央部には、操作リング54が突設されている。
【0055】
本体枠52の左右両壁における後部寄りには、一対の窓孔55が縦向きに開口している。
図16に示すように、チェッカー42の装着状態において、両窓孔55はリテーナ37の後側案内脚41に対応した位置に開口している。リテーナ37の押し込み操作に伴って後側案内脚41の係止爪44が後側案内溝22の溝面に沿って摺接すると、後側案内脚41は左右方向外方への撓み変形をすることになる。このときに窓孔55は後側案内脚41の下部側部分を、窓孔55を通して外方へ逃がすことができ、これによって後側案内脚41の開脚変形を許容する役割を果たす。
【0056】
本体枠52の左右両側壁の内面下部であって、窓孔55の前側開口縁に隣接した位置には同縁に沿って左右一対の台状部56が突出している。台状部56の下部には抜け止め爪57がそれぞれ突出形成されている。両抜け止め爪57は、
図21に示すように、コネクタ本体1における前側案内溝21の下端面に係止することで、リテーナ37の押し込み操作前においてはチェッカー42をコネクタ本体1から上方へ抜き取ることができないようになっている。
【0057】
一方、台状部56の上縁部には、台状部56の上縁よりさらに前方に延出する前後範囲に亘って幅広の案内斜面58が形成されている。
図22に示すように、この案内斜面58はリテーナ37が正規に押し込み操作されたときにリテーナ37の前側案内脚40の押圧面43と摺接することで、チェッカー42の左右両側壁を強制的に外方へ撓み変形させてコネクタ本体1に対する抜け止め爪57の係止を解除し、チェッカー42の抜き取りを可能にしている。
【0058】
なお、台状部56における前側縁であって、抜け止め爪57より上位には左右一対のストッパ突起59が内向きに突出している。
図21に示すように、ストッパ突起59は、チェッカー42の装着状態においてコネクタ本体1の前側案内溝21の下端に外向きに張り出す下枠片60の上面に当接することで、チェッカー42をコネクタ本体1に対してこれ以上に深く押し下げることができないようにしている。
【0059】
次に、上記のように構成された本実施例1の作用効果を説明する。パイプPの挿入前の状態では、リテーナ37はコネクタ本体1に対し仮係止位置に保持され、チェッカー42は
図16,17に示す位置においてコネクタ本体1に保持されている。
【0060】
パイプPの未挿入状態においてリテーナ37を不用意に押し下げようとしても、ゲート部材29のばね部33は係止脚45の進入経路内に位置し、リテーナ37の係止脚45の干渉縁50がばね部33のずれ止め凹部35に当接状態にあるから(
図23等参照)、リテーナ37の不用意な押し込み操作は規制されている。なお、ずれ止め凹部35により、係止脚45がばね部33に対してずれ動いてしまう事態は回避されている。
【0061】
図3に示すように、パイプPをコネクタ本体1のパイプ挿入口5から軸心に沿って挿入すると、その挿入過程では、パイプPのバルジ部6がゲート部材29における突起部36に摺接する。パイプPの挿入が進行し、バルジ部6が突起部36に対し頂点部へ向けて徐々に移動する間に、ばね部33の左右方向外方への撓み変形量は徐々に増加してゆく。
【0062】
一方、パイプPが正規深さまで挿入される前の段階で、パイプPのバルジ部6はリテーナ37の両係止脚45の下端に形成された誘導面49に当接する。この状態からさらにパイプPが挿入されると、誘導面49に設定された傾斜面の作用により、パイプPの挿入力の分力が両係止脚45に対し持ち上げ方向の力となって作用する。この際において、前記したように、リテーナ37の後側案内脚41の係止爪44とコネクタ本体1の仮保持部24の天井面27との間には隙間が保有されていることから、
図10に示すように、リテーナ37全体は上方へ退避変位する。したがって、バルジ部6は両係止脚45を押し上げつつ係止脚45を通過することができる結果、パイプPは正規位置へ向けて挿入される。
【0063】
バルジ部6が両係止脚45を通過すると、リテーナ37は重力によって下方へ変位し、仮係止位置(両係止脚45の下端部がバルジ部6の直後に位置する)に復帰する(
図12に示す状態)。これにより、同図に示すように、両係止脚45はバルジ部6の背後で係止する状態になるため、次操作であるリテーナ37の押し込みがなされるまでの間にパイプPが抜け方向にずれ動いてしまう事態を防止することができる。
【0064】
