特許第6894828号(P6894828)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894828
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20210621BHJP
   F16F 9/40 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F16F9/32 Q
   F16F9/40 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-213489(P2017-213489)
(22)【出願日】2017年11月6日
(65)【公開番号】特開2019-86059(P2019-86059A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(72)【発明者】
【氏名】松下 雄介
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−120514(JP,A)
【文献】 実開昭62−114240(JP,U)
【文献】 実開平04−007745(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/32
F16F 9/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダの外周側に設けられて前記シリンダとの間にリザーバを形成する外筒と、
前記シリンダ内に移動自在に設けられるピストンと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されて前記ピストンに連結されるロッドと、
前記シリンダおよび前記外筒の開口端に嵌合されて前記ロッドを移動自在に軸支するロッドガイドとを備え、
前記ロッドガイドは、シリンダ側に向けて突出する環状部と、前記環状部の内周側に設けられた外径が前記環状部の内径よりも小径の嵌合部と、反シリンダ側端から前記環状部の内周およびシリンダ側端に開口して前記リザーバに通じる戻り通路とを有し、
前記シリンダが大径の場合、前記シリンダは、前記ロッドガイドの前記環状部の内周に嵌合され、
前記シリンダが小径の場合、前記シリンダは、前記ロッドガイドの前記嵌合部の外周に嵌合される
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
前記環状部は、前記ロッドガイドの軸方向で前記嵌合部と重なる位置に設けられており、
前記ロッドガイドの外周と前記環状部の外周が面一とされている
ことを特徴とする請求項に記載の緩衝器。
【請求項3】
前記環状部は、前記ロッドガイドの軸方向で前記嵌合部よりも反シリンダ側に後退した位置に設けられている
ことを特徴とする請求項に記載の緩衝器。
【請求項4】
前記戻り通路は、前記ロッドガイドの軸方向に沿って貫通する孔で形成されている
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の緩衝器。
【請求項5】
前記ロッドガイドの中心を中心として、前記戻り通路における前記環状部の内周への開口における中心角をθ1とし、前記戻り通路における前記開口よりも奥側の中心角をθ2とすると、θ1≧θ2であって、中心角θ2が中心角θ1の範囲内に位置している
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複筒型の緩衝器にあっては、シリンダと、シリンダの外側に設けられるとともにシリンダとの間にリザーバを形成する外筒と、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内をロッド側室とピストン側室の2室に区画するピストンと、シリンダ内に移動自在に挿入されてピストンに連結されるロッドと、シリンダおよび外筒の上端に嵌合されてロッドを移動自在に軸支するロッドガイドとを備えている。そして、シリンダ内には、作動油が充填され、リザーバ内には、作動油と不活性ガスが充填されている。
【0003】
一般的は、緩衝器では、シリンダ径が予め決まっており、ロッドガイドは決められた径のシリンダにのみ対応している。車両への搭載スペースの関係から緩衝器の外径を変えずに減衰力を高くしたい場合、ピストンの受圧面積を大きくすればよいが、そうするとシリンダ径を大きくしなければならない。他方、減衰力を高くする必要がない場合には、ピストン径およびシリンダ径を大きくする必要はない。このように、減衰力の高低の要求に応じてシリンダ径を変更するに際して、ロッドガイドも変更しなければならないとすると、複数種類のロッドガイドを管理しなければならず、誤組等に対する措置も必要となってくる。
【0004】