前述したように、パイプPが正規深さにまで挿入されるまでの間(半挿入状態の間)は、リテーナ37の不用意な押し込み操作が規制されている。
図3に示すように、パイプPの挿入が開始されると、パイプPのバルジ部6がばね部33に対する当接が開始される。パイプPの挿入の進行に伴い、バルジ部6はばね部33の突起部36と摺接する。そして、バルジ部6が突起部36の頂点部に至るまでの間(パイプPの挿入前半時に相当するが、「前半」と「後半」の境界は厳格なものではない)においては、ばね部33はバルジ部6によって外方への撓み量が徐々に増大してゆくものの、ばね部33のずれ止め凹部35はリテーナ37の係止脚45の進入経路内に位置している。つまり、ずれ止め凹部35と係止脚45の干渉縁50とは依然として干渉状態のままであるため、リテーナ37の押し込み操作は規制された状態にある。
【0065】
パイプPの挿入がさらに進行して挿入後半時に入ると、
図11に示すように、パイプPのバルジ部6はばね部33の頂点部に至り、当接状態に保持される。このときには、前述したように、ばね部33の撓み量は最大となるため、ばね部33のずれ止め凹部35は進入経路から退避し、突起部36の頂点部の一部のみが同経路内に位置した状態となる。そして、進入経路内にはばね部33に代わってバルジ部6が位置する。したがって、このときにリテーナ37を押し込み操作しようとしても、係止脚45の干渉縁50がバルジ部6に干渉することになるため、リテーナ37は依然として押し込み規制された状態にある。
【0066】
パイプPの挿入がさらに進み、
図13に示すように、バルジ部6が突起部36を通過してばね部33の先端部に達すると、この時点でパイプPはコネクタ本体1に対して正規深さ位置で挿入されたことになる。このときには、同図に示すように、バルジ部6は通し溝19、挿通溝20の投影領域の前方、つまり進入経路の外側に位置している。なお、同図に示すように、ばね部33は
図11に示す状態から若干弾性復帰しているものの、進入経路に対してずれ止め凹部35は外れて位置し、突起部36の頂点部の一部のみが同経路内に位置している。
【0067】
パイプPが正規深さまで挿入された状態で、リテーナ37の押し込み操作を行うべく、作業者が操作板38に押圧力を作用させる。前述したように、パイプPが正規深さまで挿入されている状態では、リテーナ37の係止脚45の進入経路内にはゲート部材29の突起部36の一部のみが位置しているため、リテーナ37が仮係止位置から本係止位置へ移動する間、両係止脚45における左右方向の外側面(樹脂部)が突起部36に摺接しつつパイプPの一般部との間に分け入る。係止脚45と突起部36との摺接は、詳しくは、突起部36におけるばね部33の先端側の裾野部分から開始され、徐々に突起部36の頂点部へと上下方向に沿って移動し、以後、頂点部と当接する状態で維持される。この結果、
図15に示すように、ばね部33は係止脚45によってさらに左右方向外方へと強制的に撓み変形させられ、バルジ部6との当接状態を脱して離間した状態になる(
図15に示す状態)。つまり、リテーナ37が本係止位置に至った状態では、パイプPとゲート部材29という金属部材同士の接触が解消されるのである。
【0068】
リテーナが仮係止位置から本係止位置へと移動する間、リテーナ37の後側案内脚41は、係止爪44がコネクタ本体1の後側案内溝22の仮保持面25の傾斜に案内されて左右方向へ徐々に開脚変形し、そのまま後側案内溝22に沿って下方への変位が案内される。
【0069】
なお、後側案内脚41の開脚変形時にはチェッカー42の窓孔55を通して許容され、また前側案内脚40はスリット39によって後側案内脚41の開脚変形の影響をほぼ受けることなく、前側案内溝21による案内作用を受ける。かくして、前後の両案内脚40,41が対応する案内溝21,22による案内作用を受ける結果、リテーナ37全体は本係止位置(
図13に示す位置)へ向けて真っ直ぐ下方へ変位することができる。
【0070】
このように、パイプPがコネクタ本体1に対し未挿入及び半挿入状態にあるときには、リテーナ37を押し下げ操作しようとしても、リテーナ37の係止脚45とばね部33のずれ止め凹部35あるいはパイプPのバルジ部6とが干渉して押し込み規制がなされる。しかし、パイプPがコネクタ本体1に対し正規深さまで挿入されていれば、リテーナ37の押し込み操作が可能になる。したがって、リテーナ37の押し込み操作が不能であることをもって、パイプPの半挿入を検知することができ、逆にリテーナ37の押し込み操作が可能であることをもってパイプPが正規深さまで挿入されていることが保証される。
【0071】
リテーナ37が本係止位置に至る過程では、後側案内脚41の係止爪44が仮保持面25に続いて後側案内溝22の溝面に沿って開脚変形を保ったまま移動する。そして、操作板38がコネクタ本体1の上面に当接するまでリテーナ37が押し込まれると、後側案内脚41は復帰変形して係止爪44が係止段部46に係止する。かくしてリテーナ37全体が本係止位置に保持される。
【0072】
リテーナ37が本係止位置にあるときには、
図14に示すように、両係止脚45はパイプPの一般部を左右方向から挟んだ位置において、バルジ部6の直後に係止する。同図に示すように、係止脚45においてバルジ部6と係止する上下方向の範囲は、補強板51によって補強された範囲であるから、パイプPに抜き取り方向の強い力が作用したとしても、両係止脚45は開脚変形してしまうことがなく、バルジ部6に対する係止を確実なものにしている。
【0073】
こうして、リテーナ37が本係止位置に至ったら、続いてチェッカー42の抜き取り操作がなされる。リテーナ37が本係止位置へ移動する過程で、リテーナ37の前側案内脚40の押圧面43がチェッカー42における台状部56の案内斜面58と摺接することで、チェッカー42の左右両側壁を強制的に外方へ撓み変形させ。これによって、コネクタ本体1の下枠片60に対する抜け止め爪57の係止が解除されるため、この状態で作業者が操作リング54を引っ張れば、チェッカー42をコネクタ本体1から抜き取ることができる。逆に、リテーナ37が本係止位置に至る前にチェッカー42を引き抜こうとしても、抜け止め爪57の係止は維持されたままであるため、チェッカー42は抜き取り不能である。かくして、作業者はチェッカー42の抜き取りができるか否かをもって、リテーナ37の押し込み操作が正規になされたか否か、ひいてはパイプPが正規深さまで挿入されてパイプPの抜け止めが正規になされているか否かを知ることができる。
【0074】
本実施例1の主たる効果は次の通りである。
リテーナ37を本係止位置へ移動させると、係止脚45がゲート部材29のばね部33を外方へ撓み変形させるため、ばね部33とバルジ部6との金属部材同士の接触を解消することができる。したがって、エンジンの高速振動等に起因した上記接触部分における微摺動摩耗を未然に回避することができる。このことにより、本実施例1のリテーナ37は、パイプPの半挿入検知機能、パイプPの抜け止め機能に加え、ばね部をパイプPから離間させる接触回避機能を持ち、リテーナ37の高機能化が達成されている。
【0075】
また、この接触回避機能はリテーナ37が本係止位置に至っていることで保証されるものであり、一方、少なくともリテーナ37が本係止位置に至っていればチェッカー42の抜き取りが可能となっていることから、チェッカー42の抜き取りの可否を通じて接触回避機能の保証にもなっている。
【0076】
さらに、ばね部33に突起部36を形成するという簡易な構成で、ばね部33の退避量を簡単に増加させることができ、これによってパイプPとばね部33との接触回避をより確実なものとすることができる。
【0077】
また、本実施例1では、パイプPの未挿入および半挿入の状態が確実に回避されている。パイプPが未挿入状態およびパイプPの挿入前半時では、係止脚45とばね部33のずれ止め凹部35とが干渉し、パイプPの挿入後半時であって正規深さに至る直前までは、係止脚45とバルジ部6とが干渉してリテーナ37の押し込み規制がなされる。このことによって、パイプPが正規状態で接続されていることが保証される。
【0078】
さらにまた、本実施例1ではリテーナ37の両係止脚45が金属製の補強板51によって補強されている。したがって、パイプPに対する抜け止めの強化が図られるとともに、両係止脚45が開脚変形等を生じにくくなっていることから、係止脚45の進入経路は正規経路から外れてしまうことがなく、ばね部33の突起部36を確実に押圧することができる。このことを通じて、上記接触回避機能の維持に寄与することができる。
【0079】
また、本実施例1ではパイプPがコネクタ本体1に対して正規深さまで挿入される際に、バルジ部6にて係止脚45を押し上げてリテーナ37全体を一旦上方に退避させ、パイプPが正規深さまで挿入された後にはリテーナ37全体を原位置(仮係止位置)へと下方に復帰させるようにしている。このことによって、パイプPが正規深さまで挿入された状態では、バルジ部6が係止脚45と浅く係止した状態となって、パイプPが正規深さ位置で仮保持されるようにしているため、バルジ部6とゲート部材29のばね部との位置関係が正規関係に維持される。したがって、その後のリテーナ37の押し込み操作を円滑なものとすることができる、という効果も得られる。