よって、前述の緩衝器では、径の異なるシリンダにも対応できるように、ロッドガイドのシリンダ側端に環状溝を設けている。大径のシリンダを使用する場合には、環状溝の外側の側面にシリンダの外周面を嵌合させ、また、小径のシリンダを使用する場合には、環状溝の内側の側面にシリンダの内周面を嵌合させる。このように従来の緩衝器では、ロッドガイドに径の異なる2種類のシリンダの嵌合を許容する環状溝を設けて、径の異なる2種類のシリンダに対応可能としている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6080257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、複筒型の緩衝器では、シリンダ内からロッドとロッドガイドとの間を通過してロッドガイドよりも上方へ移動した作動油をリザーバへ戻すために、ロッドガイドにこれを上下に貫通する連通孔を設けている。連通孔は、リザーバへの連通が要求されるため、ロッドガイドの上端から開口して下端の環状溝よりも外周側のリザーバに面する部位に開口している。
【0007】
このように連通孔をロッドガイドに設けると、ロッドガイドの環状溝と連通孔との間の肉厚が薄くなり、ロッドガイドのシリンダに嵌合する外周側の強度が低下してしまう。そして、緩衝器を車両のサスペンションに組み込む場合、緩衝器には横方向から外力(横力)が作用するが、このような横力に対する耐久性に乏しくなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、横方向からの外力にも十分に耐え得る緩衝器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の緩衝器は、ロッドガイドがシリンダ側に向けて突出する環状部と、反シリンダ側端から環状部の内周およびシリンダ側端に開口してリザーバに通じる戻り通路とを有している。このように構成された緩衝器によれば、戻り通路が反シリンダ側端から環状部の内周およびシリンダ側端に開口するようになっているので、環状部に戻り通路を設けても環状部の肉厚を確保でき、ロッドガイドの強度の低下を招かない。
【0010】
また、ロッドガイドが大径のシリンダの嵌合を可能とする環状部の内周側に小径のシリンダの嵌合を可能とする環状部より小径の嵌合部を有していてもよい。このように構成された緩衝器では、単一のロッドガイドで径の異なる2種類のシリンダに対応できるので、部品管理が煩雑とならず、製造過程で誤組も発生せず、さらに、製造コストも安価となる。
【0011】
さらに、環状部がロッドガイドの軸方向で嵌合部と重なる位置に設けられ、ロッドガイドの外周と環状部の下端とが面一とされている場合、ロッドガイドにおける外筒への嵌合長を長く確保でき、横力の入力に対して強度上有利となる。
【0012】
また、環状部がロッドガイドの軸方向で嵌合部よりも反シリンダ側に後退した位置に設けられている場合、ロッドガイドの材料費が安価となり緩衝器の製造コストが低減される。
【0013】
そして、戻り通路がロッドガイドの軸方向に沿って貫通する孔で形成される場合には、ロッドガイドを焼結加工する際に戻り通路も金型で成形できるので、ロッドガイドの加工が容易となり緩衝器の製造コストを削減できる。
【0014】
また、ロッドガイドの中心を中心として、戻り通路における環状部の内周への開口における中心角をθ1とし、戻り通路における開口よりも奥側の中心角をθ2とすると、θ1≧θ2であって、中心角θ2が中心角θ1の範囲内に位置するようにしてもよい。このように戻り通路を形成すると、戻り通路の環状部の内周への開口の両側に脆弱部が形成されなくなり、緩衝器に横力が作用しても環状部の変形が阻止されて戻り通路の断面形状を維持できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の緩衝器によれば、横方向からの外力にも十分に耐え得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
図2】一実施の形態における緩衝器のロッドガイドの拡大平面図である。
図3】一実施の形態における緩衝器の一部半裁拡大断面図である。
図4】一実施の形態における緩衝器のロッドガイドの拡大斜視図である。
図5】一実施の形態における緩衝器のロッドガイドの一部拡大背面図である。
図6】一実施の形態の第一変形例における緩衝器のロッドガイドの一部拡大背面図である。
図7】一実施の形態の第二変形例における緩衝器のロッドガイドの拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の緩衝器を図面に基づいて説明する。一実施の形態の緩衝器1は、図1に示すように、シリンダ2と、シリンダ2の外周側にシリンダ2を覆うように設けられてシリンダ2との間にリザーバRを形成する外筒3と、シリンダ2内に移動自在に挿入されてシリンダ2内をロッド側室R1とピストン側室R2とに区画するピストン5と、シリンダ2内に移動自在に挿入されるとともに下端がピストン5に連結されるロッド4と、シリンダ2および外筒3の開口に嵌合されてロッド4を移動自在に軸支するロッドガイド8と、ロッドガイド8の上方に積層されて緩衝器1内を密封するシール部材22とを備えている。