【0080】
<実施例2>
図25から
図28は本発明の実施例2を示している。実施例1では、突起部36をばね部33に形成した場合を示したが、実施例2では突起部70をリテーナ37の係止脚71に設けた場合を示す。
【0081】
本実施例2では突起部70が係止脚71に設けられている関係で、通し溝19及び挿通溝20の開口形状が突起部70を挿通させ得るような凸字状の開口形状に形成されている。
実施例2におけるゲート部材72のばね部73には実施例1とは異なり、突起部が設けられていない。したがって、ばね部73の全体は平面を構成し、
図25に示すように、先端に向けて徐々にパイプPに接近する方向へ向けて斜めに延出している。
【0082】
また、
図25に示すように、ばね部73における前後方向の中間部から先端より僅かに手前までの領域が通し溝19及び挿通溝20の投影領域、つまり係止脚71の進入経路を横切って位置するようにしてある。但し、本実施例2ではばね部73に突起部70が設けられない分、実施例1のばね部よりも進入経路を横切る角度が深く、つまり進入経路に対してより深く入り込む設定となっている(
図3及び
図25との比較参照)。
【0083】
図28に示すように、実施例2における突起部70はリテーナ37の係止脚71においてばね部73と対向する側面に設けられている。突起部70は係止脚71において上下方向の中央部に配され、かつ上下が斜面となり前後方向に長い略正三角柱状の形態をなしている。突起部70は少なくともリテーナ37が本係止位置に至っていればばね部73に当接し、ばね部73をバルジ部6から離間させ得る。
【0084】
上記のように構成された実施例2によれば、
図25に示すように、パイプPの挿入が開始され、正規深さに挿入されるまでの間は、ばね部73が係止脚71の進入経路を横切るよう配置されている。つまり、この間は、ばね部73のずれ止め凹部35が進入経路内に位置していることから、リテーナ37の押し込み規制がなされている。
【0085】
しかし、パイプPの挿入がさらに進んで
図26に示す正規の挿入位置に達すると、ばね部73はパイプPのバルジ部6との当接によって最大の撓み量となるため、ばね部73はずれ止め凹部35を含めてほぼ進入経路の外側へと退避する(必ずしもばね部73の全体が完全に進入経路の外側に退避している必要はなく、ばね部73の一部が進入経路内に僅かに入り込む程度であれば構わない)。このときには、パイプPのバルジ部6とばね部73の先端部とは当接状態にある。
【0086】
このため、リテーナ37を本係止位置へ向けて押し込み操作すると、係止脚71はばね部73と干渉することなくパイプPとの間に割って入り、そのまま下方へ移動することができる。そして、リテーナ73が本係止位置に至ると、ばね部73は突起部70の頂点部分によって押され、左右方向外方へ撓み変形する。その結果、
図27に示すように、バルジ部6とばね部73とは離間した状態となる。このことにより、パイプPとばね部73との金属部材同士の接触が解消されるため、微摺動摩耗を未然に回避することができる。
なお、他の構成は実施例1と同様であるため、実施例1と同様と同様の作用効果を発揮することができる。
【0087】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、リテーナ37をコネクタ本体1に対しパイプPの径方向から押し込んでパイプPの抜け止めをするようにした。この方式に代えて、リテーナ37をパイプPの後方から軸方向に沿って押し込んでパイプPの抜け止めをすることも可能である。しかし、このようにすると、リテーナ37をコネクタ本体1から完全に取り外さない限り、パイプPの抜き取りができない。その点、本実施例の方式であれば、リテーナ37は仮係止位置へ戻すだけでパイプPの抜き取りが可能となる利点がある。
(2)上記実施例では、パイプP及びゲート部材29は共に金属製としたが、いずれか一方を樹脂製あるいは双方を樹脂製としてもよい。
(3)上記実施例では、リテーナ37の係止脚45を金属インサートによって補強したが、樹脂材のまま厚み・幅を増加させたり、リブ形状を設定するなど、他の補強策を講じても良い。