【0018】
シリンダ2は、筒状であって、開口上端がロッドガイド8によって閉塞されるとともに、開口下端が図示しないバルブケースによって閉塞されている。
【0019】
シリンダ2のロッド側室R1内、及びピストン側室R2内には、それぞれ作動油等の液体が充填され、シリンダ2と外筒3との間のリザーバR内には、作動油等の液体と不活性ガス等の気体とが充填されている。なお、液体は、本例では、作動油とされているが、水や水溶液等といった他の液体とされてもよい。また、気体は、本例では、作動油の劣化を招かない窒素等の不活性ガスとされるとよいが、大気等、他の気体の利用も可能である。
【0020】
ピストン5には、ロッド側室R1とピストン側室R2とを連通する2つの通路5a、5bが設けられている。一方の通路5aには、ピストン側室R2からロッド側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブ6が設けられている。また、他方の通路5bには、ロッド側室R1からピストン側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するとともに、通過する液体の流れに抵抗を与える伸側減衰バルブ7が設けられている。
【0021】
外筒3は、筒状であって図外の下端が閉塞されており、図1中で上端がロッドガイド8によって閉塞されている。そして、外筒3とシリンダ2との間にリザーバRが形成されている。
【0022】
リザーバRは、上端がロッドガイド8によって閉塞され、下端が前記したバルブケースによって閉塞されている。バルブケースは、図示はしないが、ピストン側室R2とリザーバRとを連通する2つの通路が設けられている。また、一方の通路には、リザーバRからピストン側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するチェックバルブが設けられている。さらに、他方の通路には、ピストン側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容するとともに、通過する液体の流れに抵抗を与える圧側減衰バルブが設けられている。
【0023】
ロッドガイド8は、図1から図4に示すように、環状であって、シリンダ2および外筒3の開口端に嵌合して、シリンダ2および外筒3の上端開口部を閉塞している。ロッドガイド8は、内周に下端側から小径部9と小径部9よりも大径の大径部10とを備えており、この大径部10に筒状のロッド4の軸方向の移動を案内するベアリング21が嵌合されている。
【0024】
また、ロッドガイド8の上端側には、大径部10の外径よりも大径の環状凹部11が設けられるとともに、環状凹部11の外周側には環状の段部12と、段部12の外周側から図1中上方へ突出する環状の凸部13が設けられている。
【0025】
凸部13における上面13aは、水平面とされており、凸部13における内周面13bは、上面13aの内周端から段部12の外周端に向けて斜め下方に傾斜するテーパ面として形成されている。また、ロッドガイド8の上端の凸部13よりも外周には、全周に亘って形成される環状凹部14が設けられている。
【0026】
図2から図4に示すように、凸部13の二箇所に所定の幅、深さで切り欠かれた切欠部13cが設けられている。切欠部13cは、凸部13の内周から上面13aの外周にかけて切欠かれた形状となっており、上面13aの外周から凸部13の内周に向かって所定の角度で下方に傾斜する傾斜面となっている。
【0027】
また、図1および図3に示すように、ロッドガイド8の下端外周には、図中下方に突出する環状部17が設けられており、環状部17の内周には、環状部17に対向するとともに、環状部17の内径よりも小さな外径を持つ嵌合部19が設けられている。つまり、環状部17は、ロッドガイド8の軸方向で嵌合部19と重なる位置に設けられている。また、ロッドガイド8の外周と環状部17の外周が面一とされている。そして、環状部17の内周と嵌合部19との間は、環状の溝18となっており、この溝18の幅は、シリンダ2の肉厚よりも広い幅に設定されていて、溝18は、シリンダ2の挿入を許容するようになっている。そして、ロッドガイド8を軸方向から見ると、環状部17の内周面は、切欠部13cの内周と外周との間に位置するようになっており、ロッドガイド8は、この切欠部13cから開口して溝18に通じる戻り通路20を備えている。また、ロッドガイド8の外周と環状部17の外周とが面一とされており、ロッドガイド8の環状凹部14の下端から環状部17の下端までが外筒3の内周に当接する。
【0028】
戻り通路20は、図2および図3に示すように、上下方向に沿ってロッドガイド8を貫通し、ロッドガイド8の反シリンダ側端から開口して環状部17の内周およびシリンダ側端に通じる孔で形成されている。戻り通路20は、ロッドガイド8を軸方向から見て切欠部13c側の開口は円形であって環状部17の内周にかかる位置に設けられている。よって、戻り通路20は、切欠部13cから開口し、溝18の底面に開口するとともに、環状部17の内周部を抉って環状部17の下端にまで通じている。つまり、戻り通路20は、環状部17の内周とシリンダ側端に開口しており、図5に示すように、戻り通路20における環状部17の下端側の開口は、切欠部13c側の円形の開口を環状部17の内周縁で切り取った三日月状の形状とされている。なお、戻り通路20は、環状部17の内周に開口して下端まで通じていればよく、溝18の底部に開口しなくてもよい。したがって、戻り通路20における切欠部13cの開口も円形を環状部17の内周縁で切り取った三日月形状として、そのまま環状部17の下端まで同一形状で貫通させるようにして戻り通路20を形成してもよい。なお、戻り通路20の断面は、図5に記載した戻り通路20を例にすれば、ロッドガイド8の中心Oと環状部17の内周への開口Hの周方向両端とを結んだ線で囲まれる角度が、前記中心Oと奥側の周方向両端とを結んだ線で囲まれる角度以上となっており、かつ、前者の角度の範囲内に後者の角度があるようにするのが好ましい。つまり、ロッドガイド8の中心Oを中心として、戻り通路20における環状部17の内周への開口Hにおける中心角をθ1とし、戻り通路20における開口Hよりも奥側における中心角をθ2とすると、開口Hよりも奥側の全ての箇所において、θ1≧θ2であって、中心角θ2が中心角θ1の範囲内に位置するようにするのが好ましい。
【0029】
中心角θ1より中心角θ2が大きい場合、図6に示すように、環状部17における戻り通路20の環状部17の内周への開口Hの周方向両端に面する部位の肉厚が非常に薄くなり強度が低くなる脆弱部Jが形成される。そして、環状部17の内周にシリンダ2を嵌合させた場合、ロッド4から横方向の外力(横力)がロッドガイド8に作用すると環状部17とシリンダ2との接触部位に荷重がかかるので、前述の脆弱部Jが荷重に晒される。このような理由から、ロッドガイド8の中心Oを中心として、戻り通路20における環状部17の内周への開口Hにおける中心角をθ1とし、戻り通路20における開口Hよりも奥側の中心角をθ2とすると、θ1≧θ2であって、中心角θ2が中心角θ1の範囲内に位置するようにすると脆弱部Jの形成が阻止される。なお、ロッドガイド8の中心Oから見て戻り通路20の断面形状が屈曲するような形状となると、中心角θ1の範囲から中心角θ2が出てしまうため、横力に対して強度が弱くなる脆弱部Jが形成されてしまう。
【0030】
また、溝18を避けて戻り通路20を環状部17の内周と下端に通じるように形成する場合、図6に示す第一変形例の緩衝器のロッドガイド8のように、戻り通路20の断面形状を円弧状としてもよい。この場合、溝18の底部を避ける場合には、ロッドガイド8を軸方向に見て円弧状の戻り通路20の内周を環状部17の内周に合致した曲率にすればよい。戻り通路20は、少なくとも、ロッドガイド8の軸方向に沿って形成されて環状部17の内周と下端に通じていればよく、戻り通路20の断面形状は、任意である。よって、たとえば、切欠部13c側の開口を矩形その他の形状としてもよい。
【0031】
シリンダ2は、ロッドガイド8の溝18内に挿入されて、上端開口部が閉塞される。このロッドガイド8には、径の異なるシリンダ2の嵌合が可能とされている。具体的には、シリンダ2は、外周をロッドガイド8の環状部17の内周に嵌合させるか、或いは、溝18の内周側の側壁を嵌合部19として当該嵌合部19に内周を嵌合させて、ロッドガイド8に嵌合できる。つまり、図中で実線で示す大径のシリンダ2を採用する場合、シリンダ2の外径を環状部17の内周に嵌合可能な径とすればよく、図中で破線で示す小径のシリンダ2を採用する場合、シリンダ2の内径を溝18の内周側の側壁である嵌合部19に嵌合可能な径とすればよい。このように、本例のロッドガイド8では、二つの径の異なるシリンダ2の嵌合を許容している。そして、大径のシリンダ2を溝18内に挿入して環状部17の内周に嵌合させても、戻り通路20は、環状部17の内周と下端であるシリンダ側端へ通じており、シリンダ2によっては閉塞されない。小径のシリンダ2を溝18に嵌合させても同様に戻り通路20は閉塞されない。このように、ロッドガイド8にシリンダ2を嵌合させると、外筒3とシリンダ2との間にリザーバRが形成され、リザーバRの上端がロッドガイド8に閉塞されるとともに戻り通路20に連通される。
【0032】
つづいて、シール部材22は、環板状のインサートメタル23と、インサートメタル23の内周側に一体に設けられる環状の内周シール24と、インサートメタル23の外周側に一体に設けられる環状の外周シール25と、インサートメタル23の下端に一体に設けられる環状のチェックシール26とを備えている。
【0033】
内周シール24、外周シール25およびチェックシール26は、ゴム等の弾性体で形成されており、溶着や接着等の手段によってインサートメタル23に一体に設けられている。
【0034】
内周シール24は、ロッド4の外周にロッド4の軸方向移動を許容しつつ当接しており、ロッド4の外周をシールしている。外周シール25は、ロッドガイド8の外周に形成された環状凹部14内に収容されて、ロッドガイド8と外筒3の内周面とに密着している。そして、シール部材22は、外筒3の開口上端の加締め加工によってロッドガイド8の図1中上方に積層された状態で固定され、シリンダ2及び外筒3の開口上端を密封している。
【0035】
また、チェックシール26は、撓んだ状態で先端をロッドガイド8の段部12に当接しており、ロッドガイド8に当接した状態では、ロッドガイド8の上方を内周シール24の背面側の空間Aと戻り通路20に通じる空間Bとに仕切っている。そして、ロッド4がシリンダ2から退出する際に、内周シール24がロッド4の外周に付着した作動油を掻き落とすので、緩衝器1が伸縮を繰り返すと、空間A内に作動油が蓄積される。空間A内の圧力が高まるとチェックシール26が撓んでロッドガイド8の段部12から離間して空間Aを空間Bに連通させるので、空間Aに溜った作動油を戻り通路20を介してリザーバRへ排出できる。
【0036】
上記のように構成した本実施の形態の緩衝器1にあっては、ロッドガイド8がシリンダ側に向けて突出する環状部17と、反シリンダ側端から環状部17の内周およびシリンダ側端に開口してリザーバRに通じる戻り通路20とを有している。このように構成された緩衝器1によれば、戻り通路20が反シリンダ側端から環状部17の内周およびシリンダ側端に開口するようになっているので、環状部17に戻り通路20を設けても、環状部17の肉厚を確保でき、ロッドガイド8の強度の低下を招かない。
【0037】
このように構成された緩衝器1では、ロッドガイド8の強度を確保できるので、緩衝器1の横力に対する耐久性が乏しくなる問題が解消される。よって、本発明の緩衝器1によれば、横方向からの外力にも十分に耐え得る。
【0038】
また、本例の緩衝器1では、前記環状部17がロッドガイド8の軸方向で嵌合部19と重なる位置に設けられ、ロッドガイド8の外周と環状部17の外周が面一とされているので、ロッドガイド8における外筒3への嵌合長を長く確保できる。このように緩衝器1が構成されると、緩衝器1に横力が作用した際に外筒3に当接するロッドガイド8の面圧を低くでき、横力の入力に対して強度上有利となる。
【0039】
また、戻り通路20は、ロッドガイド8の軸方向に沿ってロッドガイド8を真っ直ぐに貫通する孔で形成されるので、ロッドガイド8を焼結加工する場合に、戻り通路20も金型で成形できるから、ロッドガイド8の加工が容易となり緩衝器1の製造コストを削減できる。
【0040】
また、緩衝器1に高い減衰力を発揮させる場合、ピストン5の受圧面積を大きく方が有利であり、大径のシリンダ2の利用が好ましい。他方、緩衝器1に要求される減衰力がさほど高くない場合には、コスト面からして小径のピストン5と小径のシリンダ2の利用が好ましい。本例の緩衝器1では、前述のように、大径のシリンダ2の嵌合が可能な環状部17の内周側に小径のシリンダ2の嵌合が可能な嵌合部19が設けられており、単一のロッドガイド8で径の異なる2種類のシリンダ2に対応できる。このように、緩衝器1に要求される仕様によってシリンダ2およびピストン5の径を選択が必要となるが、ロッドガイド8の変更は不要となるから、部品管理が煩雑とならず、製造過程で誤組も発生せず、さらに、製造コストも安価となる。
【0041】
さらに、本例では、ロッドガイド8の中心を中心として、戻り通路20における環状部17の内周への開口Hにおける中心角をθ1とし、戻り通路20における開口Hよりも奥側の中心角をθ2とすると、θ1≧θ2であって、中心角θ2が中心角θ1の範囲内に位置するようにしてある。このように、戻り通路20を形成すると、戻り通路20の環状部17の内周への開口Hの両側に脆弱部Jが形成されなくなり、緩衝器1に横力が作用しても環状部17の変形が阻止されて戻り通路20の断面形状を維持できる。
【0042】
また、図7に示した第二変形例の緩衝器のように、ロッドガイド8に設けられる環状部17は、嵌合部19に対してロッドガイド8の軸方向で反シリンダ側に後退した位置に設けられてもよい。
【0043】
このようにすると、環状部17の長さを短くできるので、図7中破線と一点鎖線で示す大小径の異なるシリンダ2の嵌合を許容しつつもロッドガイド8の体積を図1に示したロッドガイド8の体積よりも小さくできる。よって、この第一変形例の緩衝器では、ロッドガイド8の材料費を少なくでき、緩衝器の製造コストを低減できる。
【0044】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0045】
1・・・緩衝器、2・・・シリンダ、3・・・外筒、4・・・ロッド、5・・・ピストン、8・・・ロッドガイド、17・・・環状部、20・・・戻り通路、R・・・リザーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7